オーストラリアの海洋・環境関係コンサルタントのスティーブ・ライメイカーズが、中国が人工島造成戦略を、南シナ海からさらに南太平洋に拡大しているとの趣旨の論説を、9月11日付のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のサイトに寄稿している。
南太平洋は、中国と台湾による外交関係の争奪戦の前線である。現時点で中国と外交関係を樹立した国が10、台湾と外交関係を持つ国が4である。中国と外交関係を持つ国のうち、ソロモン諸島とキリバスは昨年9月に相次いで外交関係を台湾から中国に切り替えた。キリバスについては、前任のトン大統領の時代の2003年に台湾と外交関係を樹立したが、マーマウ大統領(2016年以来現職、今年6月に再選を果たし現在2期目)が中国との外交関係に戻したという経緯がある。彼は親中国である。今年1月には北京を訪問した。
マーマウは、気候変動への対応について前任のトンとは著しく異なる立場を取っている。トンは気候変動によって水没の危機に晒されるキリバスの実情について世界を啓発することに力を注ぎ、浮体の人工島を構想してみたり、フィジーの島を購入して国民の移住を始めたりもしたらしい。しかし、マーマウは気候変動に適応するという立場である。彼は、2017年にボンの気候変動会議で演説し、「気候変動は確かに深刻な問題であるが、我々はキリバスがタイタニックのように沈没するとは信じない。我々の美しい国は神の手によって作られたのだ」と述べたが、彼は気候変動と戦うことを世界に求めるのではなく、キリバスを「太平洋のドバイ」にする開発計画への協力を求めたという訳である。その手段がライメイカーズの論説にある、中国によるタワラ環礁とキリティマティ環礁に予定されている2つの港の建設である。「美しい国」キリバスのサンゴ礁が、この巨大工事によって深刻な打撃を受けることは、誰の眼にも明らかである。
「太平洋のドバイ」を太平洋の真ん中に作るというのは現実離れしているが、ラグーンを浚渫し、その土砂で土地をかさ上げして造成し、そこに港を作ることはその道の専門家に言わせれば技術的には可能なことらしい。この構想に協力する国があるとすれば、中国しかないであろう。中国のことだから南シナ海で用済みとなった浚渫船を動員して 2、3年でやってのけるかも知れない。
ソロモン諸島の首相も昨年10月に北京を訪問し、「一帯一路」、中国によるスタジアム建設、中国企業によるインフラ建設などの合意が発表された。中国の企業が地元政府からツラギ島全体をリースする契約をしたとされ一時物議を醸したが、これは一端政府によって無効とされたらしい。
もう一つ、ライメイカーズは、フランス領ポリネシアに注意を喚起している。この中国による投資プロジェクトは、養殖場を作り既に存在する滑走路を使って水産物を中国に輸出するというものであるが、既に3年前に取沙汰されていた。その後どうなったのか、論説が言及しているリース契約を含めプロジェクトの現状はどうなっているか。
南太平洋の諸国が脆弱で中国に取り込まれる危険が常にあることは明白である。中国の資金援助によって作られる施設やインフラがいつの間にか軍事目的に転用され、米国や豪州の軍事的な行動の障害になり得る危険があることも、ライメイカーズが指摘する通りであろう。しかし、中国にとって南太平洋は南シナ海とは決定的に異なる。戦略的な緊急性はないと言って良い。現時点では南太平洋での影響力拡大の努力がどれ程の将来を睨んだ軍事的な下心があってのことか確かなことは言い得ない。妙案はなく、平凡な結論にしかならないが、豪州および米国、日本は警戒を怠らないことはもとよりとして、これら諸国との対話に配慮し、彼等の経済開発と気候変動対策のニーズに極力応えるしかないであろう。
【私の論評】南シナ海の中国軍事基地は、何の富も生まず、軍事的にも象徴的な意味しかないのに中国は太平洋でその愚を繰りすのか(゚д゚)!
米国の戦略家ルトワック氏は、南シナ海の中国の軍事基地は、象徴的な意味しかなく、米軍なら5分で吹き飛ばせると語っていました。
米国の戦略家ルトワック氏は、南シナ海の中国の軍事基地は、象徴的な意味しかなく、米軍なら5分で吹き飛ばせると語っていました。
この言葉の裏には、米海軍の中国に対する圧倒的な優位性があります。それは、このブログでも何度か述べてきました。
米軍は、圧倒的に優れた世界一の哨戒能力(潜水艦や、空母など艦艇を、航空機を探索する能力)を持つにもかかわず、中国はかなり劣っています。それ加えて、米軍の原潜は、中国の原潜と比較すると、ステルス性も、攻撃力も段違いに優れています。
米バージニア級攻撃型原潜 |
中国が超音速対艦ミサイルを持っていたとしても、宇宙兵器を開発したとしても、発見することが困難な相手には無意味です。
これでは、目の見えない人間と、目の見える人間の戦いのようなもので、中国には全く勝ち目がありません。中国の潜水艦、艦艇、航空機などは、戦端が開かれてすぐに、魚雷やミサイルで狙い撃ちされ、撃沈・撃破されるでしょう。その一方で中国人民解放軍は、米原潜を発見することは困難なのです。
その後、米原潜が南シナ海の中国の軍事基地を封鎖すれば、南シナ海の中国軍は、食糧、水、燃料などを補給することができず、お手上げになるだけです。
28日、中国の人民解放軍が4つの海域で同時に軍事演習を実施しました。台湾とアメリカをけん制する狙いがあるとみられますが、現状の軍事力の米中の質の差を考えると、このような演習にどのような意味があるのか、疑問符がつきます。
28日、中国の人民解放軍が軍事演習を行ったのは南シナ海と東シナ海、黄海南部、渤海の4つの海域です。このうち黄海南部では30日まで毎日午前8時から午後6時まで軍事演習が行われるとして、中国の海事局は演習期間の周辺海域の船舶の航行禁止を発表しました。
二隻のまともに着艦出来ない空母と、空母を守れない護衛艦(米原潜を発見できないのですぐに撃沈されるの意味)、居場所通知機能付き(すぐに米軍に発見されるの意)の潜水艦で演習したとしても、ほとんど意味がありません。逆にこれだけ、中国の艦艇が集まる機会はないので、今の段階で米原潜が中国の海軍力を根絶できるチャンスだったともいえるかもしれません。
無論、米軍もこの機会を無駄にはしなかったでしょう。どのような演習をしたかを探索するのは無論のこと、中国の潜水艦の音紋を収集したり、空母や艦艇の能力を推し量ったり、場合によっては、中国艦艇や原潜を米原潜で撃沈するシミレーションも行ったことでしょう。
さらにパラセル諸島のウッディー島には対艦ミサイルと長距離地対空ミサイルも配備しています。中国共産党は、南シナ海全体の制空権・制海権を確保し、中国のコントロール下に置くためには、どれほど「シーパワー」が必要かは見当もつかないようです。これには、おそらく軍事費を毎年10%以上拡大し続けてもまだ間に合わない軍事力、装備、要員の拡大が必要です。
経済が萎縮し、格差が拡大し、人民の不満が高まり、国内は一触即発の治安状況にあるなかで、どれだけシーパワーに国家資金を投入し続けることが可能なのでしょうか。
中国にとっての南シナ海は、北朝鮮にとっての核・ミサイルと同じような存在で、国の面子を取り繕うために南シナ海の領有権を主張し、一度主張したことは絶対に取り下げたり、変更することはできません。
しかし、その南シナ海の維持管理のための莫大の国家予算を、人民生活の向上に使えばどれだけの貧困層が救われるか、少し考えれば分かりきったことです。北朝鮮の核やミサイルは、ただ単に金正恩のための「使われない玩具」としての価値しかなく、金正恩がもてあそぶ「高価な玩具」のために、その下の人民は飢えと寒さでいずれ皆消滅する危機に瀕しています。
同じように中国にとって、第一列島線のなかの東シナ海・南シナ海全体を囲いこみ、人口島建設や制空・制海権を確立しようという目的は、この海域に戦略核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を潜航させ、米国に代わる世界覇権を確立するための世界戦略の一環として南シナ海を中国の内海にすることです。
しかし、そうした戦略核や原潜の存在を誇示し、「シーパーワー」の力を見せ付けるが日が実現できたとしても、世界の国々と人類が中国の覇権に従うことはおそらくないでしょう。なぜなら「海洋パワー」になれない中国は、超大国にはなることはできないからです。
したがって南シナ海は、今のところ領土的にも資源的にも何の価値もなく、絶海の孤島の「リゾート基地」として、ただ兵士の休養と暇つぶし以外には何の役にも立ちません。ところが、そのような無駄な軍事基地を守るために、国費のなかから莫大な維持管理費をかける一方で、その日の生活の糧にも困っている大陸本土の億単位の貧困層は無残にも取り残され、政治から無視され続けているのです。
経済が萎縮し、格差が拡大し、人民の不満が高まり、国内は一触即発の治安状況にあるなかで、どれだけシーパワーに国家資金を投入し続けることが可能なのでしょうか。
中国にとっての南シナ海は、北朝鮮にとっての核・ミサイルと同じような存在で、国の面子を取り繕うために南シナ海の領有権を主張し、一度主張したことは絶対に取り下げたり、変更することはできません。
しかし、その南シナ海の維持管理のための莫大の国家予算を、人民生活の向上に使えばどれだけの貧困層が救われるか、少し考えれば分かりきったことです。北朝鮮の核やミサイルは、ただ単に金正恩のための「使われない玩具」としての価値しかなく、金正恩がもてあそぶ「高価な玩具」のために、その下の人民は飢えと寒さでいずれ皆消滅する危機に瀕しています。
同じように中国にとって、第一列島線のなかの東シナ海・南シナ海全体を囲いこみ、人口島建設や制空・制海権を確立しようという目的は、この海域に戦略核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を潜航させ、米国に代わる世界覇権を確立するための世界戦略の一環として南シナ海を中国の内海にすることです。
しかし、そうした戦略核や原潜の存在を誇示し、「シーパーワー」の力を見せ付けるが日が実現できたとしても、世界の国々と人類が中国の覇権に従うことはおそらくないでしょう。なぜなら「海洋パワー」になれない中国は、超大国にはなることはできないからです。
したがって南シナ海は、今のところ領土的にも資源的にも何の価値もなく、絶海の孤島の「リゾート基地」として、ただ兵士の休養と暇つぶし以外には何の役にも立ちません。ところが、そのような無駄な軍事基地を守るために、国費のなかから莫大な維持管理費をかける一方で、その日の生活の糧にも困っている大陸本土の億単位の貧困層は無残にも取り残され、政治から無視され続けているのです。
中国から南シナ海の埋め立て環礁への試験飛行した時の旅客機のキャビンアテンダント 2016年 |
少しでも頭を働かせて考えてみれば誰にでも分かることですが、南シナ海全域の管轄権を維持するためには、人員の交代や補給などで、無数の艦船と航空機を本土との間で往復させ、そのやりくりのために大量の燃料を駄々漏れ状態で無駄使いすることになります。
埋め立てでできた島は侵食されやすく、様々な機器も常に潮風にさらされるため、これらをメンテナンスし続けていくためにも、膨大な費用がかかります。中国の軍事基地は、南シナ海に存在するだけで、膨大な金食い虫になるのです。
水に関しては、原潜のように原子炉のエネルギーにより作り出すことができるかもしれませんが、何よりも小さな島では、農業や牧畜などもできず、兵士の食糧は補給以外にありません。また、定期的に交代させる必要もあります。
人工島を作っても経済・軍事的には何の価値も生み出さない一方で、貴重な珊瑚礁の自然を埋め立てることによって、海洋生物や天然資源を再生不可能なまでに破壊し、周辺海域の汚染を広げる結果をもたらしています。
人工島を作っても経済・軍事的には何の価値も生み出さない一方で、貴重な珊瑚礁の自然を埋め立てることによって、海洋生物や天然資源を再生不可能なまでに破壊し、周辺海域の汚染を広げる結果をもたらしています。
日本の自然保護団体やグリーンピースや、シーシェパードが抗議運動などでこの海域に出没しないのが不思議です。そうすれば、彼らは人民解放軍に拿捕されたり、攻撃されるのを恐れているのかもしれません。無論、それ以外にも理由はありそうですが・・・・。
太平洋諸国でも、中国は同じことを繰り返そうとしています。愚かとしか言いようがありません。中共は自ら弱体化の道を歩んでいるようです。
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