「菅首相シフト」敷く財務省 当面は共存関係維持するが…消費減税は選挙と世論次第
高橋洋一 日本の解き方
菅義偉氏 |
8日告示、14日投開票の自民党総裁選は、菅義偉官房長官が有利な情勢だ。菅氏が首相になった場合、霞が関の官僚、とりわけ財務省との関係はどのようなものになるだろうか。
菅氏は、官僚ににらみが利くといわれている。官房長官というポストは、諸々の情報が官僚機構から上がってくるという事実があるとともに、独自のネットワークにより、官僚機構からの情報をチェックして、必ずしも官僚の言いなりになっていないことも意味している。
しかも、菅氏は、第2次安倍晋三政権で創設された内閣人事局のシステムをうまく使った。もともと、内閣人事局の構想は、第1次安倍政権の時の公務員制度改革に盛り込まれていたものだ。それが、福田康夫政権での2008年の国家公務員制度改革基本法の成立につながった。
同法11条では、「政府は(中略)内閣官房に内閣人事局を置くものとし、このために必要な法制上の措置について(中略)この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする」と定めていた。
しかし、その後の民主党政権を経て、施行後6年となる14年、第2次安倍政権において内閣人事局は設置された。菅氏は、こうした経緯を熟知しており、人事によって官僚を巧みに管理している。
菅氏は、官僚ににらみが利くといわれている。官房長官というポストは、諸々の情報が官僚機構から上がってくるという事実があるとともに、独自のネットワークにより、官僚機構からの情報をチェックして、必ずしも官僚の言いなりになっていないことも意味している。
しかも、菅氏は、第2次安倍晋三政権で創設された内閣人事局のシステムをうまく使った。もともと、内閣人事局の構想は、第1次安倍政権の時の公務員制度改革に盛り込まれていたものだ。それが、福田康夫政権での2008年の国家公務員制度改革基本法の成立につながった。
同法11条では、「政府は(中略)内閣官房に内閣人事局を置くものとし、このために必要な法制上の措置について(中略)この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする」と定めていた。
しかし、その後の民主党政権を経て、施行後6年となる14年、第2次安倍政権において内閣人事局は設置された。菅氏は、こうした経緯を熟知しており、人事によって官僚を巧みに管理している。
安倍政権で生まれた内閣人事局(右端は菅氏) |
官僚側からの意見が反映されているのだろうが、しばしば内閣人事局については、マスコミで批判的に取り上げられる。
内閣人事局のできる前は、各省で幹部人事が行われていた。各省には経験の浅い政治家大臣がいるだけで、幹部官僚の名前と顔を覚えるにも精いっぱいで、とても独自人事を行う余裕はなかった。
それが、内閣人事局で、官邸でのチェックが入ることで官僚の勝手な人事には一定の歯止めがかかった。どんな企業でも幹部人事は「各事業部」ではなく「本社中枢」が行うが、ようやく霞が関でもそれと同じ仕組みになったのだ。
これによって、都合のいい従来の「事業部」で人事を決める仕組みに安住していた官僚から不満が出て、それをマスコミは記事にしたのだろう。
一方、財務省も、官邸など政府内の重要ポストを握っており、他省庁に追随を許さない情報ネットワークを持っている。政治家なら誰しもそのネットワーク情報を入手したいはずだ。当然、菅氏もそれを承知しており、それを活用しないはずはない。その意味では、菅氏と財務省は共存関係だ。
財務省も先月の定例人事で、菅氏の秘書官だった矢野康治氏を主計局長に起用するなど、「菅内閣」を予見しているかのようだ。矢野氏は菅氏の信頼も厚いので、一定の影響力を行使できるだろう。
問題は、消費税に関する方向性だ。当面、減税しないという従来方針と思われる。
ただし、秋に衆院選が行われた場合、その方針は、世論次第によって変わりうるのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授)
【私の論評】菅官氏が総理になった場合、減税も公約として、解散総選挙となる確率はかなり高い(゚д゚)!
社会保障や、教育の無償化などの理由で消費税減税等は全く不可能にも見えます。
世間には様々な誤解があり、消費税増税がアベノミクスの一部であると理解している人も多いです。ところが、本来のアベノミクスの目的は、あくまでも消費を喚起、投資を喚起して取引を活発化する、企業にとっては売り上げを上げ、製造量も増やす、そういう積極的で前向きな、明るい将来展望を描けるような社会をつくろうというものです。
世間には様々な誤解があり、消費税増税がアベノミクスの一部であると理解している人も多いです。ところが、本来のアベノミクスの目的は、あくまでも消費を喚起、投資を喚起して取引を活発化する、企業にとっては売り上げを上げ、製造量も増やす、そういう積極的で前向きな、明るい将来展望を描けるような社会をつくろうというものです。
消費税の増税、特にデフレから脱却する途中で増税をしてしまうと、将来に対する明るい希望が萎えてしまいます。ですから、アベノミクスと消費税増税はもともと対立する運命にありました。
この対立する消費税をどうするかという問題は、もともと運命的に仕組まれたものだったのです。しかし、最終的には財務官僚と自民党によってがんじがらめに構築された政治体制に抗えないということで、2014年に8%に上がったのです。それはいまでも続いているわけで、菅官房長官がアベノミクスを継承すると語っていますが、本来アベノミクスに消費税の増税は含まれておらず、本来は消費税減税を主張すべきです。
現在コロナ禍で、経済が落ち込み今年(2020年)の第2四半期、4~6月期でGDP年率換算を28.1%%も落としています。これはリーマンショックの直後よりも、はるかに深刻です。
2019年10月に消費税を増税したとき、「リーマンショック級のショックがあれば増税はしない」と、安倍首相をはじめ政権の多くの方が語っていました。ですから、消費税は1度元に戻すべきです。少なくとも8%にはすべきです。
さらに8%だと軽減税率の品目については変わらないので、低所得者にも恩恵が及ぶという意味で、時限的に5%に減税すべきです。それによって経済を成長させ、経済の規模を大きくすべきです。
それが現在の最優先課題であって、財政の健全化ではありません。財政のことを考えるのはその後で、まずは経済を大きくするべきです。優先順位を間違えると、アベノミクスは必ず失敗します。
まずは積極的な財政出動、大規模な金融緩和と、1本目の矢、2本目の矢をもう1回放って行く。そのために消費税減税は欠かせません。
その場合は、早々に減税とは言わないのかもしれません。やはり効果からすると、従来路線を引き継ぐと言って、最後の最後で決断されるした、方が、国民に対するインパクトは大きいです。
ですから、菅氏が減税に現在消極的な発言をしているかといって、絶対に減税はないと決めつけてしまうのは早計です。
今回の総裁選挙は任期途中の辞任に伴うものであるため、新総裁の任期は安倍の残任期間である2021年9月までとなります。あと1年後には新総理の任期がせまっていることから、どこかで解散を総選挙となるのは確実とみるべきです。
安倍総理も、2回も増税を延期しました。それならば、なぜ昨年の10月に増税したのかと言いたくなりますが、様々な事情があったのでしょう。特に、幼児教育の無償化は安倍総理の目玉政策でしたので、その財源として国債を財源にするのが当然なのですが、財務官僚の凄まじい抵抗が予想されたので、消費税を財源ということになったのだと思います。
昨年の9月あたりには、「もりかけ」問題等で、内閣支持率がかなり下がっていましたし、ここで消費税増税見送りを公約し解散総選挙を実施して財務省に対峙するのは得策ではないと考えた安倍総理は、増税見送りを断念せざるを得なかったのでしょう。
安倍総理が辞任を公表した後には、支持率が上がっています。菅氏が新総理になった場合、この内閣支持率はあまり変わらないと考えられます。
安倍内閣の支持率はは各メディアの世論調査でも急上昇しています。安倍内閣の最終支持率はJNN世論調査では、62.4%と史上最高になりました。 自民党の支持率も上昇している一方、野党の支持率は総じて低下しています。もうネット時代に突入した現代では、マスコミの印象操作は通じなくなりつつあるようです。
安倍一次内閣が崩壊(2007年)したときには、安倍氏の辞任をさんざん揶揄したマスコミは、現在ではそのようなことはできないようです。当時もインターネットがありましたが、SNSは今日のように興隆していませんでした。そのようなことをすれば、たちまち、ネットで袋叩きに合う昨今です。その面では、日本は転換点を迎えつつあるようです。
あのトヨタですら、テレビCMはやめようかと模索しています。これに対して批判するむきもあるようですが、トヨタが成功すれば、他の企業も追随する可能性があります。印象操作で、減税阻止をするとか、改憲論議を阻止、安保問題の論議を阻止するということは、不可能になりつつあります。マスコミもそのことにはやく気づくべきです。
マスコミの印象操作が効果をもたなくありつつあることと、この高い支持率を背景として、基本的には安倍路線を踏襲することとその中には、消費税減税も含むこととと、菅氏の独自の政策もあわせて公約として、解散総選挙を実施することになる可能性はかなり高いです。
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