2020年11月27日金曜日

中国の挑戦に超党派で立ち向かう米国―【私の論評】中国共産党の敵は共和党であって、民主党ではない(゚д゚)!

中国の挑戦に超党派で立ち向かう米国

岡崎研究所

 11月9日付のフォーリン・ポリシーで、新アメリカ安全保障センターのジョーダン・シュナイダーとコビー・ゴールドバーグが、米国は新大統領の下、中国に対する政策に関しては、民主、共和両党が協力して励むであろう、と論じている。



 シュナイダー他の論説は、米国では民主、共和両党の対立が激しくなるだろうが、ことさら中国に関しては一致するであろう、特に中国の挑戦に対し、研究開発の推進でそうであろうと述べている。

 米国は、歴史的に、挑戦されると底力を発揮する。

 1957年10月にソ連が世界初の人工衛星、スプートニク1号の打ち上げに成功すると、後れを取った米国は、まず1958年に人工衛星エクスプローラー1号を打ち上げたのち、1961年から1972年にかけてアポロ計画を実施し、1969年7月にアポロ11号が初めて月面に着陸した。その後、合計6回の月面着陸に成功し、宇宙開発でソ連を大きく引き離した。

 1980年代、米国の産業の競争力は日本の追い上げにあって弱まり、テレビなどの民生用電子機器、工作機械、半導体、半導体製造装置などで日本に後れを取った。米国の産業界、学界のリーダーなどが組織した「競争力評議会」が1987年に「アメリカ競争力の危機」と題するリポートを発表した。その中では、米国経済が日本から受けている挑戦がいかに厳しいものであるかを述べている。

 その後の推移は周知の事実である。日本でバブルがはじけたということもあったが、米国は、マイクロソフトを始めデジタル技術を中心に技術革新を図り、1990年代以降世界をリードする技術大国に復活した。

 現在、米国が中国から産業技術面でも挑戦を受けていることは間違いない。特に「中国製造2025」には危機感を持ったようである。米国は「中国製造2025」に関して、中国政府が介入しすぎていると批判しているが、先端技術で中国が本気で米国に追いつき追い越そうとしているとの危機感を持ったのは疑いない。

 そこで、シュナイダー他の論説にあるように、超党派で研究開発に大量の資金をつぎ込む努力をしている。これまでの例から察すると、今回も中国の挑戦に対し、米国が本気で立ち向かおうとしているので、底力を発揮する可能性が高いと思われる。

 研究開発以外でも、中国問題で民主、共和両党が協力できるだろうという分野が人権と国際機関への関与である。論説でも指摘されているように、新疆ウイグルや香港で人権弾圧にあっている人々への特別なビザ計画に関する法案が、民主党議員からも共和党議員からも提出されている。国際機関への関与はもともと民主党の得意とする政策だが、共和党スタッフが述べるように、中国は国連の専門機関のトップに積極的に中国人を送ってきている。それに西側諸国も対応しなければならないとの認識が米国内にあるようである。

【私の論評】中国共産党の敵は共和党であって、民主党ではない(゚д゚)!

これから、トランプ氏が大統領に再選されるのか、あるいはバイデンになるのか、まだはっきりしませんが、いずれになったにしても、米国は上の記事のように超党派で中国と対峙するのでしょうか。

8月10日、傲慢な表情とふて腐れた歩き方で、中国共産党を体現しているかのうような趙立堅報道官が、トランプ政権が香港政庁トップら11人に制裁を科したことへの対抗措置として「香港問題で言語道断な振る舞いをした」11人の米国人を制裁対象にしたと発表しました。

ちなみに、趙立堅の娘は米国の大学に入学しており、中国国内では「本当は米国が好きなのに、仕事だから反米をしているだけのか」と揶揄されているそうです。

趙立堅報道官

ただし、制裁とはいっても、中国による制裁は形ばかりのもので、意味をなさないのは明らかです。

なにしろ、中国国内の銀行等に大金を預ける米国人はいないですし、ドルは世界の基軸通貨であり、ドルがないといずれの国も貿易ができないというのが実情であり、その他あげるときりがないくらい、中国よりも米国は有利な点があり米国の対中国制裁は、中国人にとってかなりの脅威ですが、中国による米国人への制裁はあまり意味を持ちません。

中国に入国できなくても、大方の米国人にとっては、さほどの不都合はありません。別に中国にいかなくても、美味しい中華料理が食べられます。そのため、中国の米国人に対する制裁など実質的に意味を持たないのですが、ただ「香港問題で言語道断な振る舞いをした」11人の米国人の顔ぶれが面白いです。

11人の内訳は議員6人と国際人権団体の代表者5人です。この議員の顔ぶれが興味深いのです。列挙すれば、マルコ・ルビオ(1971年生)、テッド・クルーズ(1970年生)、トム・コットン(1977年生)、ジョシュ・ホーリー(1979年生)、パット・トゥーミー(1961年生)各上院議員とクリス・スミス下院議員(1953年生)。何と全員が共和党所属で、民主党は1人も入っていないのです。

マルコ・ルビオ上院議員

これは、香港問題に関する制裁対象者の名簿ですから、香港問題以上に枠を広げれば、もちろん民主党の議員の中にも対中国強硬派存在します。

ただし、これに先立つ7月には、トランプ政権が、新疆ウイグル自治区の中共幹部4人に制裁を科したことへの報復として、中共側も4人の米国政治家を入国禁止としました。列挙すれば、常連のルビオ、クルーズ、スミスに、政府の一員であるサム・ブラウンバック「国際宗教の自由」大使(1956年生。元上院議員、元カンザス州知事)。これもやはり全員共和党です。

この1年間に米国で成立した香港、ウイグルに関する対中制裁法案はいずれもルビオとクルーズが主導しました。無論、法案を提出するときには、民主党の議員も名を連ねてはいました。これは、議会で超党派で法律を成立させるための、手立てであると考えられます。主導したのは、共和党です。

またリストには名前がなく本人は心外かもしれませんが、中国スパイの摘発強化を議会で主導してきたロブ・ポートマン上院議員(1955年生。上院国土安全捜査小委員長)もやはり共和党です。

私自信は、twitterなどのSNSで野党の大物議員から、特に直接批判したこともないにもかかわらず、ブロックされているのを発見すると、何やら誇らしく嬉しい気持ちになり周囲に吹聴したりすることもありますが、米国議員も中国から制裁というと、実害もないので、これに近いような気持ちになるのではないかと思います。

ちなみに、ブラウンバックは、最も早い段階から日本人拉致問題に尽力してくれた上院議員(当時)で、スミスも、横田早紀江さんが下院外交委員会で証言した時の共同議長でしたた。人権に関する彼らの姿勢は一貫しています。

サム・ブラウンバック

トランプ氏は、大統領権限を拡大解釈して中国に関税戦争を仕掛け、台湾との関係も加速度的に強化してきました。米国の対中強硬姿勢は、共和党政権であれ民主党政権であれ変わらないと言う評論家が少なくないのですが、その楽観の根拠を示してほしいところです。中共は、ホワイトハウス、議会とも民主党が押さえることを切望しているはずです。

トランプ氏は、安全保障や人権にはさほど関心が強い方ではないです。しかし経済取引の分野については歴代大統領中、知識、経験とも自分がナンバーワンという強い自負を持っているでしょう。その分野で中共にコケにされることは絶対に許せません。

独裁体制である以上、習近平が一言命じれば、知財窃盗、テクノロジーの強制移転など数々の不正を明日にも根絶できるはずで、それをしないのは自分をコケにしているからだ、というのがトランプ氏の、今や確信と化した解釈のようです。中共が不当行為をやめない限り、トランプは対中締め付けに邁進するでしょう。

バイデン氏には、中国に関してそのような強い意識はありません。安全保障、人権、経済すべてにおいて一応立派な演説はするのですが、決断力、実行力が伴わない政治人生を送ってきました。オバマも、副大統領バイデンの優柔不断に辟易し、何ら重要な役割を与えませんでした。

バイデン氏はある批評家の「ジュージュー焼き音は聞こえるが、ステーキが出てこない」というバイデン評を、バイデン自身、至言として回顧録で引用しています。本人は、今はその弱点を克服し、ステーキを出せると言いたいのかもしれませんが、逆に認知症の進行が取りざたされる中、焼き音すらかすれがちになってきています。

バイデンが副大統領候補に指名したカマラ・ハリス上院議員も、対中制裁法や非難決議に関して、議会で何ら積極的役割を果たしていません。検事出身ですが、著書(2019年)で自らの最大業績と誇るのはLGBTQ(性的マイノリティ)の権利拡大に尽力したことで、国際問題に関しての成果といえるものは記述自体が何もありません。

というより、地球温暖化こそ人類にとっての最大脅威で、それへの対処が最大の国際問題と主張する民主党議員の1人です。この立場からは、中共は「敵」ではなく、同じ目標に向かって協力し合うべきパートナーという位置づけになります。

中国対策で民主党の代表格となった元通信会社幹部のマーク・ワーナー上院議員(民主党、ヴァージニア州選出)は昨年のスピーチで、5G技術、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの分野において、中国の技術規格の国際標準化を目指す中国の計画は「世界支配」を目指す計画の一環だと警告していますが、彼も民主党内では影が薄いです。ルビオ議員のように島内を主導する立場ではありません。

冷戦期にはスクープ・ジャクソン上院議員のような指導的な対ソ強硬派が民主党にもいましたが、現在、一貫性と行動力を伴った対中強硬派は共和党に偏っています。年齢的にも、40代前半(コットン、ホーリー)から60代後半(スミス)まで幅広く、層が厚いです。

日本としては、米国議会は共和党が主流になったほうが良いです。

日本の自民党にも米共和党を見習ってほしいところですが、現状は民主党に近いのではないでしょうか。ルビオ、クルーズは50歳になるかならないかの年齢で、すでに主導的地位を確立しています。自民党の若手の奮起を強く促したいところです。

中国側からすると、中国の敵はやはり共和党なのです。民主党は地球温暖化で協力できるパートナーなのです。中間選挙では、米国共和党が勝って、主流派になっていただきたいものです。


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