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高橋洋一 日本の解き方これまでも、中国とロシアの艦艇はそれぞれ津軽海峡を通過していた。中には、通常の通過通航とは言い難い、情報収集活動をしているとおぼしき船もあった。しかし、今回、中国とロシアの艦艇が津軽海峡を通過したのは軍事演習にも準じるものなので、日本としては看過できない事態だ。
中国の言い分としては、米艦隊が台湾海峡に来るのと同じだというものだ。
だが、台湾海峡は広く、中国の領海と台湾の領海が交わるところはない。その意味で、公海であるから米国に限らずどこの国の艦隊が通過通航しても、潜水艦が潜っても、航空機が飛んでも何の問題もない。
一方、津軽海峡は狭いところの幅は20キロもない。領海は海岸から12カイリ(約22キロ)なので、津軽海峡は日本の「領海」であると素人目にも思える。その「領海」内を堂々と、他国の艦隊が通過通航することがそもそもおかしいというのが素人の感覚だ。
しかし、津軽海峡は国際海峡とされ、軍民を問わず艦艇、潜水艦、航空機も通過通航権が認められている。その国内法の根拠となっているのが領海法で、津軽海峡は「特定地域」に指定されている。
その建前は、「国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を保障」とされているが、実際のところ、米艦艇などが核兵器を保有して通過通航するので、日本の非核三原則の一つ「持ち込ませず」に反することを回避する措置とみるのが常識だ。
この非核三原則のうち「持ち込ませず」くらい馬鹿げたものはない。日本に帰港する米艦艇がどこかで核兵器を下ろすはずないからだ。「持ち込ませず」がこれまでも空文化しているのは、現実的な国民はみんな分かっていて、無意味な建前を言っているだけだ。この意味で、この議論は「お花畑」とほとんど変わりはない。
その結果、津軽海峡を国際海峡としているのは日本の国益を損なう。
なお、特定海峡には、津軽海峡のほか宗谷海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道および大隅海峡が指定されている。宗谷海峡はロシア、対馬海峡西水道は韓国と向かい合うが、それ以外の3海峡は日本の領土に囲まれているので、領海としないのはそもそもおかしい。
こうした政府の決定は、40年以上前に行われたが、今や時代や国際情勢は大きく変わっている。
非核三原則は法律でもないので、不合理なものは一刻も早く見直して、津軽海峡などの特定地域指定についても変更すべきだ。その場合、領海内の無害通航の範囲で外国艦艇に対処したらいい。そうなれば、もちろん今回の軍事演習のような行為は国際法上認められなくなるのはいうまでもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
無害通航の近代的制度は19世紀になって(国際法として)成立したといわれますが、通過通航の概念は比較的新しい考え方です。国連海洋法条約の制定によって、それ以前は(主に)3海里とされていた領海幅が12海里に拡張されるに伴い、それまで公海部分を自由通航すればよかった多くの国際海峡が沿岸国の領海となることがわかりました。
そこで先進諸国の主張を入れて、(公海と公海を結ぶ)国際海峡は全ての船舶および航空機に通過通航権(国連海洋法条約38条)を認めることになったのです。
大隅海峡、対馬海峡、津軽海峡などは、国際海峡ではなく、わが国独特の「特定海域」として国際社会に通告しています。これらは日本の領海内の海峡であり、もしここに通過通航権を設定するとなるといろいろと難しいことが想定されます。
軍艦も一般の商船と同様にこの無害通航権を行使することができるかどうかということについては争いがあります。欧米の海洋先進国は、無害通航権は船種の違いを根拠に否認されることはないと主張しているのに対して、軍艦の通航は当然に無害とみなすことはできず、その領海通航については、事前の通告を行わせるか、または事前の許可を求めさせると主張する国は少なくないです。
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その建前は、「国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を保障」とされているが、実際のところ、米艦艇などが核兵器を保有して通過通航するので、日本の非核三原則の一つ「持ち込ませず」に反することを回避する措置とみるのが常識だ。
この非核三原則のうち「持ち込ませず」くらい馬鹿げたものはない。日本に帰港する米艦艇がどこかで核兵器を下ろすはずないからだ。「持ち込ませず」がこれまでも空文化しているのは、現実的な国民はみんな分かっていて、無意味な建前を言っているだけだ。この意味で、この議論は「お花畑」とほとんど変わりはない。
その結果、津軽海峡を国際海峡としているのは日本の国益を損なう。
なお、特定海峡には、津軽海峡のほか宗谷海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道および大隅海峡が指定されている。宗谷海峡はロシア、対馬海峡西水道は韓国と向かい合うが、それ以外の3海峡は日本の領土に囲まれているので、領海としないのはそもそもおかしい。
こうした政府の決定は、40年以上前に行われたが、今や時代や国際情勢は大きく変わっている。
非核三原則は法律でもないので、不合理なものは一刻も早く見直して、津軽海峡などの特定地域指定についても変更すべきだ。その場合、領海内の無害通航の範囲で外国艦艇に対処したらいい。そうなれば、もちろん今回の軍事演習のような行為は国際法上認められなくなるのはいうまでもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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津軽海峡を通過する中露艦隊 |
今回の中国・ロシア艦隊の通航を背景として、上記のように「特定海域を廃止し、全て領海に含めてしまうべき」という主張も見られます。
そうなると国際海峡の船舶の通航は無害通航しか認められず、航空機の公海上空飛行はできなくなってしまいます。
そこで先進諸国の主張を入れて、(公海と公海を結ぶ)国際海峡は全ての船舶および航空機に通過通航権(国連海洋法条約38条)を認めることになったのです。
例えば、核保有国である中国の(核兵器搭載の公算がある)軍艦が(領海である特定海域を)通過した場合、日本の国是である非核三原則に抵触することになり(その瞬間)非核三原則が崩れてしまいかねないです。無論米軍の軍艦が核兵器を積んで通過しても同じことです。
そこでわざわざこのような海峡に限って我が国政府独自の判断により領海幅3海里に縮めて公海部分を設け、自由航行ができるようにしたのです。
ただ、上の高橋洋一氏の主張するように、宗谷海峡はロシア、対馬海峡西水道は韓国と向かい合うのですがが、それ以外の3海峡は日本の領土に囲まれているので、領海としないのはそもそもおかしいです。
領海幅が12海里に拡張されたのですから、日本の領土で囲まれる、津軽海峡、大隅海峡、対馬海峡は領海にすべきです。この三海峡をわざわざ国際海峡のようにようにして扱う必要はないでしょう。通過通行権は、領海を除く国際海峡に適用されるものです。そうなると、外国の船は無害通航しかできなくなります。
国連海洋法条約の採択過程では、この問題をめぐって諸国の見解が対立したので、条約には、軍艦が無害通航権を有するかどうかを直接に規定した条文は置かれていないです。
また、今日では、地球環境保護の問題への関心が急速に高まっていることもあり、軍艦のほかに、核物質など危険で有害な物質を積載する船舶の領海通航が規制の対象となるかどうかが論議を集めるようになっています。
そのため、今後の各国の実行が大いに注目されています。日本は、1968年の国会において、核兵器積載艦船の領海通航は無害とはみなさないという立場を表明し、この立場に変更がないことは、96年の国連海洋法条約を批准する際の国会審議においても確認されています。
日本としては、「核三原則」は捨てても、この立場は堅持すべきです。ただし、米国など同盟国の艦艇や潜水艦、核兵器積載艦艇の通過は無害とみなし、中露などの艦艇や潜水艦や核兵器積載艦艇に関しては、有害とみなすようにすべきです。
これにより、今回の中露の軍事演習のような行為は国際的にも認められなくなります。
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