2022年6月14日火曜日

外交部「台湾海峡は国際水域」 中国の主張を非難―【私の論評】日本も台湾のように、中長距離ミサイルを開発・配備することが安全保証上の最大の課題(゚д゚)!

外交部「台湾海峡は国際水域」 中国の主張を非難

外交部(外務省)の欧江安(おうこうあん)報道官

 外交部(外務省)の欧江安(おうこうあん)報道官は14日の定例記者会見で、台湾海峡は国際水域だと強調し、中国の最近の主張は「誤った言論」だと厳正に非難した。

 13日付の米メディア、ブルームバーグは関係者の話として、中国軍当局者がここ数カ月、米当局者との会合で台湾海峡は国際水域ではないと繰り返し主張していると報じた。中国の外交部は同日、台湾海峡水域は両岸(台湾と中国)の海岸から海峡の中心線に向かって伸び、順に内水、領海、接続水域、排他的経済水域になっているとし、中国が台湾海峡の主権と管轄権を有していると主張した。

 欧氏は、台湾海峡は国際水域であり、中華民国台湾の領海範囲外の水域には全て国際法上の「公海自由の原則」が適用されると強調。中国政府は台湾の主張を無視し、国際法の規則を故意にねじ曲げ、台湾海峡を矮小化して中国の排他的経済水域と見なしていると指摘した上で、台湾を併呑しようとする中国の野心は明白だとし、外交部として受け入れられず、非難すると述べた。

【私の論評】日本も台湾のように、中長距離ミサイルを開発・配備することが安全保証上の最大の課題(゚д゚)!

台湾ではこの手の中国に対する発言は頻繁になされています。たとえば台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)は12日、台湾メディア主催のオンライン講演会で「われわれには北京を射程圏に収める雲峰ミサイルがある。中国が台湾を侵略する前によく考えてほしい」と発言した。中国が台湾の武力統一に踏み切った場合には北京を攻撃する可能性があることを強く示唆した形です。

台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)

游氏は陳水扁総統時代の2002年から05年に行政院長(首相)を務めました。行政院長時代から「雲峰ミサイルで北京をたたけると知っていたが、当時は言えなかった」とし、「今は量産している」と述べました。

台北から北京までの直線距離は約1800キロ。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が18年3月に発表した報告書には「台湾の軍は射程2千キロの雲峰ミサイルを配備している」との内容がありました。当時、台湾でミサイル開発などを担当する中山科学研究院はメディアの取材に対し、「秘密だ」として肯定も否定もしませんでした。

雲峰ミサイルの射程距離を表すチャート

游氏は「台湾人自身に戦う意思がなければ、どんなに良い武器があっても無駄だ」と指摘し、「ウクライナで起きている戦争は台湾人に多くのことを教えてくれた。侵略者と勇敢に戦うウクライナ人を見習いたい」とも話しました。

游氏の発言について、与党・民進党の関係者からは「よく言ってくれた」といった声が上がったが、最大野党・中国国民党のある関係者は「中国を無意味に刺激し軍事的緊張をつくっている」と批判しました。

雲峰ミサイルについては、このブログでもすでに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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台湾の防空識別圏に飛来したH6K爆撃機の同型機(上)。下は台湾のF-16戦闘機

これは昨年の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。

台湾は、長年かけて自主開発した中距離巡航ミサイル「雲峰」の量産を2019年から開始しています。アナリストによると、雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾南部の高雄から北京を納める距離です。

さらに、台湾は中長距離ミサイルの開発配備も視野に入れています。台湾の国防部(国防省)は25日、4年に1度となる国防計画の見直しを行い、立法院(国会)に報告しました。中国軍機が繰り返し台湾の防空識別圏に侵入するなど、軍事的圧力が強まっていることを踏まえ、長距離ミサイルを配備し、抑止力を強化する内容を盛り込みました。予備役など有事の際の動員強化も掲げました。

台湾当局は25日、1種類の長距離ミサイルの大量生産を開始したことを明らかにしました。これとは別に3種類の長距離ミサイルを開発していることも認めました。
さてこの記事には以下のようなことも記載しました。
台湾はミサイルによる防衛体制や、中近距離ミサイルによる抑止戦略について、あまり多くを語ってこなかったのですが、今回は異例の公表だといえます。しかしながら消息筋によると、現状でも、台湾側は中近距離ミサイルによって、中国本土の三峡ダムを破壊することを含め、抑止体制を十分に整え終わってるとされています。

三峡ダム
これについては、中国の軍事情報サイト「捷訊網」は21日、米国や台湾と戦争の事態になった場合、三峡ダムがミサイル攻撃を受け破壊された場合には、戦争に必要な軍部隊も水に飲まれ、民間人の被害は数億人にのぼると紹介しています。

三峡ダムが決壊すると、中国では大洪水か発生し国土の40%近くが洪水に見舞われるとされています。この雲峰ミサイルは北京にも到達するわけですから、これより近い三峡ダムにも確実に届きます。

もし、三峡ダムが台湾の中長距離ミサイルによって飽和攻撃を受けた場合、中国はこれを防ぐことはできず、三峡ダムは破壊されます。そうなれば、中国もかなりの打撃を被ることになります。

核を使うまでもなく、中国にはこのような脆弱なポイントは他にも多数あります。

日本では、防衛当局の発表と複数の報道によると、北朝鮮と中国からの脅威の高まりを踏まえ、日本防衛省は2022年も引き続き国内防衛産業の基盤強化を加速していく予定です。この基盤強化は防衛装備の国内生産の増加を目的としています。

防衛省が優先している開発中の先進装備には、ステルス戦闘機ジェット、長距離巡航ミサイル、無人戦闘航空機(ドローン)、極超音速兵器が挙げられます。こうした状況の中、今年防衛省の外局に新設される予定の事務所が防衛産業支援などの中核的機能を果たしていくことになります。

岸信夫防衛相は2021年12月28日に開かれた年末の記者会見で、「厳しさを増す安保環境や技術革新の急速な進展などの状況を踏まえれば、日本の防衛を全うするためには防衛産業・技術基盤の維持・強化への重点的な取り組みが必要不可欠である」と述べています。

日本の場合、中露に対抗する措置としては、潜水艦22隻体制を整え、専守防衛的な構えはある程度できているといえます。世界的にみても、かなり高い水準に達しています。このあたりは、岸防衛大臣あたりが、わかりやすく多くの人たちに啓蒙すべきと思います。

日本は、中国と比較するとASW(Anti Submarine Warfare:対潜水艦戦闘力)が格段に優れています。特に対潜哨戒力においては、中国海軍はかなり劣っており、日本のステルス性(静寂性)に優れた潜水艦を探知するのは難しいです。

一方日本は対潜哨戒力に優れており、中国の潜水艦はステルス性に劣るため、日本にとっては中国の潜水艦を探知すことはかなり容易です。

そうなると、仮に中国海軍が日本に侵攻しようとして、兵を送った場合、ほとんどの艦艇は撃沈されてしまうことになります。それでも、仮に中国海軍が日本に上陸部隊を上陸させることができても、日本の潜水艦隊に阻まれ、上陸部隊に対する補給ができなくなり、上陸部隊はお手上げになります。

このように日本は、専守防衛的な防衛では、ある程度は守備を固めたといえます。台湾は自前で潜水艦を建造中ですが、それまでの間は日米が台湾を潜水艦隊で防衛すべきでしょう。なぜなら、それが最も効果的に中国軍に攻撃できて、日米とも被害が少くとすむからです。

そうではなくて、潜水艦抜きで空母打撃群、海兵隊、航空機、水上艦艇だけで現代海戦に対処しようとすれば、中国にわざわざ付け入る隙を与え、日米両軍も甚大な被害を被ることになるからです。現在では、海戦の主役は潜水艦であり、それを否定するような考え方をするのは時代遅れであり、それは習近平などの夢想家だけでたくさんです。

ただ、日本の防衛にも不安な点はあります。それは、日本は台湾のように中長距離ミサイルがないため、中国軍が中長距離ミサイルで攻撃したとしても、中国のミサイル基地を叩いたり報復攻撃ができません。

そうなるとどのようなことが予想されるかといえば、たとえ中国海軍を崩壊させ、中国軍に日本の領土・領海に侵入することを防ぐことができ、日本の独立を保つことができたにしても、日本国土は中国の中長距離ミサイルで破壊放題ということになりかねません。それこそ、日本中がウクライナのマウリポリのようになってしまうかもしれません。

日本としては、敵基地攻撃能力を持つのは当然のこととして、台湾のように中長距離ミサイルを開発すべきです。

そうすることにより、日本を本当に守ることができます。そのための法律的な手だてをすることと、中長距離ミサイルの開発が日本にとっての喫緊の課題だといえます。専守防衛に傾きすぎている日本の安全保障は是正されなければなりません。専守防衛だけでは、国土が蹂躙されることをウクライナ戦争が教えてくれたと思います。

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