2022年6月10日金曜日

台湾問題で米中激突!国防相が初の対面会談  バイデン政権、新たな武器売却で強い姿勢も…「習氏の“3期目”見据え問題起こしたくない」中国―【私の論評】地経学的臨戦態勢にある米中で実は、軍事トップ同士の会談は大きな意味はない(゚д゚)!

台湾問題で米中激突!国防相が初の対面会談  バイデン政権、新たな武器売却で強い姿勢も…「習氏の“3期目”見据え問題起こしたくない」中国

ロイド・オースティン米国防長官

 ロイド・オースティン米国防長官と、中国の魏鳳和国務委員兼国防相が、シンガポールで開幕するアジア安全保障会議(10~12日)に合わせて、初めての対面会談を行う。世界の安全保障環境が複雑さを増すなか、最大の焦点は「台湾問題」とみられる。軍事的覇権拡大を進める中国に対し、ジョー・バイデン政権は会談直前、台湾に新たな武器売却を通知して強い姿勢を見せた。

 「遠くない将来に会うことを楽しみにしている」

 オースティン氏は5月の議会証言で、魏氏との会談にこう意欲を見せていた。会談では、米中対立や台湾問題、南シナ海の緊張、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮による核・ミサイル開発など、多くの論点で応酬が激化しそうだ。

魏鳳和国務委員兼国防相

 米政府高官は「われわれの立場からすれば、会談は地域的、世界的な問題における競争の管理に焦点が当てられると見込んでいる」と述べた。ロイター通信が報じた。

 台湾問題では、バイデン大統領は5月の来日時、台湾への軍事的関与について記者に聞かれて、「イエス(当然だ)」「それが、われわれのコミットメント(約束)だ」と語っている。米国の「あいまい戦略」の転換とも受け止められた。

 さらに、台湾外交部(外務省)は9日、米政府が海軍艦船の付属部品と関連する技術支援など、総額1億2000万ドル(約160億円)相当分を売却すると台湾政府側に通知したと発表した。バイデン政権下での武器売却は4度目となる。

 今回の米中国防相会談をどう見るか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国はこれまで通り、強い言葉で米国を牽制(けんせい)するだろうが、実際は何もできない。(ロシアのウクライナ侵攻を受けて)中国の台湾統一(台湾侵攻)に国際社会の同意が得られるはずがない。自由主義陣営は着々と連携を強めている。中国の習近平国家主席も『3期目政権』を見据えて、秋の党大会まで問題を起こしたくないというのが本音だろう」と指摘した。

【私の論評】地経学的臨戦態勢にある米中で実は、軍事トップ同士の会談は大きな意味はない(゚д゚)!

上の記事にもある通り、台湾国防部(国防省)は9日、米政府が台湾に対し海軍艦艇の部品などの売却を決めたと報道資料で明らかにしました。売却額は1億2000万米ドル(約160億6600万円)。中国軍の航空機や艦艇が台湾周辺での活動を活発化させていることから、米国が売却に同意したといいます。

同部によると、売却計画は米議会に通知され、1カ月後に発効する見通しです。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官は9日、報道資料で心からの謝意を表明。バイデン米政権発足以来4度目で、今年に入ってからは3度目の武器売却の発表となったことに言及し、米政府の台湾の国防における需要に対する重視の表れである上、台米間の強い協力関係を示し、台湾の自衛力向上に寄与すると歓迎しました。

国防部(国防省)は9日、米政府が台湾に対し海軍艦艇の部品などの売却を決めたと報道資料で明らかにした。売却額は1億2000万米ドル(約160億6600万円)。中国軍の航空機や艦艇が台湾周辺での活動を活発化させていることから、米国が売却に同意したといいます。

同部によると、売却計画は米議会に通知され、1カ月後に発効する見通しです。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官は9日、報道資料で心からの謝意を表明。バイデン米政権発足以来4度目で、今年に入ってからは3度目の武器売却の発表となったことに言及し、米政府の台湾の国防における需要に対する重視の表れである上、台米間の強い協力関係を示し、台湾の自衛力向上に寄与すると歓迎しました。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官

オースティン米国防長官は10日、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)出席のため訪れたシンガポールで、中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相と会談しました。台湾問題やロシアのウクライナ侵攻などについて協議。ロイター通信によると、オースティン氏は台湾を不安定化させる行動を控え、ロシアを支援しないよう魏氏に要求しました。

中国メディアによると、魏氏は「『一つの中国』原則は中国と米国の関係の政治的な基礎」と強調。米国が進めている台湾への武器売却が「中国の主権と安全の利益を深刻に損なう」と非難しました。

両者の対面での会談は、昨年1月のバイデン米政権発足以来初めてです。米側によると、中国が会談を申し入れたもようです。

米国は中国を「国際秩序を作り替える意思を持つ」(ブリンケン国務長官)と警戒する一方、対話も重視。中国は米主導で「対中包囲網」構築が進んでいることにいらだちを見せますが、緊張が高まることも望んでいません。会談では偶発的衝突を回避する方策も議論された可能性があります。

3年ぶり開催のアジア安保会議では、オースティン氏が11日、魏氏が12日に演説する予定。会期中に開かれる日米韓3カ国の防衛相会談では、7回目の核実験に踏み切る可能性が指摘される北朝鮮情勢について協議される見通しです。

実は米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域にあります。なぜなら、軍事的には中国はいまだ米国に対抗できる力がなく、外交戦略においては、中国に対峙しているのは、米国一国ではなく、すでにより広範な反中国同盟だからです。

軍事的には、米軍が攻撃型原潜を3隻程度台湾海峡に常駐させれば、中国は台湾に侵攻できません。なぜなら強力な米攻撃型原潜によって、台湾海峡の中国の艦艇をすべて撃沈できるからです。それは、米攻撃型原潜が桁違いに攻撃力が強いこと、さらに米軍はASW(Anti Submarine Warefare :対潜水艦戦闘)において、中国海軍に対して比較にならないほど強いからです。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜巨大さがよくわかる

米海大などがシミュレーションを行うときは、原潜を考慮に入れることはないです。これを入れてしまうと、ゲームそのものの目的(予算獲得など)を潰してしまうことになるからです。原潜だけでなく、総合的な海軍力でいえば、米国が圧倒的であることは疑いがないです。

このような事実を言ってしまえば、中国は台湾に軍事侵攻できないのは明白です。また、米海軍も予算を獲得しにくくなります。それに米国では未だ、空母打撃群信奉者が多いです。米海軍は正しく情報を開示しつつも、オバマ時代の緊縮で、航空母艦等の稼働率が劇的に低下するという危機的状況に陥りつつあるということを主張すべきでしょう。

稼働率の低下の最大の原因は、海軍工廠(こうしょう)と民間造船所を含んだアメリカ国内における造艦・メンテナンス能力の不足にあり、これはすぐに改善されるものではありません。これこそ米海軍の深刻な問題です。

ただこうした地味な内容よりも、原潜抜きで米中が戦うことを想定すれば、中国にもかなり勝てる見込みがでてきて、白いので耳目を惹きつけることができ、なんと言っても予算獲得のためには、効果的です。

ただし原潜が闘うことを前提とすれば、中国軍が台湾に多数の人民解放軍を上陸させることができたにしても、米国が台湾を攻撃型原潜で包囲すれば、人民解放軍はこの包囲を解くことができず、上陸した部隊は補給が途切れてお手上げ状態になります。

それに現在では海中の巨大武器庫と化した、米攻撃型原潜は、魚雷はもとより巡航・対艦・対空ミサイルを多数搭載し、ありとあらゆる強力な攻撃が可能です。ある意味では、水中の空母のようものです。

そんなことは、米中双方ともわかっていることですが、米国としては最近ではプーチンが常軌を逸して、最初から不可能に近いウクライナ侵攻に踏み切ったということもあり、牽制のために台湾に武器を供与したりしているわけですが、海軍力で米軍が中国軍よりも圧倒的に強いという事実は変わりません。

プーチンとしては、GDPが中国の1/10であり、今や韓国を若干下回るような規模では、中国のように米国やEUに対して「地政学的戦い」を挑むことはできないので、無謀な軍事的侵攻をせざるを得なかったかもしれません。それにしても、あまりに無鉄砲でした。

それに中国側からみれば、米軍が偶発的にでも中国を攻撃すれば、通常兵器では中国軍には太刀打ちできないことは最初からわきりきっていますし、それを挽回するには中国は核兵器に頼らざるを得なくなることが予め予想され、それこそ核戦争にエスカレートしかねないので、それは避けたいのです。

だからこそ、米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域であり地政学的な戦いになるのです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

トランプは2018年3月に鉄鋼25%、アルミニウム10%、さらに中国からの輸入品600億ドル分にも追加関税をかけると発表した。そして7月から9月にかけて2500億ドル分の中国製品に追加関税をかけたのです。

これらの措置は中国経済に大きなダメージを与えました。この関税戦争は、2020年1月に、トランプ大統領と中国の劉鶴(りゅうかく)副首相が合意書を交わすことで一応の収束をみたのですが、地経学的臨戦態勢は続いています。バイデン政権になっても、トランプ時代におこなった中国への追加関税は維持されたままなのです。

そうして、今回の米中の軍トップの会談は、米中の地政学的戦争にはあまり関係はありません。せいぜい、米国も中国も勘違いして、偶発的衝突を回避するための話し合いということではは意味があったとは思いますか。

米中軍事トップの会談など、地政学的戦いには大きな意味はもちません。

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