2022年6月7日火曜日

岸田内閣の支持率が高い理由 論争なくマスコミも批判せず…参院選後に「緊縮」の嫌な予感―【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

日本の解き方

読売新聞の調査では内閣支持率64%、3回連続上昇


 各種世論調査で岸田文雄内閣が高い支持率を記録している。

 自民党の福田達夫総務会長は5月31日の記者会見で「傾向は各社あるが一番厳しくても50%、高いところは70%で正直あり得ないと思っている」「指導力や政策がどうこうでなく首相の人柄が大きい」と述べた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「安倍(晋三)政権は良くも悪くもいろいろなことをやって支持率も上下したが、リスクを取らず何もしないほうが支持率を一定に保てる」と分析した。

 岸田政権は、政治的な論争を避けるためか、問題となる案件について議論すらしない傾向がある。

 その一つが核の問題だ。ロシアのような核保有国が核を威嚇に使う時代となり、5大国が核を保有し他国は保有しないのを原則とする核不拡散体制が大きく揺らいでいる。

 そこで「核シェアリング(共有)」の議論もしていいはずだが、その議論すら封じてしまった。岸田首相は、核を使用された広島出身であることを理由としたが、二度と核を使用されないためにも、日本こそ議論する資格があるにも関わらずだ。財務省でよくいわれる「雉も鳴かずば撃たれまい」という戦略にみえる。

 野党も巻き込んだ争点がないので、マスコミは岸田政権を批判しない。もともと左派色のある岸田政権なので、左派系メディアは批判しにくい。一方で、岸田政権に近いメディアも当然、批判しない。首相の個人的なスキャンダルもなく、マスコミの出番はなくなっている。

 そうしたなかで外遊や各国首脳との会談でメディアへの露出は多いことが、政権の高い支持率につながっている。

 これを裏付けるデータもある。安倍政権とその後の菅義偉政権は若者の支持率が高く、マスコミ報道に左右されやすい傾向がある高齢層の支持率が低かった。岸田政権はその逆だ。岸田政権は、マスコミで批判がなく露出度が高いので、高齢層ほど支持率が高いという見方ができる。まさに、政策より人柄のなせるものだろう。

 これだけ政権支持率が高く、いわゆる青木率(政権支持率+自民党支持率)は100を超える勢いなので、7月に実施される参院選はかなりの確率で勝てるだろう。野党のふがいなさもあって、岸田政権は今のところ楽勝ムードだ。自民党は緩んではいけないと引き締めに躍起になっているほどだ。

 問題は、参院選後、大きな国政選挙がない「黄金の3年間」で何か仕掛けてくるか、これまで通り何もしないのかだ。

 筆者の嫌な予感だが、何か仕掛けてくるとすれば、「安倍・菅政権で緩んだ財政を立て直す」という理由で、コロナ増税など緊縮措置を行うことが考えられる。来年の日銀総裁人事でも「緊縮派」を持ってくるかもしれない。

 逆に世間の反発を恐れて選挙後も何もしないという場合、日本に本当に必要な改革も進まなくなるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

財務省管理内閣ともいわれて揶揄されている、岸田政権ですが、参院選後の「黄金の3年間」で、確かに増税を仕掛けてくるかもしれません。

ただ、現実にはそう簡単ではないでしょう。岸田政権には安倍政権にはなかった良い点もあります。安倍菅政権ならメディアと野党にぶっ叩かれてなかなか進まなかった案件が進んでいます。


原発再開、憲法改正、防衛費拡大、安倍政権なら蜂の巣を突いた状態で、官邸前で大騒ぎして反対する人たちが大勢いました。岸田政権ではそのようなことはありません。やはり安倍総理にはファンも多かったものの、アンチファンも多かったのでしょう。とにかく、やることなすこと、些細なことでも話題となりました。

一方岸田首相は確たる信念もないようですから、叩けば転びます。叩いて動かせば良いのです。

そうして、叩いて動かす急先鋒が安倍元総理といえるかもしれません。最近安倍晋三元首相のメディア露出が際立っています。

保守系月刊誌の「正論」「月刊Hanada」「WiLL」の毎号にインタビューか、対談が掲載されています。テレビでは5月6日のBSフジの看板番組「プライムニュース」に生出演しました。

一方で、情報誌「選択」も安倍氏について毎月取り上げるが、こちらはほとんどがこき下ろす記事です。

双方のタイトルを比較すると分かりやすいです。

▼正論(7月号)「いまこそ9条語るべき」(古森義久氏との対談)▼WiLL(6月号)「プーチンは力の信奉者」(北村滋氏との対談)▼Hanada(5月号)「私が会ったプーチンとゼレンスキー」(インタビュー)▼選択(6月号)「安倍晋三『妄言』と暴走の理由」(記事)―。

次は安倍氏の政治講演、参院選自民党候補の応援ですが、これがすごいです。

3月26日=北海道千歳市。4月2日=福岡市、3日=山口市、8日=福井市、17日=福島県郡山市、23日=那覇市。5月9日=大分市、15日=松山市、18日=福岡市、29日=富山市。6月1日=東京、といった状況です。

産経新聞(6月2日付朝刊)が「派閥領袖(りょうしゅう) 再び夜動く―参院選へ結束と探り合い」と報じたように、夕食のメンツもまた興味深いです。

5月19日、麻生太郎自民党副総裁、茂木敏充幹事長と東京・赤坂のうなぎ料理店「重箱」。この3人の会食は3月14日以来です。

5月31日、菅義偉前首相と東京・松濤のフランス料理店「シェ松尾」。それぞれ夫人同伴で、安倍氏お気に入りのフレンチ。

松濤のフランス料理店「シェ松尾」

6月1日、二階俊博元幹事長と都内ホテルのアンダーズ東京。安倍派の西村康稔前経済再生相、稲田朋美元政調会長、二階派の林幹雄元幹事長代理、武田良太元総務相が同席。この会食が最も生臭いです。

大型連休中の安倍氏はゴルフ三昧でした。〝コロナ明け〟ということでしょうか、河口湖の別荘に首相秘書官経験者、友人を夫人ともども招き、バーベキューとゴルフを楽しみました。

男子ツアー「フジサンケイクラシック」の競技会場である富士桜カントリー倶楽部、富士ゴルフコースなどで4ラウンドプレーしたといいます。

側聞したところでは、ハーフで50を切った日の夜は、富士吉田市の焼き肉屋まで出向いて大いに食べ、飲んだといいます。要するに、最近は元気いっぱいなのです。

岸田文雄首相に政策上の注文は少なくないはずですが、この露出の意図するところはただ一つ。参院選後の内閣改造・党役員人事です。「最大派閥を忘れるな」ということです。


このようにして、安倍元総理は、岸田首相を叩くことができますから、かつて安倍氏が総理だったときに、二階派を人事でも政策でも一定の配慮をせざるを得なかったように、岸田総理も安倍派を配慮しないわけにはいきません。それも、安倍氏が二階氏を配慮した以上に配慮さぜるを得ないでしょう。

そうして、私達も岸田首相を叩くことはできます。もちろん、直接叩くことはできませんが、間接的に叩くことはできます。もちろん叩くというのは、本当に叩くとか、罵詈雑言を浴びせるということではありません。駆け引きなど、あらゆる手段をつかって、岸田政権の行動を変えることです。

ただし、原発を再稼働させたければ、原発反対派の自民党議員に対して、再稼働させるべきであると陳情すべきです。防衛費を2%にしたいなら、防衛費をあげることに反対している議員に陳情すべきです。積極財政をさせたいなら、緊縮派の議員に陳情して、積極財政の必要性を理解してもらうべきです。それも、できるだけ多数派で力のある議員にそうすべきです。そうして、最近ではツイッターでも陳情ができるようになり、陳情の敷居は従来から比較するとかなり敷居が低くなりました。これを利用しない手はありません。

民主党の政権交代で、野党が政権につけば、政治は官僚主導になることは多くの人が理解したと思います。これは最悪です。結局政権は何もできず、財務官僚の言いなりでした。当時のみななの党の代表渡辺喜美氏は、「野田政権は、財務省に頼らないと何もできない政権」と批判していました。実際、民主党政権は、増税をすることを確実にした他は、三年半重要なことは何も決められず、漂流していたといっても良い状況でした。

ただし、これは民主党政権に限らず、他の自民党以外の政党が政権の座についたとしてもほとんど変わらないでしょう。そもそも、他の政党では省庁とのパイプもなく、話しあいをしたり、コミュニケーションをはかるシステムがありません。その結果、官僚主導の政治にならざるをえないのです。だから、政権交代は官僚にとっては、大喜びすべきことなのです。

しかし、岸田政権であっても、自民党政権であれば、まだ相当ましです。安倍元総理や、まともなマクロ経済観を持った議員、外交や安保でもまともなセンスを持った議員も多いです。こういう人たちが、岸田氏を叩くとともに、私達も様々な議員に対して陳情することによって、こうした勢力に対して間接的にでもかなり応援できます。

このブログては、ロシアが変えたパランス・オブ・パワーについて述べたことがあります。日本の政治は、総理大臣や政権のみによって動くわけではありません。動く要素は多くありまずか、野党がそれに関われることはほとんどありません。

ましてや野党が政権与党になった場合、野党政権はほとんど力はなく、政治は官僚主導で動くことになります。自民党が政権与党である限り、自民党議員の派閥と、財務省などの官僚によるパランス・オブ・パワーで具体的な政策が決まり、実行されることになるのです。

この仕組には問題があります。特に、役人がバランス・オブ・パワーの一角をしめているのは大問題です。これは、いずれ是正されなければなりません。ただ、現在はそのような時ではありません。

現状では、日本はコロナ禍から立ち直っておらず、新たにウクライナ問題もあります。このような時期には変革よりも、既存のシステムにおいて、リアルに政治を変えていく地道な努力が求められます。この時期に構造改革のようなウルトラCをやろうとしてもうまくはいかないどころか、後退することになりかねません。

私自身は、保守であり、現実主義者です。その立場からすれば、いかなるウルトラC もすべきではなく過去に実証された確実な方法で着実に改革を実行すべきと思いますが、それにしても、「黄金の3年間」は、特に政権交代や、政治システムの大幅な改定などの毒薬、劇薬になりかねない事柄は実施すべきではないと思います。

良くしようとして、かえって破壊する後退するということはありがちなこどです。私はウルトラCはすべきではないと思いますが、どうしてもやりたければ、政治的、経済的、外交的にも安定した時に実施すべきものと思います。

ただし、すでに誰の目からみても明らかな、現時点での現実的な積極財政、安保の見直し、憲法の見直しなどは、現実的に着実に実行すべきと思います。パランス・オブ・パワーを保守派、積極財政に傾かせるように動くことが肝要だと思います。

大きな国政選挙がない「黄金の3年間」に私達がなすべきことは、これだと思います。

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