2022年10月15日土曜日

ノーベル賞のバーナンキ氏と「ヘリコプターマネー」の提言 リーマン・ショックやコロナ危機に活かされ アベノミクスの理論的基礎も―【私の論評】日本人は、バーナンキの理論を裏付け、ともに暗殺された高橋是清、安倍晋三の二人の偉業を称えるべき(゚д゚)!

日本の解き方

米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏

 今年のノーベル経済学賞に、米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏、シカゴ大学栄誉教授のダグラス・ダイヤモンド氏、ワシントン大学教授のフィリップ・ディビッグ氏の3人が選ばれた。

 バーナンキ氏の受賞理由は、1930年代の大恐慌の原因を探った研究成果、つまり銀行危機が大きな金融危機につながることが、その後のリーマン・ショックやコロナ・パンデミック(世界的大流行)時の政策運営でも生かされたというものだ。ダイヤモンド氏、ディビッグ氏は、社会にとって重要な銀行の危機時の脆弱(ぜいじゃく)性を示したことがバーナンキ氏の大恐慌研究に大いに関係しているとされている。

 筆者は、1998~2001年まで米プリンストン大に客員研究員として留学していた。当時はバーナンキ氏のほか、08年にノーベル経済学賞を受賞するポール・クルーグマン氏、スウェーデン中央銀行副総裁となるラース・スベンソン氏、元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏ら世界一流の金融政策の大家が多く在籍していた。毎週のセミナーでは、なぜ日本がデフレなのかなど、興味深い話題を活発に議論していた。

 筆者は当時、経済学部長だったバーナンキ氏に公私ともにお世話になった。本コラムは連載して12年がたつが、バーナンキ氏を引用したのは288回にも達している

 バーナンキ氏の研究によると、大恐慌の研究で、金本位制に固執した国では十分な金融緩和策がとれず、デフレが深刻化した。一方、金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した。

 FRB理事時代の03年、バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済の再生アドバイスを行い、国民への給付金の支給あるいは企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債を買い入れることを提案した。中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるわけなので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばらまかれていることになる。これが、いわゆる「ヘリコプターマネー」だ。

 米国はバーナンキ氏のおかげでリーマン・ショックもコロナ危機も乗り切れた。しかし、日本では、リーマン・ショック時は日銀が白川方明(まさあき)総裁体制で金融緩和は不十分だった。東日本大震災では民主党政権の復興増税など「悪夢」の連続だった。筆者はバーナンキ氏の提言を日本で実行するように主張したが無駄だった。

 第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できた。その結果、雇用確保は世界トップの出来だった。

 アベノミクスの理論的基礎はバーナンキ氏にあるといってもいい。ただし、消費増税は財務省の横やりで、アベノミクスの足を引っ張った。安倍さんが生きていたら、今回のバーナンキ氏の受賞をさぞかし喜んだだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日本人は、バーナンキの理論を裏付け、ともに暗殺された高橋是清、安倍晋三の二人の偉業を称えるべき(゚д゚)!

高橋洋一氏は上の記事で「金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した」と語っています。では、いずれの国が最もはやく世界恐慌から抜け出したのでしょうか。

実は、それは他ならぬ我が国日本なのです。

1931(昭和6)年12月、犬養内閣(蔵相高橋是清たかはしこれきよ)は成立後ただちに金輸出再禁止を断行し、兌換だかん制度を停止したので、日本経済は管理通貨制度の時代に入りました。

金輸出再禁止の結果、円の為替相場が大幅に下落し、1932(昭和7)年には一時100円が約20ドルと金解禁時代の半分以下に下がったのですが、不況のなかで合理化を推進しつつあった諸産業は、円安を利用して輸出振興をはかりました。

このあたりのことは、以下のサイトが平易に解説しています。興味のある方は、是非ご覧になってください。
このサイトより、以下にいくつかの図を引用します。




まさに、高橋是清は金融緩和策と積極財政を行ったがために、当時の日本は素早く世界恐慌(日本では昭和恐慌)から抜け出すことができたのです。

金本位制を離脱し、管理通貨制度にして、円安をそのままにしたのは、金融緩和策です。

一方、赤字国債を発行して、軍事と農村救済にお金を投入したのは、積極財政です。

高橋是清は、1932年の時点で、まさに、「ヘリコプターマネー」の先駆けと言っても良いようなことを実行したのです。

1936年、ケインズは彼の代表作となる『雇用・利子および貨幣の一般理論』を発表し、激しい論争を呼び起こしたましたが、この書に端を発するケインズ経済学はまもなく経済学の主流となりましたことから考えると、その前に行われた偉業はあり得ないくらいの素晴らしいことだと思います。

高橋是清は、恐慌から脱却するために、当時の経済学者の言うことなどは参考にせず、自らの知見や常識などをフル動員して、金融財政政策を進めたのでしょう。

上の記事にあるように、安倍元総理は、第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できました。その結果、コロナ禍の時期における雇用確保は世界トップの出来でした。

そうして、高橋是清と安倍元総理には、共通点があります。

一つは、不況から抜け出すために、二人とも積極財政、金融緩和を実施したことです。

そうして、悲しいことにもう一つの共通点があります。それは、両方とも暗殺されたということです。

ご存時のように、安倍元総理は、山上容疑者によって暗殺されたとされています。まだ、裁判もされていないような状況なので、様々な疑問が残りますが、それにしてもお亡くなりになっているのは事実なので、暗殺されたこと自体は間違いありません。

高橋是清は、赤坂表町三丁目の私邸で叛乱軍襲撃部隊に胸に6発の銃弾を撃たれ、暗殺されました(二・二六事件)。享年83(満81歳没)でした。

他にも共通点があります。高橋是清の行った、金融財政政策は、その後のケインズやバーナンキをはじめとする、経済学者の研究を裏付けるような大偉業であったにもかかわらず、日本においては、教科書にその事実が淡々と記載されて継承されるのみで、その本質が理解されていません。

安倍元総理の金融財政政策も、ほとんど理解されていません。理解しているのは、ほんの一部の人です。

日本では、金融財政政策を正しく行った政治家は、正しく顧みられないどころか、暗殺されてしまったのです。

安倍晋三氏(左)と高橋是清氏(右)

暗殺されてしまったことは、悲しいことにもう変えようはありません。

ただ、二人の偉業を称え、この二人が実施したように、これから不況時にはその対応を間違わないようにはできます。

日本は、これからは経済対策の面で方向を間違わないようにするためにも、二人の偉業を称えるべきです。

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