2023年2月25日土曜日

コオロギ粉末を使用したパンを発売 「コオロギ食べない連合」がSNSトレンド入り―【私の論評】日本では食品ロス対策、鯨等も含む海洋資源の有効利用を優先すべき(゚д゚)!

コオロギ粉末を使用したパンを発売 「コオロギ食べない連合」がSNSトレンド入り


記事まとめ
⇨製パン大手メーカーが、コオロギ粉末を使用したパンを発売したことが伝えられ話題に
⇨コオロギ食用に反発する声もあがり、「コオロギ食べない連合」がトレンド入りした
⇨コオロギは「蛩」と書く場合もあり「食べてはいけない昆虫ではないか」と案じる人も

製パン大手メーカーが、コオロギ粉末を使用したパンを生産し発売したことが伝えられ、ツイッター上でも話題に。コオロギを食用とすることに反発する声もあがり、24日午後には「コオロギ食べない連合」のワードがトレンド入りするなど議論を呼んでいる。


■“未来食”として期待

人口の増加などで懸念される食料・飼料危機の対策として、近年では昆虫食が“未来食”として期待を集めており、参入する企業が増加。

中でも、養殖や繁殖が容易で高タンパク・低カロリーのコオロギはとくに注目され、コオロギの粉末を使ったお菓子なども販売されている。

ただ、現在は原料コオロギにはアレルギー表示義務はないが、甲殻類と類似した成分を含むため、甲殻類アレルギーの人には注意が必要とされる。

■安全性への懸念や反発

最近、パンなどコオロギを使った食品が増えてきたことに、ツイッター上では安全性への懸念や、昆虫自体への拒否感からか議論を呼んでおり、24日には「コオロギ食べない連合」のワードがトレンド入り。

「絶対食べたくない!」「コオロギ育てるより、まずは若い農家や畜産業者を育てましょうってば」「たくさんの食料廃棄してるくせに食料難? だからコオロギ食えって?」といった声があがった。

■「コオロギ」を漢字で書くと…

また、コオロギには「蟋蟀」「蛬」「蛼」などの漢字のほか、「蛩」と書く場合もあり、「恐」の字と似ているためか、「コオロギを漢字で書くと『蛩』。これは食べてはいけない昆虫だと、先祖たちは知っていたのではないだろうか」と案じる人も。

実際にはこの漢字の成り立ちは不明で、語源や由来は明らかにはなっていないが、「字面からして食べてはいけないものだと」「江戸時代までの度重なる飢饉や戦中戦後の食料難でもコオロギ食ったって話聞かないから、飢えて死ぬかどうかって状況ですらほかにもっとあるやろって思われてた部類なんだろうなぁ」といった意見も寄せられた。

■「全然食える」との声も

ただ、コオロギは東南アジアでは食用とされていることもあり、「コオロギ食えるかって? 食えるよ」「コオロギ感消してくれれば全然食えるんじゃないかな」「主食にはならんけど、旨味成分としての調味料とか副菜の一種としてのポテンシャルはぜんぜんあると思う」と興味を持つ人や評価する人も見受けられた。

【私の論評】日本では食品ロス対策、鯨等も含む海洋資源の有効利用を優先すべき(゚д゚)!

私は、札幌の大学の理学部生物学科の学生だった頃神経生理学を学び、その研究用試料として、実験生物センター(現:ゲノムダイナミクスセンター 実験生物飼育栽培施設部門)という様々な動植物を飼育している施設でコオロギを継代飼育の作業をしていました。

コオロギにも様々な種類があります。季節性によるアーティファクトを防ぐためもあり、日本国内では比較的年間の気温の変化が激しくない、沖縄の星コオロギを用いていました。このコオロギには翅(はね)の前方に星のような白い斑点があることから名づけられています(写真赤点線内)。

飼育室の温度は、25度に設定されており、年中その気温で飼育されていました。湿度も高めで、これも年中同一に設定されていました。水や餌やり、さらに容器を移し替えるというような作業を一週間一度のペースで行っていました。これは、今でも継代飼育されているはずです。

当時、興味にかられて解剖や実験終了後のウシガエルや、ネズミの肉など試しにほんの少しですが、どのようなものか、焼いたり、湯がいたりして食べてみたことはありました。どちらも、鶏肉のような味がしました。

しかし、コオロギを食用として考えたことは一度もありませんでしたし、無論一度も食べたことはありませんし、食べよう等とは夢にも思いませんでした。

食糧危機や経営学にも学生の頃から興味があり、ドラッカーの書籍もその頃読みましたが、ドラッカーが、書籍の中でアフリカがアジアなみに食糧生産ができるようになれば、食糧危機は一気に解決すると述べていたのを記憶しています。

そのドラッカーは、意外なことに海洋牧場を運用するようになれば、食糧危機を心配する必要がなくなるということも主張していました。ドラッカーは、海は人類にとって地球最後のフロンティアだと語っています。特に海洋牧場の重要性について語っていました。「陸上で放牧をしているように、将来は大規模な海洋牧場が出来上がることだあろう」と語っていました。

さらに意外なことに「2001年宇宙の旅」で有名なSF作家のアーサー・C・クラークも海底牧場に関するSF小説を書いています。

それについては、このブログに随分前に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

この記事は、2008年2月1日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。

アーサー C. クラークの海底牧場-21世紀は鯨の時代?
写真は、当時の単行本の表紙から現在販売されている文庫本の表紙に変えました

上は、海底牧場の表紙。 この小説のあらすじは、「21世紀、世界連邦食糧機構の海務庁牧鯨局は、食用の鯨を海で放牧し、人類の食糧需要量の一割以上をまかなうほどになっていた。その海底牧場で、牧鯨者と して鯨を管理する一等監視員ドン・バーリーは、新人として配属されてきたウォルター・フランクリンの訓練をまかされることになった。

だが、フランクリンに はひとに言えない過去があった…海に生きる男たちの波瀾に満ちた運命を描く巨匠クラークの感動的な海洋SF」というものです。

 この小説いろいろ展開して、私自身ももう細かい筋はわすれてしまっていますが、アマゾンの書評に「未来では鯨を養殖して食用にしていました それが残酷だというので鯨の乳を加工して食料にするという話です 捕鯨をやっている日本への当て付けでしょうか」などと書いている人もいます。

しかし、少なくとも、アーサーC.クラークが若くてこの小説を書いていた頃は、エネルギー問題や、食糧危機などの問題も今と同じように人々に認識されていて、海洋資源に関して希望的観測が語られていて、西欧人ですら、この小説のように、未来の姿として、空想の世界の中では、鯨の放牧などして、鯨を食料としているということも、ありえるという認識があったと思います。

 しかし、最近ではまるで海洋牧場などによる海洋資源など忘れ去れたようで、あまり話題にも上らなくなってしまいしまた。それどころか、調査捕鯨に対する、反対運動が起こっていて残念なことです。

私は、一時海洋の可能性について「パックス・マリーナ(海による平和)」という自身の造語でこのブログに述べていた時期があります。最近でこそあまり書かなくはなりましたが、それでもその可能性を今でも信じています。海には、様々な資源があり、様々な可能性を秘めています。


上の地図を見ても分かるように、日本は国土そのものよりも海洋において広範囲な権利を有する国です。ちなみに日本の国土は約38万km2で世界第60位、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると約447万km2で世界第6位となります。

最近「コオロギ食」の話題がネットなどで多く掲載されていますが、コオロギが本当に食用に適しているのかには、疑問があります。

そもそも、かなり多くの人が食用にするだけ大量の製造が可能なのでしょうか。実際に大量に製造ということになれば、年中繁殖させるため、沖縄の星コオロギのようなコオロギを大規模な工場で年中温度・湿度を一定にして繁殖させなければならないでしょう。そうして、コオロギは牛や豚と比較すれば、個体がかなり小さいです。

これを大量に飼育するとなると、かなり大きな施設が必要となり、そのまま食べるというわけにもいかないので、加工設備もかなり大きなものになります。

ある人が試算した結果をツイートしていました。これは、標準的な継代飼育の場合だと考えれます。
牛1頭750kg、コオロギ1匹0.5g 。牛一頭に匹敵するコオロギは750kg÷0.5g=1,500,000匹 

衣装ケース1箱1000匹飼育可能(成虫)で、牛1頭分のコオロギの生産に、衣装ケース1500箱、飼育場所として、体育館ぐらいの場所が必要。1500箱のエサやり、水の補給、卵の採集(水やり試験管に綿などで蓋をしますが、それにコオロギが卵を産み付けます)糞などの掃除、温度管理をする必要
これは、実際に継代飼育していた経験からそのとおりと思います。仮に、機械化などをすすめたり、飼育場所を立体的にしても、コオロギの個体はあまりに小さく限界があります。少なくとも、豚くらいの大きなコオロギが存在すればなんとかなるかもしれませんか、残念ながら昆虫は外骨格なので、外骨格では、豚のような体を支えるのは不可能で、そのような昆虫は存在しえません。

本当に、多くの人々の主要タンパク源にすることができるのか、非常に疑問です。それこそ、太陽光発電のようなことになってしまいかねないと思います。それよりも、海洋資源のほうがはるかに、主要タンパク源として適しているのではないかと思います。 

実際、日本では魚介類や鯨などが、主要タンパク源だった時代もあります。私は、函館生まれではないですが、函館に20年くらい住んでいたことがあります。地元生まれの人には子供の頃は毎日のようにイカを食べたので、「私の体はイカ」でできていると語る人も大勢いました。年配の人たちは、昔は良く鯨を食べたし、弁当のおかずには大抵「鯨」が入っていたと語る人も大勢いました。

1980年代、国際的な反捕鯨の風潮から商業捕鯨は中止に追い込まれました。日本はクジラの数や生態を把握し、持続的に利用すべく1987年から南極海などで調査捕鯨を開始しました。調査の現場を担ったのが、共同船舶の捕鯨船と船員でした。

日本は、32年にわたる調査で、鯨種ごとの数の推移、割り出した資源量を基に数を減らさないだけの捕獲枠の算出方法などを完成させました。鯨資源を守りながら捕ることが可能になったのです。日本はIWC(国際捕鯨委員会)や国際社会に、持続可能な捕鯨のモデルを示し、商業捕鯨再開を訴えました。

しかしIWCも反捕鯨国も耳を傾けようとしませんでした。そのため、日本は2019年にIWCを脱退し、調査捕鯨をやめて、日本の200カイリ内での商業捕鯨再開を決断しました。

このような実績がある日本であれば、鯨の海洋牧場もできる可能性は十分あると思います。鯨にこだわらず様々な魚介類を海洋牧場で安定供給できる可能性は高いと思います。鯨肉のほうが、牛肉より環境にやさしいという研究結果もあります。

コオロギ食の昆虫食も将来の食糧不足への対処の一環として、実験するのは良いと思いますが、現在のような未だ生煮えともいえるような状況で、大量に市場に出してしまうのは拙速だと思います。

日本では、本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間522万tにも上ります(令和2年度推計値)。日本人の1人当たりの食品ロス量は1年で約41kgです。

日本では、コオロギ食の推進より、まずは食品ロスをなくすこと、そうして海洋資源の有効利用などを考えることのほうを優先すべきと思います。

エネルギー問題においては、風力、太陽光など再生可能性エネルギーが様々な問題を引き起こしています。火力発電すら根付いておらず、慢性的にエネルギー不足の発展途上国に対して、先進国が上から目線で、火力発電に対する支援はしないが、再生可能エネルギーの開発は支援するなどとして物議を醸しています。

そうして、ウクライナ戦争でエネルギー不足になると、先進国は発展途上国のことなどはおかまいなしに、天然ガス、原油などを大量に確保するなどのことを平気でしています。再生可能エネルギーを推進した人たちは、良かれと思ってそうしたのでしょうが、現実には世界各地で様々な問題をひきおこしています。

これについては、日本ではあまり報道されませんが、以下の【関連記事】にスリランカの事例をあげています。興味のある方は是非ご覧になってください。

コオロギ食などの昆虫食も、先進国を中心に拙速に進められれば、そうなりかねません。食糧不足を解消するどころか、大規模農場すら根付いていない発展途上国に、農業支援策をせずに、大規模なコオロギ製造工場を建設するための資金なら提供するなどの本末転倒なことが行われ、発展途上国の食糧不足が助長されることになるかもしれません。

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