2023年2月1日水曜日

戦車供与 補給が課題…英国際戦略研究所 リサーチアナリスト ヨハン・ミシェル氏 [ウクライナ侵略1年]―【私の記事】深刻なウクライナのもう一つの戦い「汚職撲滅」は戦後の高度経済成長に欠かせない(゚д゚)!

戦車供与 補給が課題…英国際戦略研究所 リサーチアナリスト ヨハン・ミシェル氏 [ウクライナ侵略1年]

英国際戦略研究所

 最近発表された米欧の軍事支援の貢献は大きい。ウクライナ軍は西側諸国の装備を使い、装甲車や自走 榴りゅう弾だん 砲を大量に装備した機械化歩兵師団や、機動力を高めた自動車化歩兵師団を複数編成できる。独製「レオパルト2」や米製「M1エイブラムス」など100両近い戦車の供与にもメドがつき、戦闘力は大きく向上する。

 ウクライナ軍は現在使っている旧ソ連製戦車の弾薬が尽き始めており、数か月のうちに枯渇すると予想されていた。欧米製戦車を求めたのは、西側が供給できる弾薬へのアクセスを可能にし、継戦能力を維持するためだ。戦車は敵の防衛線を破って領土を奪還するだけでなく、機動的な防衛力も提供する。

 戦車は供与して終わりではない。最も重要な要素は補給だ。ベストは単一の戦車を大量に提供することだったが、今回は複数種に分かれた。それぞれにスペアパーツ、異なる訓練が必要で、隣国のポーランドやスロバキアには車両の補修を担う施設が要るだろう。戦車を前線に運ぶトラックもいる。それを守る防空網も必要になる。各国の役割分担が求められるだろう。

 ドイツが「レオパルト2」の供与に方針転換したことは意義深い。西側全体としてウクライナ軍事支援の方向性が当面続くからだ。米国は本音では戦車を差し出したくなかったはずだが、同盟結束のために実行し、欧州の安全保障に引き続き関与する姿勢を見せた。これも前向きに評価できる。

 戦車供与を巡る混乱では、ドイツ一国が拒んだ結果、西側全体の支援が何週間も滞った。同じ事態を繰り返すのは避けるべきで、ドイツ以外の国も兵器製造などで貢献し、欧州の選択肢を増やすことが望ましい。

【私の記事】深刻なウクライナのもう一つの戦い「汚職撲滅」は戦後の高度経済成長に欠かせない(゚д゚)!

上の記事の内容など、あまり詳しくはなくても多くの人がご存知だと思います。私も、以前戦車供与関係のニュースはこのブログに掲載したことがあります。

ただ、ウクライナのもう一つの戦争については、意外と知らない人もいらっしゃるかもしれません。もう一つの戦争とは、「腐敗や汚職」との戦いです。

本日も、以下のようなツイートを発見しました。


このツイートの裏取りはしていませんが、このようなことは、ウクライナであれば、十分あり得ると思います。

何しろ、ウクライナはもともと「腐敗まみれ」だったからです。その伝統は、今も引き継がれているいるようです。

1月29日の段階で、11人の政府高官が、汚職撲滅を目指すウクライナ政府の取り組みの一環として、辞任あるいは更迭されていました。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、一刻も早く世間の信頼を取り戻そうとしています。しかし、汚職疑惑の内容は深刻で、タイミングも悪いものでした。

汚職の指摘のいくつかは、現地メディア「ウクラインスカ・プラウダ」の調査報道記者、ミハイロ・トカチ氏のおかげで、表面化しました。

トカチ氏は最近、とある政府高官のパーソナル・トレーナーの会社が、ロシアの侵攻開始以来、数百万ポンドを受け取っていた疑惑を伝えまし。ウクライナ大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官の汚職についても報じました。

ティモシェンコ氏が大手デベロッパーの邸宅に家族を引っ越しさせていたとトカチ氏が報じた2カ月後、ティモシェンコ氏は辞任しました。

ミハイロ・トカチ氏

トカチ氏はさらに、ティモシェンコ氏が高額なポルシェに乗っていると様子に見える動画を公開しています。ティモシェンコ氏は、自分は何も問題のある行動はとっていないと主張しています。

「資金の出所がはっきりしない資金について、政治家や政府関係者は、その資産を近親者名義にすることが非常に多い」と、トカチ氏は話しています。

「これは、不透明な手口を示すものだ。今は政府関係者の一挙手一投足が、社会に明示されるべき時なのに」

トカチ氏は、汚職が横行するのはよその国も同じだ認めた上で、何より大事なのは、汚職にどう対応するかだと言います。

ウクライナが軍事、人道、財政面で数十億ドルの支援を受け取ることには、責任が伴う。監視の目も厳しくなる。

一方で、こうした資金が間違った相手にわたる可能性も増している。

「我々はウクライナの存在について話している」とトカチ氏は話す。

「ウクライナにとってこの1年は、ありきたりのものではなかった。ゼレンスキー大統領が引き起こした、大勢の辞職は、事態の重みを認める大切なもので、必要な対応だった」

2020年このトカチ氏が所属する、2犯罪汚職犯罪の調査報道「スキーム」の撮影班運転手の自家用車が何者かに放火されたことに対して、発言をしていました。

「スキーム」の記者であるミハイロ・トカチ氏がフェイスブック・アカウントで伝えていました。

トカチ記者は、「悪いニュースが続いている。私たちが4年間、撮影で使ってきた車両が、あなた方が見たように、燃やされた」と書き込みました。

「スキーム」の記者であるミハイロ・トカチ氏がフェイスブック・アカウントで伝えました。

トカチ記者は、「悪いニュースが続いている。私たちが4年間、撮影で使ってきた車両が、あなた方が見たように、燃やされた」と書き込みました。

トカチ氏は、この車両で最後に撮影したのは、「道路の王様たち」という名の、政権幹部による道路交通法違反に関する報道だったと伝えました。

これに先立ち、トカチ氏は、同年8月8日に自身の居住地にて通信傍受のための機器が見つかったと治安機関に通報しています。その後、同氏は、11日に警察捜査班が対応しないことに対するクレームも提出していました。

トカチ氏は、「撮影の際や、報道の中にて、私たちの車や私たちが国家警備局職員に監視されていると何度も強調してきた。車は、運転手の住む建物の近くに停められていた。盗聴、車両放火、次は何だ?」と書き込みました。

以下に、その書き込みを掲載します。

31年前に独立を宣言して以来、ウクライナでは公共事業と政界のほとんどに汚職が蔓延(まんえん)してきました。

2014年にはなんとしても民主化を求める国民の反政府デモによって、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィチ大統領が失脚しました。

それ以来、ウクライナ政府はさまざまな政治改革に取り組んできました。ロシアはウクライナに軍事介入を繰り返すようになったのが、改革への大きな原動力となりました。西側から継続的な支援を受けるためにも、ウクライナには改革が必要とされました。

新しい反汚職機関が設置され、公金の使い方にはに新しいシステムが取り入れられ、警察組織が再編されました。政治家は資産公開を求められ、時につらくなるほどの蓄財ぶりが明らかになりました。

ウクライナ議会の反汚職委員会で副委員長を務めるヤロスラフ・ユルチチン議員は、「我々には結果が重要だ」と語りました。

「確かに、過去の汚職の残りがまだある。だが少なくとも今は、それについて黙っていない。次の段階は汚職防止だ」

ユルチシン議員は、西側諸国からの支援が危うくなったとしても、今回の政府高官の違法行為発覚は最高のタイミングだったと話しています。

「西側のパートナーは、ウクライナが2つの戦争を戦っていることを知っている(中略)ひとつはロシアとの戦争、もうひとつはウクライナの将来に向けた内部の戦争だ」

昨年2月にロシアが全面侵攻してくる以前、欧州連合(EU)やアメリカはウクライナの反汚職対策に満足していませんでした。

2023年に持ち上がった疑惑がゼレンスキー大統領にどのような政治的ダメージを与えるかは不明ですが、今回の大統領の対応は、米国から「迅速かつ断固としている」と評価されています。

今後、さらに複数の汚職疑惑が浮上すると予想されます。それだけにゼレンスキー氏としては、米国以外の支援国からも同様の好意的な反応が欲しいところでしょう。

このような「汚職」はなぜ起こるのでしょうか。ウクライナにはウクライナの事情があり、汚職が頻繁に起こる他国には、他国なりの事情があるのでしょうが、私自身は、共通しているところもあると思います。

それは、貧困です。このようなことは、賃金が安い国で普通にみられることです。ウクライナも貧困国なのです。それは、下のグラフをご覧いただければ、おわかりいただけるものと思います。

一人あたりのGDP比較

日本も貧困化がいわれていますが、ウクライナの一人あたりGDPは2021年時点で、4千ドル台です。1ドル100円で大雑把に計算すると、40万円台です。大雑把には、一人あたりGDP≒賃金ですから、ウクライナでは一人あたりの賃金は40万円台ということになります。これは、日本の1/10です。

これらの国々では、土地や食料品の価格や、国内で生産できる物資の価格は低く抑えられるのが通例なので、なんとか生活してはいけるのでしょうが、それにしても貧乏です。

こうした国では、官僚や政治家など、いわゆるエリート層といわれる人でも、合法的に得られる収入はかなり少なく、そのため違法なことにでも手を染めて、多額の蓄財をするのが常です。そうして、それはいずれ、個人の汚職から、組織的で体系的な蓄財しシステムになるのも常です。

ウクライナも例外ではないですし、中国やロシアはその典型でしょう。

昔、会社の同僚が、東南アジアのある国に、事務所を開こうとしたのですが、本来開くはずの日を一週間過ぎでも、開かないので、現地に様子を見に行った所、役人に賄賂を支払っていなかったことが原因であることが判明しました。

現地に出向いた人が、彼の国では、賄賂が当たり前で、まともに申請していては、埒が明からないことを知らなかったため、賄賂を出さなかったので、いつまでも許可がおりなかったのです。

その同僚はさっそく役所に出向き、担当の役人に、相場以上の賄賂を提供したところ、数時間で許可がおりたそうです。彼の国では、このようなことが常態化していたのです。

低賃金の国では、このようなことが常態化しているところが多いです。

特に、ウクライナは、戦前には中国人の手頃な留学先になっていたように、他の発展途上国とは違い、宇宙産業、航空産業もあり産業基盤も整っており、文化水準も高く比較的教育水準が高いにも関わらず、低賃金です。一般の人も当然賃金が安く、生活が苦しいため、機会があれば、汚職に手を染めてしまいがちです。

こうした腐敗がさらに非効率を生み、経済成長を阻害し、なかなか貧困から抜け出せなくなるのです。

現在は、戦争中ですから、なかなかうまくはいかないでしょうが、戦争が終了すれば、「汚職」対策を徹底的に行い経済発展をさせるべきでしょう。

ゼレンスキー政権の与党幹部、アラハミア最高会議(議会)議員は1日、汚職疑惑で高官経験者や新興財閥(オリガルヒ)の一斉捜査が開始されたと明らかにしました。通信アプリ「テレグラム」で「国家は有事に変革する。変わる気のない者には国家が手助けする」と警告しました。

アラハミア氏によると、捜査では、巨額還付金の詐取が疑われる税務当局幹部や、1月に首都キーウ(キエフ)で墜落したヘリコプターの納入に関与したアワコフ元内相、2019年のゼレンスキー大統領当選に寄与した大富豪コロモイスキー氏が対象になったといいます。

アラハミア最高会議(議会)議員

私は、以前このブログに掲載しましたが、ウクライナは教育水準が高く、人口も比較的おおく、産業基盤も整っていることから、戦争が終わり、ある程度「汚職」を取り除き、EUに加盟できるくらいになれば、かなり経済発展をする見込みのある国だと思います。

今まで成長できなかったのは、国外ではロシア事あるごとに干渉され、国内は「汚職」塗れだったからです。この軛から開放されれば、ウクライナは、高度成長することでしょう。私は 10年後には、ウクライナが世界で一番経済発展する国になっている可能性もあると思います。

ただ、まずは汚職をある程度撲滅できなければ、EUには加盟できず、貧困状態が続くことになるでしょう。

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