2023年2月10日金曜日

日銀新総裁起用の植田和男氏 量的緩和導入の理論的支え―【私の論評】植田氏の金融緩和の目的は黒田氏と異なり、金融機関重視(゚д゚)!

日銀新総裁起用の植田和男氏 量的緩和導入の理論的支え

2016年5月、G7財務相・中央銀行総裁会議の開幕に先立ち開かれたシンポジウムに臨む植田和男氏(右)。左は日銀の黒田総裁=仙台市

 政府が日本銀行の黒田東彦総裁の後任に起用する方針を固めた経済学者の植田和男氏は、成10年4月に東大教授から日銀審議委員に就任し、17年4月まで務めた人物だ。

 バブル経済が崩壊しデフレが進んでいた13年、日銀が市場へ供給する資金の量を増やして景気を下支えする異例の金融政策「量的緩和策」を初めて導入したときなどの理論的な支えとなった。

 量的緩和策の導入を実務面で主導したのは、当時、日銀の企画室企画第1課長だった現在の雨宮正佳副総裁。植田氏と雨宮氏は〝タッグ〟を組んで量的緩和策を実現したことになる。雨宮氏は、黒田氏の後任総裁の有力候補としても名前が挙がっていた。

 黒田氏率いる日銀が導入した足元の大規模な金融緩和策から脱却するかどうかが課題となっているが、植田氏が新総裁として、どのようなかじ取りをするか注目される。

【私の論評】植田氏の金融緩和の目的は黒田氏と異なり、金融機関重視(゚д゚)!

岸田首相は、財務省に配慮して、とんでもない総裁を選ぶのではないかと思い、コテコテの金融引締派が次期日銀総裁になるのではと、戦々恐々としていましたが、そうではないようなので、少し安心しましたが、まだ安心しきることはできないようです。

これについては、経済学者の田中秀臣氏が、動画で解説していますので、その動画を掲載します。


詳細は、この動画をご覧いただくものとして、この動画より気になるところをピックアップしします。

簡単に言ってしまうと、植田氏は、日銀(日本の中央銀行)が担うマネタリーと、プルーデンスのうち後者を重視する方のようです。

日銀は、中央銀行として、金融政策を行う主体であるとともに、金融機関の監督という準行政的な機能もあります。前者をマネタリー、後者をプルーデンスといいます。

実は、日銀内の仕事としてはマネタリーの部分はごくわずかで、多くは「銀行の中の銀行」として金融機関との各種取引を通じたプルーデンスが大部分です。プルーデンスは「日銀官僚」が天下るときにも有用であるため、日銀マンの行動に金融機関重視がビルトインされているとみたほうが良いでしょう。


植田氏は、消費税増税についての有識者会議(14年)のときは、消費増税については判断を保留しています。また金融緩和の目的が、彼の場合は金融システム、つまり銀行業界などの安定であり、そこが期待インフレのコントロールを重視し雇用増から経済安定を目指すリフレ派とは決定的に異なるところです。

植田氏は、プルーデンスを重視するということでは、日銀官僚には受けが良いでしょう。金融政策≒雇用政策 重視のリフレ派とはスタンスが違います。2%物価目標に関して、なるべく早く達成しようとするのではなく長期の目標とする可能性もあります。

植田氏は金融緩和を支持しているように見えますが、黒田現日銀総裁とは明らかに異なります。特に目的において両者はかなり異なります。植田氏は、日銀を中心とした金融システムの安定性が金融緩和の主目的です。それに対して、黒田日銀現総裁のその主目標は雇用の最大化と経済成長です。両者は同じく金融緩和をしたとしても、その目的は大きく異なるのです。

日銀黒田総裁

植田和男氏は2000年のゼロ金利解除に反対するなど学者として一流です。しかし日銀新総裁として日銀の官僚組織の言いなりになる可能性もあります。特に政府との共同宣言で2%インフレ目標を棚上げ改悪してしまうようなことなく戦い続ける気力があるのか、十分注目していきたいところです。

四月になれば、岸田政権と日銀が共同声明を出すのでしょうから、そこが田日銀新総裁を判断する目安となるでしょう。ただし結局は、岸田政権の意図通りに動くとみて良いでしょう。さて、岸田氏は今後の金融政策をどうするつもりなのか、そこが焦点になりそうです。

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