2024年3月10日日曜日

世界の生産拠点として台頭するインド 各国が「脱中国」目指す中―【私の論評】中国輸出失速、インド急成長で新時代 - 日印連携で自由なインド太平洋実現へ

世界の生産拠点として台頭するインド 各国が「脱中国」目指す中


まとめ
  • インドは価格競争力や豊富な労働力を生かし、航空機製造や電気自動車など多岐にわたる産業で成長し、輸出製造大国として急速に浮上している。
  • 多くの企業がインドに進出し、米ボーイングやテスラなどが調達を増やす中、アップルはインドで製造拠点を拡大している。
  • インドの輸出品は特に電子製品が躍進し、アップルやヴェスタスなどが新たな生産拠点を設立。アップルは生産能力を拡大し、競合他社も同国に進出している。
  •  地政学的理由からも、多くの企業が中国以外での供給源を模索し、インドが「チャイナプラスワン」戦略の一環として注目を集めている。
  • インドは米国のインド太平洋経済枠組みで重要な位置を占め、対米輸出が急増。政府は経済的な要因や労働力の活用を通じて製造業を支援し、2030年までに2兆ドルの輸出を目指している。

インドの縫製工場

  インドは、価格競争力や豊富な労働力を活かし、様々な産業で成長し、将来の輸出製造大国として急速に台頭している。ボストン・コンサルティング・グループによる報告書によれば、航空機製造分野や風力発電機、電気自動車など、多くの企業がインドに進出している。輸出品では電子製品が特に増加し、アップルなど大手企業が生産拠点を拡大している。地政学的理由からも、中国以外の供給網を築く「チャイナプラスワン」戦略の一環として、多くの企業がインドに拠点を置く傾向がある。

 また、インドは米国のインド太平洋経済枠組みの中で重要な位置を占め、昨年上半期には最大の貿易相手国となった。これは、中国を除外し、他の信頼性のある供給国からの調達を促すための枠組みである。インドの対米輸出は急速に拡大し、自動車部品、機械、半導体などが大きく伸びている。中国の対米輸出はこれらの分野で減少しており、多くの企業が中国以外での供給源を模索している。

 インド政府は経済的な要因や労働力の多さを活かし、製造業の成長を促進している。生産連動型奨励策や資本優遇措置を通じて、企業に補助金を提供している。また、労働力の能力向上にも取り組んでおり、電子機器の生産を強化している一方で、課題も抱えている。技術製品の多様化や生産品質の向上が求められており、これらの課題を克服するためには生産能力を拡大し、近隣諸国との連携を強化する必要がある。「メイク・イン・南アジア」政策を通じて、2030年までに輸出額を2兆ドルに引き上げるという政府の目標達成に向けた動きが期待されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になってください。


【私の論評】中国輸出失速、インド急成長で新時代 - 日印連携で自由なインド太平洋実現へ

まとめ

  • 中国の輸出入は2023年ともにマイナス成長となり、特に輸出では大幅なマイナス(-6.1%)となった。
  • 一方、インドの輸出は過去から堅調に伸びており、2023年も7.4%のプラス成長を記録した。
  • 中国への経済制裁国向けの輸出がマイナスだったのに対し、非制裁国のロシア、アフリカ向けは増加した。
  • インドの輸出額は中国の約10分の1と伸び代が大きく、日本にとって重要な輸出先となりうる。
  • 日本は価値観を共有するインドとの安全保障、経済、人的交流分野での協力を一層深めていく方針。

以下に中国とインドの輸出を比較する表を掲載します。

インドと中国の輸出推移比較表(1999年~2023年12月)

データ: 世界貿易機関 (WTO) 貿易統計、中国税関

単位: 10億米ドル

インド中国前年比(インド)前年比(中国)
199943.5194.9--
200044.8249.43.00%28.10%
200584.4438.488.60%76.00%
2010246.31,578.10190.10%260.40%
2015310.42,271.2026.50%44.20%
2020297.82,594.50-4.10%14.30%
2021336.13,364.6012.80%29.80%
2022422.23,955.8025.60%17.60%
2023453.33,716.407.40%-6.10%

WTO: https://wto.org/statistics

この表をみると、中国、インドともに過去にはかなり輸出を伸ばしてきたことがわかります。昨年に関しては、インドはプラス幅は過去よりは、小さめであるものの、プラス成長しています。中国は-6.1%です。

これに関しては、ブルームバーグなどの1月の報道では、-4.6%などとしていましたが、当時は12月の数値が未定だったため、推計値と思われます。それにしても、-61%とは驚きです。なぜ日本でこれがもっと大々的に報道されないのか不思議です。

以下に1月に公表された、中国の貿易統計の一部を掲載します。輸出は-4.6%となっていますが、大勢には影響がないと思うので、掲載します。

2023年中国貿易統計(一部抜粋集計)

項目前年比金額 (ドル)
輸出-4.60%3兆3800億
輸入-5.50%2兆5568億
貿易総額-3.70%5兆9368億
地域別輸出
- ロシア+26.3%2401億
- EU-10.20%1兆1800億
- 米国-13.10%9400億
- 日本-8.40%1兆1200億
- アフリカ諸国+5.7%1550億

 出処:中国税関総署:http://gdfs.customs.gov.cn/customs/syx/index.html

特徴的なのは、輸出、輸入ともマイナスということです。輸入がマイナスなのは、中国の景気が良くないことをしめます。通常、景気が良いと、輸入は増加します。

輸出で特徴的なのは、日本を含めた先進諸国は、のきなみマイナスであり、ロシア、アフリカ はプラスになっているということです。これは、中国に対して経済制裁している国々が輸入を減らしたからでしょう。中国に対して経済制裁をしていないロシア、アフリカの輸出が増えたということです。ロシアとアフリカの輸出が増えたにしても、これから急激に伸びることはなく、中国の輸出はこれから先細っていくことでしょう。

これをみると制裁を受けていないインドは、これからさらに輸出を伸ばしていける余地があるといえます。さらに、輸出額で223年時点では、10分の1 よりもまだ若干少ない程度です。これは、まだまだ伸びしろがあることを示しています。

そうして、中国依存を避け、輸入先などを転換すべき日本は、インドからの輸入を増やすことは経済安保の観点からも望ましいです。また、インドへの輸出拡大は、日本経済にとって大きなチャンスです。日本政府と民間企業が一体となって取り組むことで、課題を克服し、インド市場で成功することができるでしょう。

そうしてインドへの輸出拡大は、日本経済にとって大きなチャンスです。日本政府と民間企業が一体となって取り組むことで、課題を克服し、インド市場で成功することができるでしょう。

また、日本は、安全保障環境の変化に対応するため、インドとの関係を深めることが重要です。両国は、共通の価値観と戦略的利益を共有しており、安全保障分野での協力は、自由で開かれたインド太平洋地域を維持するために不可欠です。

上川外務大臣は7日今月訪日中のインドのジャイシャンカル外相と会談を行い、以下の点で一致しました。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて日印の連携を強化する。
  • 安全保障、経済、人的交流など幅広い分野で両国関係を深化させる。
  • 具体的には、自衛隊とインド軍の共同訓練の実施、日本の防衛装備品の移転推進、宇宙・サイバー分野での協力拡大を図る。
両国は民主主義や法の支配など基本的価値を共有し、新興国の代表格であるインドとの関係を日本は重視していることを確認しました。



もう次世代は、中国ではなくインドです。未だ中国幻想に酔っている人たちは、もう時代おくれです。

そうして、インドと日本の関係に先鞭をつけたのが安倍総理です。岸田首相はこの路線を継承し、インドとの関係をさらに深めていただきたいものです。

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