2024年1月6日土曜日

インド、23年度GDP予想7.3%増 選挙に向けモディ首相に追い風―【私の論評】インド経済の堅調な成長、中国経済は体制が変わらなければ今後数十年低迷

 インド、23年度GDP予想7.3%増 選挙に向けモディ首相に追い風

まとめ

インドの経済成長率は2023年度も堅調に推移すると予想されている。これは、モディ政権にとって追い風となり、選挙での勝利につながる可能性があると見られる。


インド統計局は2023年度のインド国内総生産(GDP)が前年度比7.3%増になるとの予想を発表。これは主要経済大国の中で最も高い成長率となり、今年5月までに見込まれている選挙を控えてモディ首相にとって追い風となる。

統計局は、この予想は2023年度の早期見通しであり、経済指標の精度向上や実際の税収、補助金の支出などが今後の改定に影響を与える可能性があると説明している。

インド準備銀行(RBI)は昨年12月に2023年度のGDPが7%増になると予想し、従来見通しの6.5%から引き上げている。

インドの経済成長率は2022年度が7.2%、2021年度は8.7%だった。

2023年7-9月期は前年同期比で7.6%増、4-6月期は7.8%増えていた。

【私の論評】インド経済の堅調な成長、中国経済は体制が変わらなければ今後数十年低迷

中国の成長率は2024年も4.5%を超える可能性はあるでしょう。しかし、それ以降の成長は、中国政府の大規模な市場改革の成否にかかっているといえます。ただ、中国のGDPはこのブログでも述べてきたようにほとんどあてになりません。

ただ、出鱈目であったにしても、ある程度整合性をもった数値を出さなければならないので、実数値は全く信用できないにしても、推移はある程度みることはできるでしょう。


まとめ
インド経済は、モディ政権による経済改革や人口増加の恩恵を受け、堅調な成長を続けている。一方、中国経済は、ゼロ・コロナ政策の転換や中所得国の罠への陥落、国際金融のトリレンマなどにより、今後数十年低迷し続ける可能性が高まっている。
以下にインドの経済成長の推移の表を掲載します。

2020-21年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済成長率が大きく落ち込みました。しかし、その後は回復基調にあり、2022-23年度は7.2%と、主要経済大国の中で最も高い成長率となりました。2023-24年度も、7.3%の成長率が見込まれており、インド経済の堅調な成長が続くと予想されています。

なお、インドの経済成長率は、2021-22年度から2023-24年度にかけて、大きく上昇しています。これは、モディ政権による経済改革や、人口増加による労働力供給の増加などが要因と考えられます。

モディ首相と安倍首相

モディ政権の経済政策には、貧困対策やデジタル・インディアを含めて、前UPA政権が手掛けた政策を引き継ぎ、その焼き直しを図ったものが多く含まれています。倒産破産法(IBC)の成立、さらには憲法改正を伴う物品・サービス税(GST)の導入に漕ぎつけたことは、インドの経済政策に新たな一頁を付け加えたものとして評価されています。また、モディ政権は、製造業や雇用のさらなる拡大を目指しています。

モディ政権は、製造業や雇用の拡大を目指して、多数の政策を実施しています。例えば、第1次モディ政権下で発表された「Make in India」政策は、製造業の割合を2022年までに25%に引き上げ、5年間で1億人の新規雇用を創出することを目標としています。

また、第2次モディ政権では、法人税の約10%の引き下げを発表するなど、事業環境の整備を進めると同時に、重点分野を絞った税制優遇、人材育成等の実施を計画しています. さらに、第2次モディ政権は、エレクトロニクスやEV・電池製造分野でも段階的製造プログラム(PMP)を導入し、国内製造を促す見込みです。

一方中国経済は、ひどい状況に陥っています。中国経済にとっての2024年の課題は、GDPの成長率ではなく、その先の成長の持続性であるといえます。

中国の成長率は2024年も4.5%を超える可能性はあるでしょう。しかし、それ以降の成長は、中国政府の大規模な市場改革の成否にかかっているといえます。ただ、中国のGDPはこのブログでも述べてきたようにほとんどあてになりません。

ただ、出鱈目であったにしても、ある程度整合性をもった数値を出さなければならないので、実数値は全く信用できないにしても、推移はある程度みることはできるでしょう。

このブログでも何度か指摘してきたように、中国は経済発展により1人当たりのGDPが中程度の水準(中所得:約1万ドル)に達したましたが、その発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷する「中所得国の罠」に陥る可能性があります。

中所得国の罠に関しては、産油国などの特殊事情があるいくつかの例外はあるものの、ほぼ例がなく多くの国々がこの罠にはまっており、中国だけが例外になることはあり得ません。

特に、中国においては、再び経済成長するためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠なのですが、現在の中国共産党の体制ではほぼ不可能です。

中国は、1978年の改革開放以来、数十年間、世界で最も急成長を遂げた主要経済国の一つとなりました。1991年から2011年の間、毎年10.5%の成長を続け、その後も2021年まで10年間の平均は6.7%でした。ただし、これも実数は出鱈目の可能性がありますが、推移に関してはある程度信用しても良いとは思います。

しかし、2022年の暮れ、中国政府の厳格な「ゼロ・コロナ」政策が転換され、2023年に期待された経済回復は強い逆風にさらされました。

ロイター通信によると、コロナ後の中国経済は、消費者の消費回復、海外投資の再開、製造業の再稼働、住宅販売の安定など、さまざまな好材料が期待されていました。しかし、実際には、中国人消費者は不況に備えて貯蓄を増やし、外国企業は資金撤退を加速、製造業は西側諸国からの需要減退に直面、地方政府の財政は不安定になり、大手不動産会社は相次いで債務不履行に陥りました。

こうした状況を受け、一部の経済学者は、日本がバブル崩壊後に経験した「失われた数十年」との類似点を指摘しています。ただ、日本の場合は、このブログでも指摘してきたように、バブル崩壊そのものが、日銀官僚や財務官僚の誤謬によるものであり、正しいマクロ経済運営をしていれば、そもそも崩壊はなかっといえますが、現状の中国は違います。

また、中国政府が10年前に不動産開発主導の発展から内需主導型の成長に経済を移行すべきだったが、それを怠ったと批判する声もありますが、これもかなり難しかったと考えられます。

なぜなら、従来から指摘してきたように、中国は国際金融のトリレンマにもはまっており、これを現在の中国共産党による体制では、変えることは難しいからです。これにより、中国人民銀行は、独立した金融政策が行えない状況に陥っています。

中国政府は、こうした課題を克服するため、消費を拡大し、経済の不動産依存を減らすと宣言。金融機関に対し、不動産開発からハイテク業界への融資に転換するよう指導しています。

しかし、中国政府がこれらの課題を解決するには、より大胆な構造改革が必要です。具体的には、固定相場制から変動相場制への移行、金融システムの改革、民間企業の権利の拡大、市場競争の促進などが必要不可欠です。

中国政府がこれらの改革に成功すれば、中国経済は新たな成長軌道に乗ることができるでしょう。しかし、失敗すれば、中国は「中所得国の罠」に陥り、世界経済の成長を牽引する役割を失うでしょう。現在の中国の体制では、これはできないでしょう。

そうなると、今の体制である限り、今後中国経済は数十年にわたって低迷し続けるでしょう。いつか中国経済が米国経済を超すといわれていましたが、現状ではそのようなことは全く考えられません。

インド経済は、これからも飛躍的に伸び、米国や日本、EU経済もこれからもある程度は伸び続け、その他の国々も、中所得国の罠や国際金融のトリレンマにはまっていない国々や、これからそれにはまることを防ぐ国は成長を続けるでしょうが、そうではない国々は中国を含めて低迷し続けることになるでしょう。

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