2024年1月27日土曜日

派閥解散で浮上する衆院解散・総選挙、続投を目指して消費税減税の可能性も―【私の論評】岸田首相、「派閥解散で財務省の圧力封じ」と「消費税減税で国民の支持回復」を目論んだか

派閥解散で浮上する衆院解散・総選挙、続投を目指して消費税減税の可能性も

まとめ
  • 岸田首相が派閥解散を宣言したことで、長期政権を目指して衆院解散に踏み切る可能性が出てきた。
  • メインシナリオは9月の自民党総裁選までの政権継続だが、秋の総裁選で続投が難しいと判断すれば、一か八かの衆院解散もあり得る情勢だ。
  • 仮に首相が衆院解散に踏み切るとすれば、所得税・住民税の減税が実施される6月か。あわせて、消費税減税も視野に入る。
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)


 2024年1月、岸田文雄首相は、自らが率いていた岸田派(宏池会)の解散を宣言した。これは、政治資金問題で派閥の元会計責任者が略式起訴されたことを受けての判断であった。

 これに伴い、安倍派(清和政策研究会)や二階派(志帥会)も解散を決定し、自民党の主要派閥は6から2に減少した。

派閥解散の背景

 岸田派の解散は、政治資金問題による追い込まれた決断であった。しかし、その背景には、自民党内の派閥政治の変化も影響している。

 これまで、自民党の政権運営は、派閥の力学によって大きく左右されてきた。しかし、近年は、派閥の力は弱まり、首相の権限が強まっている。

 その背景には、以下の要因が考えられる。
  • 選挙制度の改正による小選挙区制の導入
  • マスコミの報道力の強化
  • インターネットの普及による国民の政治意識の高まり
 これらの要因により、派閥の力は弱まり、首相の権限が強まった。そのため、岸田首相は、派閥の力を排除し、自らの政権運営を進めるために、派閥解散を決断したと考えられる。

派閥解散の影響

 派閥解散は、自民党内の権力闘争を難しくし、岸田首相の政権継続を容易にすると考えられる。

 これまで、派閥は、首相の退陣や党内人事をめぐる権力闘争の舞台となってきた。しかし、派閥が解散したことで、そのような権力闘争が難しくなる。

 また、派閥解散は、自民党内の対立を緩和する効果も期待される。

 これまで、自民党内には、安倍派と岸田派の対立など、さまざまな対立があった。しかし、派閥が解散したことで、そのような対立が緩和され、政権運営が円滑になる可能性がある。

衆院解散の可能性

 岸田首相は、秋の総裁選まで政権を継続する意向を示している。しかし、内閣支持率が低迷していることから、衆院解散の可能性も指摘されている。

 もし、岸田首相が衆院解散に踏み切った場合、6月に行われる所得税・住民税の減税と合わせて、消費税減税を実施する可能性も考えらる。

 消費税減税は、国民の支持を回復させるための有効な手段として考えられるため、岸田首相は、衆院解散を機に消費税減税を実施する可能性が高い。

経済政策への影響

 政治情勢の変化は、経済政策にも影響を与える可能性がある。

 金融政策については、誰が首相になっても、当面影響はないだろう。しかし、財政政策については、首相次第だ。

 岸田首相は、財政健全化と分配の両方を目指すスタンスだが、続投を目指して分配重視へ大胆に舵を切る可能性もある。そのため、消費税減税などの大胆な経済政策を実施する可能性も念頭に置く必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相、「派閥解散で財務省の圧力封じ」と「消費税減税で国民の支持回復」を目論んだか

まとめ
  • 岸田首相は、秋までの続投と秋の総裁選で勝利しさらに続投する考えのようだ。
  • 岸田首相は、財務省の「減税潰し」に対抗するためにも派閥解消を行った可能性がある。
  • 岸田首相の所得税・住民税減税は、減税額が小さい、財政赤字を拡大させる、景気への効果が不透明などの理由から、国民に不人気なようだ。
  • 岸田首相は、財務省のネガティブキャンペーンも、所得税・住民税減税に対する国民不人気を高めている可能性があると考えているようだ。
  • 岸田首相は、所得税・住民税減税だけでは、国民の支持を得られないとして、消費税減税に踏み込む可能性もある。そうすれば、大快挙となり、歴史に名を刻む可能性もある。

岸田政権の安定した運営を目指し、首相は派閥解散などの様々な手を打っているようです。周りや有権者などとは、関係なく、岸田首相自身は秋まで続投し、あわよくば秋の総裁選で勝利し続投する考えのようです。秋までの続投は、首相自身がそれを翻さない限り、これを誰も阻止することはできません。

鈴木財務大臣

岸田政権が昨年「来年6月から、所得税を1人当たり3万円、住民税を1人当たり1万円減額する方針」を示した際、鈴木俊一財務相が11月8日の衆院財務金融委員会で、岸田首相がこの「国民還元」の原資だと説明した税収増について、「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」といい、還元の原資がないことを表明しました。

宮沢洋一自民党税調会長も同日掲載の日経新聞インタビューで、「『還元』といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない」と述べていました。

これは、岸田首相の説明を完全否定され、身内から梯子を外されたともいえる、異常事態といえます。最強官庁といわれる財務省と呼吸を合わせて「減税潰し」の挙に出てきたとみられます。この異常事態により、岸田首相は、財務省の"緊縮財政増さえできれば、首相など誰でも良い、減税する首相は潰す"という財務省の本性を嫌というほど思い知らされたことでしょう。

派閥解消は、財務省に対する対抗策であった可能性も高いです。

派閥解消により、自民党内の派閥政治が弱まり、首相の権限が強まります。そのため、首相は、派閥に頼らず、財務省の意見に左右されずに、財政政策を決定しやすくなります。

また、派閥解消により、財務省の天下り先が減少する可能性があります。派閥の力が弱まると、財務省の幹部が派閥の役員や議員に就任する機会が減少するためです。

具体的には、財務省の政策提言が政府の政策決定に影響を与えにくくなり、政府の政策決定に介入する機会が減り、天下り先が減少し、人材の流動性が低下するなどの事が考えられます。派閥解消は、財務省にとって、一定のリスクを伴うのは間違いありません。

さらに、派閥解消は、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の権限を強める可能性はあります。

派閥解消により、自民党内の派閥政治が弱まり、首相の権限が強まります。そのため、首相は、派閥に頼らず、積極財政派議員の支持を獲得するために、議連の活動を重視するようになる可能性があります。

また、派閥解消により、積極財政派議員がより自由に活動できるようになるため、議連の活動が活発化し、政府への影響力が増す可能性があります。

無論、財政再建派議連の権限が強まる可能性もありますが、積極財政派の議員のほうが数的には多いです。

責任ある積極財政を推進する議員連盟

現在、岸田首相は自民党内の自らの権限を強めることにより、首相続投を目指し奔走しています。派閥解消により、それは成就されつつあります。ただ、もう一つの大きな懸念があります。それは、岸田政権の支持率低下です。これは、なんとかしなければなりません。

岸田首相は、支持率の上昇を狙って、所得税・住民税の減税を打ち出したのでしょうが、これは、なぜか国民にあまり人気がなかったようです。

これは、減税額が小さい、財政赤字を拡大させる、景気への効果が不透明ということが理由のようです。

ただし、減税そのものは、本来歓迎すべきものだと考えられるにもかかわらず、あそこまで不人気なのは、他にも理由があると考えられます。財務省やそれに追随する人々によるネガティブキャンペーンも、所得税・住民税減税に対する国民の反発を高めている可能性は否定できません。

財務省は、財政赤字を抑制することを最優先に考えているため、所得税・住民税減税に反対しています。財務省は、所得税・住民税減税は財政赤字を拡大させ、景気への効果も不透明であると主張しています。

こうした財務省の主張は、マスコミや一部の経済学者によって取り上げられることで、国民に広く知られるようになりました。このため、国民の中には、所得税・住民税減税は財政赤字を拡大させるだけの無駄な政策であると考える人が増えたと考えられます。

岸田総理は、財務省出身の親族や内閣メンバーが多いことから、財務省の内部事情に詳しいと考えられます。また、財務省出身の財務大臣と協調しながら政策を進めていることから、財務省の考え方を理解しているとも考えられます。

このようなことから、岸田総理は、財務省の思惑や動きをある程度予測することができるでしょう。また、財務省との交渉においても、有利な立場から交渉を行うことができる可能性があります。

さらに、首相が財務省の政治活動を封じるための具体的な制度や法律については、以下が考えられます。

1. 財務省設置法:財務省設置法は、財務省の組織とその職務を規定しています。この法律により、財務省は国の予算、決算、会計、租税、通貨制度、日本国債、財政投融資、国有財産、外国為替、酒類、たばこ、塩事業に関することなどを司ることとされています。これを改定するという手があります。

2. 経済安全保障推進法:経済安全保障推進法は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律であり、首相が財務省の政治活動を封じるための具体的な法律の一つです。

3. 公務員の政治活動の自由の制限:公務員は全体の奉仕者であり、行政の中立性とそれに対する国民の信頼性のために、公務員の政治活動の自由の制限は、合理的で必要やむをえない制限が許されるとされています。

これらは一部の視点であり、具体的な制度や法律は状況や目標によります。また、これらの制度や法律はすべて首相の権限と責任の範囲内で行われるべきです。しかし、財務省が岸田政権の安定運営に対する障害になれば、首相は国権を発動して、財務省の政治活動を制限できます。そもそもも財務省は、国民から選ばれたわけではないので、政治活動をすべきではありません。大義名分もあります。

財務省

こうしたことから、岸田首相は所得税・住民税減税だけでは、国民の支持を得られないとして、消費税減税に踏み込む可能性は捨てきれません。これにより、岸田政権の支持率が上がれば、消費税減税を公約として、解散総選挙に打ってでる可能性もあります。

もし、そうすれば、消費税減税は過去に事例がないこと、あの安倍首相ですら、在任期間中に、延期はしたものの、結局二度も消費税を上げざるを得なかったのですから、大快挙となるのは間違いないです。これを実現すれば、その動機はどうであれ、岸田首相は名宰相とし歴史に名を刻むことができるでしょう。

これに対して、財務省とその走狗達は、大ネガティブキャンペーンをはるでしょうが、国民は、消費税減税に関しては、素直に評価すべきでしょう。

無論現段階では、岸田首相が実際に消費税減税をするかどうかまでは、全く予想できませんが、続投したいなら、これを実施するくらしか手は残されていないのも事実です。

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