まとめ
- 中国がインド洋で水中測量を実施しているという。
- 水中戦を計画するためかもしれないと戦略国際問題研究所(CSIS)は指摘している。
- 中国はアジア太平洋地域で軍事力を拡大しようとしている。
中国国旗を掲揚した潜水艦 |
CSISがAIデータ会社Windwardのデータを使用して行った最新の調査によれば、中国の調査船は過去4年間で世界中で数十万時間のオペレーションを行っており、一部は不審な行動を示し、軍事関連施設のある港に停泊することがあると報告されている。また、一部の船はセンシティブな地域ではダークモードに入ったり、識別システムをオフにするなど、警戒行動をとっている。
CSISはさらに、中国の海底地形図作成は軍民融合戦略の一環であり、民間企業や研究が軍事目的で利用される可能性があると指摘している。インド洋は中国にとって戦略的で経済的に重要な地域であり、中国は外洋海軍の創設を検討しており、国家安全保障と研究の境界線を曖昧にすることで実現に貢献しようとしているとされている。関連して、中国とインドの関係が悪化しており、インドは中国の調査船の活動に対する懸念を強めている。
この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。
海底地図は対水上艦戦において重要な役割を果たし、いくつかの重要な目的のために不可欠な道具として機能します
1. 追跡と照準
米国はその長い歴史と大規模な投資により、より広範で包括的な世界の海底データを保有しています。これにはさまざまな地域の高解像度の地図が含まれ、中国の集中的な取り組みに比べ、世界の海洋の大部分をカバーしています。
米国の地図作成は、研究機関や他国と共同で行われることが多く、厳格な科学的基準と品質管理を重視しているため、中国の不透明な地図作成に比べ、一般的に精度が高いです。
したがって、現在、海底マッピング全体では米国が強力なリードを保っていますが、中国の進歩を注視し、今後どのように、そうしてどの程度その差を縮めるのか、注視していく必要があります。
【私の論評】対潜水艦戦略の一環:中国の水中測量活動と地域の海軍力強化の必要性
まとめ
- 中国はインド洋で水中測量を実施し、その目的は主に水中戦(ASW)の強化である可能性が高い。
- 現代海戦ではASWが重要であり、日米はASWにおいて圧倒的な優位性を持っている。
- 海底地図はASWにおいて不可欠であり、追跡、照準、武器配備、地雷配置といった要素に影響を与える。
- 米国は長い歴史と大規模な投資により、世界の海底データを豊富に保有しており、中国の取り組みに比べて高い精度を誇る。
- 中国の積極的な海底地図作成は懸念すべきものであり、将来的には海軍力の包囲や領有権主張の可能性があり、日米や同盟国は地域の海軍力を強化すべきだと考えられている。
中国の海洋調査船 |
上の記事では、「中国がインド洋で水中測量を行っており、これが水中戦の計画の一環である可能性がある」としていますが、これは可能性というよりは、そのものずばり水中戦のためのものと言って良いです。
正確にいえば、ASW(Anti Submarine Warfare:対戦水艦戦)の強化というべきです。このブログでは、現代海戦は、ASWが強いほうが勝つと何度か指摘してきました。現代では、空母を含めた水上艦艇は、ミサイルの標的に過ぎません。しかし、水中を潜航する潜水艦は違います。
日米は、対潜哨戒能力が高く、日本はステルス性に優れた潜水艦を有し、米国は攻撃力に優れた攻撃型原潜を有しており、両国はASWにおいては、他国より圧倒的に勝っています。そのため、中国を含めた他国の海軍は、海戦において日本や米国に勝つことはできません。
最近、中国もASWを強化しつつあり、潜水艦の能力や、対潜哨戒能力をたかめつつありますが、まだハード面でも、ソフト面でも日米には及びません。中国がこの面で日米の水準に追いつくには数十年かかるでしょう。
ハード面で追いついたとしても、ソフト面で追いつくのは至難の技です。このブログでは過去に、これを脳外科手術にたとえました。脳外科手術において、たとえハードを整えたとしても、脳外科医のノウハウや経験がないと、満足な手術はできません。それと同じく、ASWもソフト面を充実しないと、ハードだけでは、無用の長物になってしまいます。
そのソフトの格好の事例が、水中測量による海底地図です。
1. 追跡と照準
海底地形:海底の詳細な地図は、潜在的な潜伏スポット、チョークポイント、強い潮流のある地域など、水中環境を理解するために不可欠です。この知識により、対潜水艦部隊は敵潜水艦の動きをより効果的に追跡し、その航路を予測し、それに応じて対抗策を展開することができます。
音響伝播: 海底地図には水温、塩分濃度、水深のデータが組み込まれており、これらは音波が水中を伝わる方法に影響を与えます。この情報は、ソナーやその他の音響探知システムの射程距離と効果を予測するのに役立ち、的を絞った捜索活動を可能にし、照準データの精度を向上させます。
2. 地雷原の配置と防御
地雷の配置: 海底マップは、敵潜水艦が活動しそうな地域に水中機雷を戦略的に配置するために使用されます。これにより、効果的なバリアやトラップを作り出し、動きを制限し、敵艦に損害を与えたり、効果的に破壊することができます。
機雷原の防衛: 正確な地図により、対潜水艦部隊は、機雷の掃海や機雷無力化システムの配備など、対機雷作戦の計画と実行が可能になります。さらに、敵の機雷原が味方の作戦に与える潜在的な影響の把握にも役立ちます。
3. 武器配備とナビゲーション
爆雷照準: 敵潜水艦の正確な位置を知ることで、爆雷の正確な配備が可能になり、攻撃成功の可能性が大幅に高まります。
対潜兵器のナビゲーション: 魚雷の発射、ソノブイの配備、水中ドローンの操作のいずれにおいても、潜水艦マップは正確な航行と効果的な武器利用を保証します。
4. 任務計画と訓練
シナリオ作成: リアルな水中マップは、対潜水艦要員を訓練するための模擬戦シナリオの作成を可能にします。これにより、実際の状況に遭遇する前に、安全な環境で戦術を練習し、手順を洗練させ、経験を積むことができます。
作戦計画: 地図は、対潜作戦を計画し、哨戒ルートを決定し、資源を配分し、軍の異なる部門を調整するための重要なツールとなる。
海底地図は対水上艦戦に不可欠な情報資源として機能し、水中環境の包括的な理解を提供し、敵潜水艦に対する効果的な追跡、照準、武器配備を促進します。潜水艦技術の進歩や水中戦の複雑化に伴い、その重要性はますます高まっています。
中国の潜水艦基地 |
米国の地図作成は、研究機関や他国と共同で行われることが多く、厳格な科学的基準と品質管理を重視しているため、中国の不透明な地図作成に比べ、一般的に精度が高いです。
日本の軍事用潜水艦地図の具体的な詳細は秘密のベールに包まれたままですが、その高度な潜水艦能力と民間および国際的な地図作成活動への関与は、水中航行と作戦に関連する詳細かつ正確なデータを保有している可能性が高いことを示しています。
しかし、中国は、自国の勢力範囲内で戦略的に関心のある地域の地図作成に多額の投資を行っており、特定の地域において高い精度と詳細を達成できる可能性がありますし、独自の水中マッピング技術と能力を急速に開発しており、将来的には米国とのギャップを埋めることを目指しているようです。
したがって、現在、海底マッピング全体では米国が強力なリードを保っていますが、中国の進歩を注視し、今後どのように、そうしてどの程度その差を縮めるのか、注視していく必要があります。
そうして、中国によるインド洋の積極的な海底地図作成は、極めて懸念すべきものであり、彼らは将来インドを海軍力で包囲することを目論んでいる可能性もあります。海底の地図を作成し、いずれこの地域の国際水域のいずれかの地域の領有権を主張し、監視と威嚇のために潜水艦を配備することもありえます。これは、南シナ海の例もあることですから、あり得ないと断言することはできないです。
これは、この地域の通信や通商の重要なインフラを脅かすことになりかねません。この地域の安定と安全を考えれば、日米やその同盟国はこの地域の海軍力を強化すべきです。南シナ海の二の舞を舞うべきではありませ。特に、インドの対戦水艦戦の能力は強化すべきものと思います。
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