2024年1月18日木曜日

習主席にとって大誤算だった台湾総統選 米大統領選の間隙突く恐れも 日本は平和ボケでいられない―【私の論評】『警鐘』米国の軍事力低下で日本が平和ボケでいることを許されない理由

習主席にとって大誤算だった台湾総統選 米大統領選の間隙突く恐れも 日本は平和ボケでいられない

頼清徳氏

まとめ
  • 台湾総統選:頼清徳氏が再選!選挙結果と国内政治の微妙なバランス
  • 民進党3連勝、国民党3連敗:台湾総統選挙の政治的な影響と未来の展望
  • 中国のプロパガンダに屈せず、台湾が示した民主主義の勝利とは?
  • 米国・日本の対応:台湾総統選結果が引き起こす地政学的な動きとは?
  • 台湾選挙と緊張関係:バイデン大統領の発言と日本の役割に注目

  台湾総統選挙は、13日に行われ、与党・民進党の頼清徳氏が予想通りの勝利を収めた。頼氏は獲得票数558万6019票で、得票率は40.0%だった。一方で、国民党の侯友宜氏は467万1021票、民衆党の柯文哲氏は369万4666票を獲得し、頼氏が再選される結果となった。

 同時に行われた議会・立法院の選挙では、113議席中、国民党が52議席、民進党が51議席、民衆党が8議席を獲得した。民進党が過半数を獲得できなかったことは予想通りだが、国民党も過半数を確保できなかったため、台湾の政治は微妙なバランスとなった。

 頼氏は選挙本部で、「台湾は民主主義国家の共同体にとっての勝利を収めた」と述べ、「現状維持」を主張している。一方で野党は、かつて頼氏が「現実的な台湾独立工作者だ」と発言したことを取り上げ、特に侯友宜氏は中国政府のような批判を展開していた。頼氏は最近「独立」という言葉を避けていたが、中国のプロパガンダにより「独立派」とされた。

 結果として、台湾は中国のプロパガンダに屈せず、頼氏を再選することで、台湾の民主主義の機能を示した。1996年以降、総統は国民によって選ばれており、今回の結果は民進党3連勝、国民党3連敗となる、3期12年の政権が登場した初めてのケースだ。

 中国は結果に失望し、「今回の選挙は、祖国がやがて必ずや統一されるという、阻止できない流れを妨げられない」とのコメントを発表。一方で、米国は台湾の民主制度を讃え、「台湾の人たちがまたしても、旺盛な民主制度と選挙手続きの力強さを示したことに、祝意を表したい」と述べた。

 ただし、米大統領は台湾の「独立を支持していない」と強調し、現状維持を望んでいるとの立場を示した。この発言に対し、日本は米大統領選結果にかかわらず、アジアの安定のために相応の負担を覚悟する必要があるとの見解を示している。ただし、中国との緊張が続く中、米大統領選の結果や動向を注視しながら対応することが必要とされている。日本はそれまでに米大統領選結果にかかわらず、アジアの安定のために相応の負担の覚悟が求められる。というのは、米国は、ウクライナ、中東と台湾で「三正面作戦」を強いられており、この3つに同時に対応することはできないからだ。日本が平和ボケでいることはあり得ない。 

【私の論評】『警鐘』米国の軍事力低下で日本が平和ボケでいることを許されない理由

まとめ

  • 現在の米軍は、ウクライナ、中東、台湾の3つの地域で同時に戦争を行う能力がない。
  • 米軍の軍事力指標は、ヘリテージ財団の2020年調査によると、陸軍は「限界」、海軍は「限界」と評価されている。
  • 米軍の軍事力指標が低下した理由は、予算削減による艦艇の老朽化や整備不足などが挙げられる。
  • 今後、日本は、自国の軍事力を高める、安全保障パートナーシップの多様化を図る、積極的な外交を重視するなどの対策を講じる必要がある。
  • 米国の軍事力低下は、地域の不安定化や紛争の増大につながる可能性がある。
上の記事で、高橋洋一氏は、「米国は、ウクラ内、中東と台湾で「三正面作戦」を強いられており、この3つに同時に対応することはできないからだ」として日本平和ボケでいることはあり得ないと。述べています。

これは、本当です。現在の米軍は三正面作戦どころか、二正面作戦も十分には対応できないです。これについては、以前このブログにも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【国家の流儀】韓国と連動して中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まる…安倍政権はどう対応するか―【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!

中東などで米軍が大規模な作戦を遂行しているときに、日本海で同時大規模な作戦を遂行する能力は今の米軍にはありません。

米軍の海外配置の状況(グァムは米国領なので含まず)

これについては、以前のブログにも掲載したことですが、最近米国のシンクタンクが、これについて研究した結果を発表しています。

中露や中東の軍事的脅威に対応する米軍の能力が「限界」にあるという厳しい評価が下されたのです。これは、米軍事専門シンクタンクによるもので、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と強調しています。

問題なのは、特に海軍において、この相対的弱体化に即効性のある解決策がないことです。「世界最強」のはずの米軍に何が起こっているのでしょうか。

評価は著名な米保守系シンクタンクのヘリテージ財団によるものです。同財団が10月末に発表した「2020年 米軍の軍事力指標」と題する年次報告書は、米陸海空軍と海兵隊の軍事的対処能力を、非常に強い▽強い▽限界▽弱い▽非常に弱い-の5段階で評価しています。ただ、基準は「2つの主要な戦争を処理する能力」などとしており、2正面作戦を行うにおいての評価であるあたりが超大国米国らしいです。

とはいえ、中東ではイランの核開発、南シナ海では中国の軍事的膨張、さらに北朝鮮の核ミサイル開発と、地域紛争が偶発的に発生しかねない「火薬庫候補」は複数あり、2正面を基準にするのは米国としては当然の条件です。

この5段階で「限界」とは、乱暴な言い方をすれば「戦争になっても勝てるとは言えず、苦い引き分けで終わりかねない」、あるいは「軍事的目標を達成するのは容易ではない」ということです。

同報告書では欧州や中東、アジアの3地域での軍事的環境を分析。例えば中国については「米国が直面する最も包括的な脅威であり、その挑発的な行動は積極的なままであり、軍事的近代化と増強が継続している」などと、それぞれの地域の脅威を明らかにしたうえで、対応する陸海空軍などの米軍の能力を個別評価しています。ところが驚くことに、その内容は、「限界」ばかりなのです。

まず陸軍は、昨年に引き続き「限界」のまま。訓練や教育など多大な努力により旅団戦闘団(BCT)の77%が任務に投入できる状態となった点は高く評価されたのですが、兵力を48万人から50万人に増強する過渡期にあり、その準備や訓練に加え、陸軍全体の近代化が課題となっています。

さらに問題なのは海軍です。前年同様「限界」ですが、内容は厳しいです。まず艦艇の数で、「中国海軍300隻と(海軍同様の装備を持つ)175隻の中国沿岸警備隊」(米国海軍協会)に対し米海軍は290隻。トランプ政権は「2030年代までに海軍の保有艦艇を355隻に増やす」との構想を持っています。一部には予算面から、この構想の無謀さを指摘する声があるのですが、本当の問題は355という数字をクリアすることではなく、艦艇の運用面、いわばクリアした後にあるのです。

海軍艦艇は整備と修理や改修、耐用年数延長工事や性能アップのため、定期的にドック入りして「改善」を行う必要があります。一般的に、全艦艇の3分の1はこうした「整備中」にあり、訓練中も含めれば、即時に戦闘行動に投入できるのは半数程度とされます。

ところが米海軍には、大型艦艇に対応するドックが足りないのです。全長300メートルを超える原子力空母ともなれば、ドック入りしなければならないのに他の艦船が入渠(にゅうきょ)しているため、順番待ちが生じている状態なのです。

米国海軍協会などによると、米海軍原子力空母11隻のうち現在、任務として展開しているのはロナルド・レーガン▽ジョン・C・ステニス▽エイブラハム・リンカーン-の3隻のみ。ニミッツをはじめほか8隻はドックで整備や部分故障の対応中といった状態なのです。 
しかも空母に限らず米海軍艦艇がドック入りした際の整備の工期は、予定を大幅に超える事態が頻発しているというのです。

過去のオバマ政権時の軍事予算削減が響き、ドックも足りず、整備できる人間の数も足りないのです。このような状況でなお艦艇数を増やしても、整備や修理待ちの列が長くなるだけです。また原子力空母の多くが建造後20年が経つということに代表される、各種艦艇の老朽化、さらには新型艦の不足も海軍を悩ませています。

報告書では「資金不足と利用可能な造船所の一般的な不足により、艦艇のメンテナンスが大幅に滞り、配備可能な船舶と乗組員に追加の負担がかかっている」と指摘されています。
ヘリテージ財団

この記事を掲載したときには、ウクライナ戦争は始まっていませんでした。台湾侵攻の可能性については、中国はすでに主張していました。中東は、比較的平穏でした。結局「日本海争奪戦」などという事態は起きませんでしたが、2024年の世界は新たな次元に突入しつつあります。

現状の世界を見回すと、ウクライナ戦争は、今年で三年目に入りました。アジアでは、中国は武力による台湾侵攻の可能性を否定していません。中東では、イスラエルがガザ地区で大規模な作戦に実行している状況です。紅海では、イランの支援を受けているとみられるフーシ派がミサイルを発射するなどの不穏な動きをみせています。

これらが、さらに大きな戦争にならないとは断言できません。戦争にならないにしても、中国、ロシア、イランが結託して、軍事行動や示威行動をする可能性は高いです。

日本は以下を検討するだけではなく、実行すべきです。

  • まずは、自国の軍事力をさらに高めることです。 これには、防衛費の増加、より高度な兵器の開発、海上・航空部隊の強化が含まれます。
  • さらに、安全保障パートナーシップの多様化をすべきです。米国との同盟を基軸としつつ、オーストラリアやインドなど他の地域大国との緊密な協力関係を強化すべきです。
  • さらに積極的外交を強化すべきです。 この地域、特に中国や北朝鮮との緊張緩和を目的とした対話や紛争解決に取り組むべきです。
米国の軍事的優位性が低下すると認識されれば、特定の地域に力の空白が生じ、不安定性や紛争が増大する可能性があります。

中国やロシアのような他の大国は、米国の明らかな限界に勇気づけられ、自己主張を強めるかもしれないです。「日本海争奪戦」なども起こる可能性は否定できません。実際、中国は2023年7月、中国が日本の排他的経済水域(EEZ)内にブイを設置しています。

中国が日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置したのと同方のブイ

国際社会は、世界のパワーバランスの変化に対応するために、既存の安全保障の枠組みを再評価し、適応させる必要があります。

日本が、21世紀においてますます複雑で不確実な安全保障の状況を乗り切るためには、戦略的な先見性と積極的な対策が必要不可欠です。

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