2024年3月11日月曜日

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…欧米主導EVシフトが崩壊で見えた、日本一人勝ちの未来―【私の論評】究極的には核融合炉の実用化が内燃機関からの完全脱却を可能に

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…欧米主導EVシフトが崩壊で見えた、日本一人勝ちの未来

まとめ
  • 日経平均株価が史上初の4万円を記録し、日本経済の好景気が期待されている。
  • 世界的にEV(電気自動車)需要が鈍化する一方で、トヨタが得意とするHV(ハイブリッド車)の需要が高まっている。
  • トヨタは2024年3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増と大幅に上方修正した。
  • トヨタの時価総額が60兆円を超え、日本企業として唯一世界時価総額ランキングトップ50に入っている。
  • トヨタは新たにエンジン開発プロジェクトを立ち上げ、HVやエンジン車に注力する方針を示した。


 日本経済が長年の低迷から脱却する兆しを見せる中、日経平均株価が史上初めて4万円の大台に乗り、バブル経済期以来の高水準となった。企業業績の好調が株価の上昇を後押ししており、国を代表する自動車メーカー、トヨタ自動車は2024年3月期の連結営業利益見通しを前期比80%増の4兆9000億円と大幅に上方修正するなど、好調な数字を示している。

 このようにトヨタの業績動向が、日本経済の現状と行方を占う上で重要な指標となっている。同社は世界シェア6割を誇るハイブリッド車(HV)が柱となっており、米国をはじめ各国で販売が伸びている。一方で欧米勢は電気自動車(EV)への注力が空回りし、需要の鈍化に直面、戦略の見直しを余儀なくされている。

 豊富なハイブリッド技術とノウハウを有するトヨタは、EVのみならずHV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など、全方位で電動化に取り組む構えだ。とりわけHVについては「トヨタ一強」の状況が続いており、今後もさらなる需要の高まりが予測されている業界調査結果も出ている。

 かつてEVに傾注していた米自動車大手ビッグ3も、EV需要の停滞を受けてHVの開発に回帰する動きを見せるなど、日本勢の得意分野であるHVが再び注目を集めつつある。

 トヨタは創業者の言葉に基づき、時代の変化に先んじた革新的な取り組みを行うことで、日本の自動車産業の盤石な基盤を維持し、さらには裾野の広い同産業から波及する実体経済への好影響が期待されている。

 世界の自動車業界をリードし、時価総額でも世界トップクラスの存在感を放つトヨタの業績動向は、日本経済の浮沈を占う重要な バロメーターとなっているため、その先行きに注目が集まっている。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】究極的には核融合炉の実用化が内燃機関からの完全脱却を可能に

まとめ
  • 20世紀初頭の自動車普及は、フォードのモデルTの低価格化と、ガソリンの低価格が大きな要因であった。また、馬糞の環境問題からの解放も後押しした。
  • 現状では発電・送電ロスが大きいため、総合的なエネルギー効率ではガソリン車のほうがEV車より優位にある。
  • 小型原子炉が普及すれば、送電ロス削減、CO2排出量削減、エネルギー安全保障の強化などによりEV車の普及が加速する可能性がある。
  • 小型原子炉の実用化により、自宅やあらゆる場所でEVの便利な充電が可能になり、ガソリンスタンドの必要性が低下する。
  • しかし、究極的にはより安全な核融合炉の実用化が、内燃機関からの完全な脱却につながると考えられる。
EV車、HV車に関しては、以前このブログでも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
結局、豊田章男会長の予測が正しかった…アメリカで「日本製ハイブリッド車」がに売れている理由―【私の論評】EV車の普及にいまだ徹底的に欠けるものとは


 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部分を引用します。

米国において、輸送手段が馬から自動車へと大きくシフトしたのは、20世紀初頭とされています。この転換のきっかけとなった大きな要因は、ヘンリー・フォードによるモデルTの大量生産です。1908年にフォードによって導入されたモデルTは、低価格で大量生産が可能な自動車として、広く一般の人々に受け入れられました。以下に参考資料として、馬の餌代と、T型フォードの燃料代の比較を掲載します。

項目T型フォード
餌代月額10ドル~20ドル月額15ドル~20ドル
年間費用年間120ドル~240ドル年間180ドル~240ドル
燃料干し草、オオムギ、ニンジンガソリン
燃費1日あたり約20kgの干し草1ガロンあたり約25マイル

大雑把な比較ですが、餌代、燃料費との比較では、馬とT型フォードは伯仲していることがわかります。それと、当時都市部の環境問題の最大のものは実は馬糞でした。公共の交通機関から、個人の乗り物として、馬が多様されていた当時の世界中の都市部では、これが最大の環境問題となっていました。

これもかなり後押ししたものと思います。

馬とT型フォードのいずれを買うか悩む米国人 AI生成画像
当時の馬は、多くの人にとって手の届く価格でしたが、T型フォードは高価な買い物でした。T型フォードが普及するには、大量生産による価格低下と、平均的な労働者の年収向上が必要でした。

それと、米国における自動車の普及には確かにガソリンの低価格が大きな役割を果たしています。米国は世界有数の原油生産国であり、一般にガソリン価格は日本など他国と比べても低めに設定されています。20世紀初頭から中盤にかけて、特に安価な燃料の供給が自動車の急速な普及を後押ししたことは間違いありません。

自動車自体と、燃料が低価格ということが、米国で自動車が普及することに大きく貢献したといえます。

そうして、自動車が普及した背景として、馬糞の処理からの開放というのも大きかったことは間違いありません。これは、個人的にもそうですが、社会的にもそうでした。20世紀初頭の世界の都市の環境問題だったのは、馬糞の処理の問題でした。ガソリン車はこの環境問題を根本的に除去したのです。

この記事の結論は以下のようなものです。

私は、EV車が普及するのは、小型原発が普及した後であると思います。これについては、述べると長くなるので、詳細はまた別の機会に掲載しようと思います。ただ、小型原発が各地に設置されるようになれば、停電の心配はほとんどなくなるのと、従来の原発のように巨大な発電、送電施設も必要なくなるので、これはEV車の普及に間違いなく拍車をかけると思います。それまでの間は、やはりHV車が主流になると思われます。 

本日は、小型原発の普及がなぜEV車の普及に拍車をかけるのかを説明します。

まずは、エネルギー効率の観点から説明します。

現状の発電・送電システムにおいては、ガソリン車のほうがEV車よりもエネルギー効率が良いと考えられます。
  • 発電時の燃料損失: 火力発電所では、燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の燃焼時に一部がロスしてしまいます。発電効率は最大でも約40%程度です。
  • 送電時の電力損失 :長距離の送電では10%以上の電力損失が発生します。
  • 充電時の電力損失 :EV車の充電時には、さらに5~15%程度の電力損失があります。
  • ガソリン車のエネルギー効率 :一方、ガソリン車のエンジン効率は20~30%程度です。燃料輸送時の損失も少なく、タンクから車両までは比較的エネルギー損失が少ないです。
つまり、火力発電から充電までの一連のプロセスで50%以上の損失が発生するEV車に比べ、ガソリン車のほうがエネルギー効率では優位になっているわけです。

例えば、発電効率40%、送電損失10%、充電損失10%とすると、EV車では実際に動力に使えるのは発電所の燃料の僅か32%にすぎません。ガソリン車のエンジン効率25%と比べると、ガソリン車のほうが良いエネルギー効率となります。

このため、発電・送電インフラの抜本的な改善がない限り、現状ではガソリン車のほうが総合的なエネルギー効率で有利だと言えるでしょう。

小型原子炉が実用化され、各地に配置されれば、EV車の普及が本格化する理由は以下の点が挙げられます。

電力供給の安定性が高まる: 小型原子炉は立地場所を選ばず、需要地の近くに設置できるため、送電ロスが少なく、安定的な電力供給が可能になります。EVの充電インフラが十分に整備されれば、電力不足に伴う充電の制約がなくなります。
CO2排出量削減が進む: 原子力発電は運転時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。小型原子炉が普及すれば、化石燃料火力に比べCO2排出量が大幅に削減できます。EVの主要メリットである環境負荷の低減がさらに進むでしょう。
エネルギーセキュリティが高まる: 国内に分散配置された小型原子炉により、エネルギー供給のリスク分散が可能になります。中東情勢など海外に過度に依存しなくなり、エネルギー安全保障が強化されます。
EV普及のインセンティブが高まる: 環境対策や国家的なエネルギー安全保障の観点から、政府によるEV普及支援策が一層推進されるでしょう。補助金や税制優遇、インフラ整備など、EVを取り巻く環境が大きく改善する可能性があります。

つまり、小型原子炉の実用化により、EVの充電インフラが整備され、環境負荷低減とエネルギーセキュリティ確保が同時に図れるため、EV普及が加速する背景になると考えられます。

小型原発が普及した世界では、EV車の充電は自宅でするのが普通になるでしょう。それどころか、現在でも電化が進んでいますが、すべてがオール電化し、さらに、自宅以外で、充電できる場所もかなり広がるでしょう。そもそも電気料金がかなり下がるでしょう。それこそ、現在スマホの充電が無料でできるスポットがあるように、外で無料で便利に充電できるスポットもでてくるでしょう。

そのような世界では、ガソリン車、HV車のように、車のためだけに、ガソリンスタンドにわざわざガソリンを入れる手間は大きなものとなり、それこそ20世紀初頭の馬糞処理のように面倒なものとなるでしょう。

その頃には、EV車が当たり前のものとなり、ガソリン車、HV車は現在の馬のようなものであり、ノスタルジーを感じさせるものとなるでしょう。

小型原子炉は出力が小さいため、必要な冷却量は大型原子炉に比べて少なくて済みます。そのため安全ともいわれてはいますが、危険がないとうわけではないので、これを忌避する人々も多く普及には時間がかかるとみられます。

しかし、核融合炉が実用化し、小型化されれば、これは完璧にEV車は当たり前になるどころか、エネルギー源はすべて電気ということになり、世の中から内燃機関はなくなるでしょう。

逆に言うと、その時代が来るまでは、EV車の普及はないということです。

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