2024年3月4日月曜日

結局、豊田章男会長の予測が正しかった…アメリカで「日本製ハイブリッド車」がに売れている理由―【私の論評】EV車の普及にいまだ徹底的に欠けるものとは

結局、豊田章男会長の予測が正しかった…アメリカで「日本製ハイブリッド車」がに売れている理由

まとめ
  • 米国における電気自動車(EV)の販売が減速しており、2024年には前年を下回る可能性が浮上している。
  • 自動車メーカーは様々な手段でEVの販売を促進しようとしているが、それでも販売の減速が止まらない。
  • 日本勢を代表するハイブリッド車が飛躍的な売れ行きを示し、経済的・環境的な合理性と使いやすさが支持を受けている。
  • 2024年のEV販売が前年を下回る可能性が指摘され、EVブームが減速している一方で、ハイブリッド車の売れ行きは好調。
  • バイデン政権の2032年までにEV販売の目標が厳しいものであり、ハイブリッド車は一般消費者による支持を獲得している。

豊田章男会長

 米国において、電気自動車(EV)の販売が減速の兆候を見せ、2024年に入ってもその傾向が鮮明になっている。自動車メーカーは損失を覚悟した値引きや低い収益率、NFLスーパーボウル中継などの広告出稿、廉価なモデルの導入などで対応しているが、EVの販売が鈍化し続けている。

 2023年には新車登録の約7.6%を占める118万9051台のEVが販売され、前年比46%の伸びを見せたが、その伸び率は前年からの倍増から鈍化しており、2024年の成長予測も20~30%の増加というものであり、減速が続くと見込まれる。

 一方で、日本勢を代表するトヨタなどのハイブリッド車は飛躍的な売れ行きを示しており、その理由はEVとの比較での経済的・環境的な合理性と、消費者にとって使いやすさが大きな支持を受けているからだ。

 EVブームの減速が明確になっている中、特に衝撃的なのは2024年のEV販売が前年を下回る可能性があるとの予測だ。これは過去の増加傾向が今後も続くとの前提に依存する予測ではなく、現実的な販売データとして注目されている。

 2023年12月末時点での全米ディーラーにおけるEVの在庫日数が113日分であり、これは内燃機関車の69日分と比較して1.6倍に達している。EVの在庫が長期的なトレンドとなっており、これはガソリン車やハイブリッド車の売れ行きがEVよりも好調であることが原因だ。

 大寒波によりEVが動けなくなったことや、値引きや低金利の購入ローン、政府からの補助金など様々なインセンティブが存在しているにもかかわらず、2024年1月のEV販売台数は前年を下回る7万9517台となった。

 一方で、ハイブリッド車は前年同月比で51.4%も増加し、EVとの差を広げている。これはトヨタ自動車が含まれており、ハイブリッド車の販売台数の53.6%をトヨタが占めている。

 EVの販売が減速している中、フォードのEV販売は2024年1月に前年同月比で11%低下し、韓国のヒョンデや起亜などは増加している。しかし、フォードは大幅な値下げを実施しており、EVのインセンティブが平均取引価格(ATP)の3倍に引き上げられているものの、一般消費者の反応は弱いとされている。

 バイデン政権が2032年までに新車販売の67%をEVにする目標を掲げているが、これに対する課題が多い。EVが一般消費者の間でまだ普及していない現状や、政府の強力な規制に対する反発がある。企業もEV生産計画を縮小し、ハイブリッド車に大きな注力をしている。

 ハイブリッド車はその経済性と利便性から一般消費者に支持され、EVの普及を進めるためにはまだ課題が残っているとされている。トヨタ自動車の豊田章男会長の未来予測が現実的でり、EVの普及は今後もハイブリッド車との競争が続くものと見られる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。

【私の論評】EV車の普及にいまだ徹底的に欠けるものとは

まとめ
  • 中国ではEV車の販売が急減、地方政府の補助金削減や低価格競争の激化などが、これまで成功を収めていたEVメーカーに対して淘汰の波を引き起こしている。
  • Appleが10年にわたるEV開発計画を放棄した背景には、市場の成長鈍化や高い開発コストが指摘されている。
  • 米国政府は中国製自動車の国家安全保障リスクを検討しており、結果次第で厳しい規制が導入される可能性がある。
  • HV車は燃費性能や経済的利点、利便性などがあり、引き続き市場で好調な成績を収めている。
  • EVの普及には価格低下や充電スポットの増加、停電時の対応力向上が求められており、本格普及は小型原発普及の後と考えられる。

EV車の販売は、中国でも芳しくはないです。1月、電気自動車(EV)の販売が前月比37%減と大幅に減少しました。乗用車全体でも同14.1%の減少でした。 地方政府の販売補助金打ち切りによる販売減少、低価格競争の激化などで、これまで好調を維持してきたEVメーカーは淘汰の波を受けることが予想されます。

2月20日、EVメーカーの“華人運通”は少なくとも半年間、生産を停止すると報じられました。 2月末に1月分の給料を支払った後、同社は従業員への給与額を最低賃金レベルに引き下げる模様です。

BYDのように急速にEVの生産体制を強化し、積載用の電池の生産能力を引き上げる企業はあります。しかし、経済全体で支出抑制の圧力が高まり需要は減少し、値下げ競争の激化によって破たんするEVメーカーは増えました。

華人運通の生産停止は、中国経済の苦境が一段と深まったことを示唆しています。 当面、中国経済の低迷懸念は高まり、デフレ傾向も強まる可能性が高いです。

Appleは、約10年間進められていた電気自動車(EV)開発計画を断念しました。この計画は「タイタン」というコードネームで知られており、完全自動運転の実現を目指していたようです。

しかし、EV市場の成長が鈍化している状況や、高い開発コストと技術的な課題が開発断念の理由と指摘されています。開発には数十億ドルが投じられていたにも関わらず、プロジェクトに関わっていた約2000人の従業員の多くは、生成AIのプロジェクトに異動させられることになったそうです。

米国政府は、外国製でインターネットに接続する機能を持つ自動車、特に中国製の自動車に関して国家安全保障上のリスクがあるかを調査しています。米商務長官は、中国からの遠隔操作でアメリカの交通網が混乱する恐れがあると指摘しました。

調査の結果、安全保障への脅威と判断されれば、厳しい規制を検討するということです。中国製のコネクテッドカー(インターネット接続車)とEV(電気自動車)の増加は、セキュリティリスクを高める可能性があり、コンピュータ化やインターネットへの常時接続により、信頼できるデバイスだけがアメリカの国家安全保障に優先されるでしょう。

以上のように、このところ、何かと話題になっていますが、結局のところ、上の記事にもあるように、当面はトヨタ自動車の豊田章男会長の未来予測が現実的でり、EVの普及は今後もハイブリッド車との競争が続きそうです。

乗用車のように生活に密着した製品の場合、その普及の鍵は、やはり低価格であるということがあげられると思います。

米国において、輸送手段が馬から自動車へと大きくシフトしたのは、20世紀初頭とされています。この転換のきっかけとなった大きな要因は、ヘンリー・フォードによるモデルTの大量生産です。1908年にフォードによって導入されたモデルTは、低価格で大量生産が可能な自動車として、広く一般の人々に受け入れられました。以下に参考資料として、馬の餌代と、T型フォードの燃料代の比較を掲載します。
項目T型フォード
餌代月額10ドル~20ドル月額15ドル~20ドル
年間費用年間120ドル~240ドル年間180ドル~240ドル
燃料干し草、オオムギ、ニンジンガソリン
燃費1日あたり約20kgの干し草1ガロンあたり約25マイル

大雑把な比較ですが、餌代、燃料費との比較では、馬とT型フォードは伯仲していることがわかります。それと、当時都市部の環境問題の最大のものは実は馬糞でした。公共の交通機関から、個人の乗り物として、馬が多様されていた当時の世界中の都市部では、これが最大の環境問題となっていました。

これもかなり後押ししたものと思います。

馬とT型フォードのいずれを買うか悩む米国人 AI生成画像

当時の馬は、多くの人にとって手の届く価格でしたが、T型フォードは高価な買い物でした。T型フォードが普及するには、大量生産による価格低下と、平均的な労働者の年収向上が必要でした。

それと、米国における自動車の普及には確かにガソリンの低価格が大きな役割を果たしています。米国は世界有数の原油生産国であり、一般にガソリン価格は日本など他国と比べても低めに設定されています。20世紀初頭から中盤にかけて、特に安価な燃料の供給が自動車の急速な普及を後押ししたことは間違いありません。

自動車自体と、燃料が低価格ということが、米国で自動車が普及することに大きく貢献したといえます。

以下にEV、ガソリン、HV車の価格や燃費の比較の表を掲載します。

車種価格帯(USD)代表的なモデル補助金補助金後価格帯(USD)
EV車27,000 - 100,000Tesla Model 3, Chevrolet Bolt EV, Nissan LEAF7,500 - 12,50019,500 - 87,500
ガソリン車15,000 - 70,000Toyota Camry, Honda Accord, Ford F-150-15,000 - 70,000
HV車24,000 - 65,000Toyota Prius, Honda Insight, Hyundai Sonata Hybrid4,500 - 7,50016,500 - 57,500

情報源
EV車: https://www.fueleconomy.gov/feg/taxevb.shtml
ガソリン車: https://www.fueleconomy.gov/feg/taxevb.shtml
HV車: https://www.fueleconomy.gov/feg/taxevb.shtml

米国におけるEV車、ガソリン車、HV車の価格帯を比較すると、EV車が一番高価で、ガソリン車が最も安価です。HV車はEV車とガソリン車の中間の価格帯です。補助金を利用することで、EV車の価格はガソリン車やHV車に近くなります。

次は燃費について比較してみましょう。

車種平均燃費 (MPG)代表的なモデル電気代/ガソリン代 (USD/gallon)
EV車30 - 130Tesla Model 3, Chevrolet Bolt EV, Nissan LEAF0.15 - 0.25
ガソリン車20 - 35Toyota Camry, Honda Accord, Ford F-1503.5 - 5.0
HV車40 - 55Toyota Prius, Honda Insight, Hyundai Sonata Hybrid0.15 - 0.25 & 3.5 - 5.0
  • 上記はあくまで平均燃費であり、実際の燃費は車種、運転スタイル、道路状況などによって大きく異なる場合があります。
  • 電気代とガソリン代は地域によって大きく異なる場合があります。
  • EV車はガソリン車やHV車に比べて燃費が良く、燃料費が安いというメリットがあります。
  • HV車はEV車とガソリン車の中間の燃費性能であり、燃料費はEV車よりも高くなりますが、ガソリン車よりも安くなります。

情報源


上の2つの表は、あくまで大雑把な比較です。燃費などの点では、EVは普及の可能性はあります。後は、EV車自体の価格が下がることが条件になると思います。

あと、もう一つはガソリンスタンドのように、充電スポットがもっと増えることでしょう。それと、停電時には充電できないという欠点もあります。さらに、これはもう一つ重要なことですが、米国でT型フォードが普及した背景には、先に述べたように、馬糞を処理がなくなったことも大きな理由の一つです。いまのところ、ガソリン車やHV車からEV車に乗り換えたからといって、これに匹敵するほどの便益を得られることはありません。車は、車です。

一方、HV車は、燃費性能、環境性能、走行性能、経済性、利便性、災害時の対応力といった複数のメリットから注目を浴びています。ハイブリッド車はガソリン車よりも優れた燃費を実現し、市街地走行ではモーターのみでの運転が可能となりガソリン消費を抑えます。

CO2排出量の削減にも寄与し、エコカー減税などの政策を受けられる経済的利点もあります。また、こうした利便性と組み合わされた強いトルクによりスポーティーな加速と静かな運転が可能で、長距離旅行や災害時にも安心して使える利点があります。これらの特長から、HV車は広範囲なニーズに応える選択肢として今後も支持を集めることが期待されます。だからこそ、HV車の売れ行きが好調なのでしょう。

私は、EV車が普及するのは、小型原発が普及した後であると思います。これについては、述べると長くなるので、詳細はまた別の機会に掲載しようと思います。ただ、小型原発が各地に設置されるようになれば、停電の心配はほとんどなくなるのと、従来の原発のように巨大な発電、送電施設も必要なくなるので、これはEV車の普及に間違いなく拍車をかけると思います。それまでの間は、やはりHV車が主流になると思われます。

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