2024年3月26日火曜日

【コラム】異例の規模の日銀リーク、真剣な調査を-リーディー&モス―【私の論評】日本の情報漏えい:日銀スキャンダルから浮かび上がる情報セキュリティーの深刻な課題

【コラム】異例の規模の日銀リーク、真剣な調査を-リーディー&モス

まとめ
  • 政策決定の正式発表前の国内メディア報道がルーティン化
  • 情報セキュリティーの甘さを露呈、国会の調査必要

日銀

 日本銀行の金融政策決定会合の内容が、会合開催前から国内メディアに詳細を報じられるなど、情報漏えいの問題が深刻な事態となっている。3月の会合では、具体的な政策変更内容が事前にかなり詳しく報道されたほか、会合の模様までもが伝えられるスキャンダラスな事態となった。このように日銀の機密情報が外部に漏れ出すケースが後を絶たない。

 日銀側は、情報管理については厳格なルールを設けていると説明するが、実際には何らかの経路で機密情報が漏えいしている実態がある。機密漏えいによって、市場でかく乱が起きたり、数十億ドル規模の資金の動きに影響が及ぶ可能性もあり、中央銀行として極めて望ましくない事態である。日銀の情報管理体制の脆弱さを露呈する形となり、その信頼性を揺るがしかねない。

 他の主要中央銀行でも情報漏えいの事例はあり、米連邦準備制度理事会(FRB)でも、過去にFOMC議事要旨を一部に先行公開したり、メンバー自身が不適切な株取引をしたりする問題が発覚している。しかし、日銀の事例はそれを上回る極端なケースであり、他に例を見ない深刻な水準にある。

 このため、日銀は情報セキュリティーの重要性を真剣に認識し、今回の一連の漏えい事案の原因を徹底的に調査することが必要不可欠である。そして再発防止に向け、実効性のある対策を遅滞なく講じなければならない。日銀の信頼性が大きく揺らがれかねないという、極めて重大な問題となっているからである。

 国会でも情報漏えいへの対応が改めて問われており、岸田首相が日銀に回答を求めるべき時となっている。日銀が機密情報の取り扱いにおいて、国際的な水準を満たしていないのであれば、そのことが「ファイブアイズ」からの除外理由になっているとの指摘もある。国家の金融の最高権威機関としての体制を早急に立て直す必要がある。

【私の論評】日本の情報漏えい:日銀スキャンダルから浮かび上がる情報セキュリティーの深刻な課題

まとめ
  • 日本の情報セキュリティーに対する認識の甘さは、日銀スキャンダルを通じて明らかになった。
  • 機密漏えいは先進国でも重大な問題であり、過去に米国のFRBでも類似の事例があった。
  • 日銀の情報漏えいは、金融政策に影響を与える重大な問題である。
  • 日本政府の機密情報の取り扱いにも問題があり、再生可能エネルギー政策などで露呈されている。
  • 日本の情報漏えいは国際社会で信頼を損ない、情報セキュリティーの向上が喫緊の課題である。

日銀植田総裁

日本の情報セキュリティーに対する認識の甘さは、今回の日銀スキャンダルを見ても無残な有様です。機密漏えいへの危機感が大きく欠如していると言わざるを得ません。

先進国では、機密情報の不正な漏えいは到底許されるものではありません。米国でも過去に、連邦準備制度理事会(FRB)の重要文書が一部に先行して漏えいした事例がありました。これは死活問題とみなされ、大騒ぎになりました。ベター・マーケッツのデニス・ケレハーCEOは「FRBの情報管理体制はあまりにも脆弱だ。このようなことが起こり得たことが不可解だ」と痛烈に批判しています。

さらに、パンデミック時に一部のFRB当局者が内部情報を利用して不適切な株取引を行った問題が発覚すると、ローゼングレン・ボストン連銀総裁やカプラン・ダラス連銀総裁は辞任に追い込まれました。クラリダFRB副議長も任期切れ直前に辞任を余儀なくされています。機密漏えいは、重大な責任問題になり得るのです。

一方、今回の日銀の事態は、先進国の常識から見れば背筋が凍るようなスキャンダルです。緊急の金融政策決定の詳細内容が、会合の開始前から国内メディアにリークされていたのですから。これでは日銀の情報管理体制が板挟みの隙間から機密が次々と漏れ出す、無防備な状態であることが分かります。

重大な機密漏えいにもかかわらず、日銀は「報道各社がそれぞれの見方を示したもの」などと、全く無防備な対応しかできていません。まさに機密の取り扱いがずさんな有様です。国の重要機密がこれでは氷山の一角にすぎず、実際にはもっと深刻な事態なのかもしれません。

日銀の機密が無残にも漏えいしていることは、金融政策が国民生活に直結する中央銀行として、重大かつ深刻な問題です。これでは、我々国民の金利負担や年金運用への打撃を防ぐこともできません。日本人一人一人が、機密漏えいの重大性をもっと自覚し、危機感を持つ必要があるでしょう。

内閣府のタスクフォースでの資料の透かしにあった中国国営企業のロゴマーク

さらに、日本政府の機密情報の取り扱いにも、大きな問題があると指摘せざるを得ません。

再生可能エネルギー政策に関する内閣府のタスクフォースで、民間構成員から提出された資料に中国国営企業のロゴマークが入っていたという事態は重大です。さらに、経済産業省と金融庁の会議体でも同様に中国企業のロゴ入り資料が使用されていたことが分かり、政府の情報管理がずさんな実態が露呈しました。

これらは要するに、外国企業の関与が疑わしい資料が、政府の重要な政策検討の場で平然と利用されていた、ということです。政府としての機密保持意識が教科書通りにまったく欠如していたと言えます。

国家の重要政策の検討過程において、中国などの外国勢力に情報を筒抜けにされてはなりません。それは主権国家としての誇りに関わる重大問題であり、機密漏えいへの危機意識の欠如が改めて暴かれた形です。

このように、日銀の情報漏えい問題に加え、再生可能エネルギー政策をめぐるタスクフォースなどでの機密情報の取り扱いの杜撰さが明らかになったことで、日本政府全体の情報管理態勢が極めて脆弱であることが露呈しました。

国家の機密を守り、情報セキュリティーを確保することは、主権国家として最低限の責務です。政府は機密情報の取り扱いルールを徹底し、情報管理の重要性に対する意識改革を緊急に行う必要があります。国民一人一人も、政府の怠慢により国益が損なわれかねないことを強く自覚し、厳しく追及していく姿勢が求められます。

確かに、今回の一連の情報漏えい、機密情報管理の怠慢は、日本国内ではあまり深刻に受け止められていないかもしれません。しかし、海外から見れば、これらは日本の情報セキュリティーに対する甘い姿勢を示す重大な問題であり、厳しく糾弾されるべきです。

日本銀行の金融政策決定内容が事前に漏えいしたスキャンダル、さらには政府の重要会議で外国企業のロゴ入り資料が使用されていたことは、機密保持意識の欠如を示す有り余る証拠です。これでは、日本が高度な機密情報を適切に取り扱う能力があるとは到底言えません。

こうした杜撰な情報管理態勢こそが、日本が国際的な情報共有の枠組み「ファイブアイズ」から除外されている大きな理由なのです。高度な機密情報を漏らしてはならない同盟国から、日本は信用されていないのが実情なのです。

five eyes

国家の機密を守り、情報セキュリティーを確保することは、主権国家として最低限の責務です。それができない日本は、世界から「機密漏えいの心配がある」と遠慮され、重要な情報から疎外されているのが現状なのです。

このように、海外から見れば、日本の情報管理の甘さは看過できない重大問題であり、強く糾弾されるべきことは明らかです。日本が国際社会から一流の主権国家として信頼されるためには、情報セキュリティー対策を抜本的に見直し、機密保持意識を徹底して高める必要があります。そうでなければ、先進国から完全に疎外され、取り返しのつかない事態になりかねません。

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