まとめ
- 賃金上昇加速見通しが理由、円相場上昇で一時146円台回復
- 日銀が3月に動くか4月に動くかはまだ決まっていない
日銀 |
ロイター通信は、日本銀行の関係者の話として、3月または4月の金融政策決定会合で、長年続いたマイナス金利政策を解除する可能性が高まっていると報じた。背景には、2024年の春闘(賃金交渉)で、日本の最大労組である連合が加盟組合の平均賃上げ要求額を5.85%と30年ぶりの高水準に設定したことがある。
日銀は長年、デフレからの脱却を目指し、賃金上昇による持続的なプラスのインフレサイクルの確立を重視してきた。そのため、春闘での賃上げ率の高止まりが、日銀のマイナス金利政策解除を後押しする要因になるとの見方が強まっている。
ただし、3月に動くのか4月に動くのかは、政策委員会でまだ決まっていないという。春闘結果次第では3月の利上げ決定もあり得るが、4月の全国企業短期経済観測調査(短観)など、より多くの経済指標を確認してから判断する可能性もあるようだ。
この報道を受けて、為替市場では円相場が一時的に1ドル=146円台半ばまで上昇した。市場では日銀の利上げ観測が一時的に高まったためだ。日銀の金融政策の行方が注目されている。
【私の論評】日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移から読み取れる、マイナス金利解除の無鉄砲
上の記事では、マイナス金利政策を解除すべきかどうかの判断のための資料が何もないので、そうすべきかどうかなど全く判断できません。それを判断するため以下の表を作成しました。
下の表は日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移を示したものです。「米国 金利政策」の欄の↑は利上げを、↓は利下げを示しています。
米国が、2019年に利下げを行ったのは、コロナ禍のため、失業率が上がることが予め予想されたからだとみられます。失業率は典型的な遅行指標であり、現在の失業率の数値は、数ヶ月から1年前の政策に結果とみなされます。逆にいえば、現在の政策は数ヶ月から1年後に現れるということになります。
米国の失業率は、2020年第二期には、14.7%となりましたが、2022年第一期で3.8%ととなり、安定しました。コアコアCPIが4%台から、6%台になった2022年の第一期ではじめて利上げに踏み切っています。
日本の失業率が米国より若干低めということを考慮しても、2023年4期目で、失業率が2.1%、コアコアCPIが0.5%の日本が、近日中にマイナス金利解除(実質上の利上げ)などする必要性がないことは明らかです。
欧米諸国ではインフレ抑制が喫緊の課題となっていますが、日本ではデフレ圧力が依然として根強く、インフレ懸念は低いと言えます。
マイナス金利は早期解除へ 欧米と異なる「金融正常化」 政治情勢ガタガタ〝火事場泥棒〟避けた? 来年1月にも決断する公算―【私の論評】金融引き締めでデフレ再来?日本はマイナス金利解除に慎重に
日銀は長年、デフレからの脱却を目指し、賃金上昇による持続的なプラスのインフレサイクルの確立を重視してきた。そのため、春闘での賃上げ率の高止まりが、日銀のマイナス金利政策解除を後押しする要因になるとの見方が強まっている。
ただし、3月に動くのか4月に動くのかは、政策委員会でまだ決まっていないという。春闘結果次第では3月の利上げ決定もあり得るが、4月の全国企業短期経済観測調査(短観)など、より多くの経済指標を確認してから判断する可能性もあるようだ。
この報道を受けて、為替市場では円相場が一時的に1ドル=146円台半ばまで上昇した。市場では日銀の利上げ観測が一時的に高まったためだ。日銀の金融政策の行方が注目されている。
まとめ
- 米国の失業率は2020年第二期に14.7%まで上昇したが、2022年第一期には3.8%まで低下し安定。コアコアCPIは2022年第一期に4%台から6%台に上昇し、利上げに踏み切った。
- 日本は、失業率とコアコアCPIの両方が低い水準であり、欧米諸国と比べてインフレ懸念は低い。
- 経済成長率が低迷しており、金利引き上げは景気回復を阻害する可能性がある。
- 円安は日本経済にとってメリットがあり、金利引き上げは円高方向に働き逆効果。
- 金利引き上げは景気回復を阻害するおそれがあることと、金融市場の安定性を損なう可能性がある。日銀は現時点でマイナス金利政策を解除する必要はない。
国会で答弁する日銀植田総裁 |
下の表は日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移を示したものです。「米国 金利政策」の欄の↑は利上げを、↓は利下げを示しています。
日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移 (前年比)
情報源
失業率
- 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 雇用統計
- 日本: 総務省統計局 - 労働力調査 ([無効な URL を削除しました])
コアコアCPI
- 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 消費者物価指数
- 日本: 総務省統計局 - 家計調査
その他
- 国際通貨基金 (IMF)
この表を読み取る上で、失業率に関しては米国は構造的失業率が高いので、日本よりは失業率が高めの傾向があることを理解しておくべきと思います。(米国で3〜4%は普通、日本は2%台半ばが普通)2024年度1期目は予測値。
米国が、2019年に利下げを行ったのは、コロナ禍のため、失業率が上がることが予め予想されたからだとみられます。失業率は典型的な遅行指標であり、現在の失業率の数値は、数ヶ月から1年前の政策に結果とみなされます。逆にいえば、現在の政策は数ヶ月から1年後に現れるということになります。
米国の失業率は、2020年第二期には、14.7%となりましたが、2022年第一期で3.8%ととなり、安定しました。コアコアCPIが4%台から、6%台になった2022年の第一期ではじめて利上げに踏み切っています。
日本の失業率が米国より若干低めということを考慮しても、2023年4期目で、失業率が2.1%、コアコアCPIが0.5%の日本が、近日中にマイナス金利解除(実質上の利上げ)などする必要性がないことは明らかです。
欧米諸国ではインフレ抑制が喫緊の課題となっていますが、日本ではデフレ圧力が依然として根強く、インフレ懸念は低いと言えます。
株価は4万円台になったものの、日本の潜在成長率は低く、近年は経済成長率が低迷しています。金利引き上げは、景気回復を阻害する可能性があり、経済成長率の更なる低下を招く恐れがあります。経済成長率が低迷している状況では、金融引き締め(マイナス金利解除)は逆効果になります。
金利引き上げは、円高方向に働き、輸出企業の収益を減少させる可能性があります。円安は、輸入物価の上昇を通じてインフレ率を高める効果があり、近日中の利上げはインフレ率を低めるだけです。円安は日本経済にとってメリットのほうが大きいので、円安状況を受け入れ、輸入産業を支援するという政策を実行すべきです。
金利引き上げは、経済に悪影響を及ぼすだけではなく、金融市場の安定性に影響を及ぼす可能性もあります。金利上昇により、企業のバランスシートが逼迫し、金融機関の融資リスクが高まります。
また、一部の資産クラスで取引の手軽さやスピードが損なわれ、市場流動性が低下します。住宅市場へのリスクが拡大しています。そのため、投資家のリスク回避的な態度が強まり、金融安定性へのリスクが増大します。
このように、金利引き上げは金融市場の安定性を損なう可能性があるため、慎重に判断する必要があります。
このような現状で、マイナス金利解除などすべきではありません。なぜ現状で、マイナス金利解除(利上げ)の議論が行われるのか全く理解できません。
金利引き上げは、経済に悪影響を及ぼすだけではなく、金融市場の安定性に影響を及ぼす可能性もあります。金利上昇により、企業のバランスシートが逼迫し、金融機関の融資リスクが高まります。
また、一部の資産クラスで取引の手軽さやスピードが損なわれ、市場流動性が低下します。住宅市場へのリスクが拡大しています。そのため、投資家のリスク回避的な態度が強まり、金融安定性へのリスクが増大します。
このように、金利引き上げは金融市場の安定性を損なう可能性があるため、慎重に判断する必要があります。
このような現状で、マイナス金利解除などすべきではありません。なぜ現状で、マイナス金利解除(利上げ)の議論が行われるのか全く理解できません。
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