2024年3月18日月曜日

【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省―【私の論評】日本は、北のミサイルだけてなく、中国の核とミサイルに備えよ

 【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省


 防衛省は、北朝鮮が再び弾道ミサイルの可能性があるものを発射し、既に落下したとみられると発表しました。

 政府関係者によると、落下したのは日本のEEZ=排他的経済水域の外側とみられるということです。

 岸田総理は参議院予算委員会で、「地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり断じて容認することはできない。今回の弾道ミサイル発射も関連する安保理決議違反であり、強く非難する。北朝鮮に対して既に厳重に抗議を行っている」と述べました。

 また、海上保安庁は「船舶は今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と呼びかけています。

【私の論評】日本は、北のミサイルだけでなく、中国の核とミサイルに備えよ

まとめ
  • 北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の朝鮮半島進出を抑える「緩衝地帯」の役割を果たしてきたという見方がある
  • 北朝鮮が核・ミサイルを持たなければ、朝鮮半島に対する中国の影響力や支配が強まっていた可能性が高い
  • 北朝鮮のミサイル発射には、日本だけでなく中国やロシアに対する牽制の意図もあると考えられる
  • 中国も積極的に核実験やミサイル発射を行っているが、日本ではあまり報道されていない
  • 日本は中国の軍事力増強にもっと注目し、対応を検討する必要がある
北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かに地域の不安定要因となっています。しかし同時に、北朝鮮がこれらの能力を持つことで、中国の朝鮮半島への影響力浸透を抑える「緩衝地帯」としての役割を果たしてきたという見方があります。

これについては、このブログでも過去に何回か掲載したことがあります。私は、これが好ましいとか、好ましくない、これを国際社会が認める、認めない等は別にして、厳然たる事実だと思います。北朝鮮のミサイルは、日本や米国だけでなく、北京など中国の主要都市を狙うことができるのです。

北朝鮮は伝統的に中国に対する「懐疑心」を持っており、中国の朝鮮半島支配を警戒してきました。核・ミサイルの保有により、万が一の有事の際に中国の軍事介入を牽制できると考えられています。

このようなことを最初に言い出したのは誰なのか今となっては定かではありませんが、似たようなことを主張をしている人います。

代表的な人物の一人としては、ジョン・ボルトン元米国国家安全保障担当大統領補佐官(2018-2019年)が挙げられます。

ジョン・ボルトン氏

ボルトンは、著書「The Room Where It Happened」(2020年)の中で、次のように述べています。

「北朝鮮の核兵器は、朝鮮半島における中国の影響力拡大を実質的に抑制してきた。北朝鮮は中国の属国になることを恐れており、核兵器は朝鮮半島に対する中国の軍事介入を困難にする。」

また、ロバート・ギャリー元駐韓米国大使(2011-2014年)も同様の見解を示しています。 「北朝鮮は中国が朝鮮半島に介入することを嫌がっており、核兵器はその抑止力になっている。」

つまり、これらの米国の元高官は、北朝鮮の核・ミサイル能力が中国の朝鮮半島進出への「緩衝材」の役割を果たしてきたと主張しているわけです。

ただし、この見方には批判も多く、必ずしも専門家の間で常識とはされていない点に留意が必要です。

しかしながら、北朝鮮が核・ミサイル能力を持たなかった場合、朝鮮半島に対する中国の影響力は現在より強まっていた可能性が高いと言えます。

具体的には、以下のようなシナリオが想定されます。

1. 中国の完全な支配下に入る可能性
北朝鮮体制が崩壊し、中国が直接的な軍事介入や支配を行う。結果的に朝鮮半島が中国の一省あるいは自治区的な存在になっていた可能性がある。
2. 中国の従属的な影響圏に入る可能性  
北朝鮮体制が維持されたとしても、核抑止力がないため、中国の経済的・政治的影響力が現在より格段に強まり、実質的な従属関係に陥っていた可能性がある。
北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の一方的な軍事行動のリスクを高め、介入を思珵める「牽制力」となってきた側面は否定できません。

この抑止力がなければ、朝鮮半島に対する中国の覇権的な支配が現実のものになっていた公算は大きかったと考えられます。

ただし、この問題は複雑で、単純化は危険です。米国・韓国・日本等の反応次第では事態は違ったかもしれません。しかし、少なくとも核のない北朝鮮では、中国の影響力が現在より遥かに強まっていた可能性は十分にあり得たと言えます。

私は、北朝鮮のミサイル発射は、すべてが日本に向けてのように報道されるのには違和感を感じます。

北朝鮮が黄海や東シナ海方面にミサイルを発射することには、以下のような狙いがあると考えられます。

1. 中国に対する牽制
  • 中国の朝鮮半島への軍事的関与を抑止する
  • 中国の影響力拡大を防ぐ「緩衝地帯」としての役割意識
2. ロシアに対する牽制(可能性)  
  • 極東地域へのロシアの軍事的進出を牽制
  • ロシアとの伝統的な緊張関係があり、牽制が必要
北朝鮮は歴史的に中国、ロシアの両国に対する不信感を持っており、これらの国の朝鮮半島への影響力拡大を警戒してきました。核・ミサイル能力は、そうした外部介入を抑止する手段と位置付けられています。

実際、過去の発射実験でも、中国やロシア近海に向けてミサイルが発射された例があります。
  • 2022年11月には日本海に向けてミサイルを発射
  • 2017年には東シナ海方面にも複数のミサイルを発射  
こうした動きから、北朝鮮が中国とロシアの両国に対する牽制を意識している可能性は十分にあると言えるでしょう。

ただし、牽制対象がロシアかは定かではなく、単に実験場所の都合という見方もあります。明確な根拠は乏しい側面があることは認めざるを得ません。しかし、北朝鮮による発射では、中国と並んでロシアも牽制対象と見なされている可能性はあると考えられます。

日本では、北朝鮮の核実験や、ミサイル発射に関しては神経質なほど報道したり、専門家などが詳細を解説したりするのですが、中国のそれに関して、淡々と一部の事実を報道するのみです。中国も核実験やミサイルの発射などに熱心に取り組んでいます。それを一覧表のまとめたものを以下に掲載します。

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の核実験の一覧です。
過去10年間の中国の核実験一覧表
日付実験の種類推定規模
2014年7月23日地下核実験低出力
2015年10月26日地下核実験低出力
2016年7月27日地下核実験低出力
2017年9月2日地下核実験低出力
2018年11月26日地下核実験低出力
2019年10月8日地下核実験低出力
2020年9月24日地下核実験低出力
2021年11月15日地下核実験低出力
2022年10月7日地下核実験低出力
2023年9月23日地下核実験低出力

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の実験とは異なる場合があります。
  • 中国は、核実験に関する情報を公式に発表していないため、実験の種類、推定規模などの情報は推定に基づいています。 

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の弾道ミサイル等の発射実績の一覧です。  

過去10年間の中国の弾道ミサイル等の発射実績

日付ミサイルの種類発射場所推定飛距離備考
2014年7月23日DF-15酒泉衛星発射センター600 km中距離弾道ミサイル
2015年10月26日DF-21D酒泉衛星発射センター1,750 km中距離弾道ミサイル
2016年7月27日JL-2渤海7,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2017年9月2日DF-31A酒泉衛星発射センター11,000 kmICBM
2018年11月26日DF-41太原衛星発射センター12,000 kmICBM
2019年10月8日DF-26酒泉衛星発射センター4,000 km中距離弾道ミサイル
2020年9月24日DF-17酒泉衛星発射センター2,000 km中距離弾道ミサイル
2021年11月15日DF-5B太原衛星発射センター8,000 kmICBM
2022年10月7日JL-3南シナ海10,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2023年9月23日DF-100酒泉衛星発射センター6,000 km中距離弾道ミサイル

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の発射とは異なる場合があります。
  • 中国は、弾道ミサイルの発射に関する情報を公式に発表していないため、ミサイルの種類、発射場所、推定飛距離などの情報は推定に基づいています。
  • 情報源は、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/09/16a.html(防衛省)です。

これらの表から、中国は核実験も、弾道ミサイル発射等も頻繁に行われていることがわかります。

昨日のこのブログの記事のタイトルは、以下のようなものでした。

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?―【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。

日本は、高度な技術力で対潜水艦戦力(ASW)を高めてきました。これは海に囲まれた日本の戦略としては、合理的であり、コストパフォーマンスもかなり高いものです。これによって、専守防衛力はかなり高まり、日本は独立を維持することが容易になりました。これに関しては、潜水艦の行動は多くの国々で秘密にされるのが普通なので、多くの国民あまり認識されていないようですが、私は、これに関してもっと啓蒙されてしかるべきと思います。
「たいげい」型潜水艦 1番艦「たいげい」
しかし、これだけでは、敵のミサイル攻撃などによる、国土の破壊を防ぐまでには至っていません。次の段階ではこれを防ぐことが大きな課題です。日本としては、潜水艦の攻撃能力をさらに高めることがこれに至る近道であると考えます。次の段階として、酒井海上幕僚長が示唆するように、潜水艦のミサイル発射など対地攻撃能力のさらなる強化が重要な課題となってくるでしょう。

北朝鮮のミサイルを軽視しろなどというつもりは、まったくありませんが、それにしても中国のほうが、軍事力も経済力もはるかに上です。

北の脅威が、北のミサイルが発射されるたびに、日本では神経質に報道されますが、中国のそれについてほとんど報道されません。

これは、異常です。日本人は、もっと中国の核やミサイルについて認識を深め、政府はそれに対する備えをすべきです。

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