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2020年2月2日日曜日

ミサイル防衛を危ぶませる極超音速兵器―【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!

ミサイル防衛を危ぶませる極超音速兵器

岡崎研究所

 12月27日、ロシア軍は、超高速で飛ぶことができる極超音速兵器アヴァンガルドを配備した、と発表した。今回配備されたアヴァンガルドは、ICBMに搭載されて打ち上げられ、その後極超音速で滑空するミサイルとされている。その速度はマッハ20くらいにもなるという。極超音速というのは通常マッハ5以上の高速を意味するが、その基準を大きく上回っていることになる。その上、軌道を変えることができるという。


 アヴァンガルドのような極超音速兵器を在来のミサイル防衛で迎撃することは極めて困難であろう。12月27日付けのニューヨーク・タイムズ紙の解説記事‘Russia Deploys Hypersonic Weapon, Potentially Renewing Arms Race’は、次のように説明している。「極超音速滑空機として知られるロシアの武器は、弾道ミサイル防衛レーダーを回避して大気中をより低く飛ぶことができる。ICBMに搭載されており、伝統的技術で最初は弾頭を目標に向けて運ぶ。しかし、目標に近づくにつれて、予測不可能な経路で極超音速で飛行するように設計されている。それを検出、追跡、撃墜するのは非常に困難である」。

 今回の発表は、ロシア側が存続を切望している軍備管理条約New START(戦略的核ミサイル発射装置を制限し、両方の配備核弾頭を制限)の存廃交渉に関わっているかもしれない。トランプ政権は条約の延長を約束せず、トランプは中国やその他の核兵器国が含まれない限り更新しない、と何度も言っている。中国は、その兵器の数は米ロの5分の1であり、数量制限に関心がないと述べている。そこで、ロシアは新しい極超音速兵器を誇示し、トランプに交渉を始めるように圧力をかけている可能性がある。

 いずれにせよ、極超音速ミサイルの開発は中国でも行われているし、今後、米国も力を入れていくことになる。米軍高官は、米国は2022年までに独自の極超音速兵器を配備する計画であると述べている由である。この分野での軍拡競争はまず止まらないと思われる。

 こうした極超音速ミサイルが出来てくると、ミサイル防衛は意味がなくなってくるだろう。 日本がイージス・アショアを配備しても、ロシアや中国が極超音速ミサイルを配備して来ると、ミサイル防衛は不可能であろう。北朝鮮が極超音速ミサイルを開発するにはもっと時間がかかるから、北朝鮮のミサイルには、ミサイル防衛はある程度の有効性を示すと思われるが、それでも完全に防衛できることはない。相当な撃ち漏らしが避けられないであろう。

 核兵器出現以来、核兵器が使われないようにということで、戦略的安定をいかに確保するかについて多くの議論がなされてきた。結局、相互に脆弱性を持たせ、相互確証破壊(MAD)を確実にして置くことが最も良いということになったが、これはなかなか心理的に受け入れられず、SDI構想やミサイル防衛などが主張されることになった。2002年の米国のABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの脱退は、ミサイル防衛への制限を外し、ミサイル防衛を行うという選択であるが、この極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、状況は相互確証破壊に戻ってしまわざるを得ないことになっていると思われる。

 日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう。そして、核抑止力の問題を安全保障上の問題として、タブーなしに議論してみる必要がある。

 なお、ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。

【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!

上の記事の結論部分に、
ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。
とありますが、これは事実です。もっとわかりやすくいうと、ロシアのGDPは日本の1/3です。それは、東京都や韓国を若干下回る程度です。

このようなロシアが、米国と軍拡競争に入れば、間違いなくロシアは負けるしかありません。ただし、現在中国もそれを開発しているということが不安材料です。

現在の中国は、SARS、豚コレラ、アフリカ豚コレラに続き新型コロナウィナスが発生して、この対策に集中しているところです。さらに、鳥インフルエンザが発生しています。

中国の湖北省で新型のコロナウイルスの感染が拡大する中、隣接する内陸部の湖南省の養鶏場でニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、当局は警戒を強めているものとみられます。

これは、中国の農業農村省が1日発表したもので、湖南省邵陽にある養鶏場で、ニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、4500羽が死んだということです。

感染の確認を受けて、およそ1万7800羽が予防的に殺処分され、感染が広がらないよう処理をしたということです。

鳥インフルエンザはもともとは鳥に感染する病気で、「H5N1型」と呼ばれるウイルスはヒトにも感染して重い症状を引き起こすことが知られています。

上海ではマスクにフード姿でスマホを操作する女性の姿が

新型コロナウィルスと、鳥インフルエンザに対処するためには、莫大な経費と、手間をさかなくてはできません。しかし、これらに対処したとしても、中国が社会構造改革を行わない限り、これからも様々な疫病に悩まされることになります。

以前このブログで指摘したように、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、中国はもっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を変えなければできないことです。

中国が社会構造改革に取り組むようになったとしても、それが成功し、まともな社会構造を構築し、疫病が起こらない、もしくは起こっても、初期のうちに対処できるような体制を整えるまではには、膨大な経費と時間がかかることでしょう。

いずれにしても、今後中国は、経済的にかなり落ち込むことが予想されます。そうなると、ロシアと同じように、米国とまともに軍拡競争をして、米国に勝つことなどできないでしょう。

そうはいいながら、中露は、極超音速兵器の開発をやめることはないでしょう。特に、米国も極超音速兵器、ならびにそれに対する防御兵器の開発を継続するなら、なおさらやめないでしょう。そうして、これは確実に中露の経済弱体化につながります。かつてのソ連が崩壊した原因の一つに米国との軍拡競争、特にスターウォーズ構想関連での競争があります。

スターウォーズ構想の概念図

極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、今後相互確証破壊に戻ることになるは間違いないでしょう。そうなるとイージスアショアなどはあまり意味を持ちません。北朝鮮の核ミサイルも従来よりは、抑止力を減退することになります。

この状況について、上の記事では、「日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう」としていますが、それに対する具体的な示唆は何もありません。

これに対して有効なのは、まずは北朝鮮への対処方法を日本がはっきりさせておくことです。

それには、日本が北朝鮮の核施設、ミサイル発射施設などに対して日本を攻撃する可能性が高まったときには、先制攻撃ができる体制を整えることです。

これは、日本も先制的自衛権を行使することを意味しますが、これは他国からの武力攻撃が発生していない段階ですでに自国に差し迫った危険が存在するとして、そのような危険を予防するために自衛措置を行うことができるとされる国連憲章にもある国家の権利です。

そうして、それを実行するには、日本は航空自衛隊などの戦闘機などの現行兵器に若干の装備品を加えるだけで十分対応可能です。無論、その他のイージス艦、ミサイルその他の兵器でも現行で可能なもの全部と若干の装備品を付加すれば使えるものは全部使うべきです。

これは、絵空事ではなく、実際に1981年にイスラエルが、バビロン作戦という作戦名の先制攻撃でイラクの原発を破壊した事例があります。

バビロン作戦て破壊されたイラクの原発

国内法的にも、軍事的にもそれを可能にして、先制攻撃の対象国がどこか、そうしてその具体的方法などは明らかにせず、それを世界に向けて声明すべきなのです。

それは、特に特ア三国(中国、韓国、北朝鮮)とロシアに衝撃を与えるでしょう。無論、米国をはじめ多くの国々は、そのような声明は主に北朝鮮の核に対する備えであるということで、歓迎されるでしょうが、特ア三国やロシアは自分たちも標的になると考えることになるでしょう。

こちらのほうが、はるかに現実的な対応です。それに、イージスアショアよりはるかに経済的です。日本としては、まずはこれを実行して、将来的に余裕があれば、極超音速ミサイルも開発すれば良いのです。米国と共同開発しても良いと思います。

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2017年11月17日金曜日

北朝鮮 SLBM搭載の新型潜水艦建造か―【私の論評】日本は北を先制攻撃しても世界から非難されないが国内で非難されるこの矛盾(゚д゚)!

北朝鮮 SLBM搭載の新型潜水艦建造か

潜水艦のものとみられる部品が移動、SLBM用の潜水艦の建造進展か
 アメリカの北朝鮮研究機関は16日、北朝鮮東部で、弾道ミサイルを発射できる新型の潜水艦の建造が進んでいる可能性があるとして、衛星写真を公開した。

 アメリカの北朝鮮研究機関が公開した北朝鮮・新浦にある潜水艦基地の衛星写真で、建設エリアでは継続的に部品が動かされ、中には潜水艦の船体部分の部品とみられるものがあることから、SLBM(=潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載するための、新型潜水艦の建造が進んでいる可能性があると分析している。

 また、エンジンの噴射実験を示す動きが確認できるとして、潜水艦の建造と並行して、SLBMの開発も続いていると指摘している。

【私の論評】日本は北を先制攻撃しても世界から非難されないが国内で非難されるこの矛盾(゚д゚)!

本日写真を公開したアメリカの北朝鮮研究機関とは、38 Northのことです。この写真が掲載されている元の記事は以下のリンクからご覧になることができます。
North Korea’s Submarine Ballistic Missile Program Moves Ahead: Indications of Shipbuilding and Missile Ejection Testing
38Northは、フェイスブックページがあります。以下にそのページのリンク先と、そのページにあった写真を掲載します。
https://www.facebook.com/38NorthNK/

38ノース(38 North)は北朝鮮に関する分析を専門とするウェブサイト。ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院の米韓研究所(USKI)のプログラムであり、米国務省の元職員ジョエル・S・ウィットとUSKIアシスタント・ディレクターのジェニー・タウンによって管理されています。

著名な貢献者として核科学者のジークフリート・ハッカー 、元AP通信平壌支局長のジーン・H・リー 、サイバーセキュリティの専門家ジェームス・アンドリュー・ルイス及び「ノースコリア・テック」の創設者マーティン・ウィリアムズがいます。

Siegfried S. Hecker (ジークフリート S. ハッカー)
38ノースは北朝鮮の主要分野の商業衛星画像を使用し、アナリストに国内の開発に関する洞察を明らかにする機会を提供しています。たとえば、過去に以下のような発表を行っています。
2013年11月、38ノースは北朝鮮のミサイル発射地点で新たな建造物を発見したと公表し、より大型のロケットを扱えるようにアップグレードされていると述べました。
2015年12月21日の北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」の「排出」実験後の2016年1月に、38ノースは新浦市南部の造船所の衛星画像分析を使用して北朝鮮のSLBMプログラムについて報告しました。ジョセフ・バミューデスは衛星画像は北朝鮮のSLBMプログラムへの能動的な探求を示していると述べ 、その予測は後に2016年の3回のSLBM実験(4月23日、7月9日、8月24日)や、2017年2月13日に北極星1号を改良し、地上発射型にした新兵器「北極星2号」の試験発射成功で裏付けられることになりました。
2016年1月下旬、38ノースは北朝鮮の東倉里ミサイル発射場での不審な活動を報告しました。ジャック・リウによる衛星画像分析で東倉里の主要施設と地点で低レベルの活動が示されました。記事が公表されてから10日後、北朝鮮は東倉里で人工衛星「光明星4号」を搭載した光明星の打ち上げを実施しました。
2016年4月、38ノースのアナリストは主要プラントを加熱するために使われた寧辺核施設の蒸気プラントから出ている排気プルーム(煙)について報告しました。これは追加プルトニウムの再処理が進行中である徴候の可能性があるとされました。4月中旬、38ノースは北朝鮮が核兵器用のプルトニウムの再処理を開始したことを示す活動を報告しましたが、国際原子力機関は約2ヶ月後の6月7日まで認めませんでした。
2016年9月、38ノースはジョセフ・バミューデスとジャック・リウによって行われた衛星画像分析に基づき豊渓里核実験場の3か所のトンネル全てで新たな活動が見られると報告したました。この活動は、メンテナンスと小規模な掘削作業が再開したことを示していました。翌日、北朝鮮は豊渓里で5回目の核実験を実施しました。
過去の実績内容からみても、38ノースはかなり確度の高い情報を提供しています。北朝鮮情勢を知るには見逃せないサイトです。

朝鮮中央テレビでは、昨年「戦略潜水艦弾道弾水中発射成功」を大々的に報道しました。その動画を以下に掲載します。



このときは、まだ半信半疑でした。今回の38ノースの発表からどの段階までいっているのかわかりませんが、SLBMとこれを発射可能な潜水艦を開発中であることは間違いないようです。いつ開発に成功し、実戦配備するのかは、まだ未知数ですが、北朝鮮の過去の核・ミサイルの開発をふりかえると、いずれ数年のうちにはブロとタイプができるとみるべきでしょう。

だからこそ、38ノースはこの動きを公表したのでしょう。日米の対潜哨戒能力などは、かなり高度であり、たとえ北朝鮮がSLBM発射可能の潜水艦を開発したとしても、それを撃沈することはできます。しかも、北朝鮮の付近の海域には、日米が追跡することが不可能なとほどの深い海域はありません。

さらに、北朝鮮の潜水艦は原潜ではないので長い期間潜水することはできません。また、原潜までいかなくとも、技術水準の高い水準の高い日本の新型潜水艦のように、実戦的には十分であると考えられる長時間潜水もできません。ちなみに原潜は理論上、無限近いほどに潜水していられますが、乗組員の飲料・食料の補給、交代があるため限界があります。

しかし、そうはいっても潜在的脅威になることは間違いないです。北朝鮮のSLBMを搭載した潜水艦がオホーツク海や、南シナ海の深海に潜伏することが可能になれば、日米もこれを発見することは難しいです。

現状では、そんなことはあり得ないと断言できますが、中国がその究極の目的である深い海域のある南シナ海を中国原潜の聖域(戦略原潜を深海に沈めて敵から発見できない場所)にすることに成功した場合、北朝鮮の潜水艦もここを聖域にすることを許容するなどということも考られます

あるいは、元々北朝鮮という国をつくったソ連の後継国であるロシアが、深い海域が存在するオホーツク海を北朝鮮の潜水艦の聖域にすることを許容するなどということも全くあり得ない話ではありません。

もし、そのようなことがおこることが事前に察知できた場合には、日本としては北朝鮮の潜水艦を撃沈することも視野にいれておかなければなりません。

イスラエルは、過去にイラクの原子力施設を破壊したことがあります。これは、イラク原子炉爆破事件として有名です。

建設中に破壊されたイラク・「オシラク原子炉」
イラク原子炉爆撃事件は、イスラエル空軍機がイラクのタムーズにあった原子力施設を、バビロン作戦(別名オペラ作戦)の作戦名で1981年6月7日に攻撃した武力行使事件です。

これはイラクが核兵器を持つ危険性があるとして、イスラエルが「先制的自衛」目的を理由にイラクに先制攻撃を行ったものです。この攻撃に対して国際連合安全保障理事会決議487(英語版)がなされ、イスラエルは非難されました。

バビロン作戦における戦闘爆撃機の飛行進路
しかし、これはイラクの原子力施設が必ずしも核兵器につながるとはいえないにも関わらず、先制攻撃したため非難されたものです。しかし、結果としてイスラエルはイラクの原子力施設を破壊して、イラクの核の脅威を葬り去ったのです。

日本の場合は、北朝鮮が日本に攻撃すると威嚇し、実際にミサイルの発射実験を行ったり、核実験を行っているし現実に北朝鮮は日本にミサイルを発射することができるわけです。北朝鮮の報道官が、今年8月9日に「日本列島を瞬時に焦土化できる」と警告する声明を発表しました。日本が北朝鮮を先制攻撃をして、核施設やミサイル施設を破壊したとしても、イスラエルのように非難されることはありません。

当の北朝鮮や、中国やロシアなどは非難するかもしれませんが、国際連合安全保障理事会決議により、非難されるということにはなりません。他の国々は最初から非難することもないでしょう。

なぜなら、国連憲章でも独立国の自衛戦争は認めらているからです。独立国であれば、自国が他国に攻撃されることがあらかじめわかっている時に自衛のために他国を攻撃することは自然権であるという認識は、世界の常識です。その常識が日本にだけ通用しません。

日本も、この自衛戦争は、憲法改正でも良いし、憲法解釈の改変でも良いのでできるようにしておくべきです。

仮に日本が北朝鮮を先制攻撃しても、世界から非難されることはないのに、日本国内で非難されるという、この奇妙な現実は変えなければなりません。

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2017年11月6日月曜日

トランプのアジア歴訪は、北朝鮮への「最後通牒」だと判断すべき理由―【私の論評】日本は北に先制攻撃を行う権利を有する(゚д゚)!

トランプのアジア歴訪は、北朝鮮への「最後通牒」だと判断すべき理由

現実を直視しなければならない

夕食会にのぞむトランプ大統領夫妻と、安倍首相夫妻


現実を直視するならば


いよいよ「北朝鮮攻撃」へのカウントダウンが始まった。今回のトランプ大統領のアジア歴訪は、北朝鮮にとって最後の猶予である。

本コラムにこれまで書いてきたように、筆者は北朝鮮が無条件に核ミサイルの開発を中止でもしない限り、近いうちにアメリカ(または国連軍か有志連合軍)を中心に北朝鮮への武力行使が始まる、と見立てている。

筆者もできれば戦争などは起きてもらいたくないし、まして日本から極めて近い朝鮮半島での戦争は真っ平だ。

しかし、それでも現実を直視しなければならない。筆者が「カウントダウンが始まった」と考える理由は単純だ。北朝鮮に対する国連安保理の制裁がすでに9回を数え、もう限界まできている、と言わざるをえないからだ。

最後の9回目の制裁が行われたのは9月11日。北朝鮮による6回目の核実験強行を受け、安保理が新たな制裁決議案を採択したものだ。常任理事国の中では北朝鮮寄りである中国もロシアも拒否権を発動せず、全会一致の決議だった。

現実的にはあと1回しか制裁のレベルを上げる余地は残されていない。北朝鮮が核開発をやめなければ、次に待っているのは、国連軍か多国籍軍による攻撃しかないのだ。

トランプ大統領のアジア歴訪は、極東アジアの安全保障から考えると極めて画期的である。その中身はおそらく、「北朝鮮が非核化に合意しない限り、軍事行動する」という考えを伝えるためのものだろう。

ここで、さらに北朝鮮に時間を与えるという選択肢はないだろう。これまで猶予を与え続けてきた結果、北朝鮮は国際社会を欺いてきたからだ。

軍事的には、北朝鮮による核ミサイルが実戦配備ギリギリのタイミングであるので、そうなる前、近い将来に武力行使した方が、しない場合よりもリスクが少なくなる。

そうであれば、武力行使を躊躇する理由はない。対北朝鮮カウントダウンが既に進行中であり、チェックメイトまでもうクビの皮一枚という状態になっているのだ。こう考えるのが国際政治の常識で、各国の指導者もまともならば、同じことを考えているはずだ。


もちろん、最後の最後まで武力行使回避の話し合いは水面下で行われるべきだし、実際にも行われているはずだ。そもそも、国連の対北朝鮮への経済制裁とは、意図的に抜け穴を作り最後通牒にならない形で圧力をかけ、その間に交渉し、武力行使に至らないようにする仕組みだ。

制裁は交渉のための圧力手段であるので、抜け穴があるのが当たり前だ(もっとも、これまで類似の制裁措置で北朝鮮に十分な時間を与えてきたが、北朝鮮はそれを無視してきたのも事実だ)。

国連が最後の経済制裁という圧力をかけ、実際に武力行使のカウントダウンが始まれば、北朝鮮が全面的に屈服する可能性もある。その際は、金書記長の亡命などが行われる可能性も残されている。この場合には、武力行使はなくなり、北朝鮮の非核化・金体制の崩壊になって、極東アジアには安定がもたらされるだろう。

逆に言えば、北朝鮮の全面的な屈服なしでは、国連の経済制裁、その後のカウントダウン、その後の国連軍(多国籍軍)による武力行使という確率が高いというのが現状である。

アメリカの本音は「一国でも攻撃できるが、しかし、国際的な正統性を得るためには国連決議を経るのががベスト」というものであろう。常任理事国の賛成を得て、北朝鮮を征伐すれば誰も文句を言えない。

これは表向きの戦略であるが、欠点もある。

国連抜きの手順も…?


一つには時間がかかりすぎ、軍事的にベストなタイミングで武力行使できない。いくら米朝で軍事格差があり米軍が圧倒的に優位であるとはいえ、被害を極小化したいアメリカには不満があるだろう。

もう一つは、国連の手続きは、北朝鮮にも筒抜けであり、北朝鮮に先制攻撃のチャンスを与えてしまうということだ。北朝鮮は国連加盟国であり、これまで国連内に独自の情報網を築いてきた。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長時代に、北朝鮮の国連職員を多く採用したという話もある。これは軍事面から見れば手痛い点だ。

こうしたことから、アメリカは表向き国連を中心に物事を進めているようにみえても、裏では国連抜きの手順も進めているはずだ。

このような対北朝鮮への武力行使では、残念ながら日本の出番はほとんどない。実際には、このアメリカの行動について、米中ロとともに行動するしかない。これはリアルな軍事力を持っていない日本の宿命である。

ただし、経済面での貢献はできる。トランプ大統領のアジア歴訪は、日本の後に韓国、中国、そしてAPECという順序だ。APECでは、ロシアとも接触するであろう。そこでは米中ロの超大国が、北朝鮮問題を話しあう機会もあるかもしれない。

それは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきである。そこまでくると、北朝鮮への武力行使の後、どのように北朝鮮の統治をするのか、北朝鮮をどこ管理下にするかも話し合われるはずだ。

もちろん、日米首脳会談でも、そうした「ポスト北朝鮮問題」は話し合われるはずだ。もっとも、対外的にはそうした機微に触れる話は公表されることはない。無難に、経済問題が表に出されるのだろう。しかしその経済問題でこそ、日本の貢献が問われる。

さて、経済政策は話し合われたのか


今回のトランプ大統領の訪日では、安全保障問題で、日米の同盟関係の強固さを対外的に印象付けるのが目的であるので、経済面については日米で議論しないかもしれない。それならそれでいいが、トランプ大統領の顔を立てる必要があるのならば、アメリカが日米FTAを持ちだしたときには、それに応じてもいいし、心配なら日米韓FTAをやろうと応じてもいい。

北朝鮮や中国に対抗する概念は「自由」である。その最たるもののひとつが「自由貿易」になる。トランプ大統領は「保護主義的」と報道されているが、実は本質はビジネスマンであるので、TPPのような多国間自由貿易は否定していない。多国間、という点に不満があり、多国間となればアメリカの力が見せられないので不満という意味で、TPPを否定したのだ。

筆者は、アメリカ大使館の人とも話しているが、彼らは日米FTAを望んでいる。筆者は、日米FTAでもTPPを交渉スタートとすれば日本の国益は確保できると思うが、それでも心配なら韓国も加えて、日米韓FTAでもいいと思っている。

中国経済圏に対抗するためにも…


自由貿易園の裏側には、しばしば軍事同盟があるので、この際、北朝鮮、さらには中国とロシアへの経済的な圧力という意味もこめて、日米韓FTAはいいアイディアだろう。これは米韓FTAの後押しにもなるので、米国にとって悪い交渉ではない。

これで日米韓が結束すれば、軍事的もいいし、なにより、アメリカが中国を訪問する時に、中国を貿易問題で締め上げることができる。そうなれば、北朝鮮へ対する中国の圧力も引き出しやすくなるだろう。


この表は、今年9月までのアメリカの貿易赤字において各国が占める割合であるが、圧倒的に中国の問題であることがわかる。日本に対する貿易赤字は、中国、EU、メキシコの次いで4位でしかない。

日米韓FTAは、長期的に見ても、中国の覇権に対抗できるし、さらに、将来的にオーストラリアやさらにはインドまで視野に広げて考えることもできる。

さてその中国だが、習政権が2期目に突入した。どのように習政権と対峙すべきかは、アジア諸国の重要課題だ。先日の中国共産党大会で、党の最高規則「党規約」の改正や最高指導部メンバーなど重要事項を決めた。「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を行動指針として明記することになった。「習近平思想」という簡潔な文言ではなかったものの、「習近平」という名前が入ったことで、「毛沢東」と並ぶ権威となったとみるべきだろう。

中国は共産党一党独裁であり、共産党規約は憲法の上位になっている「最高規範」である。そこに、個人思想をいれるとは驚くばかりだ。そのうち、中国へ進出している外国企業の定款に習思想を取りいれろという指導が出てきてもおかしくない。今の日本の憲法議論で、既在の自衛隊の法的位置づけを憲法に盛り込むというのとまったく次元の違う話であることがわかるだろう。

しかも、習近平氏の次の指導者は、今回の高指導部メンバーではみえなかった。つまり、習近平氏の独裁による共産党独裁が当面続くのだ。

こうしたことをやる独裁的国家に対して、日本を含めアジア諸国はどのように対峙すべきか。政治的な独裁は、自由で分権を基調とする資本主義経済とは長期的には相容れないのは、ノーベル経済学賞学者であるフリードマンが50年以上も前に喝破している。

ところが、ここ10年スパンで見れば、中国は経済成長している。もっとも筆者は、脱工業化に達する前に中国は消費経済に移行してしまったため、一人あたりの所得が低いうちには高い成長率になるものの、先進国の壁を越えられない、よく見られる開発経済の典型例に陥るだろうとにらんでいる。それが正しければ、次の10年スパンで成長が行き詰まる可能性が高い。

実は中国もこの点を認識しているようであり、中国国外に活路を見いだしている。それが、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を梃子とする「一帯一路」構想だ。これは、中国指導による経済圏を中国国外に広めようとするものだ。この経済圏は、先進国の自由貿易圏とは違ったルールに基づくもので、日本を含む自由主義国にとっては国益にならない。

そこで、これに対抗するためには、AIIBとは別機軸の自由貿易圏が必要になってくる。自由貿易圏と中国指導貿易圏では、自由主義と規制主義でどちらかが経済パフォーマンスがいいのか。自由主義には欠陥はあるが、それを補正すれば長期的には優れている。ちょうど、資本主義体制と社会主義体制の間の体制間競争では、欠陥はあるが長期的な経済パフォーマンスは資本主義が優れていたのと同じである。

その自由貿易圏の核となるために、日米韓FTAが大きな貢献をする。このトランプ大統領訪日のタイミングで、こうしたことが話し合われたかどうかは、実に興味深いテーマだ。

【私の論評】日本は北に先制攻撃を行う権利を有する(゚д゚)!

4月のトランプ、習近平会談
トランプ大統領が習近平国家主席と4月に首脳会談を行ったことは記憶にまだ新しいです。当時は日本国内でも、「北朝鮮はすぐに核実験をするはずだ」と考えられていました。
この会談の席で、トランプ大統領は習近平に対して「もし北朝鮮が核実験をして、それでも中国が普段通りにビジネスを行うのであれば、アメリカは中国からの輸入に規制をかける」と述べていました。

このトランプの要求を受け入れた習近平は、すぐに北朝鮮に連絡をとって核実験の停止を求めており、それに従わなかった場合には中国からの北朝鮮への輸出を制限すると脅しています。

このメッセージは聞き入れられて、北朝鮮は核実験を止め、平壌の中で噂が広がって人々はガソリンスタンドに群がりました。

しかも中国政府は、北朝鮮からの輸入も止めています。ただし海産物の輸入は続いていたようで、中国国内の北朝鮮政府経営のレストランは相変わらず営業していたとされています。石炭に関しては中国が輸入をやめたので、価格が低下し、北朝鮮の人々が安く手に入れられるようになり、喜んでいることは以前このブログに掲載しました。

ただしこれがミサイル発射実験への対抗措置であったのかは不明です。

ところが北朝鮮の核実験が停止、つまり北からの声明はなかったのですが、目に見える行動がなくなった次に起こったのは、米・中・日が逆に弾道ミサイルの実験の方に関心を寄せはじめた、ということです。

7月28日の北朝鮮のミサイル発射実験に対して、国連安全保障理事会は全会一致で決議案2371号を可決しましたが、これははじめて核実験を行った2006年から6度目の制裁決議であり、その中でも最も厳しいものでした。

弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長
それは北朝鮮から石炭、鉄鉱石、銅、そして海産物という、彼らが物的に輸出できる商品のすべて(衣類を除く)を禁止するものであり、労働者のさらなる受け入れも禁止(といっても現在の雇用は今後も継続)するものでした。

しかもこの時の安全保障理事会のメンバーは、5カ国の常任理事国だけでなく、「過激」なボリビア、北と伝統的に友好国であるエジプト、そして長期的に外交関係を持っているスウェーデンなどが含まれていました。

11日、ニューヨークで開かれた国連安全保障理事会で、北朝鮮制裁決議案を採択
そういう意味で、この国連の安保理決議はアメリカにとって外交的な大勝利であり、アメリカが長年中国から得ようとしていた「大きな譲歩」でした。

それほど重要ではないミサイル発射実験に対応したおかげで、中国は北朝鮮の核実験を止めるための外交的なレバレッジを使い切ってしまいました。そしてまずいことに、北はすでに核実験を再開しています。

外交カードがなくなれば、残りの手段は軍事行動しかなくなります。

ところがそれよりも最悪のシナリオは、北朝鮮を核保有国として認め、金正恩が思いついた時に、いつでも韓国と日本を脅せるようになることを受け入れることです。

さらに、北朝鮮はイランに対して行ったように、核兵器や弾道ミサイルの部品などをいつでも海外の国々に売却できるようになります。

これはいわゆる「降伏」の一つの形態です。われわれは核武装して周辺国を脅すことのできる北朝鮮を受け入れて、その脅威の下で生き延びるしかなくなります。

文在寅韓国大統領とトランプ米大統領
ところが、アメリカの統合参謀本部も、在韓米軍も、太平洋軍司令部も、軍事的なオプションを何も提示しておらず、目の前の問題とは関係のない「韓国を守る」ことしか宣言していません。

もちろんこれは、ソウル周辺が北朝鮮の(非核)ロケットや砲撃に弱いからです。この事実は韓国を麻痺させているわけなのですが、同時に米軍の指揮系統にもそれ以上の非合理的な問題をおこしています。

これに関して、以下のような三つの事実を列挙しておきます。
1.韓国政府は、1975年から78年の危機の後も、政府機能や企業のソウル以外への分散化について何も行動を起こしていない。 
2.韓国政府は、攻撃にさらされる危険が高い地域があるにもかかわらず、そこに対する防御策を講じていない。 
3.韓国政府は、技術的にも可能であった対空兵器等の購入を拒否している。
ここで指摘しておくべきなのは、北朝鮮の核施設を、イラクとシリアの施設に対して行われたように攻撃するというのであれば、そのチャンスははるか以前に過ぎさってしまっているという点です。

ただし北朝鮮は、今日においても空からの攻撃に対抗できるような、統合された防空網を持っていません。レーダーは40年以上前のものであり、それをつぶすのは簡単です。

また、北朝鮮は即時発射式の核弾頭搭載型ミサイルを持っているわけではありません。しかも核弾頭を飛行機で運搬できるわけでもないのです。

当然ながら、既知の、もしくはその疑いのある核施設に対する空からの攻撃は、拡大的な被害や核物質による汚染を引き起こすはずです。

それに対抗して、やはり北朝鮮は韓国の脆弱な地域に対して多くのロケットを発射するでしょう。

ところが「軍事行動を起こさない」ということは「何も行動しない」ということを意味します。外交的な手段は尽きてしまっているからです。


そのような中で、トランプ大統領の北朝鮮に対する政策には大きな問題があります。なぜなら、その軍事アドバイザーたちは、ほとんどがアラブやアフガニスタンのように、ろくに反撃できない相手と戦っていた経験を持つ人々だからです。

ところが北朝鮮は対抗手段をもっています。そうなると戦略のパラドックス、つまり攻撃をしかける側とそれに対抗する側との作用と反作用が起こるため、戦略の計算が非常に困難になってしまうのです。

トランプ政権の軍事アドバイザーたちは、果たしてこのようなダイナミックな関係性を考慮した上で、軍事的なオプションを本気で考えられるのでしょうか。

マティス米国防長官は9月18日、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮への対応について、「多くの軍事的選択肢がある」と語りました。「選択肢」には、北朝鮮による報復攻撃で韓国の首都ソウルが危険にさらされない方法も含まれていることを強調しました。しかし、これは本当なのでしょうか。実際にそれは可能なのでしょうか。

もちろん彼らの考える軍事オプションはいくつも存在しますが、それらには一つの条件があります。

それは、韓国が何十年間にもわたる自分たちの無責任な態度に大きな代償を支払うことを、本当に受け入れられるかどうかです。

ところが現在の彼らのオプションは、ただ単に「金正恩に得をさせる」というものなのです。北朝鮮をめぐる情勢は、今後もしばらくは予断を許さないままでしょう。

無論、米国は近日中に軍事的行動を起こす可能性は高いですが、かといってどれほどの覚悟で実行するかは別問題です。軍事的行動を起こすとはいっても、様々なオプションがあります。たとえ、米国が軍事攻撃をしたとして、金正恩が失脚したり、亡命したとしても、北朝鮮の体制は温存される可能性もあります。

韓国ははなからあてになりませんが、米国が覚悟を決めて、北朝鮮に米軍や多国籍軍を進駐させ、50年以上にわたり、この地を監視して民主的な体制を築く覚悟がなければ、この地域は次の戦争の弾薬庫となる可能性もあります。いずれ核実験や、ミサイル発射実験をはじめるかもしれません。

護衛艦「いずも」は空母に改装できる
この予断を許さない中で、日本は何をすべきなのでしょうか。

日本に必要なのは核抑止力ではなく、役に立つ防衛力です。先制攻撃能力を持つことで抑止力が強まります。

たとえ1,000発の核兵器を持っていても実際にはなかなか使えないので、ナイフよりも無意味です。ナイフは簡単に使用できますが、核は強力すぎて使うに使えない兵器です。ただし、使えなくても保有することには一定の意味があることも確かではありますが、一足飛びに核に走るそれ以前にまずは先制攻撃能力が必要です。両方を持てば、完璧です。

北がすっかり欠いているものは、上にも述べたように防空体制です。北朝鮮のレーダーは40年以上前のものであり、それをつぶすのはいたって簡単です。なぜそうなっているかといえば、技術的な理由で、防空には莫大なカネがかかるからです。

自国民が脅威に晒されているとき、その直接の危険を除去するために先制攻撃を行う権利はあらゆる国家が持っています。日本政府がそうした意思を持つことは大きな意味があります。

そうして、日本はそれができます。日本政府は、すでに保有している航空機をそのまま使って、追加の兵装を購入するだけでそれが可能になります。核兵器を持ち、それを保守するためのような大きな予算は必要ありません。また、護衛艦「いずも」などを攻撃型空母に改装することも比較的簡単できます。

イスラエルの人々は、イラクの核開発の脅威に直面したとき、それを破壊しました。

日本ができるだけ早く行動しなければ、米国がたとえ北朝鮮に軍事攻撃を加えて、北朝鮮が一定の譲歩をしたとしても、核実験を継続し、膠着状態が続けば間違いなく2年後には核の脅しに屈する危機に直面すると断言できます。その前に、日本は先制攻撃能力を持つべきです。

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2017年9月6日水曜日

みのもんた「北朝鮮のミサイル発射基地を先に破壊するのはどう?」青山繁晴「うおおおおお!」―【私の論評】中途半端は戦争を誘発するだけ(゚д゚)!

みのもんた「北朝鮮のミサイル発射基地を先に破壊するのはどう?」青山繁晴「うおおおおお!」

北朝鮮のミサイル発射問題について、みのもんたが「よるバズ」にてやけに過激な提案を行った。

みのもんた「先に攻撃してしまおう」

みのもんた「待ってるだけじゃなくてさ、撃ちそうなところを先に見つけてその基地をドッカンということはできないの?」

青山繁晴「みのさんの口からそれが出るようになったってことは日本は前進してますよ。そういうの敵基地攻撃能力っていうんですよ」

みのもんた「だって必要じゃない?」

辺真一「みのさんが言っているのは先制攻撃」

青山繁晴「いや先制攻撃ではない」

辺真一「みのさんが言っているのは先制攻撃ですか?」

みのもんた「北朝鮮がミサイルを撃つってアメリカから連絡が来たときに、攻撃する」


辺真一「それって先制攻撃じゃないですか」

みのもんた「まぁ…(笑)でも発射した途端に(基地を攻撃して防衛するというのは)は無理でしょう。」

辺真一「先制攻撃って言葉はやめましょう。予防攻撃ですね」

みのもんた「そうそうそうそう」

青山繁晴「国際法の解釈では先制攻撃ではないと認められるっていう考え方もあります」

吉木誉絵「だからオフェンスとディフェンスの間に位置するもの」

青山繁晴「集団的自衛権の正しい行使だという考え方もあり得ます」

みのもんた「今度安倍さんに会ったら教えてあげよう(笑)」

青山繁晴「今ので北朝鮮は神経びんびんですよ(笑)」


どうやら青山繁晴氏は賛成派で辺真一氏は反対派らしい。話し合いが通じない傍若無人な相手に対してどう対処するのが正しいのか。今回のみのもんたの提案は波紋を呼ぶだろうが、一つの有効な防御策となり得るだろう。

【私の論評】中途半端は戦争を誘発するだけ(゚д゚)!

みのもんた氏の発言は意外でした。しかし、単純に国民の命と生命を守るという立場に立てば、みのもんた氏のように考えるのが、ごく自然なことなのかもしれません。

みのもんた氏の発言はある意味、このブログでもしばしばとりあげている戦略家のルトワック氏による日本の北朝鮮への対応にも匹敵するほどインパクトがあるかもしれません。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ルトワック博士の緊急警告! 先制攻撃か降伏か 日本が北朝鮮にとるべき選択肢―【私の論評】日本が戦争できる国に変貌することが、アジアに平和をもたらす(゚д゚)!
ルトワック氏
詳細はこの記事を読むか、ルトワック氏の『戦争にチャンスを与えよ』という著書を読んでいただくものとして、ルトワック氏北朝鮮に対する日本の対応としては、降伏と先制攻撃しかないと主張しています。この敵基地攻撃に関しては、国際法の解釈では先制攻撃ではないと認められるっていう考え方もあると青山繁晴氏は語っています。

しかし、国際法の解釈は別にして、敵基地攻撃は先制攻撃になります。なぜなら、相手に悟られたあとで、攻撃をしても何にもならないからです。

以下にこの二点を簡単にまとめます。

北朝鮮への降伏
 第一の方策は、「北朝鮮に降伏(サレンダー)する」というものだ。 
 これは、北朝鮮に対する制裁をすべて解除し、彼らに名誉を与え、国家としての彼らの存在を認めることで、五〇〇キロ以上の射程のミサイルの脅威を取り除く、という道だ。
北朝鮮への先制攻撃
 次の方策は、「北朝鮮を攻撃する」というものだ。しかもこれは、先制攻撃(プリエンプティブ・ストライク)でなければならない。核関連施設を特定しつつ、それらすべてを破壊するのである。 
 ここで覚えておかなければならないのは、北朝鮮のミサイルは、侵入の警告があれば即座に発射されるシステム(LOW)になっているかもしれない、という点だ。このシステムでは、アメリカの航空機やミサイルが侵入してくれば、北朝鮮側の兵士が自動的に発射ボタンを押すことになる。 
 LOWとは、レーダーからの警告に即座に反応することを意味する。彼らは、その警告を聞いた途端にボタンを押すのだ。そうなると、北朝鮮を攻撃すること自体に大きなリスクが伴う。 
 もし北朝鮮を本気で攻撃するのであれば、空からだけでなく地上からの支援も必要だ。地上に要員を配置して、ミサイルをレーザーなどで誘導しなければならないからだ。つまり「現場の兵士」が必要となるのであり、ミサイルの着弾後も、攻撃目標が間違いなく破壊されたかを確認する必要がある。ミサイルが着弾しても、爆発による煙やホコリが落ち着くまで写真撮影は不可能であり、破壊評価が遅れるので、現場の人員が必要になるのだ。そのためには、北朝鮮内に何らかの方法で人員を予め侵入させておき、目標を把握しておかなければならない。
みのもんた氏のブログ冒頭の記事の主張はまさに、北朝鮮への先制攻撃を意味しており、彼の頭の中には、北朝鮮に対して降伏するという選択肢はないようです。そうして、青山繁晴氏は、

そうしてルトワック氏は、「まあ大丈夫だろう」という考えが戦争を招くとしています。これも以下にまとめておきます。

「まあ大丈夫だろう」が戦争を招く
 人間というのは、平時にあると、その状態がいつまでも続くと勘違いをする。これは無理もないことだが、だからこそ、戦争が発生する。なぜなら、彼らは、降伏もせず、敵を買収もせず、友好国への援助もせず、先制攻撃で敵の攻撃力を奪うこともしなかったからである。つまり、何もしなかったから戦争が起きたのだ。 
 いま北朝鮮に関して生じているのは、まさにこのような状況だ。 
 アメリカは、北朝鮮の核開発の阻止に関して何もしていない。アメリカだけではない。他の西側諸国も、中国も、ロシアも、何もしていない。

 要するに、多くの国が、北朝鮮の脅威が現に存在するのに、何も行っていない。「降伏」も、「先制攻撃」も、「抑止」も、「防衛」もせず、「まあ大丈夫だろう」という態度なのだ。 
 これは、雨が降ることが分かっているのに、「今は晴れているから」という理由だけで、傘を持たずに外出するようなものだ。ところが、このような態度が、結果的に戦争を引き起こしてきたのである。
日本も、北朝鮮に対しては、「降伏」も、「先制攻撃」も、「抑止」も、「防衛」もせず、「まあ大丈夫だろう」という態度でした。

この態度が今日の北朝鮮の暴走を招いてしまったのです。今となっては、「降伏」するか「先制攻撃」の2つしかないといえると思います。

日本のマスコミや識者の中には、結局北朝鮮の核ミサイルを認めるべきという人々も大勢いますが、彼らの主張を聴いていると、彼らの頭のなかでは「降伏」をするとまでは考えていないようです。だから、彼らの考えも非常に中途半端なのです。

彼らは、「北朝鮮政府が真に何を望んでいるのかを聞き出し、経済制裁をすべて解除する。祖国への朝鮮総連の送金に対する制限も解除し、金一族を讃える博物館を表参道に建て、北朝鮮に最も美しい大使館を建てさせる」べきであるなどとは言いません。

ただ、「北朝鮮の核ミサイル」を認めるべきだとするだけです。そんなことで本当にすむのでしょうか。仮に日本が認めたとしても、経済制裁も中途半端、朝鮮総連の送金に関しても中途半端、安全保障も中途半端、さらに多くの日本人が金一族を認めないようでは、何にもなりません。

このようなことでは、彼らは一切脅しをやめないでしょう。本当に日本が「降伏」するまで、脅しをやめないでしょう。そういう意味では「北朝鮮の核ミサイル」を認めるという意見は、かなり無責任であり、かえって戦争を誘発するものといえます。

「降伏」するのが嫌なら、選択肢は「先制攻撃」しかないのです。そのためには、日本は敵基地攻撃能力を持たなければならないのです。


 核研究所を視察した金正恩。背後の壁の説明図には火星14号の核弾頭(水素爆弾)と書かれている。
日本としては、攻撃のための航空機や精密誘導爆弾・ミサイル、長距離を飛ぶ巡航ミサイル「トマホーク」に加え、敵の発射拠点の把握や空中給油などの装備を順次整えていけば良いでしょう。最終的には核武装も視野に入れるべきです。

こうして、日本が順次準備を整えていくということになれば、これ自体が北朝鮮に対する牽制となります。北朝鮮の暴挙がエスカレートすれば、日本もこの準備をエスカレートさせれば良いのです。たとえば、核開発する時間を節約し、米国から核を買い取るなどのようなことを宣言してみたり、実際そうしてみせたりするのです。最初は、一発から、それでもエスカレートするなら、日本側もエスカレートさせるとう具合です。

朝鮮半島有事の際は、米軍も対日攻撃用のミサイルばかりたたいていることはできないでしょう。自衛隊が一定の攻撃能力を持つことは、国民の命を守る上で死活的に重要です。

政府は敵基地攻撃能力の保有は合憲との見解を長くとってきました。憲法の平和主義の精神に反するといった反対論は、国民を危険にさらすことになるだけです。

敵基地攻撃能力は、あくまでも自衛のための能力であり、侵略とは結びつくものではありません。与野党ともに現実的な判断をすべきです。

とにかく、「降伏」するか「先制攻撃」をするか2つしか選択肢はないこと、中途半端をすば戦争を誘発するだけになることはしっかりと認識しておくべきです。

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2017年4月28日金曜日

ルトワック博士の緊急警告! 先制攻撃か降伏か 日本が北朝鮮にとるべき選択肢―【私の論評】日本が戦争できる国に変貌することが、アジアに平和をもたらす(゚д゚)!

ルトワック博士の緊急警告! 先制攻撃か降伏か 日本が北朝鮮にとるべき選択肢

エドワード・ルトワック博士
『戦争にチャンスを与えよ』を上梓したエドワード・ルトワック氏より日本の読者へ向けて緊急の提言が届いた。朝鮮半島情勢が緊迫する中、日本がとるべき道とは何か。軍事的衝突の確率とは。“最強の戦略家”による最新の情報を、本書の一部とともに紹介する。
ルトワック博士の緊急警告! 
 習近平は現時点で、トランプからの「平壌(北朝鮮)政府に本物の圧力を加えてくれたら、米中貿易関係における要求を減らしてやる」という提案に対して、それなりに対応しているように見える。 
 なぜなら北京では、北朝鮮に対する石油の流れを制限することが議論されているからだ。 
 もしこれが実現すれば、きわめて重要なステップになる。 
 また中国は、アメリカによるシリアの空軍基地に対する巡航ミサイル攻撃を利用して、北朝鮮側に核実験を自制するよう警告している。そこで発せられているメッセージは「気をつけろよ! トランプはオバマと違うぞ。お前も攻撃されるぞ……」というものだ。 
 では、米軍はどういう計画を持っているのか。 
 米軍のトップたちは、かつてイスラエルがイラクやシリアに対して行ったような攻撃、つまり、北朝鮮の核・弾道ミサイルなどの目標に対して、たった一度の精密攻撃で「非核化」することを狙うような、「先制攻撃」だけをオプションとして考えているわけではない。 
 むしろ米軍はトランプ大統領に対して、「非常に大規模な空爆」、つまり、核・弾道ミサイルに加えて、北朝鮮の航空基地や地対空ミサイル部隊といったターゲットを攻撃するというオプションしか提案していないのである。
 これは非現実的な数日間にわたる作戦であり、民間人にも多数の死傷者がでるだろう。 
 ただしこのようなオプションは、北朝鮮が最初に大規模な砲撃や侵略、もしくはその両方を使って攻撃してこないかぎり実行されないはずだ。 
 さらに、アメリカ政府には「経済的遮断」という強力なツールがある。たとえば全般的な経済力に加えて、実際に金融制裁などを使って北朝鮮の資金調達を真綿で首を締めるようにして遮断することができるのである。 
 まとめていえば、トランプ政権下の米国はまたしても「防御的」に行動することになるだろう。ただしオバマ政権との決定的な違いは、そこに「戸惑い」や「曖昧さ」はない、という部分だ。


平和は戦争につながる

(以下『戦争にチャンスを与えよ』からの転載です)

「戦略」において、すべては反対に動く。

 戦争で国家や国民が被害を受け続けるのは、日常生活や平時における通常のロジックと紛争や戦時におけるロジックがまったく異なるからだ。また、そのことを理解するのが難しいために、被害がさらに拡大することになる。

 最も難しいのは、「戦争ではすべてのことが逆向きに動く」というのを理解することだ。たとえば、「戦争が平和につながる」という真実である。戦えば戦うほど人々は疲弊し、人材や資金が底をつき、勝利の希望は失われ、人々が野望を失うことで、戦争は平和につながるのだ。

 ところが、逆に「平和が戦争につながる」ことも忘れてはならない。

 人々は、平時には、脅威を深刻なものとして考えられないものだ。平時に平和に暮らしていれば、誰かの脅威に晒されていても、空は青いし、何かが起こっているようには思えない。友人との飲み会に遅れないことの方が重要で、脅威に対して何の備えもしない。

 つまり、脅威に対して降伏するわけでも、「先制攻撃を仕掛ける」と相手を脅すわけでもない。そのように何もしないことで、戦争は始まってしまうのである。

 平時には、脅威が眼前にあっても、われわれは、「まあ大丈夫だろう」と考えてしまう。脅威が存在するのに、降伏しようとは思わず、相手と真剣に交渉して敵が何を欲しているのかを知ろうともせず、攻撃を防ぐための方策を練ろうとも思わない。だからこそ、平和から戦争が生まれてしまうのである。

 平時には、誰も備えの必要を感じない。むしろ戦争に備えること自体が問題になる。そうして行動のための準備は無視され、リラックスして紅茶でも飲んでいた方がよい、ということになり、そこから戦争が始まるのだ。

 平和は戦争につながる。なぜなら平和は、脅威に対して不注意で緩んだ態度を人々にもたらし、脅威が増大しても、それを無視する方向に関心を向けさせるからだ。日本にとって、その典型が北朝鮮問題だ。

北朝鮮のICBM

北朝鮮への日本の態度

 北朝鮮は、特異な政権である。特異な点として、二つ挙げられるだろう。

 一つは、リーダーのヘアスタイルがひどい、ということだ。金正恩の髪型は本当にみっともない。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記
 もう一つは、北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れない、ということだ。根本的な意味で、日本やアメリカ以上の底力を持っている。

 もちろん、彼らのミサイルは、塗装されていない。アメリカや日本のミサイルは塗装されているが、そもそも爆発させるミサイルを塗装した方がよいかどうかという問題は、ここでは論じないでおこう。とにかく北朝鮮のミサイルは塗装されていないことが多い。

 その一方で、北朝鮮は、人工衛星を打ち上げ、中距離弾道ミサイルも発射した。さらに弾道ミサイルを潜水艦からも発射しているのだ。ミサイルに搭載可能な核弾頭の爆発実験も成功させた、と見られている。

 しかもこれらすべてを、彼らは非常に少ない予算で短期間に実現しているのだ。

 もし日本政府が国内メーカーに、中距離弾道ミサイルとそれに搭載可能な核弾頭、宇宙に飛ばす人工衛星の開発などを命じても、おそらく年間の国防費以上の予算と、調査、研究、開発に一五年ほどの時間が必要になるだろう。

 したがって、北朝鮮の軍事関連の技術者を侮ってはならない。彼らは、他国の技術者の五倍以上の生産性を有している、と言えるからだ。たとえば、イランは、核開発に北朝鮮の五倍もの時間をかけながら、一発の核兵器に必要な核物資さえつくりだせていない。人工衛星の技術もない。

 要するに、北朝鮮の軍事開発力は、極めて危険な域に達しており、真剣に対処する必要があるのだ。

北朝鮮への降伏
 私は戦略家であり、政治家ではない。ましてや教師や牧師でもない。倫理道徳の価値観の教育は専門外だ。したがって、私が日本政府に対して言えるのは、「何もしないのが最悪の選択肢で、以下の選択肢のうちの一つを実行せよ」ということぐらいである。

 第一の方策は、「北朝鮮に降伏(サレンダー)する」というものだ。

 北朝鮮政府が真に何を望んでいるのかを聞き出し、経済制裁をすべて解除する。祖国への朝鮮総連の送金に対する制限も解除し、金一族を讃える博物館を表参道に建て、北朝鮮に最も美しい大使館を建てさせる。

 代わりに、日本政府は、北朝鮮に五〇〇キロ以上の射程を持つミサイルの開発を止めてもらう。五〇〇キロ以上の射程のミサイルは、国際的な「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)での制限の対象となっている。またそれだけでなく、これは、幸いなことに偶然にも、朝鮮半島の非武装地帯から下関までの距離と同じなのだ。

 これは、北朝鮮に対する制裁をすべて解除し、彼らに名誉を与え、国家としての彼らの存在を認めることで、五〇〇キロ以上の射程のミサイルの脅威を取り除く、という道だ。

北朝鮮への先制攻撃
 次の方策は、「北朝鮮を攻撃する」というものだ。しかもこれは、先制攻撃(プリエンプティブ・ストライク)でなければならない。核関連施設を特定しつつ、それらすべてを破壊するのである。

 たとえば、イランの核開発の脅威に晒されているイスラエルは、先制攻撃能力を持っている。イスラエルが先制攻撃する場合は、儀式的なことは一切抜きに、ただ実行するのみだ。しかも彼らは、アメリカと違って空爆だけを用いるわけではない。空と陸から同時に攻撃を行うのである。

 もしイスラエルの首相が、「イランが核攻撃を行いそうだ」という報告を受けたら、即座に空と陸から攻撃を開始する。しかも、有人機とミサイルを使うのだ。ミサイルも、短距離ミサイルと長距離ミサイルの両方を使う。

 アメリカは、OPLANという韓国との合同演習で、北朝鮮の核施設への攻撃を想定した訓練を行っているが、いずれにせよ、北朝鮮が核弾頭をミサイルに搭載したら、その時点で完全に手遅れだ。

 ここで覚えておかなければならないのは、北朝鮮のミサイルは、侵入の警告があれば即座に発射されるシステム(LOW)になっているかもしれない、という点だ。このシステムでは、アメリカの航空機やミサイルが侵入してくれば、北朝鮮側の兵士が自動的に発射ボタンを押すことになる。

 LOWとは、レーダーからの警告に即座に反応することを意味する。彼らは、その警告を聞いた途端にボタンを押すのだ。そうなると、北朝鮮を攻撃すること自体に大きなリスクが伴う。

 もし北朝鮮を本気で攻撃するのであれば、空からだけでなく地上からの支援も必要だ。地上に要員を配置して、ミサイルをレーザーなどで誘導しなければならないからだ。つまり「現場の兵士」が必要となるのであり、ミサイルの着弾後も、攻撃目標が間違いなく破壊されたかを確認する必要がある。ミサイルが着弾しても、爆発による煙やホコリが落ち着くまで写真撮影は不可能であり、破壊評価が遅れるので、現場の人員が必要になるのだ。そのためには、北朝鮮内に何らかの方法で人員を予め侵入させておき、目標を把握しておかなければならない。

 韓国は、そうした能力を持っているとされるが、もしそうなら、作戦敢行の最も良いタイミングは、今夜、もしくは明晩ということになる。しかし、いくら能力があっても、それを使う「意志」がなければ、能力は何の意味もなさないのである。

韓国と北朝鮮との軍事境界線上にある板門店
「まあ大丈夫だろう」が戦争を招く

 日本国民も、一九四五年以来、他国や他民族が戦争の悲劇に見舞われてきたことを目撃してきたはずだ。街が燃やされ、多くの人間が殺され、子供も殺されたのだ。それらすべてのケースがなぜ発生したかと言えば、当事者たちが、「まあ大丈夫だろう」(it will be all right)と思ってしまったからだ。

 人間というのは、平時にあると、その状態がいつまでも続くと勘違いをする。これは無理もないことだが、だからこそ、戦争が発生する。なぜなら、彼らは、降伏もせず、敵を買収もせず、友好国への援助もせず、先制攻撃で敵の攻撃力を奪うこともしなかったからである。つまり、何もしなかったから戦争が起きたのだ。

 いま北朝鮮に関して生じているのは、まさにこのような状況だ。

 アメリカは、北朝鮮の核開発の阻止に関して何もしていない。アメリカだけではない。他の西側諸国も、中国も、ロシアも、何もしていない。

 さらに北朝鮮は、核兵器と弾道ミサイルを保有し、韓国を直接脅かしているのに、韓国自身も何もしていない。彼らは、北朝鮮に対して抑止さえもしていないのだ。

 韓国は、北朝鮮に何度も攻撃されているのに、反撃さえしていない。韓国の哨戒艦「天安」の沈没事件でも、誰もいない方向に砲撃しただけだ。

 要するに、韓国は、北朝鮮の脅威が現に存在するのに、何も行っていない。「降伏」も、「先制攻撃」も、「抑止」も、「防衛」もせず、「まあ大丈夫だろう」という態度なのだ。

 これは、雨が降ることが分かっているのに、「今は晴れているから」という理由だけで、傘を持たずに外出するようなものだ。ところが、このような態度が、結果的に戦争を引き起こしてきたのである。

エドワード・ルトワック(Edward N. Luttwak)

【私の論評】日本が戦争できる国に変貌することが、アジアに平和をもたらす(゚д゚)!

北朝鮮の特異点としてルトワック氏は、金正恩の酷い髪型と、北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れないということをあげていました。

金正恩の髪型とは、無論髪型そのものを言っているのではなく、北朝鮮の体制や文化水準などのことを指しているのだと思います。

そうして、軍事技術に関しては、多くの日本人はどうせかつてのソ連や、今ロシア、それに日本などから盗んだものとして、あまりその技術水準に対して脅威を感じていないようでもあります。

しかし、他国の技術盗むということでは、中国をはじめとしてどのような国でも盗んでいるといえば盗んでいるはずです。別に北朝鮮だけが、技術を盗むことに長けているというわけではないです。にもかかわらず、北朝鮮が短期間に核やミサイルの開発に成功しているということは決して侮れないということです。

これに関しては、なぜ北朝鮮の軍事技術が優れているのかについて、このブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言―【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?
 

この記事は昨年2月7日のものです。詳細は、この記事を読んでいただくものとして、以下には北朝鮮の軍事技術が侮れない理由を述べた部分を引用します。

北朝鮮のミサイル技術も、ソ連の流れを汲むものですが、すでに完成された技術をつかっており、精度を更新するための工夫はあっても、ほとんど進化していません。 
とはいいながら、自前で、車や航空機を製造することができるある程度技術のある国にとっては、そうなのですが、発展途上国などではなかなかそうはいきません。 
にも関わらず、北朝鮮が成功したしないは別にして、とにかく人工衛星発射に挑戦できるだけの技術基盤をどのようにして構築したのでしょうか。 
無論、旧ソ連の技術を転用してたりしているはずですが、それにしても、特に韓国と比較して、著しく技術面でも、経済面でも遅れてしまった北朝鮮でなぜそれが可能になったのでしょうか。 
それは、歴史を遡るとおのずと答えがでてきます。 
大東亜戦中・戦前はご存知のように、朝鮮半島は日本に統治されていました。そうして、実は、日本統治時代、電源開発や工業化において、南朝鮮よりも、北朝鮮の方がはるかに進んでいました。 
朝鮮と満洲の国境を流れる鴨緑江の水系には当時世界最大級の水豊ダムがあり、支流の赴戦江、長津江、虚川江にもダムがありました。
現代の水豊(スプン)ダム
このダムは太平洋戦争の泥沼化の中、1944年3月、水豊水力発電所(発電能力:60万kW)と共に竣工しました。この発電規模は当時の世界最大級であり1940年当時の日本国内の水力発電規模280万kWと比較してもその大きさは容易に比較できます。7基の発電機は各々約10万kWの発電能力を持っていたが、当時世界最大級の能力であり、製造を受注した東京芝浦電気(現在の東芝)は製造のために新工場を建設しました。 
1945年8月9日、ソ連軍(赤軍)侵攻により、7基の発電機のうち5基を略奪されました。略奪された発電機は、カザフスタン共和国、イリティッシュ川(エルティシ川)上流のダムで確認されています。 
朝鮮戦争中に雷撃を含む、アメリカ軍機の攻撃を受けたが、ダム構造が堅牢であったため決壊を免れました。ただしこの攻撃で北朝鮮では発電能力が激減し一時、広域にわたって停電しました。戦後に北朝鮮は発電能力を増強して復興しました。竣工から70年以上経過した現在もダム本体は大きな改修工事が行われず現役であり、現在も北朝鮮の重要なエネルギー源の一つです。なおダム湖は中朝国境となっていて、北側は中国領です。 
戦中には、この電力を使い、北部の日本海に面した興南という地に、日本窒素肥料(現チッソ)が大規模な化学工場を建設し、硫安などの肥料を量産していました。
最近の北朝鮮の旅客機の客室乗務員 スカートの丈が短くなった
戦後、日本から莫大な工業資産を引き継いだ北朝鮮の経済は長い間、農業国の韓国より優位に立っていました。1975(昭和40)年の一人当たりの国民所得は、韓国120ドルに対し、北朝鮮は190ドルでした。しかし、その10年後、韓国580ドル、北朝鮮450ドルと逆転しました。 
これは昭和40年の日韓国交正常化に伴う日本からの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を経済発展のために使った当時の朴正熈大統領をはじめとする韓国民の努力の成果でした。 
北朝鮮はすでに日本統治時代の資産を食いつぶし、現在のような状況に陥っています。しかし、日本から受け継いだ工業技術などは細々とでも、引き継いできたのでしょう。特に、民生分野ではかなり立ち遅れてしまいましたが、日本統治時代の資産の上に、旧ソ連などの技術などを継ぎ足し、継承しているのだと思います。

だからこそ、発展途上国であり、経済的にも恵まれず、人民が食うや食わずの状態でありながらも、人民を犠牲にしてでも、軍事技術などは何とか維持発展させ、核兵器や弾道弾などの技術に挑戦できるのです。

もし、北朝鮮が日本の統治を受けておらず、中国の属国のままであったとしたら、今頃、核兵器や大陸間弾道弾などとは無縁の国であったことでしょう。技術的な基盤がまったくないところに、ソ連などの技術を移転したとしても、自前で核兵器や、大陸間弾道ミサイルなど、なかなか開発できるものではありません。
これは、日本統治時代の朝鮮に対して日本がいかに貢献したかを物語っていると思います。日本統治時代に、日本は朝鮮の人民を自国民として扱い、自国民と同等の教育をしていたということの証であると思います。

そうして、現在の北朝鮮にあたるところには、工業化されていたことから、朝鮮人に対する産業教育なども十分に行われていたものと考えられます。統治時代の約30年間にわたり、北では具体的な産業教育が行われたものと思います。

そこで、産業の基本的なものの考え方や、心構えなども教えられたものと思います。一方、韓国においては統治時代にはそのようなことはなく、戦後しばらくしてから産業化し、見よう見まねで産業化が図られたため、そもそも基本的なものの考え方や、心構えなどがおろそかにされたのだと思います。

韓国では、これらが疎かにされ、付け焼き刃的に海外から技術を買ったり、技術者を雇ったりして最先端の技術を身につけたようにもみえるのですが、基本中の基本を疎かにしたため今日のようなチグハグな状況になってしまったものと思います。

その象徴的なことが、軍事産業で起こっています。たとえば、強襲揚陸艦の「独島」など象徴的です。以下に「独島」のポンコツぶりを示す記事のリンクを掲載します。
【世界を読む】韓国軍艦『独島艦』唖然の〝ポンコツぶり〟…自称「アジア最大」で機関砲は味方撃ち、火災・浸水・漂流で使い物にならず
韓国の強襲揚陸艦「独島」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、韓国がアジア最大の軽空母級輸送艦と自称する「独島(ドクト)艦」も救いようのないポンコツ品であることが、現地報道などを通じ次第に明らかになたことを報道しています。韓国が不法占拠する島根県竹島の韓国名を挑発的に命名したこの軍艦は、レーダーが役に立たず、機関砲を発射すれば甲板上の自軍ヘリに命中するという設計ミスが判明。あげくは平時の海上で浸水や火災を起こして漂流し、長期修理でドッグ入りしてしまいました。韓国内では、「パレード艦」「イベント艦」と揶揄され、就役から7年たっても全く戦力にならない“自慢の軍艦”の信じがたい実情を紹介しています。

この艦艇は、韓国が製造したものです。一国が製造した軍事用の艦艇や、戦車などには、その国の技術水準が如実に反映されるものです。

日本でもヘリコプター搭載型護衛艦として、このような艦艇を製造していますが、これほど酷い不手際があった試しはありません。

北朝鮮がもし、韓国と同じ程度の軍事予算を獲得することができれば、とてつもないことになるかもしれません。

しかし、日本とて韓国を笑ってばかりではいられません。今日、北朝鮮の核とミサイルは日本にとって最大の脅威となっています。北朝鮮に巨大な産業資産を設置し、産業教育などを施したことが回り回って、現在の脅威を生み出しているのです。

北朝鮮は、戦後しばらくは技術水準もかなり劣っているように見えたので、日本では多くの人が「まあ大丈夫だろう」だろうと考え、これに真摯に対応してこなかったことが、拉致問題を生み出しさらには、今日の脅威を生み出してしまったのです。

ルトワック氏は北朝鮮への日本の対応は、北朝鮮への降伏、北朝鮮への先制攻撃のいずれかしかないと主張しています。

無論、日本としては北朝鮮への降伏はあり得ないです。では、ルトワック氏の主張からすれば、北朝鮮への先制攻撃しかないということになります。

しかし私は、ルトワック氏は、日本が北朝鮮とすぐに戦争しろと単純に主張しているとは思いません。先制攻撃しかないなどといわれても、今の日本にはすぐに北朝鮮に先制攻撃できる力はありません。

そのようなことはわかっていて、このような主張をするわけですから、無論明日や明後日に、北朝鮮に先制攻撃しろと言っているわけではないと思います。そうではなくて、それに向けて今すぐに準備しろと主張しているのだと思います。

これに対処するために、日本は、北朝鮮に対して先制攻撃できるだけの軍事力とそれに対応できるように国内での法的裏付けをするべきであると主張しているのだと思います。

しかしそのためには、結局日本が「戦争できる国」に変貌するしかありません。こう言うと、リベラル・左派の人たちはとんでもないことだと大騒ぎするかもしれません。

しかし、彼らは、上でルトワック氏が主張しているような「平和は戦争につながる」という現実を見ていないだけです。

日本が北朝鮮に先制攻撃できるだけの準備を整え、いつでもそれを実行できるようにしておけば、そもそもこれから朝鮮半島で問題がおこることはなくなる可能性が高いです。

日本は、あまりに長い間平和を享受しすぎました。そのことが、今日の危機を招いているのです。そうして、日本が変わらなければこの状態は未来永劫にわたって継続します。

日本が戦争できる国に変貌することが、日本にそうしてアジア平和をもたらすのです。

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