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2019年4月8日月曜日

歴史の法則で浮かんできた、安倍政権「改元後半年で退陣」の可能性―【私の論評】安倍総理の強みは、経済!まともな政策に邁進することで強みが最大限に発揮される(゚д゚)!

歴史の法則で浮かんできた、安倍政権「改元後半年で退陣」の可能性
このまま増税を実施するならば…

大阪の成長は安泰だが、では日本の成長は…?

先週の本コラム「平成は終わるが、大阪の成長を終わらせてはいけない 大阪選挙の論点を11の図表で確認」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63847)では大阪ダブル選挙の情勢について取り上げたが、フタをあけてみれば、大阪ダブル選挙は吉村・松井の維新コンビがそれぞれ府知事・市長に当選した。

これまでの実績が十分にあり、さらに2025年に開催予定の大阪万博と夢洲にIR(統合型リゾート施設)を建設する、という将来への布石も打ってきた維新が負けるはずないと思いながら、選挙は水ものなので、筆者の中にも一抹の不安はあった。

しかし、やはり大阪府・市民は賢明な選択をした。選挙当日、お笑い芸人・ブラックマヨネーズの吉田氏が、ツイッター(https://twitter.com/bmyoshida/status/1114602103056375808)で、

<【大阪】人が必死で考えて、結果まで残して言う意見に対して、「それは違います」と言いきる。背筋を伸ばし首を横に振るだけ。そして、代替案は話し合いが大事だという。いいか?相手の意見を首振って否定する、そんな奴が話し合いで解決できるとか言わないで欲しいんだ。>
とつぶやいたが、これは大阪で維新を支持する一般的な人の、まっとうな感想だろう。
さて、これで2025年万博も夢洲IRも実施に向けて動くことになるので、大阪の成長はひとまず安心である。

一方、日本全体の成長はどうなるか。次の元号が「令和」に決まり、慶賀ムードが高まっているが、「令和」はどのような時代になるのだろうかを予測してみたい。

結論から言えば、それは、今後安倍政権がどこまで続くか、その上でもし安倍政権が続く場合、どのような政策を打つのか、によって大きく異なってくるだろう。

自民党の一部からは、自民党総裁の任期を延長して「安倍四選でいい」という話も出てきているが、これまでの歴史をみると、そう簡単ではないことが分かる。

明治以降、改元があったのは①1912年7月3日(大正元年)、②1926年12月25日(昭和元年)、③1989年1月8日(平成元年)と、今回の④2019年5月1日(令和元年)である。

それぞれ、①は第二次西園寺内閣(1911年8月3日0~1912年12月21日)、②は第一次若槻内閣(1926年1月30日~1927月4月20日)、③は竹下内閣(1987年11月6日~1989年6月3日)の時に起こっている。そして④が第四次安倍内閣(2017年11月1日~)である。

これまでの改元では、改元後半年たらず(ほぼ5カ月後)にその時の内閣が退陣している。①大正後は5カ月18日、②昭和後は4カ月26日、③平成後は4カ月26日で、それぞれ内閣が倒れている。これまでの改元は天皇崩御に伴うもので、今回の譲位はまったく違うものではある。

しかし、それにしても過去3回で改元の5カ月後に内閣が退陣している、というのは不吉な事実である。

改元後、各政権で何が起こったか

①の内閣退陣は、日露戦争後の情勢変化により、当時勢力を強めていた軍部と財政難を理由とする内閣との争いが原因で、1912年12月に、西園寺内閣が総辞職に追い込まれた。

②は、1927年3月の昭和金融恐慌が原因であった。経営危機となった台湾銀行を救済する緊急勅令案発布について、1927月4月に枢密院が否決して若槻内閣が倒れた(枢密院は戦前の天皇の諮問機関であり、戦後は廃止されている)。

③は記憶に新しい。1988年12月24日の消費税導入を柱とする「税制改革法」を竹下内閣は剛腕で成立させた。しかし消費税への反発は強く、そのうえ竹下内閣で不祥事が相次いだこともあり、内閣支持率が低下し、1989年6月に退陣に追い込まれた。

いずれも、今とは時代背景が異なるので、軽々に「歴史は繰り返す」とは断言できない。しかし、若干の示唆もあると筆者は思っている。

①は、国際情勢が大きく変化していたにもかかわらず、それを考慮せずに緊縮財政を言い過ぎた結果といえる。②は、若槻内閣の後を継いだ田中義一内閣の高橋是清蔵相が、モラトリアム(支払猶予令)と大量の日銀券増刷を実施することで昭和金融恐慌がおさまった。裏を返せば、若槻内閣が倒れたのは金融引締政策を行ったためだと解釈できる。③は、いうまでもなく消費税が原因である。

これをあえて、今のマクロ経済政策の財政政策と金融政策に置き直してみると、①と③は財政緊縮政策、②は金融引締政策がそれぞれ原因であると整理できる。

マクロ経済政策という観点から、改元後、半年足らずで安倍内閣退陣が起こりえるのかを考えてみよう。

まず、安倍政権のマクロ経済政策は、アベノミクスの第一の矢である「金融緩和」と第二の矢である「機動的財政」である。2013年からの安倍政権をみると、金融政策では異次元緩和を実施してきたが、2013年から2016年9月までは年80兆円日銀保有国債ペースの金融緩和、2016年9月以降は年20兆円の弱い金融緩和、財政政策では、2013年はまさに積極財政、2014年以降は消費増税を強行した。つまり、「なんちゃって」財政政策というべきもので、これは積極財政とはいいがたい。


こうしたマクロ経済政策の推移をみると、最近の景気動向指数の動きをよく説明できる。
これについては、下図や3月25日付け本コラム<消費増税、予定通り進めれば日本に「リーマン級の危機」到来の可能性>https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63706)を見てもらいたい。

今の状況はどうかというと、安倍政権が実施する金融政策は弱く、財政政策も積極的とはいえない。ということを考えると、実は過去の「改元後退陣内閣」の状況と似ていると言えなくもない。

しかも、今年10月には消費増税を予定している。いくら消費増税を見越して経済対策を行うとはいえ、それが切れたときには消費増税の悪影響をもろに被ることになる。これは、特に③の前例が繰り返されるそれが強い。

参院選、消費増税で敗北すれば…

国際社会からも「このタイミングで消費増税はないだろ…」という常識論がでてきた。3月25日付け本コラムやその他で何度も指摘しているが、中国の経済低迷やイギリスのブレグジットに伴う世界経済の悪化が予想されているが、これらはいわゆる「リーマン・ショック級の出来事」になりうるからだ。

これについて、4月3日のウォール・ストリート・ジャーナルの社説で、日本が今年10月からやろうとしている消費増税は「経済を悪化させるワケのわからない政策だ」と皮肉っている(https://www.wsj.com/articles/land-of-the-rising-unease-11554333457)。

別に米紙にいわれなくても、おかしな政策であることは、例えば、今年6月の大阪G20サミットに参加する中国やオーストラリアが、増税ではなく減税政策をやろうとしていることから、誰でもわかるだろう。G20では世界経済の話も議題として出てくるはずだが、議長国の日本がヘンテコな政策をやろうとしていることが世界に伝われば、恥をさらすことになるだろう。

冒頭の大阪ダブル選挙に戻ると、筆者は大阪の経済を考えれば、維新が勝利してよかったと思っている。このダブル選挙において、反維新勢は自民と公明が中心であった。一方、国政では、維新は今年10月からの消費増税に反対しているが、自民と公明は消費増税を推進している。

官邸はまだ最終的な決断をしていないものの、自民党の大半と公明党はほとんど財務省の追随と言っていいぐらい、増税に傾いている。もし、大阪ダブル選挙で、一つでも反維新が勝利していたら、10月からの消費増税を大阪府市民が望んでいる、という間違ったメッセージを与えかねなかった、と筆者は思っている。

いずれにしても、このまま今年10月からの消費増税を行えば、今年7月の参院選に安倍政権はまともに勝てない可能性がある。そうなると、安倍政権は、四選どころか、即退陣も現実味を帯びてくる。

安倍総裁の四選を、という声が自民党から出てくるのは、安倍総裁下の自民党が選挙に強いからであり、逆に最大の強みである選挙に負ければ退陣を迫られる、ともいえるのだ。実際、第一次安倍政権は2006年9月26日にスタートしたが、2007年7月29日の参院選で自民・公明を合わせて過半数をとれず、9月26日に退陣した。

このときを参考にするなら、参院選で負ければその2カ月後に退陣である。今回の参院選は7月に行われるが、それに負ければ9月に退陣となる。つまり、改元の後、半年ももたずに内閣退陣になり、明治以降の「改元後半年もたたずに内閣退陣」という悲劇が繰り返される可能性があるのだ。

この悪夢を吹っ飛ばすには、「リーマン・ショック級」があり得ることを見越して、今年10月からの消費増税を取りやめにするしかないと筆者は思っている。

【私の論評】安倍総理の強みは、経済!まともな政策に邁進することで強みが最大限に発揮される(゚д゚)!




新元号「令和」に国民の好感が広がっているとみて、安倍政権が安堵(あんど)しています。

内閣支持率も押し上げる結果になり、安倍晋三首相は新時代の象徴として、さらにアピールしていく考えです。過去3回の改元では、立ち会った首相はいずれも半年以内に退陣に追い込まれた。安倍首相がこのジンクスを打ち破れるかも注目です。

「いよいよ令和の時代が始まる」。首相は3日、国家公務員合同初任研修で新人職員約780人を前に訓示。新元号が、万葉集にある梅の花を歌った和歌の序文を引用したことを引き合いに、「それぞれの花を大きく咲かせてほしい」と激励しました。首相は令和時代の政権維持に向け、統一地方選や夏の参院選の勝利に全力を挙げる方針です。

新元号決定をめぐり、首相が心配したのは、事前の情報漏えいに加え、国民の評判でした。首相は1日夜のテレビ番組で「多くの方々が前向きに明るく受け止めていただいて本当にほっとした」と語りました。一部報道機関の世論調査でも令和に好感を持つ人が八割強に上り、内閣支持率も上昇。初めて日本古典を典拠としたことも評価され、政権は自信を深めています。

首相は1日夜、自民党幹部と会食した際、「万葉集がブームになる」と述べるなど上機嫌でした。出席者からは「この勢いで(参院選に合わせた)衆参ダブル選は勘弁してください」との声が上がり、首相は笑って聞いていたといいます。

これまで改元を経験した首相はこの記事の冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるとおり3人。大正(1912年)の西園寺公望首相(当時、以下同)は陸軍2個師団増設問題をめぐる軍部との対立で総辞職。昭和(1926年)の若槻礼次郎首相は金融恐慌によって、平成(1989年)の竹下登首相は消費税への反発とリクルート事件をめぐる疑惑でそれぞれ退陣しました。

ただ、皇位継承に伴う一連の儀式が来春まで続き、国民の祝賀ムードも持続しそうな今回は過去の改元とは状況が違うとの見方が多いです。政府関係者は「当面、自民党は首相を代えられない」と語ったとされています。

今年予定されている儀式

このようなことがあるため、私自身は安倍内閣は仮に消費税増税をしたとしても、参院選で負けることもなく、しばらくは退陣ということにはならないとは思いますが、そのかわり、実質的に増税後は、憲法改正もできずに、レイムダックになり総裁任期の2021年9月までは総理でありつづけるでしょうが、その後の4選の目はでないと思います。

安倍総理が総理大臣になり、他の総理大臣のように劇的に支持率が落下しなかった最大の要因は、やはり経済政策です。その中でも、財政政策は増税により失敗しましたが、金融政策においては、最近は実質上の引き締めに近いところがありますが、それでも過去の政権と比較すれば結果として緩和を実行し続けたことです。

これにより、雇用情勢はかなり良くなっています。これが、安倍内閣の強みの源泉です。これは、理想からいえばは十分とはいえませんが、それにしても、過去の内閣にはない強みです。

さらには、残念ながら自民党の他の幹部や、野党には全くこの金融政策が理解できていません。安倍総理は憲法の改正等その他のことでは、これほどの強みを発揮することはできなかったでしょう。実際、第一次安倍政権はまともなマクロ政策を打ち出すことができず、退陣しました。

やはり、多くの人々は、自分たちや周りの人たちの暮らし向きを最重点に考えるのです。その中でも、雇用は根幹的なものであり、これが確保されなければ、他の経済指標がいくら良くても、政府の経済政策は失敗です。一部の変わり者は別にして、大多数の日々の普通の生活者にとっては、憲法改正など二の次です。まずは、雇用です。

しかし、安倍総理が、10月の消費税増税を実行してしまえば、金融緩和政策の効き目も、完璧に相殺され、安倍総理は強みを失ってしまうことになります。

経営学の大家ドラッカー氏は、強みについて以下のように語っています。
誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思う。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし、何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない」(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、この強みを知る方法を教えています。“フィードバック分析”です。なにかまとまったことを手がけるときは、必ず9ヵ月後の目標を定め、メモしておくのです。9ヵ月後に、その目標とそれまでの成果を比較する。目標以上であれば得意なことであるし、目標以下であれば不得意なことです。
ドラッカーは、こうして2~3年のうちに、自らの強みを知ることができるといいます。自らについて知りうることのうちで、この強みこそが最も重要です。
このフィードバック分析から、いくつかの行なうべきことが明らかになります。行なうべきではないことも明らかになります。
もちろん第1は、その明らかになった強みに集中することです。強みがもたらす成果の大きさには、誰もが驚かされるはずです。
第2は、その強みをさらに伸ばすことです。強みを伸ばすことは、至ってやさしいです。ところが誰もが、弱みを並の水準にするために四苦八苦しています。
第3は、その強みならざる分野に敬意を払うことです。不得意なことを負け惜しみで馬鹿にしてはならないです。自らにとって弱みとなるものに対してこそ、敬意を払わなければならないです。
第4は、強みの発揮に邪魔になることはすべてやめることです。強みを発揮できないほどもったいないことはないです。
第5は、人との関係を大事にすることです。そうして初めて強みも発揮できます。
第6は、強みでないことは引き受けないことです。正直に私は得意ではありませんと言うべきなのです。
第7は、強みでないことに時間を使わないことです。いまさら直そうとしても無理です。時間は、強みを発揮することに使うべきなのです。
これからは、誰もが自らをマネジメントしなければならない。自らが最も貢献できる場所に自らを置き、成長していかなければならない。(『プロフェッショナルの条件』)
安倍総理には、自らの強みを最大限に発揮していただき、増税を見送り、現在日本にとって最も重要なマクロ経済政策に邁進していただきたいです。

そうして、それは必ず大多数の国民に支持されることになります。

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2019年3月27日水曜日

トランプ大統領「再選」の目に韓国&北朝鮮が震撼! 日本は拉致問題解決の追い風に―【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?


ロシア疑惑を乗り切ったトランプ氏

 ドナルド・トランプ米大統領に「再選」の目が出てきた。2016年の大統領選をめぐるロシア疑惑をめぐり、特別検察官が提出した捜査報告書で、トランプ陣営とロシアの共謀は認定できないと指摘されたのだ。来年の大統領選に向けた「最大の障害」がなくなり、トランプ氏は続投に意欲を見せる。一方、韓国と北朝鮮には震撼(しんかん)が走りそうだ。トランプ氏は韓国への不信感を強め、北朝鮮にも制裁を緩める気配がない。日本にとっては、悲願の拉致被害者奪還に追い風となりそうだ。

 「2年間もかけて、証拠が1つも出なかった。米民主党としては、ロシア疑惑しか、トランプ氏の再選を阻む手段はない。経済政策はうまくいっているし、外交でも米中新冷戦でポイントを挙げている。民主党の大統領候補は極左ばかりで、トランプ氏の再選の可能性がさらに強まった」

 国際政治学者の藤井厳喜氏はこう語った。

 ウィリアム・バー司法長官は24日、ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書について議会に概要を報告した。そのなかで、「特別検察官の捜査は、トランプ陣営や関係者らが、大統領選に影響を及ぼすためロシア側と共謀したり協力したりしたということを見いださなかった」と指摘した。

 司法妨害についても、バー氏は「特別検察官の捜査による証拠は、大統領の司法妨害への関与を立証するには不十分」と結論づけたとする意見を記したという。

 こうした動きを受け、トランプ氏は同日、ツイッターに「共謀も(捜査)妨害もない。完全かつ全面的に疑いが晴れた。米国を偉大にし続けよう!」と投稿した。「偉大にし続ける」という部分から、続投への強い意欲が感じられる。

 米議会下院を握る民主党は報告書全文の公開を要求したが、トランプ氏にとっては「再選への追い風」となったのは事実のようだ。

 これらは、韓国と北朝鮮には「最悪の事態」を意味する。トランプ氏と両国との関係悪化が顕在化しているからだ。

 米国の同盟国である韓国だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生後、米韓関係は悪化の一途をたどっている。

 北朝鮮の「核・ミサイル」問題をめぐり、文政権が「仲介者」となって始まった米朝交渉だが、北朝鮮の「見せかけの非核化」が明らかになり、2月末の米朝首脳会談は決裂した。世界各国で、対北制裁緩和を主張し続けた文大統領に対し、トランプ政権は「北朝鮮の代弁者」とみなして不信感を強めている。

 韓国の保守系メディアは最近、「米韓関係の悪化」を懸念する記事を掲載している。

 米朝首脳会談から1カ月近くがたった25日にも、中央日報(日本語版)は《「文大統領の仲裁論に米国務長官が不快感、韓米外相会談はないと…」》と伝えた。記事では、ワシントンの情報筋の話として、マイク・ポンペオ国務長官と、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の会談が、今月中にはないとの見方を紹介している。

韓国海軍駆逐艦による、海上自衛隊哨戒機への危険な火器管制用レーダー照射事件についても、米国側は「韓国側の暴挙」について、日本側から詳細な情報を得ているという。

 北朝鮮にとっても、トランプ政権の継続は歓迎すべき話ではない。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は昨年6月と今年2月、トランプ氏との首脳会談に臨んだが、何の成果も得られなかった。列車で3日近くかけて大宣伝しながらベトナムに乗り込んだものの、経済制裁も緩和されず、最高指導者の権威に傷がつくだけの結果に終わった。

 先週、正恩氏のロシア訪問を示唆する動きがあったが、米朝首脳会談の決裂を受けて、米国の譲歩を引き出そうとした可能性がある。

 前出の藤井氏は「トランプ氏が強くなるということは、『親北』の文政権にはマイナスだ。北朝鮮としても、『もう少し柔らかい民主党の大統領になれば、くみしやすい』とみているだろう。トランプ政権が続けば『核・ミサイル』問題で妥協せざるを得なくなるはずだ」と解説する。

 逆に日本にとって、トランプ氏の続投は追い風といえる。



 安倍晋三首相とトランプ氏との信頼関係が強固で、先月の米朝首脳会談でも、安倍首相が最重要課題と位置づける拉致問題を、会談冒頭を含めて2回も提起したのだ。

 藤井氏は「北朝鮮は首脳会談で、米国が経済制裁を解除してくれると甘く踏んでいたようだが、そうはならなかった。『(拉致問題を解決して)日本から金を引き出さないと厳しい』という考えになっているようで、水面下で日本に接近してきたと聞く。トランプ政権は対北強硬路線を取っており、日本にとって、トランプ氏の再選は良い事態だ」と語っている。

【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?

トランプはおそらく再選されることでしょう。それには以下のような理由があります。

第一に米国の現職大統領は再選される可能性が高いことがあります。第二次大戦後米国では11人の現職大統領が再選選挙に臨みましたが、8人が再選を果たしました。

再選できなかった3人は、フォード、カーター、父ブッシュですが、この内フォード大統領は任期途中で辞任したニクソン大統領に代わって副大統領から繰り上がって就任し選挙を経ていないので除外すると、現職大統領の再選の可能性は80%以上ということになるります。

それもイラン問題でしくじったカーター大統領や、景気不振を招いた父ブッシュ大統領の場合と違い、トランプ大統領には今のところ政策的に大きな間違いは犯してていません。

第二に相手候補のことがあります。民主党側では2ダース以上の候補者の名前があがっていて乱立気味です。

2020年のアメリカ大統領選挙は、まだ1年以上先なのですが、すでに公式に出馬を表明したのは、ジュリアン・カストロ(元住宅都市開発省長官)、リチャード・オジェダ(ウエストバージニア州上院議員)、ジョン・デレイニー(メリーランド州選出下院議員)等3人だですが、この他にコーリー・ブーカー(ニュージャージー州選出上院議員)、カマラ・ハリス(カリフォルニア選出上院議員)などですが、彼らは実は米国内でも知名度は低いのです。

ジュリアン・カストロ

そこで、バイデン元副大統領やヒラリー・クリントン前大統領候補の出馬が取りざたされているが「新味がない」との声も高いです。

民主党の場合、党内の候補者の最初の討論会が今年6月に開催され、党内の候補者選びがスタートするが、今年は全ての日程が早まり有力州の予備選は12月に始まります。つまり、6月までには一年半の選挙戦を戦い抜く組織と資金を確保しておく必要があるわけですが、今のところそこまで準備できそうな候補は見当たらないです。

ちなみに、前回の大統領選でヒラリー・クリントンは2015年4月までに組織と資金の準備を終えて正式な出馬表明をしていました。

一方のトランプ大統領は、昨年2月の大統領就任時にすでに2020年への出馬を連邦選挙委員会に届け出て公式に選挙運動を始め、昨年(2018年)2月には選挙参謀を指名しました。資金的にもすでに3500万ドル(約40億円)を集めたとされています。

最後に、トランプ大統領に有利にはたらく要素があるとすれば、意外と思われるかもしれないが下院での弾劾の動きです。

中間選挙で過半数を獲得した民主党は、新議会でトランプ大統領への弾劾を目指していわゆる「ロシア疑惑」について厳しく追求してきました。

しかし、1998年にクリントン大統領のインターンとの不倫問題で共和党が弾劾に向けて激しく追求した時に行われた中間選挙では、その共和党が議席を失うということになりました。有権者は議会が弾劾にばかり熱をあげることには反対するのです。

さらに、モラー報告書によって過去2年間も調査を実行したのに「ロシア疑惑」なるものには、何の実体もないことが明らかになったわけですから、これは当然トランプ大統領に有利に働くのは当然のことです。これ以上弾劾の動きがあれば、さらにトランプ大統領に有利となるでしょう。



日本では、安倍総理四選の噂もでています。そうして、それはあながち否定できないところがあります。これは、自民党の党則を変えれば実現できるものだからです。

こういった噂が出る背景には、安倍氏の後継候補がなかなか見えてこないという事情がああります。石破氏は先の総裁選の地方票で健闘して「ポスト安倍」レースで一歩抜けた印象がありますが、肝心の国会議員票では2割にも達していませんでした。

その他は岸田氏、加藤氏、茂木敏充経済再生担当相らの名が上がりますが、政治的力量、知名度、人望ともに心もとないです。特にこれら候補すべてが、増税派であるということも気になります。

さらに石破氏も含めて4人は、いずれも60歳代。64歳の安倍氏とほぼ同世代です。これでは、対外的に世代交代したというアピールができません。

自民党の若手が、経験を積むまでの間、安倍氏に続けてもらったらどうか。そういう考えを抱く議員も多いようです。

安倍・トランプ続投で日米にとって朝鮮半島問題、中国への対処などかなりやりやすい状況になるのは間違いないと思います。

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2019年3月6日水曜日

米上院、対北朝鮮制裁強化で「ワームビア法」再発議―【私の論評】軍事オプションを選択する可能性もある米国の北制裁(゚д゚)!


決裂した第2回米朝会談

先月ベトナムのハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談が決裂してから米国議会で対北朝鮮制裁を強化する動きが表面化している。

ロイター通信は5日、北朝鮮と取引するすべての個人と企業にセカンダリーボイコットを義務付ける法案が米上院銀行委員会に再び上程されたと報道した。

報道によると、上院銀行委員会に所属する共和党のパット・トゥーミー上院議員と民主党のクリス・バン・ホーレン上院議員はこの日、「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」を共同発議した。北朝鮮に抑留されて送還後に死亡した米国人大学生のオットー・ワームビア氏を追慕するためワームビアという名前が付けられた。

ブリンクアクトとも呼ばれるこの法案は北朝鮮の挑発が続いた2017年に上院で初めて発議され、同年11月に銀行委員会を全会一致で通過したが、上院本会議に回付されることができず会期終了にともない昨年末に自動廃棄された。

バン・ホーレン議員は法案再上程と関連、「北朝鮮が核能力を増やそうとしているという指摘が出続けているが米国がだまっていてはならない。2回目の米朝首脳会談が決裂した状況で議会が線を明確に引く必要性はいつになく重要になった」と明らかにした。

法案は北朝鮮政権と取引するすべての海外金融機関と北朝鮮政権を助力するために制裁を回避する個人にセカンダリーボイコットを義務的に課すことを骨子とする。

具体的には、北朝鮮と金融取引など利害関係がある個人と企業の米国内の外国銀行口座を凍結させ、関連海外金融機関の米国内口座開設を制限する措置が法案に盛り込まれた。

また、北朝鮮と合弁会社を作ったり追加投資を通じた協力プロジェクトを拡大する行為も国連安全保障理事会の承認がなければ禁止するようにした。

ただし2017年に法案が初めて発議された時に含まれた「南北経済協力事業開城(ケソン)工業団地再開反対」の条項は除外された。

ホーレン議員は「北朝鮮の石炭、鉄、繊維取引と、海上運送そして人身売買を手助けするすべての個人と企業に強力な制裁を課すよう義務化することで既存の国際法を効果的に執行させることに焦点を合わせている」と説明した。

ワームビア氏の両親はこの日声明を通じ、「この法案に含まれた制裁は金正恩(キム・ジョンウン)とその政権の行動を変えさせる有用な新たな道具を米国に提供するだろう」としてブリンクアクトの再上程を歓迎した。

【私の論評】軍事オプションを選択する可能性もある米国の北制裁(゚д゚)!


「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」は、17カ月間北朝鮮に抑留されて死亡した米国大学生、オットー・ワームビア氏の名を取った対北制裁案が米下院で可決しされたものです。上の記事にもあるように、 2017年に上院で初めて発議され、同年11月に銀行委員会を全会一致で通過しましたが、上院本会議に回付されることができず会期終了にともない昨年末に自動廃棄されました。

バージニア州立大3年生だったワームビア氏は2016年1月、観光目的で北朝鮮を訪問して体制宣伝物を盗もうとした容疑で17カ月間抑留されたあげく、北朝鮮の拷問により、意識不明の状態で解放されて6日後に死亡しました。

北朝鮮・平壌で、涙ながらに記者会見する米大学生の
オットー・ワームビア氏。(2016年2月29日)

米議会レベルでの対北制裁法は2017年7月末、米上院が北朝鮮の石油輸入封鎖など全方向での制裁を入れた「北朝鮮・ロシア・イラン制裁パッケージ法」可決(8月2日発効)後、さらに推進されたものでした。

既存法は▼北朝鮮の原油・石油製品の輸入遮断▼北朝鮮労働者の雇用禁止▼北朝鮮の船舶と国連対北朝鮮制裁を拒否する国家船舶の運航禁止▼北朝鮮のオンライン商品の取り引きおよび賭博サイト遮断--など全方向での制裁措置が含まれていました。エド・ロイス下院外交委院長(共和党)が「対北朝鮮遮断および制裁現代化法」で発議しました。

「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」は、既存法の実効性を高めるために北朝鮮との貿易取り引きを助ける金融分野の制裁に焦点を当てたものです。北朝鮮関連企業と取り引きをする外国金融機関、貿易業者と仲介業者などを米国主導の国際金融システムから排除する「セカンダリーボイコット(二次的制裁)」です。

特に、すべての規制を行政府の義務事項に規定するなど制裁の度合いを最高レベルに引き上げました。この法案によると、海外に派遣されている北朝鮮勤労者を雇用した外国企業も金融制裁の対象になります。国連などによれば、現在約5万人の北朝鮮住民が外貨稼ぎのために海外に派遣されており、金正恩政権は彼らの給与のほとんどを没収して年間3億ドル(約340億円)の収益を得ています。

米政治専門メディア「Washington Examiner」はこの法案が結局、北朝鮮との貿易・金融取り引きが最も多い中国をターゲットにしたものと解釈していました。

ワームビア法は、米議会 北朝鮮と取引する人や団体に対して、セカンダリーボイコット(二次的制裁)を義務付ける法案ということです。 米国大統領が 「制裁出来る」 から 「制裁しなくてはいけない」にかわるという事です。大統領の 裁量権がなくなり、法律違反した個人や組織を制裁しなければならなくなるということです。違反した個人や組織と取引した銀行も処罰の対象であり、最悪破綻することもあり得るということです。

例えば韓国軍が瀬取りに関与していた場合、韓国軍や韓国という国家が制裁対象になるということです。それは、中国も同じことです。中国の制裁破りに政府が関与(ほとんどの場合直接、間接に関与)ていた場合、中国政府も制裁対象になるということです。

スティーブン・ビーガン対北朝鮮特別代表
米国では、「ワームビア法」など対北朝鮮制裁を強化する動きが表面化していますが、それに加えて軍事オプションを求める声も起きていました。

米国務省のスティーブン・ビーガン対北朝鮮特別代表は2018年11月20日、李ドフン韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長との単独会談を行い米韓ワーキンググループ実務陣との全体会議を進める中で、「米朝交渉の推進派も(米国)国内で政治的に追い込まれているうえに、民主党が下院多数党になり、このように時間が流れることを待っているわけにはいかない」との立場を明らかにし、「(米朝対話の)窓が閉められている」という発言をしました。

「窓が閉められている」との表現は過去に緊迫した状況で使われたことがあります。ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年1月28日、米国のジョン・ネグロポンテ国連大使が「外交的解決のために開いていた窓が閉められている」と話したましたが、それから約2カ月後(3月20日)に米国はイラクに侵攻しました。

もちろんトランプ政権が北朝鮮の不誠実な態度に反発して直ちに北朝鮮に対する軍事行動を準備する可能性は低いと思われますが、「機会の窓」発言はトランプ政権内部で強硬圧迫論が頭をもたげていることを示唆するもので注目が必要です。

北朝鮮が対話による「核兵器の完全な廃棄」に応じない場合、制裁強化とともに軍事オプションの復活も否定できないです。しかしそうした行動には文在寅政権が必死に妨害することは明らかです。そのために米国はいま、韓国軍を動員しない方法でのミサイル基地破壊と「金正恩除去(レジームチェンジ)」訓練を強化し始めています。

ミサイル基地破壊訓練としては、11月19日に米国ユタ州ヒル空軍基地で史上初のF35A 60機によるミサイル基地破壊訓練「エレファントウォーク」が実施されました。この訓練は、中国やロシアを想定したものだとしていますが、実は北朝鮮のミサイル基地、特には移動式ミサイル発射台を壊滅する訓練でした。

014年就航の強襲揚陸艦「アメリカ」

金正恩除去作戦も同時に準備されています。在日米軍基地を活用した韓国軍を使わない「斬首作戦体制」の構築です。そのために上陸用強襲揚陸艦「ワプス」(1989年就航、41500トン)を2014年就航の強襲揚陸艦「アメリカ」(44900トン)に交代させます。

「アメリカ艦」は海上上陸作戦用の「ワプス艦」とは違い、特殊部隊含む海兵隊と輸送機オスプレイ、スーパーコブラ戦闘ヘリ、重量輸送ヘリのシー・スタリオン(CH-53)、対潜水艦ヘリ、偵察ヘリ、そしてF35Bステルス戦闘機など、空からの潜入に特化した最新鋭武器を搭載しています。

金正恩にオールインした「仲裁者文在寅大統領」の「北朝鮮非核化交渉」での影響力は低下するでしょう。数々の「ウソ連発」で国内的にはすでにレイムダック化していますが、米国に対しても「朝鮮半島の非核化」は「北朝鮮の非核化」だと伝え、「金正恩が1年以内に非核化すると約束した」などと吹聴したため、韓国パッシングで米朝交渉から排除される可能性もあります。

韓国の民間シンクタンク、峨山政策研究院は12月19日に「2019年国際情勢展望」と題したリポートで「韓国が来年も北朝鮮問題ばかりに集中すれば、北東アジアのパワーバランスが変化する過程で『コリア・パッシング(韓国外し)』が現実化する恐れがある」と指摘しました。

2019年、韓国は「北朝鮮非核化」をめぐって米国と北朝鮮のどちらの側につくのかの選択を迫られることとなるでしょう。

米国の制裁はますます厳しくなりそうです。このままだと北朝鮮はとんでもないことになります。金正恩委員長が核兵器の申告に踏み出すか否か、トランプ大統領が、これまでの核兵器全面破棄の原則を守れるかどうか、2019年朝鮮半島の行方はこの二人の指導者の決断にゆだねられています。


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2018年12月29日土曜日

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 ―【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 


文在寅大統領

 韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に、攻撃寸前の火器管制用レーダーを照射した問題は、米トランプ政権が水面下で進める「米韓同盟消滅」の決定打となるのか。北朝鮮への制裁緩和を訴える文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、日米共同の金融制裁という報復措置がありうると専門家は指摘。米政府関係者は「われわれが離れるとき、韓国は焦土化する」と不気味な予告をしている。

 レーダー照射について「韓国では、日本とのもめ事を起こす文政権に対する批判がある一方、『日本の哨戒機を撃墜すべきだった』と、日本との対決を求める声もある」。長年の韓国ウォッチャーとして知られ、『米韓同盟消滅』(新潮新書)などの著書がある元日本経済新聞編集委員の鈴置高史(すずおき・たかぶみ)氏はこう解説する。

 「もともと韓国軍が『親日』だったことはない。『日本撃滅』のスローガンがかかっている海軍基地もあると聞く。北朝鮮との緊張が緩和する中、韓国海軍が日本海に目を向けるのは当然だろう」というのだ。

 ハリス駐韓米大使は11月、韓国誌『月刊朝鮮』で「米韓同盟は確固として維持されているが、当然視してはいけない」と異例の警告を発した。レーダー照射問題は、米政権側に募った韓国に対する不信感を一段と際立たせることになる。

 文大統領は、9月に米国、10月中旬に欧州を歴訪し、一貫して対北制裁の緩和を呼びかけるなど、「親北」姿勢を強めてきた。これを受けて米政府関係者のヒアリングを受けた鈴置氏は「米政府関係者は『なぜ韓国はわれわれをいらつかせるのか』と聞いてきた」と振り返る。

 「特に米国を怒らせたのは、欧州に制裁緩和を持ちかけ、米国を孤立させようとしたことだ。当然、欧州各国も応じるわけはなく、『韓国は何を考えているのか』と驚いた。世界中の専門家が韓国をけげんな目で見るようになっている」

 鈴置氏以外の日本人の専門家と情報交換した米政府関係者から、「われわれが韓国を離れるときは、このままでは離れない。焦土化する」といった発言があったという。

 「経済面でボロボロにするということだろう。韓国が北朝鮮の別動隊だということを世界中の人が見抜いており、韓国も北に連座する形で制裁対象になってもおかしくないという見方が強まっている」という鈴置氏。文大統領は南北統一という野心を隠しておらず、「南北共同の核保有は、米国以上に日本に脅威となる。日米共同の制裁もあり得る」というのだ。

 ここにきてレーダー照射問題が浮上。日本が韓国に「制裁」に出るとの見方もある。その場合、「韓国に報復するならまずは経済、なかでも金融に即効性がある。米国も韓国への『お仕置き』のタイミングを見計らっている」(鈴置氏)。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めることで、韓国から資本が流出する懸念が一段と強まっている。景気や雇用が低迷するなかで、韓国銀行(中央銀行)は11月末、政策金利を引き上げたが、米国も今月、追加利上げした。米国に追随して利上げを進めると、韓国が抱える家計負債などの問題が再燃する恐れもある。

 韓国に対する金融制裁について鈴置氏は、「米国系の銀行が韓国から資金を引き揚げるという情報をマーケットに流す、日本が半導体製造装置を売らない、日米の銀行が一緒に、韓国がドル調達をできないようにするなど手口はいくらでもある。韓国国債の格付けが下がるようなことがあれば、市場は資本逃避(キャピタルフライト)に直面するとみるだろう」と話す。

 「ロックオン」されているのは韓国の方かもしれない。

【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

防衛省は28日、火器管制レーダーの照射問題で映像を公開しました。韓国側が照射をかたくなに否定しているためです。日本の主張の正当性を訴えるとともに、真相の解明を迫る狙いがあります。以下がその映像です。



「海上自衛隊が適切な行動をとったことを国民に理解してほしい」

岩屋防衛相は28日の記者会見でこう述べ、映像公開の意義を強調しました。

火器管制レーダーの照射は20日、日本海の能登半島沖で発生。防衛省は21日に公表しましたが、韓国国防省は記者会見で火器管制レーダーの照射を否定しました。27日に日韓の防衛当局間で行ったテレビ会議でも、韓国側は事実だと認めませんでした。

約13分間の映像は冒頭、韓国海軍の駆逐艦や海洋警察の警備救難艦、北朝鮮漁船とみられる遭難船などに、海上自衛隊のP1哨戒機が近づく様子から始まっています。映像開始から6分すぎ、駆逐艦から約5キロ離れた地点で、哨戒機が火器管制レーダーの電波を初めて探知しました。

哨戒機の乗員の一人は「避けた方が良いですね」と緊迫した様子で声を上げ、機長が駆逐艦の大砲の向きを確認するように指示した。哨戒機が回避行動をとった後、探知音を聞いていた乗員が「めちゃくちゃすごい音だ」と強い電波に驚く場面も記録されています。

その後、乗員は韓国駆逐艦に対し、三つの周波数で「行動の目的は何ですか」などと英語で問い合わせましたが、韓国側からの応答はありませんでした。

現場は好漁場の「大和やまと堆たい」の周辺で、大量の北朝鮮漁船によるイカの密漁が問題となっています。日本政府関係者は「韓国軍は北朝鮮漁船の救助に普段から関わっている可能性があり、日本に知られたくなかったのではないか」と分析しています。

しかし仮にそうだったとしても、ではなぜこのような常識はずれの事案が起きたのでしょうか。事案発生当時、問題の韓国艦は日本海中央部の大和堆に近い日韓中間水域(11月15日に起きた日韓漁船衝突事故の現場付近)にいたとされます。韓国艦は当該海域で、北朝鮮の木造漁船(しばしば工作船としても使われる)の監視と、通常の訓練を行っていたと思われます。韓国側が主張する「北朝鮮漁船の救難活動」も、あったとすればその中で行われたのでしょう。



一方、海上自衛隊のP‐1は能登半島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の上空にいたとされています。当該機は厚木の第4航空群の所属で、こちらも厚木航空基地から日本海側へ進出し、そこから日本の領海線に沿って回る通常の哨戒活動をしていたと思われます。

具体的には目視(光学式観測)と対水上レーダーによる、海上哨戒活動です。P‐1の水上レーダーは非常に高性能で、海上に浮かぶ多数の船舶の大きさや形、動きなどをすべて把握できます。

軍事秘密なので公表はされていませんが、一説には、水面から数センチほど顔をのぞかせた潜水艦の潜望鏡さえも探知できるらしいです。そうした性能を使って、北朝鮮船による沖合での安保理決議違反である瀬取り行為の監視も行っていたでしょう。

韓国艦も自衛隊機も、お互いに通常の任務中であったといえます。その中でなぜ、あのような事案が発生したのでしょうか。

おそらくは韓国艦が何らかの監視活動、あるいは救難活動を行っているときに、P‐1哨戒機の航路に過剰に反応したのではないでしょうか。軍艦は常に、周辺の航空機の動きを対空レーダーで監視しており、軍用の敵味方識別装置(IFF)や民間用のトランスポンダを用いて、レーダーでとらえた航空機がどこに所属するのか、友軍か否かも把握できます。ここまでは、どんな艦でも行う問題のない行為です。

ところが、火器管制レーダーの照射は違います。ビームが目標に照射された時点で、いわゆる「ロックオン」という、艦の射撃指揮システムが目標を正確に把握した状態が成立します。照射された航空機では、システムが画面表示と警告音によって、ロックオンされた事実を乗組員に伝えます。

2013年に中国海軍のフリゲート艦が海自の護衛艦に火器管制レーダーを照射したときもかなりの騒ぎになりましたが、このときは敵からのものであり、あり得ることであると多くの国民が考えたかもしれません。

しかし、今回は「友軍」から照射されたということで、現場では意味不明としか言いようがない状況だったと思います。そういう状況のもとでも、防衛省が公開した動画ではP‐1の乗組員は終始冷静で、レーダー波の周波数確認を含む必要な任務を高い確度で遂行していたのが印象的できした。

もっとも、実際にミサイルを発射できるシークウェンス(手順)にまで入っていた可能性は低いです。艦のシステムがIFF(敵味方識別装置)で友軍機と認識した航空機を、ミサイル攻撃の目標に設定することは基本的にできない仕組みになっているからです。

しきかしそもそも、友軍機に火器管制レーダーを照射する段階で、途中のシステムの警告(味方だが大丈夫か、といった確認を求められる)を手動でオーバーライド(上書き)する必要があり、そこに何らかの「人為」が働いたことは間違いないです。その人為を、一体誰が行ったのでしょうか。




火器管制レーダーを操作するのは、艦のCIC(戦闘指揮所)の射撃管制員ですが、通常は艦長あるいは副長の命令がなければ照射は行われないです。少なくとも、自衛隊で言えば砲雷長や砲術長など火器管制に関わる幹部の指示が必要です。

さらに火器管制レーダーを使用しているという事実は、CICの全員に伝わります。末端の人間がこっそりやれるような行為ではないですし、誤って照射した場合はすぐに制止が入るはずです。もしそのような事象であれば、「レーダー員のミスだった」と韓国側が公表して謝罪すれば済む話であったはずです。

おそらくは、もっと上の階級の人間が関わっているために、そうした簡単な処理ができなかったということでしょう。交戦規則などの武器使用に関する規定をここまで無視できるのは、やはり艦長か副長クラスなのではないかと思われます。

「のぞきやがってけしからん、ひと泡吹かせてやれ」と、そのクラスの人間が命令したというのが、一番ふに落ちるシナリオです。

国際的な慣習において、公海上の軍艦は旗国(帰属する国家:今回の事例では韓国)以外のいずれの国の管轄権も及びません。一つの独立国と同等の扱いを受けます。その艦長の権限と責任は、いわば一国の主に等しいのです。もし艦長あるいは副長クラスの上級幹部が今回のような暴走を行ったのだとすれば、韓国軍には指揮統制上の重大な問題があるということの証明になってしまいます。

実際、韓国側のこれまでの対応を見る限り、韓国国防部も大統領府も、何が起きているのかを把握する能力がないように見える。文民統制や軍の指揮統制という面から見れば、末期的症状をきたしているといって良いでしょう。

韓国海軍士官学校の若者たち 2009年12月13日


クァンゲト・デワン」級のような旧型艦は一般に、若手艦長の最初の任官先になることが多いです。そして今の韓国の若手の職業軍人は、反日教育の「毒」が回った世代です。

今回の事案の背景には、文在寅政権のもと韓国国内でますます高まっている「日本には何をしてもいい」という韓国国内の空気感の影響もあるでしょう。そして西太平洋の安全保障体制の中で日本と韓国のつなぎ役を果たしてきた米国は、韓国との同盟関係を加速度的に細らせつつあります。韓国が軍事政権から民政に移行して以来、長年にわたってありとあらゆる工作活動を韓国で展開してきた北朝鮮にとって、これら日韓/米韓の離間はまさに望み通りの結果のはずです。

そして当の韓国軍は、本来なら優先順位がはるかに高いと思われる北朝鮮軍の南侵やミサイル攻撃に備える装備より、強襲揚陸艦やイージス艦、弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射可能なミサイル潜水艦、射程500キロ以上の新型弾道ミサイルといった、日本への対抗を主眼とするかのような装備の充実に力を入れています。日本にしてみれば、朝鮮半島への軍事侵攻などもはやありえない選択肢なのですが、韓国国民の認識は異なり、それが軍内部にも反映しているのでしょう。

韓国海軍は、12月13日に島根県の竹島の周辺海域で、島の防衛を想定した定例の合同訓練を14日までの日程で行っていました。島の防衛というからには仮想敵国は日本です。その延長線上に今回の「ロックオン」があるのでしょう。

韓国の女子中学校の生徒名で、日本の竹島教育を批判するハガキ41通が島根県内の中学校に届きましたが、まるでカルト教団のように反日教育を洗脳される生徒たちが哀れです。反日教育を受けて入隊すれば、自衛隊機に向け「ロックオン」くらい、彼らの愛国精神からやるのは当然なのかもしれません。

日米韓の協調関係が終わり、核武装した南北統一軍が成立する可能性への備えを、わが国はそろそろ真剣に考え始めるべきなのかもしれないです。

それ以前に、今回の事件に関して韓国側がいつまでも、謝罪や遺憾の意を評さないというのであれば、この記事の冒頭の記事にもあるように日米で韓国に対して金融制裁を発動して、それこそ韓国を金融面で焦土化するということも視野にいれるべきです。

南北統一が成立したときには、韓国は経済的には何の価値もない状況にしておくべきです。韓国など経済的に手助けして、経済を良くした状態で、南北が統一されてしまえば、意味もなく敵に塩を送ることになります。

金正恩や習近平を喜ばせる必要はありません。

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2018年11月18日日曜日

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も―【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も


高橋洋一 日本の解き方



国会 衆議院会場

来年の通常国会を1月4日召集とする説が浮上している。消費増税をめぐる判断や憲法改正のスケジュール、参院選と衆院選との同日選の可能性など、来年想定される政治日程を考えてみよう。

 政治の世界は一寸先は闇といわれる。そのとおりなのだが、その中でも予測をするためには、スケジュールがどうなるかを検討するのはイロハのイだ。そこでまず押さえておくのは事前に確定している政治・外交日程と経済指標の発表日である。

 確定している政治日程として、来年1月中に通常国会召集、3月中に来年度予算案成立(見込み)、4月上旬から中旬に統一地方選、5月1日改元、6月中に通常国会会期末、7月中に参院選、7月28日参院の任期満了となっている。

 外交日程は、今年11月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議、来年6月末の大阪でのG20首脳会議がある。

 経済指標発表では、来年2月中旬に2018年10~12月期国内総生産(GDP)速報値、来年5月中旬に1~3月期GDP速報値が予定されている。

 来年の最大の政治イベントは7月の参院選だ。この結果いかんでは憲法改正のスケジュールなどは全く無意味になってしまう。そこで、参院選の争点となりうる経済、消費増税の是非に関心がいく。消費増税については、法律上、来年10月から実施が予定されているが、まだ安倍晋三首相が最終決断したわけでない。本コラムでも書いてきたが、今のところ可能性は高くないものの、来年4月に君子豹変(ひょうへん)する可能性なしとはいえない。

 焦点は参院選の投開票日だ。確定しているのは7月28日の任期満了である。公職選挙法では、「議員の任期が終わる日の前30日以内」(32条1項)と、この30日間が国会閉会から23日以内にかかる場合は閉会から「24日以後30日以内」(同2項)だ。

 結論を言おう。国会は150日間開催なので、できるだけ早く通常国会を召集したほうが、延長をしなければ会期末が早くなり、結果として参院選の開催オプションが広がるのだ。国会召集は法律上、1月中なら可能なので、一番早い1月4日にすると参院選は6月28日から7月27日の間、日曜なら6月30日、7月7日、14日、21日で可能になる。

 いずれにしても、国会召集日がいつになるかによって参院選の日程が絞られる。

 国会開催中に首相が衆議院を解散すれば、40日以内で総選挙になるので、衆参ダブル選挙も可能になる。来年の通常国会で予算案以外の法案を出さずに1月に早期召集すれば、参院選日程のオプションが広がる。その場合、7月のどこかで衆参ダブル選もありえる。

 ダブル選挙は、野党の共闘が困難になるので、与党有利といわれている。年内は政府・与党内で来年度予算が作られるが、来年早々から与野党間で国会スケジュールをめぐるつばぜり合いがあるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

増税は、まともに考えれば、安倍政権にとっては命取りになることははっきりしています。なぜなら、10%増税を予定通りに来年の10月に実行してしまえば、その後安倍政権の支持率は確実に落ちます。そうなると、国会では改憲派が過半数以上という状況を維持するのは困難になります。

安倍総理

そうなると、残りの任期中には、憲法改正どころか、レームダックになってしまうことになります。安倍総理は念願の憲法改正には、手も足もでなくなってしまいます。

私は、安倍総理がこのような道を選ぶとは思えないのです。安倍総理は、国会て改憲派が半数以上という状況を維持しつつ、何とか憲法改正に道筋をつけたいと考えているはずです。であれば、増税を回避あるいは、延期するのが、もっとも安全策であると考えるはずです。

それに、安倍総理自身は、10%への消費税増税は全く無意味であることをご存知であると考えます。

消費税を増税しても無意味であることは、このブログでも過去に何度も掲載してきました。これについては、過去のブログの記事を参照していただきたいと思います。それはそれとして、経済的な知識などなくても、常識で考えれば増税しても無意味なことは小学生でも簡単に理解できることです。本日はそのことを以下に掲載します。

まずは、以下に1989年と2016年の税収内訳を掲載します。1989年というと、3%の消費税が導入された年です。


2016年は、消費税が8%です。1989年と、2016年を比較すると、消費税の税収はあがっていますが、所得税と法人税は下がり、総税収は54.9兆円と55.5兆円でほぼ同水準です。

消費税の無かった1988年の税収も54兆9000億ですから 消費税を何%上げても総税収は変わらないといえるのではないかと思います。結局総税収上げるなら経済成長するしか無いようです。

以下に、過去の"消費税の「導入」と「増税」の歴史"をチャートにまとめたものをあげておきます。


以下には、消費税を導入してから直近までの税収の推移のグラフを掲載します。


消費税をはじめて導入した1989年には、税収は確かに伸びていますが、消費税を上げる直前の2013に至るまで、1988年の税収を一度も上回っていません。それでも、消費税を8%にした後の、17年、18年には、1988年の税収を若干上回っているようですが、それもごく僅かです。

さらに、先にあげたように、2016年の1989年と総税収はほぼ同等なのですが、所得税、法人税は減って、消費税が増えています。

これは、常識的に考えると、消費税をあげると景気が落ち込み、所得税と、法人税が減少し、税収はあまりかわっていないことを示しています。

これをみただけでも、消費税増税はほとんど意味がないことがわかります。

景気の回復指標としては、値動きが激しい生鮮品とエネルギー価格を抜いた、コアコアCPIの前年同月比が参考になりますが、直近の数字は+0.4%の微弱な上昇を示しています。日銀のインフレターゲットは2%ですので、全く達成できていません。

このようなときに増税すれば、微弱や0.4%の物価上昇など、消費が低迷して、すぐにマイナスになることでしょう。せっかくデフレの重力から抜けかかっている日本経済が、再びデフレ状態に舞い戻ることになります。

せっかく日銀が、マイナス金利政策を導入し、市場から国債を買って金融緩和をしているにもかかわず、これでは景気の回復を政府(財務省)が邪魔をすることになります。

しかも、何らかの規制をするにしても、外国人労働者を受け入れ、さらに増税をするということになれば、日本人はもとより外国人も失業というダブルパンチを見舞うようなものです。

この試みは、結局日本人は無論のこと、まさか一端受け入れた外国人を生活できないなら母国に帰れなどとはいえないでしょうから、外国人の生活保障という形で跳ね返ってくることになります。財務省は、財政と社会保障の一体改革などという看板をあげているにもかかわらず、消費税をあげて生活保障のコストをあげるという全く相矛盾したことになります。

財務省は、消費が下がらない前提で、消費税1%の増税で、税収2.4兆円の増収などというとんでもない計算をしていますが、本当に増税して個人消費がさがならないなどと言い切れるのでしょうか。14年に増税したときは、個人消費が落ち込み、その悪影響はかなり長期わたって続きました。

税収を上げる方法は、税収の式を見ればすぐに理解できます。

税収=名目GDP✕税収弾性値✕税率
税収弾性値=税収の伸び率÷名目成長率

1995年から2013年までの財務省公式税収弾性地平均は4.4です。この式からも、税収をあげるには、税率を1%あげるよりも、名目GDPを1%あげるほうが、4.4%税収が増えることがわかり、はるかに増えることが理解できます。

税収を増やすには、マイルドなインフレによる経済成長にともなう税収アップ以外にはありえません。

どうしても、消費税を10%にあげたいというのなら、会計上は10%ということにして予算を組み、消費税減税法を作れば良いです。そもそも、消費税をあげて皮算用の税収を稼げない場合は、国債を発行することになるわけですから、減税して国債発行するのも同じことです。

インフレターゲット2%を達成するには、現在の8%では達成できないのは、もうわかっているのですから、現在消費税5%、できれば0%にまで減税すべきです。

インフレ率が2%超えてきたら、減税分を減らして8%にして、それでも歯止めが止まらなければ10%にするなどの調整が必要です。

それでも、まだインフレが亢進するというなり、マイナス金利をやめれば良いのです。

それでも、まだ亢進するというなら、今度は日銀が溜め込んだ国債を今度は市中銀行に売り出し、日銀が現金を吸い上げればよいだけの話です。国債の金利もかなり下がっているにもかかわらず、現状はかなり国債は品薄ですし、日銀が国債を売り出せば、入れ食い状態になるのはわかりきっています。

ようするに、ハイパーインフレの心配など全くないということです。

安倍総理には、無意味な消費税増税は、先送りもしくは廃止していただき、そのためには、「消費税先送り」を公約として、来年は衆参同時選挙を行い、大勝利して、経済を立て直し、国民の支持率をさらにあげて、改憲勢力をさら多くして、改憲に成功していただきたいものです。

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2018年10月1日月曜日

米中貿易戦争が「流血戦争」になる可能性 歯止めは沖縄、台湾 国際投資アナリスト・大原浩氏―【私の論評】トランプは、中国の覇権阻止とナショナリズムへの回帰へと国家戦略を大転換しつつある(゚д゚)!

米中貿易戦争が「流血戦争」になる可能性 歯止めは沖縄、台湾 国際投資アナリスト・大原浩氏

習氏率いる中国に攻勢を強めるトランプ氏 
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 米トランプ政権が仕掛けた対中貿易戦争は、長期戦の様相を呈しているが、これが「血を流す戦争」にエスカレートしかねないと警鐘を鳴らすのが、中国事情に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏だ。緊急寄稿で大原氏は、9月30日に県知事選が投開票された沖縄、そして台湾が米国にとって極めて重要な「防衛線」だと指摘する。

 米中の貿易戦争が無血戦争(冷戦)の一部であることは、これまでにも述べてきたが、冷戦が本物の「流血戦争」になる可能性はないのだろうか。結論から言えば少なからずある。ただし、それは習近平国家主席が米国に逆らい続けたときに限る。

国際投資アナリストの大原浩氏

 1962年のキューバ危機は、旧ソ連が米国の目と鼻の先のキューバにミサイル基地を建設したことがきっかけとなり、核戦争の一歩手前までいった事件である。

 実のところ、当時のソ連の指導者、フルシチョフは米国を甘く見ていたフシがあり、ケネディ大統領の「核戦争も辞さない」との強硬な態度に青ざめて、表面上強気を装いつつも、核ミサイルの撤去という譲歩(降伏)をしたのである。

 今回、キューバに相当するのが台湾だ。第二次大戦末期、蒋介石率いる中華民国(台湾)は連合軍の一員だった。米国とともに血を流して戦ったのは中華民国であり、少なくとも米国の共和党にとっての中国とは、民主主義・資本主義を守る台湾を意味する。

 1971年のキッシンジャー氏の電撃的中国訪問から始まった米中国交回復が、78年12月の第2次米中共同声明までかかったのには、米国内に根強い反共ムードや大量虐殺を行った毛沢東の存在など数多くの要因があるが、台湾問題が一番大きい。

 58年8月から中国人民解放軍が中華民国福建省金門島に侵攻すべく砲撃を行ったのが金門砲戦で、実質的な戦闘は2カ月以内に終わった。しかし、米中国交回復時の79年1月1日まで、なんと21年間にもわたって砲撃が続けられた。



 つまり、米中国交回復は「台湾問題棚上げ」によって実現されたのである。だから、この棚上げ問題にうかつに触れれば米中国交回復はご破算になる。トウ小平はそれをよくわかっていて「能あるタカは爪を隠す」路線を続けたのだが、現在の習主席は、航空会社に「台湾」表記を改めさせようとするなどの圧力を加えた上に、米国が嫌悪する独裁者の毛沢東を目指すなどと発言して虎の尾を踏んだといえる。

 民主主義国家がなかなか戦争に踏み切れないのは事実ではあるが、「民主主義防衛」の大義のためであれば、米国民は血を流す覚悟がある。

 沖縄の米軍基地問題も台湾問題とリンクする。沖縄の与那国島と台湾との間は直線距離で100キロ強しかなく、戦前は小舟で住民が行き来していたそうだ。

 垂直離着陸輸送機オスプレイは時速約500キロで飛行するから、台湾まではおおむね20分ということになる。共産主義中国政府、左翼系マスコミらが「反基地」「反オスプレイ」の大合唱を歓迎するのも当然だ。

 沖縄の米軍基地が極めて重要なのは、台湾に米軍基地を置けないという事情がある。米軍そして米国政府は当然、中国の台湾侵略の野心を承知しており、彼らが騒げば騒ぐほど、台湾防衛のために沖縄の基地を強化し、同時に中国に無血制裁を加え続けるのである。

【私の論評】トランプは、中国の覇権阻止とナショナリズムへの回帰へと国家戦略を大転換しつつある(゚д゚)!

米国と中国が、軍事的衝突を発生する潜在的な可能性に対する政治学的議論は従来からなされてきています。過去60年にわたり、米国の多くの人びとが米国と中国が衝突する可能性が大いにあると指摘し、米中間の軍事的衝突の可能性(いわゆる米中戦争)に対する議論がなされてきました。

米中間の軍事的衝突の舞台としては、過去には朝鮮半島ないしベトナム、現在では台湾海峡が想定されています。それぞれ詳細な考察が行われており、1960年代のベトナム戦争、冷戦の終結に続き、中国は軍事的優位性及び経済的存在感を増し続けている事を背景にして中国脅威論のひとつとして、米中冷戦が、なんらかのきっかけで軍事的衝突に繋がるかに対する危惧があるという潜在的可能性が指摘されています。

現在では主にネオコンといった政治的傾向を持つ識者が主張する場合が多いです。

ベトナム戦争の間、毛沢東をはじめとする中国の指導者は、米国のベトナムにおける戦略を大規模な核戦争の序章であると考えていました。1960年代を通して、中国人民解放軍海軍と空軍は中国の領空を侵犯した米軍機と衝突しました。

米軍の爆撃機が北ベトナムの6つの海軍基地を攻撃した後、1964年8月5日、周恩来と羅瑞卿は北ベトナムのホー・チ・ミン大統領、ファム・ヴァン・ドン首相、軍の幹部であるヴァン・ティエン・ズンと会談し、両国は米国の脅威に対抗するため軍事的な協力を行うことを約束しました。

その晩、人民解放軍海軍、空軍及び北京軍区の首脳が集まり、緊急ミーティングを開きました。彼らは北ベトナムでの爆撃が直ちに米国との戦争を意味するわけではないが、米軍の軍事的脅威が増加し広州や昆明の軍隊が警戒状態に入る必要があるという結論に達しました。

日本では、1965年には朝日新聞による世論調査が行われ、その年の8月24日に発売された朝日新聞は、日本人の半分以上である57%がベトナム戦争が米中戦争へエスカレートすることを恐れているという記事を掲載しました。

しかし、実際には中国と米国のリチャード・ニクソンはソビエト連邦に対する利害で一致したため、1972年にニクソン大統領の中国訪問が行われ、米中国交樹立が図られました。

最近では、多くの人は米中間が台湾独立をしたときに衝突し、日本はその戦争に巻き込まれるだろうと予想しています。

この戦争で核兵器が使われる可能性があるため、米国はEUが中国に対して武器を輸出することに反対しています。 スタンフォード大学のキム・チャンヨン教授は、そのようなシナリオにおいて中国が勝利を収める可能性は15%であり、米国が勝利を収める可能性は23%、相互確証破壊の可能性は62%であると推測しています。

近年では、将来危惧される第三次世界大戦の可能性のひとつとして「米中戦争」が論じられることがあります。

これはジョージ・W・ブッシュ政権で要職にあったネオコンのコンドリーザ・ライスやリチャード・アーミテージが論文で中華人民共和国が将来的には脅威になるとした中国脅威論を記したほか、それに影響された日本の保守論壇の一部が同様の可能性を主張しています。

これらによれば台湾に対し中国が軍事的制圧を実行する台湾侵攻作戦が米中間の軍事的衝突の引金になるというものです。

この手の議論では、最近ではやはりピーター・ナバロを忘れるべきではないです。そのナバロの書いた『米中もし戦わば』で彼は、米中戦争が起きる可能性は70パーセントとしています。

『米中もし戦わば』の表紙

本書を読めばなぜトランプ大統領は就任以来、中国叩きをしているのかその根本にある「ナバロ思想」が理解できます。400ページ近い分厚い本ですが、特にP332~339に書かれている「経済による平和」部分にその思想が詰まっています。
[経済力による平和の要約]
中国は、通貨操作や違法な輸出補助金、知的財産権侵害などの不公正な貿易方法で経済力と軍事力の強化をしている。特に中国がWTOに加盟して米国市場に参入してきてからは、米国は製造業が衰退し軍事力を維持することは困難になってきている。(実際、米貿易赤字の約半分は中国である。) 
つまり、現状のように中国製品への依存度が高い状態だと、米国は中国製品を買うたびに中国の軍事力増強に手を貸していることになる。よって中国の経済と軍拡を弱体化させる方策は、中国からの貿易関係を縮小すべきだ。米国が国際舞台でリーダーシップを維持するために最も重要なのは米国経済を健全化することで、そのために貿易赤字を削減しなければ中国に対抗できない。
このナバロ思想が的を射ているのか否かは別として、重要なのはこのナバロ思想を根幹にしてトランプ政権が通商政策を進めており、最近では対中国貿易戦争を開始したことです。

よくトランプ大統領のtwitter上での発言は思い付きで呟いているだけだという意見を目にすることがありますが、本書を読むとこうしたナバロ思想に基づいた一貫した発言であることが伺えます。

「アメリカ第一主義」を全面に出すトランプ政権とは逆に、自由貿易を提唱し始めているのが習近平国家主席です。これは極めて意外でした。習近平国家主席は2017年1月17日、スイスのダボス会議で基調講演をして、経済のグローバル化を指示し、保護主義を批判しているのです。

ダボスで基調講演した習近平

ただし、知的財産権を守ろうなどという気のない中国の習近平がこのような批判を行うこと自体が噴飯ものです。

そもそも、貿易に目を向けると、中国に拠点を置く外国企業は様々な規制にさらされ、市場へのアクセスも不足しているうえ、中国企業との合弁や技術共有なども義務づけられています。またEUとアメリカはこれまで何度、中国をダンピングでWTO(世界貿易機関)提訴したかわからないです。中国は、輸出大国であると同時に保護主義大国です。。

ダボス会議には中国は通常、首相が出席するのが慣例らしいのですが今回は国家主席が初めて出席しました。ダボス会議は資本主義の牙城と呼ばれているので、共産主義のトップが出席するのは驚きです。

その意図するところは、「米国に代わって世界の覇権国に君臨する」ことに他ならないです。習近平国家主席はダボス会議で「中国は外国人投資家の中国市場へのアクセスを拡大し、高度で実験的な自由貿易圏を作る」と述べ、「中国市場をより透明化して、安定した経済活動を行えるようにする」とできもしない約束をしました。

トランプ大統領がTPP撤退を決めたことを習近平はチャンスと思ったのかもしれません。中国が中国という国の構造上の問題から入りたくても入れないTPPにより、日米を含めた環太平洋諸国が繁栄することは、習近平にとって脅威だったに違いありません。

習近平が言及している自由貿易や経済のグローバル化とは「一帯一路」というユーラシア大陸やアジア諸国をひとつの経済圏とする思想を指すのだったと考えられます。しかし、そのようなまやかしだったことが今年なってから明らかになっています。

中国は世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、世界のどこの国にも輸出できるようになりました。WTOには自由貿易のルールがあります。そのうちの一つは、「輸出補助金の禁止」。国家が企業の輸出促進のために補助金を出したら、企業のコストは下がり、輸出先での価格も下がるります。公平な自由市場を歪めるため、こうした行為は禁じられています。

ところが、中国は大量の輸出補助金を出し、実質的な国有企業として市場介入しています。

また、外国企業が中国に進出してきたら技術を公開させ、それを盗み、堂々と自国のものにします。国際ルールを破って、やりたい放題なのです。

そんな中国に対して、WTOも国連も過去のアメリカ大統領たちも無策でした。そこに待ったをかけたのがトランプ政権です。

世界を驚かせたのが、トランプ大統領が金正恩委員長に会った直後に、中国に対して、2000億ドルの制裁関税を言い出したことです。今起きていることは、単なる貿易紛争ではなく、米中の熾烈な覇権争いなのです。覇権争いという文脈でみれば、トランプ大統領や習近平の行動が良く理解できます。

それにしても、なぜアメリカは中国にこれほどの貿易赤字を許してきたのでしょうか。

1990年代の米国は、「製造業が海外に移転しても一向に困らない。これからのアメリカは"ものづくり"ではなく、金融とハイテクの大国になる」という風潮でした。

その結果、製造業の工場は国内からなくなり、労働者は職を失いました。そこにトランプ大統領が現れ、「工場をアメリカに戻す」と公約し、それを果たすために、減税と今回の関税政策を行いました。

関税のない「自由貿易」は、グローバリズムという資本主義の発展形に見えました。しかし、現実は、庶民と労働者を貧しくし、代わりに、中国に莫大な貿易黒字を許したのです。

トランプ大統領は、この反省に基づき、反グローバリズムへ、そして、中国の覇権阻止、自由貿易は尊重しながらも、ナショナリズムの回帰へと、国家戦略を大転換しているのです。これは、トランプ政権が終わった後にも、大部分が継承されるでしょう。

この大転換の中で、中国との軍事衝突はなるべく避けるという姿勢ではありながら、必要があれば、軍事的衝突も辞さないでしょう。そのためにこそ、海軍を大増強を目指し、先日はこのブログでもお知らせしたように、空軍力の大増強も目指しているのです。

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2018年6月26日火曜日

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に―【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に




1 史上初の米朝会談

 6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談は、敵視する国同士のトップが直接会談するという歴史上稀なものであった。

6月12日に開催された中朝首脳会談 写真・図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 日本や米国をはじめ大半の評価は、中国・北朝鮮が勝って高笑いする一方、ドナルド・トランプ大統領は詰めを欠いた政治ショーを演じ、曖昧な決着で終わってしまい、将来に禍根を残したというものであろう。

 筆者も4月号の雑誌「Voice(ボイス)」において、北朝鮮が核を放棄するはずはなく、直接会談でトランプ大統領はこれを見極め、いずれちゃぶ台返しをするだろうと予想した。

 しかしトランプ大統領が苦しい記者会見をやっている姿とスカスカの合意文書を見せられた。

 一方、金正恩が北朝鮮に到着するや否や、「段階的に見返りを受けながら朝鮮半島の核を廃絶していく」ことを共通認識とし「体制の安全の保障を得た」と言うに至って、トランプ大統領は完敗したと感じた。

 また、筆者は昨年6月に中国を訪問し安全保障に関する議論をしてきたが、その時中国側の要人は朝鮮半島問題については「米朝が直接話し合い、北朝鮮は核とミサイル発射を凍結し、米国は米韓合同演習を凍結する、ダブルフリーズが必要」と述べていた。

 まさにその通りになってしまったと感じ、中朝のクリンチ作戦で、トランプ大統領の退場を待つ策略が功を奏したと失望せざるを得なかった。

 米朝会談前に筆者は、昨年暮れに北朝鮮を米国が殲滅することは「金の斧」、次に会談を破談にし、北朝鮮を殲滅することが「銀の斧」、米国ペースで会談が進めば「銅の斧」、そして北朝鮮ペースで進めば「鉄くずの斧」であると指摘していた。

 この前提は、北朝鮮対処は「前哨戦」であり「本丸は中国」だということで、いかに早く対中国シフトができるかが評価要素であった。前述の評価からすれば、結果は最悪の「鉄くずの斧」になってしまったということだ。

 一方、もしこれらの評価が正しく、朝鮮半島が平和に向かっていると感じているなら、それは大きな間違いであろう。

 平和に向かっていると言うのは中国の見解だ。よりによって韓国はこの時期に、米韓合同軍事演習(以下、「米韓演習」)は中止しても竹島防衛訓練は実施し、また、慰安婦問題を蒸し返している。

韓国軍は18日から2日間竹島防衛訓練を実施

 文在寅大統領に代表されるように大多数が親北・左翼になってしまった韓国は、いずれ反日、反米、親中勢力として中国にのみ込まれていくだろう。

 10年先を見れば、しぼむトランプ大統領と米国を後目に、核を放棄しない北朝鮮といよいよ軍事的覇権を拡大する中国が合体して、否応なく日本は最前線に立たされることになる。

 このまま行けば、より厳しい状況が、早く出現するということだ。

 それへの備えと覚悟を訴える論調は日本にはほとんどない。核をも装備した自主防衛議論が出てきてもおかしくないのに皆無である。日本にとって安全保障とは他人事で、米国の責任だと思っているのだろう。

2 合点がいかない会談後の流れ

 さて前置きが長くなったが、このたびの米朝首脳会談の流れは実に不可解である。

 まず会談の開催をトランプ大統領がキャンセルした時の金正恩の驚きと、面子を重んじる北朝鮮が醜態をさらして会談を懇願したことは実に不可解だ。金正恩にはこの時期トランプ大統領に話さなければならない何か重大なことがあったのだろう。

 また、あの厳しい米国の訴訟社会で生き残り、不動産王と言われたトランプ大統領が、あんなスカスカの文章を容認するだろうか。記者会見を独りで実施したが、何を言われても平気で金正恩を持ち上げた。

 そして、金正恩は帰国後すぐさま勝利宣言だ。トランプ大統領にとっては、ICBM(大陸間弾道ミサイル)によって自国の安全が脅威に晒される北朝鮮問題は喫緊の課題である。

 とても米韓演習を中止するなどあり得ないし、中国を相手に貿易戦争などできるはずもない。なぜなら米国と北朝鮮は水と油ほど考え方が違うことから、いずれ米朝は決裂し軍事行動へと発展することは間違いないだろうと考えるのが普通だ。

 しかし、トランプ大統領は、米韓演習の中止を命じ、韓国に駐留する米軍も本国に戻したいと本音を漏らしてしまった。さらに、その後の主要スタッフの発言は、にわかに信じられないものがある。

 まず、韓国大使に任命された対中・対北朝鮮強硬派のハリー・ハリス前太平洋軍司令官は、米朝首脳会談で状況が劇的に変化したとして「北朝鮮が交渉に真剣かを見極めるため、米韓演習を『一時』中止すべきだ」「多くの米軍幹部が朝鮮半島より深刻な脅威となる中国への対処に資源を振り向けるべきだと考え始めている」と述べている。

 さらにジェームス・マティス国防長官は米海軍大学の講演で「中国は他国に属国になるよう求め、自国の権威主義体制を国際舞台に広げようとしている」「既存の国際秩序の変更が中国の宿願であり、他国を借金漬けにする侵略的経済活動を続け(一帯一路)南シナ海を軍事化している」「我々が中国に関与し、中国がどう選ぶかが大切」と述べている。

 また、マイク・ポンペオ国務長官は中国を訪問して、南シナ海での軍事拠点化に言及し「他国の主権を脅かし、地域の安定を損ねている」と指摘し、マティス国防長官と同じように、眼前の脅威だとしていた北朝鮮問題には一切触れていない。

 中国は北朝鮮の後ろ盾として影響力を行使することと引き換えに、貿易摩擦の緩和を狙ったが、米朝首脳会談の3日後には米国は中国への制裁関税を発表し、さらに追加制裁にも発展している。

 この裏には対中強硬派のピーター・ナバロ通商製造業政策局長の発言力の復活がある。

 これら一連の動きは、今年1月に発表された米国防戦略が指摘した「中国は地球規模で米国の主導的地位にとって代わろうとしている」「米国が最も重点を置くべきはテロではなく大国間競争だ」とし、中国を「主敵」としたその戦略の発動であり、いよいよ「本丸」への攻撃をまず経済から始めたということだ。

 しかし、そのような大転換をするには、北朝鮮が本当に安全保障上の脅威にならないという確信がなければできないであろう。

 それならば、北朝鮮に対する押さえは何か。その1つは、ハリー・ハリス氏の駐韓国大使への配置である。

 恐らくトランプ大統領は、ハリス氏を最も信頼できる右腕として、韓国、北朝鮮、中国北部戦区の目付役とし、情勢判断を委ねたのだろう。彼が危ないと判断したら、トランプ大統領はすぐさま北朝鮮壊滅の準備にかかるだろう。

 一般的に自衛隊・米軍とも人事異動は2~3年なので、1年あるいは1年半で主要な幹部の半分は変わる。そのため米韓演習の中止期間は1年が限界であろう。特に今は太平洋正面の米軍の主要指揮官が交代しているので、動く時ではない。

 トランプ大統領も、「対話が中断すればすぐに演習を開始できる」と警告している。ポンペオ国務長官は、2年半以内に完全な非核化ができると言っているが、それでは次の大統領選挙には間に合わないし、軍事行動の再起動には問題がある。

 トランプ大統領がABCテレビのインタビューに答えて、「1年後に私は間違っていたかもしれないと言うかもしれない」と発言した意味は、軍事行動を起こすかどうかの見極めは、1年以内だということであろう。

 もう1つのカギは、近々ポンペオ国務長官と死神と恐れられるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮に入り、米朝間の非核化に向けた詳細な協議を行うことだ。

 「死神」を受け入れる北朝鮮には並々ならぬ決意があるのだろう。

 ポンペオ国務長官は中国の動きも念頭に「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を要求すると述べ、北朝鮮との協議の場では核計画の全容を数週間以内に申告するよう求め、検証のため米国以外の関係国からも専門家を呼ぶとしている。

 そして非核化の中に核だけではなく、生物・化学兵器やミサイルなどを含めたと説明している。

 もし北朝鮮が公約通り、非核化に向けて目に見える形で具体的行動をとらなければ、1年以内、早ければ今年の暮れには北朝鮮に対する見切りをつけるだろう。そういう意味で、米国の軍事的選択肢はなくなってはいない。

 このように経緯をたどると、米国は北朝鮮問題は解決済みとし、すでに対中国へとシフトしたと見るしかない。なぜなのか。よほどの確信がなければそんな行動に出ることは無謀であり、ここまでの説明でもまだ不十分だろう。

 結局、米朝首脳会談では、文書化されていない重要な約束事があるのではないかという疑念が湧く。

 事実、ポンペオ国務長官は6月23日の米MSNBCテレビのインタビューの答え、金正恩は「完全な非核化をする用意がある」と発言した。

 12日の米朝共同声明に明記されなかった米朝間の取り決めに関し、詳細を明らかにしなかったものの、「合意した多数の原則があり、双方がレッドラインを認識している」とも述べている。

 そもそもトランプ大統領は従来の大統領と異なり、言ったことはやる男だ。

 もし、米国が北朝鮮の後ろ盾になってやると言い、金正恩一族の「体制の安全を保証」するから核を廃棄し、民主化でなくとも開国し、少しでも繁栄する国家に近づく気はないかと囁かれたらどうだろうか。

 危険だがトランプ大統領にとっては独裁者たる金正恩が生きている方が、はるかに体制変換は容易である。

 一方、金正恩にとっては、昨年来の米国による北朝鮮殲滅の意思と能力をいやと言うほど見せつけられた。本当に核兵器まで使うかもしれないという米国大統領を金正恩のみならず、我々も目にしていることを忘れてはいけない。

 中国の習近平国家主席が米国を訪問中にシリアをミサイル攻撃したことは、中国のみならず、北朝鮮にとっても大きな恐怖であったはずだ。

 抑止とは、実際に敵に勝てる意思と能力、すなわち、勝てる戦略と切り札となる装備と予算の裏づけがあって初めて有効になるものだ。従って、米国が北朝鮮を殲滅する意思と能力を見せつけた「金の斧」は無駄ではなかった。

 金正恩は戦わずして負けを認めたのだろう。どうせ負ける戦争で殺されるより、シンガポールで見た繁栄の一端を実現することに生き残りを賭けることは悪くないと思ったのかもしれない。

 金正恩は、一応核保有国になったことにより米国大統領を会談に引きずり出したことで、その時が来たと考えたとしてもおかしくはない。

 いずれにしても、北朝鮮は少し時間をもらい、体面を保ちながら核や化学・生物兵器を滞りなく廃絶に持っていく賭けに出たのかもしれない。

3 北朝鮮の後ろ盾は中国か、米国か

 このような見立てをしている論調はほとんどないが、何人かの論者が筆者と似た意見を持っているようだ。

 それぞれアプローチと観点は違うかもしれないが、この見方であれば合点がいく。平たく言えば、「米朝は握った」のである。

 その時に問題となるのが、中国の逆襲と北朝鮮内部の反乱である。

 まず、そんな北朝鮮の動きを中国は容認するのだろうか。答えはイエスである。

(1)そのような謀反の兆候を見て、中国は北朝鮮に対して軍事行動を起こさないだろうか。起こせないだろう。

 なぜなら、米国を悪者にしようと平和勢力のように振る舞ってきた中国にとって、米国に先駆けて軍事行動を起こすデメリットは計り知れない。そのうえ、米国の経済制裁のもう1つの意味は、中国に軍事行動を起こさせない匕首(ブログ管理人注:ひしゅ、あいくちのこと)だからである。

(2)そもそも中国は北朝鮮を憎悪している。昨年の筆者の中国訪問における要人との対話では、「北朝鮮との同盟は変質した」と述べた。

 さらに、北朝鮮の核兵器は中国にも向けられているのではないかとの問いには「平壌を壊滅しなければならない」と吐き捨てるように語っていた。

 中国にとって核兵器などがない北朝鮮の方がむしろ望ましい姿なのである。核の廃棄を進めながら、米国の朝鮮半島からの撤退に結びつけばもっと有難い。

(3)たとえ北朝鮮が米国の経済支援などを受けても、地続きの中国の方が改革・開放の名の下に経済的な浸透が容易である。

 北朝鮮も改革・開放を隠れ蓑にする可能性がある。まして左傾化し反日・反米になりつつある韓国は御しやすく、習主席の方がトランプ大統領よりも長く政権に居続けられることから、いずれ朝鮮半島は中国の傘下に入るだろう、とほくそ笑んでいることだろう。

 もう1つは北朝鮮の内部の問題である。

 これは、体制変換を感じ取った親中派の軍部などが金一族を抹殺することや、自由を得てきた国民がルーマニアやリビアのように独裁者を抹殺することであり、この2つの可能性は大きいかもしれない。

 一挙に昔の北朝鮮に戻る危険性は否定できない。従って、軍事行動の準備は続けなければならない。まさに激動の朝鮮半島である。

4 対中に舵を切った米国、日本はどうする

 このような激動の中で、日本の政治は国内の些細な問題に囚われ、また、とても自由主義国家とは言えない経済政策の推進で、米国や世界の信用を失いつつあることに気づいていない。

 特に中国の「一帯一路」への協力は、トランプ大統領やインド・アジア地域の国々にとって裏切り行為でしかない。

 米国が台湾にも近づき、本気で中国征伐に乗り出したのに、中国の支援に回るとは利敵行為もはなはだしいとトランプ大統領は怒っているだろう。

 日本は中国の離間の計、すなわち日米の分断に自ら協力している。

 その怒りは、韓国と日本が核廃絶のお金を払うだろうという言葉に表れているし、日本に対する制裁関税の解除が遅れているのも、一緒に中国に立ち向かうこともなく、自らを守り切る防衛費も負担しないで笑って済ませようとする日本に対する皮肉であろう。

 米国の中国に対する制裁関税は、知的所有権への侵害に対するものである以上、日本も制裁に参加すべきではないだろうか。また、韓国からの米軍の撤退の希望は本心だろうし、止められない流れとなるであろう。

 米国は、中国に立ち向かうときには、日本は対馬が最前線になることを自覚し、少なくとも自らを守り切り、米国とともに中国に勝てる戦略の下に一緒に戦う覚悟を固め、行動することを期待しているはずだ。

 そうでなければ、やがて日本からも撤収するかもしれない。米軍が、未来永劫駐留すると考えるのではなく、日本を守るために米軍を引き止め、戦わせることを考えることがこれからは必要である。

 北朝鮮のミサイルにすら太刀打ちできない自らを恥じることなく、平和の配当を求め防衛費を削減しようとすることがあるならば自殺行為である。

 いずれにしても、朝鮮半島情勢は一気に流動化し、北朝鮮が米国と中国のどちらに振れようと、中・長期的視点からは日本にとって安全保障上、最も厳しい情勢になることは間違いない。日本は正念場に立たされたのである。

 そして、今年策定される新防衛大綱が手抜きであれば、日本の将来はないだろう。

 日本に求められることは、

(1)本気の対中作戦を考えた「脅威対抗の防衛力」への転換である。

 すなわち、防衛の必要性から、勝てる戦略(共著「日本と中国、もし戦わば」SB新書、中国の潜水艦を含む艦艇を沈め、国土・国民を真に守り切れる装備、態勢、米国を含むインド・アジア・太平洋戦略を提言)と切り札となり、ゲームチェンジャーとなる装備の開発・装備化、そして裏づけとなる十分な予算の配当が必要である。

(2)軍事は最悪に備えることが必要である。このため、アチソンラインが復活することを前提に、南西諸島防衛を手本として五島列島、対馬、隠岐、佐渡島、北海道へ至る防衛線を再構築する必要がある。

1950年1月12日、アメリカのトルーマン政権のディーン・アチソン国務長官が、「アメリカは、
フィリピン・沖縄・日本・アリューシャン列島のラインの軍事防衛に責任を持つ。それ以外の地域は
責任を持たない」と発言しました。これをアチソンラインといいます。

 トランプ大統領の、力による平和、力を背景とした外交の効果を理解し、また、日本の力のない外交では北朝鮮すら動かすことができない惨めさを理解したうえで、日本は自らの責任と自覚の下に、敢然と中国に立ち向かう日米同盟へと転換させることが喫緊の課題である。

【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事については、賛同できるところもあるのですが、そうではない部分もあります。特に、日本の外交に関して、安倍総理の外交努力を完璧に無視しているところには、全く賛同しかねます。

米国は以前から、アジア太平洋方面では二つの大きな脅威に直面していました。短期的には北朝鮮。長期的には中国です。これは、このブログにも何度か掲載してきましたし、現在の米国を考える上では、前提としなければならないことです。

そうして北朝鮮と異なり、中国は圧倒的な経済力を持っていて、いくら脅威であっても中国と直接紛争することはなかなかできないというのが米国の認識のようです。中国はすでに数百発のミサイルを日本列島に向けて発射できるよう準備を済ませており、そのミサイルに核爆弾も搭載可能です。

米国からすれば、本命は中国であり、北朝鮮問題などその前哨戦に過ぎないのです。このブログでも何度か掲載してきたように、トランプ大統領は、金正恩が米国の対中国戦略の駒として動く限りは、北の存続を許すでしょうが、そうでなければ、さらに制裁を強化したり、場合によっては軍事オプションも用いて、北を崩壊させることでしょう。その決断は、ブログ冒頭の記事のように、1年以内になることでしょう。

トランプ政権は発足当初は、中国の軍事的経済的台頭を抑えるため、ロシアと組もうとしたようですが、結局ロシアとの関係改善は進まず、次善の策としてASEAN諸国やインドと組もうとしました。ところが、中国側に先を越されてしまいました。

中国は2014年11月から、一帯一路構想により「シルクロード経済ベルト」と、「二十一世紀海上シルクロード」を構築すべく、アジア諸国に対して徹底的な経済支援を実施しています。

この「買収」工作のため、ASEAN諸国の多くはなかなか「中国批判」を口にしないようになってきていました。ただし、最近ではマレーシアにマハティール政権が登場し、一帯一路の事業から撤退することを表明するなど、中国への警戒心が高まっています。

もともとASEAN諸国は、米国のヘッジファンドなどの投資家によって振り回されてきた過去があるため、米国に悪いイメージがありました。インドも独立以来、非同盟といって米国ともソ連とも同盟を結ばずに独自の道を歩んできたため、米国とは関係が良いわけでもありませんでした。

そうして、昨年1月に発足したトランプ大統領は、国務省幹部と仲が悪いです。そのため国務省の主要人事でさえなかなか決まらず、アメリカ外交は余り機能しない状況が続きました。

そもそもトランプ大統領自身が国際政治の分野で友達が少なく、途方に暮れていたトランプ政権の対アジア戦略を支えてきたのが、なんと安倍首相なのです。

安倍首相は選挙勝利し、民主党から自民党ぺの政権交代が決まった2012年の暮に、「セキュリティ(安全保障)・ダイアモンド構想」を発表しています。これは、中国の脅威を念頭に、日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、インドに至るまでの連携網を構築しようというものです。



この構想に基づいて安倍首相はこの6年近く「地球儀を俯瞰する外交」と称して世界中を奔走してきました。特にASEAN諸国やインドとの外交を押し進め経済のみならず、安全保障面での関係強化を図ってきました。

この安倍首相の活躍のおかげで、トランプ政権とASEAN諸国、インドとの関係改善も進んでいるといっても過言ではありません。トランプ政権単独ではなかなかできないことてした。

インド太平洋地域で果たすべきアメリカの役割が不明確になっているなかで、代って日本がこの地域でより大きな役割を果たすようになってきています。特にアメリカは昔からインドとの関係は複雑で微妙な面がありますが、安倍外交がインドと米国との関係を強化することに貢献したのは間違いありません。

ブログ冒頭の記事では、「一帯一路」への協力は米国への裏切りなどとしていますが、安倍総理は「個別案件に対応したい」と言っただけであり、「一帯一路に協力する」と言ったわけではありません。

おそらくリップサービスの域を超えていないと思います。そうして、安倍総理は、このリップサービスにより、「一帯一路」に関する情報を中国から仕入れようとしたのでしょう。中国としては、喉から口が出るほど日本の協力を欲しがっているので、これに関しては、静観しているようです。

そもそも、「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を発表したその本人が、本気で「一対一路」に協力するなどということは考えにくいです。そうして、その後安倍総理の口からは、「一帯一路」に関する具体的発言は出ていません。


それどころか、特に南シナ海問題が起こってから、日本は経済協力を通じてフィリピンやベトナムへの関与を強め、巡視船の供与などによって法の支配を広げていこうとしてきました。こうした状況をを米国側からみれば、今や日本はアジア太平洋の安全保障の要となっていると認識しているといっても過言ではないのです。

インド太平洋地域の安定と平和を守るために現在のような戦略的な安倍外交がなくてはならないと、米国その中でも軍関係者は認識しているのです。

日本は過去には「アメリカの言いなり」「対米従属だ」と批判されてきたのですが、今や安倍首相の対アジア外交にアメリカが便乗してきているのです。

そうはいっても課題もあります。それは、ブログ冒頭の記事でも、指摘されているように、日本の防衛体制の不備、特に防衛費の不足です。

米国は仮に北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行えば、必ず激しい対応を行うことでしょう。中国の侵略部隊が九州に上陸するようなことがあっても同じように対応することでしょう。。

しかし、北朝鮮のミサイルが五十マイルの沖合に落下した場合や、日本の田舎の住民のいない場所に落ちた場合はどうでしょうか。あるいは、中国の漁民が尖閣に上陸して退去を拒否し、中国海軍がすぐ近くで日本に干渉するなと警告するようなことがあったとしたら、どうなるでしょう。このようなぎりぎりの問題でも、日本は米国に武力の行使を含めて徹底的な支援を期待できるでしょうか。

こうした微妙な問題について日米首脳はしっかりと詰めておかないと、中国にしてやられることもあり得ます。

それでなくともアメリカの政治家の大半は、極東の「島」のために米中が戦争をすることなどあり得ないと考えていることでしょう。日本の領土は、米軍などに頼らず、日本がしっかりと守るべきだと考えていることでしょう。

防衛に対する本気度は予算でわかります。なぜなら、予算は国家の意思だからです。いくら政府が何をやります、あれをやりますといっても、肝心要の予算がつけられなければ、何もできません。


トランプ政権は北朝鮮有事を念頭に昨年は、18年度予算を前年比で約7兆円増の68兆円に増やす防衛予算を国会に提出、昨年7月27日、可決しました。防衛予算を大幅に増額することで「このまま核開発を進めるならば北朝鮮を全面攻撃するぞ」と、その本気度を示しましたのです。

ところが日本は昨年、政府が閣議決定した2018年度予算案の防衛関係費は、米軍再編経費を含む総額で過去最大とはいいなが、前年比で数千億円増やしただけの5兆1911億円に過ぎませんでした。


ミサイル防衛体制も尖閣防衛体制もさほど強化していません。このため、「日本は本気で自国を守るつもりがあるのか」と不信感を抱く米軍幹部も存在するくらいです。

日本は防衛費をもっと増やすことで米国の完全な支援の見込みを増やし、米国と日本のすべての軍隊の間で協力関係を向上することができるはずです。

日米同盟こそがアジアの平和を守る最大の公共財なのです。その公共財を守るためには、憲法改正だけでなく、防衛費をせめて先進国並みのGDP比2%、つまり10兆円規模に増やすことが必要ではないでしょうか。

私は、北朝鮮が中国側について米国に反旗を翻すということもあり得ると思っています。あるいは、米国と中国を手玉にとって、二股外交をするという可能性もあります。いずれにしても、米国が中国に対して、現状の貿易戦争などから、金融制裁などへと制裁を強化しても習近平が翻意しなけば、米国は中国に対する見せしめのために、北朝鮮に対して無慈悲な軍事攻撃加えることもあり得ると思っています。

私は、トランプ大統領やその取り巻きのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは、本気で全く価値観が異なり、なおかつその価値観を寸分たりとも変えるつもりのない現中国の体制を崩し、米国への脅威を取り除こうと考えていると思います。

ブログ冒頭の記事には、賛同できない部分もありましたが、日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要になることだけは、確かです。

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