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2019年5月12日日曜日

誤算?無策?習政権、トランプ氏“逆鱗”読み切れず… 中国「報復」示唆も米側は切り札投入―【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!


ワシントンで言葉を交わすライトハイザー米通商代表(右)と、
              中国の劉鶴副首相(左)=10日

ドナルド・トランプ米政権は、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に課している追加関税率を10%から25%に引き上げた。習近平政権も報復を示唆するが、米国側は「全輸入品への追加関税」という切り札を出してきた。貿易戦争が長期化すれば深い傷を負うのは中国側であることは明確で、習政権の「誤算と無策」がハッキリしてきた。

 米通商代表部(USTR)は10日、中国からの輸入品約3000億ドル(約33兆円)分に25%の追加関税を課す手続きに入ると発表した。実施すれば中国からの全輸入品が25%の対象となる。

 トランプ大統領は10日、ツイッターで、追加関税について「交渉次第で撤回するかもしれないし、しないかもしれない」と中国に譲歩を迫った。一方で「交渉は良い雰囲気で続けており、急ぐ必要はない」と記すなど、脅したりすかしたりの老獪(ろうかい)さをみせた。

 10日の閣僚級協議も合意に至らず、次回協議について、スティーブン・ムニューシン財務長官は米CNBCテレビに「予定されたものはない」と語った。一方、中国の劉鶴副首相は、米国との貿易協議を早期に北京で開催することで合意したと強調するなど、決裂ではないことを強調するのに懸命の様子だった。

 中国商務省は10日、「必要な対抗措置を取らざるを得ない」との報道官談話を発表したが、関税競争は中国に分が悪い。2018年の対米輸出額が4784億ドル(約52兆5900億円)だが、輸入額は1550億ドル(約17兆400億円)にとどまり、報復関税にも限界がある。

 関税が引き上げられた対米輸出品についても、中国側が価格を引き下げて対応しているのが実情で、トランプ氏は「米国製品のコストへの影響はごくわずかで、ほとんど中国が負担している」と勝ち誇っている。

中国全人代の閉幕式に臨む習近平国家主席=3月5日、北京の人民大会堂

 中国は論点も見誤った。

 米国側は、外国企業からの強制的な技術移転や産業補助金などを最重要課題としているが、中国側は貿易赤字の問題にすぎないと軽視していた節もある。

 習政権はメンツにこだわり、米国と対等であるかのように交渉に臨んだ。閣僚級協議でも、習国家主席がトランプ氏に書簡を送ったが、効果はなかった。習氏とトランプ氏との電話協議など直接交渉で打開を図るが、展望は見いだせない。

【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!

ロイター通信8日付は、米政府関係者らの話として、中国当局は今までの交渉で知的財産権保護や技術の強制移転、為替などの事項に関して、国内法の改正を約束したにもかかわらず、今月3日に米政府に送った合意文書案で約束を撤回したそうです。

中国当局が突如態度を変えた理由について憶測が飛び交っています。

今年に入ってから、中国経済がやや回復の兆しが表れていました。中国税関総省が発表した3月の貿易統計では、同月ドル建て輸出は、市場予想を大幅に上回り、前年同月比14.2%増加しました。5カ月ぶりの高水準といいます。中国当局によるテコ入れ策で、3月の新規人民元建て融資や社会融資総量が予想外に急増し、投資の拡大が示されました。中国当局は、景気が上向きになったことで、強気に出た可能性があります。

今年4月までは、株価も回復していたが・・・・・・

しかし、中国経済の好調が、約束を反故した主因ではないようです。中国当局の最高指導部が「政治的な賭けに出た」という見方が、最も説明がつきます。

国際社会は、中国共産党政権が真に構造改革を行うと信じていません。構造改革を行い、市場を開放してインターネット封鎖を解除し、情報の自由を認めるためには、単に掛け声をかけて投資をすれば成就するという簡単なものではありません。

それを実行したとしても、現実には何も変わらないです。それを実行して根付かせるためには、一定以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をする必要があります。

それを本当に実行すれば、中国共産党政権は統治の正当性を失い、崩壊することになります。

さらに、ここまで米の要求を受け入れると、党内から「弱腰外交」と習氏への批判が沸き立つことでしょう。

中国共産党の本質を見極め、強硬姿勢を示すトランプ政権は、貿易戦を通じて、中国当局に2つの究極の選択肢を突きつけました。中国共産党一党独裁を捨てても中国経済を守るのか、それとも中国共産党政権を維持するのかです。

約束の撤回は、中国当局からの返事だと見てもよいです。「一強体制」を築いたように見える習近平国家主席は、政権維持に拘れば、難しい政権運営を強いられることになります。

江沢民(左)と曽慶紅(右)

4月下旬、江沢民派の主要人物である曽慶紅氏が久しぶりに公の場に姿を見せました。習近平氏は近年、反腐敗キャンペーンで江派の高官を次々と失脚させ、江沢民派の勢力は衰退しました。その一方で、江沢民氏、曽慶紅氏2人の摘発を放置しました。専門家は、習近平氏は中国共産党体制の崩壊を避けるために、江沢民氏らに譲歩したとみてきました。

インターネット上に投稿された動画によると、4月20日、曽慶紅は江西省トップの劉奇氏とともに、故郷の同省吉安市を視察しました。劉奇氏は、習近平氏が浙江省トップを務めた際の部下で、習氏の側近です。曽と劉の両氏の組み合わせは、習派と江派が「仲良くやっている」というメッセージを送り、党内の団結をアピールしているように見えます。しかし、習近平氏が政権維持に拘り、江沢民派に譲歩しても、団結は長く続きません。

トランプ大統領が5日のツイッターで対中追加関税の引き上げを発表したのを受け、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6日、情報筋の話を引用し、貿易交渉で中国側が約束した内容の一部に対して習近平氏が認めず、交渉が失敗すれば「自分がすべての責任を負う」と述べたと報じました。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、2015年にアリババグループに買収され、親江沢民派メディアとして認識されています。

劉鶴副首相は、9日と10日の米中通商協議に予定通り参加しました。渡米前、劉氏は「圧力下での渡米」とメディアに語りました。習近平氏の政敵は、今回の交渉を「米国の圧力に屈した侮辱的な交渉」と捉え、習氏への批判を強めるでしょう。この交渉でどんな結果が生じても、敵対勢力に攻撃の口実を与えることになります。

劉副首相の訪米は、米国の圧力に屈したというよりも、親江沢民派メディアの報道への対応と言えます。

実にトランプ米大統領の5日のツイッター投稿を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は6日株式市場の取引開始前に、中小銀行を対象に預金準備率の引き下げを発表しました。これによって、市場に2800億元(約4兆5174億円)の資金を供給するといいます。中国当局が、トランプ大統領の発言で、中国経済や株式市場が受ける影響を予測したことが読み取れます。

しかし、中国当局はサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を予測できませんでした。

今後の見通しとして2通りの展開があります。一つは中国側が大幅に譲歩し、米側と合意するというものです。しかし、こうなった場合、江沢民派が必ず、「主権を失い国を辱めた」として、習近平氏に反撃するでしょう。党内闘争が一段と激しくなり、政権の不安定さが高まることになります。

もう一つは、中国当局が引き続き意図的に貿易交渉を先延ばし、米中両国が物別れに終わることです。これが起きれば、中国経済が壊滅的な打撃を受けることになります。

輸出、投資、個人消費の低迷が深刻化するほか、中国当局が最も不安視する債務危機もぼっ発する可能性が高いです。これに伴う企業の倒産、労働者の失業が急増し、中国当局への社会不満が一気に爆発することになります。

中国当局は、この最も恐れる状況に、どう対処するのでしょうか。習近平氏が政治手腕を発揮し、反対派の攻撃を圧制することができたとしても、経済崩壊を迎えた中国共産党政権は末路をたどるしかありません。

米中貿易戦、中国国内および共産党の現情勢を分析すれば、米中貿易交渉で勝負に出た中国当局は、初めから失敗に向かっていることが分かります。米中通商協議の結果がどうであれ、中国共産党体制の崩壊が加速化します。

10日、2日間の米中閣僚級協議を終え、トランプ大統領は同日、今後も交渉を続ける方針を表明しました。ロイター通信は10日、情報筋の話として、劉副首相は国内法の改正を拒む立場を変えておらず、国務院令や行政命令で対応すると提案したと報じました。米側はこれに拒否したといいます。

前国家経済会議(NEC)副委員長のクリート・ウィレムス(Clete Willems)氏は米メディアに対して、トランプ氏は交渉チームに「満足できる内容でなければ、いつもで立ち去れ」と告げた、と話しました。

「強国路線」を掲げてきた習氏にとって、米側への大幅な譲歩は国内の求心力を失いかねないですが、強硬姿勢を貫いて貿易摩擦がエスカレートすれば、経済成長の減速に拍車がかかるというジレンマに陥っているのです。

どちらに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ないのです。

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2018年11月20日火曜日

日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復―【私の論評】ゴーンの逮捕劇は、米国による対中冷戦Ⅱと無関係ではない(゚д゚)!

日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復

渡邉哲也/経済評論

工場を見学するカルロス・ゴーン(一番手前) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

カリスマ経営者から容疑者へ――ルノー・日産自動車・三菱自動車工業の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者と日産代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の逮捕が株式市場に動揺を与えている。昨日、ルノー株は一時、前日比15%安まで急落し、日産と三菱自も夜間取引で終値の8%安まで下落した。

 周知の通り、ルノーはフランス政府が15%の株式を保有しており、そのルノーが日産に43.4%出資、日産がルノーに15%出資という構図になっている。ゴーン容疑者の逮捕を受けて、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「フランス政府はルノーの株主として、ルノーと日産の提携関係の安定性を注意深く見守っていく」と述べるなど、国際的に余波が広がっている状況だ。

 そもそも、フランス政府が支援することで経営を立て直したルノーに対して、日産側は連合関係の見直しを求めていたが、フランス側が拒否し、政府がルノーの筆頭株主になったという経緯がある。3社連合の関係見直しが叫ばれるなか、つい先日も、アニエス・パニエルナシェ経済・財務副大臣が「フランス政府が持つルノー株を売る計画はない」と語っており、フランスとしては自国の生産拠点を拡大する意向を示していた。

記者会見に臨む日産西川広人社長

 しかし、急転直下の逮捕劇で事態は大きく動いたといえる。今回の不正発覚は内部通報によるものであり、日産はすぐにプレスリリースを発表した上、西川広人社長が記者会見を開いて経緯を説明した。この流れを見る限り、今回の件は裏で相当な時間をかけて動いていたのだろう。逮捕容疑である金融商品取引法違反のほかに特別背任罪と脱税の疑いも指摘されており、有罪となれば実刑という見方も強い。

 本来、有価証券報告書の虚偽記載は日産という企業全体の責任が問われる問題でもあるが、検察当局との司法取引も取り沙汰されており、企業としての責任は限定的になるとみられる。また、これを機に連合関係の見直しが進む可能性が高く、日産は再び“日の丸資本”となるかもしれない。

 フランスに反発する日米英のメリット

 そもそも、日米は「国家が企業を支援するのはフェアではない」というスタンスだ。それは日米首脳会談やアジア太平洋経済協力(APEC)などでも繰り返し確認されていることであり、たとえば、9月の日米首脳会談後に発表された共同声明には、以下のような文言がある。

9月の日米首脳会談

 「日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」

 これは主に中国を想定したものではあるが、必ずしも中国のみが対象というわけではなく、フランスのルノーも該当するということだろう。政府が筆頭株主である企業が提携関係にある他国の企業を支配しようという動きは、この文言に該当するのだと思われる。

 仮に日産が日の丸資本に戻れば、欧州連合(EU)離脱の渦中で開発と生産の拠点があるイギリスとしては、「フランスよりこっちにおいで」という話がしやすいし、製造業を復権させたいアメリカにとっても同様にメリットがある。特に、マイク・ペンス副大統領の出身母体であるラストベルトにとって日本企業の誘致は必須であるため、日産と三菱自の生産工場の拡大などは願ったり叶ったりだ。また、フォード・モーターやゼネラルモーターズ(GM)も提携先を探しており、その選択肢としてもいい候補となるだろう。

 つまり、日産のリスタートを機に、日米英としてはウィンウィンの関係を構築できるわけだ。そして、その裏にはフランスへの反発がある。

 米国を敵視するマクロンへの“報復”も?

 かねてマクロン大統領は、中国、ロシアに加えてアメリカを敵対視する動きを見せている。第1次世界大戦終結100年の記念式典では、ドナルド・トランプ大統領らが出席するなか、「ナショナリズムは愛国心への裏切りだ」などと自国の利益優先主義を痛烈に批判した。また、欧州独自の防衛体制と安全保障の一貫として「欧州軍」の創設をうたっているが、これには北大西洋条約機構(NATO)を率いる立場のトランプ大統領が「侮辱的な話だ」と反発するなど、大きな国際問題になっている。

 そのように、アメリカを敵国扱いするマクロン大統領に対する“報復”として、今後は“フランス切り捨て”が始まると言ったら言い過ぎだろうか。

 いずれにせよ、大物経営者の逮捕という事態はショックではあるが、日本としてはチャンスにもなり得るわけだ。ルノーとの関係見直しを踏まえた財政的支援などを含め、適切な対応が待たれる。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】ゴーンの逮捕劇は、米国による対中冷戦Ⅱと無関係ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にもでてきた、9月の日米首脳会談後に発表された共同声明を以下に再掲します。
 日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく。
これを簡単にわかりやすくざっくり、解釈すると
“どこの国”とは言わないが、日本、米国、以外の“とある国”が、国家ぐるみで市場経済を無視した強引な手段を使って不公正な行いをしている。それに対抗するために、日本は米国に協力しろ。
ということです。

確かに、どこの国とは言っていませんが、「日米以外の第三国」、「知的財産の収奪」、「国有企業によって 創り出される歪曲化」

こういうキーワードを拾っていくと該当する国は一つしかありません。そう中国です。ただし、「国有企業」ということでは、当然ながらフランスも含まれていると考えるべきです。

また、これと符合するように米Newsweekの記事では米国商務長官が、先に締結された新しい北米自由貿易協定に中国との貿易協定締結を阻止する「毒薬条項(ポイズンピル)」が盛り込まれており、日本や欧州連合(EU:当然フランスも含まれる可能性がある)などとの貿易協定にも取り入れる可能性がある、と述べています。

敢えてツッコミを入れるとすれば、「“可能性がある”も何も既に共同声明に盛り込まれてるではないか」と指摘したいところですが、それはさておき、この「毒薬条項」が日米共同声明に盛り込まれたということは何を意味するのでしょうか。

それは、米国の「対中冷戦Ⅱに本気で取り組むし、国有企業に関しては、フランスにも問題がある、フランス等にも制裁するかもしれないから、日本も協力しろよ」という強い決意に対し、日本政府は「分かりましたー! 米国に全力でついていきます!!」と宣言したということです。つまり、国を挙げて中国との貿易戦争と、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処すると宣言したわけです。

いわゆる主要メディアでは今回の日米首脳会談について、物品貿易協定(TAG)の話に終始していましたが、こちらの方がよほど大きなトピックかもしれません。

日本政府、特に安倍首相は「共通の価値観」を有する同盟国として、米国との友好関係を重視してきました。そして、その共通の価値観とは、いわゆる「民主主義」、「自由」、「平等」、「公正」というような言葉に代表される価値観です。

そのような価値観に従うのであれば、本来中国が不公正な手法で経済を活性化させ、市場を席巻することは容認しがたいということです。特に「自由」といった場合、多くの人は勘違いすることもあるのですが、「自由」には責任が伴うものであり、その責任を中国は果たしていません。

経営学の大家ドラッカーは「自由」について以下のように述べています。
 自由とは楽しいものではない。幸福、安心、平和、進歩のいずれでもない。それは選択の責任である。権利ではなく義務である。真の自由は何かからの自由ではない。それでは特権にすぎない。 
 自由とは、行なうことと行なわないこと、ある方法で行なうことと他の方法で行なうこと、ある信条を持つことと逆の信条を持つことからの選択である。楽しいどころか重荷である。それは、自らの行動と社会の行動にかかわる選択の責任である。
共同声明に用いられらている「自由」とは無論ドラッカーの言う「自由」に近いものです。何もかも手前勝手な中国の振る舞いを許容する言葉ではありません。

今回の宣言で米国は、名指しこそしていませんが、どう考えても中国は市場の公平さを歪ませ、貿易の不均衡を生むとし、それに対抗する措置を日米欧で協力して行っていく方針を打ち出したのです。無論、フランスによる私企業の国有企業化による歪みについても、意識しています。

当然中国はこれに対し、自らの経済政策の正当性と、日米の措置が自由貿易の理想に反するものだと批判するでしょう。フランスも当然そうすることでしょう。

中国のビルの壁にかかれている「社会主義核心価値観」

日本や米国、そして欧州諸国のグローバリズム的な政策により、多くの企業が中国との関わりを昔より大きくしています。

中国産の商品が世界を席巻しているという面だけではなく、中国の人件費の高騰から今では東南アジア諸国などに工場が移りつつあるものの、多くの民間企業が中国国内に工場を留めたまま。そしてその膨大な人口に裏付けされた巨大な市場に多くの企業が前のめりに進出をしているのが現状です。

そのような中で政府はその方針をグローバリズム的政策から反グローバリズム的な政策へと転換すると明言したのです。これは、日本にとっても中国が市場の公平さを歪ませ、貿易の不均衡を生み、明らかに日本にとって不利益であることと、米国は日本の最大の同盟国でもあるからです。

そうして、フランスの国営企業であるルノーと日本の日産は提携関係あることから、日本は非市場志向型の政策の被当事者であるといえるわけです。

民間企業の多くはこれから中国政府、フランス政府と日米の新たな方針の狭間で揺れ動くことになるでしょう。

このような重大な方針転換を日本政府は「外務省HP」において公表したりしているものの、その重要性を知ってか知らずか日本のメディアは、一切報じません。そのためもあるのでしょうか、今回のカルロス・ゴーン氏逮捕劇に関しては、多くの当事者が表面的にしかとらえていないようです。

今回の事件の背後には、ブログ冒頭の記事で渡辺氏が主張するように、マクロン大統領への報復の一環として、日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速している側面があることをあまり理解していないようです。

安倍総理塗膜論大統領

日米からみれば、仮にも自由主義陣営フランスによる私企業の国有企業化による歪みは、中国の無法な振る舞いを助長するようなものであり、許容できるようなものではないです。

ところが、米国がペンス副大統領の演説にもあるように、冷戦Ⅱに本気で取り組むことをはっきり主張したにもかかわらず、安倍総理の訪中に嬉々として、随行し日中友好にほくそえんでいるような財界人や、それを手配した政治家などが存在しているわけですから、これを理解できないのは、むりからぬところなのかもしれません。

安倍総理としては、訪中に積極的に日本の財界人を随行させたわけではなく、自民党の有力政治家が随行を手配したので、無下にもできず、許容しただけでしょう。共同声明ではっきりと、宣言した事柄に背くことはできないでしょう。要するに、中国とは自己責任で商売しろということです。

ここではっきり断言しておきます。今回のカルロス・ゴーン氏逮捕は、表面上は冷戦Ⅱとは無関係のようにもみえますが、これははっきりと何らかの関係があります。そうして、これからも日本国内でこのようなことは十分にあり得ます。

日中友好でぬか喜びしていると、ある日突然カルロス・ゴーン氏のような目にあう経営者がでてくるかもしれません。

あるいは、日中友好ということで善行をしたつもりが、中国に対して米国の高度技術や、日本の高度技術を提供して、中国に利益をもたらしたという理由で、米国から制裁を受ける企業がでてくるかもしれません。

国際的に活動する企業や人は今後、この点に配慮しなければ、それこそ第二のカルロス・ゴーンになる可能性もあります。

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2013年8月17日土曜日

“嫌がらせ国家”中国 報復でノルウェーのサケ輸入激減、比のバナナも…―【私の論評】このような嫌がらせをまだするということは、未だ経済と政治の分離がなされていないことの証、このままではかつてのソ連のように崩壊することだろうよ(゚д゚)!

“嫌がらせ国家”中国 報復でノルウェーのサケ輸入激減、比のバナナも…

劉暁波氏のノーベル賞受賞後、ノルウェーに理不尽な攻撃をする中国

 中国が、ノルウェーに“経済的恫喝”をしている疑いが出てきた。中国の民主活動家、劉暁波氏が2010年のノーベル平和賞を受賞して以降、同賞の選考機関があるノルウェーの主要輸出品であるサケの対中輸出が激減しているのだ。日本も尖閣沖中国漁船衝突事件直後、ハイテク製品の生産に不可欠なレアアースを一時禁輸された。同国の傲慢さがまた明らかになった。 

 これは、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が15日伝えた。

 ノルウェーから中国へのサケの輸出は10年には約11万トンあったが、同年10月の劉氏へのノーベル賞授与の決定以来、急速に減少し、今年上半期は約3700トンに減った。

 中国の「相手国の弱みを攻撃する」思考は変わらない。同様の事例は、ノルウェーや日本だけでなく、フィリピンでもあった。

 昨年5月、中国とフィリピンが南シナ海のスカボロー礁をめぐって関係が悪化した際、中国は「害虫駆除のため」として、フィリピンの主要輸出物であるバナナなど果物の検疫を強化し、事実上の「禁輸」措置を取ったのだ。

 中国問題に詳しい作家の宮崎正弘氏は「分かりやすい報復措置だ。中国人は『相手が困るだろう』と思ってやるが、レアアースは1年後、日本が別の調達先を用意し、中国では在庫の山となった。ノルウェーのサケも世界各国で売れている。最後に困るのは中国。世界中から『おかしな国、困った国だ』と思われている」と語っている。

この記事の詳細はこちらから!!

【私の論評】このような嫌がらせをまだするということは、未だ経済と政治の分離がなされていないことの証、このままではかつてのソ連のように崩壊することだろうよ(゚д゚)!



ノルウエイーの鮭を政治的駆け引きに使うとか、中国まったくどうしようもないです。
ノルウェイーの国旗をモチーフとした水着

しかし、ノルウエイーの鮭かなり品質が良いですから、世界中のどこの国でも売れます。何も、中国だけが、売り先ではありません。

これで、中国は政治と経済の分離が行なわれていないことを世界に向かって宣伝しているようなものです。中国に関しては、以前からこのブログでも、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないことをことあるごとに批判してきました。

この中で、民主化とか法治国家というのは多くの人に理解しやすいのですが、政治と経済の分離という概念は、おおよそ普通の先進国などでは、随分昔から分離されているので、日本でも分離されているのが当然の状態なのでなかなか理解していただきにくいところがありました。

政治と経済が分離されていないとは、要するに国家資本主義という状況なのですが、これを説明するのがなかなか大変でした。

さて、国家資本主義とはどのようなものかといえば、以下のようものです。
18世紀以降の啓蒙専制君主や日本の明治維新、20世紀以降の開発独裁などは、国家が自由主義や資本主義を含めた近代化を推進した。ただし政治上の自由は厳しく制限した場合が多い。多くの国では一定の経済発展を成し遂げると民主化を進めていったが、権力者による私物化や汚職が長期間行われた場合は、近代化プロセスが破綻しクーデターや権力者の国外追放といった結末に結びつくことが多かった。 
現代においても、シンガポールの人民行動党政権、鄧小平時代後の中華人民共和国の改革開放(たちあがれ日本共同代表の一人与謝野馨などが、現在の中国を「国家資本主義」と呼称)、ベトナム社会主義共和国のドイモイ路線、プーチン政権のロシア(政権によるオリガルヒ統制)などが国家資本主義と呼ばれることがある。 
 中華人​​民共和国 
多くのアナリストは、中華人民共和国は21世紀における国家資本主義国家の一つであるとしている。 政治科学者イアン・ブレマーは著書The End of the Free Market: Who Wins the War Between States and Corporations『自由市場の終焉――国家資本主義とどう闘うか』において、中国は2008年の金融危機以降、先進国の自由市場経済に対抗する国家資本主義を推進する中心的国家であると述べている。 
 シンガポール 
シンガポールの経済モデルは国家資本主義の形態であり、国家が政府関連企業の支配株式を持っており、ソブリン・ウエルス・ファンドを通じて直接投資を行っているとの論がある。
このように定義など並べてもなかなか理解しにくいところがありますが、中国は政治と経済がはっきりと分離されていないのは周知の事実です。中国共産党幹部は、資本主義を理解していませんし、民衆もそうです。政府の重要人物とコネができれば、事業は何でも成功すると考えていました。要するに、実体経済の意味が良くわかっていないのです。金融経済などとは異なり、実体経済を変えることは政府にはできません。政府ができることは、せいぜい実体経済の激しい変化をやわらげ、ソフトランディングさせることくらいです。

しかし、国家資本主義であれば、政府は、経済に介入して、財政政策や金融政策等で自由自在に実体経済をどうてもでも変えられるものとみなします。経済が小さなうちはそれでもなんとかなる部分はありますが、大きくなればそんなことはできません。

今までの中国は、とにかく経済など政府によって金融政策、財政政策、為替の固定化や通貨安などを自由に制御できるものとして運営してきました。

そうして、ごく最近まで、日本銀行が金融引締めにより、円高・デフレ政策を実施してきたため、経済がかなり大きくなった後でも、実際何とかなってきました。過去20年間は、危機があっても、政府が介入すれば、なんとか回復することができてきました。景気が悪くなれば、金融緩和、財政出動して、突貫工事をやれば、たちどころに景気が良くなりました。景気が加熱すれば、金融引締め、緊縮財政をやれば、たちとろころに景気は加熱気味から脱出できました。これらの政策を強行すれば、人民からの反発もありましたが、そのときには、武力でもって鎮圧しておしまいです。あまりにも簡単でした。だから、中国の経済と政治の分離は今でも進んでいません。

ところが、最近は風向きが変わってきました。日本銀行が、異次元の金融緩和をはじめたとたん、このブログでも指摘したように酷い状態になっています。
中国経済、大混乱! 飛び交う“銀行デフォルト連鎖”の噂―【私の論評】日本銀行が中国麻薬漬け金融政策をやめた途端この有様、日本人や中国社会のためにも、安全保障の観点からもアベノミクスの頓挫は許されないぞ(゚д゚)!
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、日本が異次元の金融緩和に転じたとたんに、中国の実体経済の脆さが明るみにでたということです。

もう、中国は政治と経済を分離して、まともな経済運営をするようにしなければ、経済が崩壊するだけです。そのことを中国共産党幹部は全く理解しておらず、今でも、過去の対策で十分やっていけると勘違いして、右往左往しています。もう、おそらく、過去の手法は通じません、おそらく政府は、過去の手法をやって、もぐらたたきになり、どうしようもなくなってから、自分たちの過ちに気付くことと思います。

中国は、日本を含む先進国が辿ってきた道をである、民主化、政治と経済の完全分離、法治国家化をして、いわゆる中間層を多数形成して、その中間層の活動によって経済を活発化し、復活するしか方法はありません。しかし、中国共産党政府にはその気は全くないようです。

なぜ、そのようなことがいえるかといえば、ノルウエーの鮭輸入を激減させたり、フィリピンのバナナの輸入を激減させたりなどするということは、政治と経済が全く分離されていないことを示す事象だからです。バナナの輸入量や、鮭の輸入量など、需要の変動にあわせるべきものであり、政府が決めるのではありません。このせいで、人民がバナナや鮭を食べられなくなったり、高くなってしまっては本末転倒です。それに中国の輸入業者はえらい迷惑です。需要があっても、政治問題があったら、輸入でないということでは経済を阻害するだけであり、無意味です。


普通の国であれば、これらの輸入は民間が実施することであり、政治的に問題があったからといって、このような露骨な禁輸措置はとれません。これじゃまるで、冷戦下のソ連と変わりありません。冷戦下では、外交官など、何かまずい問題があれば、ソ連に行ったときに、電気が通じず、お湯も出ないような、ホテルに宿泊させられるなどの嫌がらせを受けたなどいう話は良く聴きました。しかしそれは、冷戦下のソ連の話であって、ソ連はもうこの世に存在しましせん。

旧ソ連のミスコン第一回目の参加者たち,クリックすると拡大します
この様子では、中国の民主化も、政治と経済の分離も、法治国家化も無理だと思います。行き着く先は、経済の破綻であり、その頃には、中国も分裂していることでしょう。

このままでは、中国共産党政府は、本来やるべきことをしないで、モグラたたきを続け、いずれソ連のように崩壊していくと思います。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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