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2020年7月24日金曜日

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 — 【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 

沖縄県尖閣諸島
 三流の指導者は、行き詰まると戦争に打って出る特徴がある。

 周囲にイエスマンと茶坊主しかいない中国の習近平執行部。その失敗を冷ややかに待つのが李克強首相や、汪洋副首相ら共産主義青年団だ。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は当初、反共の連合だった。いつしか全加盟国が中国のサプライチェーンに巻き込まれ、中国批判は希釈化した。南シナ海の領海問題ではベトナム、フィリピンが強硬だが、カンボジアなど「北京の代理人」かと思われる振る舞いである。

 東シナ海、南シナ海に戦雲が湧き、派手に展開する中国の軍事演習と米軍の対応を目撃すれば、ドナルド・トランプ米大統領のいう「台湾防衛」の本気度が試されることになる。沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵犯、接近は頻度が増した。

 しかし、中国国内事情を勘案すれば、「裸の王様」はすっかり飽きられており、「習近平よ、さようなら」というムードなのだ。

 第1は、全国人民代表大会(全人代)で、国内総生産(GDP)成長率の目標値が明示されず、第1四半期はマイナス6・8%と報告された。果たして、その程度で済むのか? 雇用が特に懸念され、李首相は「9億の労働者人口があり、雇用を守り、雇用機会を創造する」と記者会見した。

 第2は、景気刺激策を遂行するための無謀な財政措置である。

 金利の低め誘導、中小企業への融資拡大など主に企業支援政策である。新しく債務となる財政支出は合計5・5兆元(約84兆2600億円)。これは中国GDPの4・1%に相当する。

第3に、李首相の基調演説から、台湾「平和的統一」の文言が消えたことだ。

 台湾総統に再選された蔡英文氏は、就任式で「(中国の唱える)一国二制度には反対」と明確なメッセージを出した。

 尖閣諸島周辺や台湾海峡に、中国海軍の艦船が出没し、領空接近は日常の風景となった。日本の「2020年防衛白書」は明確に、中国の軍事的脅威を記載するようになった。

 中国の富裕層は、全人代で打ち出された「香港の治安維持強化」という方向に賛同を示しつつも、ホンネでは不安視し、資産をもっと安全な場所へ移管している。

 マイナスになることは分かっていても、中国は強硬路線を捨てられない。国際的に四面楚歌(そか)でも、対外活動を強硬路線で展開しなければ習政権は国内で孤立するという矛盾を抱えているからだ。

 そして、すべての矛盾をそらす最後の手段が戦争である。

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『戦後支配の正体 1945-2020』(ビジネス社)、『「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する』(徳間書店)など多数。

【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

中国ウォッチャーとして有名な、上の宮崎正弘氏の記事では、矛盾を逸らす最後の手段としての戦争があり得ることを主張しています。

戦争というと、まず頭に浮かぶのは、台湾を武力統一することです。それに、尖閣諸島の奪取もあり得ます。これらは、日本人ならすぐに思い浮かぶことです。他には、どのような戦争があり得るのでしょうか。

昨日このブログでは、トゥキディディスの罠に嵌って、米中両国が総力戦に入ることはないであろうことと、その根拠も述べました。その上で、総力戦はないものの局地戦はあり得ることを主張しました。その事例として、米軍による南シナ海の中国軍基地への攻撃を挙げました。

本日は、その続きとして、中国による局地戦としては、どのようなものが考えられるのかを掲載します。

これに対するヒントとなるような内容が、2013年11月26日豪州戦略政策研究所(ASPI)のブログ・サイトThe Strategistに掲載されていました。豪州国立大学(ANU)のウェイド客員研究員が、中国がメディアを通して、反米感情を煽ったり、領土拡張を訴えたりしている現状を紹介して、警告を発しました。

当時ウェイド客員研究員は、中国の新書『中国は恐れない――国家安全保障への新脅威と戦略対応』を分析し、人民解放軍の戦略の一部として、軍人か否かを問わず国内の精神的引き締めを行なうと共に、中国の動を規制する外国勢力を牽制するものであると分析し、その他にも、人民解放軍が係ったと思われる映画と通信社の記事にも、同様の分析が成り立つことを主張しました。

中国の映画『静かなる競争』は、2013年10月に中国及び世界のネットに上がるや否や論争を呼びました。そして、その月の末までには、何の告知もなく、映画は中国のサイトからは削除されました。ただ、YouTubeでは見ることができましたが、今は削除されています。

映画は、米国が、5つの方法によって中国政府を転覆させようとしている様子を描いています。その方法とは、(1)政治的に中国を弱体化させる、(2)文化的浸透を図る、(3)思想戦をしかける、(4)諜報部隊を訓練する、及び(5)中国国内の反体制派を強化すること、です。全体としては、米国が中国を支配下に置こうとしているということを伝えたいようです。映画を見た中国国内の軍人や民間人は、侮辱された感情と怒りを持つだろう内容です。

映画の製作に人民解放軍は密接にかかわりました。具体的には、国防大学、中国社会科学院、及び、国家安全部の管轄にある現代国際関係研究院が、2013年初めに映画の製作に関与しました。これは、確かに、米国のアジア回帰に対応したものですが、より深い根本原因もあるでしょう。これだけ権威ある中国の諸機関が映画製作に携わったということは、そこで示された極端な感情が人民解放軍のタカ派に限られたものではないことを表しています。

2013年7月には、更に問題となる領土回復主義の記事が、中国新聞網のサイトに掲載されました。この記事は、「今後50年間に中国が戦わなければならない6つの戦争」という題名で、人民解放軍の一部に見られる超国粋主義の態度を示しています。しかし、このような記事が中国国営通信社に掲載されるという事実から、これが指導部で認められた考えであることが想像出来ます。

6つの「不可避な」戦争は、時系列で示されています。(1)台湾統一戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土回復戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土回復戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島及び琉球諸島回復戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古統一戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の回復戦争(2055-2060年)です。

台湾に関しては、中国は、武力行使の手段を放棄したことはなく、具体的時期が示されたこともそれまではありません。偶然でしょうが、丁度この頃、台湾軍が、中国は2020年までに台湾を併合する軍事的能力を有するだろう、と発表したばかりでした。

南シナ海に関しては、現在のいざこざが戦争に発展することは想像に難くないです。3つ目の中国によるインドのArunachal Pradesh州への領有権の主張は、何十年も中印関係の棘でしたが、中国がヒマラヤのチベット文化圏のどこまでを勢力圏として主張しているかは、今だ明らかにされていません。今年の6月15日夜、ヒマラヤ高地のギャルワン渓谷で中印が衝突。報道では両国で数十人の死者が出たもようです。

尖閣諸島に対する中国の領有権の主張は、最近よく報道されるので、その状況が戦争に発展するのにさほどの想像は必要としないでしょう。今年は、現在までにすでに100日以上も中国の海警局の艦艇が、尖閣付近に出没しています。

また、モンゴルが清王朝から継承した土地に関しても、中国は領有権を主張しています。ロシアの極東地域についても同様で、多くの中国人は、そこはロシアが不当に占拠したものだと思っています。

上記の戦争は、現在の中国の政策で裏付けされたものでもなければ、極端な超国粋主義者の見解にすぎないかもしれないです。しかし、戦争によって領土を回復しなければならないという主張は、長い間中国で言われてきたことです。

中国(中華民国)政府公認の1938年「中国の屈辱」地図は、上記記事が主張する領土と驚くほど一致しています。この地図の中国が「失った」領土には、ロシア極東、琉球諸島、台湾及び南シナ海のみならず、韓国、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、マレー半島とシンガポール、ネパール、パキスタンの一部及び中央アジアの殆どが含まれています。

「中国の屈辱」地図
中国の主張する領土が、今日の中国の国境を超えて70年以上前に遡ることや、中国の超国粋主義者の言い分を読むにつけ、我々は、これらの地域に住む人々が、恐怖を感じたり危険に晒されたりすることがないようにしなければならないだろう、と論じています。

中国の戦略は、中長期的です。上記の論説で紹介された記事のように、50年間で6つも戦争をしかけては中国ももたないと思いますが、中国人民解放軍は、ハードな軍事戦争のみならず、「三戦」(心理戦、情報戦、法律戦)と呼ばれるソフトな戦争もしかけます。更に、今日では、経済や文化も重要な手段となり、人海戦術も活用しています。

5カ年計画、10カ年計画は、中国共産党の一政権の期間であり、中国にとっての中期、長期は、50年、100年の戦略計画となります。

欧米や日本等の民主主義国は、単年度予算かつ政権も4年位の任期で(最近まで日本の政権は1年位でした)、中長期は、5~10年の計画となります。

ただ、 50年、100年の戦略計画は、たとえそれが国家による計画といえども、あまりに長期です。そもそも、そのようなスパンでは、計画当初の中共幹部のほとんどが、亡くなっているか、引退しているはずです。それに、最初の想定から、世界情勢や技術水準などあらゆる想定が異なるものなり、ほとんど無意味な計画になるでしょう。
現実的には、やはり5年〜10年の計画でしょう。このブログでは、中国海軍のロードマップを紹介したことがあります。それによれば、中国海軍は既に尖閣列島を含む第一列島線を傘下に収め、今年は第二列島線を我がものに収めることになっています。ご存知のように、尖閣諸島すら奪取できない今日、これはもうほとんど絵に描いた餅にすぎません。
私は、習近平自身もこれらの計画が計画通りに進むなどとは思っていないと思います。そんなことより、我々が危惧すべきは、プーチンによるクリミア統合のようなことが、習近平によってなされる可能性です。
2018年ロシアの大統領選挙のとき、プーチンの支持率かなり高いものでした。その4年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したことに対する欧米からの経済制裁。そして主力の輸出品である原油の価格低迷。ロシアは当時も、厳しい経済状況を抜け出せずにいました。

国民の可処分所得は4年連続で落ち込み、最低生活費よりも低い所得で生活している人は、この4年間で400万人以上増加しました。国民の生活実感はなかなか改善されないのが現実でした。

それにもかかわらず、当時、プーチン大統領の支持率は80%台で推移。モスクワでは2017年12月、プーチン大統領を題材にした絵画や彫刻などを集めた美術展覧会「スーパープーチン」も開かれるなど、人気にかげりは見られませんでした。2018年の大統領選挙でプーチンは、通算4期目の当選を果たしました。

2017年12月開催された美術展覧会「スーパープーチン」

それは、やはり戦争を起こし、それに勝利したことが大きいでしょう。戦争は、多くの国民に愛国心を燃え上がらせる一つの手段でもあります。この戦争がなければ、あるいはこの戦争に負けていれば、プーチンは今頃引退していたかもしれません。

私は、このようなことを習近平も考えるの可能性は十分あると思います。このブログでも何度か紹介されていただいたように、中国は自国の都合で動く国であり、そもそも外交などあまり重視していません。

本来戦争は、外交手段を尽くしても解決できない他国との争いを解決するための手段の一つに過ぎないのですが、習近平は対外活動を強硬路線の最強の手段として、戦争を選ぶ可能性は十分あります。そうして、その目的は、習近平自身の統治の正統性を強化することにあります。

そもそも、習近平は、建国の父毛沢東や、経済改革を実現した鄧小平などのような大きな実績はありません。だから、統治の正統性は、どうしても弱いところがあります。

中国では、ロシアのように選挙がありませんが、だからこそ、誰の目にも明らに統治の正当性を主張し、特に共産党の中で自己の正当性を主張する必要があります。

上に掲載した六つの戦争のうち、いずれかの戦争を行い、勝利すれば、習近平の統治の正統性は飛躍的に高まり、当面大きな権力闘争などしなくてもすむようになります。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点でいずれかの戦争を行い、それに勝利すれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となります。

ですから、今年中にもいずれかで局地戦争が起こる可能性は、十分にあります。習近平としても、大きな冒険はしたくないので、米国と直接対決せざるを得なくなるような戦争はしないと思います。

中国とソ連は1929年と1969年に国境紛争をしており、1969年の時は核戦争一歩手前まで行った
台湾統一戦争、南シナ海の領土回復戦争、尖閣諸島奪取などは、米国が直接絡みます。もしこれらが、攻撃されれば、米国はすぐに反撃に出る可能性があります。ロシアに奪取された領土の回復戦争もやりたくはないでしょう。

中露は互いに友情は感じていないかもしれませんが、それにしても、国連などでは、中国に賛成する数少ない国の一つでもあります。それに過去には、中ソ国境紛争という苦い経験もあります。

そうなると、チベット南部のインドからの領土回復戦争あたりが手頃でやりやすいかもしれません。

これは、インドにとっては脅威ですが、中国に対抗する勢力にとっては、一つのチャンスかもしれません。これを完膚なきまでに、打ち負かせば、習近平の統治の正統性は地に落ちることになり、失脚する可能性もあります。

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2019年11月3日日曜日

中国共産党は「国際支配」求める、ポンペオ米国務長官―【私の論評】米国は中国による前代未聞の世界秩序への挑戦を阻止する(゚д゚)!

中国共産党は「国際支配」求める、ポンペオ米国務長官


香港(CNN) ポンペオ米国務長官は3日までに、中国共産党は「国際支配」を欲しており、外国諸国を自らの側へ引き込もうとする「世界的なキャンペーン」に着手したとの見方を表明した。

米ニューヨークのハドソン研究所での演説で述べた。増大する米中間の競争関係をめぐり今後数カ月間、複数回の演説を行う方針も示した。

長官はこれらの演説では「競合するイデオロギーと価値観が米国と世界に及ぼす影響力に言及する」とし、中国共産党は闘争と世界支配を狙うマルクス・レーニン主義の党であると強調。「我々は中国指導者の発言に注視する必要がある」とも主張した。

ただ、米国は中国を「戦略的な競争国家」と明瞭に位置付けながらも、「対立」は求めていないとも説明。「実際は反対のことを望んでおり、自国の国民や隣国の国民と平和な状態にある、繁栄する中国を目にしたい」と指摘。「自国民の非凡な才能が栄えることを許す自由化された中国を見てみたい」とも期待した。

ポンペオ長官の今回の発言に対し中国外務省の報道官は「悪意をもって中国を非難している」と反論。「米国の一握りの政治家が抱く根深い政治的偏見と反共産主義を十分に反映している」と反発した。

米中関係は過去2年間、貿易や香港情勢などを含めさまざまな分野で対立が目立っている。

【私の論評】米国は中国による前代未聞の世界秩序への挑戦を阻止する(゚д゚)!

中国では昨年6月22~23日に、外交政策に関する重要な会議である「中央外事工作会議」が開催されました。同会議は、これまで2006年と2014年の2回しか開催されたことがないです。

今回は、習近平(共産党総書記、国家主席)以下、中国共産党政治局常務委員7人全員、王岐山国家副主席、崔天凱駐米中国大使らが参加しており、会議の重要性が窺われます。

昨年6月22~23日に、開催された「中央外事工作会議」

会議で、習近平は、中国が今後のグローバル秩序の構築において主導的役割を果たすことを明確に打ち出す演説をしました。同年6月24日付け人民日報等が報じています。習近平の演説には、以下のような注目すべき内容が含まれていました。
・新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を指導方針とする 
・グローバルな統治の刷新を主導、より完全なグローバルパートナー関係のネットワークを構築 
・中華民族復興と人類の発展を軸に、人類運命共同体の構築を推進 
・一帯一路構想、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の推進 
・巧妙に策をめぐらし、安定した発展的な大国外交の新たな局面を開くよう努力 
・周辺国への外交工作をうまく行い、周辺の環境を中国に友好的で有利なものにする 
・国家の核心的利益と重大な利益を死守する 
・多くの途上国は、中国外交にとり天然の同盟軍である
これは、中国が既存の秩序に代わる国際秩序を構築するという宣言であると言えます。既存の秩序は、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守といった諸価値に基づくものです。

これに対し、習近平が演説で示す外交方針は、「社会主義外交思想」に基づくものであるということですから、既存の秩序とは大きく異なった、中国中心の秩序を目指すものと理解できます。

中国は、南シナ海問題への国際仲裁裁判所の判決を「紙くず」と評したような国です。また、「民族の復興」や「核心的利益」は、台湾の武力併合を含んでいます。そうした中国が目指す国際秩序に懸念を抱かざるを得ないです。

「人類運命共同体」は、重要なキーワードの一つです。これは、昨年3月の憲法改正で、新憲法にも盛り込まれた概念です。中国は「人類運命共同体」という言葉を精力的に国際社会に売り込もうとしています。

一昨年1月には、習近平はダボス会議と国連ジュネーブ本部で「人類運命共同体の構築」を謳った演説をしました。昨年3月には、中国の主導により、人権状況の批判に際して、地域の特性、歴史、文化、宗教などの背景に留意するよう求める「互恵協力決議」が、国連人権理事会で採択されましたが、同決議にも「人類運命共同体」の文言が含まれています。
「前進の道のりにおいて、われわれは平和発展の道を堅持、互恵ウィンウィンの開放戦略を遂行し、世界各国の人民と共に人類運命共同体の建設を推進していく」。
「人類運命共同体」の内容は、まだ、あまり具体的に示されているわけではないですが、相互尊重・平等な協議、相互理解、公正・公平、互恵、文明の多様性尊重、環境保護などが含まれているようです。

「文明の多様性尊重」は、一見もっともですが、「互恵協力決議」が示唆するように、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守を普遍的価値とみなす現行の国際秩序に注文をつけているとも解釈できます。

習近平は、一昨年の第19回党大会で「人類運命共同体」の説明として、冷戦思考の放棄、同盟の代わりにパートナーを組む、などのことも言っています。

これは、米国を中心とする同盟ネットワークへの対抗を意味するようです。なお、一昨年1月15日付けの人民日報は、人類運命共同体について「中華文明に根差した外交理念」と解説しています。華夷秩序を連想せざるを得ないような表現です。中国が目指す「人類運命共同体」の具体的内容が如何なるものになっていくのか、注視していく必要があります。

ちなみに「人類運命共同体」などの言葉最初にでてきたのは、2015年9月29日の人民日報のようです。人民日報は2015年9月28日に「中国国家主席習近平がニューヨークの国連本部で一般討論演説を行い、協力・ウィンウィンを核心とする新型の国際関係を構築し、人類運命共同体を築く必要性を強調した」と報道しています。

ただし、その頃は米国はオバマ政権であり、中国の危険な意図に脅威を抱くまでにはいかなかったようです。無論一部の人は、その頃から脅威に感じていましたが、大きな声にはなりませんでした。やはり、米国がこれを大きな脅威とみたのは、昨年の「中央外事工作会議」の後の習近平の演説によってです。これによって、米国では一気に超党派で中国に対峙しようという雰囲気が醸成されたようです。

先の中央外事工作会議における習近平の演説では、一帯一路、AIIBの推進とともに、「途上国は中国外交にとり天然の同盟軍」という表現も目を引きました。理念として「人類運命共同体」を掲げつつ、一帯一路やAIIBにより途上国を中国の影響下に置き、中国中心のグローバルガバナンスを目指すということであると推測できます。

中央外事工作会議に関しては、昨年もこのブロクで解説しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国がこれまでの国際秩序を塗り替えると表明―【私の論評】中華思想に突き動かされる中国に先進国は振り回されるべきではない(゚д゚)!

この記事は、2018年7月6日金曜日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみ引用します。
日本をはじめとした先進国は、様々な利害の衝突もありますが、それにしても中国による世界秩序に対して譲れない部分があるはずです。特に、民主化、経済と政治の分離、法治国家化という概念は、絶対に譲れないところでもあります。 
そうして、この部分が何が何でも譲るべきではありません。中国が、チベット、ウイグル、内蒙古、満州などの本来の外国の領土であるところを除く自国の本土のみで、中国の価値観を実現するのはある程度許容できるところもあるかもしれません。 
しかし、現在は19世紀ではなく、すでに21世紀です。現在に至るまで、古代の妄想を引き継いでいるのは、不合理だし、異様でもあります。 
そうして一帯一路やAIIBにより、他国にまで中華思想を押し付けるようなことが絶対あってはなりません。さらに、中国人民も中国の体制に虐げられることは本来防がなければならないはずです。 
やはり、先進国は、米国と協調して、中国の現体制を崩壊に向かわせるべく努力すべきです。特に、妄想ともいえる、中華思想は必ず打ち砕かなければなりません。
ポンペオ長官による"中国共産党は「国際支配」を欲している"という発言は、当然のことながら、習近平の「中国が既存の秩序に代わる国際秩序を構築するという宣言」を指しているものと思われます。

私は、中国が世界征服をしようとしているとまでは思いませんが、中国が自らにとって都合の良い新たな国債秩序をつくろうとしていることは明白であり、それを米国が排除しようとしているのは当然のことだと思います。

中国が新たな世界秩序をつくるということは、日本やEUなども含まれる、米国を頂点とする世界秩序を破壊して、中国による秩序を作り出すということであり、そんなことを中国の都合だけで実行されてはたまったものではありません。

演説するペンス副大統領

10月24日には、このブログにも掲載しましたが、ペンス米副大統領は「中国は人々の自由と権利を抑圧…結局は軍事だ」、対中強硬論を述べていましたが、今回のポンペオ長官の発言ともあわせて考えると、米国は中国による新たな世界秩序の構築を米国への挑戦と見据えて、これを阻止することを決断し、その意思には全く揺らぎがないことを宣言したと受け取るべきです。

そうして、この動きは、米国においては超党派の動きであり、すでに米国の固い意思となったと受け取るべきです。次の大統領がトランプ氏であろうが、誰であろうが、変わりません。

米中通商交渉等で一時妥協したようにみえることもあるかもしれませんが、もそれは一時の戦術的なものに過ぎず、戦略的には中国が現在の世界秩序にあわせて、自らを変えるか、それを中国が拒否するなら、世界秩序の変更に二度と挑戦できないくらいまで、中国経済ならびに軍事力が弱体化するまで、米国は対中国冷戦を継続するでしょう。

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2019年6月29日土曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 参院選の自民議席、数量分析から予測すると...―【私の論評】次内閣改造で麻生氏が財務大臣にならなければ、官邸は財務省に挑戦し始めたとみなせ(゚д゚)!


解散恐怖症で党首討論を無為に費やした野党

    2019年6月26日、国会が会期末を迎えた。これで、7月4日公示、21日投開票が確定した。

    今国会での法案提出は新規57本、そのうち54本が成立した。与野党の対決法案は少なく、今国会はいつでも「解散可能」な状態だった。このため、野党はかなりビビった。19日の党首討論でも、解散せよと迫る野党はほぼなく、党首討論で安倍首相が解散しないと確信すると、形式的に内閣不信任決議案を後出しで出す始末だった。

    はっきりいって、党内事情から解散を迫れない野党は、自民党にとってはこわくない。それは、党首討論において安倍首相が余裕綽々だったことからもわかる。

マスコミが年金問題を「煽る」理由

自民党にとって恐ろしいのは世論である。消費増税を10月と決めたので、選挙では逆風もあるだろう。マスコミは消費増税を賛成し軽減税率をほしいので、年金問題が自民党にとって逆風要因と書くだろう。しかし、年金で老後のすべてを面倒見るとは不可能であることを国民は知っている。「年金」と煽っているのは、消費増税を目立たなくしたいマスコミなのだ。

年金問題を煽るマスコミ

ともあれ、消費増税が決まったので、いくらマスコミが書かなくても、国民には不満がたまってくる。実際、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の少し前から、テレビで軽減税率を見込んだCMが出始めた。これから、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。

そうなると、国民の怒りがでてくる。実際、21~23日にNHKが実施した世論調査までは、内閣支持率は前回調査より6ポイント減少し42%、自民党支持率は5.1ポイント低下し31.6%になった。

筆者は、数量分析を専門としているので、経済のみならず、外交軍事から感染症流行まで幅広く分析対象としているが、選挙も例外ではない。いわゆる選挙予測である。この分野は、日本では政治評論家が地道に足で調べた結果ばかりである。足で調べたというものの、ごく少ないサンプル調査でしかない。マスコミはそうした人からの「独特の分析」を掲載している。各政党も独自に調査をしているが、はっきりいってコストパフォーマンスはそれほど良くない。筆者はそうした調査を否定する者ではないが、別のアプローチで選挙予測をする。それは、内閣支持率と自民党支持率から統計的に算出するものだ。

「青木方程式」を活用してみる

政界には、「青木方程式」というものがある。自民党の青木幹雄・元参院議員会長の持論で「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を切ったら、政権は終わり」というものだ。内閣支持率と政党支持率は、過去の国政選挙の自民党の議席獲得率ともかなり密接な関係があるので、それを活用して、選挙予測に使うのだ。

直近の調査でなく前月の調査結果から、予測される議席数は50台の半ばだったが、今は40台の後半にまで落ち込んでいる。これから、消費増税がさらに露出すると、さらに獲得議席は落ち込む可能性も否定できない。

今週はG20で安倍首相のテレビ露出はかなり大きくなる。ただし、投開票の7月21日まで、消費増税の露出が大きくなる中で、どこまで持ちこたえられるか。補正予算などの追加措置をいうだろうが、となるとなぜ消費増税なのかという不満がさらに増すかもしれない。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「日本の『老後』の正体」(幻冬舎新書)、「安倍政権『徹底査定』」(悟空出版)など。

【私の論評】次内閣改造で麻生氏が財務大臣にならなければ、官邸は財務省に挑戦し始めたとみなせ(゚д゚)!

国会は26日に会期末を迎えました。25日に野党側から衆議院に提出された内閣不信任決議案は否決されました。与野党の攻防の舞台は7月の参議院選挙に移りました。

今国会に提出された法案を見ると、5月以降はほとんど法案の審議がない状況でした。そのためいつでも解散できるような状態でしたが、結果的に安倍総理はしませんでした。なぜかということは、安倍総理しかわかりません。

ただし推測すると、これは解散するときに消費増税は延期もしくは凍結という話が出るでことになったでしょうが、麻生財務大臣としては、消費増税を実施したいという強い意向があり、これ優先したのだと思います。

結局、安倍総理は、財務省の文書変更、書き換えがあっても、普通ならば大臣の首は飛ぶところですが、それでも安倍総理は麻生財務大臣を守りました。次官のセクハラがあったときも守りました。

昨年の財務省の不祥事と人事をめぐる動き

徹底的に安倍総理は麻生大臣守ったのです。政権運営のためには、麻生大臣は切れなかったのでしょう。財務省もそれをよく熟知し、そこにつけ込みし消費増税の話を仕込んだのではないでしょうか。そう考えないと筋が通りません。

国会開催中でないと衆議院解散はできませんから。国会が終わったら衆議院は開かれないので、解散ができませんから、衆院解散、衆参同時選挙の芽は完全になくなったとみるべきでしょう。

消費増税の内容は、骨太の方針に先週21日に掲載されました。行政手続き論的には、骨太の方針の6月21日に閣議決定して、消費税増税もう決まりです。

その前にそういう動きになっていて、あとは手順だけでした。今回のこの動きは、財務省の影響力がかなり大きいです。

財政審議会の建議というものがあります。昔は財政審の建議が出て、それが経済運営の基本だったのですが、2001年から「骨太の方針」が出て、建議の意味があまりなくなりました。

「骨太の方針」のだいたい3週間くらい前に建議出すことになっていたのです。前に出さないと意味がないですから。いままで最短でも2週間、多くは1ヵ月というときもありましたが、3週間が普通でした。でも今年(2019年)は何と、建議が6月19日でした。そうして、骨太の方針が閣議決定されたのが、21日でした。

21日、19日、これはほとんど同時です。ということは、完全に財務省の官僚が予算のコントロールできて、それを実行したということです。

従来予算編成は財務官僚が完全握っていた時期がありましたが、それを大枠だけでも政治主導でやって行こうというのが「骨太の方針」の趣旨でした。

財務省の財政審の建議が3週間前に行われていたということが、財務省があまりパワーを持っていなかったことの証左でした。ところが、今回は21日と19日、ほぼ同時です。もう完全に財務官僚が予算編成のパワーを持ったということです。

メディアの報道を見ていると、安倍政権は長期政権となり、官邸主導だから行政が歪められているようなことを報道してますが、むしろ逆行してしまいました。2000年からの財政審の建議の日と骨太を見れば、3週間前という綺麗な関係があるのに、今年に限って2日です。こうなってしまうと、消費増税増税も確実に実施されることになります。

麻生氏は、安倍政権のなかの政権運営のための重要人物ですからから、財務大臣である麻生氏を経由して様々なことを財務省ができたのではないでしょうか。

安倍総理と麻生財務大臣

消費増税をして、経済は当然冷え込むだろうと多く人が指摘しています。少しでも冷え込みを回避するために補正予算を組もうと思っても、それすら財務省が緊縮路線ということになるととんでもないことになる可能性もあります。

補正予算でいちばん簡単なのは、国債費を積み増しして、だいたい2兆円くらい余計に積んでいます。それをそのまま使うことです。国債費をたくさん積んでも金利は低いですから、実は不要だと使わなくなるのが普通です。そうなると後で減額修正しなければならなくなります。

減額修正するのだったら、それを補正で使うのが普通のパターンです。これがいちばん簡単なやり方です。ただし、そもそも2兆円では焼け石水ですし、さらに財務省がそうするかどうかはなはだ疑問ですし、もし財務省がそうしなければ、とんでもないことになります。無論経済は悪化し、デフレに舞い戻るのは必至です。

いずれにしても、現在内閣支持率が落ちているところにきて、与党は増税を前提として、参院選を戦わなければならなくなります。そうなると、冒頭の記事にあるとおり、「前月の調査結果から、予測される議席数は50台の半ばだったが、今は40台の後半にまで落ち込んでいる。これから、消費増税がさらに露出すると、さらに獲得議席は落ち込む可能性も否定できない」ということになりかねないです。

さらに、今後自民党総裁の任期が満了する21年9月末までの間で「解散カード」を切る時期は限られてきます。しかも、これが増税の後に行われることになれば、やはり政権の支持率が落ちかなり不利な情勢になります。

参院選後の10月には消費税率が10%に引き上げられます。党内には「増税前にやらないと難しくなる」(中堅議員)との見方があります。しかし、7月21日投開票の見込みの参院選後には議長をはじめとする参院人事や内閣改造が行われます。

このようなことが予め予想されているのですが、政権運営のためには麻生氏切りで財務省の力を鈍化させることはできないという、ジレンマに安倍総理はさらされているのです。

こうなると、参院選挙後の内閣人事が注目されます。このときに麻生氏が財務大臣にならなければ、安倍政権は何らかの活路を見出して財務省に対して戦いを挑み始めたということです。

何らかのウルトラCで、10月増税を阻止するか、それができなくても、ひよっとして短期間のうちに、10%増税から減税するかもしれません。

仮に、今回の参院選挙後の内閣改造でなくても、その後の内閣改造で、麻生氏が財務大臣にならなければ、その芽はでてきます。そうでないと、経済は悪化の一途をたどり、憲法改正もできず、おそらく安倍内閣はレイムダックになることでしょう。

それと同時に、財務省の実体も最近では一部のメディア様々に報道されるようになってきたため、財務省に対する国民の不満もつのることになるでしょう。最近は、テレビをワイドショーで以前は財務官僚を「リスペクト」すると言っていた、弁護士のコメンテーターが、財務官僚を批判していて、時代の変化を感じました。そのことは、安倍総理が一番知っていることでしょう。なんとかして、安倍総理に活路を見出していただきたいものです。

それにしても、日本では財務省が政治のネックになっていることは確かです。財務省は、本来会社でいえば、財務部のようなものであり、会社の一部門にすぎません。ところが、これが実質的に金の力で、取締役を支配しているような歪な構造になっています。これはいずれ何とかしなければならない最大の課題です。

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2017年3月14日火曜日

【東京MXニュース女子問題】検証番組公開「なぜ韓国や朝鮮の人が反対運動しているの?」の疑問はヘイトスピーチか―【私の論評】問題の本質は既存メディアが実態を報道してこなかったこと(動画付)!


東京MXテレビが入る半蔵門メディアセンター=東京都千代田区
沖縄の米軍基地反対運動を扱った内容に批判が出た東京MXテレビ(MX)の番組「ニュース女子」について、同番組を手がけるDHCシアターが独自に制作した検証番組が13日夜、公式サイトで公開された。司会を務める東京新聞の長谷川幸洋論説委員は、同番組への反響を振り返ったうえで、何が問題だったのかを6項目に分けて検証した。

DHCシアターの検証番組は、「ニュース女子 特別編 マスコミが報道しない沖縄続編」のタイトルで、午後11時から配信を開始。批判を受けた1月2日の放送について、番組スタッフが2度にわたり沖縄を訪れ、事実関係などを再取材したという。

番組では、「ニュース女子の何が問題だったのか」について、6項目に分けて分析。(1)高齢者を「逮捕されても生活に影響がないシルバー部隊」と表現したこと(2)一部の基地反対派の活動を「テロリストみたい」と表現したこと(3)「なぜ韓国や朝鮮の人が反対運動しているの?」と疑問を投げかけることはヘイトスピーチなのか(4)(出演した軍事ジャーナリストが)高江のはるか手前の「二見杉田トンネル」で危険だと引き返したこと(5)「反対派は日当をもらっている!?」と疑問を呈すること(6)「反対派は救急車の通行も妨害している」という証言の真実性-の6項目について検証した。

【私の論評】問題の本質は既存メディアが実態を報道してこなかったこと(動画付)!

ブログ冒頭の記事では、分析結果までは掲載されていません。まずは、皆さんの目と耳でご自身で確かめていただくために、以下に問題になっているニュース女子の当該番組と、この番組の検証番組を掲載します。

まずは、「ニュース女子」の沖縄取材番組の動画を以下に掲載します。この元の動画はリンク切れになっていましたが、現在でもYouTubeに掲載しています。動画の説明では、CMを差し替えて再UPしたとされています。



以下に、この番組にに関する検証番組の動画を以下に掲載します。



「ニュース女子」は17年1月2日の放送で、「過激な反対派の実情を現地取材」などと題し基地反対派の活動を批判的に取り上げました。番組では反対派を「テロリストみたい」と表現したほか、抗議活動をする人々が「日当をもらっている」などとも伝えていました。

こうした同番組の放送内容には、インターネット上を中心に「沖縄ヘイトだ」「人種差別だ」などの批判が相次ぎ、BPO放送倫理憲章委員会が2月10日に審議入りを決定していました。その後、MX側は2月27日に公式サイト上で見解を発表し、
「事実関係において捏造、虚偽があったとは認められず、放送法および放送基準に沿った制作内容であった」
と説明。その上で、再取材などに「数ヶ月の制作期間」を取った上で、検証番組を放送する予定だとしていました。

こうした状況の中、番組を制作したDHCシアター側がYoutubeなどウェブ媒体で限定放送したのが今回の検証番組です。冒頭のVTRでは、批判を集めた1月2日の放送について、「はたしてそれはデマだったのか」「はたしてそれはヘイトだったのか」を疑問視するナレーションが読み上げられました。

このVTR終了後、スタジオでは番組がBPO審議入りした点が話題に。これについて、司会を務める東京新聞論説委員の長谷川幸洋氏は、BPO側が放送内容を問題視する勧告や見解を出すことを決定した「審理」ではなかった点を強調し、
「要するに、軽い方ですよ」
と笑いながら話していました。

また、問題の放送の中で取り上げられた市民団体「のりこえねっと」代表の辛淑玉(シン・スゴ)共同代表にも出演依頼を出したというのですが、スケジュールの都合で出演できなかったとも説明していました。
「沖縄タイムスや琉球新報だけでなく色々な意見がある」
番組では、1月2日の放送で問題になった点について、
「一部の反対派を『テロリストみたい』と表現したのは問題だったのか?」
「『反対派は日当を貰っている!?』と疑問を呈するのは問題?」
など、全部で6つのポイントに分けて個々に反論しました。

問題の放送の中で特に批判が殺到した「テロリストみたい」との発言については、テロリストという言葉の辞書的な定義(「政治的目的のために、暴力あるいはその脅威に訴える傾向」)を引用し、その直後に反対派が激しく活動する様子をおさめたVTRを放送。その上でスタジオでは、辞書的な定義からみれば問題がなかった、と結論付けました。

また、反対運動の参加者が「日当をもらっている」と伝えた点については、再取材の結果、日当を貰って活動をしていた「知り合いがいる」という人が、「次から次へと出てくる状況でした」とVTRで説明しまし。ただ、実際に日当を貰った経験があるという人物に直接的に取材することは「できなかった」とも伝えました。

沖縄の基地反対運動、琉球独立運動に極左暴力集団のノボリが・・・・・
この問題をめぐってスタジオでは、反対派に日当が渡されていることを取材した経験がある出演者が次々と「現金が渡されていることは事実」などとコメント。こうした意見を踏まえた上で、出演者の間では「(資金援助ではなく)『日当』という言葉を使ったことが問題か?」といったテーマで議論が交わされました。

総じて、番組では若干の「反省」を織り込みつつも、全体としては検証や再取材を加えた上で、放送内容への批判に対して強く「反論」する部分が目立っていました。こうした検証番組の終了間際には、番組に出演していたタレントの吉木りささんが、
「今回の放送を通じて、より公平に、ちゃんと事実に基づいて報道することが大事なんだなとわかりましたね」
とコメント。また、沖縄問題に詳しいジャーナリストの大高未貴さんは、「(沖縄の中でも)沖縄タイムスや琉球新報だけでなく色々な意見があるのだから、いろんな声を拾って取材してほしい」という現地住民のコメントを紹介しました。

私自身は、「ニュース女子」の沖縄取材番組と、その検証番組も見ましたが、結局のところ既存メディアが臭いものは蓋方式で、沖縄の基地反対運動に対してまるで腫れ物にさわるように一切報道してこなかったことこそが大問題であったことが明らかになったと思います。

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2016年2月7日日曜日

北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言―【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?

北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言




北朝鮮は7日正午(日本時間午後0時30分)、国営メディアの「特別重大報道」を通じて「地球観測衛星『光明星-4』号を軌道に進入させるのに完全に成功した」と報じながら、長距離弾道ミサイルの発射実験が成功したことを宣言した。

同通信は「『光明星-4』号発射の完全成功は偉大な朝鮮労働党の科学技術重視の政策の党機関紙・結実であり、自主的な平和的宇宙利用権利を堂々と行使して国の科学技術と経済、国防力を発展させていくことから画期的な事変となる」と強調した。

朝鮮中央通信の報道全文は次の通り。(※編集部訳)

朝鮮国家宇宙開発局 地球観測衛星「光明星ー4」号を成果的に発射したことに関連した報道を発表
【平壌2月7日発 朝鮮中央通信】朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局の科学者、技術者は国の宇宙開発5カ年計画、2016年の計画に基づき、新たに研究開発した地球観測衛星「光明星-4」号を軌道に進入させることに完全に成功した。
運搬ロケット「光明星」号は、主体105(2016)年2月7日9時に平安北道鉄山郡東倉里から発射されて、9分46秒である9時09分46秒に地球観測衛星「光明星-4」号を軌道に正確に進入させた。 
「光明星-4」号は、97.4゜軌道傾斜角で、近地点高度494.6キロ、遠地点高度500キロの極軌道を回っており、周期は94分24​​秒である。 
「光明星-4」号には、地球観測に必要な測定機材と通信機材が設置されている。 
「光明星-4」号打ち上げの完全成功は、偉大な朝鮮労働党の科学技術重視政策の誇らしい結実であり、自主的な平和宇宙利用の権利を堂々と行使し、国の科学技術と経済、国防力を発展させていく(注:太字はブログ管理による)うえで画期的な出来事となる。 
太陽朝鮮の最大の民族的祝日である光明星節(訳注:金正日氏の誕生日)の日が日々近づきつつあり、2月の澄んだ青い春の空に刻まれたチュチェの衛星の恍惚とした飛行機雲は、われわれの宇宙科学者、技術者が偉大な金正恩同志と尊厳高きわが党が、わが国と人民に捧げる最もきれいな忠誠の贈り物である。
朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は、偉大な朝鮮労働党の科学技術重視政策を高く奉じ、今後もチュチェ衛星をより多く万里大空に打ち上げるだろう。 
チュチェ105(2016)年2月7日 平壌
【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?

北朝鮮は従来は、事実上の長距離弾道ミサイルの打ち上げであっても、『地球観測衛星』の打ち上げとしか発表しませんでしたが、今回は「国防力を発展させていく」とも発信しており、長距離弾道ミサイルの発射実験が成功したことを宣言しました。

この強引な、人工衛星打ち上げの背後には何があるのか、本日の産経新聞に以下のような記事がありました。
【正恩支配 何が起きた】「核実験…中国に見せつけてやる」 若き指導者が自信を深めた3つの理由とは?
平壌で開かれた朝鮮労働党と朝鮮人民軍の拡大会議に出席した金正恩第1書記(中央)。
右から4人目が金英哲氏とみられる人物(労働新聞のウェブサイトから)
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、若き指導者が自信を深めた3つの理由を以下に要約して掲載します。
  1. 核実験の名分にも「米の敵視政策」への自衛を掲げるとともに、「われわれが最も警戒しなければならない国」と中国を名指ししている。中国の思い通りにならないという断固たる意志を見せつけてやるために、元帥(金第1書記)の指示で水爆実験を実施した。
  2. 正恩政権は2012年に「6・28措置」と呼ぶ経済策を打ち出し、農業改革に取り組んできた。取れ高の一定割合を農民が自由に扱えるようにし、生産意欲を鼓舞するのが狙いだ。この成功を金正恩は過信している。
  3. 4日付党機関紙、労働新聞は、会議の席上、紺の人民服姿で金第1書記のそばに座る金英哲(ヨンチョル)氏を写した写真を掲載した。対北情報筋は、昨年末に事故死が発表された金養建(ヤンゴン)氏に代わって、対韓政策を統括する党統一戦線部長と書記を兼務したとの見方を示した。相次ぐ挑発で外交的な亀裂を招いたとして本来、問責されるべき人物が、対外交渉を担う最側近の地位を固めた。
 今回は本当に人工衛星打ち上げに成功したのでしょうか。これを確認するには、今後各国の観測結果などの公表を待つしかありません。

実は、北朝鮮の人工衛星打ち上げは過去にはすべて失敗しています。それに関しては、以下の記事をご覧ください。
一度も成功してない北朝鮮の「人工衛星」
辺真一(ピョン・ジンイル)氏
この記事は、コリア・レポートの編集長である辺真一氏によるものですが、この記事の中で、辺氏は、北朝鮮が「衛星」と称する発射は、1998年8月と、2009年4月、2012年4月、そして直近の2012年12月12日の計4度がありましたが、これらの打ち上げはすべて失敗であったことを信頼に足るエビデンスをもとに主張しています。

人工衛星の打ち上げというと、あの韓国ですら、打ち上げに初めて成功したのは、2013年1月30日のことです。

韓国は、人工衛星の打ち上げに2002年に着手して以来、2度の打ち上げ失敗を経て、この時についに「羅老号」による人工衛星打ち上げに成功しました。羅老号は、韓国の技術で開発した宇宙環境観測機能を装備した羅老科学衛星を載せて宇宙に飛び立ち、衛星を無事軌道に乗せた。31日の午前3時28分には、韓国科学技術院人工衛星研究センターにある地上局と羅老科学衛星が初交信に成功しました。

このの成功によって韓国は、旧ソ連、米国、フランス、日本、中国、イギリス、インド、イスラエル、イランに続いて10番目の衛星打ち上げ成功国になりました。

ロケット羅老
羅老ナロ朝: 나로호英: NaroもしくはKSLV-IKorea Space Launch Vehicle-Iロシアのクルニチェフ国家研究生産宇宙センターと大韓民国の韓国航空宇宙研究院 (KARI) が共同開発した人工衛星打ち上げロケットです

羅老は390人体制の専門人材により開発されたロケットで(韓国側だけの人数かどうかは不明)、ロシア国内で製造されるアンガラ・ロケットの第1段を基盤としており、射場となる羅老宇宙センターもロシアの技術援助のもとに設立されました。

韓国の人工衛星打ち上げロケットは、ロシアの技術を導入したものです。

最初の弾道ミサイルは、第二次世界大戦中のナチスドイツが開発したV2ロケットで、戦後ドイツにいた技術者や資料が、アメリカとソ連に流出し、ミサイルやロケット技術の発展に寄与しました。

北朝鮮のミサイル技術も、ソ連の流れを汲むものですが、すでに完成された技術をつかっており、精度を更新するための工夫はあっても、ほとんど進化していません。

とはいいながら、自前で、車や航空機を製造することができるある程度技術のある国にとっては、そうなのですが、発展途上国などではなかなかそうはいきません。

にも関わらず、北朝鮮が成功したしないは別にして、とにかく人工衛星発射に挑戦できるだけの技術基盤をどのようにして構築したのでしょうか。

無論、旧ソ連の技術を転用してたりしているはずですが、それにしても、特に韓国と比較して、著しく技術面でも、経済面でも遅れてしまった北朝鮮でなぜそれが可能になったのでしょうか。

それは、歴史を遡るとおのずと答えがでてきます。

大東亜戦中・戦前はご存知のように、朝鮮半島は日本に統治されていました。そうして、実は、日本統治時代、電源開発や工業化において、南朝鮮よりも、北朝鮮の方がはるかに進んでいました。

朝鮮と満洲の国境を流れる鴨緑江の水系には当時世界最大級の水豊ダムがあり、支流の赴戦江、長津江、虚川江にもダムがありました。

現代の水豊(スプン)ダム
このダムは太平洋戦争の泥沼化の中、1944年3月、水豊水力発電所(発電能力:60万kW)と共に竣工しました。この発電規模は当時の世界最大級であり1940年当時の日本国内の水力発電規模280万kWと比較してもその大きさは容易に比較できます。7基の発電機は各々約10万kWの発電能力を持っていたが、当時世界最大級の能力であり、製造を受注した東京芝浦電気(現在の東芝)は製造のために新工場を建設しました。

1945年8月9日、ソ連軍(赤軍)侵攻により、7基の発電機のうち5基を略奪されました。略奪された発電機は、カザフスタン共和国、イリティッシュ川(エルティシ川)上流のダムで確認されています。

朝鮮戦争中に雷撃を含む、アメリカ軍機の攻撃を受けたが、ダム構造が堅牢であったため決壊を免れました。ただしこの攻撃で北朝鮮では発電能力が激減し一時、広域にわたって停電しました。戦後に北朝鮮は発電能力を増強して復興しました。竣工から70年以上経過した現在もダム本体は大きな改修工事が行われず現役であり、現在も北朝鮮の重要なエネルギー源の一つです。なおダム湖は中朝国境となっていて、北側は中国領です。

戦中には、この電力を使い、北部の日本海に面した興南という地に、日本窒素肥料(現チッソ)が大規模な化学工場を建設し、硫安などの肥料を量産していました。

最近の北朝鮮の旅客機の客室乗務員 スカートの丈が短くなった
戦後、日本から莫大な工業資産を引き継いだ北朝鮮の経済は長い間、農業国の韓国より優位に立っていました。1975(昭和40)年の一人当たりの国民所得は、韓国120ドルに対し、北朝鮮は190ドルでした。しかし、その10年後、韓国580ドル、北朝鮮450ドルと逆転しました。

これは昭和40年の日韓国交正常化に伴う日本からの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を経済発展のために使った当時の朴正熈大統領をはじめとする韓国民の努力の成果でした。

北朝鮮はすでに日本統治時代の資産を食いつぶし、現在のような状況に陥っています。しかし、日本から受け継いだ工業技術などは細々とでも、引き継いできたのでしょう。特に、民生分野ではかなり立ち遅れてしまいましたが、日本統治時代の資産の上に、旧ソ連などの技術などを継ぎ足し、継承しているのだと思います。

だからこそ、発展途上国であり、経済的にも恵まれず、人民が食うや食わずの状態でありながらも、人民を犠牲にしてでも、軍事技術などは何とか維持発展させ、核兵器や弾道弾などの技術に挑戦できるのです。

もし、北朝鮮が日本の統治を受けておらず、中国の属国のままであったとしたら、今頃、核兵器や大陸間弾道弾などとは無縁の国であったことでしょう。技術的な基盤がまったくないところに、ソ連などの技術を移転したとしても、自前で核兵器や、大陸間弾道ミサイルなど、なかなか開発できるものではありません。

この事実は、マスコミ等ほとんど報道しませんが、紛れも無い事実です。

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