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2019年10月30日水曜日

トランプのバグダディ作戦成功に旧来メディアがびくつく本当の理由―【私の論評】反トランプのためなら、人殺しを聖職者にする、焼きが回った米国メディア(゚д゚)!


<引用元:フェデラリスト 2019.10.28>モリー・ヘミングウェイ編集主任による論説

旧来の報道機関は、米軍がISIS指導者のアブバクル・アル・バグダディに対する作戦に成功したというトランプ大統領の発表に、彼らのトレードマークである敵意と怒りで反応した。それというのも議論の余地なく良いニュースによって、外交政策を形成し、大統領を弾劾し、2020年にトランプを打倒するためのコーポレイト・メディア(企業の利益、価値観に支配された主流メディア)の目標が脅かされるためだ。

「昨晩は米国と世界にとって素晴らしい晩だった。残忍な殺人者、大変な困難と死を引き起こした人物が乱暴に抹殺された――彼が他の罪のない男性、女性、また子供を傷つけることは二度とない」「彼は犬のように死んだ。臆病者のように死んだ。世界は今はるかに安全になった」とトランプは27日、国民に伝えた。

ところがメディアは、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラディンに対する同様の作戦の成功を、オバマ大統領が発表した時のような称賛と興奮の反応は示さなかった。多くの報道機関は自分たちのベッドを汚すような態度を取ったが、その努力を代表するのがワシントン・ポストだ。まずバグダディを、政治的・宗教的反対者を残忍に強姦し殺害した人物ではなく、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱い、バグダディの死をどうにかしてトランプにとっての否定的な話として偏向解釈するにまで及んだ。実際次のように:


トランプ政権の成功の純粋な良いニュースを、掛け値なしにマイナスであるように偏向解釈しようとするには努力が必要だが、コーポレイト・メディアは果敢に挑戦した。それというのも、このような成功は彼らが国民の話題に無理やりねじ込もうとしている作り話を弱めるからだ。

1)肯定的な報道はトランプを倒そうというメディアの努力を損なう
コーポレイト・メディアは、少なくとも本当のニュース報道のために関心を投影することから、臆面のない政治活動家に変わってしまった。そのため彼らは――これまでの微妙に偏った解釈とは対照的に――議論の余地のない事実を伴う主要ニュースさえ偏向して解釈できる。

2016年大統領選挙はヒラリー・クリントンにとって屈辱的敗北だったが、政治的なメディアにとってもそうだった。報道機関は自分たちが高い給料をもらってニュースを書き、放送している選挙民を全く理解していなかった。彼らはトランプが勝つ見込みはないと自信たっぷりに断言し、ジャーナリストの基準を放棄することは、トランプがもたらす明白な破滅を理由として正当化できるのだと自分たちを納得させた。

ところがトランプ政権は内政と外政で成功の兆候を示してきた。メディアがこれまで達成はほとんど不可能だろうとしてきた雇用と賃金上昇も含めて、経済は好調だ。これは減税、税制改革、そして前例のない規制撤廃によるものだ。新たな戦争は起きなかったし、ましてやメディアが予測した世界が滅亡するような核戦争もなかった。長く延び延びになっていた中国との再調整は行われているところだ。

国にとっての良いニュースは、メディアとその政治的な仲間にとって悪いニュースなのだ。

大統領に対する戦争で彼らが利用できるツールの1つが、大統領の成功を誠実に報道することを否定することであり、そうした成功を誠実な形で話題にするようなニュース編集をすることがますます困難になっている。

2)ISIS創設者の死がメディアのシリア報道を複雑にさせる

急襲ニュース前の旧来メディアの態度は、彼らの大好きな土曜の夜の番組のオープニング・コントが最もよく表しているかもしれない。サタデーナイト・ライブ(SNL)の最初の寸劇はトランプ支持者をばかにし、トランプ集会での演説者という設定だった。あるネタではISISメンバーが、「あなたが自由にしてくれるまでシリアで収容されていた・・・ISISに雇用を取り戻してくれて感謝の意を表したい。ISISを再び偉大にすることを約束する!」というものだった。

そのパロディーは、ニューヨーク・タイムズの10月21日の「ISIS Rejoices As U.S. Withdraws From Syria.(米国のシリア撤退でISIS歓喜)」という記事とそう変わらないものだった。

記事は、シリア――オバマ大統領が十数回以上「地上軍」はないと約束したにもかかわらず、また議会がその場所での武力の行使を許可していないにもかかわらず、何千名もの兵士がいた国――からの撤退が関係する全員にとって最悪の事態になる、とするものだ。

トルコ、シリアのクルド人、ロシアなどとの協力を必要とした作戦成功の後、バグダディの死は少なくともその話を複雑にしている。トルコとの最近の出来事がこの目標達成に寄与したかもしれないということが、話を複雑にしている。シリア外に駐留していた部隊からデルタ・フォース(米陸軍の対テロ特殊部隊)が入ったことが、話を複雑にしている。そしてSNLがISIS撃破について大統領を批判していたまさにその瞬間にこの全てが起きたという事実が、話を複雑にしている。

超党派の外交政策コンセンサスがISISの増大と米国に対する勝利を断言していた中で、米軍は実際バグダディを捕らえるか、殺害することを計画していた。トランプの外交政策のアプローチに「かかわらず」このことが起きたと、メディアは偏向して解釈しようとしているが、その議論にはトランプ錯乱レジスタンスを離れては、ほとんど説得力がないだろう。

3)トランプの外交政策の成功はメディアの弾劾促進を損なう
弾劾の最大の擁護者はメディアであり、2016年大統領選挙とロシア共謀の作り話の失敗後、面目を保とうとしている。彼らが民主党に、困難に満ちた道のりだというのに手続きを開始するよう強制したようなものだ。

昨日の日曜朝の番組は――どこの局もどの司会者も――全て、弾劾の火にさらに油を注ぐ予定だった。実際には、イスラミック・ステート打倒のための戦いにおける大成功を報じざるを得なかった。

作戦を監督した大統領を弾劾することは、メディア、民主党、また他のレジスタンスメンバーからのノンストップの、数年にわたる運動を生き延びた大統領をただ弾劾することよりもさらに悪く見える。弾劾を存続させるためには、メディアはその話を軽視して、迅速に批判能力なく繰り返される民主党の論点に戻る必要があるのだ。

そういうわけでメディアはバグダディ発表の日に、ワシントン・ナショナルズのワールドシリーズの試合で、ファンが大統領にブーイングした話に急速に方向転換した。2016年に96パーセント(誇張ではない!)がトランプに反対し、その後選挙区に対する反対運動をしている町が大統領にブーイングした事が報道価値のある事であるなら、その理由は国や大統領のことを問題にするからではなく、自分たちのことを問題にしているからだ。

それでもそれが、自分たちにとって望ましい弾劾の促進に戻り、自分たちが愚かに見えるようにする話から離れるための手段なのだ。

政敵を倒したいと考えるメディアがいることは理解できるが、米国にとって間違いなく良く、国をもっと安全にする成果に対しては、もっとうまく怒りを隠してもいいだろう。

【私の論評】反トランプのためなら、人殺しを聖職者にする、焼きが回った米国メディア(゚д゚)!

上の記事は、少し翻訳が難くて、理解しづらいものとなっていますが、結局のところ米国メディアも日本のメディアがとにかく安倍嫌いであるのと同じように、トランプ嫌いであることを示しています。

このブロクでは、過去にも何度か米国メデイアの特徴について掲載してきました。その内容を理解していないと上の記事の内容も十分に認識できないかもしれないので、再度米国のメディアについて掲載しておきます。

米国の大手新聞は、すべてがリベラル系です。日本でいうと、朝日新聞や読売新聞のようなリベラル系の新聞です。日本でいうと、産経新聞のような保守系の大手新聞はありません。

日本で、朝日新聞や読売新聞のような新聞だけを読んでいると相当偏向しているので、日本の実体がわからなくなるのと同じく、米国で大手新聞を読むと米国の実体がわからなくなってしまいます。今回のトランプ政権のバクダディ排除のニュースに関しても、米国大手新聞新聞を読んでいると実体がわからなくなります。

上の記事では、その実体をワシントン・ポストなどを例にとって解説しているのです。確かに、新聞でも保守系新聞は存在するのですが、その全部が小規模な新聞社です。全部が、地方紙です。

一方米国の大手テレビ局は、FOXnewsだけが保守であり、他はすべてがリベラルです。そのため、あまり力はなく、結局のところ米国のメデイアの力や能力も加味すると、90%がリベラルメディアに占められているといっても過言ではありません。

そのような米国の大手メデイアだけから、情報の収集をすれば、日本でいえば、朝日新聞や読売新聞だけを読んで、産経新聞などは読まないというのと同じで、読者の考え方が偏向するのは当然のことです。

バクダディの排除に成功した、トランプ大統領に対する米国メディアの反応に関しては、一昨日にもこのブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石―【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!
排除されたISの指導者アブ・バクル・アルバグダディ
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に引用しておきます。
今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングですが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところでした。 
しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうです。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるでしょう。 
世論調査で、すでにトランプ優勢となっています。今回の出来事は、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わる程度のことではすまないような気がします。トランプ圧倒的有利という具合になり、今後の米国政局はそれを前提にしないと考えられなくなるかもしれません。
ちなみに、世論調査では今年の春の時点から複数の調査会社でトランプ有利という結果でした。

今月に入ってからは、1980年の大統領選以来、一度しか予測を外したことのないムーディーズ・アナリティカがトランプ勝利を予測しています。

このような状況ですから、米国民主党ならびにこれを応援する米国メディアには、よほど余裕がないとみえます。

だから、トランプ氏をできもしないことが最初からわかっているのに、弾劾しようとしてみたり、あろうことか、トランプ政権による、バクダディ排除の手柄も、単純に称賛することもなく、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱い、バグダディの死をどうにかしてトランプにとっての否定的な話として偏向解釈するにまで及んでしまったのです。

そもそも、今回のバグダディ排除の作戦は、ISの拘束下で死亡した援助活動家の米国人女性の名を冠した作戦名『カイラ・ミュラー作戦』でした。

ホワイトハウスは今回の作戦名が、2015年に死亡が確認されたカイラ・ジーン・ミューラー(Kayla Jean Mueller)さん(当時26)に敬意を表したものだったと述べました。

カイラ・ジーン・ミューラー

国際人道支援団体「デンマーク難民評議会(DRC)」で働いていたミューラーさんは、2013年にシリア北部アレッポで病院を訪問中に拉致され、翌14年に身柄をバグダディ容疑者に引き渡されました。その後ミューラーさんは、バグダディ容疑者から繰り返し性的暴行を受けていたとみられています。

ドナルド・トランプ米大統領はバグダディ容疑者の死を発表した会見の中で、ミューラーさんについて「若く美しい女性」だったと言及しました。

ISは、2015年2月にシリア北部ラッカ(Raqa)近郊で米軍主導の有志連合がISに対し実施した空爆でミューラーさんは死亡したとしています。ところが、ミューラーさんの死の具体的な状況は明らかになっておらず、遺体も発見されていないことから、両親のカールさんとマーシャさんは今も一抹の希望を抱いているそうです。

このような犠牲あり、さらにISによっては多大な犠牲を被った人たちが大勢います。命を落とした人も、多数です。

『カイラ・ミュラー』作戦でバグダディを追い詰めたとされる軍用犬

仮にも、米国のメディアがいくらトランプが大嫌いだからといって残忍な犯罪組織の指導者バグダディを、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱うというのは、あり得ないことです。焼きが回ったとしか思えません。

米国リベラル・左翼の人たちでも、バグダディを聖職者のように扱うことには抵抗のある人も多いと思います。

次の大統領選挙でも、米国メディアはどのようなことでも、利用して、ネガティブなトランプ報道を続けた挙げ句に、また大統領選の報道に失敗して地に墜ちるのではないでしょうか。

このようなことを繰り返しているうち、米国メディアは多くの人から信頼を失い、崩壊するのではないでしょうか。

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2019年3月26日火曜日

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」―【私の論評】本当の中止の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」

岡崎研究所

 米国防総省は3月2日、二つの大規模な米韓合同軍事演習の中止を発表した。一つは「Foal Eagle(フォール・イーグル)」で、40年間毎年空軍と海軍の参加も得て通常兵器による陸上での紛争を模擬実験してきた。2017年には韓国駐留の2万8000人に加え、3600人が参加した。二つ目は「Key Resolve(キー・リソルブ)」で、これは北朝鮮の攻撃後に不可欠な司令部を作るためのコンピュータ・シュミレーションを行うものである。これらは、規模を大幅に縮小した演習により代替されることになる。

2017年米韓合同演習に参加した米、韓国両国の将兵

 トランプは米韓合同軍事演習の中止を二つの理由で正当化している。一つは費用が掛かりすぎる、お金の無駄遣いであるということであり、今ひとつは金正恩と交渉中であるので、彼に善意のジェスチャーを見せる必要があることである。演習の中止に伴う米韓軍の即応能力の低下、米韓同盟に与える影響は大したことではないとの判断であると思われる。

 まず第1に費用が掛かりすぎるとの点については、トランプは「1億ドルかかっている」と主張するが、どこからそういう数字をトランプが持ってきたのか、よくわからない。国防総省は、昨年の演習中止の節約額は1400万ドルだったと言っており、トランプの見積もりは高すぎる。その上、防衛はお金の問題も重要であるが、それだけで考えるべき問題ではない。同盟の維持、即応力の問題はお金の計算で割り切れるようなものではなく、そういう意味でトランプの主張は適切とは言えない。ウォールストリート・ジャーナル紙の3月6日付け社説‘Trump Gets Exercised Over Exercises’は「演習を調整することは軍事的即応力を直ちに損ずるわけではない。しかし、小規模演習による代替は能力を損ずるというのではないが、戦争のストレスの模擬実験する上では陸、海、空における大規模演習のように適切なものはない」と指摘している。その通りであろう。

 第2に、「金正恩と交渉中であるから善意のジェスチャーを」ということで、大規模軍事演習の中止を決めたとすれば、これも適切ではない。共産主義者やその亜流は、力関係を重視し、戦略を考えるのが普通であり、敵または交渉相手の善意を信じるということはほぼない。彼らは大変に現実的である。こういう相手との交渉では、善意で先に譲歩することは相手から弱さと評価されるか、あるいは下手な交渉と評価されるかである。交渉の材料、いわば譲歩は見返りを得てこそするのが良く、一方的な譲歩は極力避けるのが良いと思われる。北朝鮮はこのトランプの譲歩を善意のジェスチャーとは看做さず、その見返りに態度を変えることは見込まれない。対北圧力手段の一つを放棄させた戦利品として、見返り無しに固定化していくことを狙うであろう。非核化交渉に今一つの問題を上乗せした結果になりかねない。このことはプーチンとの交渉にも当てはまるように思われる。

 米朝交渉はハノイ会談の後、どう進展するのかよくわからない。米朝の対立点が明確になったことから、次の会談前に双方が交渉姿勢を見直すことはありうる。米側からは圧力強化が、北からはそれに対する反発が出てくるとみておくのが当面の常識的判断であろう。第3回目の首脳会談については、失敗は許されないと思われ、事前の調整が事務レベルや閣僚レベルで行われることになるだろう。「出たとこ勝負」の首脳会談ではなく、よく準備された、成功がほぼ約束された首脳会談が米朝双方の狙いになろう。非核化がすんなりいくとは思えないが、中身がどうなるかを予測するのは時期尚早である。

【私の論評】中止の本当の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

上の記事では、指摘されていませんが、トラン不政権が米韓合同演習を中止した最大の理由は情報漏えいを恐れてのことだと思います。最近の文在寅の親北ぶりは異常なもので、トランプ政権としては、文大統領の次の大統領がまともな大統領だった場合、演習を再開するのではないか思います。

米国は韓国をまったく信用していません。例えば、米韓両軍が合同軍事演習で採用してきた最高機密『5015作戦計画』があります。特殊部隊による『正恩氏排除=斬首作戦』を含むものですが、これが韓国から北朝鮮に全部もれたとされています。あり得ないことです。

2017年10月14日、朝鮮半島情勢が緊迫化する中、韓国軍の機密文書が北朝鮮とみられるハッカーによって大量に盗まれていたことが発覚しました。米軍から提供された情報も漏れた可能性がありました。北の指導部を狙った「斬首作戦」に関する情報も流出したとされ、韓国紙は「北で起これば全員死刑」と批判していました。

韓国メディアによると、昨年9月、北朝鮮からと推定されるハッカーが韓国軍のデータベース(DB)センターに相当する国防統合データセンター(DIDC)をハッキングして盗み出した文書は235ギガバイトに登りました。A4サイズの紙で1500万枚に相当する量です。韓国軍は流出したデータの総量自体は確認しましたが、どんな資料が流出したかは全体の22.5%に当たる53ギガバイト分(約1万700件)しか把握できていないといいます。

地上から撮影されたされるKH12の写真

朝鮮日報は国会国防委員会で与党「共に民主党」の幹事を務める李哲熙議員の話として「流出資料には、米軍が独自に収集して韓国軍に提供した写真ファイルが多数含まれていた」と報道しまし。代表例として「キーホール」(鍵穴)という別名で呼ばれるKH12偵察衛星が収集した情報などを挙げました。

KH12は、北朝鮮の300~500キロ上空を1日に3、4回通過して内部の動向をつかみます。韓国の安全保障専門家は「この情報が韓国側のミスで北朝鮮のハッカーに渡ったのだとしたら、今後米軍が情報共有を避ける口実にされかねない」と危惧していました。

さらに流出した情報には、金正恩・朝鮮労働党委員長らを殺害する「斬首作戦」ともいわれる「作戦計画5015」などの軍事機密が数多く含まれていたとされます。これは、以前も北朝鮮に漏洩したとされていましたが、さらに詳細が漏洩した模様です。

斬首作戦は有事の際、米国の増援部隊が韓半島(朝鮮半島)に到着する前に特殊部隊やミサイルなどを使い、朝鮮人民軍の司令部を攻撃するものですが、その細かい内容が北朝鮮の手に渡ってしまった可能性が捨てきれないのです。

さらに、文政権は昨年は、中国やロシアと連携して、国連安保理決議で決めた「対北制裁」を、是が非でも緩和させようと画策していました。これで米国の同盟国といえるのでしょうか。

平城を訪問した文在寅

ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は昨年5月29日来日し、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相(当時)らと会談しました。次の4点で日米は固く一致しました。

 (1)北朝鮮の核兵器と大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルについて「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を目標とする。

 (2)北朝鮮に対し、具体的な非核化の行動を早くとるよう迫る。

 (3)国連安保理で決めた経済制裁を堅持する。

 (4)米国は、(安倍首相が全面解決に執念を燃やす)日本人拉致問題を重視する。

一方、文大統領は前日28日、訪韓したマティス氏との会談をドタキャンしました。理由は「風邪だ」と発表されました。

米国防長官との会談は、同盟国のトップにとって最重要会談の1つです。風邪でドタキャンなど、考えられません。当時は重病説もながれましたが、その後ピンピンしていることから、やはり仮病だったと思われます。

マティス氏に、正恩氏の言い成り状態を怒られるから逃げたのかもしれません。トランプ大統領の文氏嫌いは有名で、『韓国は裏切り者だ。懲らしめろ』という敵視論まで噴き出ています。

さらに、韓国統一省当局者は昨年12月28日、韓国に居住する北朝鮮脱出住民(脱北者)の支援に当たる機関がハッキングを受け、997人分の氏名や生年月日、住所などの個人情報が流出したと明らかにしました。

当局者によると、大部分は南東部慶尚北道に住む脱北者。脱北者の定着支援を担う「ハナセンター」の職員が外部から届いたメールを開いたところ、パソコンが悪性プログラムに感染し、保存されていたファイルから個人情報が流出しました。

脱北者らが何らかの被害に遭ったとの報告はないが、身辺保護強化が必要と判断される場合は転居なども含め対応を検討します。情報が漏れた脱北者には個別に通知しているといいます。

脱北者の個人情報を含む文書は暗号をかけたり、インターネットにつながっていないパソコンに保存したりするよう指針で定められているが、守られていなかったそうです。

このような情報の取扱の杜撰さや、親北政権による人為的な漏洩などを米国は警戒しているのだと思います。

米側としては本当は米韓軍事演習を中止などしたくないはずです。

第一には、一度中止した軍事演習をまた復活したという苦い経験があるからです。今から27年前の1992年に米国は北朝鮮との間で「バーター取引」をしたことがありました。米韓両国は1992年に恒例の米韓合同軍事演習(当時はチームスピリット)を実施することで合意していたが、1992年1月7日、北朝鮮がIAEA(国際原子力機構)との核査察協定に調印することを条件に14年間続いていた合同軍事演習の中止に踏み切りました。

中止が発表されると同時に北朝鮮外務省はIEAEの査察受け入れを表明し、1月30日に査察協定に正式調印した。翌2月には南北初の総理会談で「和解・不可侵と交流協力合意書」と「非核化共同宣言」が発表されました。

しかし、北朝鮮が申告した内容とIAEAの査察結果に重大な差があることが判明し、IAEAは北朝鮮に対して特別査察の受け入れを迫り、北朝鮮がこれを拒否したことで1993年にチームスピリットが復活することとなりました。

第二は、合同軍事演習が北朝鮮の戦争遂行能力を削ぐことにあるからです。

米韓合同軍事演習は北朝鮮を降伏させるための「5015作戦」に従って実施されているが、この作戦は2002年にブッシュ政権下で作成された「5030作戦」も取り入れています。

当時、ラムズウェルド国防長官を頭にペンタゴンが作成した「5030作戦」はずばり、北朝鮮を干し挙げるための作戦計画です。軍事衝突発生前に北朝鮮政権を転覆させる多様な低感度の作戦で、統帥権者である大統領の承認なしで遂行できる作戦です。

例えば、「R-135」偵察機を北朝鮮の領海に近づけ、北朝鮮戦闘機のスクランブル発進を誘導させることで燃料を消費させるとか、戦略爆撃機「B-1B」や原子力空母、原子力潜水艦など戦略兵器を投入し、北朝鮮を緊張状態に置き、北朝鮮の戦争備蓄を消費させ、経済活動を麻痺させるという戦法が取り入れられています。制裁を掛けて、北朝鮮の金融システムを封鎖する作戦も含まれています。

上記の二点からしても、米軍が米韓合同演習を実施するのはかなり重要なことであったとご理解いただけるものと思います。

軍事境界線(DMZ)

最後に、朝鮮半島(韓国)は米軍にとって格好の演習場となっていたことがあります。

朝鮮半島は「アジアの火薬庫」と称されて久しいです。駐韓米軍と韓国軍は東西248kmに及ぶ軍事境界線(DMZ)を挟んで120万の兵力を有する敵(北朝鮮軍)と対峙しています。世界でも稀に見る緊張状態が続く地域では本番さながらの演習が可能です。

かつての、韓国は親米国家でした。また、保守、革新問わず、歴代大統領は親米でした。米軍撤退の声も、基地反対の声も起きてはいませんでした。米軍にとって演習の立地条件としてはこれほど好条件に恵まれているたのは他になかったのです。

国際的紛争の解決に向け在韓米軍を他の地域に投入する、あるいは紛争地域に派遣するうえでも韓国での演習は米軍にとって不可欠なものだったのです。

しかし、文在寅大統領になってからは状況が変わっています。文在寅大統領は、なし崩し的に北に接近するとともに、中国にも従属しようとしています。これは明らかに同盟国米国に対する敵対行為です。

米韓合同演習を続ければ、米軍の情報が漏洩する可能性は否定できません。トランプ政権としては、文政権は全く信用できないため、演習を続ければ金正恩に手の内を読まれてしまうことを否定しきれない現状では米韓合同演習を中止せざるを得ないのでしょう。ただし、これを公言すれば、米朝関係が弱体化したことを公言するようなものなので、費用が掛かりすぎなどとお茶を濁しているだけなのでしょう。

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2018年12月23日日曜日

米軍シリア撤退の本当の理由「トランプ、エルドアンの裏取引」―【私の論評】トランプ大統領は新たなアサド政権への拮抗勢力を見出した(゚д゚)!




 トランプ大統領による米軍のシリア撤退発表は、米政府高官らも驚く突然の決定だった。その背景には、シリアをめぐって「大統領とエルドアン・トルコ大統領の思惑の一致」(ベイルート筋)という“裏取引”が浮かび上がってくる。マティス国防長官はトランプ氏に撤退を思いとどまらせようと最後の説得を試みたが失敗、抗議の辞任に踏み切った。長官の辞任は来年2月の予定。

反対押し切り独断で決定
 撤退の発表は唐突にツイッターで行うというまさに「トランプ流」だった。トランプ大統領は12月19日のツイッターで「イスラム国(IS)に歴史的な勝利を収めた。いまこそ米国の若者たちを帰国させる時だ」と宣言。この発表は米政府だけではなく、シリアに関与してきた中東各国やロシア、イラン、そして米国と組んでISを壊滅させた有志連合諸国を驚がくさせた。

 とりわけ、米国の求めに応じてIS壊滅に多くの血を流してきたシリアのクルド人の衝撃は大きかった。クルド人は将来のクルド人国家の実現を米国が後押ししてくれるという期待があるからこそ、IS攻撃の地上戦の主力を担った。それだけに「裏切られ、梯子を外された」(同)との怒りは強い。

 シリアについては、トランプ大統領は選挙公約で、IS壊滅後、早急に米部隊を撤退させると主張し、今年4月にも盛んに撤退論を繰り返した。しかし、マティス国防長官ら政権内の安全保障チームが強く反対、9月になって大統領はIS壊滅後も敵性国イランの影響力拡大を阻止するため、小規模の部隊をシリア領内に残すことに同意し、シリア政策を変更した。

 事実、大統領の信頼が厚いボルトン補佐官(国家安全保障担当)は当時、「イランの部隊が展開している限り、われわれが撤収することはない」と言明していたし、米政府のマクガーク有志連合代表もつい先週、ISを物理的に壊滅させても、われわれはこの地域の安定が維持されるまで留まる」と述べていた。

 政策が変わったのは大統領がツイッターで撤退を公表した前日の18日だ。ワシントン・ポスト紙などによると、この日、ホワイトハウスでごく少人数の秘密会議が開催された。出席者はトランプ大統領、ポンペオ国務長官、マティス国防長官、ボルトン大統領補佐官らだった。

 この席で大統領がシリアから部隊を撤退させたい意向を表明。これに対し、出席者のほとんどはIS掃討作戦がまだ完全には終わっていないこと、イランやロシアの影響力拡大を食い止める必要があること、米部隊が撤退すれば、混乱が生まれかねないことなどを主張して反対した。だが、大統領は反対論を強引に押し切った。

 シリアの米部隊は公式には503人だが、実際には4000人弱の規模と見られている。ほとんどが特殊部隊で、クルド人に訓練や武器援助し、ユーフラテス川の北東部に駐留。クルド人とともに、シリア全土の3分の1を支配下に置いている。トランプ大統領は30日以内に撤退するよう指示した、という。

取引の中身

 撤退の決定は1国の指導者を除いて事前に伝えられることはなかった。その指導者とはトルコのエルドアン大統領である。両首脳はサウジアラビアの反体制派ジャーナリスト、カショギ氏殺害事件について先の20カ国・地域(G20)首脳会合の場で話し合い、続いて12月14日に電話会談した。

 トランプ大統領が撤退の決定をする要因となったのがこの電話会談だったようだ。エルドアン大統領はこの直前、テロリストと見なすシリアのクルド人勢力の脅威を取り除くため、数日中にシリアに侵攻すると恫喝、事実、シリアとの国境に軍や戦車を集結させ、巻き込まれないよう米軍に警告していた。

 同紙によると、エルドアン大統領はこの電話会談で、シリアのクルド人はテロリスト集団であること、ISはすでに掃討されているのに、米軍が駐留する必要性はないこと、有事の際には北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコが対処するので心配ないことなどを伝えたという。

 また、特筆すべきはトルコが1年以上も求め続けてきたパトリオット迎撃ミサイルの売却について、トランプ政権が撤退の決定と同時期に承認し、議会に通告した点だ。政権内部では、エルドアン氏がロシアから最新の迎撃ミサイル・システムを購入するなどしたため、パトリオットの売却に反対論が噴出していた。しかし、トランプ大統領は今回、エルドアン氏の要求をのんだことになる。

 いずれにせよ、大統領はエルドアン氏の説得に応じて撤退に傾いたことが濃厚だ。大統領にしてみれば、選挙公約であるシリアからの軍撤退を実現し、仮にトルコが侵攻しても、米兵が巻き添えを食うことはなくなる。カショギ氏殺害事件についても、撤退を条件に「トルコがサウジの責任追及をやめる」約束を取り付けた可能性すらある。

 トランプ大統領は現在、ロシアゲートや不倫もみ消し事件、大統領就任式準備委員会の不正など様々な疑惑追及にさらされている。しかも民主党が下院の多数派を握ったことで、弾劾の可能性が現実味を帯びてきている。このため、シリアからの軍撤退を発表することで、こうした厳しい追及を逸らす意図もあるかもしれない。

 エルドアン大統領にとってみれば、米軍の撤退で目の上のコブが消え、シリアに侵攻し、最大の懸案だったクルド人の勢力拡大に歯止めを掛けることが可能になる。トランプ大統領が米国に居住している政敵のイスラム指導者ギュレン師を強制送還してくれる、という期待もあるだろう。カショギ氏殺害事件の追及をやめても十分お釣りがくる計算だ。

「私には辞任の権利がある」

 撤退には一貫して反対してきたマティス国防長官は20日、大統領を翻意させようとホワイトハウスに赴き、最後の説得を試みたが、大統領は耳を貸さなかった。長官は提出した辞表で「大統領には考え方の近い国防長官を持つ権利があり、私には辞任の権利がある」と述べた。

 マティス長官は同盟国との国際協調を重視し、大統領の“暴走”にブレーキを掛けてきた。だが、長官の辞任により、政権内に大統領に直言できる人物はいなくなり、大統領の米国第一主義に基づく行動が加速することになるだろう。

 マティス氏は大統領から請われて国防長官に就いた。大統領は当初、長官をあだ名の「マッド・ドッグ」(勇者)と呼んで称賛、大のお気に入りだった。だが、大統領の戦略なき衝動行動を諫めているうちに遠ざけられ始め、ここ数カ月は話もできないような関係になっていた。

 とりわけ長官が次の統合参謀本部議長にゴールドフィン空軍参謀長を推挙したのに、大統領がこれを無視、ミリー陸軍参謀長を選んだのは長官への当てつけだった。北朝鮮との交渉でも、長官は外され、長官が大統領に見切りをつけるのは時間の問題と見られていた。

 トランプ大統領は将軍好きといわれ、就任当初からマティス長官のほか、フリン補佐官(辞任)、マクマスター補佐官(同)、ケリー国土安全保障長官(当時、後に首席補佐官)ら将軍を重用した。しかし、ケリー氏は年内で更迭されることが確定し、残るのはマティス将軍だけとなっていた。

【私の論評】トランプ大統領は新たなアサド政権への拮抗勢力を見出した(゚д゚)!

トルコ紙ヒュリエト(電子版)は21日、トランプ米大統領がシリアからの米軍部隊撤収を決断したのは、14日に行われたエルドアン・トルコ大統領との電話会談の最中だったと報じました。
エルドアン・トルコ大統領

それによると、トランプ氏は電話の中で、「われわれが撤収したら、(トルコが)過激派組織『イスラム国』(IS)の残存勢力を一掃できるのか」と質問。エルドアン氏は、IS掃討でトルコがテロ組織とみなすクルド人勢力に頼る必要はないと強調し、「われわれがやる」と答えました。

この直後、トランプ氏は電話会談が続く中で、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)に撤収に向けた準備に取りかかるよう指示したといいます。

トルコのアナトリア通信はこれより先、14日の電話会談について、両首脳がシリア情勢をめぐり調整を行うことで合意したと伝えていました。トルコのチャブシオール外相は21日、撤収を歓迎すると述べた。

以上のことは、多くの人々に驚天動地の出来事であったかもしれません。しかし、米国の戦略家ルトワック氏の米国のあるべきシリア戦略について知っていればそのようなことはなかったかもしれません。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる―【私の論評】今後の攻撃はアサド政権を弱体化させ、反政府勢力と拮抗させる程度のものに(゚д゚)!
シリアの首都ダマスカス。アサド大統領のポスターの前で警備に当たるロシア軍とシリア軍兵士。
米軍が大規模な攻撃を仕掛ければ、ロシアとぶつかる危険がある

 ルトワックが2013年にシリアに関する記事をニュヨークタイムズに寄稿をしています。その中に戦略が掲載されています。その記事のリンクを以下に掲載します。
In Syria, America Loses if Either Side Wins

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に翻訳を掲載します。
どちらが勝ってもアメリカはシリアで敗北する
2013年 8月24日 byエドワード・ルトワック
先週の水曜日のニュースでは、シリアの首都ダマスカスの郊外で化学兵器が使われたことが報じられた。人権活動家によれば、これによって数百人の民間人が殺害されたということであり、エジプトの危機のほうが悪化しているにもかかわらず、シリアの内戦がアメリカ政府の関心を引きはじめた。 
しかしオバマ政権はシリアの内戦に介入してはならない。なぜならこの内戦では、そのどちらの側が勝ったとしてもアメリカにとっては望ましくない結果を引き起こすことになるからだ。 
現時点では、アメリカの権益にダメージを与えない唯一の選択肢は「長期的な行き詰まり状態」である。 
実際のところ、もしシリアのアサド政権が反政府活動を完全に制圧して国の支配権を取り戻して秩序を回復してしまえば、これは大災害になる。 
カギを握るのは、イランからの資金や武器、そして兵員たちやヘズボラの兵士たちであり、アサド氏の勝利はイランのシーア派とヘズボラの権力と威光を劇的に認めさせることになり、レバノンとの近さのおかげで、スンニ派のアラブ諸国やイスラエルにとって直接的な脅威となる。 
ところが反政府勢力側の勝利も、アメリカやヨーロッパ・中東の多くの同盟国たちにとっても極めて危険である。その理由は、原理主義グループたち(そのうちの幾つかはアルカイダだと指摘されている)が、シリアにおける最も強力な兵力になるからだ。 
もしこれらの反政府勢力が勝利するようなことになれば、彼らがアメリカに対して敵対的な政府をつくることになるのはほぼ確実だ。さらにいえば、イスラエルはその北側の国境の向こうのシリアにおいてジハード主義者たちが勝利したとなれば、平穏でいられるわけがない。 
反政府運動が二年前に始まった時点では、このような状況になるとは思えなかった。当時はシリア国内全体が、アサド政権の独裁状態を終わらせようとしていたように見えたからだ。 
その頃は穏健派がアサド政権にとって代わることも現実としてありえる感じであった。なぜならそのような考え方をもつ人々が国の大半を占めていたからだ。 
また戦闘がここまで長引くことも考えられなかった。長い国境線を接している隣国で、はるかに巨大な国で強力な陸軍を持つトルコが、その力を使って介入してくることも考えられたからだ。実際に2011年の半ばにシリアで内戦がはじまると、トルコのエルドアン首相はすぐにその内戦を終結させるようシリアに要求している。 
ところがアサド政権の報道官はそれに屈する代わりにエルドアン首相をバカにする発言を行い、軍はトルコの戦闘機を撃ち落とすという行動をとったのだ。さらにそれまでにトルコ領内に繰り返し砲撃を行っており、トルコとの国境では車に爆弾をしかけて爆破させている。 
ところが驚くべきことに、トルコ側からは何も復讐はなかった。その理由は、トルコ領内に大規模な少数派民族(ブログ管理人注:クルド人のこと)がいて火種をかかえており、彼らは政府を信用していないだけでなく、トルコ軍も信用していないからだ。 
そういうわけで、トルコは権力を行使するどころか、むしろ機能停止状態であり、エルドアン首相はシリア内戦をすぐそばで眺める、単なる傍観者にしかなれていないのだ。 
結果として、アメリカはトルコが支援した反政府勢力にたいして武器やインテリジェンス、それにアドバイスを行うことができず、シリアは無政府的な暴力による混乱に陥ることになったのだ。 
内戦は小さな軍閥やあらゆる種類の危険な原理主義者によって闘われている。たとえばタリバン式のサラフィー派の狂信主義者は、熱心なスンニ派まで殺害しているのだが、これは彼らがスンニ派の異質なやり方をマネすることができなかったからだ。 
スンニ派の原理主義者たちは無実のアラウィー派やキリスト教徒を殺しているのだが、その理由は単に彼らの宗教が違うからだ。そしてイラクをはじめとする世界中からのジハード主義者たちは、シリアをアメリカやヨーロッパにたいするグローバルなジハード運動の拠点にすることを宣伝している。 
このような悪化する状況を踏まえると、どちらかの勢力が決定的な結果を出すことも、アメリカにとっては許容できないことになる。イランが支援したアサド政権の復活は、中東においてイランの権力と立場を上げることになるし、原理主義者が支配している反政府勢力の勝利は、アルカイダのテロの波を新たに発生させることになるのだ。 
よって、アメリカにとって望ましいと思える結末は「勝負のつかない引き分け」である。 
アサドの軍隊を拘束し、イランとヘズボラの同盟をアルカイダと共闘している原理主義の戦闘員たちとの戦争に引きこませておくことによって、ワシントン政府は四つの敵を互いに戦争をしている状態におくことなり、アメリカやアメリカの同盟国たちへ攻撃を行うことを防げるのだ。 
これが現在の最適なオプションなのだが、これは不運であると同時に、悲劇でもある。しかしこれを選択することは、シリアの人々にとって残酷な仕打ちになるというわけではない。なぜならそれらの多くが全く同じ状態に直面しているからだ。 
非スンニ派のシリア人は、もし反政府勢力が勝てば社会的な排除か虐殺に直面することになるし、非原理主義のスンニ派の多数派の人々は、もしアサド政府側が勝てば新たな政治的抑圧に直面するのだ。そして反政府勢力が勝てば、穏健なスンニ派は原理主義的な支配者たちによって政治的に排除され、国内には激しい禁止条項が次々と制定されることになる。 
アメリカは「行き詰まり状態」を維持することを目標とすべきだ。そしてこれを達成する唯一の方法は、アサド側の軍隊が勝ちそうになったら反政府勢力に武器を渡し、もし反政府勢力側が勝利しそうになったら武器の供給を止めるということだ。 
この戦略は、実はこれまでのオバマ政権が採用してきた政策である。オバマ大統領の慎重な姿勢を「皮肉な消極的態度だ」として非難している人々は、その対案を示すべきであろう。アメリカが全力で介入して、アサド政権をとそれに対抗している原理主義者たちをどちらも倒すということだろうか? 
こうなるとアメリカはシリアを占領することになるが、現在アメリカ国内でこのような費用のかかる中東での軍事的な冒険を支持する人はほとんどいないだろう。 
どちらか一方にとって決定的な動きをすることは、アメリカを危険にさらすことになる。現段階では「行き詰まり状態」が唯一残された実行可能な選択肢なのだ。
その後ご存知のように、ISが勃興して、シリア・イラクの大部分を制圧したのですが、 現在はこの勢力はほとんど一掃されました。そうして、現状はこのルトワックの記事の頃に戻ったような状態です。

ルトワックの提唱する戦略は、アサドの軍隊をクルド人勢力などの反政府勢力と戦わせておいて、アサド側の軍隊が勝ちそうになったら反政府勢力に武器を渡し、もし反政府勢力側が勝利しそうになったら武器の供給を止めるという「行き詰まり状況」を維持するということです。

ただし、ここにきて状況が変わってきました。エルドアン首相はシリア内戦をすぐそばで眺める、単なる傍観者であることをやめて、権力を行使するとトランプ大統領に表明したわけです。

トルコ軍の特殊部隊

エルドアン首相は、トランプ氏に対して、ISの残存勢力を掃討し、アサド政権と対峙することを表明したのです。トランプ大統領としては、この状況であれは、米国としては、この地域に関してはNATOの同盟国でもあるトルコに任せるべきと判断したのでしょう。

シリアに対してはトルコに対峙させ、米国はこれを支援するようにし、トルコが劣勢になれば、米国が軍事的、資金的に支援すれば良いと考えたのでしょう。パトリオット迎撃ミサイルの売却はその意図の現れです。トランプ大統領は、クルド人勢力に変わる、シリアへの拮抗勢力としてのトルコに期待したのでしょう。

しかし、これはトルコという新しいプレイヤーが登場したというだけで、本質的にはルトワックの戦略と変わりはないのかもしれません。米国はトルコがすぐにアサド政権を打倒できるとは考えていないでしょうが、当面「行き詰まり状態」を維持できることになります。

これで、米国としてはシリアに拘泥されることがなくなり、対中戦略に集中できると考えたのでしょう。それに、トランプ氏のIS壊滅後、早急に米部隊を撤退させる選挙公約も果たせることになります。

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2014年10月19日日曜日

安倍総理が賃金に口を出す「本当の理由」―【私の論評】現在日本で主流の左翼は本当の意味での左翼ではない。もうその社会的使命はすでに終わっている!左翼から転向した人々は新しい視座を持て(゚д゚)!

安倍総理が賃金に口を出す「本当の理由」

連合の第85回メーデー中央大会であいさつを終え、連合の
古賀伸明会長と握手する安倍首相=4月26日、東京・代々木公園

安倍晋三総理が民間の賃金体系の見直しを唱え、労働生産性に見合ったものに変えていくように提言している。安倍総理は賃金体系の見直しは女性活用のためとも主張しているが、こうした発言の背景には「左派」への牽制が見て取れる。

そういえば、今春の第85回メーデー中央大会に、安倍総理は出席していた。メーデーとは、ヨーロッパを中心として世界各地に行われる「労働者」の祭典である。そこに、労働者のための民主党のライバル政党党首が参加したわけだ。安倍総理というと右派政治家と思われているが、それを意識してなのか、雇用政策で左派のお株を奪っている。

欧州では、社民党や共産党などの左派政党が雇用のための金融政策を主張、右派政党も金融政策によって雇用を確保するという政策効果を否定できないため、これを採用してきた歴史がある。

背景にあるのは、左派知識人の体たらくである。左派知識人は、反成長・反金融政策で凝り固まっている。戦後の「へたれ左翼」がいまだに幅をきかせて、まともな議論をやってこなかったツケだ。「へたれ左翼」は、マスコミや出版界で知識人とされているが、世界の流れに取り残されている。

安倍政権の金融緩和に対し、そうした左派知識人は「株を持っている金持ちだけが得をする」と言った。ところが、実際は失業率が下がって、労働者が恩恵を受けている。

また「へたれ左翼」は、「もう成長は不要」と主張し、成長も毛嫌いする。ここ20年間、日本の経済成長率が世界でビリであることも知らないのだろうか。成長すればパイが大きくなり、労働者の取り分も増えるのだが、左派知識人はそこまで頭が回らない。この点を、安倍総理は見逃さず、突いているわけだ。しかも、賢く一般論・抽象論にとどめ、個別論・具体論には立ち入らない。

本来であれば、外交・安全保障の分野で、右派と左派は激しく対立する。しかし、経済分野で、日本の左派は劣化が激しく、その余波で、外交・安全保障での右派・左派の対立の中で本来の左派らしさが失われている。一体、日本の左派はどこに行くのだろうか。

この記事は要約記事です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】現在日本で主流の左翼は本当の意味での左翼ではない。もうその社会的使命はすでに終わっている!左翼から転向した人々は新しい視座を持て(゚д゚)!

この記事、以前掲載したブログ記事で私が言いたかったことを、非常に理解しやすく解説させれているので掲載させていただきました。

その記事のURLを以下に掲載します。
東京で言論考える集会開催 朝日新聞たたきは「社会の病」―【私の論評】企業は、社会や経済の許しがあってはじめて存在できる!左翼ビジネスモデルが廃れた今、原稿料も満足に支払えない出版社がこんなシンポを主催する資格があるのか(゚д゚)!

この記事では、「創」編集部が、主催者の筆頭となっており、朝日新聞叩きを「社会の病」などとするシンポジュウムを開催していることに対して批判をしました。

そうして、この記事締めくくりで以下のようなことを掲載しました。
長い歴史がある日本のリベラリズムの系譜である、まとも左翼であれば、社会がその存立を赦すのでしょうが、今の日本の主流となっている左翼は、もう社会的使命をとっくに終えたのだと思います。だからこそ、『創』のような雑誌の出版元は執筆者にまともに原稿料も払えなくなっているのだと思います。 
この流れは、もう社会的使命を終えつつある、大手新聞社などにも及んでくると思います。もう、時間の問題です。朝日新聞社に対するバッシングは、その兆候です。 
それにしても、そもそも、原稿料も支払えない出版社がこんなシンポを主催する資格があるのかと言いたいです。 
まあ、現状では、創もデフレ不況に苛まされている面はあるとは思いますが、現在日本の主流になっている左翼、デフレに関してはほとんどノータッチでした。そういう、意味では自業自得だと思います。国民生活や、自分たちにも大きくかかわる経済や雇用の問題を糾弾しない左翼の存在意義はますます薄れています。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
上の赤字で示した部分、まだまだ言い足りない部分があると感じましたが、一つのブログ記事になにもかもテンコ盛りにするわけにはいかないので、この程度で収めておきましたが、いずれこれをテーマとして、また記事を書きたいと思っていたところ、上の記事が書きたいことを掲載していたので、本日取り上げさせていただきました。

さて、EUの労働組合などの左翼系は、アベノミクス第一弾の、金融緩和に関しては、雇用を改善するということで、賛同しているし、そのような政策を推進するように政府に求めています。

しかし日本の左翼は、金融緩和をして、減税しろなどとは言いません。これは、日本の左翼の七不思議の一つであることは間違いありません。デフレは、間違いなく、左翼ビジネスにも、労働者にも悪影響を及ぼしているはずです。

その一つ査証として、このブログ記事でも紹介したように、月刊「創」は、最近何年間にもわたって、執筆者に原稿料を払っていないことが露呈ました。他の左翼系出版も似たような状況にあると思います。

国民生活や、身内の人々に直結する、デフレからの脱却による経済や雇用に最も資する政策に対して何らコミットしない左翼では、その存在意義が問われると思います。

さて、イギリスにはイギリス労働党というまともな、それこそ、何度も政権交代をしたことのある”左翼”の政党があり、根本は日本の左翼と同じ共産主義社会主義ですが、そこから社会の変化に対応して発展してきました。日本左翼は、戦後70年近くもたつというのに、発展するどころか、ますます衰退するばかりです。

フランスにもイタリアにも社会党というまともな”左翼”の政党があります。彼らは、フランスやイタリアという国家を前提として日々活動しています。考え方は、左翼的ではあるものの、自国というものがあることを前提に考えています。

これは、国民国家(nation)の概念が依然として強く残っている現在では、当然のことと思います。国民国家の消滅は、哲学者カントが言い出しました。その後も、知性あふれる人々が、これを唱えてきましたが、現状では、国民国家への希求はますます強くなっなっています。

これは、少し前なら、ソビエト連坊の崩壊、ユーゴスラビアの崩壊、最近では、スコットランド独立運動などみていても明らかだと思います。国家のあり方を説明するために、下の模式図を掲載させていただきまた。

ただし、下の模式図、タイトルがふさわしくありません。これは、インターネットに掲載されていたものをコピペしたものです。言いたいことは良く理解できますが、誤解を招きそうなので、若干説明を加えておきます。

まず、タイトルを「国民国家の様々なパターン」とするのではなく、「国家の様々なパターン」とすべきです。

それから、state(複合国家)、nation(国民国家)などと、注釈を入れるとわかりやすいです。これでみると、日本は国民国家の部分がほとんどを占めていることが良くわかります。

ちなみに、nationとは、 (政府の下で共通の文化・言語などを有する)国民の国という意味でです。stateとは、一定の領土を有し政治的に組織され主権を有する国のことをいいます。

日本人の多くは、生まれてからずっとnationに住んでいるため、そのことをあまりにもあたり前に考えていますが、nationでない、stateである国は世界にいくらでもあります。

アメリカや、アラブ首長国連邦もそうですし、中国もそうです。今の世界は、依然として、利益による結びつきによるstateよりも、共通の文化・言語による結びつきによるnationへの希求のほうがはるかに大きいということです。

スコットランド独立は、スコットランド人による国民国家を目指したものだった

日本には明らかに政党として、まともな左翼は存在しません。民主党など、たとえば、増税しないことを公約として、政権交代したのですが、あっというまにその公約を翻して、増税法案を通してしまいしまた。他のこともいろいろありますが、これ一つとっても、まともではないことがわかります。

民主党は、政権交代のときに二大政党制を目論んでいたようですが、二大政党制はまず日本のような政治風土ではできません。なぜなら、左翼の自覚があまりにも足りなすぎるからです。

残念ながら、今のままでは、日本ではどの政党も万年野党です。民主党が駄目だからといって、社民党や共産党ではなおさら駄目で、私達は自民党が万年与党になることを認めざるをえない状況にあります。

現状では残念ながら、自分たちの理念や理想を旨とする左翼ではなく、保守や、その時々の政権与党に対する反逆としての思想しか持ちあわせない左翼が主流となっています。理念・理想を持たず、時々の政府に対する反骨精神しかない左翼に、魅力など誰も感じません。

反骨精神というと聴こえが良いですが、これなど、今やただの頑固者と言い換えても差し支えない侮蔑の言葉です。なぜなら、社会は変化していくのがあたり前であり、ただ反対しているだけでは、変わっていく社会に対応できないからです。社会に対応していくためには、どんな組織であれ、自ら変貌を遂げなくてはなりません。

そうして今日本で主流となっている、左翼は時々の与党に対して反対勢力として存在しているどころか、自虐的歴史観の発信源ともなっています。その時々の政権与党などに反対するだけではなく、日本そのものを完全否定、破壊するのが正しいと考える、EUなどの左翼では考えられないような考え方で運営されています。

現在の日本の左翼の主流は反骨精神のみで創造性は失われた

本来「左翼は革新、革新は革新を呼ぶ」という理念の下に運営されるべきものであったはずです。しかしも、左翼の自覚があまりにも足りなすぎるため、左翼=革新、右翼=保守という考え方はなりたたなくなってしまいました。今の左翼の頭中身は、まるで化石のようです。

本来的には、左翼は新しい左翼を常に追及し、国政の内部システムを監査するという役目もあったはずです。

本来まともな、左翼政党の存在価値は、考え方は右翼や、保守などとは異なっていたにしても、現代主権国家における国益重視にあるべきなのです。

その本来の姿を忘れた左翼は、日本の国益に敵対する特ア3国(中国・韓国・北朝鮮)の擁護者になってみたり、朝日新聞をはじめとする日本の大手マスコミなどもそれを擁護し、ともに自虐史観を流布したりするという愚劣な行動を繰り返しています。、

単なる反逆者としての左翼は、本来の左翼としての自覚もなく、誇りも捨て去ったものと見えます。

この私のブログ記事にも、掲載したものですが、以下に西村幸祐氏のツイートを以下に再掲載しておきます。
もうすでに、20年程前から、左翼、右翼と分類すること事態が、あまり意味を持たなくなりました。本来のアベノミクス、特に金融緩和策は、EU諸国では左翼が支持する政策でもあります。これに対して何のコミットもしない左翼は、存在意義が疑われるのは当然のことです。

今日本では、西村氏がツイートしたように、現在主流である反骨精神に凝り固まった左翼から訣別した人も多いそうですが、そういう人たちには、まともな左翼に転向していただきたものです。

反骨精神ではなく、自分たちの理念や理想を旨とする左翼しかも、社会が受け入れる左翼に転向していただきたいものです。

福沢諭吉は、近代リベラリズムの父ともいえる人物である
長い歴史がある日本のリベラリズム、「保守」ともつながる左翼を目指していただきたものです。日本には、そのような左翼が必要です。万年与党の自民党が、今のまま政治システムを変えなければ、なかなか良い政治はできません。安倍総理自身が、今の政治システムの不備により、相当苦しんでいます。

ブログ冒頭の記事の、安倍総理が、賃金に口をはさむのは、反成長・反金融政策で凝り固まっている、戦後の「へたれ左翼」に対して、安倍総理の政策(特に金融政策等)は決して左翼に反対されるべきものでなく、デフレ脱却という、左翼・右翼、社会的地位の上・下に関係なく、本来は、日本という国を良くするための政策であることをアピールしたかったのだと思います。もしかすると、増税への反対のムードを盛り上げたかったという意図もあったかもしれません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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