2021年2月20日土曜日

米海軍の太平洋「最恐」兵器?、巡航ミサイル原潜オハイオ―【私の論評】オハイオにも弱点はあるが、それを日本の通常型潜水艦で補えば無敵となる(゚д゚)!


 

巡航ミサイル潜水艦「オハイオ」が米海兵隊の戦闘強襲偵察用舟艇と統合訓練を行う様子=2月、沖縄沖

香港(CNN) 米海軍がこれまで就役させた中で最大の潜水艦「オハイオ」。冷戦期に生まれた同艦は、1回の集中攻撃で十数都市を破壊する火力を備えて実戦投入されたものの、近年は核ミサイルを外して運用されている。 


だが、オハイオが太平洋で活動する「最恐」かつ最も万能な米軍の兵器プラットフォームであることに変わりはないかもしれない。

  バイデン米政権は現在、同盟国や「自由で開かれたインド太平洋」の防衛を重視する姿勢を示しており、海軍兵器でその姿勢を鮮明にしている。 

1月下旬から2月上旬の2週間を振り返ると、米政権は誘導ミサイル駆逐艦に台湾海峡を通過させることで、台湾防衛への変わらぬ決意を表明。同駆逐艦は続けて、南シナ海における中国の領有権主張に対抗するため西沙(パラセル)諸島に向かった。米国はまた、南シナ海での演習に巨大空母を派遣したほか、最新鋭駆逐艦のひとつを日本に派遣した。

 そして先々週には、東アジア地域でオハイオの姿を公開し、排水量1万8000トンの巡航ミサイル潜水艦が沖縄周辺で米海兵隊と共同訓練を行う様子を見せつけた。

 英ロンドンの王立防衛安全保障研究所に所属する海軍の専門家、シドハース・カウシャル氏はオハイオや姉妹艦の「ミシガン」、「フロリダ」、「ジョージア」について、ミサイルと兵士を同時に敵の領域近くまで運べる万能艦だと指摘する。

 この点は中国のような敵国と比較する場合に重要だろう。中国は強力な対艦ミサイル能力を保有するが、対潜防衛力はまだ更新と強化の途上にある。

 「多くの火力を迅速に運搬」 

オハイオ潜水艦は今はもう核ミサイルを搭載していないが、米海軍のすべての潜水艦と同様、原子力を動力とする。現在の呼称は「巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)」で、原子炉によってタービン2基に蒸気を送り、その力でプロペラを回すことで推進する。 

海軍によると、その航続距離は「無制限」。連続潜航能力の唯一の制約となるのは、乗組員の食料を補給する必要性のみだ。

 オハイオは比較的大型の艦体や動力ゆえに、トマホーク巡航ミサイルを154基も搭載できる。これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近い。

         トマホークミサイルが2018年の試験で米海軍の潜水艦から発射される様子。
         オハイオ級巡航ミサイル潜水艦はトマホーク154基を搭載できる

 トマホーク1基では、爆発力の高い弾頭を最大1000ポンド(約450キロ)搭載可能だ。

 米海軍の元大佐で、米太平洋軍統合情報センターの作戦責任者を務めたこともあるカール・シュスター氏は「SSGNなら多くの火力を迅速に運搬できる」と指摘する。

「154基のトマホークは甚大な打撃を正確に与えることができる。いかなる米国の敵もその脅威を無視できない」(シュスター氏) 

その火力の威力が披露されたのは2011年3月、潜水艦フロリダが「オデッセイの夜明け作戦」で100発近いトマホークをリビア国内の目標に発射した時のことだ。SSGNが戦闘で使用されたのは初めてだった。

 ただ、リビアは中国とは異なる。中国人民解放軍海軍(PLAN)はリビアにはない対潜戦兵器を数多く持ち、その能力を向上させつつある。

 中国は近年、対潜哨戒機やフリゲート艦、攻撃型潜水艦といった増大する海軍戦力に大量のリソースを投入してきた。いずれも敵の潜水艦を撃沈するのが目的だ。

 こうした戦力拡充にもかかわらず、冷戦時代に潜水艦大国でなかった中国は依然として遅れを取り戻す段階にある。しかも、対潜戦では数に加えて経験も必要となる。

 もしオハイオが太平洋のただ中に展開している場合、中国の対潜部隊はより陸地に近い場所で活動するように設計されたため、探知はいっそう難しくなるという。

 ただし陸地に近い場所であっても、オハイオはステルス能力ゆえの優位性を持つと、アナリストらは指摘する。米艦隊の他の攻撃型潜水艦に比べて静粛性が高いことから、陸地に近い海域であっても中国が探知するのは至難の業になりそうだ。

 つまりオハイオなら、内陸部の目標により近いところまで対地攻撃ミサイルを運搬できる。

「SSGNはそのステルス能力のおかげで前方展開して、敵防衛領域の奥深くにある目標を攻撃することが可能だ」(カウシャル氏)

 新たな脅威に適応する オハイオはこれまでに建造された潜水艦の中で屈指の静粛性を誇る。

 1970年代に構想され、大陸間弾道ミサイル「トライデント」を搭載する初の核ミサイル潜水艦として就役したオハイオは、一時は戦略抑止の代名詞だった。 

オハイオ級18隻はいずれも24基のトライデントを装備し、各トライデントにはそれぞれ独立した目標を設定した核弾頭が最大8発搭載されていた。理論上、1隻の潜水艦による1回の発射で旧ソ連の複数の都市を消滅させることも可能だった。

 これらの潜水艦は一度に数カ月連続で潜航するように設計されており、ソ連が核ミサイルで米国の領土を攻撃した場合に浮上して、壊滅的な反撃を加えることを任務としていた。

 海中では深くまで潜航して静かに待機することで、ソ連の監視を困難にした。これにより抑止力としての価値を保っていたと言える。

 しかし、冷戦終結で米ロ間の緊張が和らぐと、これほど多くの弾道ミサイル潜水艦を保有する必要性は薄れた。オハイオ、ミシガン、フロリダ、ジョージアの4隻はいったん退役が決まったものの、海軍はその後、4隻のステルス能力をテロ対策支援に振り向けることができると判断した。

 これはつまり、特殊部隊を収容するスペースをつくることを意味していた。

 SEALなどの海軍特殊部隊員を66人収容できるよう、核ミサイル搭載用のスペースは寝台やバスルームに改装された。 

ミサイル発射管は艦に出入りする潜水士のため、注水や排水ができるロックアウトエリアに改造された。小型潜水艇に乗っての出動も可能だ。

 また改造後の艦内には指揮統制所として使うスペースや設備があり、海中に潜みつつ、付近の海岸での作戦に指示を出すことができる。

 オハイオは4隻のうちで最初に巡航ミサイル潜水艦に改造され、2007年にSSGNとして初の任務に就いた。 

その後はワシントン州のキットサップ海軍基地を拠点に活動し、太平洋のグアム島にある潜水艦基地に前方展開されることが多い。

 太平洋の緊張 

オハイオとその乗組員150人超は先々週、沖縄沖で第3海兵遠征軍の偵察部隊と共同訓練を行った。沖縄を含む島嶼(とうしょ)ラインは「第1列島線」と呼ばれ、中国が太平洋の外海に部隊を展開するために通過しなくてはならない障壁を指す。

 米海軍第7艦隊によって提供された写真には、オハイオが小型艦艇やティルトローター機「オスプレイ」に乗った海兵隊員と連携する様子が写っている。

 オハイオの艦長を務めるカート・バラグナ大佐は声明で、「海兵隊と訓練するたびに我々の能力は研ぎ澄まされる。地域の課題に柔軟に対応し、戦闘で実証済みの能力を展開して、日々の競争や危機、紛争で勝利することができるようになる」としている。

【私の論評】オハイオにも弱点はあるが、それを日本の通常型潜水艦で補えば無敵となる(゚д゚)!

最近では、中国の海軍力が強化されたことを報道する記事は多いですが、それをほとんど無効にしてしまうような米軍の軍事力を示す、上の記事のようなものはあまりみかけません。

そのためでしょうか、多くの人が中国海軍の脅威をことさら煽られてしまう結果になっている点は否めません。無論、中国の軍事力を侮るべきではありませんが、等身大に見るへきです。

そうして、米海軍は未だに中国海軍の攻撃を無効化してしまう能力を持っているのは確かです。例えば、中国の空母や強襲揚陸艦を含めた打撃群が、台湾に侵攻しようとした場合、米国最大の巡航ミサイル原潜オハイオ型一隻で、中国の打撃群を全部撃沈することも可能です。

その後も、台湾付近の海域にとどまり、警戒にあたることも可能です。運悪く人民解放軍が、上陸したとしても、巡航ミサイルオハイオが台湾を包囲して、上陸した軍の補給を絶てば、上陸部隊はお手上げになります。

このような強力な通常兵器巨の攻撃力を備えた大潜水艦を米国は、4隻も保有しているのです。そうして、他の原潜も、その攻撃力・破壊力はそれぞれに凄まじいものがあります。米軍はこうした原潜を70隻以上も所有しています。そうして、米軍の最大の強みは、世界一の対潜哨戒能力です。

こうした強力原潜と、優れた対潜哨戒能力により、米海軍は中国海軍を未だに圧倒しています。

仮に米海軍と、中国海軍が武力衝突をすれば、初戦で中国の艦艇は潜水艦も含めてほとんど撃沈されてしまうでしょう。

中国海軍潜水艦隊の主軸を務める「039」型 画像:中国国防部

ただし、米軍最恐兵器といわれる、オハイオ級原潜にも弱点はあります。これは、オハイオ級原潜だけというよりは、すべての原潜の弱点ともいえます。

原子力は基本的には蒸気機関です。原子力の熱源で高温高圧の蒸気を発生させ、その蒸気から動力を取り出します。蒸気でタービンを回転させる事により取り出すのですが、回転数が高すぎるので、減速させる必要があります。その減速機の歯車が擦れる音が大きく、外に漏れる音源となります。

更に、原子炉に冷却水や、蒸気の元となる水を送り込むポンプの音があります。これらは装置類の工作精度や設計に依存するところもありますが、低騒音にするには高い技術とノウハウが必要です。

それと配管を冷却水や蒸気が流れる音もします。勿論どちらも今はそれなりの対策がされているのですが、それにしても構造的な問題なので、どうしてもそれがネックになります。

そのため原潜の場合は、現状ではどうしても原子力を使わない通常型潜水艦には、静寂性(ステルス性)で劣るのです。

上の記事では、「米艦隊の他の攻撃型潜水艦に比べて静粛性が高い」としていますが、米国が所有しているのは例外的にスウェーデンから乗組員ごと導入た通常型潜水艦一隻を除いて、すべてが原潜です。

これは、正確に述べると、「オハイオ級原潜は、米艦隊の他の攻撃型原潜に比べて静寂性が高い」ということです。

ただし、それにしても相対的には静寂性が高いので、対潜哨戒能力が低い中国には探知されにくいのは事実です。どの程度発見されにくいのは、軍事機密なので、はっきりしたことはわかりませんが、たとえば台湾近海で頻繁に動き回れば、中国海軍に探知される可能性はあります。

予め一箇所に潜み、攻撃の必要性があれば、攻撃してすぐに移動して、また潜むということを繰り返すというのであれば、中国海軍はなかなか発見できないでしょう。

そのため、台湾近海を自由に動き回り、情報を収集するという任務などには不利です。

そういいながら、中国の潜水艦はかなり騒音が出て、米軍にはすぐに探知されやすいので、これが米軍を圧倒的に有利にしています。

昨年の5月に、太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋派遣されたことを米軍の異例の公表からも、米軍は有事の時には、特に海洋での有事の時には最初に潜水艦隊を用いる戦術に変えたと認識すべきです。私自身は、ずっと前から変えていると思います。海洋で、わざわざ初戦で空母打撃群を派遣して、中国海軍に格好の的を提供する必要性などありません。

ただ、手の内をわざわざバラす必要もないので、黙っていただけだと思います。ただ、コロナ禍に中国につけこまれることを防ぐため、わざわさ公表したのです。この公表の裏には、以上で述べたことを、それとなく中国に伝える目的もあったと思います。

ちなみに、日本は米国とは異なり、すべての潜水艦は通常型です。特に、最新型はリチュウム・バッテリーを動力源として、静寂性というか、ほとんど無音です。さらに、最新型以前の潜水艦では、2週間連続して水中を航行することができたのですが、最新型ではそれをはるかに上回るそうです。具体的な数値は、これまた軍事秘密ですが、はるかに上回ることは確認できます。

最新型以前の潜水艦でも、静寂性はかなり高いので、日本の潜水艦のほぼすべてを中国側探知できません。そのため、中国が尖閣諸島に武力侵攻してきた場合、潜水艦隊を派遣すれば、中国の空母や強襲揚陸艦を含む打撃群を撃沈することができます。

運悪く上陸されたにしても、潜水艦隊で尖閣を包囲して、補給を絶てば上陸した人民解放軍もしくは民兵はお手上げになります。

ただ、日本の潜水艦は通常型であり、しかもオハイオのように攻撃力は高くはないという弱点があります。しかし、静寂性(ステルス性)においては世界一です。

攻撃力の高い米原潜と、静寂性の高い日本の通常型潜水艦が組めば、世界最強の潜水艦隊ができあがることになります。

日本の潜水艦が、静寂性を活用して、自由に動き周り情報を収集し、米原潜はその情報を活用して敵を攻撃するなどの協同が理想的です。

世界最高水準の潜水艦開発・探知技術を持つ日米にとって、ノイズの多い中国製潜水艦の追跡は比較的容易です。一方中国はこの分野でまだ遅れを取っており、(対潜)哨戒機の配備数最近は増やしていますが、日米に比較すると決定的に少ないです。

日米は中国潜水艦の音紋(スクリューが出す個別の雑音)もすべて把握し、加えて米軍は日本列島~台湾~フィリピンにSOSUS(潜水艦音響監視システム)までも構築しているため、日米にマン・ツー・マンで追尾されていて、ほぼすべての行動が把握されているといっても過言ではない状態です。

無論、日米は以上を意図して、意識して、合同訓練を行っていることでしょう。ただ、中国が尖閣を何度も挑発してもこれを放置すれば、日本が無敵であるはずの潜水艦を出してくることはないという間違った認識を与えるかもしれません。

日米合同演習

こうしたことを防ぐためにも、日米は尖閣で合同で潜水艦隊による尖閣諸島包囲演習を行うべきです。

日本の潜水艦が情報収集を行い、米軍のオハイオ級の原潜で仮想的を攻撃する演習などを尖閣諸島付近で大々的に行えば、中国海軍はパニックに陥るでしょう。

それどころか、南シナ海の中国軍基地も維持できなくなると懸念するようになるでしょう。是非実現すべきです。

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2021年2月19日金曜日

習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容―【私の論評】日本は、アジアにおいて強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していくくらいのリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

 習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容

中国は、「内ゲバ」によって自爆する


 習近平を「狙い撃ち」した匿名論文

匿名の筆者が米国の対中戦略を提言した1本の報告書が、世界で大反響を巻き起こしている。米国は「中国共産党ではなく、党内で批判勢力との亀裂を深める習近平総書記に攻撃の的を絞るべきだ」と主張しているのだ。中国は当然、猛反発した。米国はどうするのか。

「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題された報告書は1月28日、米国の超党派シンクタンクである大西洋評議会から発表された(https://www.atlanticcouncil.org/content-series/atlantic-council-strategy-paper-series/the-longer-telegram/)。本文は85ページ。プロでなければ書けないような図表(別掲)と詳細な注釈付きだ。


この表題を見て、ピンときた読者も少なくないだろう。

このタイトルは米国の外交官、故・ジョージ・ケナンが1946年、国務省に送った「長い電報」から援用している。ケナンは電報でソ連に対する「封じ込め戦略」を提唱し、その後の米ソ冷戦を戦う外交政策の基礎を作った。今回の「より長い電報」は、米中新冷戦での対中戦略を提言している。

同じ論文の要約版も同日、米国の政治メディア「ポリティコ」に掲載された(https://www.politico.com/news/magazine/2021/01/28/china-foreign-policy-long-telegram-anonymous-463120)。こちらも匿名である。ただ、タイトルは「中国の台頭に対抗するために、米国は習氏に焦点を当てよ」と、より刺激的だ。

筆者は不明だが、ポリティコの紹介文によれば「中国問題を扱うのに、十分な専門性と経験を持つ元政府高官」とされている。実名を明かせば、外交サークルでは、だれもが知る人物かもしれない。現実の米中外交に悪影響を及ぼすのを懸念した可能性もある。

 共産党内部の情勢を的確に分析

論文はいったい、どんな内容なのか。ポリティコ版を基に紹介しよう。
〈21世紀に米国が直面している、もっとも重要な挑戦は、国家主席であり中国共産党総書記の習近平氏が率いて、ますます全体主義を強めている中国の台頭である。中国の経済力や軍事力、技術革新のスピード、米国とは根本的に異なる世界観のために、中国の台頭は米国のあらゆる国益に深刻なインパクトを与えている〉

〈習氏は中国を伝統的なマルクス・レーニン主義に戻し、毛沢東主義者のような個人崇拝を促し、政治的ライバルを組織的に排除してきた。市場改革は頓挫し、民間部門はますます党の支配下に置かれている。自分の権力に対する挑戦は国の内外を問わず、民族的国家主義で対抗した。手に負えない国内の少数民族に対する扱いは、ジェノサイド(大量虐殺)に近い〉

〈習氏の下での中国は、鄧小平や江沢民、胡錦濤など過去の指導者とは違って、もはや現状維持勢力ではない。この国は、国際関係論の世界で言う修正主義勢力、すなわち自分を取り巻く世界を組み替えようと決心した国家になってしまった。習氏は、もはや米国だけの問題ではない。民主的な世界全体に対する深刻な挑戦なのだ〉

〈今後30年間にわたって、習氏の中国に対抗する米国の政策を作るために、統合された超党派の国家戦略を構築するのは、いまや緊急の課題である。米国はケナンの封じ込め戦略でソ連に対抗したが、中国に対しては、何もない。これは国家的な責任放棄だ。貿易戦争による経済改革促進から、中国共産党の打倒を目指す全面的な体制変革まで、さまざまな議論があるが、いったい米国の目標は何か〉
〈ソ連は自らの矛盾のために自己崩壊した。だが、中国は「何がソ連の失敗だったか」を学んでおり、はるかに利口だ。「中国のシステムは不可避的に内側から崩壊する」と仮定するのは、非常に危険である。9100万人の党員を抱える中国共産党を打倒する、という政治的スローガンにふけるのは、戦略的に自滅する。それでは、習氏が政治的エリートと大衆を団結させてしまう〉

〈中国共産党全体を相手にするのではなく、もっと狭く、習氏個人に焦点を絞った戦略が達成可能な目標を提供する。彼の独裁的リーダーシップを一層、大胆にさせるのではなく、弱体化させる政策に絞るのだ〉

〈ケナンはソ連がどう内部で動いているのか、を分析した。同じことが中国にも必要だ。政治的現実を見れば、中国共産党は習氏の指導力と壮大な野心をめぐって、とてつもなく分裂している。習氏の政治路線のために、上級党員は大変な困難に直面し、果てしない忠誠を求める彼の要求に怒っている〉
〈彼らは自分自身の命と家族の将来生活に不安を抱いている。習氏への深い疑念を示す例は、数え切れないほどだ。中でも、習氏が断行した反汚職キャンペーンにもかかわらず、習氏の家族と政治的インナーサークルの人々が貯め込んだ富に対する国際的メディアの報道は重要である〉

〈内部の亀裂があきらかなのに、共産党全体をターゲットに据える戦略は洗練されているとは言えない。共産党に焦点を絞った戦略は、毛沢東以降、習氏まで5人の指導者の下では、米国と一緒に仕事をしていくのが可能だった事実を無視している。彼らが指導した中国は、自分たちが思うように国際秩序を作り直すのではなく、既存の秩序に参加することを目指していたのだ〉
〈中国指導層内部の亀裂に焦点を合わせた戦略は、非常に重要だ。米国の指導者たちはしばしば、中国共産党政府と中国国民を区別してきた。ワシントンはその先に進むべきだ。党エリートと習近平を区別するように、政府と党エリートも区別しなければならない。この点は、もっと穏健な習氏の後継者が姿を表してくるにつれて、一層重要になる〉

〈彼らの意思決定を変えるには、彼ら内部の政治的枠組みを理解し、操作し、時間をかけて、彼らの政治的かつ戦略的計算を変えていく必要がある。中国の振る舞いを変えようとする米国のすべての政策は、こうした現実の下で展開されるべきだ。そうでなければ、成果を生まない。この戦略は長期になる。習氏のような指導者が中国の政治機構に影響力を及ぼしてきた時間軸の下で、初めて機能するのだ〉

〈中国共産党は「戦争でもっとも重要なのは、敵の戦略を攻撃することだ」という孫武(注・孫子)の格言をよく理解している。米国もそうあるべきだ。米国の戦略は主要な同盟国と完全に調整されていなければならない。米国が勝利するためには、彼らが必要である。2020年代を通じて、中国と米国の戦力格差は縮小してきたが、米国の戦力が同盟国によって強化されるのであれば、そうした流れを変えることができる〉
以上で、論文が中国をどのように変えようとしているのか、あきらかと思う。

ようするに、習氏と不満分子との亀裂を深めて、習氏を権力の座から退場させる。そして、あわよくば、米国と良好な関係を築ける穏健な後継者の登場を促そう、としているのだ。ターゲットは中国共産党ではない。習氏その人である。

 共産党の「内部対立」を利用する

論文が発表されると、インドやパキスタン、英国、シンガポールなど英語圏で賛否両論を含めて、議論を巻き起こした(https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/the-world-reacts-to-the-longer-telegram/)。英フィナンシャル・タイムズは著名コラムニストのマーチン・ウルフ氏がコラムで取り上げ、習氏の独裁体制に対する評価に同意しつつも「論文が掲げた目標は達成できない」と指摘した。中国の経済的発展が目覚ましく、かつ潜在的な可能性にも富んでいる、という理由からだ(https://www.ft.com/content/83a521c0-6abb-4efa-be48-89ecb52c8d01)。

当の中国は、外務省報道官が記者会見で筆者が匿名である点をとらえて「闇の動機を持ち、臆病者」と批判し、論文を「米中新冷戦やイデオロギー対立を引き起こそうとするのは、時代の流れと人々の意思に反する」と非難した(http://www.fmcoprc.gov.mo/eng/zxxw/fyrth_1/t1850326.htm)。

一方、米国では、ダン・サリバン上院議員(共和党)が上院でのスピーチで「完璧ではないとしても、これまで私が読んだ中で最良の戦略を提示している。民主党であれ共和党であれ、みんなにこれを読んでほしい。対中政策が成功するためには、超党派が必要であり、数十年にわたって実行されなければならない」と語った(https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/the-world-reacts-to-the-longer-telegram/)。

共和党のダン・サリバン上院議員

日本との関連で注目されるのは、論文が台湾と並んで、尖閣諸島を米国の「核心的利益」の1つに位置付け、中国が越えてはならない「レッドライン」として例示した点だ。ここは力強い。論文は次のように書いている。
〈米国は中国のどんな行動を抑止するのか、また抑止が失敗した場合、どんな行動が米国の直接介入を招くかについて、あきらかにしておかなければならない。そんな行動について、中国が注意するように、高度な外交チャンネルを通じて、あいまいさを残さず、北京に通告しておくべきだ。…それには、尖閣諸島に対する中国のいかなる攻撃も含まれる〉
私は「習近平という独裁者はエリート党員との内ゲバで倒れる」という見方に賛成する。これは古今東西、左翼崩壊の一般理論と言ってもいい。独裁者はいかに政治をもっともらしく語ったとしても、自己保身が究極の目的である。同じように、普通の党員も出世すればするほど、自己保身が最大の行動原理になる。

幹部党員たちが習氏に不満を抱いている事実は、昨年8月に中国共産党から党籍剥奪処分を受けた党中央党校の蔡霞元教授が、英ガーディアンのインタビューに答えた中で、明らかにしていた(https://www.theguardian.com/world/2020/aug/18/china-xi-jinping-facing-widespread-opposition-in-his-own-party-claims-insider)。

お互いの自己保身が調和している間は、なんとか均衡を保てるが、やがて崩壊する時が来る。独裁者は1人しか存在できないからだ。1人、2人と消えていき、最後の2人に近づけば、互いの潰し合いが避けられなくなる。

すでに、そのプロセスは始まっているかもしれない。たとえば、習氏の側近中の側近と言われた王岐山国家副主席の部下たちは粛清され始めた(https://www.epochtimes.jp/p/2020/10/63035.html)。論文が習氏に焦点を合わせたのは正解、と思う。

【私の論評】日本は、アジアにおいて強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していくくらいのリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

第二のX論文の著者については、いまのところ、何の情報もありませんが、トランプ政権のときにそれに向けての動きがありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
米国務省の凄腕女性局長が「中国封じ込め宣言」 新冷戦時代の対中戦略を策定中―【私の論評】日本も文明論の次元で中国をとらえるべき時がやってきた(゚д゚)!
キロン・スキナー氏

この記事は、2019年6月18日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
     米国務省のキロン・スキナー政策企画局長の名前を知っている読者は、ほとんどいないと思う。

 シカゴ出身の黒人女性58歳。生粋の共和党員である。米ハーバード大学で国際政治学博士号取得。昨年8月に現在のポストに就くまでは、私立の名門、カーネギー・メロン大学教授(国際関係論)を務めた。

 スタンフォード大学フーバー研究所主任研究員、ニュート・ギングリッチ元下院議長の外交アドバイザー、ブッシュ政権(子)の国家安全保障教育委員会(NSEB)メンバーなどを歴任。同ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官との共著『レーガン大統領に学ぶキャンペーン戦略』は、共和党選挙関係者の間でバイブルとされている。

 このような大物を単なる局長であるが、長官直轄の政策企画局長に任命したのはマイク・ポンペオ国務長官だ。

 この人事は、同氏の慧眼に負う。その証しといえるのが、4月29日にワシントンで開催されたニュー・アメリカ(新米国研究機構)主催の「安全保障セミナー」でのスキナー氏の基調講演である。

 「中国はわれわれにとって、長期にわたる民主主義に立ちはだかる根本的脅威である。中国は経済的にもイデオロギー的にも、われわれのライバルであるのみか、数十年前まで予想もしなかったグローバル覇権国とみることができる」

 ドナルド・トランプ米政権が、中国を覇権抗争の相手国と見なしていることを明確にしたのだ。

 一方、「今後、米国史上初めて、白人国家ではない相手(中国)との偉大なる対決に備えていく」と発言、「非白人国家」という人種の違いに言及したことで物議を醸した。

 同発言への批判は別にして、筆者が注目したのは「米国務省は現在、中国を念頭に置いた『X書簡』のような、深遠で広範囲にまたがる対中取り組みを検討中」と語ったことである。

 言うまでもなくこれは、米ソ冷戦時代に対ソ連封じ込め戦略を打ち出した初代政策企画局長のジョージ・ケナン氏の『X論文』を念頭に置いたものだ。

 要は、新冷戦時代のための対中戦略を策定中と宣言したのである。

 想起すべきは、昨年10月4日のマイク・ペンス副大統領による対中“宣戦布告的”講演である。

 再びペンス氏は24日、ウッドロー・ウィルソン国際センターで講演する。米中和解からほど遠い内容になるはずだ。

 ちなみに、スキナー発言を紹介した新聞は、「産経新聞」(5月31日付)と、英紙フィナンシャル・タイムズ(6月5日付)の2紙だけだった。

 以上のことから「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題されたこの報告書が、キロン・スキナー氏によるものかどうかは、断定はできませんが、そうである可能性は十分にあります。これについては、いずれ明らかにされるでしょう。

当時は、米国と中国の対峙は文明論的に言って、不可避とされていましたので、私もこの記事の論評から文明論的な観点から、サミュエル・ハンチントンの考えを参考にして論評しました。興味のある方はぜひご覧になってください。

まだ、この報告書は全部読んでいませんが、それでもいわゆる文明論はあまり論じられていないことがわかります。しかし、これは当然なのかもしれません。中国共産党は中国文明の破壊者であり、古代中国とは何の関係もありません。

文明論の文脈でいうと、西欧諸国の民主主義を育んできた文化と、文化などとは縁遠い中国共産党の全体主義による、西欧民氏主義への挑戦ということはいえるかもしれません。

バイデン氏はCNNの生番組で「私は彼(習近平)が香港やウィグル、チベットでやっていること、台湾の1つの中国政策に対して触れるつもりはない」「それぞれの国は独自の文化を持っているから、その国の指導者はそれに従うべきだ」と述べています。

要はウィグルなどでの中国政府の残虐行為は「文化の違い」ということなのでしょうか。これは、個人の見解なのか、それともバイデン政権の見解なのか、良く理解できませんが、いずれにしても馬鹿げた発言であることには変わりありません。

このようなこともあるので、この論文では、いわゆる文明・文化は強調しなかったのかもしれません。

この論文で、最も注目すべきは、ロシアを中国同様に戦略的競争相手とした点や、中国共産党を攻撃目標としたトランプ政権を批判し、ロシアと中国の、そして習近平と中国共産党のデカップリングを図るべきと主張している点です。

また、中国には北朝鮮、パキスタン及びロシアぐらいしか信頼できる国はいないですが、米国には多くの同盟国があることが米国の強みだと国際的枠組みの重要性を強調していることです。

同論文に対しては、上の記事にもあるように、2月1日の中国解放軍報は、「新たな冷戦思考」に基づくイデオロギー対立をあおるものであり、時代の潮流に逆行し、一般的ではないと批判しています。

更には、米国安全保障専門誌であるThe National Interest誌では「習近平と共産党の間に亀裂など生じるはずもない。中国の高圧的な姿勢は習近平だけのものではなく、長期間続く」と批判する論文が掲載されています。

しかしながら、最近改正された中国国防法を見ても、習近平の権威が強化されていることは間違い無いです。同法では、習近平の、新時代の中国的価値を持つ社会主義思想を国防活動の指導的思想とし、中央軍事員会主席(習近平)が国防任務全般を調整、責任を負う、と規定されています。

中国人民解放軍は、国民国家の軍ではなく共産党の軍、もっといえば共産党の私兵であることに加え、習近平の軍であることが明確にされたと言えます。

2月4日に、バイデン大統領は「世界における米国の位置(America‘s Place in the World)」という外交方針に関する演説を行いました。この中で、トランプ前大統領の「アメリカ第一主義」からの変更という方針を示しました。

パートナー(カナダ、メキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、NATO、日本、韓国、オーストラリア)との協力強化と国際的枠組みへの復帰を明確にしています。ロシアに対し、志を同じくする国と協力し、新たなアプローチをとる、とした点が、中国とロシアのデカップリングを主張する大西洋評議会論文と一致します。

北大西洋評議会の匿名論文が、ジョージ・ケナンのいわゆる「X論文」と比肩し得る影響力を獲得し、第2のX論文となるのかどうか、今後のバイデン政権の外交政策への影響に注目されます。

ジョージ・ケナン氏

今後注目すべきは、バイデン政権の対ロ政策がどの様に変化するか、ナワリヌイ氏の拘束がその政策にどのような影響を与えるかでしょう。

中国に対しては、国益が合致する範囲で協力するとしていますが、その枠組みとして環境問題以外に何が含まれるかということでしょう。大西洋論文が主張する習近平と共産党のデカップリングは、どのような方策であれ、中国が態度を硬化させる可能性があり、実施することは困難にもみえます。

ただ、それは中国を他国と同じようにみているからであって、中国ほど他国の関係においても、国内の状況が大きく反映される国はありません。そもそも、中国においては外交はあまり重視されていません。それよりも、自国内部の都合が優先されるのです。ここに、習近平と共産党あるは、他派閥とのデカップリングのチャンスがあります。

日米電話首脳会談において「自由で開かれたインド太平洋」という概念が共有されたことは、日本外交の勝利であったと言えます。さらには、2月3日の日英2+2で、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け協力することがうたわれたことも同様です。

しかしながら、日米英の国益が完全に一致しているわけではありません。ただし、このブログでも以前掲載したように、日英はユーラシアというランドパワーに対峙している点では完全に一致をみています。それぞれの国の政策に落とし込んでいく段階で齟齬が生じる可能性は否定できないとはいえ、対峙している対象が同じという点では心強いです。

バイデン政権は同盟国やパートナー国との協力を優先するとしています。これは、逆の見方をすれば、トランプ政権のように米国一国でも、中国と対峙していく気はないと表明しているともいえます。

日本政府としてはバイデン政権の対中政策に積極的に関与するだけではなくアジアにおいては英国とともに、米国よりもより強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していく、くらいのリーダーシップを発揮していくべきです。

実際、「インド太平洋地域の平和と安定」においては、当初は安倍総理がこれを主張し、トランプ政権を牽引しました。Quad(日米豪印)についても、安倍総理が最初に主張したものです。そうして、これにいずれ英国も参加しそうです。対ロ政策については、北方領土問題が置き去りになることのないような事前調整が求められます。

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2021年2月18日木曜日

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 菅首相が中国にガツン! 海警法施行などに「冷静かつ毅然と対応」 QUAD外相会合18日にも開催

中国への毅然とした対応を強調した菅首相

 菅義偉首相が、中国に強い態度を示した。17日の衆院予算委員会の集中審議で、中国が海警局に武器使用を認める海警法を施行したことなどについて、「冷静かつ毅然(きぜん)と対応したい」「わが国の懸念を中国にしっかりと伝えたい」と明言した。また、日本と米国、オーストラリア、インドによる事実上の中国包囲網「QUAD(クアッド)」の外相が18日にも会合を開くことが分かった。

 集中審議では、国民民主党の前原誠司元外相が質問に立ち、海警法に関して、「国際法違反の懸念があると明確におっしゃいませんか」と菅首相に答弁を求めた。

 菅首相は「国際法との整合性から問題がある」と語った。

 さらに、尖閣諸島に関する質問に、菅首相は「切れ目のない対応を十分に行うため、引き続き、大型巡視船の整備や自衛隊の能力向上を図り、わが国の領土・領海・領空を断固として守るという方針のもと、冷静かつ毅然と対応したい」と強調した。

 こうしたなか、米国務省のネッド・プライス報道官は17日、日米豪印の外相によるオンライン会合を18日にも開催すると発表した。

 4カ国による外相会合は昨年10月に東京で開催して以来で、ジョー・バイデン政権発足後は初めて。

 中国が軍事的覇権拡大を進めるなか、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に向けて協議する見通しだ。

【私の論評】「二階おろし刺客SHKトリオ」のほうが「菅おろし老人NHMトリオ」より、現状では相対的に有利(゚д゚)!

この菅総理の発言、ひさしぶりの中国に対する明快な発言でした。そうしてなにやら自民党内の派閥政治の変化を伺わせます。ほんの数ヶ月前までなら、菅総理は、二階氏に配慮して、ここまではっきりと中国に対する発言ができなかったのではないかと思います。

二階俊博氏

自民党内で何かが変わっているとしか思えません。二階氏は、習近平を国賓待遇で迎え入れ
ことを、どこまでも譲らない自民党のいわば癌です。このブログでも昨年掲載したように、米国のピューリサーチセンターの世論調査では、日本人の89%が中国に対してネガティブな見方をしています。

それに、最近では米国が中国によるウィグル人への迫害を「ジェノサイド」であるとしました。さらに、日本ばかりではなく、中国が起因となったパンデミックで苦しみました。このようなことがあるにもかかわらず、たとえコロナが収束した後にしても、習近平が国賓来日して、天皇に謁見することでもあれば、自民党は国民から総スカンをくって、菅政権の支持率はかなり落ちるのは、目に見えています。

しかし、二階氏中国に対する宥和姿勢を頑として、崩しません。これでは、国民はもとより、自民党内でも二階氏に対する批判が高まるのは当然です。
自民党の “骨格3ポスト” とされる幹事長、党紀委員長、金庫番の経理局長を、二階派が占めています。これは、いつでも他派を 強請ることができる ということです。 二階さんは “キングメーカー” を気取っているようですが、二階派だけではなく、他派閥の支援かなければ、菅さんは勝てなかったかもしれません。ましてや、党内で二度と、石破氏の芽が出ないように、叩き潰すことはできなかったかもしれないです。党内で不満が出るのも時間の問題だったといえるでしょう。 そうして、権謀術数が渦巻く永田町に今、“二階おろし” の狼煙が上がり始めているといわれてます。 2021年春にかけて、東京五輪開催の可否が判断され、新年度予算も成立します。それらが終わったら “二階おろし” が始まると囁かれています。その中心となるのが、“反二階” の急先鋒として動いている『SHKトリオ』だというのです 「S」とは、世耕弘成参院幹事長(58)を指します。 世耕氏は、次の衆院選で二階さんの選挙区である和歌山3区から、鞍替え出馬する意思を固めています。周囲には、「私には、まだ時間があるから焦らない」と言っているようですが、世耕さんは衆院に転じれば、細田派の総裁候補の目が出てきます。 世耕氏は選挙に自信があって、二階さんが相手でも、後継と目される二階さんの三男が相手でも「勝てる」と踏んでいるようです。 そうして、「H」は林芳正元文科相(60)、「K」は河野太郎行革担当相(58)です。党内から上がる “反二階” の声の出所を探ると、“HとK” の周辺に行きつくとされています。




2012年に総裁選に出馬した林氏と、新聞の世論調査で “次期首相にふさわしい政治家1位” になった河野氏は、いま政界で一挙手一投足が注目される存在です。 林氏は2021年、「次期衆院選で山口3区へ鞍替えする」と宣言しましたが、同区は二階派の河村建夫元官房長官の地元で、二階氏は林氏に激怒しました。二階氏は、「売られた喧嘩は買う」と集会で啖呵を切ったのですが、林氏も折れる気はなく、無所属でも出馬するつもりのようです。 河野氏が “ワクチン担当大臣” をまかされた件でも、二階氏は「誰でもやれるのに」と、起用に不快感を露わにしました。官邸からの根回しがなかったようですが、このところ菅首相と二階氏のあいだには、隙間風が吹いているようです。 河野氏は次期総裁選で菅氏の後ろ盾が欲しいので、菅首相に恩を売っておきたいわけで、親しい議員たちが “反二階” で呼応している構図のようです。 最近動き始めた「二階おろし」は、「SHKトリオ」がこうして外堀を埋め、重鎮たちが二階氏へ “最後通牒” を突きつけるというシナリオです。 二階さんを幹事長から外さずとも、実質的な力を削ぐ必要があります。麻生さん、各派閥領袖、二階派最重鎮の伊吹(文明・元衆院議長)さんがまとまって、「もう、政府の言うことに口を出さないで」と二階さんに “忠告” することになるかもしれません。あるいは、もうしているかもしれません。 菅総理は無派閥なので、二階派よりも、政権運営を安定させて、総選挙に臨むために、数が多いほうに与することでしょう。

このブログでも何度が掲載しましたが、本当は、世界的に見ても素早く、手厚い日本のコロナ対策なのですが、なぜかマスコミや野党から言わせると、後手後手に回ったと言われるコロナ対策でひところ菅政権が窮地に陥っているともいわれていました。実際、支持率も下がってはいました。

その菅政権の命運を決めるのは、4月25日に行なわれる北海道2区と参院長野選挙区のダブル補選です。

北海道2区は鶏卵業者から現金を受け取り、東京地検特捜部の捜査を受けて自民党を離党した吉川貴盛・元農水相(議員辞職)の後任を争い、参院長野選挙区は立憲民主党の羽田雄一郎・元国交相がコロナで急死したことによる補選です。

長野は雄一郎氏の弔い合戦で、後継候補が出馬すれば勝利の可能性が高いです。北海道2区もスキャンダル批判で自民党に勝ち目はないということで、1月15日に自民党は候補擁立断念を表明しています。連敗すれば党内から“菅義偉・首相では総選挙を戦えない”という声が噴き出し、政権の致命傷になり得ます。

“政権の余命は3か月”というわけです。そうした“菅降ろし”のタイミングを虎視眈眈と見計らっているのが、二階俊博・幹事長、林幹雄・幹事長代理、森山裕・国対委員長の「3人組」です。

    二階俊博幹事長(中央)、林幹雄幹事長代理(右)森山裕国対委員長(左)
    =党本部で2018年10月18日午前11時45分

こちらは、老人NHMトリオというわけです。

昨年の総裁選では、菅氏を総理・総裁に担ぎ上げる原動力となりました。ところが、昨年12月のステーキ会食が批判されて以来、頻繁だった3人組と菅首相の会合がパッタリなくなりました。これは、ステーキ会食はきっかけに過ぎず、上であげた、SHKの動きがあったからでしょう。

菅首相は支持率急落に合わせるように3人が自分と面会しなくなったことに、“菅降ろしに動くつもりなのでは”と疑心暗鬼になっているようです。二階さんは菅政権の生みの親ではあるのですが、菅首相の続投にはこだわっていません。野田聖子氏を幹事長代行に抜擢し、石破茂氏についても『まだ可能性はある』と発言するなど、ポスト菅候補2人を手駒にしています。

ただ、石破茂氏に関しては、自民党内では人気が最も低く、はっきりいえば自民党の大部分の議員が「あいつだけは総理大臣にしたくない」と思っています。総裁選で負けるのは当然でしたし、自民党内では、石破氏を総裁選で最下位にするための、駆け引きがあったことは確かなようです。そのため石破氏の芽は完璧に摘まれてまったと言っても良い状況なので、石破氏を手駒にすることは自民党内でかなりの大反発を招いたのはあきらかです。

自民党内は、キングメーカーの二階氏ら「老人NHMトリオ」がどんなタイミングで動くかに注目しているようです。

もちろん、菅政権の“大幹事長”として好き放題に権勢を振るってきた二階さんへの不満も党内には根強くあります。下村博文・政調会長がわざわざテレビ番組で、2か月後の補選で2つとも負けたら「政局になる可能性もある」と言及したのですが、政局となれば選挙の責任者である幹事長は当然、総理と一緒に退場してもらうのが筋です。

補選のうちすでに一つは自民党は候補者を出さず、負けたも同然の状況です。参院長野選挙区はどうなるかは未知数ですが、自民党は小松裕(59)を擁立、立憲民主党は、羽田氏の実弟である羽田次郎氏を擁立しました。

この選挙で勝てば、菅政権にとっては優勢になり、無論SHKトリオは有利になるでしょう。この選挙で負けて、この負けが政局になれば、二階幹事長も菅総理も辞任ということになるでしょう。

政局にしなければ、両方とも辞任はしないでしょう。それよりも、両者とも今後の衆院戦に向けて、自民党を立て直すことに注力することになるでしょう。

そうなるとやはり、先に述べた「SHKトリオ」のほうが「老人NHMトリオ」より現状では相対的に有利と考えられます。

現状はまだ見極めが難しく、今後どうなるかはわかりませんが、今回の総理の中国に対する明快は発言からみると、「SHKトリオ」のほうが、優勢なようです。

今後、習近平の国賓待遇で来日を無期限延期か、断るということにでもなれば、「SHKトリオ」が圧倒的に優勢になったとみるべきでしょう。

そうして、そのほうが日本にとっても良いです。私としては、今日なぜ二階氏が中国に対してあれほどまでに宥和的なのか理解に苦しみます。

二階氏の最大の矛盾は、自民党本部ビルの九階の幹事長室にいることかもしれません。「老人菅おろしNHMトリオ」は従来は、菅政権を支えてきました。その状態に戻ることが、自民党もやりやすいはずです。ただし、そうなったからといって、中国宥和政策をすすめようというなら、幹事長室から追い出すべきです。

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2021年2月17日水曜日

ワクチン接種開始、あなたはいつ打てる? AIが予測 優先対象でない人は4~10カ月、供給遅れる懸念も―【私の論評】ワクチンに関しては、煽りまくるマスコミ等はあてにせず、自ら情報源を用意せよ(゚д゚)!

 ワクチン接種開始、あなたはいつ打てる? AIが予測 優先対象でない人は4~10カ月、供給遅れる懸念も

   2月17日朝、新型コロナウイルスのワクチン接種が日本で始まった。写真は
   国立病院機構東京医療センターで行われたワクチン接種のようす。

 新型コロナウイルスの流行収束の切り札と期待されているワクチン接種が17日、いよいよ国内で開始した。第1例目は、都内の病院で、米ファイザー製ワクチンが医師へ接種される。7月には東京五輪・パラリンピックも予定されており、ワクチンの順調な供給と接種態勢の整備が課題となる。

 政府は国立病院機構の施設など、まず全国100カ所の病院で同意を得た医療従事者4万人に先行接種して安全性を確かめる。1瓶当たり6回接種できる特殊な注射器を使用、2回目の接種は3月10日以降になる。

 その後、新型コロナ患者の診療や搬送に関わる推計370万人の医療従事者にも接種する予定。

 次に優先される65歳以上の高齢者約3600万人について、河野太郎行政改革担当相は16日の記者会見で、「4月から接種を開始することを見込んでいる」と明らかにした。接種期間は2カ月と3週間を想定しており、遅くとも7月には接種を終える見込みだ。


 続いて60~64歳の人や、糖尿病や慢性腎疾患など基礎疾患のある人、高齢者施設のスタッフと対象を広げていく。河野氏は全ての対象者への接種がほぼ終了する時期は「まだ定かではない」と明言を避けた。

 JX通信社が運営するNewsDigest(ニュースダイジェスト)アプリの「AIワクチン接種予測」では、年齢と居住地、職業や基礎疾患の有無などを入力すると、自治体への独自調査や公表データに基づいたAI(人工知能)による接種時期の予測が表示される。首都圏と関西圏の都府県庁所在地在住者について年齢別に予測をまとめたのが別表だが、優先対象でない人は、接種まで4~10カ月程度かかりそうだ。

 ワクチンをめぐってはファイザーの工場がある欧州連合(EU)の域内では輸出管理を強化、供給が遅れる懸念が出ている。また、政府や自治体側の準備もカギを握る。

 JX通信社がワクチン接種の準備状況について全国の自治体に実施したところ、五輪開催が予定されている7月より前に全員の接種が終わるとした自治体は有効回答の約2%、「年内には終わらない」とした自治体は約23%を占めた。

【私の論評】ワクチンに関しては、煽りまくるマスコミ等はあてにせず、自ら情報源を用意せよ(゚д゚)!

「AIワクチン接種予測」のアプリは以下より入手できます。


さて、コロナウイルス・ワクチンの接種までは、一般の人の場合まだ時間があります。それまでの間、マスコミが危険性を煽るのは間違いないでしょう。それはなぜかといえば、昨日のこのブログに掲載したように、彼らの最終目標は、様々な危機を煽り、最終的には倒閣をすることです。これに、興味があるかたは、ぜひ昨日の記事を御覧ください。

ワクチンを打った直後に生じる様々な健康被害を「有害事象」といい、そのなかに「副反応」が含まれることを認識していただきたいです(下図参照)。ワクチンに関しては、その他にも知っておかなければ、ならないことが山程ありますが、それをすべて掲載すると論点がぼやけるので、本日はこの「有害事象」についてのみ掲載します。


実は、ワクチン接種後に起こる望ましくない出来事は、すべて「有害事象」といい、そのなかに「副反応」が含まれるのです。

有害事象にはワクチンを打った後に偶然、起こった症状や病気も含まれます。予防接種では、接種後に生じたすべての望ましくない出来事を有害事象としていったん吸い上げ、そこから、ワクチン接種と因果関係があるものだけを副反応としています。有害事象イコール副反応ではないので、注意が必要です。

例えば、ワクチン接種後に心筋梗塞が生じたという事例が、1例だけ起こったとします。ところが、“ワクチン接種後に心筋梗塞”という事象だけでは、この心筋梗塞が副反応かそうでないのかわかりません。この人が心筋梗塞を起こしたのが“たまたま接種後だった”という可能性もあるからです。

この事例と同じ年齢やバックグラウンドの人たちがどれくらい心筋梗塞を起こすリスクがあるのか、そういったことを統計学的に調べて、有意差を検証しなければ、何ともいえないのです。

日本感染症学会ワクチン委員会が12月下旬に出した「COVID-19ワクチンに関する提言」でも、「接種後にみられた有害事象がすべてワクチンによるものとは限りません。対照群と比べて接種群で統計学的に有意に高い頻度で有害事象が見られた場合に、ワクチンによる副反応の可能性が高くなります」と述べています。

では、どういうものを副反応というのでしょうか。

まず、ワクチン接種をした場所で痛みが出たとか、腫れたとか、そういう局所の反応は明らかに因果関係があるわけで、対照群と比べて多ければ副反応と考えられます。また、打った後に熱が出たり、だるくなったりするのも、副反応の可能性は高いです。ただ、こうした反応が一定数起こるのは、ワクチン接種では避けられません。

ちなみに、新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発に関わる製薬企業が明らかにした臨床試験データでは、臨床試験の有害事象(2回目接種後)の頻度は次のとおりです。
・ファイザー社のワクチン(BNT162b2)/痛み78%(対照群は12%)、発熱(38℃以上)16%(0%)、倦怠感59%(23%)(16~55歳までのデータ)

・モデルナ社のワクチン(mRNA-1273)/痛み90.1(18.8%)、発熱17.4%(0.4%)、倦怠感67.6(24.5%)(18~64歳のデータ)
ファイザー社のワクチン

アレルギーについては臨床試験のタイミングでは報告がなかったのですが、ファイザー社のワクチンで、接種後にアナフィラキシーという深刻なアレルギー反応を起こしています。米国のCDC(疾病対策センター)によると、10日間・約190万回の接種で、21件のアナフィラキシーが報告されています。

このケースのほとんどで、過去にアナフィラキシーを起こしていました。ですので、こういった人たちには接種を勧められません。ただ、こうしたアレルギー反応も新型コロナウイルス感染症のワクチンに限らず、一定の割合で起こります。

例えば季節性インフルエンザワクチンでは、2018‐19年シーズンの予防接種では約5251万回の接種がありましたが、このうち9例がアナフィラキシーと認められています(厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報)。

ここまで有効性と副反応についてみてきたのですが、ワクチン接種では、健康な人が病気にかかることを予防する効果というベネフィットと、副反応というリスクを比較することになります。

そこが、すでに病気にかかっている人が、薬や手術でベネフィットを受ける治療とは大きく意味合いが異なります。当然だが、これまで承認されているワクチンはすべて、ベネフィットがリスクを上回るものです。

さらに、そのベネフィットとリスクの関係も、接種する対象者によって変わります。

例えば、新型コロナウイルス感染症では高齢者で高率に重症化し、死亡率が上がります。そのため予防接種におけるベネフィットが大きいです。対して、重症化しないといわれる若年者では、ワクチンを打つベネフィットは高齢者ほど大きくありません。

ただ、これはある一側面だけを見た場合そういえるということです。

ワクチン接種のベネフィットには、社会的な感染を防止して、病気の蔓延を防ぐということもあります。ただそれが個人のベネフィットに必ずしもつながらないところがあり、そこはもっと啓発活動が必要でしょう。新型コロナウイルス感染症では若年者でも後遺症に苦しむことがあるので、予防接種の意義があるという啓発も必要です。そこは男性への風疹ワクチン接種の事例が似ているかもしれません。

風疹に関しては、妊娠初期にかかった妊婦の子どもに先天的な心疾患や難聴、白内障などが生じる風疹症候群という問題があります。そのため個人の発症を防ぐためだけでなく、妊婦への感染を防ぎ、生まれてくる子どもを守るために、国は予防接種を受けていない40~50代の男性への抗体検査と予防接種を呼びかけています。新型コロナウイルス感染症では、それと同じ、あるいはそれよりもっと強いメッセージが必要でしょう。

予防接種政策を進めるには、コミュニケーションが重要です。予防接種では、医師と被接種者と双方向のコミュニケーションが大事で、医師は受ける方の質問、疑問に的確に答える必要がありますし、副反応の対応法もお互いに理解していなければなりません。それにはとにかく偏りのない情報公開が必要。国はもとより、製薬企業の関係者も一体となって、正確な情報を発信してほしいものです。

私達にとって最も重要なのは、コロナワクチンに関して、テレビのワイドショーだけが、情報源というのではなく、市町村、都道府県、医師、製薬会社などにも、間口の情報を広げることです。

私としては、テレビのワイドショーでは不安を煽られるだけですから、このようなものは見ないようにして、信用できる情報媒体を自ら用意しておくべきと思います。

厚労省のサイトもその一つと思われます。以下にリンクを貼っておきます。


ワクチンを接種する医師や、医療従事者、各自治体関係者には、ファイザーが情報を提供しています。そのリンクを以下に掲載します。


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2021年2月16日火曜日

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 コロナ対策難しい「民主主義国」 ユルい規制でも優等生の日本、トップレベルの財政支出が奏功 

高橋洋一 日本の解き方

昨年5月、緊急事態宣言発令中の東京・新宿の繁華街
 新型コロナウイルスの感染拡大について、「民主主義国」と「非民主主義国」のどちらが封じ込めやすいのか。

 答えを先に言えば非民主主義国だ。感染拡大の防止のためには、人々の行動を制限するのが手っ取り早いが、非民主主義国では国家による強制的な措置が迅速に行えるからだ。

 もちろん、民主主義国の中でも、適切な手続きにより非常事態宣言をあらかじめ規定し、それを適切に行使して対応することもできる。となると、新型コロナ拡大の防止について、非民主主義国ではほとんどの国で容易だが、民主主義国では、防止できる国とそうでない国が出てくると予想される。

 英誌『エコノミスト』は毎年「民主主義指数」を公表している。最新の2020年版の指数に基づく各国の民主主義の度合いと、世界163カ国の新型コロナによる100万人当たりの死者数を数値化してみる。

 すると、民主主義指数と100万人当たり死者数の相関係数(1が最大)は「0・46」だ。

 これは、民主主義国にとっては辛い数字だ。見方を変えれば、新型コロナ対策は民主主義国にとって試練とも言える。

 といっても、民主主義国の中にも、新型コロナ対策で結果を出せる国もなくはない。要するにやり方次第とも言える。

 民主主義指数(10が最大)で8より高く、人口100万人当たりのコロナ死者が200人より低い国は、世界の中でも優等生といえるが、163カ国中10カ国しかない。それらの国は、オーストラリア、フィンランド、アイスランド、日本、モーリシャス、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、台湾、ウルグアイだ。日本はこうした意味で世界の優等生でもある。

 今回の日本の新型コロナ特措法改正をみても、民主主義国で私権制限を伴う法改正は難しい。特に日本の場合、平時に憲法を改正して緊急事態条項を盛り込むことすら議論できなかったので、有事の対応が全くできていない。

 新型コロナ特措法の強制措置は一般人が対象ではなく、特定者に対するものだ。にも関わらず、一部野党やマスコミは反対した。通常の民主主義国でも、憲法で非常事態条項があり、一般人の行動も強制的に規制でき、その担保として一般人に対する罰則もある。

 それにしても、一部マスコミが新型コロナ特措法で罰則を批判していたのに、その批判を受け法改正が行われると、今度は一転して規制強化を言い出したので、節操のないマスコミ体質を露呈させてしまった。

 日本の新型コロナ対策は、一般人に対する行動規制が不十分にもかかわらず、良い結果を出している。それは、財政支出の大きさであると筆者はみている。

 新型コロナ対策について、日本の財政支出は世界トップレベルだ。日本で法によるムチはないが、カネによる十分なインセンティブ(札束のムチ)を与えたことが奏功しているのだろう。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マスコミの最終目標は、森叩きのホップ、ワクチン叩きのステップ、オリンピック叩きのジャンで、菅政権を退陣に追い込むこと(゚д゚)!

日本のコロナ対策財政支出は滑り出しからかなり良好でした。各国のコロナ対策各国主要経済対策は以下のようものです。昨年5月の数値に基づいたグラフです。

クリックすると拡大します

日本は、財政支出が米国について世界第三位です。日本は中国よりも支出しているのです。

上のグラフは、実額ですが、コロナ対策費のGDPに占める割合については下のグラフを御覧ください。

新型コロナウイルスをめぐる経済政策パッケージの規模をGDPにおける割合でみた場合の上位20カ国


なんと、日本は世界第二位です。これも昨年5月に作成されたグラフです。米コロンビア大学経済学部のセイハン・エルジン教授は、世界中の同僚と連携し、166カ国の対応を追跡しました。

エルジン教授の試算によると、最も積極的な対応のひとつが日本政府が打ち出した、同国の国内総生産(GDP)の約2割にあたる108兆円規模の政策パッケージだとしています(日本を上回っているのは、欧州連合の基金からの利益を受けるマルタのみ)。

他国と比べると、米国はGDPの約14%、オーストラリアは同11%、カナダは同8.4%、イギリスは同5%、コロンビアは同1.5%、ガンビアは同0.6%にあたる救済支出を打ち出していました。

しかし、中央銀行の対応など支出以外の手段を考慮すると、この順位は変わるそうです。

例えば、欧州の主要国では、ロックダウンによる打撃を受けた事業者に対し、新たな融資を保証すると政府は約束しています。これには、銀行の融資を維持し、破綻を回避する意味合いがあります。

そうして、これは2つのグラフのうちの、上の右側のオレンジ色のグラフに相当します。ただし、ここでも日本は実額では、世界第五位です。

米中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)も同様の目的で融資計画に踏み込んでいます。

こういった対応を考慮すると、フランスが最上位となり、イギリスは47位から5位に浮上する。

エルジン教授によると、最大規模の支出がなされたのは、より裕福で歴史が長く、病床がより少ない国だったといいます。投資家が債権購入に意欲的で、低い借入コストの恩恵を受ける米国や日本などの国もまた、新たな財政支出を調達する上で有利な立場にあるといいます。

その後の新たな統計は、ネット上では発見できなかったので、昨年5月のグラフのみを掲載しましたが、いずれにしても、日本は安倍政権による世界でもトップクラスの経済対策を行っており、その後も菅政権による第三次補正予算も成立していますし、現状でも世界屈指の対策を行っているのは間違いありません。

コロナウイルス対策のような、感染症対策は、きめ細かな対応をしなければならないこともあって、政府のできることは元々限られています。実際に実施するのは、都道府県や市町村です。政府が直接実行するのは、財政支出をすることくらいです。そうして、これは十分に行っています。

ただし、コロナが収束した後に、財務省は古今東西どこの国にも存在していない、自然災害の復興を税金で賄うための復興税制のような最低最悪のコロナ増税を考えているようですが、それはまた別の話として、現状においては政府は十分にコロナ対策を実施しています。

緊縮で終始した、平成年間を考えると、考えられないことです。さすがの財務省も目の前のコロナ禍に対してまで、緊縮をつらぬくことはできなかったようです。おかげて株価も3万円台を回復しました。

そのためでしょうか、最近ではいわゆるイタリアでは、韓国では、ドイツではどうのこうのという出羽守的な報道はできなくなったようです。何しろ、日本よりも財政支出をしている国はほとんどないからです。

そのためでしょうか、マスコミは政府批判のための幼稚な報道を繰り返しています。

昨年「GoToトラベル」について、マスコミは止めろとの大合唱でした。GoToトラベルによる人の移動は全体の1%程度しかなく、コロナ感染拡大の「元凶」になっているとは言いがたいです。 それに、これによる経済効果はかなりありました。コロナ対策としては、かなり筋の良いものでした。

にもかかわらず、非合理にもマスコミは止めろと主張しました。政府は、それを受けて「とりあえず」止めました。感染が止まればそれでよし、止まらなければGO TOは無関係とわかるのでよし、だったのでしょう。 

一方でマスコミは政府が「GoToトラベル」を中止すると、「観光が大変だ」と、まるでマッチポンプのような報道を続けました。GoToを止めても感染者増加したため、マスコミの主張はデタラメだったことが露呈しましたが、反省はありません。 

昨年12月はじめの新型コロナ対策についても、マスコミは「大きすぎる」と批判しました。その後の新型コロナ対策を見据えたものだったが、マスコミはほんの少し先も見えないようです。

 そうして、今年1月に政府が出した緊急事態宣言について、マスコミは「遅すぎるし、支援が少ない」と批判しました。流石に道理が通らなすぎです。

ほんの2ヶ月前の12月初めに、緊急事態宣言が再発令に備えた予算額を用意したのに、「遅すぎるし、支援が少ない」とはあきれかえるしかありません。しかも、2ヶ月前には「大きすぎる」と批判したことをすっかり忘れています。 日本はすでに世界最高レベルの対策予算を用意しているので、各種の施策が徐々に動き出しています。

日本医師会から「医療崩壊」の危険性が叫ばれていますが、昨年5月の2次補正予備費10兆円に対して、大きすぎると批判したのはマスコミと一部野党です。それで都道府県の関係者が萎縮してしまったのです。 

昨年夏頃に新型コロナがひと段落したと判断されたため、現場の医師会、知事からの具体的な要請もなく、積極的な予算消化もないまま、無為な時間を過ごしてしまったのです。先に述べたように、政府がコロナ対策でできるのは、財政支出することであり、具体的に動くのは都道府県や、市町村です。これらが、マスコミの批判などで動きにくかった面は否めないです。

マスコミ今度は、際限のない森氏叩きをはじめ、これをもって、政府をさらに追求しようとしているようです。そうして、「もり・かけ・桜」では安倍氏を退陣に追い込むことができないばかりか、安倍氏が辞任してしまったため、ここしばらく、政府批判が滞っていたところに、降って湧いたかような森氏問題で、森氏を辞任に追い込むという成果を上げ、久々の成功体験を得ることができました。

そうして、これだけでは弱すぎるので、次のワクチンで政府を追求しようと虎視眈々と機会を狙っていることでしょう。その後は、オリンピックを開催しても、開催しなくても政府批判を繰り返すことでしょう。

ワクチン接種は2月17日医療関係者からと予定されていますが、その予算手当は、昨年5月の2次補正で1300億円計上されています。このワクチン接種は、予防接種法に基づくものなので、実務についてこれまで厚労省中心で都道府県、市町村で検討されてきました。昨年12月には実務マニュアルも作られ、自治体向けに説明会も行われています。 ワクチン接種に伴う冷凍施設や配給体制も整備されつつあります。もちろん、全てが予定通りに行かないかも知れないですが、万全の準備を国民すべてで行わなければいけないです。 

実務マニュアルなどによれば、接種券(下記)が届いた人は、厚労相が開発したシステム(V-SYS)において市町村で用意された接種施設の予約空き状況を確認し、予約を入れ、接種するという流れです。

接種した人には、「接種済証」が渡されます。 もっとも、この種のシステムではいつもあることだが、予定通りにいかないことも珍しくないです。その場合、マスコミは猛烈に批判するでしょう。 

なぜマスコミはワクチン接種を狙うかというと、こうした初めての事態に対してミスは起こりがちで、それを批判しやすいからです。そして、これまでにマスコミはワクチン接種批判で「成功体験」があるからです。

 それは、予防接種法の改正を見るとわかります。 1948年制定当初は義務接種であり、違反した場合の罰則まで規程されていました。しかし、1960年代あたりから集団接種などで、複数の人に対して注射針を変えずに接種するなどの不適切事例があり、1976年改正で、罰則なし義務接種となりました。 

1980年代から、予防接種の副作用に関するマスコミ報道が多くなり、そうした世論に押され、予防接種法改正で定期接種は努力義務とされるようになりました。その結果、各種接種率は低下し、感染症流行の一因ともされています。

数十年前は、日本でも集団接種が当たり前だったのですが、今ではそうではありません。欧米では、子どもに対する予防接種は、日本より多く行われています。 日本のワクチン新規導入は、欧米先進国よりも明確に遅れており、これは「ワクチン・ギャップ」として知られています。 その一因となっているのが、一部のマスコミによる過剰な副作用報道です。 最近の例では、子宮頸がんワクチンの事例があります。一部の大手新聞が、ワクチンの副作用を強調する報道を行ったことをきっかけに、ワクチンが危険という風潮が広がり、結果として、厚労省はワクチン接種の方針転換を余儀なくされました。こうした方針転換の理由は他国では見られないことから、ただちに世界保健機関(WHO)からも非難されました。 こうした一部マスコミの煽り記事により、ワクチンを打っておけば助かったであろう人が結果として大勢亡くなっています。

ワクチン接種は、新型コロナ対策の要です。政府とマスコミの情報戦になりうる可能性もあるため、政府にはバランスのとれた情報発信をしたいところです。
河野太郎氏がワクチン大臣に任命されたのは、マスコミの報道にうんざりした政府が情報戦を制するための人事と認識すべきです。

いずれにせよ、マスコミは、今後コロナワクチン接種で、失敗しようが成功しようが、政府を批判します。そうして、オリンピックを開催しようがしまいが、批判します。

最終目標は、森氏叩きのホップ、ワクチン批判のステップ、オリンピック開催・未開催批判でのジャンプで、菅政権を退陣に追い込むことです。

彼らにとって、正しい、間違いなどどうでも良いのです。国民のことも二の次です。とにかく、倒閣することだけが、彼らの最終目標なのです。

このブログにも掲載したように、マスコミの寿命はあと10年です、彼らとしては、生き残りよりも最後の徒花を咲かせることに血道を上げているようにしか見えません。

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2021年2月15日月曜日

世界最大の関心事の中心人物の利益相反、なぜメディアは報道しない?―【私の論評】生物兵器は陰謀論の類かもしれないが、武漢ウイルス研究所から漏れた可能性も視野にいれるべき(゚д゚)!

世界最大の関心事の中心人物の利益相反、なぜメディアは報道しない?


<引用元:デイリー・コーラー 2021.2.13

COVID-19の起源を調査する世界保健機関(WHO)調査団の重要メンバーの1人は、ウイルスが研究所から流出したものではないと判定することに既得権益を持つ可能性があることを示す長い経歴を持っている―そしてメディアはそのことにほとんど触れていない。

WHOが最近武漢を訪れたことは多く報道されたが、調査団で唯一の米国市民であるピーター・ダスザック博士とその素性を明らかにするにはほとんど役に立たない。ダスザックは武漢ウイルス研究所(WIV)と長期の財務上の経歴を持っていることが、過去の報道で明らかだ。彼は2020年初めに、研究所と北京が厳しい目を向けられるのを和らげるために、研究所流出の仮説は「陰謀」だとするPR活動も組織していた。

ビーター・ダズザック博士

WHOの調査団は最近任務を終え、ウイルスの起源が研究所である可能性は低いと宣言したが、数時間後には主張を急転換させた。それまでには、北京の主張に同調する何十もの親中国的な見出しがすでに公開されていた。

報道関係者は広くWHOの調査結果を報じ、ニューヨーク・タイムズのようなメディアは「武漢へのWHO派遣後、中国が広報活動の勝利を飾る」と宣言した。

NBCもニュースを報じ、「研究所で働いていた中国人研究者」をウイルスが研究所から漏れたという説を打ち消した中の一部として言及した。ビジネス・インサイダーは、WHOの専門家は調査後の研究所の説を非常に確信しているため完全に「仮説を議論から外す」ことができると書いた

BBCニュースAP通信社のような他のメディアは、報道でダスザックを引用さえしたが、彼が研究所とその研究に直接的な資金のつながりを持っていることは伝えなかった。AP通信社は、ダスザックが調査団は「期待していたよりも高いレベルのオープン性を享受し、要求した全ての場所と人物に完全に接触することを許可された」と述べたと書いた。

ダスザックがひけらかした「オープン性」のレベルは実際には正反対だったことが後に判明した。ウォールストリート・ジャーナルによると、中国はWHO調査団に重要な情報を差し控えた。

CNNのベッキー・アンダーソンも調査についてダスザックと話した。約5分の中で、アンダーソンはダスザックに武漢研究所との経歴や、パンデミック当初から研究所説を公然と非難していたことについては何も質問しなかった。

仮説では、COVID-19が中国武漢の研究所から漏れた可能性があると主張している。メディアのメンバーは、ツイッター上の中国工作員と共に、1年近くその説を「根拠の無い」陰謀として退けてきた。

10日、WHO調査団の発表が研究所流出説について反論した後、ダスザックは国務省と米国情報機関がやみくもに同団体を信頼しなかったことを批判した。国務省のネッド・プライス報道官は9日、同省がWHOの報告書を検証するまでは調査結果に関して結論は出さないと述べた。

ダスザックはプライスのコメントに対してツイートし、人々に「米国のインテリジェンスに過度に依存」しないよう提案した。また彼は、ホワイトハウスはまず調査団を「信頼」してその後で情報を「確認」すべきだと書いた。

ジョー・バイデンの国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンは13日、歯に衣着せぬ言葉で異議を唱えた。

国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバン氏

「我々はCOVID-19の早期調査結果が伝えられた方法に大きな懸念を持っており、そこに至るのに使用された手続きに疑問を持っている」とサリバンはホワイトハウスが発表した声明で述べた

ダスザックの10日のコメントは、彼がCOVID-19の起源に対する真実を解明しようと努める調査団の一員であるという事実にもかかわらず、まさにウイルスが研究所から漏れたというとても現実的な可能性を除外しようという彼の最新の取り組みとなっている。ダスザックは本紙からの質問に回答しなかった。

まずダスザックは、EcoHealth Allianceという非営利団体を率いており、2021年1月にニューヨーク・マガジンが出した長い記事によると、その団体は武漢ウイルス研究所(WIV)に対して「米国立衛生研究所から資金を送金」してきた。

ニューヨーク・マガジンの記事によると、EcoHealth Allianceが提供した資金は、武漢研究所が人間とコウモリの疾病に関する研究の実施を継続するのに役立ったという。ダスザックは自身の非営利団体によって「新たなパンデミックの脅威」を研究する別のプログラムからの資金も利用して武漢ウイルス研究所へ提供した、と同紙の記事は報じた。

この資金は国立衛生研究所(NIH)と国防脅威削減局からの資金援助と混合されたが、ダスザックの非営利団体は最終的に、世界的パンデミックが始まって数カ月後の2020年4月に「武漢ウイルス研究所に対する資金提供を停止するよう指示」された。

ダスザックはNIHに反発し、要求を非難する書簡に77人のノーベル賞受賞者から署名を得るのを支援した。書簡は資金提供を停止すれば「現代の歴史で最大の衛生上の危機の1つと、将来起こる可能性のある危機を制御するのを助ける可能性のある高い評価を受ける科学を持つ国と世界」を損なうと主張していた。

NIHはその後ダスザックに武漢ウイルス研究所に外部査察を受けさせるよう求めた―ニューヨーク・マガジンによれば「今後の資金援助の条件として」―が、彼は再び反発した。

「私は私立探偵としての訓練は受けていない」とダスザックは宣言した。

その後彼は、FOIAの取り組みを「陰謀論発信者であり政治的な動機に基づく機関」という言葉で公然と非難した。

またダスザックがWIVを支援するために提供したのは資金だけではない。COVID-19が発生し研究所が容疑者として注目を集めた際、ダスザックは即座にイメージを払拭するための取り組みを行使した。

ダスザックは1つには2月にランセット(週刊で刊行される査読制の医学雑誌)で発表された反論を主導し、27人の科学者の署名を集めて「COVID-19が自然の発生源を持たないと示唆する陰謀論」を「強く非難」した。

書簡では、科学者らが「ゲノムを公開して解析し・・・このコロナウイルスの起源が野生生物であると圧倒的に結論付けた」と宣言していた。

「我々には、陰謀論者に毎日攻撃を受け脅迫されている同僚のために立ち上がり支援するか、それとも見て見ぬふりをするかという選択肢がある」とダスザックは2月にサイエンス誌に語った。

ダスザックの広報担当者はその後ウォールストリート・ジャーナルに、ダスザックの書簡が中国の科学者を保護することを意図していたことを認めた。

(以下略)

【私の論評】生物兵器は陰謀論の類かもしれないが、武漢ウイルス研究所から漏れた可能性は視野にいれるべき(゚д゚)!

新型コロナウイルスの発生源を探るため中国湖北省の武漢入りした世界保健機関(WHO)調査団の調査で、2019年12月に確認された武漢での感染は、これまで考えられていたよりはるかに広範に及んでいた兆候があることが分かっています。調査団は、中国政府がまだ許可していない数十万件の血液サンプルを緊急調査したい意向です。

武漢からスイスに戻った調査団長のピーター・ベン・エンバレク氏がCNNのインタビューで語ったところによると、調査団は今回初めて、武漢では2019年12月の時点で既に12種類以上のウイルス株が存在していたことを突き止めた。

調査団長 ピーター・ペン・エンバレク氏

これで、新型コロナウイルスが12月中旬に初めて公式に確認されるずっと前から中国国内で拡散していた可能性があるという懸念が一層強まりました。エンバレク氏は、「このウイルスは12月に武漢で広く出回っていた。これは新しい発見だ」と指摘します。

調査団はまた、中国当局が最初の感染者だとしている40代の男性とも面会しました。男性は民間企業に勤務するオフィスワーカーで、特筆するような渡航歴はなく、12月8日に感染が報告されていました。

エンバレク氏によると、調査団は武漢や周辺地域で2019年12月に確認された174の症例について、中国の専門家チームから情報提供を受けて調査しました。このうち100例は検査で感染が確認され、残る74例は患者の臨床症状から診断された症例でした。

174人は重症だった可能性が高く、この数の多さから判断すると、武漢では12月の時点で1000人以上が感染していた可能性があると調査団は推定しています。エンバレク氏はモデルはまだ作成していないとしつつ、「感染者のうち約15%が重症化し、大多数は軽症であることが大まかな試算で分かっている」と述べました。

WHO調査団が武漢ウイルス研究所を訪問する間、建物の前で警戒に当たる警備員

調査団はWHOの専門家17人と中国人17人で構成。今回の調査では対象とする遺伝物質の種類を増やし、遺伝子の完全な検体だけでなく部分的な検体も調査したことで、この時点で存在していた新型コロナウイルスの13の異なる遺伝子配列を初めて収集できたとエンバレク氏は説明しています。この情報を、中国で2019年に確認された患者のデータと照らし合わせれば、12月以前に流行が起きていた地域や時期の解明につながる貴重な手がかりとなり得ます。

国際調査団の一員でオーストラリア人研究者のドワイヤー氏は、12日までに豪テレビ局「9ニュース」の取材に応じ、「新型コロナは中国から始まったと思う」と指摘しました。輸入冷凍食品を通じたウイルス流入の可能性も含めて調査する方針を示した国際調査団の見解に異論を投げかけた発言とみられています。

国際調査団は9日、現地での活動を終えるのに際して記者会見し、起源について、中国以外の国を含めて宿主となったコウモリなどの調査を続ける考えを主張。輸入冷凍食品を通じたウイルス流入という中国側の見方も否定しませんでした。

これに対してドワイヤー氏は「9ニュース」に、新型コロナはコウモリを介して感染した可能性が最も高いと指摘。コウモリは中国以外の国にも存在すると指摘しつつも、「(新型コロナが)中国以外の地域から始まったとする証拠は実際にはきわめて限られている」との見解を示しました。

同氏は武漢市での調査について「(起源解明につながる)いくつかの証拠があったが、あまり良いものでない」とし、起源解明には「何年もかかる」と予想。その半面、「(中国側と)明確な見解の相違や激しい応酬はあったが、誰もが正しいことをしようと努めた」「WHOはこれまでにないほど多くのデータを手に入れた」とも語りました。

調査団はドワイヤー氏を含め各国の専門家ら約10人で構成。1月14日に武漢入りし、29日から対面での調査を行いました。調査は中国ペースで進められ、2月9日の活動報告では「武漢起源」説を否定したい中国の主張におおむね沿った見解が目立ったため、欧米などから疑問の声が出ていました。

確かに、中国側による隠蔽は危惧されますが、一つ確かなのは、様々なサンプルの遺伝子(RNA)解析をしてウイルスの系統樹を精緻にすれば、中国側が様々な手を使って隠蔽したとしても、必ず矛盾が発生します。その矛盾を付きながら、世界の学者らが協同で研究をすすめていけば、いすれ核心に迫ることができるでしょう。

ウィルスの系統樹を分析すれば、中国の隠蔽を立証できますし、それどころか、それぞれの国で行った対策が有効だったのかどうかまで、分析できます。今回のコロナ感染に関しては、そこまで実施して、後世のために役立てるべきです。

上の記事にでてくる、ピーター・ザダック氏は、『ネイチャー』に次のように語っています。「新しい疾病やウイルスが出現するたびに、いつも同じようなことが言われます。これは某機関が放出もしくは流出させたものだ、もしくはゲノム編集を施されたウイルスだ、といった具合です。残念なことです」。

確かに、重大な感染病の発生にはいつも似たような陰謀論がつきまとっています。例えば、2003年にSARSが蔓延していた時期、「SARSは人工的に製造された兵器だ」というデマが一時期盛んに取り沙汰されました。2014年、エボラが西アフリカのギニア共和国などで爆発的に感染を拡大したときにも、米国人がエボラウイルスを製造したというデマがありました。

マサチューセッツ工科大学政治学部の教授であるヴィピン・ナラン(Vipin Narang)は、最近Twitterで次のような意見を表明しました。今回の感染拡大が生物兵器によるものであることを示す証拠はない、故意にこの種のデマを拡散するのは「まったくもって無責任」なことだ、と。

「実際のところ、(もし仮にこれが生物兵器だったとしたら)本当にお粗末な生物兵器です。なぜなら、自分も害を被るリスクがあるからです。いい生物兵器は致死率が高く、感染力が低いものでなければなりません」と、彼は述べています。

無論、生物兵器をつくることはかなり難しい面があることは否めません。そもそも、ウィルスは生物とはいえません。ウイルスは細菌のように培養することはできません。ただし、私自身は、生物兵器そのものはデマだと思うのですが、だからといって、武漢のウィルス研究所で研究をしていたウイルスが、外に漏れた可能性までは否定できないと思います。

その可能性も含めて、今後も研究をすすめて何が原因だったのかを突き止めていただきたいものです。


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