2021年2月6日土曜日

【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…―【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

 【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…

 無利子でかなりの規模で借金できれば、テレワーク用に最新のパソコンと大画面の表示装置を買おうか、将来の子供の学費にするか、いやマンションを買うか、などさまざまな夢が実現しよう。

  これらの借金は経済合理性にかなっている。借入金利ゼロというのは「ゼロ・コスト」のカネであり、それを不確かでも、何がしかのリターン(利益)が得られそうな分野に投資すればよいのだ。

  以上の経済常識を政府に当てはめたのが米バイデン政権の財務長官に就任したジャネット・イエレン氏である。米国の場合、昨年12月の国債金利は1%を割り込んだ。お金の価値は物価上昇率にも関係があるので、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利はマイナスになっている。借金して投資したほうが得だ。

  イエレン氏は1月19日の米上院の財務長官指名承認公聴会で「世界は変わった」とし、「現在のような超低金利環境では、連邦政府債務が膨らみ続けているにもかかわらず、GDP(国内総生産)に対する利払い額の比率は低い。パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」と言い切った。 

 イエレン氏はGDPに対する利払い負担の低さを挙げて、財政赤字を気にしない財政支出拡大が正しいと論じたのだ。新型コロナウイルス・ショックが図らずも、米国の財政政策を均衡主義の呪縛から解き放つ新財政思想だが、別に難しいことではない。 

 GDPが増えることを意味する経済成長は通常、民間の企業が設備投資し、家計が消費することで実現するのだが、新型コロナ禍が広がる状況下では民間活動は萎縮してしまう。そうなると、経済を支える主役になれるのは政府しかない。その政府が実質金利ゼロで大々的に借金し、経済成長に向けて投資すべきなのだ。不況なのに政府債務の増大を理由に財政支出をけちると、多くの中小、零細企業が倒産し、失業者が町にあふれよう。失業給付など社会保障支出、治安対策費も膨らむ一方で税収は減るので、政府収支赤字は財政出動した場合に比べはるかに大きくなるだろう。

  実は日本こそ、イエレン理論に最もふさわしい。グラフは政府利払い費のGDP比と国債金利の推移である。いずれとも米欧に比べて圧倒的に低い。2019年はいずれもゼロ領域だ。

  だが、国内メディアの大多数は相も変わらず財政均衡主義にこだわる。日本経済新聞1月23日付社説は「困窮している個人や企業を、いまはしっかりと支えるべきだ」としながらも、政府債務残高がGDPの2倍近いとし、「たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる」と警告した。「世界は変わった」とするイエレン発言は馬の耳に念仏なのか。(産経新聞特別記者・田村秀男

【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

このブログにも以前掲載したように、トランプ大統領もイエレン氏と同じような考えを持っていました。これについては、以前のブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
追加経済対策 3次補正予算を決めた国会

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。
米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。

イエレン氏の述べた「パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」 という発言内容と同じことをすでにトランプ大統領は実行していたのです。

大統領選挙の公約においては、バイデン氏は様々な政策を増税して行うと発言しており、米国経済はバイデン政権下で低迷することになると発言していたため、私自身はバイデン政権下で、米国経済は落ち込むと予想していました。

ところが、蓋を開け見ると、イエレン氏が財務長官に任命され、しかも上記のような正しい発言をしていたので、安心しました。よって米経済はトランプ政権時代と比較して遜色ないか、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することが予想されます。

おそらくバイデン氏としては、経済運営に自信がなかったのでしょう。それを補うためにも、過去の実績のあるイエレン氏を財務長官にしたのでしょう。そうして、それは正しい選択でした。バイデン氏の安全保障政策は未だどうなるのか、予断を許さないですが、イエレン財務長官が思ったとおりに財政政策を実施でき、バイデン政権がこれを邪魔しなければ、米国経済は早期に回復して、再び成長軌道に乗ることが期待できます。米国、金融界、産業界などもこれを歓迎していることでしょう。

コロナ禍からの再生担うジャネット・イエレン財務長官

ただし、経済政策においてトランプ氏やイエレン氏だけが、慧眼の持ち主というわけではありません。すでに、予算収支は常にバランスが取れている必要はないというのが世界の通説です。特にまともな経済運営をしている国々においてはすでに常識です。バイデン氏はその常識からかけ離れていたということです。

そうして、特に、インフレ率がゼロに近く、金利がGDP成長率よりも低い日本では、適度の政府赤字が現在世代だけでなく将来世代のためにも有益なのです。むしろ、均衡させたり、黒字にすることこそ、利益に反することになるのです。

コロナ危機が世界の需要を減退させ、GDP成長率を低下させる今、それを一時的にしのぐには政府支出が特に必要なのです。均衡予算への見当違いな固定観念のために、法的用語を使えば「緊急避難」のための財政支出を避けることは非人道的であり、国民経済全体にも害を及ぼすことになります。

菅政権としては、財政健全性という時代遅れな意見を強調する論者の意見を鵜呑うのみにすべきではありません。迷ったら新任の高橋洋一内閣官房参与の意見に従うべきです。「健全財政」の美名の陰には、増税によって権限が拡大することを望む財務官僚の意見や、消費税の減免税率によって利益を受ける新聞業界の利害が隠れているのです。

アベノミクスの第3の矢は、将来に向けて日本の潜在的な成長力を高めるための構造改革でした。この分野での進展は、安倍政権の努力にもかかわらず緩やかであったといえます。能率化を進めようとすると一部の人びとに不利益が及ぶので、構造改革は一部の政治家、官僚、経済人から抵抗を受けます。そのため、日本には官庁のデジタル化の遅れ、公印を押す習慣、所得税で共働きを抑制する税制など時代遅れのルールが多く残っています。

コロナ危機で、会社に皆が同時にいてすべき仕事は意外に少ないことも明らかになったのですが、危機が過ぎた後では守旧派の意見で昔の働き方が戻りつつあり、最近またコロナ禍がぶり返したのに、テレワークが再開した企業は少ないです。

スガノミクスではまず、トランプ氏やイエレン氏のように、財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫いた上で、首相自身の最も持ち味の出る構造改革と成長戦略に焦点を当てるべきです。

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2021年2月5日金曜日

民間企業の勢い削ぐ中国共産党の「党の指導」―【私の論評】中所得国の罠にハマりつつある中国に、これから先さらなる経済発展の機会はない(゚д゚)!

民間企業の勢い削ぐ中国共産党の「党の指導」

岡崎研究所

 中国政府は、民間企業に対して権力を振りかざし始めたようだ。一つは反トラスト姿勢の強化であり、もう一つは外国法の域外適用への反発である。これらは、中国共産党統治の抱える本質的矛盾を、はしなくも露呈している。


 1月9日、中国商務省は米国の対中制裁に対抗すべく、「外国法の不当な域外適用」を順守しないよう中国企業に求めるかもしれないと述べ、さらに、外国の制裁や補償に応じた国内外の企業を提訴できるようにした。

 11月にはネット通販最大手のアリババの金融子会社、アント・グループが上海及び香港での上場を目前に新株発行を止められた。また、同月、国家市場監督管理総局は電子商取引企業を規制する規則を発表、12月には独占禁止法違反の容疑でアリババへの捜査を始めた。アリババとアントの共同創業者で、スピーチの中で中国の国営銀行を質屋になぞらえたジャック・マーは、3か月間、公の場から姿を一時的に消した。1月16日付けのエコノミスト誌は「過去に消息不明になった他の財界の大物たちのように、改悛を示し、捜査官たちに協力した後、彼が再び姿を現したとしても、この件は恐ろしいシグナルを送る」と指摘している。

 法律の域外適用をめぐる米中間の争いについては、2019年、中国商務省は「信頼できない企業」リストを作った。上記のエコノミスト誌の記事によれば、現在のところ、著名な外国企業はまだリストに入っていないらしいが、中国当局が規則を厳格に適用すれば、中国にいる西側の多国籍企業に対し、制裁を破ったとして米国で罰金を科されるか、中国の裁判所に行くかの厄介なジレンマを突きつけることになろう。

 アリババなどのケースは、中国当局がアリババ集団傘下の金融会社アント・グループへの統制を強めている最大の理由は、筋論としては、中国の金融システムに対する影響が大きいからであろう。反トラスト規制も、経済の運営の観点からやらざるを得ないし、法律の域外適用についても、米国が仕掛けてきた経済戦争への対抗手段として慌てて作ったものである。しかし、いずれの場合も、先のことや結果を十分に考えずに、あたふたと対応している感を否めない。そこには統治のあり方、政治と経済との関係、党と民営企業との関係といった、共産党統治の抱える根源的な問題が見えてくる。

 習近平政権は、「党の指導」を強調する。中国のあらゆる面を共産党が指導することは党規約にも書いてあるし、憲法にも書いてある。しかし経済の現場において、どのようにして経済の効率を高めながら「党の指導」を具現化するのであろうか。経済の効率を高めるために「市場は資源の分配に決定的役割を果たす」ことも大方針として謳っている 。2000年代に入ってからの中国経済の大躍進の主役は、民営経済であり公有経済ではない。

 中国の民営企業に、五六七八九という言い方がある。民営企業は、50パーセント以上の税収、60パーセント以上のGDP、70パーセント以上の科学技術の創新、80パーセント以上の都市就業者、90パーセント以上の企業数を占め、中国の発展に大きく貢献している。官僚機構の権化である党が、実体経済に関与すればするほど、経済の効率は損なわれる。「党の指導」は、この民営企業を弱体化させ、市場の機能を削ぐ。

 これが中国の現場なのだ。党の指導と市場の重視という、相矛盾する指導原則に振り回されているのだ。党の指導、つまり政府の管理を強めれば、民営企業の活力はそがれ、イノベーションの力は落ちる。中国で起業をし、新しい業界を生み出し、巨万の富を得る―それがチャイニーズドリームであり、その象徴がジャック・マーだった。その失墜は、これから参入する者を含め、民営企業者の心理に広く影響を与え、中国経済にもボディブローのように効いてくるであろう。

【私の論評】中所得国の罠にハマりつつある中国に、これから先さらなる経済発展の機会はない(゚д゚)!

中国経済が今後どうなるかは、このブログにも何度か掲載したことがあります。結論から、いうと中国はそろそろ中所得国の罠に嵌るということです。中所得国の罠とは、経験則であり、国民一人当たりの所得が約1万ドル(日本円では100万円)をなかなか超えられないというものです。このあたりについては、高橋洋一氏が動画で理解しやすいように解説しています。以下にその動画を掲載します。


いずれの国でも、経済が発展すると、国民一人あたりの所得が1万ドルくらいには順当にいきますが、そこから先はなかなか伸びない、一時的に1万ドルを超えたにしても、それを維持することができず、結局1万ドル以下に戻っとてしまう現象をいいます。

日本は、戦後の高度成長で国民一人あたりの所得は1万ドルを超え、その後もそれを維持して現在に至っています。このようなことが起こった国は、日本以外では、エジプトと韓国だけです。

アルゼンチンはかつて先進国で、国民の一人あたりの所得は1万ドルを超えていましたが、現では発展途途上国になってしまいました。1900年初頭、アルゼンチンは黄金期を迎えていました。世界を制するのはアメリカかアルゼンチンかともいわれたほどです。

そう言われるほどの国力を誇っていたのです。実際、その当時の国民1人あたりの所得は、およそ2750ドル。同じ時期の日本は1130ドルでしたから、日本の2倍以上の経済力があったことになります。

この関係が逆転したのは、1967年のことでした。高度経済成長に沸く日本、そして停滞・後退を始めたアルゼンチン。

戦後の混乱から、奇跡的な発展を遂げた日本は、資源がほとんどない小国でありながら先進国の仲間入りを果たしました。一方アルゼンチンは、豊かな資源がありながら、工業化に失敗し、衰退しました。

途上国から先進国になった日本と、先進国から途上国になったアルゼンチン。どちらの事例も非常に稀なことであり、それをもって1971年にノーベル経済学賞を受賞した、米国の経済学者・統計学者であるサイモン・クズネッツは、「世界には4つの国しかない。先進国と途上国、そして、日本とアルゼンチンである」と語りました。

その後、アルゼンチンは2001年から02年にかけて国家的な経済崩壊を体験しました。アルゼンチンのたどった経済崩壊までの軌跡を簡単に並べてみると、以下のようになります。
1国家の成長産業勃興
2経済の高成長
3成功体験
4傲慢
5転落
6崩壊
アルゼンチンは、世界トップレベルの農業国で、 20世紀半ばまで、30年間も経済成長率が平均6%を記録したそうです。そして国民一人当たりのGDPは4位から7位をつけていたそうです。つまりアルゼンチンは押しも押されぬ南米一の先進国に成長したわけです。

ところが1946年に誕生したペロン政権が大衆迎合的なバラマキ 政治を続け、90年代末ついに国家財政が破綻したのです。99年から4 年間はGDP成長率がマイナスとなり、2002年にはハイパーインフレが起き、失業率が21.5%に達したそうです。

アルゼンチン第29、41代大統領 フアン・ドミンゴ・ペロン

アルゼンチンのたどった軌跡、これは、国家的経済崩壊の例として「アルゼンチン型」と呼ばれていますが、バブル崩壊前後の日本のパターンもこれによく似ているとする指摘もあります。ただし、本当は全く違います。日本の場合は、平成年間のほとんどを財務省は財政政策を、日銀は金融政策を間違い続けたということが主な原因であり、日本経済のファンダメンタルズは成長の可能性を失ったことは一度もありません。

中国の場合は、他の発展途上国と同じく、中所得国の罠からの罠から逃れられない可能性が高いです。先進国になる以前に、発展途上国に戻る可能性が非常に高いです。

なぜ、多くの国々が中所得国の罠から逃れられないのかといえば、このブログでも掲載してきたように、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を実施しなかったからです。

これらが、実施されると社会が変わり、特に星の数ほどの中間層が生まれ、これらが社会のいたるところで、イノベーションを起こし、それが社会の変革と富を生み出すのです。

日本をはじめとする先進国といわれる国々は、過去においてこれを実施し国の富を増し、現在に至っています。

習近平

中国は、冒頭の記事にもあるように、党の指導と市場の重視という、相矛盾する指導原則に振り回されています。このような国では、少数の富裕層は生まれましたが、多数の中間層が生まれことなく、社会のいたるところで、イノベーションが起こることはなく、社会の至るところで、不合理・不経済が残ってしまい、よって社会変革もおこらず、富も形成できず、結局中所得国の罠にはまってしまうのです。

ただし、中国共産党が国を富ませるため、多数の中間層を生み出すために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を本格的に進めれば、それこそ、多くの中間層から中国共産党の存在意義を問われるようになり、統治の正当性が失うことになり、崩壊することになります。

それは、中国共産党としては、できないことなので、これを実施することはできません。他の中進国も国によって事情は様々ですが、結局これができないため、中進国以下にとどまるしかなかったのです。

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2021年2月4日木曜日

日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」―【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

 日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」


 日英両政府は3日、外務・防衛閣僚会議(2プラス2)をテレビ会議方式で開催した。日米で推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現に向けた連携強化や、安全保障協力の深化で一致した。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米国ではジョー・バイデン新政権が誕生し、中国の軍事的覇権拡大が進んでいる。国際情勢の激変を受けて、英国の役割に大きな期待がかかっている。

 「英国の能力を示し、さらに防衛協力を深めたい」

 ベン・ウォレス英国防相は閣僚会議で、こう語った

 会議では、南シナ海で軍事拠点をつくり、東シナ海でも軍事力を増大させる中国に対し、日英が協力して対応する姿勢を示した。中国海警局に武器使用を認めた海警法や、中国政府による少数民族ウイグル族や香港民主派弾圧についても懸念を共有した。

 茂木敏充外相は、海警法について「国際法に反する形で運用されてはならない」と発言。ドミニク・ラーブ英外相は、国際法に基づく海洋秩序維持と「航行の自由」の重要性を強調した。

 ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明した。自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 岸信夫防衛相は、沖縄県・尖閣諸島防衛への強い決意を英国側に伝達。海洋国である日英の防衛協力の必要性を訴えた。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月末、英国が、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による事実上の中国包囲網「QUAD(クアッド=日米豪印戦略対話)」に参加する可能性を伝えた。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「英国のクアッド参加は賛成だ。英国は、中国の香港弾圧に立腹している。中国の覇権拡大に対抗するため、『自由民主』『人権』『法の支配』といった価値観を共有する英国が太平洋に進出する新たな時代になりつつある。今後は、カナダなどがクアッドに参加する可能性も考えられる。英国が軍事面で東アジアに進出すれば、中国にとって、大きなプレッシャーになる。日英間では過去に戦闘機共同開発の話も持ち上がっており、技術協力の面でもメリットもある」と語った。

【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

クアッド+英国(ペンタ?)については、すでにこのブログでも掲載したことがあり、無論日本としては大歓迎です。

「2+2」において、ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明しています。

ただ、海洋戦においては、従来は空母が重視されていましたが、現在においてはこれは政治的には大きな意味を持ちますが、実戦においては、空母や去就揚陸艦など自体はあまり意味をもたなくなりました。

なぜなら、現在は対艦ミサイルなどが発達したため、空母は単なる大きな標的となってしまい、すぐに撃沈される可能性が大きいからです。

現代の海洋戦では、やはり潜水艦隊と対潜哨戒能力が鍵です。

では、英国の潜水艦はどうかといえば、予算削減によりすでに随分前から、通常型潜水艦は開発されておらず、就役しているのは米国と同じく原潜のみです。

攻撃型原潜については、攻撃力は優れているものの、静寂性(ステルス性)には劣ります。日本の通常型潜水艦と比較すれば、静寂性は格段に劣ります。

そのため、実戦ということになれば、英国の原潜も米国の原潜と同じく、中国軍からは比較的発見されやすいので、やはり日本の潜水艦が偵察活動をして、米英の潜水艦は、その情報を活用して、攻撃に徹するという役割になるでしょう。

何しろ、日本の潜水艦の静寂性は非常に高く、中国海軍のお粗末な対潜哨戒能力ではこれを発見することは不可能だからです。原潜は構造上どうしても騒音がある程度出るので、米英の原潜も中国軍に発見される可能性があります。

ただし、予め水中に潜んでいて、必要があれば突然攻撃を加えるという戦法をとれば、これは中国軍には対処不能です。それを実現するためにも、日本の潜水艦による情報収集は欠かせなくなります。

ただし、日本の潜水艦隊は22隻であり、これは日本全体を守備するために存在するわけですから、尖閣付近や南シナ海にばかり航行させるわけにもいかず、そのような場合は米英の原潜が要所要所に潜み偵察ならびに攻撃に転じることができるというのは、心強いです。

対潜哨戒能力については、英国は、日本と同じようにかつては、P3Cを導入していましたから、中国よりは、はるかに哨戒能力が高いですから、これは中国に対してかなりの抑止力になります。

2019年9月26日(木)から10月4日(金)までの9日間、長崎県の佐世保から関東南方に至る海域と空域で、海上自衛隊とアメリカ海軍、インド海軍による日米印共同訓練「マラバール2019」が実施されました。

この訓練には海上自衛隊とアメリカ、インド両海軍から艦艇に加えて、対潜水艦戦や洋上のパトロールを任務とする哨戒機も参加しており、海上自衛隊からはP-1哨戒機、アメリカ海軍とインド海軍からはボーイングがP-3C哨戒機の後継機として開発した哨戒機「P-8」が、それぞれ参加しています。

アメリカ海軍のP-8A哨戒機は、2013(平成25)年から沖縄県の嘉手納飛行場に配備されており、2019年4月に航空自衛隊のF-35A戦闘機が墜落事故を起こした際には、捜索活動に加わっています。

日米印共同訓練「マラバール2019」にて。左から米海軍P-8A、海自P-1、印P-8I

またオーストラリア空軍も2018年4月から2019年9月までの約1年半のあいだに5回、P-8哨戒機を日本に派遣して嘉手納飛行場を拠点とし、北朝鮮による、公海上で船舶を横付けして物資の取引を行う、いわゆる「瀬取り」を含めた違法な海上活動の監視を実施しており、P-8は日本にとって馴染みの深い航空機になりつつあります。

アメリカ海軍やオーストラリア空軍などが採用したP-8Aは、潜水艦が発する磁気による磁場の乱れを探知する「MAD(磁気探知装置)」を備えていませんが、インド海軍が導入したP-8Iは、P-3C哨戒機や海上自衛隊のP-1哨戒機と同様、MADを尾部に装備しています。

日本では、MADを装備していないP-8Aは潜水艦の探知能力において、P-3CやP-1に比べ劣るのではないか、という見方もあります。ただし、MADの価値は依然として低下しておらず、哨戒機を運用する海軍や空軍がどのような対潜水艦作戦を構想しているかで、MADが必要であるか否かが決まります。

さらに、水中で潜水艦の発する音波を受信して航空機に送信する潜水艦探知装置「ソノブイ」の進化などにより、MADを装備していなくてもP-3Cと同様以上の対潜水艦作戦が遂行できると判断して、米豪海軍はP-8AにMADの装備しなかったようです。

P-8AはMADを装備していないだけではなく、最初から無人機との連携を想定して開発されている点もP-3CやP-1とは異なっています。

米豪海軍は、P-8Aとコンビを組む無人航空機として、ノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」を採用しています。両海軍は、有人哨戒機に比べて連続作戦時間が長い「トライトン」で洋上を監視し、「トライトン」が不審な目標を発見したらP-8Aが急行して対処するという運用方法を構想しています。ちなみに、英海軍もP-8Aを装備しています。

哨戒活動演習をするノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」

「トライトン」は日本も導入するRQ-4「グローバルホーク」の派生型で、外見もよく似ていますが、「グローバルホーク」が成層圏を長時間飛行して監視を行なう航空機であるのに対し、「トライトン」は低高度を飛行して洋上を監視する航空機であることから、機体構造が強化されているほか、センサーもAESAレーダーなど、洋上監視に最適化されたものが搭載されています。

P-8Aはボーイングが開発を進めている無人潜水艇「エコーボイジャー」との連携も検討されています。「エコーボイジャー」は約1万2000kmの連続航行と約3000mまでの潜航が可能で、船体には様々なセンサーを搭載できます。アメリカ海軍はエコーボイジャーの採用を決めていませんが、採用されればP-8Aの潜水艦への対処能力はさらに向上すると考えられます。

無人潜水艇「エコーボイジャー」

P-8Aは海上自衛隊のP-1とは異なるコンセプトの哨戒機ですが、同盟国の米国と事実上の準同盟国である豪に加え、近年、日本との防衛協力の強化が著しい印度と英国にも採用されており、海中を含めた海洋の自由を重んじる日本にとって、心強いパートナーとなる哨戒機です。

日本としても、クアッド+英国で、これらドローンの運用も視野にいれることもできます。なお、中国のドローンを過大評価するむきもありますが、中国がいくら種々様々なドローンを開発して、対潜哨戒能力そのものが優れていなければ、無意味です。そもそも、発見できない敵は攻撃できません。その他超音速ミサイルなども同じことです。

いずれにしても、現時点では日米が対潜哨戒能力では、世界トップクラスであり、英・豪もそれに続く状況にあります。そうして、中国海軍よりはいずれも対潜哨戒能力が優れています。

中国海軍の対潜哨戒能力は、現状では日米英豪に比較するとかなり劣っています。この状況だと、クアッド+英と中国が海洋戦になった場合、対潜哨戒能力が優れたクアッド+英が、中国の潜水艦をすぐに探知し、これを破壊することになります。そうなれば、中国海軍は空母やその他艦艇を守備することはできません。そうなると、中国側には全く勝ち目はありません。

私が以前からこのブログでも主張してきたように、クアッド+英は、南シナ海と尖閣諸島を守るために、わざわざ空母打撃群を派遣する必要はありません。大規模な潜水艦隊を派遣して、南シナ海や尖閣を包囲するだけで良いです。

包囲して、南シナ海の軍事基地や、尖閣の上陸部隊への補給を絶てば良いのです。場合によっては、機雷封鎖をすれば、より効果的です。補給を絶てば、上陸部隊はお手上げになってしまいます。その後は、お手上げになった上陸部隊を拘束すれば良いのです。そのために、必要とあれば、空母打撃群を派遣すれば良いのです。このような戦い方をすれば、犠牲はほとんど出ません。

このブログでは、以前から中国海軍のロードマップでは、昨年までに第二列島線を確保することになっていましたが、それどころ台湾、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

かといつて、尖閣や台湾を強襲しても、負けることは最初からはっきりしています。クアッド+英国で、中国海軍の八方塞がり状況がしばらく続くことになるでしょう。

それどころか、台湾、尖閣諸島で何らかの軍事行動を起こせば、惨敗して、中国の海洋戦略は大きく後退することになります。

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2021年2月3日水曜日

改正コロナ特措法が成立 罰則導入、実効性高める―【私の論評】野党・マスコミの認知症的物忘れの速さに惑わされるな(゚д゚)!

 改正コロナ特措法が成立 罰則導入、実効性高める

改正新型コロナウイルス特別措置法が可決成立した参院本会議=3日午後、国会


 改正新型コロナウイルス特別措置法と感染症法は3日の参院本会議で、与党と立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。官報での公示を経て13日に施行される。営業時間短縮や入院拒否に関して命令や罰則を導入し、対策の実効性を高める。与野党の事前協議を経たことで、1月29日の審議入りから実質4日の審議でスピード成立となった。

 西村康稔経済再生担当相は3日の審議で、命令や罰則について「専門家の意見を聞いて判断するし、十分に私権に配慮した運用を行う。丁寧に事業者の理解を得ながら進めていく」と述べ、慎重に運用する考えを強調した。内閣委と本会議の採決では国民民主、共産両党が反対した。

 特措法には、緊急事態宣言の前段階に当たる「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を新設。首相が専門家の意見を踏まえて指定した地域の知事は、宣言の発令前でも事業者に営業時間の短縮を命令でき、拒んだ場合は20万円以下の過料とする。コロナ分科会が示す基準で「ステージ3(感染急増)」での適用を想定している。

 緊急事態宣言下での時短や休業についても、これまでの要請に加えて命令を新設し、拒んだ場合は30万円以下の過料とする。

 また、休業や時短に応じた事業者に対する支援として、国と地方自治体が「財政上の措置」を講じるよう義務付けた。

 一方、感染症法には入院拒否者や、保健所の行動調査を拒否した感染者に対する罰則を追加し、それぞれ50万円以下、30万円以下の過料とする。

 改正法は自民、立民両党が1月28日の幹事長会談で、政府案から刑事罰を全て削除するなどの修正で合意。衆院で1日に修正案が可決され、参院に送付されていた。

【私の論評】野党・マスコミの認知症的物忘れの速さに惑わされるな(゚д゚)!

改正特措法は営業時間短縮命令を拒んだ事業者に、緊急事態宣言下で30万円以下、「まん延防止等重点措置」下で20万円以下の過料を科す。改正感染症法は入院拒否者に対し50万円以下、疫学調査拒否者に30万円以下の過料を課します。

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法では、都道府県知事による営業時間短縮などの「命令」に違反した事業者への罰則として、緊急事態宣言下で30万円以下、まん延防止等重点措置下で20万円以下の「過料」を科す規定が新たに設けられました。

ただし、知事が命令を出すには段階を踏む必要があり、すぐに適用されるわけではない。政府は「抑止効果として罰則があること自体が大事だ」との考えで、適用は慎重に判断する構えです。 

感染症法に関しては、入院に応じなかったり、入院先から逃亡したりした感染者らに「50万円以下」の過料を科すことと、保健所による行動歴などの調査に応じず、虚偽の回答をした場合も「30万円以下」の過料を科すことになりました。




田村憲久厚労相は、患者や家族に必要な介護や保育などのサービスが確保できないため入院を拒否している場合は「正当な理由になり得る」と説明。罰則の対象としない考えです。

政府は2020年4~5月の緊急事態宣言時の基本的対処方針で、知事が休業や時短を求める場合には、まず宣言前から可能な「協力の要請」をした上で、第2段階でより強い「要請」、第3段階で「指示」と段階を踏むよう明記。その都度、「国と協議」のうえ専門家の意見を踏まえるよう求めていました。

知事が要請・指示をする際には、職員らが実際に店舗を訪れ、営業状況を確認するなどした上で店名を公表していました。 

改正特措法は、知事が要請・命令を出す必要があるかを判断するに当たり、感染症の専門家らの意見を聞かなければならないと規定。要請・命令を出す際には今回の改正以前と同様の段階を踏む必要があります。 

前回の宣言下で指示の対象となったのは一部のパチンコ店のみでした。現状で各知事が飲食店に求めている時短要請はいずれも協力要請で、今回の宣言下では罰則適用には至らないとみられます。

結局のところ、現在とあまり変わりないようですが、過料が課せられる場合もあるというのが大きな違いです。結局のところ、多くの人の良識に任せるというところは変わりないようです。

政府は2日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金をめぐり、財政負担が一定額を上回った自治体に対し、地方創生臨時交付金を追加支給することを決めました。坂本哲志地方創生担当相が記者会見で明らかにしました。
2020年度第3次補正予算に計上した1兆5000億円のうち、追加支給分として2000億円を確保。協力金は国が8割、自治体が2割を負担する仕組みですが、新型コロナの感染拡大が続く中、自治体側からさらなる財政支援を求める声が上がっていました。

日本政府の、対コロナ財政政策をふりかえってみると、下のグラフをご覧いただけば、日本は先進国においてはトップクラスともいえる状況です。野党やマスコミなどは、こうしたグラフを読み取る能力がないようにみえます。


ただ、コロナ対策で失敗もあります。たとえば、二次補正予算のときに積み上げておいた、予備費10億円があまり使われていなかったということがあります。あれを活用して、昨年の夏あたりに、コロナ専門病院とか、医療従事者を確保しておけば、現状のように医療の逼迫などおこなら買ったはずです。

立憲民主党など野党は昨年5月28日、政府が2020年度第2次補正予算案に計上した10兆円の予備費を批判しました。

立民の逢坂誠二政調会長は記者団に「頭から否定するものではないが、10兆円は空前絶後で政府に白紙委任するようなものだ」と指摘しました。

国民民主党の泉健太政調会長は「予備費は最小限であるべきだというのがこれまでの通説だった。いかなる国会統制が必要かを考えねばならない」と述べました。

共産党の志位和夫委員長は記者会見で「政府の独断で何でも決めるやり方が横行したら、予算審議の意味がなくなる」と主張しました。

このような批判もあったので、予備費はあまり使われないままになっていた部分もあります。残念なことです。野党の批判などは気にせずに、どんどん対策をやって、医療崩壊などの危機に対処すべきでした。

新型コロナウイルス対策の費用を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案は1月26日、衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されました。27日から参議院で審議され、28日に成立しました。

追加経済対策は19兆1761億円とされていました。これは、まったく新しく決まったように報道しますが、これは去年(2020年)12月の頭に閣議決定されて内容も出ていることです。そのときには、各紙一斉に「予算が大き過ぎる」という批判されていました。今回はこの予算案に対するマスコミの「大き過ぎる」という批判はありません。本当に、不思議です。 

あの当時言われていたのは、補正の19兆に加えて本予算の方、15ヵ月予算の全体で真水30兆円というのが大き過ぎると言われていました。 

新聞では、いま停止しているGo To 関係の予算が補正のなかに計上されているので、これを医療機関や生活困窮者への支援に回すべきではないかとされています。 

しきし、Go To が感染を拡大したというエビデンスはなかったですし、止めても関係がなかったでしょう。Go To は日本人の全移動の1%くらいでしかないので、説明はできません。

1%の要因で全体を説明するのは無理だということは常識的にわかります。Go To を停止した12月半ば過ぎ、その後むしろ感染者が増えました。東京でも1000人を超えたのがそのタイミングです。Go To を止めたら、今度は「飲食や旅行業界はどうなるのか」とまた逆のことを言います。

マスコミは、前に言ったことはすぐに忘れてしまい、その都度言いたいこと言っているようにしかみえません。こんなにすぐ忘れてしまえるとは、精神衛生上非常に良いかもしれません。(誤解しないでください、はっきり言うと馬鹿と言っているだけです)

一律の給付金に関しては、三次補正には含まれていないので、実施されることはないでしょう。ただ、四次補正についても、実施する可能性はあります。その中には、含めるということも考えられます。

とにかく、野党やマスコミの言うことは、経済面では全く役にたちません。惑わされるだけです。惑わされるだけならまだしも、不安に押しつぶされるような人もでてくるのではと、心配になります。一番良い対処法は、コロナに関してはテレビも新聞も見ず、信頼できるソースを追いかけるなどのことをすべきです。

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2021年2月2日火曜日

バイデン政権、ウイグル族大量虐殺を追認 相次ぐ対中強硬発言の背景にトランプ氏の“置き土産” 石平氏「撤回すれば猛批判」―【私の論評】トランプの置き土産は、厳しい中国対応だけではない(゚д゚)!


ブリンケン氏(手前)とマスクをするバイデン氏(奥)


 ジョー・バイデン米大統領率いる新政権の幹部から、対中強硬発言が相次いでいる。バイデン政権に対しては、バイデン一家の中国疑惑に加え、中国に融和的姿勢を取り続けたバラク・オバマ元政権の中心メンバーが多く参加しているため、対中政策の転換が懸念されていた。識者は、ドナルド・トランプ前政権がさした“楔(くさび)”の存在を指摘している。

 「(バイデン政権としても)ジェノサイド(民族大量虐殺)であるとの認識は変わらない」

 アントニー・ブリンケン国務長官は就任翌日の27日、国務省で初めて記者会見し、トランプ前政権が中国政府による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族の弾圧を「ジェノサイド」と認定したことについて、こう言い切った。

 同日、米国連大使に指名されたリンダ・トーマスグリーンフィールド元国務次官補も、上院外交委員会の承認公聴会で証言し、国連で影響力を高める中国について、「各種の国連機関で権威主義的な計略の推進に取り組んでいる」と非難し、対抗策を講じていくと表明した。

 気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使も同日の記者会見で、気候変動問題は米中の「独立した重要な問題だ」としたうえで、「『知的財産窃取』や『南シナ海問題』といった中国とのすべての懸案に関し、気候変動(をめぐる協議)の取引材料には決してしない」と強調した。

 政権の「親中」イメージを払拭するかのような言動をどう見るか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「ウイグル族への弾圧は、国内外から『重大な人権問題』として注目されている。トランプ前政権は最終盤で、バイデン政権が『親中』に傾ききれない一線を引いたとも解釈できる。仮に、バイデン政権が『ジェノサイド』という認識を撤回すれば、猛批判を浴びただろう。バイデン政権にとっては『余計な置き土産』という本音もあるのではないか」と分析している。

【私の論評】トランプの置き土産は、厳しい中国対応だけではない(゚д゚)!

トランプ政権末期には、矢継ぎ早に中国に対する厳しい様々な措置を実行しました。それについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプが最後に連発する駆け込みアクションの意味―【私の論評】日本は米国の大型経済対策に対応し、安倍・トランプの置き土産日米豪印(クアッド)の中国包囲網を強化せよ(゚д゚)!
米テキサス州ハーリンゲンのメキシコ国境の壁を視察した後、メリーランド州の
アンドルーズ基地で専用機から降りるトランプ大統領(2021年1月12日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、末期のトランプ政権は、特に対中国に関して、導入できる限りの厳しい内容措置をして、退きました。

これは、当然のことながら、バイデン政権に対して、対中国に関して、後退はさせないとの意思表示であったと考えられます。バイデン政権は『ジェノサイド』という認識の他にも、中国に対して譲歩をするようなことがあれば、米共和党はもとより、民主党の多くの議員にも反発されるどころか、世界樹の先進国から反発されるでしょう。

ただ、日本の外務省の担当者は26日の自民党外交部会で「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示したようです。出席した自民党議員からは「日本の姿勢は弱い」などの指摘が相次いだが、外務省側は「人権問題で後ろ向きという批判は当たらない。関係国と連携しながら対応していく」と理解を求めたそうです。

中国の鼻息を仰ぎ、人権弾圧を容認するかのような発言をすることは、わが国の名誉、そして国益にかかわる重大事です。

文明国家、道義国家として、わが国は、いかなる国家の人権弾圧も許さぬ姿勢を明らかにすべきです。

トランプ氏の置き土産は、対中国に関するものばかりではありません。無論先日述べたように、北朝鮮による拉致被害者に寄り添ってくれたということもありました。これも、後継のバイデン政権は無視することはできないでしょう。

それ以外にも大きな貢献があり、これもバイデン政権は無視できないでしょう。トランプ氏は、大統領に就任中は、少年少女を守るため奮闘しましたし、これからも奮闘することでしょう。

日本ではあまりなじみがないですが、「Pedophile Ring(ペドファイル・リング)」という問題が世界には存在します。これは、幼児・小児を対象とした特殊な性的嗜好を持つ人を指します。こうした人々の欲望を満たすべく、幼児誘拐や性的虐待を取りまとめる犯罪ネットワークを、ペドファイル・リングと呼ぶのです。

トランプ氏の大統領就任から2カ月の時点で、ペドファイル・リングに関連して、すでに1500人ほどが逮捕されました。これは、オバマ政権下の2014年に逮捕された約400人の3倍以上の数です。トランプ大統領就任後の1月末には、カリフォルニアで人身売買組織が摘発され、474人もの逮捕者が出ました。児童28人と成人27人が救出されたといいます。

トランプ氏は、こうした組織的な犯罪を撲滅しようとしました。

2017年2月、国境を越えた犯罪組織に関する連邦法の強化、および人身売買などの国際的な密売を防ぐ旨の大統領令に署名。同月、人身売買問題の専門家との会合を開き、司法省や国土安全保障省、連邦政府関係機関に人身売買の防止強化を指示すると述べました。

実は、大統領に就任する5年前、トランプ氏は行方不明事件について次のようにツイッターで述べていました。

「性倒錯者に捕えられたこれらの行方不明の子供たちに対して何かしなければならない。あまりに事件が多すぎる。迅速な裁判、そして死刑が求められる」

ペドファイル・リングの問題は根深く、権力者との癒着も指摘されています。こうした説を陰謀論だとする声がある一方で、癒着を裏付けるような被害者の告白もあります。

2014年、「An Open Secret(公然の秘密)」というドキュメンタリー映画が公開され、物議を醸した。これは、ハリウッド業界内で行われている少年への性的虐待の事実を明らかにしたものです。以下にその動画の予告編を掲載します。

この動画は、以下のリンクでご覧になることができます。


同作品では、プロデューサーや投資家から実際に性的虐待を受けていたという元子役の男性が、当時の様子を描写します。断れば仕事がなくなるという状況の中、少年たちは大人に相談することもできず、苦しみを隠しました。10代前半の少年が60歳を超えた男性に性的虐待を受けるなど、信じがたい行為が当然のように行われていたというのです。

性的虐待の記憶からアルコールやドラッグに走り、普通の生活が送れなくなった元子役の姿が描かれた同作品は、「これは氷山の一角にすぎない」と視聴者に訴えかけています。英ガーディアン紙や英テレグラフ紙でも取り上げられ、注目を浴びました。

ハリウッド以外にも、ペドファイル・リングには政治家の関与もささやかれています。トランプ氏は、現在でもこうしたアンタッチャブルな領域にもメスを入れるつもりなのでしょう。

米国のトランプ大統領の署名で新型コロナウイルス追加経済対策法案が成立した昨年12月下旬。実はこの時から、未確認飛行物体(UFO)に関して米情報機関が知っている内容を180日以内に議会に提出するよう求めるカウントダウンが始まりました。


国家情報長官と国防長官は、およそ半年以内に「未確認航空現象」に関する非機密扱いの報告書を連邦議会の情報軍事委員会に提出する必要があります。

この条項は、今回の予算案に含まれる2021年度情報機関授権法の「委員会コメント」に盛り込まれていました。

上院情報委員会の指示書によると、報告書には、UFOデータに関する詳細な分析や、海軍情報部、未確認航空現象作業部会、米連邦捜査局(FBI)が収集した情報を含める必要があります。

さらに、全ての未確認航空現象報告に関するタイムリーなデータ収集と一元化された分析を促すための省庁間プロセスについて詳しく記述し、そのプロセスの責任者を指名することも求めています。

UFOによって国家の安全が脅かされるような事態があった場合は特定し、背後に敵国が関与しているかどうかの判断を示す必要があります。

提出された報告書は非機密扱いとなりますが、機密指定の付属書が含まれることもあります。

国家情報長官の報道官はファクトチェックを行うサイト「スノープス」の取材に対し、この報道内容を確認しました。

米国防総省は昨年4月、「未確認航空現象」をとらえた3本の映像を公開していました。

これも、トランプ氏の置き土産です。

トランプ氏の二度目の弾劾は、すでに提出されたときから、無駄ということが指摘されていました。米国メディアとそれに追随する日本のメディアの偏向報道に騙されるなと警告したいとです。そもそも、すでに辞任した大統領を弾劾できるはずもないです。

それにしても、米民主党はなぜ2度とも最初から無駄とわかっている、大統領弾劾を二度も実行しようとしたのでしょうか。民主党は相当焦っているとしか言いようがありません。良い言葉が思い浮かばないのですが、それこそ「トチ狂っている」としか言いようがありません。

日米の大手メディアは、トランプ氏の失言や疑惑ばかりを取り上げ、揶揄する傾向があります。それどころか、TwitterやFaceBookなどでは、アカウントを永久凍結するなどの、信じられない暴挙を犯しました。しかし、このような報道されない仕事にこそトランプ氏の真意が隠されているのです。私たちには、真実を見極める力が必要です。

ドナルド・トランプ前大統領が大統領選挙直後に結成したセーブ・アメリカPACは、連邦選挙管理委員会に提出された報告書によると、少なくとも3,120万ドル(日本円で32億7千万円)の資金を確保しています。

PAC(政治活動委員会)のおかげでトランプは、ホワイトハウスから出た後も資金集めを継続し共和党に影響力を維持することが可能になっています。

これからも、トランプ氏の行動や発言には目が離せません。元々実業家であり、既存の政治家には、考えられないような行動をするトランプ氏です。今後どのような行動と発言をして、米国政界やエスタブリッシュメントたちを揺るがすのか、本当に楽しみです。これも、トランプ氏の置き土産といえると思います。

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2021年2月1日月曜日

英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

 英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 

激突!米大統領選

TPPに参加する英国のボリス・ジョンソン首相

 英政府は1日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を正式申請する。発足時の参加国以外による初の正式申し込みで、米国のTPP復帰など、加盟国拡大の好機といえる。英国メディアによると、英国は、日米とオーストラリア、インド4カ国の枠組み「QUAD(クアッド)」にも参加する可能性があるという。TPPは「中国包囲網」としての意味合いがあるだけに、英国のTPP加盟実現の重要性は高そうだ。

 「英国民に莫大(ばくだい)な利益をもたらす経済連携を築く」「(加盟申請は)自由貿易の旗手となる野心を表している」

 ボリス・ジョンソン英首相は1月30日、このような声明を発表した。

 自動車など、英国からの輸出品の関税引き下げや、ビジネス目的の往来が容易になることなどを目指す。エリザベス・トラス国際貿易相が1日、西村康稔経済再生担当相らとオンラインで会談し、申請する見通しだ。

 英国は経済面だけでなく、安全保障分野でも「アジアとの連携強化」に積極的だ。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月30日までに、英国がクアッドに参加する可能性があると伝えた。英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は今年、東アジア地域に展開して、自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 習近平国家主席率いる中国共産党政権は、コロナ禍でも軍事的覇権拡大を進めている。1日には、中国海警局(海警)に外国船舶への武器使用を容認する海警法を施行した。

 香港の旧宗主国である英国は、香港民主派弾圧などで中国との対決姿勢を強めており、日米などとの同一歩調を模索しているとみられる。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「英国は、EU(欧州連合)から離脱し、経済的あるいは安全保障上、自立することは当然といえる。地政学的に考えれば、ユーラシア大陸の核保有国を(クアッドと英国で)挟むことができ、手を結ぶべき絶好の国といえる。親中懸念があるジョー・バイデン米政権が不安とするならば、英国のクアッド参加はそれを埋めてくれる。日本政府は『歓迎している』ことを発信してもいいくらいだ」と指摘した。

【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

英国は既に昨年9月11日、日本と自由貿易協定締結で合意したと発表していましたた。英国にとっては、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)後に初めて結ばれる主要な協定とされていました。

国際貿易省は声明で「英国は日本との自由貿易協定を確固たるものにした」と発表し、「これはわが国が独立した貿易国となって初の主要な貿易協定となり、対日貿易は推定152億ポンド(約2兆800億円)規模の増加が見込まれている」と明かしました。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相と茂木敏充外相は昨年9月11日、ビデオ会議で協議し、包括的経済連携協定を結ぶことで大筋合意に達した。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相

この協定は、昨年発効したEUと日本間の広範な貿易協定を基礎としていますが、同協定は昨年12月31日をもって、英国には適用されなくなりました。

英国は昨年1月にEUから離脱したものの、年末まで移行期間を設けることに合意しています。現在は既存のものと同様の協定、または新協定を年内に締結するため、交渉を急いでいます。

トラス氏は「ブレグジット後初の主要な貿易協定であり、これは英日両国にとって歴史的な瞬間だ」と歓迎。さらに、新協定は英国が環太平洋連携協定(TPP)に加盟するための「重要な一歩」だと述べました。

英国とEU間の将来的な貿易協定に関する協議は難航し、行き詰まっています。

英紙デーリー・テレグラフなどは1月31日までに、中国の脅威をにらんだ日米とオーストラリア、インドの4カ国で構成される枠組み「クアッド」に英国が参加する可能性が浮上していると報じました。

英国は香港問題などの人権問題をめぐり中国への対抗姿勢を鮮明にしており、「自由で開かれたインド太平洋」を目指す日米などと連携を強めたい考えとみられます。 

米国のトランプ前政権は外交・安全保障面でクアッドを含む中国包囲網の構築を進めてきました。 バイデン米大統領も菅義偉首相との初の電話会談でクアッドで協力を強化することで一致。

米ホワイトハウスのサリバン国家安保補佐官が日本、オーストラリア、インドなど4カ国が参加する多者安保協議体「クアッド」について「インド・太平洋政策の土台になるだろう」として「もっと発展させたい」との考えを示しました。

このような中でクアッドへの参加に消極的な韓国の代わりに、昨年欧州連合(EU)と決別した英国がこれに参加する可能性が浮上しています。クアッドが「クインテット(5人組)」に拡大改編した場合、自由・民主陣営における韓国の立場が一層弱まるとの見方も出ています。

デーリー・テレグラフ(電子版)は28日、クアッドを「中国への対抗勢力として米国が拡大をにらむ『アジアの北大西洋条約機構(NATO)』」と表現。新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港の人権問題などで中国への強硬姿勢を強める英国が中国に対抗するため、クアッドに参加する可能性があるとの見解を示しました。 

また、英紙タイムズ(電子版)は29日、ジョンソン英首相がバイデン政権との外交政策の擦り合わせに熱心になっていると指摘。ジョンソン氏が今後、インドを訪問した際に参加も視野に入れた協議を行うとの見通しを示しました。英国は対中、対露政策で米国とともに強硬路線をとり、米英の「特別な関係」を維持したい思惑があります。

英国がクアッドに参加する可能性は昨年以降ずっと話題に上っていました。昨年EUから離脱した英国は新たな活路を見いだすため「アジアへの回帰」を政策として推進しています。米国や日本との海上合同軍事演習を通じて持続的にインド・太平洋地域への関心を示し、先月には日本との合同軍事訓練に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を参加させる可能性があるとも報じられました。

最新鋭空母「クイーン・エリザベス」


英国は昨年5月、対中協力に向けたいわゆる「民主主義10カ国(D10)構想」を呼び掛けるなど、共通の価値観に基づく連帯に積極的な関心を示してきました。そのため韓国の外交関係者の間からは「韓国が除外された状態でのクアッド拡大・改編」に対する懸念の声も出ています。

 2020年1月末に欧州連合(EU)から離脱した英国は世界各国との連携で経済成長や影響力拡大を図る「グローバル・ブリテン」構想を掲げており、アジア太平洋地域との連携拡大も視野に入れます。議長国を務める6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、韓国とオーストラリア、インドの3カ国を招待する方針を表明。G7に韓豪印を加えた「民主主義10カ国」(D10)を結成する構想を進めています。 

英国は中国を念頭に置いたアジア太平洋地域の連携を主導し、存在感を高めたい考えとみられます。

東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきています。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていますし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。また、日米とオーストラリアとインド(クアッド)、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。

ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コアとなる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりえます。

日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

その両国が、TPPとクアッド+英国で、協力しあうのは、まさに理にかなっているといえます。さらには、ファイブアイスとの関係を強化していくこともそうだと思います。

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2021年1月31日日曜日

トヨタや日産、VWなど半導体不足で自動車メーカーが減産に―【私の論評】日本の産業界のイノベーションが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制し、平和な世界を築く礎になり得る〈その2〉(゚д゚)!

トヨタや日産、VWなど半導体不足で自動車メーカーが減産に


日産の自動車工場


150万台に及ぶとの観測も


 1月中旬から半導体の不足で世界中の自動車メーカーが減産に追い込まれている。「米国と中国の復調を足掛かりに、巻き返しに向けて『さあ、これから』というときだったのに……」と関係者は嘆声をあげる。

 トヨタ自動車は米テキサス州の工場でピックアップトラック「タンドラ」を減産。日産自動車は追浜工場で主力小型車「ノート」の減産を余儀なくされている。ホンダも北米や鈴鹿製作所での減産を明らかにした。

 日系メーカーのみならず、フォルクスワーゲンやフォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズも減産に陥るなど影響は広がる。

「昨年コロナで自動車メーカーが減産して半導体の受注が減少したところに、思わぬ形でゲームやパソコンの巣籠もり需要が発生。車用の生産に回らなくなってしまった。いま急に作れと言われても対応できない。今後、自動運転やEV(電気自動車)が増えればもっと半導体の奪い合いが進むことが予想されるだけに、各社の確保策が問われるだろう」(電機業界関係者)

 一般的にガソリン車1台当たり半導体は約30個搭載される。だが、EVや高級車になると搭載数は一気に3倍弱に増える。奇しくもクルマの高度化に伴う歪が現れた格好だ。半導体不足で、世界の自動車メーカーで150万台前後の減産につながる可能性があるとも言われる。

 自動車メーカーは自然災害などで一部の部品の供給が停止し、生産が止まった事例を何度も経験してきたが、「半導体は業界を跨ぐ製品であるだけに異質だ」(自動車会社関係者)

 コロナによる直接の影響が収まっていない中での新たな不安要素の出現で、自動車業界の先行きに更に不透明感が増している。

【私の論評】日本の産業界のイノベーションが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制し、平和な世界を築く礎になり得る〈その2〉(゚д゚)!

現状では、自動車業界に限らず、世界中の多くの産業で半導体の供給不足が懸念されています。コロナでどちらかというと、人々の外出も減り、世界中で景気が低迷してるのに、なぜこのようなことになるのでしょうか。


その答えは、意外なものでした。味の素の子会社である、味の素ファインテクノが供給する、層間絶縁材料「ABF」が、世界的な半導体供給不足のボトルネックとなっている可能性があることを複数のメディアが報じているのです。

「ABF」は、微細な複数の層を積み上げていく、現代のCPUにおいて取り扱いや加工性能に優れることから、1999年に採用されて以降、現在ではほとんど全てのCPUにこの「ABF」が使用されていると言われています。

特に世界的な大手であるTSMC(台湾セミコンダクタ・マニュファクチャリング)では、現在好調である次世代ゲーム機、「PS5」や「Xbox series X」の7nmプロセスCPU製造をAMDから請負い、更にPC向けでは、5nmプロセスで製造するAppleの「M1」チップが同様に好調であり、どちらも市場では品薄となってしまっています。

2020年11月に発売された家庭用ゲーム機のPlayStation 5Xbox Series Xは、どちらもAMDのZen 2アーキテクチャベースのCPUとGPUを搭載していることで話題となりました。しかし、発売から2カ月経った記事作成時点でも市場には十分な数が供給されておらず、品不足が続いています。

PlayStation 5Xbox Series Xに搭載されているCUP

ExtremeTechによれば、ソニーやMicrosoftがAMDから購入した7nmプロセスチップの最大80%が、家庭用ゲーム機用に確保されているとのこと。そのAMDのチップはAMD自身が生産しているのではなく、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが生産ラインを抱えています。

ExtremeTechによると、PlayStation 5やXbox Series Xの登場によってAMDのCPUやGPUの需要が急増したことで、2020年秋頃からTSMCがチップの絶縁体に用いられる「Ajinomoto Build-up Film(ABF)」の不足にあえいでいることが供給のボトルネックになってしまっているそうです。

ABFは味の素グループが開発した高性能半導体の絶縁材です。ナノメートルレベルで回路が構築される現代のCPUでは、複数の回路が何層にも重なった多重構造が当たり前になっており、その層の間を絶縁するためにABFは使われています。味の素によれば世界の主要なPCのほぼ100%に使われているとのことです。

このABFの不足はAMDだけではなくIntelやNVIDIA、Qualcomm、Apple、Samsungなど、数々のチップメーカーに大きな影響を与えています。経済ニュースメディアのDigitimesは「2021年にはABFの供給不足が悪化する可能性がある」と2020年6月に報じていますが、この予測は的中したようだとExtremeTechは述べています。

また、PlayStation 5やXbox Series Xに採用されているGDDR6の歩留まりが悪いことがGPU不足の一因とす可能性もExtremeTechは認めています。ただし、ExtremeTechは「どのコンポーネントの不足がゲーム機の供給不足を引き起こしているのかははっきりしていない」とも述べ、今回のPlayStation 5やXbox Series Xの供給不足は単なる歩留まりの問題では説明できないとしています。

海外メディアでは、主要なABFサプライヤーはいずれもABFの供給不足に陥っており、2021年に入ってもしばらくはABF、AMDやAppleが供給するCPUの供給不足は続いて行くと推測しています。

ABFに限らず、フッ化水素なども含め高性能な半導体を製造する材料のほとんどを供給しているのが日本企業です。GAFAMといった巨大IT企業と言えども、半導体の供給がストップすると、彼らのサービスを提供することができません。

いまや半導体、テレビ、パソコンの製造は台湾、チャイナが担っているのですが、そのための材料や部品や製造装置、基礎的な資源や技術は日本にあるのです。

本当に日本の底力は、末恐ろしいです。これらのいずれかの輸出をストップしてしまえば、日本しか優れたCPUや半導体を製造できないことになってしまいます。

 東京エレクトロンが開発・販売する、「マイクロ波励起高密度プラズマ技術を
 用いた半導体製造(エッチング)装置」


それに、日本の産業界はこれからも、さらに優れた素材、製造装置などを開発し続けていくことでしょう。

冒頭の記事にもあるように、世界的半導体不足で、自動車の生産が一部で止まっています。スマートフォンの生産にも問題が出てきており、仮想通貨もマイニングマシンの生産に問題が出始めています。 TSMCやサムスンなど生産拡大を急いでいますが、味の素グループがアミノ酸技術で作った絶縁体の供給量以上の生産は不可能です。まさに、 世界の工業生産は味の素等の日本産業界が握っていると言っても過言ではありません。

以上の事実を知れば、先日私がこのブログで主張した、「日本の産業界のイノベーションが、中国の世界覇権、GAFAの世界市場制覇を抑制し、平和な世界を築く礎になり得る」とした私の主張はあながち誇張ではないことがお分かりいただけると思います。

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2021年1月30日土曜日

バイデン政権、対中強硬派のキャンベル氏を起用―【私の論評】対中国強硬派といわれるカート・キャンベル氏の降伏文書で、透けて見えたバイデンの腰砕け中国政策(゚д゚)!

 バイデン政権、対中強硬派のキャンベル氏を起用


カート・キャンベル氏

【世界を読み解く】「米国は中国の野心を過少評価してきた」など過去の対中政策は誤りと論述

 1月13日、米国新政権はホワイト・ハウス国家安全保障会議(NSC)にアジア政策統轄のポスト「インド・太平洋調整官」を新設し、カート・キャンベル氏を起用することが明らかになった。

  キャンベルはオバマ政権で東アジア・太平洋担当国務次官補(局長級)を務め、アジアへの「リバランス」(軸足を移す)政策を進めた。2018年春に米国外交問題雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に、過去の米国の中国政策は失敗だったとの論文を発表し、大きな反響をよんだ。キャンベルは多くの省庁にまたがる対中政策全体を統轄することになるらしい。彼の起用により、バイデン新政権の対中政策が見えてきた

▼キャンベルは、過去の米国の対中政策は誤りだったと指摘 

 『フォーリン・アフェアーズ』にキャンベルは2018年からの3年間で6本の論文を投稿した。その全てが中国について論じた。彼の主張は次の通りだ(6本の論文をまとめ再構成した)。

 1)米国の思いどおりにならない最も手強い競争相手
 ―過去、米国は中国の進路を決められると考えてきたが、それは間違いだった。ニクソン、キッシンジャーもこの間違いを犯した。現実に立脚して、米国の対中政策を再考すべきだ。
―過去、米国は中国を敵として扱わないようにすることで、中国が実際に米国に敵対することにならないのだと考えてきた。中国も「平和的台頭」(2005年)、「平和的発展」(2011年)という言葉を使っていた。
 ―米国にとり中国は、近代史上、最もダイナミックで手強い競争相手だ。中国はかつてのソ連よりも洗練され手強い。中国のGDPは購買力平価換算で既に米国を上回る。米国は、これまでの中国に対する希望的発想を捨てる必要がある。 ―トランプ政権は、二国間貿易赤字、多国間貿易協定の破棄、同盟の軽視、人権問題の軽視、外交の軽視などにより、米国自身の競争力を高めることなく、いたずらに対立的であった。他方、中国は対立的になることなく、中国の競争力を着実に高めている。

 2)依然閉鎖的・差別的な経済、国際経済面で無責任な動き ―中国との経済交流の拡大は、中国経済の自由化をもたらすと期待されたが、実際には国有企業、産業政策、補助金が強化され、外国企業の中国市場へのアクセスは制限されている。
 ―ブッシュ(息子)政権の国務副長官だったゼーリックは、中国を「責任あるステークホルダー」にすべく、国際秩序に組み込もうとした。しかしうまくいかなかった。たとえば中国は多くの非民主的政府への制裁を妨害している。また米国抜きの国際経済協力としてアジア・インフラ投資銀行、新開発銀行(BRICS銀行)、一帯一路を構築した。

 3)内政での統制強化 ―2013年、中国共産党の内部文書は、「西側の立憲民主主義」とその他の「普遍的価値」に対してあからさまに警告を発した。2015年だけで、300人以上の法律家、法務助手、活動家を拘束した。通信技術の進歩は、国家の統制の強化を助けている。
 ーウイグルでの弾圧は民族浄化のキャンペーンと言える。香港の国家安全保障法は、香港の外にも取締対象を広げるという従来にはない攻撃的アプローチを示している。 
―経済発展や中国人留学生の米国への留学は、政治的自由化につながると期待されたが、中国政府は壁を作り、統制強化でグローバライゼーションに対応した。

 4)全面攻撃を仕掛ける外交・軍事政策に米国はいかに対処すべきか 
―米国は中国指導部がいかに不安定でかつ野心的かについて、過小評価していた。中国は米国が主導するアジアでの安全保障秩序に挑戦し、米国と同盟国の間にくさびを打ち込もうとし始めた。 
―中国は、巨額の軍事費を投入し、ソ連以来の軍事国となった。とう小平の「能力を隠し時間を待つ」という言いつけは最早守られていない。 ―中国の冒険主義を抑止するため、米国は意識的に努力すべきだ。
 ―冷戦では闘争の場が世界全体であったが、中国との間の危険は、アジア太平洋に限られるであろう。それでもそこには少なくとも南シナ海、東シナ海、台湾海峡、朝鮮半島の4か所の潜在的なホット・スポットがある。中国は南シナ海で現状を変更し、尖閣付近のパトロールを強化し、台湾近郊で空中偵察を行った。ブータンと新たな国境紛争を起こし、インドと国境で衝突し、中国人民解放軍が30年ぶりに国外で武力を行使した。一つ一つは驚くべきではないかもしれないが、全体では尋常ではないフル・コート・プレス(コート全面を使った攻撃)を仕掛けている。 
―豪州に対する攻撃は、豪州の対中警戒心を高めさせ、国防費増額につながった。 ―インドとの国境衝突は、インドをしてこの地域での中国の決定的な対抗勢力にするかもしれない。
 ―インド太平洋で米中双方の軍が共存することは不可能ではない。米国は軍事的優越の回復が困難なことを受け入れるべきだ。むしろ米国とそのパートナーの行動の自由に中国が干渉し脅威を与えることを抑止することに焦点を当てるべきだ。 
―米国は高価で脆弱な空母ではなく、安価で非対称的な軍事力で中国を抑止すべきだ。長距離無人キャリアからの攻撃機、無人潜水艇、誘導ミサイル潜水艦、高速攻撃兵器などである。また米軍は、東南アジア、インド洋における軍事プレゼンスを多様化すべきだ。

 5)科学技術の競争にいかに勝つか 
―米国は科学技術で中国と競争するために、投資も増やす必要がある。技術窃取、保護主義、産業政策などにより中国は米国企業を不当に扱っており、この問題はWTOでも扱われるべきだ。

 6)世界における民主主義への支援 ―世界において、我々は反中ではなく、民主主義を支持するという立場であるべきだ。一帯一路でも、成長、持続可能性、自由、良いガバナンスを支持する立場で途上国を支援していく。

 7)同盟国・パートナーとの関係強化 
―米国はもっと自らと同盟国・パートナーの力を強めることに努めるべきだ。米国は中国に向かい合う際、アジアそして世界の諸国との緊密なネットワークを構築しないといけない。同盟は、削減されるべきコストではなく、投資すべき資産としてみなすべきだ。 

8)新大統領の課題 ―新大統領は、香港から南シナ海、インド、ヨーロッパまで、中国からの圧力と脅迫は続くことを覚悟すべきだ。 
―新大統領は、懲罰的一方主義を止め、欧州とアジアの同盟国との関係を再調整し、国連、G7、国際機関などの国際機関を改めて重視すべきだ。
 ―今日のインド太平洋では、ヨーロッパの歴史から得られる3つの教訓があてはまる。第1に力の均衡の必要性、第2に地域の諸国が正当と認める秩序の必要性、第3にこれらの2つに挑戦する中国に対処するための同盟国・パートナーとの連合の必要性。 
―パートナーシップ構築は、柔軟に考えるべき。英国が提案したD-10(G7とオーストラリア、インド、韓国)など、随時、臨時の枠組みも検討すべき。

 ▼キャンベルの起用には期待がもてるが、前途は多難 

 キャンベルは、バイデン次期大統領、ブリンケン次期国務長官、サリバン次期国家安全保障補佐官とも近く、彼らからインド・太平洋政策で相当大きな権限を与えられると見られている。なお一時、次期財務長官候補に挙げられていたブレイナードFRB理事はキャンベルの夫人である。

  キャンベルはトランプ政権時代に政権から離れていたが、その間、中国との関係について集中して考察を進め、民主党の対アジア政策を検討していたようだ。

  キャンベルは、共和党ブッシュ(息子)政権下の国家安全保障会議でアジア担当を務めたマイケル・グリーンからも評価されており、キャンベルの活動は超党派で理解と支持が得られるだろう。

  オバマ政権は中国にソフト過ぎだった、トランプ政権は二国間貿易問題などに関心を特化し過ぎだったと言われている。

      2017年1月17日大統領自由勲章をバイデン氏に授けるオバマ氏。
      バイデン氏は、まったく知らされていなかったと話した

  この点キャンベルの思考には総合的な視点がある点、高く評価できる。(ただ、北朝鮮や、ロシアの扱いなどについては突っ込んだ言及・考察は述べられていない。)

  米国と同盟国・パートナーとのネットワーク関係の強化、国際機関重視を主張し、また尖閣への中国の攻撃的姿勢を中国の対外政策全体の中で位置づけていることも高く評価できる。

  キャンベルは、今日の中国の内政、外政での問題を指摘するが、ではなぜそのようになっているのだろうか。

  とう小平が望んだように、中国は経済発展はした。しかし貧富の格差の拡大、地域間・民族間の格差など、社会矛盾を解決できていない。とう小平はその解決法までは言い残さなかった。民主化により、貧者の声を吸い上げ、国政に反映させ、富の再配分メカニズムを作る必要がある。しかし富の再配分に反対する既得権益もできているため、それもできない。

  胡錦濤・温家宝時代には少しはあった民主化の議論もなくなってしまった。成長の鈍化、早すぎる人口高齢化の問題もあり、社会の緊張(不満のガス)が高まっている。そのため、国内的な抑圧、がむしゃらな対外経済活動、国威発揚のための攻撃的政策につながる。悪いパターンにはまってしまっているが、抜け出す良い智恵がない。

  トランプ政権時代の4年間で、米中関係を始め世界はもっと難しい状況になり。「リセット」はできないと『ファイナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストのラックマンは指摘している。

  キャンベルは民主主義擁護と言うが、中国以外にもロシア、ブラジル、インド、トルコ、サウジ・アラビアにいる反動的ナショナリストにどう対処するのか、結局は「現実政治」になるのではないか、しかし米国の国力も落ちているとの指摘だ(FT紙2020年3月9日付け)。バイデン新政権とキャンベルはオバマ大統領が残した4年前よりも厳しい状況からスタートせざるを得ず、その前途は多難である。 (Foreign Affairs 掲載(含むネット版)のキャンベルの6本の論文は次の通り。それぞれ共著者がおり、その中には政権入りする可能性が取りざたされている者もいる。)

 “The China Reckoning”、 March/April 2018
 “Competition Without Catastrophe”、 September/October 2019 
“The Coronavirus Could Reshape Global Order”、March 18、 2020 
“China Is Done Biding Its Time”、 July 15、 2020 
“The China Challenge Can Help America Avert Decline”、 December 3、 2020
 “How America Can Shore Up Asian Order”、 January 12、 2021 

(敬称略)

 ■井出 敬二(ニュースソクラ コラムニスト) 1957年生まれ。1980年東大経済学部卒、外務省入省。米国国防省語学学校、ハ ーバード大学ロシア研究センター、モスクワ大学文学部でロシア語、ロシア政 治を学ぶ。ロシア国立外交アカデミー修士(国際関係論)。外務本省、モスク ワ、北京の日本大使館、OECD代表部勤務。駐クロアチア大使、国際テロ協力・ 組織犯罪協力担当大使、北極担当大使、国際貿易・経済担当大使(日本政府代 表)を歴任。2020年外務省退職。著書に『中国のマスコミとの付き合い方―現 役外交官第一線からの報告』(日本僑報社)、『パブリック・ディプロマシ ー―「世論の時代」の外交戦略』(PHP研究所、共著)、『<中露国境>交渉史 ~国境紛争はいかに決着したのか?』(作品社)、”Emerging Legal Orders in the Arctic - The Role of Non-Arctic Actors”(Routledge、共著)など。編訳に『 極東に生きたテュルク・タタール人―発見された満州のタタール語新聞 』(2021年出版予定)。

【私の論評】対中国強硬派といわれるカート・キャンベル氏の降伏文書で、透けて見えたバイデンの腰砕け中国政策(゚д゚)!

バイデン次期政権は、国家安全保障会議(NSC)の中に「インド太平洋調整官」というポストを新設、カート・キャンベル元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)を任命しました。

このブログでは、かねてからバイデン次期政権は内政重視、消極外交に徹するのではないかと指摘してきましたが、これまでの発言そして閣僚の専門知見から外交上の優先地域は、欧州(NATO)、中東(イラン)、そしてアフリカが想定される一方、中国を筆頭にアジアとは一定の距離が置かれるものと予想します。

「インド太平洋調整官」という新設ポストはバイデン政権のアジア消極外交の証左であると考えられます。またかつての「Pivot to Asia」や「戦略的忍耐」などアジア外交の「失策」を推奨、且つ親韓でもあるカート・キャンベル氏の起用は日本にとって難しい舵取りが強いられると危惧します。

そもそも「インド太平洋調整官」の意味合いとは何なのでしょうか。同ポストの新設は、アジア地域を重視するバイデン政権の姿勢との解釈があるかもしれないですが、米国的感覚だと真逆に見えます。

無論日本では、大企業等で「調整役」は大きな役割を果たしている場合も多いです。しかし、それは、すでに重要なことは意思決定されている場合であり、その意思決定に向けて、力を発揮するのです。しかし、「調整役」は意思決定には直接関わることはできません。重要な意思決定に関わることができるなら、そもそも「調整役」ではありません。

政権の最重要課題・責務は、大統領と頻繁且つ緊密な連携を要するため、閣僚(長官級)あるいは官僚のトップ(副長官級)が直接担い、特使やより階級の低い官僚には任せないものです。

ブリンケン国務長官は欧州(特にNATO)の関係修復に躍起、サリバン安全保障担当補佐官はイラン核開発問題と中東情勢を重視、オースティン国防長官はアジア経験・知見が皆無、そしてグリーンフィールド国連大使はアフリカとの関係強化が至上命題です。これでは、アジアに関係する意思決定が十分になされる環境にないといえます。


新設ポストが重要であるならば、何故「欧州調整官」あるいは「中東調整官」が設けられていないのでしょうか。アジアは、バイデン政権の最重要外交課題ではないのです。要は、主要閣僚にアジアの専門知見が薄いことと共に他の優先地域に尽力しなければいけないので、「調整官」というベビーシッター・監視役的なポストを設けたのです。

最も不可解なのが「調整官」という肩書で、権限のある役職は「(大統領)補佐官」、「政府代表・特使」あるいは「上級部長・顧問」などが付けられるものですが、「調整官」には重みが感じられません。

調整官とは、単に窓口と解釈できます。更に、官僚との指揮系統・役割に重複あるいは混乱が生じないか懸念されます。これから任命される「NSCアジア上級部長」、「国務次官補(東アジア・太平洋担当官)」そして各アジア諸国の駐在大使などの役割とかぶり、調整どころか外交のチームワークを乱しかねないです。

更にキャンベル氏の上司であるサリバン安全保障担当は20歳も年下、しかし外交経験ではキャンベル氏が先輩です。国務省と安全保障会議は若返りを図っており、キャンベル氏との相性が合うのかも気がかりです。

そうして、そもそもキャンベル氏の主張そのものにも疑問符がつきます。キャンベル氏は、「How Can America Shore Up Asian Order ~ A Strategy for Balance and Legitimacy」と題した外交論文を1月12日にForeign Affairs(オンライン)誌に掲載しましたた。そうしてこの論文は、率直に言って中国への降伏宣言ともいえる内容だと思います。

同論文は、19世紀の勢力均衡と欧州の協調を論じたヘンリー・キッシンジャーの博士論文を引用して、アジアの秩序を形成するためには、以下が必要であると主張しています。

①バランス(勢力均衡)の修復
中国の拡大する物質的パワー(経済力)は地域のデリケートな勢力バランスを不安定化させ、政府の領土拡大主義を強めた。こうした脅威にアメリカは意識的に対抗する必要がある。

米政府は先ず、空母や大型基地のような高額且つ攻撃を受け易い軍事兵器・施設から脱却すべき。つまり、長距離弾道ミサイル、無人戦闘機や潜水艇そして高速攻撃兵器などへ投資することを意味する。

米政府は、これまでの積極姿勢(存在感)を維持すべきではあるものの、各国と連携して兵力を東南アジアやインド洋に分散する必要がある。
これは、特に最後の文を読むと、日本を含めたアジア諸国により軍事勢力を強化させ、米国の負担を減らすのが本音のようです。軍事力の削減、米民主党がかねてから指摘する軍事経費のコストダウンの意図が示唆されています。

序文では、キャンベル氏は、あたかもトランプ氏のように日本や韓国に防衛費負担を求めないと言及しているのですが、防衛負担は求めない代わり、より自国の防衛体制を強化しろと言っています。

バイデン政権が掲げる同盟国連携の本質は、米国の負担軽減、各国による自立要請のようです。アプローチは違ってもトランプ政権と本質は変わりないようにもみえますが、ただ、オバマ政権においては大幅に縮小させた防衛費の大幅増を実施していました。今後バイデン政権はどうするのか非常に気がかりです。

②レジティマシー(正統性)の回復
地域の秩序を構築する"二つのアジア"がある: 一つは政治・安全保障で、もう一つは経済。前者での秩序を保つには、アメリカの再関与政策 ~ 同盟国を恐喝しない、地域サミットを無視しない、経済協力を惜しまない、そして国家間の協力を阻まない。経済での秩序を強化するには、中国がアメとムチを巧みに使いこなす中で、現体制・システムが同盟国に利益をもたらす仕組みを確保すること。
米国が安全保障に重要な産業の再生、中国との"管理されたデカップリング"を進める中、他国にもサプライ・チェーンを中国から自国に移転することは新たな成長を見出すことが促せる。更に、中国による一帯一路構想に関連したインフラ融資に対抗して米国も新たな融資・支援策を構築すべきである。
米国と同盟国らが中国に競争的ながらも平和な枠組み・秩序を悟らし、それにはいくつかの利益が得られることを認識; 中国政府の存在が地域で認められる、ルールを遵守することで予期できる商業環境、そして環境、インフラとコロナ・ウイルスにおいての協力から得られる利益。

米政府は同盟国と共にシステムの強化に取り組み、中国に生産的に協力・従事するインセンティブを与え、そして中国が地域の秩序を犯すようであれば集団的にペナルティを課す必要がある。 

これらの文章からは、中国に対し寛容的であったオバマ政権のなごりというか、そのままの姿勢を感じます。地域の「政治・安全保障」と「経済」の秩序の強化と主張するものの具体性に乏しいですし、現実性に欠けた理想論に過ぎません。

一つだけ具体的だったのがサプライ・チェーンの回帰、それを「管理されたデカップリング」と言及です。ところが、問題なのはは最後二つの文章です。三つ目は未だに中国は国際社会のルールに従う、説得の余地があるような考えを抱いているようです。

中国をWTOに加盟させ、オバマ政権での「Pivot to Asia」や「戦略的忍耐」のような失策の反省が見受けられません。最後の文では上記で指摘した軍事面での姿勢にも似ていますが、中国に対する制裁・アクションは単独ではなく共同で行う弱腰姿勢です。

日本には「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグがありますが、国際秩序の保護に通じない甘い考えです。みんなで渡るのは良いですが、先ず誰か(米国)が第一歩を取らなければ集団は動きません。

③連携(コアリション)の促進が重要
同盟国との連携」は決まり文句になっているが、実際に達成するとなるとその壁(チャレンジ)はとてつもなく大きい。現在のインド太平洋の枠組み・秩序を保っていくには幅広い連合組織が必要で、参加するメンバーらは現状のシステムが崩壊するまでその価値を理解しないかもしれない。同盟国による連携の必要性は、現状のステータスが覆されるまで明らかにならないもの。
これはどうしたことでしょうか。第二次世界大戦後の世界秩序の中でのトップリーダーである米国の言うこととはとても考えられません。同盟国の連携を主張しておきながら、どん底に落ちるまで連携は構築できないかもしれないとは何事でしょうか。これは、中国への敗北、降伏宣言以外の何ものでもありません。
遠い欧州のリーダーらは、インド太平洋諸国より中国の強い姿勢をあまり脅威と感じていない。欧州諸国から共感を得ることを難しくしているのが中国の経済力; 先月に、バイデン政権下で統一した大西洋アプローチが難しくなる懸念を示したにも関わらず、中国は土壇場でEUとの貿易協定にこぎ着けたのである。

 この弱音、泣き言は一体何事なのでしょうか。サリバン次期安全保障担当補佐官がEU首脳らに中国との貿易協定を保留するよう求めたにも関わらず聞き容れてもらえなかったのでスネているようにしか聞こえないです。もう、端から対中包囲網など諦めているようにしかみえません。確信も怒りも感じられません。

(連携には)限界があるため、米国はパートナーシップの構築には柔軟且つ革新的になる必要がある。一つずつの議題・問題を大きな連合組織で議論するのではなく、個別問題に乗じてビスポーク・特定のグループを模索すべき、例えばイギリスが提案するD10 ~ G7にオーストラリア、インドと韓国を加える。
「限界」という言葉使った瞬間にやる諦め感がひしひしと伝わってくるではありませんか。中国としてはこれほど勇気づけられる論文は無いのではないでしょうか。更に、キャンベル氏はかねてからオーストラリアと韓国をひいきにしています。その意味で、D10構想を積極的に容認、QUADにおいても韓国の参加を推奨しています。オバマ政権と同じ、日本よりも韓国に沿った姿勢を示すことが推察される。

そうして、多くの人々がすでに指摘していることですが、同論文で「インド太平洋」という言葉は度々使われるものの、「自由で開かれたインド太平洋」は一度も引用されていないのです。


バイデン政権の外交閣僚からも今のところ「自由で開かれたインド太平洋」と言及した形跡がありません。ご存じ、「自由で開かれたインド太平洋」構想は、日本安倍総理のリーダーシップによって形成、アメリカ(トランプ政権)を筆頭にインドやオーストラリア等が賛同し、中国の抑制手段として期待されています。

もしバイデン政権に同構想を否定・修正する意図があるとすれば連携どころかアジアの足並みが乱れる可能性も考えられます。同時に日本は微妙な立ち位置に立たされるかもしれないです。

キャンベル氏の任命により、バイデン政権は、オバマ政権下での消極外交路線に回帰するのは目に見えています。米国が、対中国戦略において、他国と足並みを揃えるだけでは誰も前に出なないというか、出られません。

トランプ氏の外交政策は強引過ぎた面はあったものの、単独でも中国と対立する姿勢は、一定のリーダーシップと存在感を見せていました。キャンベル氏が論文で見せる弱腰あるいは護送船団姿勢では中国とはまともに戦えません。

アジアの新秩序は米国が他国と協調するような姿勢では樹立できません。米国がまず先頭にたたなければ、難しいです。

ここは、日本として、今後の2年後の米議会選挙で、共和党が多数派になること、さらには、4年後の大統領選挙ではトランプ氏が復帰するか、トランプ氏と同じような対中国政策を推進する人物が大統領になってもらうことを期待するしかないかもしれません。

ただ、その前に、まずは日本がアジアでリーダーシップをとるくらいの気構えをみせるべきと思います。そうして意味では、安倍復帰待望論が巻き起こるかもしれません。

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2021年1月29日金曜日

蓮舫氏「『自助』と口にするのやめて」発言 なくしたら社会保障が成り立たない―【私の論評】これが野党第一党の、代表代行が話す内容?立憲がまともな経済対策もコロナ対策も提言できないのは当然(゚д゚)!

 高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 

蓮舫氏「『自助』と口にするのやめて」発言 なくしたら社会保障が成り立たない

立憲民主党の蓮舫代表代行は2021年1月27日の参院予算委員会で、菅義偉首相に「もう『自助』を口にするのはやめてもらいたい」と質した。

菅首相は「やはり、まずは自分でできることは自分でやってみる。そして、家族や地域で支えてみる。それでもだめだったら、必ず国や地方団体がしっかり支えてくれる。そうした社会にしたいというなかで、最後は国のセーフティーネットもある」とした。
 「自助、共助、公助」は社会保障における普遍的な概念

菅首相が、自民党総裁選で「自助、共助、公助」をいったが、これは従来から言われていることだ。立憲民主党の野田佳彦元首相も、首相当時国会で「自助」の大切さを答弁した。

枝野幸男立憲民主党は、昨年10月の菅首相の所信表明演説に対する、枝野氏の代表質問で、「自助、共助、公助」に対して時代遅れと批判した。

しかし、枝野氏は、2005年7月の国会で、「生活保護という仕組みは、本来は、なければない方が望ましい制度なんだ。まさに自助、共助、公助」と発言している。さらに、民主党政権時代の税と社会保障一体改革は、「自助、共助、公助」が前提で作られている。こうした過去の発言との整合性を考えて、時代遅れとしたのだろうが、これは時代に関係のない話であることを理解していない。はっきりいえば、「自助、共助、公助」は社会保障における普遍的な概念だ。

まず、助ける人と助けられる人がいる。助けられる人は、直接的と間接的に分けられる。つまり、社会保障の各分野において、国民は、助ける人、助けられる人(直接的)、助けられる人(間接的)のどれかになる。さらに、助けられる人(間接的)は、民間組織によるものと公的組織によるものに分けられる。

助ける人のところを「自助」、助けられる人(直接的)と助けられる人(民間組織による間接的)のところを「共助」、助けられる人(公的組織による間接的)を「公助」という。

これでわかるように、社会保障では「自助、共助、公助」は当然の話であり、「自助」をなくしたら、助ける人がいなくなるので、社会保障が成り立たなくなる。

 国会では自助・共助・公助の「バランス」を取り上げるべき

民主党政権の時の「税と社会保障一体改革」には、「自助・共助・公助の最適バランス」と書かれているくらいだから、民主党政権時に閣僚だった蓮舫氏も知らないはずないだろう。

もちろん「自助・共助・公助の最適バランス」は重要な論点なので、国会ではバランスを取り上げるべきだ。そこには、野党は自公政権と違う価値観があり、それを堂々と国民に示すべきだ。

しかし、自助をなくせなどというのは、論外の愚論なので、国会で話すべきことではない。そうした議論を繰り返す限り、普遍的な考え方もわからない立憲民主党となって、とても政権運営を任せられるはずない。

いくら内閣支持率が下がったといっても、肝心の自民党支持率はさほど下がっていない。というのは、野党の政党支持率が高まっていないからだ。

政権が持つかどうかは、内閣支持率ではなく、「内閣支持率+政党支持率」だ。それによれば、マスコミが煽るほど、菅政権は追い込まれていない。それは野党のせいでもある。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

【私の論評】これが野党第一党の、代表代行が話す内容?立憲がまともな経済対策もコロナ対策も安保も提言できないのは当然(゚д゚)!

2021年1月27日の参院予算委員会での菅総理に対する質問は、常識超えた酷さというにつきます。これについては、政治学者の岩田温氏が動画でかなりの批判をしています。その動画を以下に掲載します。


27日の参院予算委員会で菅首相と立憲民主党の蓮舫代表代行が新型コロナウイルスの医療提供体制をめぐって応酬を繰り広げました。蓮舫氏は首相のコロナ対策に関する発信力不足なども含め繰り返し責め立てるが首相も反論しました。

蓮舫氏のバカさ加減については、何も今始まったことではないので、やはり馬鹿だったということで、このこと自体にはさらに説明するなどしません。政治学者岩田氏が語っているように、蓮舫氏は菅総理の外野応援団なのかもしれません。このようなことを後数回繰り返せは、菅政権の支持率はかなりあがることになるでしょう。

田母神氏が「電車の中で、高校生二人が、蓮舫てほんとに馬鹿だなと、話していたと」昨年の11月くらいにツイートしていましたが、まさにそのとおりです。本当に愚かです。

ただ、上の高橋洋一氏の記事にもあるように問題はそれだけではありません。野党第一党の代表代行の地位にあるものが「自助、共助、公助」の区別もつかないのは本当に問題です。

「自助・共助・公助」、実はこの言葉はずいぶん以前から使われており、特に菅総理が新しく言いだしたわけではありません。特に社会保障分野においては「自助・互助・共助・公助」として4つに分けるのが一般的です。

これについては年金、介護、医療等々、様々な分野でこうした区分けによる考え方が存在するのですが、特にに年金分野では主に「老後の生活を支える手段及び考え方」として、この4つの“助”が使われています。

そもそも公的年金制度が出来たのは歴史的にみれば、そんなに大昔のことではありません。現在の厚生年金法の前身は戦時中の1942年6月に施行された「労働者年金保険法」ですが、最初は民間企業で現業に従事する男性が対象でしたた。

その後、女性や事務系の労働者にも適用が拡大されたのは1944年であるからほぼ終戦の頃といっても良いです。さらに国民年金法によって1961年に国民年金がスタートし、現在の国民皆年金制度となりました。

ではそれまではサラリーマンが定年退職した後はどうやって生活していたのかと言うと、基本は自分で老後に備えた資産作りをすることでまかなっていたわけです。さらに、戦前は長子相続によって長男が親の遺産を相続する代わりに年老いた親の老後の生活を見るというのが一般的でした。

言わば基本は「自助」ですが、子供が親の面倒を見る、あるいは親戚や地域で助け合うという「互助」の仕組みが普通だったのです。

こうしたことを考えると、戦中・戦前の日本は、まさに新自由主義的だったともいえると思います。



ところが戦後、高度成長時代となり、地方から大都市へ働きに行く若者が増えたことで核家族化し、大家族制を維持し、子供が親の面倒を見るというのは実質的にできなくなりました。

そこで老後の面倒は社会全体で見るべきであるということで誕生したのが「共助」である公的年金制度なのです。

公的年金が「公助」だと勘違いしている人もいますが、それは少し違います。「公助」とは、そういった助け合いの仕組みからも漏れてしまった人たちを最後に救うための手段であり、言わばセーフティーネットの役割です。

1つの例を挙げれば「生活保護制度」などがこれにあたります。「共助」である公的年金制度は、そのメリットを享受する人たちが互いにその費用を負担し合うのが基本です。すなわち公的年金の本質は「保険」ですから、保険料を払った人だけが年金を受給する権利があるのが当然なのです。

よく言われるのは「公的年金」の役割は“防貧”、すなわち年をとって働けなくなった時に収入がなくなって貧困に陥ることを防ぐのが最大の目的であるとされます。

これに対して生活保護などの「公助」は言わば最後の砦であり、その重要な役割は“救貧”すなわち貧困に陥ってしまった人たちを救うことにあります。生活保護の原資は保険料ではなく税金です。

最初から生活保護を受けることを目的にしている人などいないわけでですから、保険料などというものが存在しないのは当然です。何らかの理由で保険料も払えず、公的年金が支給されなくなってしまった人を救うには当然、国民全体で負担している税でまかなうのが自然な姿です。

したがって、「老後の生活を支える」という目的を考えると、現在の社会において、一番の基本は「共助」ということになります。昔、「共助」が無かった時代は「互助」(子供や家族、親族が支える)が中心でしたが、社会構造の変化と共に「共助」がその役割の中心を担うことになったと言えるます。

これは年金だけではありません。介護も昔は家族の経済的負担が大きい「互助」が中心だったのですが、次第にそれが困難となってきたので、2000年に「介護保険」が誕生したのです。

現在はもはや「互助」という機能はごく限定的となっているため「自助・共助・公助」と言い換えても差し支えないでしょう。あくまでも土台となるのは制度的には「共助」ですが、それ以上に自分で豊かな老後をおくりたいと考えるのであれば「自助」によって資産形成をすれば良いし、仮に共助の枠組みから外れてしまう人に対してはセーフティーネットである「公助」が起動し始めるというのが社会保障全体の仕組みなのです。

したがって「自助・共助・公助」を社会保障の面に限って言えば、ど真ん中に「共助」が来て、その両脇を残りの2つが支えるという構図となるでしょう。

ここまで話してきたのはあくまでも社会保障、とりわけ「老後の生活保障」という観点での話です。菅総理が言う「自助・共助・公助」にはもちろん社会保障の面が含まれてはいるでしょうが、もう少し広い意味で社会のあり方、社会のデザインを意図してのことでしょう。そう考えるのであれば、まず真っ先に「自助」が来るのは当然のことです。


なぜなら、そもそも人が生きて生活を営む上においては、まず自らが働くことが第一であるのは言うまでもないからです。したがって最も大事なことは誰もが働ける内は、そして働く意思があれば長く働くことができ、しかも満足できる報酬を得ることができるようにすることです。

そのために大切なことは経済が成長し、企業が収益を上げられるようにすることが重要です。「自助」という言葉の裏に隠された重要なキーワードは「経済の成長」なのです。日銀の金融緩和政策、政府の財政政策やその他の政策の推進も、規制改革もそのための手段であるに過ぎません。

もちろん、すべての人が生きていく上で全てを「自助」でまかなうことは不可能です。高齢で働けなくなったり、病気になったり、あるいは介護を受ける必要が出てきた時には「共助」という仕組みを使うことになります。

但し、この共助=社会保険という仕組みは、社会全体で負担をまかない、必要な人にサービスを届ける“保険”の役割であるから、その便益を受ける人が一定の費用負担をすることは当然です。

ところが、不幸にしてそうした費用負担すらできなかったという人たちもいます。そうした人たちに対して最後に機能するのが「公助」なのです。これは前述したようにまさにセーフティーネットであり、具体的には高齢者福祉や虐待の防止といった人権擁護の対策、そして生活保護といった、生きていく上での最低限の生活保障が「公助」の役割なのです。

したがって、社会全体の構造や自分の生き方を考えた場合、まず「公助」が最初に来るというのはあり得ないことです。前述のように「公助」の財源は保険料ではなく税金です。

税収を増やすためには経済が成長し、個人のベースにおいては給料が上がることは不可欠です。そのために、(1)労働市場に参加する人を増やす(女性の活躍推進や高齢者の就労拡大)、そして(2)生産性の向上(DX、規制改革)、を基本的な施策として据えているのが菅内閣の目指す方向です。

前内閣時の政策や今後やろうとしている施策を見ても、間違いなくこの方向が見て取れる。「自助・共助・公助」というのはそういう流れの中で考えておくべきです。

高橋洋一が主張するように、「自助・共助・公助の最適バランス」は重要な論点なので、国会ではバランスを取り上げるべきです。そこには、野党は自公政権と違う価値観があり、それを堂々と国民に示すべきです。そもそも、「自助」という言葉で一国の首相を攻撃できると思う人間は、この世に滅多に存在しないと思います。ましてや、それが倒閣につながると考えているとしたら、これはもう、酔っ払って正気をなくしているか、気が触れているとしか思えません。

しかし、自助をなくせなどというのは、論外の愚論なので、国会で話すべきことではありません。しかも、このような発言を野党第一党の、代表代行がするというのですから、見識も常識も何もあったものではありません。そもそも、国政に関する基本認識が狂っているのですから、これでは経済やコロナ対策、安保などをまともに考えられないのも当たり前です。

現在は、コロナやバイデン政権の誕生、中国の台頭、憲法問題など、国会で論議すべきことはたくさんあります。その中で「自助」をなくせという質問で首相を攻撃している暇などないはずです。

ただ、こうした政治家は、蓮舫などの野党だけではなく、自民党にも多いというのが実情です。蓮舫のように、表だって、首相を糾弾するなどということはないのですが、基本的な「自助・共助・公助」の意味を良く理解していないので、簡単に財務省等に煽られて、増税などに賛成してしまうのだと思います。

これらが、ただの言葉としてではなく、体系的に頭に入っていれば、別に難しい経済理論など知らなくても、積極財政や緊縮財政や、金融緩和や金融引締の実施すべき時など、常識的に認識できるはずです。本当残念なことです。


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