2021年3月20日土曜日

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」―【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」


海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦「はぐろ」が、19日に就役した。

イージス護衛艦「はぐろ」は、まや型護衛艦の2番艦として建造され、19日に、海上自衛隊に引き渡された。

「はぐろ」は、味方の艦船や航空機などをネットワークで結び、レーダー情報をリアルタイムで共有できるCEC(共同交戦能力)を備え、日本の防空の中核を担うことになる。

これで、日本の弾道ミサイル防衛を強化するため、防衛省が進めてきたイージス艦の8隻体制が整った。

岸信夫防衛相「本艦は、総合ミサイル防衛能力の担い手としての役割を期待されており、1日も早く任務に即応しうるよう、日々の訓練に精励してください」

「はぐろ」は、長崎県の佐世保基地に配備され、就役訓練を行ったうえで、警戒監視などの実任務にあたる。

(FNNプライムオンライン3月20日掲載。元記事はこちら

【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス護衛艦「はぐろ」の海上自衛隊への引き渡しのニュースは、多くのメディアで報道されていますがね、イージス艦の8隻体制とは何を意味するのか、これについてはほとんど報道されていません。本日はそれについて掲載します。

政府は、2015年1月14日に閣議決定した平成27年度予算案で、防衛省はミサイル防衛(MD)の要となるイージス艦1隻(前回就役の「まや」)の建造費を計上しました。30年度までにもう1隻(今回就役した「はぐろ」)調達する予定で、海上自衛隊のイージス艦は8隻になるとされました。


当時の6隻態勢から8隻態勢への転換が今回なされたわけです。海自関係者は「この2隻分の差が大きな変化をもたらす」と説明していました

イージス艦は4年に1度、半年間の定期検査を受けなければならず、これとは別に1~2カ月間の年次検査も必要となります。この間、乗員は船体整備などを行っており、イージス艦を運用する能力は落ちてしまいます。再び洋上に出た後に乗員の練度を最高レベルに戻すにはさらに数カ月かかるというのです。

日本の主要都市を弾道ミサイルから守るためには、最低でもイージス艦2隻が必要となります。8隻態勢になることで「常に最高の状態でイージス艦2隻が任務に就ける」(海自関係者)というわけです。

海自のイージス艦は、米国が開発した防空システム「イージス・システム」を搭載した護衛艦です。同時に多数の対空目標を捕らえるフェーズドアレイ・レーダーを搭載し、十数個の敵に向けてミサイルを発射できます。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合はイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、撃ち漏らせば地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が着弾直前に迎撃します。

前回の「まや」に続き、今回新たに調達されたイージス艦は共同交戦能力(CEC)を搭載し、さらに進化しました。

それまでのイージス艦は、味方の艦艇が捕捉した敵の情報を受け取っても、改めて自分のレーダーで敵を捕捉し直さなければ攻撃できませんでした。ところが、新システムでは僚艦の敵情報を受け取れば、そのデータを基にして即座に攻撃できます。

ただ、イージス艦を運用する自衛隊には苦い教訓があります。北朝鮮が24年4月13日に弾道ミサイルを発射した際、失敗に終わった事実を海自イージス艦は把握できなかったのです。

イージス艦といえども水平線の向こう側を低空で飛ぶミサイルを捕捉することはできません。より北朝鮮に近い黄海に展開していれば、発射失敗を確認することができました。

ところが、黄海にいたのは米軍と韓国軍のイージス艦だけで、海自イージス艦はいなかったのです。自衛艦による黄海展開に対し、韓国や中国が嫌がることに配慮したのです。

ただ、状況は変わっています。海自は現在で、艦艇や航空機を派遣しています。これは、以前のブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事は、2018年1月21日のものです。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。


黄海・東シナ海などを常時警戒監視しているP3C哨戒機が不審船を発見した場合、護衛艦を現場に派遣します。政府関係者は「監視活動を顕示することで北朝鮮への石油製品の密輸を抑止することにつながる」としています。

ここで、黄海という言葉がでてきますが、黄海での海自による警戒監視活動は戦後はじめのことです。これは、中国側からすれば脅威だと思います。自分たちは尖閣付近の海域で船舶を航行させたり、最近では潜水艦を航行させたりしていたのが、日本の海自が黄海で監視活動を始めたのですから、彼らにとってみれば、驚天動地の日本の振る舞いと写ったかもしれません。

しかし、黄海初の日本の海自による監視活動に関して、日本のマスコミは当たり前のように報道しています。中国側も非難はしていないようです。中国としては、米国側から北への制裁をするようにと圧力をかけている最中に、監視活動にあたる日本を批判すると、さらに米国からの圧力が大きくなることを恐れているのでしょう。

このようなこと、少し前までのオバマ政権あたりであれば、「弱い日本」を志向する人々が多かったので、批判されたかもしれません。というより、そのようなことを日本に最初からさせなかったかもしれません。そうして、中国は無論のこと、大批判をしたかもしれません。そうして、日本国内では野党やマスコミが大批判をしていたかもしれません。

このようなことが、すんなりと何の摩擦もなくできるのは、やはり米国では「強い日本」を志向する勢力が大きくなっているからであると考えられます。

このような哨戒活動をして、実績をつくった日本は、イージス艦も当然黄海にも派遣していることでしょう。そうして、当然のことながら、日本の潜水艦も随分まえから派遣していることでしょう。

なぜなら、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れており、このブログにも過去に何回か述べているように、中国の貧弱な対潜哨戒能力ではこれを発見できないので、日本の潜水艦は自由に水中を航行して、 様々な情報活動にあたるとともに、模擬訓練で中国の艦艇を沈める訓練もしていることでしょう。

昨年10月14日に進水した最新鋭潜水艦「たいげい」


当然のことながら、米原潜もいずれかに潜んでいることでしょう。日米の潜水艦、イージス艦は、バラバラに行動しているのではなく、互いに密接に情報を交換しつつ、黄海で監視活動にあたっていることでしょう。

共同交戦能力(CEC)を搭載した、「まや」、「はぐろ」などでは、日米は協同で、攻撃できる体制を整えつつあるでしょう。

そうして、これは北朝鮮のみならず、中国に対してもかなりの牽制になっているはずです。中国が台湾奪取への動きをみせれば、すぐに黄海上の日米のイージス艦等に察知されてしまうでしょう。

中国としては、このようなことはさせたくないのでしょうが、黄海には米国のイージス艦も存在するわけですから、なかなか正面切って非難することができないのかもしれません。

ただ、中国としては、この事実を日米に対して表立って非難すると、国内で中国海軍の脆弱性が暴露される危険もあるので、沈黙しているのかもしれません。そのかわり、尖閣付近で示威活動を派手に行い、国内向けプロパガンダをしているといのが実情かもしれません。

今回のイージス護衛艦「はぐろ」の就役により、常時少なくとも二隻のイージス艦で日本列島をカバーして、北朝鮮のミサイル等に対処することができます。当然のことながら、これは中国への牽制ともなります。

潜水艦20隻体制も完成したこと等もあわせると、これで日本の防衛力もかなり向上したといえます。

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2021年3月19日金曜日

LGBT外交の復活、異質な価値観を押し付け―【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!

LGBT外交の復活、異質な価値観を押し付け

バイデン大統領

 バイデン米大統領は2月4日に国務省で行った就任後初の外交政策演説で高らかに訴えた。

 「米国が戻って来たと世界に伝えたい」

 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

 別の意味とは何か。オバマ元政権が推し進めたLGBT(性的少数者)の国際的な権利向上、いわゆる「LGBT外交」の復活である。外交演説は中国やロシアに関する発言に注目が集まったため、大手メディアはほとんど報じなかったが、バイデン氏は次のように宣言している。 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

 「LGBT問題で国際的なリーダーシップを回復する。LGBTを犯罪として扱う動きと戦い、LGBTの難民や亡命申請者を守るなど権利向上に努める」

 バイデン氏はさらに、海外援助をLGBT外交のツールとして利用することなどを政府機関に指示する行政命令を出した。これは経済援助の条件として途上国に同性愛行為の非犯罪化などを迫ったオバマ政権の手法を踏襲したものだ。

 米国が超大国のパワーを振りかざし、保守的な倫理観を保つ途上国に同性愛を肯定する異質な価値観を押し付けるのは、弱い者いじめにほかならない。特に植民地支配された歴史のあるアフリカ諸国は、オバマ政権の脅迫的なやり方を文化的に侵略しようとする「文化帝国主義」だと激しく反発していた。

 このため、アフリカの宗教界はトランプ氏の再選を熱烈に望んでいた。各国の国家主権や伝統的価値観、信仰の自由を尊重するトランプ氏の姿勢を高く評価していたためだ。

 アフリカの宗教界では既にバイデン政権への警戒感が高まっているが、懸念を一段と強めたのは、国務省傘下の対外援助機関、国際開発局(USAID)のトップにサマンサ・パワー元国連大使が起用されたことだ。パワー氏はオバマ政権でLGBT外交を主導した人物の一人であり、パワー氏は海外援助とLGBT問題を露骨に紐(ひも)付けすると予想される。

 ナイジェリア・カトリック教会のエマニュエル・バデジョ司教は、USAIDはパワー氏の下で「アフリカの宗教的・文化的価値観に対し、思想的・文化的な襲撃を仕掛けてくることは間違いない」と、悲観的な見通しを示した。

 バデジョ司教は、オバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏をこう酷評したことがある。

 「世界には3種類の人間がいる。神を信じる者、神を信じない者、自分を神と思う者だ。クリントン氏は自分を神と思う人間の一人だ。宗教的価値や信念はクリントン氏にとって大切でないとしても、それを変えろと要求する権利はない」

 バデジョ司教は、パワー氏に対しても同じ見方をしているに違いない。

 一方、アントニー・ブリンケン国務長官は、LGBT問題担当特使を任命する意向を示している。

 LGBT外交は米国の国益を促進するどころか、途上国の反米感情を助長する可能性の方が高い。中国との覇権争いが最重要課題である時に、そのような取り組みをする余裕があるのだろうか。

 「米中新冷戦」の激化に伴い、各国は米国と中国のどちらの陣営につくべきか選択を迫られている。歪(ゆが)んだ価値観外交は途上国を米国から遠ざけ、中国の陣営に追いやる一因になりかねない。

(編集委員・早川俊行)

【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!

米国のバイデン大統領(78)が就任初日の20日に「LGBTQ差別禁止」に関する大統領令にサインしたことが思わぬ波紋を呼んでいます。長年、差別を受け続けてきた全米中の性的マイノリティーの人たちから称賛の声が上がった一方で、スポーツ界からは「女性アスリートが抹殺される」という批判的が上がっています。

米国の第46代大統領に就任した直後から数々の大統領令にサインし、自らの政策をさっそく実行し始めたバイデン氏。就任初日の20日には17の大統領令にサインしたが、その中の一つ「LGBTQ差別禁止」は、全米中の性的マイノリティーの人たちを歓喜さましせた。

というのも、トランプ政権時代は、保守的な支持層を意識して性的マイノリティーの権利保護に否定的だったため、不当な差別で職を失ったり、医療を受けられなかったりするケースが少なくなかったからです。

一方、バイデン氏は副大統領だったオバマ政権時代から性的マイノリティーの権利保護で指導的立場を取ってきました。その姿勢は閣僚人事にも表れ、運輸長官に指名されたピート・ブティジェッジ氏はゲイを公表した初の閣僚となりました。

今回の「LGBTQ差別禁止」の大統領令は、昨年6月に連邦最高裁が「職場でLGBTQを性的指向・性自認に基づいて解雇することは違法」とした歴史的判決に基づいているといいます。

一方でこの大統領令に問題点を指摘する声も上がっているといいます。

「大統領令には『性同一性や性的指向に関係なく、すべての人は法律の下で平等に扱われる』としたうえで『子供たちはトイレ、更衣室、学校のスポーツへのアクセスが拒否されるかどうかを心配することなく、勉学に励むことができる』という一節がある。この部分が元男性のトランスジェンダーアスリートの増加につながるととらえられ『女子アスリートが抹殺される』と保守派から問題視する声が上がった」(在米ジャーナリスト)

    コネチカット州の高校生陸上選手、テリー・ミラー。トランスジェンダー女性である
    彼女や他の選手が州の大会で優勝を独占した結果、3人の女性選手が競技への参加資格
    において「自認する性」を優先する州の方針に異議を唱えた

この声は思った以上に大きく、ツイッターでは「#BidenErasedWomen」というハッシュタグがつけられ、全米でトレンド入りするまでに拡大しています。

スポーツの世界で、元男性のトランスジェンダーアスリートをどう扱うかは、いまだに議論されている難しい課題です。

IOC(国際オリンピック委員会)では2015年にガイドラインを制定。「性適合手術を受けていなくても男性ホルモンのテストステロンを1年以上、一定レベルに抑制できている」などの条件で出場を認めています。東京五輪もこのガイドラインを基に女性としての出場を認めています。

ある五輪競技関係者は「難しい問題ですね。女性として生まれてきた女子アスリートから見たら、元男性のトランスジェンダーアスリートはもともと体のつくりが違うため、フィジカルの差が大きくなりすぎる。いくらテストステロンを抑えたとしても、女性では超えられない潜在的な壁がある」と明かしています。

皮肉にもトランプ前大統領は退任前の17日、こんな事態を想定してかせずか、バイデン氏の大統領令を担保する昨年6月の連邦最高裁判決について「長年性別によって分けられてきた分野にまで解釈を広げるべきではない」として、適用範囲の限定を狙った司法省通達を出していました。

バイデン氏にとっては、長年LGBTQの権利を守る活動を続けてきて、それを実現する大統領令にサインしただけのつもりが、まさかの部分にケチをつけられた形です。

バイデン氏の「LGBT外交」は、外交ではなくて、足元から崩れていく可能性が大きいです。トランスジェンダーの女性が、女子スポーツに進出するようになれば、米女子スポーツは崩壊するでしょう。

下は、中国のトランスジェンダー女性とされる人の写真です。

  2019年7月11日、中国の全国陸上競技選手権大会で優勝した湖南女子チーム。
  「男女混合リレー?」と2選手の性別に首をかしげる人が多いようだ


それでも、米国がトランスジェンダー女性を女子スポーツに参加することを認め続ければ、米国の女子スポーツは、多くのの種目で、米国トランズジェンター女性が勝つことになり、世界の女子スポーツは崩壊するでしょう。

最後に、日本の国会議員杉田水脈氏は「LGBTの人たちは生産性がない」と主張したことで、かなり叩かれましたが、彼女は言葉のつかいかたを間違えたと思います。私なら「全人類が、LGBTになれば、特にLGだけになれば、人類が崩壊する。BTはそれを助長する」といいます。これは紛れもない事実です。私自身は、彼女はこれを言いたかったのだと思います。無論これは、LGBTとされる人々を差別せよ、と言っているわけではありません。

これには現状では誰も反論できないでしょう。反論したとしても無意味です。これも、いずれ人工子宮なるものができれば、そうとばかりは言っていられなくなるのかもしれませんが、それにしても、これには確実に倫理的な問題が絡むでしょうし、それに現状では、普及しておらず、まだ未来の話です。

LGBTの人たちを不当に差別することはやめるべきだと思うのですが、スポーツの世界まで、LGBTを貫けば、とんでもないことになります。これは、誰にでもわかりやすいことなのですが、それ以外の分野でも、表には出てこない問題もかなりあるのではないかと思います。それが、表にでてくれば、バイデン政権は弱体化するでしょう。

中国にも上の写真で示したように、トランスジェンダーの女性スポーツ選手はいます。しかし、習近平自身は「トランスジェンダー外交」までは考えていないようです。

中国政府のLGBTに対する態度は「合理的」です。ゲイは社会の安定や経済発展のために「使える」ので支持し、レズビアンなどは放置されるか、意見の違いを公にすれば弾圧されます。多様な個人が集合体として社会をつくるという考えはなく、権力者がつくりたい社会の部品として有用かどうかという、いわば自分の都合で峻別しているにすぎないです。

セクシュアリティーだけではありません。現在の中国社会は合理性や生産性のみを優先して設計され、その枠に当てはまらない少数民族、宗教者、障がい者などのマイノリティーに対しては一貫して冷たい態度を取っています。これをやめない限り中国はまともにならないでしょう。

ただ、現状においては、LGBT外交で、結果として中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれることになりかねません。実際、そのようになりつつあります。日本でも自民党が、これを推進すれば、そうなりかねません。

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2021年3月18日木曜日

安保上のリスクも…「LINE」個人情報、中国で閲覧可能問題 政府が違法性の調査開始 韓国資本による海外流出の懸念が明らかに―【私の論評】日本人は、合理的な割にはリスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎ(゚д゚)!

安保上のリスクも…「LINE」個人情報、中国で閲覧可能問題 政府が違法性の調査開始 韓国資本による海外流出の懸念が明らかに

今月1日にヤフーと経営統合したLINEの出沢剛社長(右)

 政府の個人情報保護委員会は17日、無料通信アプリ「LINE」(ライン)の利用者の個人情報が、委託先である中国の関連会社から閲覧可能な状態になっていた問題などについて、同社の情報管理に違法性がなかったかどうか、経緯や実態の調査を開始した。専門家は、安全保障上のリスクも懸念している。

 「事実関係を確認の上、適切に対応する」

 加藤勝信官房長官は17日の記者会見で、こう語った。

 LINEによると、中国にある複数の関連会社が2018年夏ごろから、アプリの監視や開発業務の過程で、日本国内のサーバー内にアクセス可能な状態だった。名前や電話番号のほか、不適切な書き込みだとして利用者がLINEに通報した会話内容などが閲覧できるという。

 また、韓国にある関連会社のサーバーには、利用者の画像や動画のデータを保管していた。

 法律では、利用者の同意なく個人情報を第三者に提供したり、海外に持ち出したりすることは禁じられている。LINEの指針では、利用者データを第三国に移転することがあるとしながら、国名の記載はなかった。

 LINEは、不正な情報漏洩(ろうえい)は発生していないとしたうえで、「説明が不十分だった」と謝罪した。

 ネットセキュリティーに詳しい神戸大大学院工学研究科の森井昌克教授(情報通信工学)は、「LINEは、韓国資本も入っているアプリなので海外への情報流出は懸念されていた。(報道で問題が)明らかになったが、本来は自発的に公表すべきだった」と指摘する。

 安全保障リスクも懸念されるという。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「中国には、民間企業を政府の情報収集活動に協力させる法律もある。日本には危機意識の薄さもみられる。日本政府は日常の通信手段に潜む危険を注意喚起し、危機管理を強化すべきだ」と語った。

【私の論評】日本人は、合理的な割にはリスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎ(゚д゚)!

ご存じのようにLINEは、NHN Japanが提供する無料通話とチャットができるスマートフォンのアプリです。音声通話をネット経由のデータ通信で行うのですが、音声データは比較的容量が小さいため、かなり長く話したとしても定額制のパケット料金内に収まってしまいます。
 
ゆえに、実質的に通話料金がかかってこず、「無料通話」と言われるわけです。そこで、小遣いが限られていたり、少しでも通信費を安く抑えたい若年層や留学生などを中心に、爆発的に迎え入れられました。



なにしろ、サービス開始から約1年で、我が国での利用者が2000万人、アジアを中心に世界ではユーザーが4500万人を突破しているというのですから、あなどれません。

  ただ、実際にユーザーによくよく話を聞いてみると、人気の最大の理由は少し違う部分にあったようです。

メッセージをやり取りする時に、いちいちメールボックスを開いたり、返信ボタンを押したりしなくていいからということがあるようです。数年前、若い世代と話をしていたときにはじめて知りました。

   私自身は、LINEを使っていないため、そういう事情は知らなかったので、少なからず驚きました。

  わずか2つか3つのアクションであっても、面倒なものは面倒、やらなくて済むならやりたくない、という若年層が持つある意味での合理性をうまく汲み上げているところが、LINEがヒットした大きな理由であるようです。

私がLINEを使わないのは、アドレス帳データを預けたくないという1点に尽きます。一般には公開されていない人物や会社の連絡先が山ほど入っているので、見ず知らずの他人に預けることなど、恐ろしくてとてもできません。

LINEに限らず他のアプリでもそのようなものがありましたが、使っていません。確か、英語学習者とネーティブスピーカーをつなぐアプリだったと記憶しているのですが、これも恐ろしくて使えませんでした。

 しかも、現地法人とはいえ韓国企業といえば、通信大手のKTが半年以上にわたりハッキングを受けていることに気付かず、計870万人分の契約者情報を流出させたという事件があったことを忘れることはできません。いかに口頭で「きちんと管理しています」と言われても、この目で確かめるまではうかつに信用などできません。

若年層のユーザーもLINEを使っていると、元彼とかケンカして口もききたくない相手とかのアクティビティを教えてきたり、友人になりませんかと、レコメンドしてくることがあるそうでが、それはLINEの運営会社がアドレス帳データを持っていってるからなのでしょう。LINE運営会社は、ユーザーの人間関係を知ってるのからこそ、このようなことができるのです。
 
若い世代は、合理的な割には、リスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎのような気もします。LINEは神様や予言者じゃないのですから、知ってるってことの裏には、理由があるに決まっているはずです。

無論、facebookやtwitter、YouTubeも昨年あたりから、ユーザーの投稿内容を検閲してみたり、甚だしい場合は、アカウントを凍結してみたり、挙句の果てトランプ米大統領のアカウントを永久凍結したりと問題が散見されました。LINEは表立って、はっきりとユーザーにわかるような操作はしてはいないようですが、裏で何をしているかなどわかったものではありません。

これでは、先に述べたように、若い世代は、合理的な割には、リスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎと言ってもおられません。若い世代というよりは、すでに日本人はと言い換えるほうが適切だと思います。

性犯罪にも利用されるSNS

 LINEに限らず、GoogleやFacebookようにな会社は、自分の人生と直接関係があるわけではありません。一私企業に行動を把握され、監視されるのは、気分の良いものではありません。

使用を避けられるものなら、できるだけ避けておきたいです。最近では、なるべくこのような会社に個人データを蓄積されたり、利用されないように、パソコン、iPhone、iPadのブラウザはBRAVEを用いるようにしています。SNSも主にBRAVEで使っています。

このBRAVEを用いると、YouTubeなどCM(これって本当に苛つきます)が入らないので重宝しています。それと、ブラウズしていても、広告が入らないところが素晴らしいです。今後このようなサービスが興隆していくと良いと思います。ただ、なにもかもシャットアウトするというのは、不便なときもあります。どの程度自分の情報が特定のサービスに利用されても良いのか、ユーザーが自身で設定できるようになれば、ベストだと思います。

パソコンとスマホのBRAVEの初期画面

それにしても、このLINE日本では様々なところに浸透しており、様々な企業それも大手企業で用いられたり、地方自治体や学校等でも用いられたりして驚くことがあります。

保守派として有名な西岡力氏は、2019年に「LINEは危ない。韓国人はKCIAが全部見ていることが明らかになったので、みんなやめた。LINEは韓国政府に見られていると思ったほうが良い」と指摘しています。LINEの危険性については、LINEがサービスをはじめた当初(2011年 6月)から指摘されていました。

それにしても、以下のようなツイートには本当に驚いてしまいます。


平井卓也氏といえば、現在では、デジタル改革担当大臣です。2017年といえば、LINEの危険性については、予測されていたはずです。これだけ、警戒心のない人が、政府のデジタル改革を推進しても良いものでしょうか。

そう思うのは、私だけではないはずだと思います。

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2021年3月17日水曜日

台湾TSMCを繋ぎ留めようと必死の米国―【私の論評】半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつある(゚д゚)!

台湾TSMCを繋ぎ留めようと必死の米国

岡崎研究所

 2月24日、バイデン大統領は重要部材のサプライチェーンの見直しを命ずる大統領令に署名した。100日以内に半導体、大容量バッテリー、医薬品、レアアースの重点4品目についての見直しを求めている。この作業は中国を標的にしたものでないと説明されているが、過度な中国依存を脱却し、緊急時にも耐え得る強靭なサプライチェーンを構築し、安全保障上の懸念を払拭することを目指していることは明らかである。その手法としては国内生産の増強、戦略備蓄、緊急時の生産拡大余剰能力の確保、同盟諸国との協力の組み合わせが考えられているようである。半導体について言えば、台湾や日本、韓国との連携が当然視野に入って来るであろう。



 これに関連して、2月26日の英フィナンシャル・タイムズ紙では、同紙イノベーション担当エディターのジョン・ソーンヒルが、台湾の半導体受託生産企業(ファウンダリー)であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.:台湾積体電路製造)の躍進振りを描写した上で、TSMCが米国か中国かを選択することを余儀なくされつつあると述べている。

 TSMCの半導体は、アップルのiPhone、医療器具、F-35戦闘機を動かし、世界の半導体売上高の55%を占めている。その先端技術は、他企業が追随することを今のところ許さない状況だ。

 この驚異的な企業であるTSMCをはじめとする半導体製造企業が民主主義の台湾で発展したことは祝福すべきことであり、米国はじめ西側諸国はこれを資産として守るという姿勢が必要である。フィナンシャル・タイムズ紙の論説はTSMCにとっての懸念は米国と中国の間の地政学的な緊張であるが、この両者の間でのTSMCのマヌーバーの余地は小さくなって来ていると書いている。実体的にどういうことがあるのか必ずしも分からないが、西側諸国がTSMCを失うことがあってはならない。最先端半導体の供給源を失うことは壊滅的影響を持ち得る。

 TSMCの問題もその関連で検討されねばならない。TSMCはトランプ政権の圧力もあって既にアリゾナ州に進出することを決定し、現在、工場建設を進めているが、TSMCを繋ぎ止めるためには、それがビジネスの観点から見ても合理的であるように工夫される必要があるのであろう。更には、TSMCという一企業にとどまらず、台湾全体を安定したサプライチェーンに組み込むとの観点に立ってTPPに米国が台湾とともに参加する可能性が探求されるべきではないかと思われる。

 日本との関連でいえば、TSMCは、茨城県つくば市に、日本企業と提携して研究開発の拠点を設立することを決めている。米国アリゾナ州の工場建設も考えると、今後、日台米の連携が、この地政学上の優位を決め得る半導体分野で行われることが予想される。

現代社会において「半導体」は必要不可欠な存在だ。日本は半導体市場におけるシェアは大きく落としてしまったが、半導体の製造に必要な機械や材料の分野では日本企業が今なお大きな影響力を持っている。

中国メディアの電子発焼友はこのほど、半導体製造装置や材料のうち「重要なものになればなるほど、米国や日本企業の独占状態にある」と論じる記事を掲載した。

現在、激化している米中摩擦において半導体や半導体の製造装置が大きな焦点となっている。記事は、中国の華為技術(ファーウェイ)は半導体メーカーに対して、米国企業の製造装置を使わない生産ラインを構築するよう要請したと伝えつつ、中国企業は米中摩擦によって半導体が入手できなくなったり、生産できなくなったりする事態が生じることを強く警戒していることを指摘した。

【私の論評】半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつある(゚д゚)!

半導体製造では分業化が進んできました。それに遅れたのが日本でした。半導体の設計ツールは米国勢、ファブレス企業(工場を持たない会社)は米国を中心に誕生し成長してきました。その流れは日本で拒否され、台湾、最近では中国へと流れていきましたが、日本ではファブレス企業は成長できませんでした。


日本の半導体企業は、設計から製造まで一貫して行うIDM(Integrated Device Manufacturer:垂直統合のデバイスメーカー)にこだわり続け、ファブレスもファウンドリ(実際に半導体チップを生産する工場)もそれらのビジネスの本質を理解できないまま、衰退していきました。


今日残った売上額5,000億円以上の大手半導体メーカーは、東芝から独立したキオクシアとソニーセミコンダクタソリューションズ、そしてルネサスエレクトロニクスだけとなりました。この内キオクシアとソニーはそれぞれメモリとCMOSイメージセンサという大量生産品で昔ながらの大量生産工場を持つ会社です。需要が続く限り、大量生産品は成長できるが、需要が落ち込み始めると危うくなります。

日本が今でも得意な分野は、半導体を製造するための装置と材料です。最近では、フッカ水素が、有名になりましたが、これは他国でも製造できるものの日本以外のものを使うと、製造はできますか、歩留まり率がかなり低くなってしまいます。


日本では半導体を製造するメーカーが弱くなったために、その製造を支援する製造装置メーカーは海外企業に向けて出荷を続けています。売上額の海外比率は極めて高いです。半導体テスターのアドバンテスト社(旧タケダ理研工業)は、海外比率が95%くらいに達しています。半導体製造は今や、米国と台湾、韓国が大きな市場となっています。

またウェーハ完成後、チップに切り出してからパッケージングするまでの後工程では、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)と呼ばれるパッケージ専門の請負業者がいます。ここでは、ウェーハからチップを切り出し、それをリードフレームと呼ばれるメタルの基板にチップを載せ、チップ上のパッドと呼ばれる電極部分とリードフレーム上の各配線端子との間をボンディングワイヤーでつぎます。最後に樹脂で固めて封止します。最後にICが正常に動作するかどうかのテストを行います。

後工程での製造装置も日本が得意です。ディスコ社はウェーハからチップを切り出すダイシング装置に強いです。新川、カイジョー(旧海上電気)など比較的中小のメーカーが多いです。プリント回路の実装に強かったヤマハ発動機がボンディング装置やマウンティング装置の新川と、モールディング装置のアピックヤマダを買収しました。産業再編も活発になっています。


世界の半導体製造装置市場において、半導体の生産に必要な製造装置と材料の分野においては日本企業が大きなシェアを獲得しています。半導体設計に関しては、米国が大きなシェアを獲得しており、日本企業の製造装置と材料を使わずに半導体を生産するのも非常に難しいです。台湾のTSMCも日米なしには、半導体を製造できません。

現在の半導体産業では結局日米企業が要所を押さえている状況にあり、中国の半導体製造装置・素材メーカー、ファブレス企業も発展しつつありますが、日米の企業と比べるとまだ大きな差があるのが現状です。米中摩擦がさらに激化すれば、半導体の材料や製造装置を舞台に激しい駆け引きが繰り広げられるであろうことになるでしょう。

そのときに、日米側にTSMCがついているということは、非常に重要なことです。半導体製造装置や材料のうち「重要なものになればなるほど、米国や日本企業の独占状態にある」ことから、TSMCも当然のことながら、日米を選ぶのが合理的な判断です。

この日米台の背景には、言うまでもなく、トランプ政権でのファーウェイ排除の動きがあります。トランプ政権がファーウェイを世界市場から締め出す動きを加速させてきたことは周知の事実です。

CPACで演説するトランプ氏

2020年5月15日、米国政府は、ファーウェイが設計した半導体の製造をファウンドリー(半導体を受注製造する企業)が受託した場合、米国の技術やソフトウェアを使用する際には、米国商務省の許可を義務づけました。

つまり、米国原産技術やソフトウェアを使って半導体をつくることを禁止したわけです。これにより、世界最大のファウンドリーである台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、ファーウェイ向けの半導体製造が不可能になりました。

TSMCの主要顧客には、アップルやクアルコム、エヌビディアといった世界的な企業が名を連ねています。TSMC時価総額は約39兆円で、同20兆円であるトヨタの2倍の規模を誇り、半導体業界では世界1位です。半導体の世界では、TSMCなしにグローバル・サプライチェーンはつくれない状況になっているのです。

そして、このTSMCの上客だったのがファーウェイです。ファーウェイはTSMCに自社開発の半導体チップの生産を委託してきました。米国政府の決定は、事実上、これを禁止するものでした。


今後日米台による半導体による、経済安全保障体制を強化していくことは、中国に対する大きな牽制となります。

今後、世界の半導体サプライチェーンは大きく変化する可能性があります。一つのシナリオは、日・米・台を軸に、世界の半導体供給網が再整備される展開です。 

先にもあげたように半導体の設計・開発と生産の分離が進む中、米国は、最先端の製造技術や設計・開発に関するソフトウエア(知的財産)の強化に取り組むでしょう。米国が中国の人権弾圧にIT先端技術が使われていることを問題視し、半導体製造技術などの流出を食い止めるために制裁を強化する可能性もあります。 

台湾では、TSMCが微細化や後工程への取り組みを強化している。 また、わが国は旧世代の生産ラインを用いた半導体の供給や、高付加価値の関連部材、製造装置などの供給者としての役割を発揮しつつあります。 

それは半導体産業を強化したいEUにとっても重要です。車載半導体を手掛ける欧州の半導体企業は、生産をTSMCなどに委託しています。最先端の半導体生産に用いられる極紫外線(EUV)露光装置に関して、唯一の供給者であるオランダのASMLは米国の知的財産などに頼っています。 

半導体業界における日米台の連携は、EU各国企業にも大きく影響します。国際社会と世界経済の安定に、半導体サプライチェーンが与える影響は増すでしょう。 

日米台の連携は様々な分野で進んでいる

このように考えたとき、韓国政府とサムスン電子などの企業が、半導体業界の変化にどう対応するかが不透明です。 

TSMCは2021年内に回路線幅3ナノメートルの半導体の生産を開始すると、見込まれています。ファウンドリー分野でTSMCとサムスン電子とのシェアや技術面での格差は、今後拡大していく可能性が高いです。 

他方で、メモリ半導体や家電などの分野において、韓国の企業は、中国企業に追い上げられています。文政権の政策は、国際社会における韓国の立場と、韓国企業の変化への対応力にマイナスの影響を与える恐れがあります。

半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつあります。欧米のテクノロジーの盗窃により急進してきたのが中国の半導体です。それを断ち切ろうというのがトランプ政権の対中政策でした。

半導体を制する者が、次のテクノロジーを制し、それは経済、軍事における覇権を握ることになります。トランプ政権は終わりましたが、日米台の連携は始まったばかりです。これが今後の中国覇権とアジアの行方を左右する要素になると思われます。

これは、時がたつにつれて、ボディーブローのように中国に効いていくものと、思われます。1976年9月6函館に旧ソ連のミグ25が緊急着陸してベレンコ中尉が米国に亡命しました。そのときに、技術者がソ連の当時の最新鋭機ミグ25を調査して驚いたことがあります。

なんと、電子部品の一部に真空管が使われていたというのです。当時は、半導体はあまり用いられてはいませんでしたが、トランジスターは用いられていました。現在の中国も当時のソ連のようになりかねません。最新型の半導体を使えないことは、当時よりも現在のほうが圧倒的に不利です。


それを阻止するために、中国は台湾を奪取して、TSMCを傘下に収めようとするかもしれまません。しかし、それを実行したとすれば、習近平は愚かです。なぜなら、日米あってのTSMCなのですから、日米から分離したTSMCは、現在までの最新型の半導体は、部品・材料の備蓄の範囲内では製造できるでしょうが、その後はできなくなります。

無論、日米は中国が台湾を奪取することを許すべきではありません。そうして、それは日米が協同すれば、このブログにも過去に述べてきたように、十分に可能です。

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2021年3月16日火曜日

最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船―【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

 最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船


海上自衛隊の最新鋭掃海艦「えたじま」が3月16日、就役した。ジャパン・マリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。掃海艦の就役は2018年3月の「ひらど」以来、3年ぶりとなる。海上自衛隊呉基地の第3掃海隊に配備される。えたじまは、高性能化した機雷の除去などの任務に当たるが、特に潜水艦を狙う深深度機雷を排除する能力に優れる。

えたじまは2017(平成29)年度計画掃海艦で、艦名は広島県の江田島に由来する。同島は1888(明治21)年に海軍兵学校が東京築地から移転して以来、海軍ゆかりの島として知られる。海軍兵学校の代名詞ともなっている。


えたじまは掃海艦「あわじ型」の3番艦。あわじ型は、もともと海自初の掃海艦で既に退役した世界最大級の木造艦「やえやま型」の性能向上型だ。えたじまの総工費は約177億円。

●FRP製掃海艦として世界最大級

えたじまは、あわじ型の1番艦「あわじ」と2番艦「ひらど」とともに海自で最大の繊維強化プラスチック(FRP)製掃海艦だ。FRPで建造した掃海艦としては世界最大級となる。FRPは軽くて強度が高い。海中の機雷除去をする海自の艦艇としては、あわじ型掃海艦に先立ち、2012年に初めてFRP製となる新型掃海艇「えのしま」が就役した。それまでの船体は機雷に感知されない木材で造られていた。えのしま型掃海艇の3隻を含め、えたじまは船体がFRP化した6隻目の海自の掃海艦艇となる。

えたじま、船体に木材ではなくFRPを使うことで、やえやま型とほぼ同じ寸法ながら軽量化された。さらにFRPを採用することで、耐衝撃性を確保しつつ、使用年数が大幅に長くなる長寿命化が図られている。海上幕僚監部広報室によると、寿命は木造艦船が約20年に対し、FRP製は30年超になるという。

●えのしま型掃海艇より約120トン大型化

えたじまは基準排水量690トンで、前級のやえやま型掃海艦より約310トン小型化する一方、えのしま型掃海艇(MSC)よりは約120トン大型化した。全長は67メートルで、全幅11メートル、深さ5.2メートル、喫水2.7メートル、ディーゼル2基2軸、軸馬力2200馬力、最大速力は約14ノット。乗組員は約60人。

えたじまは、広範囲にわたる深度の機雷探知を可能にする深深度掃海装置1式を備える。海面上を漂流する機雷を昼夜を問わず遠距離から探知できる光学式監視装置(レーザー・レーダー)一式も搭載している。浮上した機雷を処理するための20ミリ機関砲1基も備える。

えたじまは、対機雷装備として、使い捨ての機雷処分具となる三井造船製の自走式機雷処分用弾薬(EMD)や日立製作所製の新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムのOQQ-10を搭載。さらに無人水中航走体(UUV)として水路調査用で自律行動型の米ウッズホール海洋研究所製のリーマス600など多くの新装備を搭載している。えたじまは内外の技術の結晶ともいえる。

防衛省・海上自衛隊は2020年度予算に、えたじまに続くあわじ型4番艦の建造費126億円を計上している。

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【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

昨年あたりから、海自では様々な艦艇が、進水しています。これらの進水は、概ね個別に報道され、互いの関連はあまり報道されていません。互いの関連がわからないと全体像は見えてきません。本日は、それに関することを掲載します。

昨年は、海上自衛隊に令和4年3月就役予定の新型潜水艦の命名・進水式が10月14日、神戸市の三菱重工業神戸造船所で開かれ、艦名は大きな鯨を意味する「たいげい」と命名されました。

昨年10月14日に浸水した最新鋭3000トン型潜水艦「たいげい」


防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」では平成22年以降、中国の海洋進出を念頭に日本が保有する潜水艦を16隻から22隻に増強する目標を掲げてきました。たいげいが部隊に投入されると、22隻体制が実現することになります。

今月は、新しい護衛艦「くまの」、「もがみ」の相次ぐ進水がニュースになっていました。皆さんの記憶にもまだ新しいと思います。
「海上自衛隊の新型護衛艦(全長133メートル、排水量3900トン)の命名・進水式が3日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われ、『もがみ』と命名された。2022年以降に就役する。昨年11月に三井E&S造船の玉野艦船工場(岡山県玉野市)で進水した『くまの』に続き、2隻目。

海自は、中国軍の海洋進出や北朝鮮の弾道ミサイルへの対応など任務が増大する中で、慢性的な人手不足に陥っている。新型艦は船体をコンパクト化し、運用システムを集約化。乗組員は約90人とイージス艦の3分の1程度に抑えた。複数のクルー制も導入し、限られた人員による護衛艦の運用体制を維持する」(3月3日付 時事通信)
記事にあるようなコンパクト化のほか、レーダーに映りにくいステルス性能も話題になっていました。ただ、ほとんど報道されていなかったことがあります。


それは機雷戦能力です。海上自衛隊が「くまの」、「もがみ」に与えた新たなコンセプトは、これまで掃海艇が担っていた掃海能力を備えさせ、日本列島沿岸の防備を固めるというものですが、無人機雷排除システムとともに装備されている簡易型機雷敷設装置が備わり、機雷戦能力が装備されました。

機雷戦能力が与えられたということは、日本が本気で中国の海洋進出を阻止する方向に舵を切ったとみえます。これまで海上自衛隊の能力は対潜水艦戦(ASW)に特化されており、「ASWのための海軍」という異名すら奉られてきたほどでした。

ただ、見逃してならないのは海上自衛隊の対機雷戦(AMW)能力の高さです。1991年、湾岸戦争後のペルシャ湾の掃海に派遣された当時、海上自衛隊のAMW能力は世界一とさえ評価されていたほどです。

その後、掃海艇の老朽化などで世界一の評価は返上しなければならない時期もありましたが、いまや掃海艦の導入と掃海艇、掃海ヘリコプターの新型への更新も進み、再び世界一の評価を回復しました。海上自衛隊のAMW能力は、掃海母艦(5700~5650トン)2隻、掃海艦(690トン)2隻、掃海艇(570~510トン)17隻、掃海ヘリコプター10機という勢力です。これは、米中をもしのぎます。

これまで、海上自衛隊のAMW能力は北朝鮮に対するものとして説明されてきました。機雷は、ミサイルや戦闘艦艇に比べて安価で大量に設置でき、しかも一隻数百億から数千億円もする高価で高性能な軍艦を沈めることができる恐ろしい兵器です。そのため、そこに機雷があるかもしれないという情報だけで、敵の海軍の動きを大きく制限することもできます。

北朝鮮が海峡部分などの日本周辺や朝鮮半島沿岸に機雷を敷設し、日本などの船舶の航行を妨害したり、朝鮮半島有事に北朝鮮に上陸する部隊を阻止したりしようとしたとき、それを除去するのが海上自衛隊に期待されているとの説明でした。

むろん、その位置づけは今後も変わらないでしょう。しかし、そこに「くまの」、「もがみ」のような機雷敷設能力を備えた艦艇が加わると、海上自衛隊は本格的な機雷戦能力を備えた海軍に生まれ変わることになります。

なにができるようになるかといえば、例えば、尖閣諸島をめぐって中国との関係が極度に緊張したとき、機雷戦を国際的に宣言すると同時に迅速に尖閣周辺に機雷を敷設し、中国の接近を阻止することが可能になります。その能力を持つこと自体が、中国に尖閣への手出しを躊躇わせる抑止力となることは言うまでもありません。

それだけではありません。場合によっては、世界各国が軍事的にも中国包囲網を敷く中で、機雷敷設によって中国に出入りする船舶を完全にコントロールし、中国が経済的に成り立たないようにすることもありうる話です。中国の掃海能力はきわめて限られていますから、これも中国に無謀な企てを放棄させるうえで、高い抑止効果があります

そうして、上の情報を組み立てていけば、尖閣防衛もより確かなものになったことが、はっきりしてきます。

以前このブログでは、尖閣有事のとき、日本の潜水艦隊がどう戦うのかをシミュレーションしてみたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
偵察衛星、無線傍受、サイバー情報戦、その他等で得たインテリジェンス情報から、中国海軍が尖閣奪取必至と判断され、中国沿岸基地では海軍の出動準備がなされたとの情報が入ったとします。

南西諸島各港に前方配備されたFFM2くまのクラスが、数隻全力で尖閣北方海域に出撃。そこで、左舷後方ハッチから機雷をばら撒くと、今度は全速で南下し、掃海母艦と合流。海自のFFM艦隊と掃海母艦が尖閣付近に機雷原を作り、南西諸島各海峡を機雷封鎖します。

空母いずもとイージス艦まやの機動艦隊が南西諸島東側海域に入ったとき、そうりゅう型潜水艦、たいげい型潜水艦は青島、上海の軍港と南西諸島の間に潜んで、中国空母艦隊を牽制します。

現在、中国空母は対潜哨戒機を持たず、艦載機J15も対潜爆弾を持っていません。護衛しているフリゲート艦たちの対潜能力も低いので、中国空母近くに海自潜水艦が行ければ、確実に撃沈できます。

海上自衛隊は長年、ソ連潜水艦と戦って来て、その対潜哨戒能力のレベルは恐ろしいほど高いです。その経験を対中潜水艦戦に投入していますから、浅海に潜む音の大きい中国潜水艦はそうりゅう型搭載の18式魚雷で撃沈できます。

このブログでは、以前から掲載してきたように、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れ(リチュウム電池を動力とする、最新型ではほとんど無音)ていて、しかも中国の対潜哨戒能力が低いので、日本の潜水艦を探知することはできません。そのため、自由に尖閣諸島周辺を航行できます。それとは真逆で、中国の潜水艦は日本はすぐに探知できます。

しかも、海自は自ら設置した機雷はすべて敷設場所を認識しているので、これに妨げられることはありません。

海自の機雷


尖閣諸島付近に、機雷をばらまけば、中国海軍の掃海能力はかなり低いので、掃海に手間取り、尖閣に上陸はできません。それでも、人的被害をものともせず、掃海を無理やり実行して、尖閣に兵を送り込んだとしても、再度機雷を敷設されたり、日本の潜水艦で尖閣諸島を包囲されれば、補給ができず、尖閣諸島に上陸した人民解放軍もしくは民兵はお手上げになります。

さらに、空母やその護衛艦、強襲揚陸艦なども、日本の潜水艦にほとんど撃沈されることになります。

航空機での補給という手もあるでしょうが、まずは効率が非常に悪いということと、航空機を護衛する中国の戦闘機はこれもステルス性に劣るので、すぐに地対空ミサイルで日本の護衛艦等に撃ち落とされ、これも絶望的です。

世界一の軍事大国である米国といわれる米国ですが、潜水艦のステルス性や、対潜哨戒能力、掃海能力のような分野では総合的には日本の方が勝っています。なぜ、これらの分野が日本では優れるに至ったのでしょうか。

まず、対潜水艦能力についは、大東亜戦争のころの日本は対潜水艦の能力自体は高かったのですが、運用のう力が低く米国の潜水艦から大きな打撃を受けました。米軍の潜水艦は、大戦中東京湾に侵入して、情報収集にあたっていたほど、運用面ではすぐれていました。

一方日本は、航空機を3機も搭載できる、後に米軍のポラリス型潜水艦の原型になったといわれるほどの当時としては世界最大の超大型潜水艦を大戦中に建造しており、建造能力にたけていたのですが、運用面では効果的ではありませんでした。

当時世界最大の日本海軍伊400型潜水艦

そこから教訓を得た日本は、戦後は海上自衛隊で対潜水艦能力に力を入れ、強力なソナーを装備した護衛艦や最新の対潜水艦ミサイルを装備しているほか、対潜哨戒機も多く保有していて、その規模と実力は中国も甘く見ることはできないほどになりました。

特に、対潜哨戒能力については、冷戦中のオホーツク海における、哨戒活動が日本の哨戒能力を格段にあげました。一時に米国のそれを上回るともいわれていた時期がありました。現在でも、かなり高いです。おそらく、世界第二位でしょう。中露は、日米にははるかに及びません。

掃海能力についても、太平洋戦争中に米国が数多くの機雷を日本近海に敷設したため、日本は戦後、長期間にわたって機雷の除去を行わざるを得ない状況に追い込まれたため、能力が高まりました。

先の大戦末期の1945(昭和20)年3月、米軍が発動した「飢餓作戦」では、爆撃機や潜水艦で日本の港湾周辺や航路に敷設された1万2035発の機雷により、商船670隻125万トンが撃沈され、輸送能力の62・5%が失われました。終戦までのわずか半年で、日本の港湾に出入りできた船舶は85万トンから15万トンに減少し、海上輸送はほぼ窒息状態となったのです。

日本ではあまり知られていませんが、この掃海能力は朝鮮戦争の際にも発揮され、多くの機雷を除去することに成功しました。ただし、このときには戦後初の戦死者も出ています。ただ、当時の日本政府が表に出さなかったため一般にはほとんど知られていません。

日本の総合的な対潜水艦能力と掃海能力は非常に優れており、米国ですら総合力では日本には及びません。そのすべては太平洋戦争での敗戦と、米ソ冷戦時のオホーツク海の対ソ対潜哨戒にから来ているといえます。

無論、中国には核兵器があり、日本には核兵器はありません。そのため、いよいよになれば、核で脅しという手もあるでしょうが、日本には米軍が駐留しているし、実際中国が核兵器を用いることはできないでしょう。

もし、尖閣奪取のために、これを使えば、超大国としての中国は丸つぶれになります。それに、そんなことをすれば、日本はそれに報復するためにも、核兵器を開発することになるでしょう。かつて、バイデンが習近平を「日本は一晩で核保有可能」と脅したそうですが、それが本当になるでしょう。

日本が中国から核攻撃を受ければ、世論は激高し、日本の親中派・媚中派の政治家、官僚、財界人なども、政治生命や、官僚、財界人としての影響力を完璧に失うことでしょう。

最後に、このブログでは、よく物事に優先順位をつけるべきであると主張してますが、それは軍事力についてもいえると思います。

中国の軍事力と、日本の軍事力を比較すると、中国は総合的に開発されているといえますが、日本は対中国に特化しています。それも海洋戦に特化しています。

それは、予算や何のための軍事力であるかということで違いが生じているようです。まずは、ご存知のように、予算が違います。中国は膨大な予算を軍事力に使っていますが、日本はGDPの1%という枠があり、そこからほとんどはみ出ることはしません。

そのため、中国のようにあれもこれもと、予算を総合的に使うことはできません。そのため、対中国、それも海洋先に絞った予算ということになったのでしょう。当然といえば、当然です。

それと、何のための軍事力かといえば、中国は超大国を目指しており、場合によっては海外に大量の軍隊を送り、特定の地域を制圧することも視野にいれています。一方の、日本は、そもそも海外に大量の軍隊を制圧するなどのことは考えていません。

日本の軍事力は、あくまで基本的に自国を守ることです。そのため、海外に大量の軍隊を送り込む必要性もありません。

こうした、両者の違いが、両者の軍事力の大きな違いを生んだのでしょう。そうして、優先順位をつけるという方式はここでも、優位性を生んだようです。

日本は、目に見える形で着々と軍事力をつけていますが、中国のそれは総合的であり、陸上はもとより、海洋や宇宙にまで手を伸ばしていますが、結果として、日本の潜水艦を探知することもできず、静寂性に優れた潜水艦も建造できず、掃海能力に劣っています。

そうして、この差を中国はあと数十年かかっても埋めることはできません。

先日も述べたように米国の経営学会では忘れされてしまったかのような、偉大な経営学の大家ドラッカー氏は優先順位について以下のように述べています。

いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)

誰にとっても優先順位の決定は難しくありません。難しいのは劣後順位の決定です。つまり、なすべきでないことの決定です。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきです。このことが劣後順位の決定をためらわせるのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)

まさに、日本は、中国の脅威をなんとしても防がなければならない、そのためには中国に比して日本が長けている部分を最大の機会とみなし、予算など他の要素は決定要因ではなく、制約要因にすぎないと見たからこそ、今日中国に対する備えができたのだと思います。

そうして、この傾向は安倍政権以降になり一層色濃くなりました。その具体的な動きは、安倍総理の9年前の論文、「安全保障のダイヤモンド構想」から始まったといえるでしょう。この流れはやがてインド太平洋構想、QUADにまでつながっていきました。

この日本のやり方は、多くの人々に教訓を与え、そうして勇気づけるものともなりました。そのせいでしょうか、日本の軍事力は昨年は世界のトップ5にランキングされました。

ただ、いくら日本が優先順位をつけても、中国が今後も軍事予算を増やし続ければ、日本の優位性は崩れていくことになりかねません。そのようなことを防ぐためにも、少なくとも防衛予算の1%枠は早々に破るべきです。

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2021年3月15日月曜日

賃金の伸びが低すぎる…メディアや日銀が理解していない「日本のヤバい現実」―【私の論評】デフレから完璧に脱却しておらず、コロナ禍で需要不足に見舞われた日本では、金融財政政策をさらに徹底するのが王道!他はすべて間違い(゚д゚)!

賃金の伸びが低すぎる…メディアや日銀が理解していない「日本のヤバい現実」🟥中西経団連会長の発言

経団連の中西宏明会長が、1月27日の連合とのオンライン会議で、「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」と語った。

今回は改めて、中西氏の発言はどういう意味を持っているのかを考えてみよう。

まず、OECDの実質平均賃金データを確認しておこう。略然たる事実として、日本の順番は、1990年22ヶ国中12位、2000年35ヶ国中15位、2010年35ヶ国中21位、2019年では35ヶ国中24位である。

1990年当時の22ヶ国でみると、2019年では日本は21位なので、今の日本の順位は、言ってみればOECDに加盟しながらも賃金の低い国に救われているわけだ。

1990年当時の22ヶ国で、この30年間の名目賃金と実質賃金の伸びを見てみよう。名目賃金ではほとんどの国で2倍以上になっているが、日本は最低でほぼゼロの伸びで、飛び抜けて低い。

実質賃金の伸びを50%程度伸びている国が多いが、日本は5%程度であり、これも低い。それぞれの国で名目賃金の伸びと実質賃金の伸びを見ると、相関係数は0.78程度になっている。この観点から言えば、日本の実質賃金の伸びが世界で低いのは、名目賃金の伸びが低いからだ。


名目賃金は、一人当たり名目GDPと同じ概念なので、名目賃金が低いのは、名目GDPの伸びが低いからとなる。

日本の名目GDPが1990年からほとんど伸びていないことは、世界で最も低い伸びであり、先進国の中でも際立っている。そのくらい名目経済が成長していないので、その成果の反映である賃金が伸びていないのは、ある意味当然の結果である。

🟥経済と賃金の明確な事実

労働が経済活動からの派生需要である以上、経済が伸びなければ賃金は伸びない。つまり、賃金が低くなったのは、1990年代から名目成長がなくなったデフレの時代、失われた時代の象徴とも言える。

1990年代以降、名目成長がなくなったという事実に対して、様々な意見がある。それを議論するだけで、分厚い本ができるくらいだが、筆者の結論は単純だ。この30年間とその前の30年間で比べてみると、名目GDPの伸び率はマネーの伸び率は一貫して相関がある。

ちなみに、筆者がこれまで調べたものの中で、名目GDPと最も相関が高いのは、マネー伸び率だ。世界各国データでみても、相関係数は0.7~0.8程度もある。筆者は、マネー以外に名目GDP伸び率を長期にわたって上手く説明できる要因を知らない。


1990年の前の30年間では、日本のマネーの伸び率はそこそこである。データが入手できる113ヶ国中、大きいほうから数えて46位と平均的なところである。


しかし、1990年の後の30年間では、日本のマネーの伸び率は、148ヶ国中、最下位である。その結果、名目GDPの伸び率も最下位だ。

ここで、重要なことは、中央銀行による金融政策でかなりマネーをコントロールできるのだ。要するに、デフレの時代、失われた時代の犯人は中央銀行が主犯であると、筆者は30年近くも言っている。

改めて言うと、筆者は大蔵官僚時代、バブル崩壊に立ち会ったが、その当時、マスコミは金余りで株価が上昇していると報じていた。それは的外れだったが、今でもまだマスコミは気がついていない。

🟥想定外だったこと

詳細は、拙著『戦後経済史は嘘ばかり』に書いているので参照してほしいが、ポイントは、株価の上昇は、当時の証券会社が行っていた「営業特金」が違法まがいの取引として横行していたのが主因だ。

そこで、その適正化のために、1989年年末に取引規制が行われ、ある意味で「想定どおり」に株価は下がっていった。

しかし、筆者にとって想定外だったのは、日銀が同じ時期に 「金融引き締め」を行ったことだ。その当時、マスコミは「金余りで株価が上がっている」と報じていた。一方で日銀もさしたる分析もせずに、この俗説を信じていた。

いちおう、一般物価のほうは、まったく問題はなかった。当時の一般物価を振り返ってみると、1986年6月から1989年3月までの消費者物価指数は、ほぼ0~1%の上昇率(対前年同月比。以下同)。

1989年4月からは消費税3%が加わるが、それでも1993年10月までの物価上昇率はほぼ1~3%だった。つまり、バブルといわれていた当時の物価は安定していた。にもかかわらず日銀は、そこで金融引き締めを行ってしまった。

もし、その当時に今のようなインフレ目標が導入されていたらどうだったのか。そもそも金融引き締めの必要性がなかったわけで、日銀が行った金融引き締めは余計だった。

筆者は、この点を当時から疑問に思っていたので、1998年にプリンストン大学に留学した際、当時のベン・バーナンキ教授(のちにFRB議長)に直接確認した。

🟥日銀は間違い続けた

「インフレ目標の枠内のとき、株高になったら、中央銀行が金融引き締めすべきか」と質問したら「株価はインフレ目標の範囲外であるので、金融引き締めをしてはいけない」と明確に述べていた。

そのときだけの誤りだったら、まだよかった。しかし、日銀は間違いをし続けた。これは、官僚の無謬性である。

バブル崩壊時の金融引き締めは「正しかった」ので、その後も金融を引き締め続けたというわけだ。長期にわたる日銀の間違いは極めて強力であったので、上に述べたように、マネー伸び率を世界で圧倒的にビリにするほどだった。

しかも、その間違いの中、日銀はとんでもないことを言っていた。なんと、マネーは、経済活動の結果であって、管理できないといっていた。マネーの管理を放棄するような中央銀行ははっきり言って落第だ。できないなら中央銀行は不要だからだ。1990年代にはこうした馬鹿げた議論が実際にあった。

2000年代になっても、日銀はインフレ目標を否定していた。むしろ、デフレを指向していた。いわゆる「いいデフレ論」だ。

その代表格が、白川日銀時代だ。リーマンショックですべての先進国が猛烈な金融緩和をする中で、日本だけが金融緩和せずに、猛烈な円高を招き、日本だけが「刷り負け」て、リーマンショックの震源地でもないのに経済不振になってしまった。

そうした日銀の失敗は徐々に修正されてきた。安倍政権になると、世界の先進国では最後だがようやくインフレ目標が導入され、日本もまともになりだした。2000年代初めのような愚かな議論はなくなった。それでも、デフレとはいえないが、胸を張ってデフレ脱却まではいっていない。いずれにしても、失われた20年はなんとも痛恨だ。

最近の日銀はかつてのようなチョンボはなくなったが、それでも筆者の基準からみれば、まだいまいちだ。日銀は、18~19日の金融政策決定会合後に政策点検を示すという。

🟥「リフレ派」とあれこれ言うのなら

市場は目先の上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れに注目が集まっているが、まだ、デフレ脱却と言えない状況なのに、できないことをまず反省すべきだろう。まして、出口の話は、目標を達成してから言うべき話だ。

なぜ今点検を行うかと言えば、3月末には、日銀審議委員が櫻井眞氏から野口旭氏に交代になるので、今のうちに執行部に好都合な既成事実を作ろうとしたのだろう。

日本のマスコミでは、筆者を含めてしばしばリフレ派といわれるが、バーナンキ氏によれば、2000年当時であるが筆者のようなインフレ目標を主張する人はアメリカでは標準的だった。むしろ、どうして特定の名称の「派」というのかと不思議に思われた。

日本でインフレ目標をいう人が少なく、それらの人をリフレ派というなら、既にインフレ目標は既に世界の標準なので、マスコミは今でもリフレ派というのは適切ではないだろう。

未だに「リフレ派なんて」と非常識な呼び方をするのが、日本である。リフレ派は、2%程度のインフレ目標を入れて、失業率を最小にした経済成長を目指している。

こうした基本政策をやらなかったから、失われた20年間でデフレになり、その結果、名目GDP伸び率が世界でビリ、賃金の伸びもビリになった。それが今の現実だ。

時間をかけて、まともな金融政策を含めたマクロ経済政策をやっていくしかない。日銀の政策検証で必要なことは、過去30年間の日銀の間違いを総括することだ。

【私の論評】デフレから完璧に脱却しておらず、コロナ禍で需要不足に見舞われた日本では、金融財政政策をさらに徹底するのが王道!他はすべて間違い(゚д゚)!

上の記事にあるように、日本の賃金の伸びが低すぎるのは、主に日銀の金融政策が間違い続けられたからです。それ以外に理由はありません。サイトなどをみると、様々な識者と言われる人々が低賃金の理由をそれ以外の事にもとめていることに今更ながら驚かされます。それは、すべて間違いです。

そうして、インフレ率がゼロ以下まで低下し、そして不完全雇用・総需要不足の日本では金融財政政策をさらに徹底する必要があります。それ以外の経済理論はすべて間違いです。

日本経済は1998年以降本格的なデフレ局面に入り2000年代中頃まで、デフレ局面の日本銀行の金融政策は論争のテーマになっていました。デフレへの対応策として、政策金利がゼロとなっても量的金融緩和の強化を徹底する、という中央銀行の対応は今やほとんどの先進国にとって常識です。

 ただ、デフレの深刻化に直面して、2001年に日本銀行は量的金融緩和政策を始めましたが、一方で当時は弊害が大きいなどの根拠が曖昧な反対論が多くの論者から唱えられていました。当時も、そうして現在でも、日本銀行の金融緩和は手緩いので、過激に緩和を行うべきです。

 量的金融緩和政策に加えて、2000年代に先進国の中央銀行の潮流となっていった2%インフレ目標についても、日本銀行は早期に導入すべきでした。量的金融緩和同様に、今や、ほとんどの先進国の中央銀行が2%程度のインフレ目標を導入しており常態化しています。

 かつて、日本銀行はインフレ目標導入に長年抵抗し続けました。米欧の中銀が2%インフレ目標を正式に導入した後に、安倍政権誕生を経た2013年に日本銀行は政府との共同声明において、2%インフレ目標をようやく明確にコミット(目標に積極的に関わるという意味)しました。

2%インフレ目標の約束と黒田執行部による量的金融緩和の強化によって、日本銀行は世界標準の中央銀行に変わりましたた。この認識が金融市場で広がったことで、その後の円高修正と株高をもたらし、日本経済はデフレ克服の道筋が始まったのです。

 日本銀行による2%インフレ目標導入が遅れたことには、いくつかの要因があります。これはには、2%インフレ目標導入などへの「懐疑論」が、経済学者や日本銀行の職員から示されたことが影響したとみられます。

現在から振り返ると、これらの主張の多くは些細でかつ根拠が薄い議論が多いです。官僚組織の無謬性の弊害なのか偏ったイデオロギーがもたらした、主張だったことは明らかです。

国民の高い期待を背負って2020年9月に誕生した菅政権は、新型コロナ問題の悪化に直面して支持率がやや低下しています。菅首相は、安倍政権の経済政策を引き継ぐと明言していて、他の首相候補と比べて菅首相には経済面に強く期待がされました。 

菅内閣


ただ、根拠があいまいな俗説を主張したり、あるいは官僚組織の代弁者として振る舞う論者を含めて、菅首相は幅広い声に耳を傾けていました。この行動をみて、私自身は、菅政権は十分なマクロ経済政策を運営できるのかと疑問を感じたこともありました。

本人にも問題がありそうです。菅総理が師と仰ぐ梶山静六氏は、「日本はこれから人口が減り、デフレになるから、頑張れ」という趣旨のことを語り、それを菅総理はご自身の著書『政治家の覚悟』の中に掲載しています。

上の記事にもあるように、デフレの責任は主に日銀にあります、デフレと人口の増減は全く関係がありません。デフレ、インフレは純然たる貨幣現象です。貨幣が生産能力を上回って、市場に流通していれば、インフレになります。貨幣が生産能力を下回って、市場に流通していれば、デフレになります。

にもかかわらず、菅総理は著書に人口減少とデフレとを強く関連付けて書いているわけですから、経済に関してはあまり詳しくはないといえます。

こういった姿をみていると、デフレ克服と経済成長を重視せずに、国民生活よりも官僚組織の意向に配慮するのではないかとの疑念を持ってしまいます。 金融財政政策を間違えると、2009年からの民主党政権が直面したように、政権運営に大きなダメージが及ぶことになります。

ただ、安倍政権は民主党の失敗を反面教師としながら戦後最長の長期政権となりました。近年の経緯を政治の現場で目の当たりにした菅首相は、金融財政政策の重要性を深く認識したと思います。

 日本経済の最大問題はデフレと低成長にありその結果にともなう賃金の伸びの低さであり、この問題に金融財政政策は決定的な影響を及ぼします。

野口旭氏

菅総理は、これを理解しているから、あるいは理解したからこそ、恐らく官僚組織の意向に沿わないとみられる野口教授の日銀審議委員の任用人事が実現したのでしょう。こうした妥当な経済政策が続けば、菅首相は長きにわたり政権を維持するのは可能になるでしょう。

そうして、日本経済の最大問題は解決に向かうでしょう。

野口旭氏はかつて、「アベノミクスの批判者たちはしばしば、それが実質賃金の低下しかもたらさなかったと批判する。 仮に実質賃金の低下が生じていたにしても、それが失業の縮小と雇用の拡大を伴っている限り、それを否定的に捉える必要はまったくない」と語っていまた。

最近では、最低賃金が韓国より下回ることを指して、日本は韓国より貧乏になったと語る識者もいます。しかし、これは、日本が最近金融緩和をはじめたことによる雇用増によるものです。金融緩和により、雇用が増えれば、最初は若年層の雇用が増えるので、賃金が低下するのは当然の成り行きです。金融緩和をせずに、最低賃金を上げた韓国の雇用の悪さは筆舌に尽くしがたい程の水準になっています。

日本が金融緩和をし、韓国は金融緩和をあまりせずに、最低賃金を上げたことにより、日本は一時的に賃金が低くなっているだけの話です。日本が物価2%の目標を達成するまで緩和をすれば、人手不足が深刻になり、賃金もあがっていきます。

野口氏のいうように、現状実質賃金が低下していても、それが失業の縮小と雇用の拡大を伴っている限りは、これを否定的にとらえる必要はないのです。

もともとデフレから完璧に脱却しておらず、さらに最近ではコロナ禍に見舞われ需要不足に見舞われたた日本においては、金融財政政策をさらに徹底するのが王道の経済対策です。それ以外はすべて間違いです。

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2021年3月14日日曜日

大河で注目の渋沢栄一とドラッカーに見る「困難な時代を生き抜く知恵」―【私の論評】中国は古代に「論語」を、米国は2000年あたりからドラッカーの思想を忘れ去り、現在の世界は混沌としている(゚д゚)!

大河で注目の渋沢栄一とドラッカーに見る「困難な時代を生き抜く知恵」


 2024年に新一万円札の顔となる渋沢栄一。今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』では、主人公にもなり、幕末から明治までのその生涯を描いている。

 「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一のことを「ビジネスの本質を理解していた人物」として、高く評価していたのが経営学者のピーター・ドラッカーである。

 ビジネスに対する考え方や、変化の大きな時代に成果をあげたという点でも、この二人は共通点が多い。そして、共に物事の本質を見極めた人たちでもある。

 渋沢栄一とドラッカーに見る「困難な時代を生き抜く知恵」

 変化の時代といえば、今がまさにそれだ。新型コロナウイルスの影響で世界的に経済や社会が混迷し、先行きを見通すのは不可能に近い。ただし、どんな時代であっても、未来創造のためのキーワードは「変化を機会としてとらえよ」だ。知恵次第では、これまでにはなかったチャンスを見つけることもできる。

 『渋沢栄一とドラッカー 未来の創造の方法論』(國貞克則著、KADOKAWA刊)では、正解のない時代にビジネスと向き合った渋沢栄一とピーター・ドラッカーから、未来を切り開く方法と心構えを学べる一冊。知っての通り、渋沢栄一の生きた明治初期は激動の時代だった。

 その時代に、渋沢栄一は西洋のカンパニーという仕組みを使って、当時の日本にはなかった新しい事業を次々に生み出し、社会的イノベーションを起こした。一方、ドラッカーは「マネジメント」という言葉さえほとんど使われていなかった時代に、人類史上初めてマネジメントという分野を体系化した。

 二人はともに、高く広い視点で時代が要請するものを見極めていた。

 当時の日本は、西洋による植民地化を避けるために、富国強兵を旗印とし、産業の育成が急務だった。渋沢は、明治という時代が求めるありとあらゆる事業を設立していく。

 まず、事業に融資をするという日本で初めての銀行を設立。次に製紙会社を設立した。明治になって税は紙幣で納めることになり、全国の義務教育の学校が設立され、教科書が必要となったからだ。明治初期という時代は、大量の紙が必要になった時代だったのだ。

 ドラッカーも常に社会全体という視点でものを考えていた。19世紀までの人類の大半は、職人や農民など、個人で働いていた。それが20世紀になると、人類の大半が組織で働くようになる。そういう社会になれば、組織のマネジメントがうまく機能しなければ人類は幸せになれない。そういう時代の要請がドラッカーをマネジメントの研究に向かわせたのだ。

 二人とも、高く広い視点で時代が求めているものを見極め、行動した。他にも、「本質を見極めていた」「誰もやっていない新しい道を歩むことを決意した」という点も二人の共通点であり、新しい未来を創造できた要因となっている。

 どんな時代でも、物事の本質は変わらない。本質がわかっていれば、大きな変化の時代であっても、何を考え、どう行動すればいいのかわかる。新しい時代を創り上げてきた渋沢栄一とドラッカーは、未来を創っていく世代の今のビジネスマンにとっても、学ぶことが多いはずだ。(T・N/新刊JP編集部)

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2021/03/post_213297.html

【私の論評】中国は古代に「論語」を、米国は2000年あたりからドラッカーの思想を忘れ去り、現在の世界は混沌としている(゚д゚)!


P・F・ドラッカーは『マネジメント』の序文で渋沢を名指しし、「私は、経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物の中で、かの偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界のだれよりも早く、経営の本質は“責任”にほかならないということを見抜いていた」と高く評価しました。実際、渋沢栄一は自伝『現代語訳 経営論語 渋沢流・仕事と生き方』において、次の章句を引きながら企業の社会的責任に言及しています。
もし博(ひろ)く民に施して能(よ)く衆を済(すく)う有らば如何(いかん)。仁(じん)と謂(い)うべきか。

子曰(いわ)く、何ぞ仁を事とせん。必ずや聖か。

孔子の時代は今日のように商工業が盛んではなかったため、『論語』には商工業についての方法、すなわちいかにして商品をつくり売ればよいか、また商業道徳はいかなるものかということが一切説かれていない。しかし、仁は道徳の基本であるから、人と人とが接し、また国家を治めるにも、みな仁が基本になると考えれば、当然実業においても仁が基本となる。政治にも個人日常の交際にも仁が必要なのに、実業にのみこれが不要ということはない。

私は会社を経営するにあたっても、当事者が利するだけではいけないと考える。会社の利益を追求するのは当然であるが、同時にこれによって公益を追求しなければならないと信じ、今日までその方針で万事にあたってきたつもりである。これは、孔子が『論語』に説いた広義の仁を、現代の日本で実地に行おうとする意思によるものである。(208~210ページ)
論語は、孔子と彼の高弟たちの言行や問答を、孔子の死後に弟子たちが記録した書物です。『孟子』『大学』『中庸』と合わせ、儒教における「四書」の一つに数えられています。第15代応神天皇の時代に、百済の王仁(わに)という人物によって朝廷に献じられ、日本に伝えられたとされています。

512の短文が全20篇で構成されており、律令時代には官吏必読の書となりました。以来千数百年にわたり、儒教思想の真髄を伝えるものとして後世に大きな影響を与えてきました。その学説が今日に伝えられ、今なお尊重されているのは、その所説が偉大な真理を説いているからである――渋沢はそう指摘しています。
私は明治初年以来、『論語』を守り本尊として、その遺訓を遵奉し、道を間違わないように心がけて今日に至っている。研究すれば研究するほど、孔子の人格・才能が偉大であり、また『論語』の真理が正しく強靭であることを実感して、孔子の教訓を選んだことを喜ぶものである。(265ページ)
論語は渋沢にとって、道徳の教科書ではなく、実践のための学問だったのです。渋沢の事業観、人生観を通じて、論語の真髄を学びとることができる本書は、渋沢自らが著した貴重な一冊でもあります。

ただ、後に述べるように、儒教の礼教と、「論語」そのものは、似ても似つかいない別物です。渋沢は、儒教とは全く関係なく「論語」の真髄を学んだのです。

渋沢栄一

そうして、ドラッカーは現在の米国で、「論語」は現代の中国ではすっかり忘れ去られています。このことが、今日米中の社会が安定しないことの大きな一因となっていると私は思います。

実際、ドラッカーの経営学は現代の米国ではすっかり忘れ去られているようです。ドラッカーが亡くなったのは、2005年11月11日です。まだ20年もたっていないというのに、この貴重な財産が米国では忘れ去られているのです。

1998年の米国経営学会(AOM)でピーター・ドラッカーが基調講演をしています。つまりこの当時、ドラッカーは米国の経営学界、すなわちアカデミア(学問の世界)において重鎮だったことを示しています。

しかしそれ以後、急速にドラッカーが顧みられなくなっています。つまりドラッカーは、2000年代以降、米国のアカデミアで主流となった「世界標準の経営学」には該当しないと見なされ、忘れられたのです。

なぜここまで、忘れ去られてしまったのでしょうか。恐らく、ドラッカーはとても核心的なことを言っているのでしょうけれども、因果関係には、あまり言及しなかったからかもしれません。

確かに、ドラッカーの経営学においては、マネジメントの役割は何かであるとか、そのためにマネジャーは何をすべきかといった実践論が多いです。確かに、因果関係の分析に必要な、データとか、グラフなどドラッカーの論文や著書にはほとんどありません。

初期の著書『創造する経営者』には、多少のグラフやデータも掲載されていたと思いますが、それもほんの僅かでした。それ以降は、ほとんどありません。一方で、今の経営学者の多くは、因果関係の解明に最大の関心を持っているので、目的に合わないのかもしれません。

現代の「世界標準の経営学」における「因果関係の解明」とは、要するに、XとYの関係を計量分析で解明する、というようなことです。いわば因果関係を、関数に置き換えるのです。

定量的な分析ばかりしていると、徐々にそうでないものが理解できなくなってくるところがあります。つまり、XとYの関係でしか物事を考えられない頭になっていくのです。

何か物語のようなものを読んでいるときでさえ、「この人のこの行動においては、何が変数Xであり、何が変数Yであるのだろう」と読むようになってくるところがあり、曖昧に終わる文学作品の余韻なんて、味わえなくなります。

そのような頭でドラッカーを読むと、因果関係を示すような記述がないので、だんだんと困惑してくるというか、何を言っているのかが分からなくなってくるのでしょう。

実際、『マネジメント』という書籍を紹介して、感想を聴くとそのような感想を応える人も多いです。「マネジメント」という言葉を聴くと、単純に「PDCA」サイクルなどを思い浮かべ、そのサイクルに基づき、様々な計量的分析をするのが「マネジメントの原理」であると最初から考えているようで、とにかく「マネジメント」を最初から単純なものと考えているようです。

ドラッカー

そういう人からすると、ドラッカーの『マネジメント』は、宗教の経典のようにみえてしまうようなところがあるようです。そのため、あまり物事を考えず、字面だけ追ってしまい、面白さとか、自分の実体験に対照するのが困難なようです。

現在の「世界標準の経営学」で戦う研究者たちの世界では、そこまでは単純化はしてはいないのですが、計量分析のような科学的な作法を身に付けなければ、実績が出せない、一方で文脈の理解能力はさほど求められないようです。

経営学は当初、いろいろな学問の影響を受けて混沌としていたのが、徐々に数学寄りになってしまったようです。

米国の場合は、ビジネススクールが巨大化したのいうこともあるようです。ビジネススクールの教授は、ビジネス系の学術誌に論文を出して掲載されないと、終身雇用が得られないし昇進もできないようです。米国のビジネススクールランキングが、さらに拍車をかけました。大学の制度の影響は、多分にあるようです。

こうした、現在の「世界標準の経営学」における経営学者たちは、マネジメントを本質は何なのかを忘れているように思います。

ドラッカーはその著書『マネジメント』で以下のように述べています。
企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である。したがって問題は、その組織は何かではない。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かである。(ドラッカー名著集(13)『マネジメント─課題、責任、実践』[上])
あらゆる組織が、人を幸せにし、社会をよりよいものにするために存在する。ドラッカーは、「そのようなことは考えたこともないと言える組織は、修道院とギャングだけだ」といいます。

資本主義なのだから利益を上げなければならないといいます。しかし、利益を上げることが目的なのではありません。組織が人と社会のための手段であると同じように、利益もまた、人と社会のための手段なのです。

人を幸せにし、社会をよりよいものにするには、組織がよい仕事をしなければならなのです。財・サービスを提供して物的な豊かさをもたらさなければならないです。それだけではなく、人を生き生きと働かせ、人の心に豊かさをもたらさなければならないのです。

そのために、組織は、明日さらによい仕事をしなければならない。そしてそのためには、利益を上げなければならないのです。

不景気のなかにあって伸びていく企業は、皆そのようにマネジメントしています。景気がよくて誰でも利益を上げられた頃は、利益、利益と念仏を唱えるだけでよかったのでしょうが、今日のような不景気になると、利益、利益と言っていたのでは、存続さえ怪しくなります。

わが社の使命は何かを考えなければならないのです。それを当然のこととしていては、何も始まらないのです。顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果は何かを考えなければならないのです。

同時に、社員には敬意を払い、自己啓発を応援し、会社に貢献してもらい、それを認めるのです。当然、社会に害をもたらすことなく、社会にも貢献しなければならないのです。
マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。自らの組織に特有の目的とミッションを果たす。仕事を生産的なものとし働く人たちに成果をあげさせる。自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに社会的な貢献を行なう(『マネジメント』[上])
このようなことを忘れてしまえば、それも社会の機関である企業のマネジメントを論ずる経営学者がそれを忘れて、数学的な分析ばかりしていれば、それは社会に貢献できないばかりか、混乱をもたらすことになるでしょう。

このブログにも以前掲載したように、米国の分断はドラッカー流の見方が忘れ去られたことにも原因があると思います。現代米国にドラッカー流の考え方が息づいていれば、社会がイデオロギーによって大きく分断されることはなかったのではないかと思います。そもそも、社会の分断を因果関係だけで、数学的に分析しても、修復できるほど単純なものではありません。

ドラッカーのいう「マネジメント」を理解して、それを基盤として、社会を変えていくという努力はできると思います。ドラッカーはマネジメンを社会の機関であるとしていて、当然のことながら、社会分析もかなり実践しています。私自身は、ドラッカーの思想が忘れ去られるということ自体が、キャンセル・カルチャーの一種ではないかと思います。

一方「論語」の精神も、中国ではるか以前に忘れ去られたということがえます。孔子は、人生経験が豊富な常識人ではありますが、いわゆる哲学者でもなければ聖人でもなく、宗教家や「教祖様」のような存在とはなおさら無縁の人間でした。

そして『論語』という書物は、人生の指南書として大いに読むべきものであっても、哲学の書であるとは言えないし、いわゆる聖典でもなければ宗教の教典でもありませんでした。

実は、後世において誕生し成立した儒教は、孔子を「教祖」と祭り上げながらも、実際には孔子や『論語』とは関係の薄い教学でした。

儒教は、「教祖」あるいは「始祖」とされる孔子が没して三百年も経ってから教学として成立したというのはいかにも異様です。

そうして孔子や『論語』と儒教の隔たりは、時間的間隔だけでありません。実は孔子の生きた中国史上の春秋時代と、儒教が成立した前漢時代とはまったく異質の時代であって、政治体制も社会の仕組みも完全に違っています。

孔子像

実際、孔子が『論語』の中で何度も述べているように、彼自身が政治制度としてもっとも推奨しているのは周王朝のそれであり、要するに前漢時代とはまったく異なった封建制なのです。

孔子が生きていた春秋時代は、中国史上の封建制時代です。当時、中国大陸には周王朝の王室を頂点とした封建制の政治システムが成立しており、周王朝を宗主国と認める各諸侯が天下を分割統治していました。そして孔子の死後に始まった戦国時代に各諸侯国が戦いと併合を繰り返した結果、紀元前221年に七つの大国(戦国七雄)の一つである秦国が他の列強を滅ぼして天下を統一し、中国史上初めての統一帝国である秦王朝を樹立しました。

秦王朝は周代以来の封建制を廃止して、中央集権制の政治システムを作り上げ、皇帝一人が官僚を手足のように使って全国の土地と人民を直接支配するようになりました。

結局のところ、漢代に成立した儒教は、「孔子と『論語』の思想を継承した」云々というよりも、むしろ孔子の名声を悪用して、孔子・『論語』とはほとんど関係のないところで自分たちの教学を作り上げただけのことです。孔子と儒教、そして『論語』と儒教とは、最初から別々のものなのです。

『論語』には、人間性の抑圧や人間の欲望の否定を唱える言葉は何一つなければ、ましてや女性の「守節」や「殉死」を奨励するような表現はどこにも見当たりません。

そのかわりに、孔子が『論語』のなかで盛んに語っているのは「愛」(仁者愛人)であり、「恕(よ)」(思いやりの心)であり、親の気持ちを大事する意味での「孝」なのです。

『論語』はたしかにさまざまな場面で「礼」を語り、「礼」を大事にしています。しかし、『論語』の語る礼はどう考えても、儒教の礼教が人間性や人間的欲望の抑制に使うような厳しい社会規範としての「礼」とはまったく異なります。

『論語』の語る「礼」とは要するに、相手のことを心から大事にする意味での「礼」であって、人間関係を穏やかにするためのものです。

そこには、人間的温かみがありこそすれ、儒教の礼教の唱える人間抑圧の匂いはいっさいありません。後世の礼教の残酷さ、冷たさと比べれば、『論語』から感じられるのは、むしろ優しさと温かさです。『論語』と儒教礼教とのあいだにはどう考えても、何の共通点もありません。

つまり、『論語』が儒教の礼教と何の共通点もないのと同じように、『論語』はそもそも儒教とは何の関係もなく、孔子は別に儒教の創始者でもない、ということです。

ドラッカーの思想は、忘れ去られたのですが、「論語」の教えは、忘れ去られるどころか、捻じ曲げられ、皇帝一人による独裁制に利用されたのです。

その伝統は現在の中国にも受け継がれ、今でも社会を混乱に陥れているのです。実際、中国は古代王朝を設立しても、次の王朝が設立されると、王朝間には何のつながりもなく断絶しているというのが現実です。現代の中国は古代王朝とは全く関係のない、設立してから72年の新興国です。

中国はもともと「論語」を教えを曲解して、社会が混乱したまま現在にいたり、米国では2000年代において、ドラッカーの思想を忘れさり、両国は混乱するようになり、それが現在の世界の混沌に結びついているともいえます。

これは、両方ともキャンセル・カルチャーといえるのではないでしょうか。このキャンセル・カルチャーが存在せず、中国が「論語」の教えを忘れず、米国ではドラッカーの思想が忘れ去られていなければ、現在の世界はもっと安定したものになっていたのではないでしょうか。

我が国では、幸運なことにこの2つの思想がまだ息づいています。私達としては、これを忘れないでいるだけではなく、さらに発展させていくべきです。

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