2022年8月5日金曜日

ペロシ米下院議長訪台の徹底検証-未曾有の対米軍事恫喝で「火遊びして火傷した」習近平政権の大失敗―【私の論評】いずれに転んでも、これから丸焼けになる習近平(゚д゚)!

ペロシ米下院議長訪台の徹底検証-未曾有の対米軍事恫喝で「火遊びして火傷した」習近平政権の大失敗

マレーシア・クアラルンプールの議会を出る米国のナンシー・ペロシ下院議長。この後台湾に向かった。


最初はやはりバイデンの不用意発言から

 8月2日から3日にわたって行われた、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問は大きな国際ニュースとなった。と同時に、中国側の激しい反応を引き起こして台湾海峡の緊張を高めたようにも見える。ここでは一度、この一件の経緯を徹底的に検証して、緊張を作り出そうとする中国側の本音を探ってみよう。

 ことの始まりは7月18日に、英紙フィナンシャル・タイムズが、ペロシ氏が8月におけるアシア歴訪の一環として「台湾訪問を予定している」と報じたことにある。しかしそのとき、中国側は外務省の報道官が定例の記者会見では通常通りの「反対」を表明したものの、それほどの強い反応を示さなかった。実際、その時点ではペロシ氏自身が「台湾訪問する」とは一切言っていなかったから、中国政府としてはしばらく様子見するような態度であった。

 転機が訪れたのは7月20日であった。その日、アメリカのバイデン大統領はこの一件に言及し、ペロシ氏の訪台について「軍は良い考えであるとは思っていないようだ。」と発言し、訪台に対する否定的な態度を示した。

 英紙の報道云々ではなくアメリカ大統領の発言であったから、それは当然中国側にきちんと伝わって、事態に対する習近平政権の注意と警戒心を喚起した。さらに重要なのは、バイデン大統領のこの発言は結局、ペロシ氏の訪台に対し大統領自身が否定的な見方を持っていることと、アメリカ軍も消極的な態度であることを中国側に教えてしまったことだ。

 バイデン大統領はその時、アメリカ軍の「考え」を内々にペロシ氏に伝えればそれで良かった。それなのに、一体どうしてそれを公言したのだろうか。大統領の本心が計り知れるものではないが、客観的にみれば、まさにバイデン氏のこの不用意の発言こそは、事態を拡大化させる大きな要素となった。

 というのも、この発言を聞いた習政権としては当然、アメリカ上層部内部の意見不一致を知り、そしてアメリカ軍がペロシ氏の台湾訪問を支援しないだろうとの印象をもったはずだ。

 この件に関してアメリカ政府とアメリカ軍の両方が及び腰であれば、中国にとってそれほどの好都合はない。おそらくその時点から、習近平政権がペロシ氏の訪台に対して超強硬姿勢でいこうと決めたのではないか。

正真正銘の軍事恫喝

 秋の党大会の開催にあたって自らの総書記職の続投を目指す習近平氏にしては、ここで強硬姿勢を貫いてペロシ氏の台湾訪問を阻止して見せることができていたら、それこそ自身の外交的大勝利となって続投への追い風となるに違いない。またペロシ氏自身が、「自分は必ず台湾へ行く」と宣言したことは一度もなかったから、習主席はいっそうのこと、強硬姿勢に対する自信を深めたのではないかと思われよう。

 そしてそれ以来数日間、中国側は内密に米国政府にペロシ訪台に対する絶対反対の意向を伝え、「軍事的手段を使ってもそれを阻止したい」との強い意志を伝えた。そして、おそらくアメリカ政府内部からのリークだったのか、前述のフィナンシャル・タイムズは25日、「中国政府は非公式的にアメリカ政府に対し、ペロシ氏の訪台を阻止するために軍事的対応する考えもあると伝えた」と報じた。非公式であったとはいえ、中国政府がアメリカに対して軍事恫喝を行ったことはこれで明るみに出た。

 もし、中国政府はその時点でフィナンシャル・タイムズのこの危険な報道内容を正式に否定したりして、あるいは否定も肯定もしないような曖昧な態度を取っていれば事態の沈静化が図れる余地は依然として残っているかもしれない。しかし中国政府の示した公式の反応はあまりにも驚きのものであった。

 25日、中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で、「中国側は厳重に陣を構えて迎え撃つ」との激しい表現を用いてペロシ訪台を絶対阻止するとの姿勢を示したのに続いて、26日、中国国防省報道官はつい、本来なら口にしては絶対ならない言葉を口にした。彼は何と、ペロシ訪台に対し、「中国軍としては絶対座視しない」と公言したのである。

 仮に中国政府が「座視しない」と宣言した場合、それが何らかの外交的・経済的対抗措置を取る意味合いであるとの解釈も成り立つが、「軍として座視しない」と宣言した場合、それに対する解釈は一つしかない。要するに軍事的行動をとることであろう。こうして中国軍は世界最強の軍事大国のアメリカに対して堂々と、正真正銘の軍事恫喝を行ったのである。私の記憶では、それは1980年代の改革開放以来の初めてのことである。

中国の強硬姿勢、訪台実現を後押し

 しかしこれでは、ペロシ氏にしてもアメリカ政府にしても、もはや訪台を実現させていく以外に選択肢はなくなった。

 もし、上述の中国国防省の報道官が「軍として座視しない」との言葉を発した後に、ペロシ氏の台湾訪問が取りやめられるようなこととなれば、その意味するところはすなわち、アメリカ合衆国は中国の軍事恫喝に屈してしまうことに他ならない。その瞬間からアメリカは世界ナンバ1としての地位を失い、世界の覇権は中国の手に移りはじめることとなろう。アメリカという国は幾らなんでも、自らそんなことは絶対しない。

 今からみれば、ペロシ氏台湾訪問はまさにこの瞬間に、最終決定されたのではないかと思う。習近平ら自身が意識しているかどうかは分からないが、結局のところ、彼らの発した無謀な軍事恫喝は逆に、彼ら自身の嫌がるペロシ訪台の流れを決定づけてしまった。

 その後、バイデン大統領とアメリカ政府はもはや、ペロシ氏の訪台に対して否定的な姿勢を示したことは一度もない。アメリカ軍もその時から、いかにしてペロシ氏の台湾訪問の安全を確保するのか、とのことに重点を置いて動き出した。中国からの空前の軍事的恫喝をうけたアメリカはむしろ、これで一気に結束を固めた。

しょせん捨て台詞「火遊びするものは必ず火傷する」

 アメリカの結束ぶりを習近平側に強く印象付けたのは、7月28日におけるバイデン・習近平の電話会談であろう。この会談おいて、バイデン大統領は米国の台湾政策に変更がないとしながらも、「台湾海峡の安定と平和を損なう如何なる行為にも強く反対する」との強い姿勢を習近平主席に伝えた。もちろん、習主席がペロシ氏訪台の取りやめを暗に求めたのに対し、バイデン大統領は三権分立の原則の上に立ってそれを拒否した。

 その時に習主席がバイデン大統領に対して、「火遊びするものは必ず火傷する」という印象深い言葉を発していることは大きく報じられているが、彼がその時に使った「玩火自焚」という中国語の四字熟語を見ていると、筆者の私はむしろ、習主席がこれを使って米国側に対する警告を発していながら、実際には先日の国防省報道官の軍事恫喝からトーンを下げているとの印象を受けている。

 というのも、「玩火自焚」という四字熟語には、「私は特に何もしなくても、火遊びする貴方自身はのちに大変なことになろう」とのニューアンスが含まれており、チンピラが相手の喧嘩に負けそうになって逃げ出す時の捨て台詞にも使われるからである。

 実際、米中首脳会談の28日を境目にして、中国側のアメリカに対する姿勢に軟化の兆候が色々と見え始めた。たとえば人民日報が30日、米中関係に関する2つの重要論評を第3面に一斉に掲載した。そのうち1つの論評のタイトルは「(米中)両国関係を正しい軌道にのって発展することを推進せよ」、もう1つは「米中間の意思疎通を図り誤った判断を避けよう」である。

 つまり両方ともは、米中関係の改善を訴えるものとなっているが、そこからは米国に対するいかなる恫喝の言葉も消えてしまい、中国の国防省は二度と「座視しない」のような言葉を口にすることはない。習近平政権は一転、対米超強硬姿勢からの軌道修正を自ら行うこととなった。

 おそらくその時点で習政権は、どんなことしてもペロシ氏の台湾訪問を阻止するのはもはや無理であると悟り、そしてアメリカに無謀な軍事恫喝をかけたことの深刻さを分かってきたのではないか。

ペロシが去った後で軍事パフォーマンス

 それからの数日間、中国側はペロシ訪台の一件に対してそれほど際どい行動をとることもなく、事態の推移を見守る姿勢をとっていた。

 中国軍は人民日報が前述の2つの論評を掲載したと同じ日の30日、一応、台湾に近い福建省の平潭島付近の海域で小規模な実弾射撃訓練を実施した模様である。しかし中国軍がその実弾訓練を、ペロシ氏の台湾到着に合わせて行うのではなく、その3日前にやってしまった。中国側はこれで、自分たちの矛先は決してペロシ米国下院議長に向けたわけではないことを、わざと示して見せたのではないか。

 こうした中で8月2日夜、ペロシ下院議長は中国側からの何の妨害も受けることはなく、堂々と台湾の地に足を踏み入れて歴史的な台湾訪問を始めた。ペロシ訪台に対する習近平政権の恫喝が完全に失敗に終わった瞬間である。

 そしてその直後から、中国側はアメリカに対して外務省声明を発表したり、駐中アメリカ大使を呼びつけて抗議したりして、外交上の最大のパーフォマンスを演じて見せながら、4日から7日までに台湾周辺で大規模な軍事演習を行うと発表した。



 問題は、中国側の軍事演習はどうして「4日から」なのかであるが、考えればその理由は簡単だ。ペロシ氏の台湾滞在は3日までであって4日になると彼女はもはや台湾にいない。つまり中国側はわざと、ペロシが台湾から離れたあとのタイミングを選んで軍事演習を行うことにした。

 だが、それはどう考えても、「軍事演習はペロシ氏とアメリカを標的にするものではない」の意思表明であって、中国側がアメリカとの正面衝突を極力避けていることの証拠でしかない。「軍として座視しない」という1週間前の中国国防省の際どい恫喝とは打って変わって、中国政府は今度、ペロシ氏に対して最大限の「配慮」を払ってみせたのではないか。 

結局は張子の虎

 以上は、中国の習近平政権がペロシ訪台の一件に関し、アメリカに対する高飛車の軍事恫喝が完全に失敗に終わったことの一部終始であるが、そこからは、中国という国、あるいは習近平政権の対外姿勢の特質の1つが見えてきたのではないか。

 7月20日、米国のバイデン大統領がペロシ訪台に関して「軍は良い考えではないと思っているようだ」と発言してアメリカ内部の意見不一致とアメリカ軍の消極的な態度を不用心にも「自供」したところ、それがアメリカ政府とアメリカ軍の及び腰の証拠だと理解した習政権はさっそく、未曾有の強硬姿勢で米国に対する軍事恫喝を行ってきた。

 相手は少しでも隙間と弱さをみせてしまうえば、それに突き込んで増上してくるのはまさに中国という国の伝統と習政権の本性であるが、逆に今度、アメリカは結束を固めて不屈の姿勢を示し始めると、習近平政権は一転、自らが及び腰となって「張子の虎」となってしまった。

 このような中国にわれわれがどう対処すべきなのかは、この一件からも色々と学ぶこともできたのではないか。

 関連記事『中国で天安門事件以来の政治反乱か、河南省の銀行取り付け騒ぎが加熱』では、そんな中国の足元で“反乱”が起きていることをレポート。習近平政権を脅かしているという現実について見ていこう。

石 平(評論家)

【私の論評】いずれに転んでも、これから丸焼けになる習近平(゚д゚)!

習近平

習近平の戦狼外交によって今回のペロシ訪台が阻止できなかったことは、結果として戦狼外交の限界を見せつけることになりました。結局習近平の戦狼外交は失敗したのです。今後、習近平の戦狼外交に屈せず、台湾を訪問する政治家が各国で次々と出てくるかもしれないです。すでに英国庶民院議会議員団が年内に訪台すると言っています。

習近平の戦狼外交は、実は外交のように見えて内政です。以前もこのブログで掲載したように、中国は外交でもなんでも中国内部の都合で動く国であることです。中国では、たとえ対外関係であっても、自国の内部の都合で動くのです。普通のまともな国なら、対外関係と内部とは分けて考え、内部の都合により対外関係が動くなどということはありません。

しかし、中国の場合はそうではありません。反習近平派が、台湾問題を中国内部の権力闘争に利用すること等は十分にありえることです。元々中国は、巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に適用することによって信頼を失っています。

ただし、中国は人民の米国や台湾の独立派分裂勢力への敵愾心を煽り、しばし目の前の不満、たとえば銀行預金封鎖や理財商品のデフォルトだとか、ゼロコロナ政策による不自由や生活苦など、ややもすると習近平政権に向きそうな不満の矛先をうまく米国や台湾に転換させたという意味では戦狼外交は成功なのだ、という見方もあります。

しかし、共産党内の反習近平官僚からみれば、戦狼外交で人民の敵意を外国に向けることで党の求心力を強化するより、米国との関係を少しでも改善して関税を撤廃させ、半導体企業への制裁を緩和させる道を探るほうが長期的に党の求心力を回復させることができると言いたいところでしょう。

一時的に人民の不満が米国や台湾をののしることで緩和したしても、それに続く習近平の外交政策が、口で吠えるだけで、実行が伴わない弱腰のままであれば、再びそれは政権への不満に転換されだけです。

過去には、中国では反日デモが頻繁に行わてれいましたが、最近はありません。それはなぜかといえば、反日デモがいつの間にか反政府デモにすり替わったり、最初から反政府デモをするつもりであっても、それではデモの許可が出ないため、反日を装ってデモの届けを出すなどということが頻繁に起こるようになったので、政府が禁じるようになったのです。

反米反日などの外国へ敵意からくるデモは、いつ何時、社会不満、社会不安と結びついて大規模化しコントロール不可能になるかもわからないという危険もあるのです。

戦狼外交が限界点に達した現状次に中国はどのような手を打ってくるのでしょうか。選択肢は2つあります。1つは、戦狼外交から国際協調外交にUターンすることです。もう1つは、戦狼外交をさらにエスカレートさせて北朝鮮のような瀬戸際外交に突き進むことです。核兵器をちらつかせ、ミサイルを発射してみせ、臨戦態勢をみせつけるのです。戦争にまで行かない軍事行動をとり、一触即発の瀬戸際を演じ続けるやり方です。

どうやら、中国は後者の道を選びそうです。中国は、本日15時頃から16時過ぎにかけて9発の弾道ミサイルを発射した模様で、そのうち5発が我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したものと推定されています。

中国は今後北朝鮮の瀬戸際外交のような路線をとるとみられる

上の記事にもあるように、中国は4日から7日までに台湾周辺で大規模な軍事演習を行っています。

中国はこの秋に5年に一度の共産党大会が控えていて、今は人事の駆け引きの真っ最中です。習近平が今後も米国に対して厳しい措置に出れば、二国間関係は悪化し、中国の国内経済への打撃は避けられないです。

先日も掲載したように、現在の中国経済は、「流動性の罠」に苦しんでいるうえに、「国際金融のトリレンマ」にもはまり、金融緩和政策の効き目がなく、将来的にも中国政府が自由に金融緩和ができない可能性が高く、これから抜け出すためには、「変動相場制」に移行するなどの大胆な改革が必要です。

習近平がこれからも戦狼外交にこだわるなら、四苦八苦している中国経済をこれ以上悪化させて良いのかという議論が党内でも必ず出てくるの必至です。 

一方で、言葉だけで行動が伴わなければ、習近平は口先だけだと判断し、党官僚特に長老たちは人事で好き勝手なことを言うでしょう。せっかく3期目の国家主席続投を揺るぎないものにしても、足元の人事では面従腹背の者ばかりという事態になりかねないです。

中国の駐米大使は出世の登竜門ですが、今回ペロシ訪台を許してしまった現在の秦剛大使が、秋に向けての人事でどうなるのかは一つの注目点です。 

習近平としては、今回のペロシ訪台は本当に苦々しいものだったに違いないです。事前にバイデンと直接話して強く釘を刺したのに、これではメンツ丸つぶれです。丸焼けになるのは米国なのか、習近平自身なのでしょうか。以上で示したことから、丸焼けになる可能性が高いのは習近平自身のようです。

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2022年8月4日木曜日

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心肺停止の中国

習主席の中国では、工期が遅れたり、建設がストップしたマンションが増えている

 「心肺停止」が、中国経済の現状診断である。経済の心臓部はカネの循環、血液にあたる。

 公務員の給与減額、遅配が顕著となった。地方公務員、教員の給与削減、ボーナスなしとなり、教職員が学校前で抗議集会を開いている。日本では、ほとんど報道されていない。

 地方銀行では取りつけ騒ぎ、河南省ではやくざと組んだ不正融資で8000億円が闇に消え、農民、庶民の銀行口座が凍結された。内モンゴル自治区や吉林省では、銀行の国有化という救済措置が取られた。

 コロナ禍によって、人の流れがとまった。恒大、碧桂園、世茂集団など、有名なデベロッパー(不動産開発会社)が、デフォルトの連鎖に陥った。建設現場でクレーンが止まり、労働者が消え、完成のめどがたたないまま風雨にさらされた。

 これは2019年からの中国各地の現象である。足で歩かないジャーナリストたちが公表データだけを頼りに、「中国各地のマンションは値上がりが続いている」と虚報を流していた。

 大手デベロッパーが軒並み倒産すると、下請けや孫請けには自殺も出る。若者の失業率は、実際には40%を超えているという。

 住宅ローンの債務残高は960兆円。当局は外債、米企業債、株式などの売却に転じた。ローンの支払いボイコットにより、中央銀行の損失は47兆円強(ブルームバーグ、8月1日)。

 中国のGDP(国内総生産)の30%を支える不動産ビジネスが壊滅状態となると、規制されていた「融資平台」(=地方政府傘下の投資・事業会社が発行する債券)が復活した。

 社会融資規模は6800兆円。新幹線累積赤字はすでに120兆円。それでも強気で新幹線を2035年に7万キロ達成だと呼号している。新たに73兆円が必要だ。財源をどうするかという議論は真剣になされず、経済政策をつかさどるのは国務院だが、李克強首相ら共青団幹部は冷笑しながら習近平国家主席の失敗をじっと待っている。

 消費者が敏感なのは、ショッピングモールの落日だ。全土に8000近い巨大ショッピングモールのテナントが3割以上埋まっていない。テナントの空きが20%を超えると、そのモールは経営が成り立たない。

 人口の少ない地方都市にも、大都市並みの豪華ショッピングモールができて、客がほとんどいない。売り子があくびしている風景が中国全土に展開されている。

あくびをする中国の売り子 写真はブログ管理人挿入

 「心肺停止」の次は?

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『歩いてみて解けた「古事記」の謎』(育鵬社)、『日本の保守』(ビジネス社)、『歪められた日本史』(宝島社新書)など多数。

【私の論評】今回ばかりは「変動相場制」に移行する等の改革をしなければ、中国経済は崩壊(゚д゚)!

ほぼ廃墟と化した青島宝龍楽園と呼ばれる巨大ショッピングモール

中国からの資本流出が加速するなか、それを助長する利下げや通貨供給拡大など金融緩和の余地はなくなりつつあるようです。

2022年前半には預金準備率や実質的な政策金利である最優遇貸出金利(LPR)などが引き下げられました。その後も金融緩和による景気の下支えが期待されたのですが、足元にかけて状況が急速に変わっています。

5月に実施された利下げは住宅需要の喚起(5年物LPRは住宅ローン金利の基準金利)に限定されました。人民銀行の易総裁(6月27日付Bloomberg News)と鄒貨幣政策局長(7月13日付Bloomberg News)は、実質金利はすでにかなり低いほか、国内銀行間市場の流動性は十分であることから、中国人民銀行が先行き利下げを実施する可能性が低いことを示しています。

足元にかけて中国経済は持ち直しているものの、ゼロコロナ政策によって大きなダメージを負っています。回復ペースを強めるためには、政策支援が必要です。

しかし、7月19日、李克強首相が「中国が大規模な刺激策を講じたり、通貨を過剰発行したり、あるいは過度に高い成長目標を誇示したりすることはない」とコメントしており、2022年の経済成長率目標「+5.5%前後」に必ずしもこだわらない意向が示唆されました。

以上を総じてみると、中国当局は資金流出が中長期的な経済発展に悪影響を及ぼす事態を回避すべく、当面、景気対策としての金融緩和は実施しないというよりも、緩和しても効き目がいどころか資本流出がさらに加速するだけなので、やりたくてもできないというのが実情のようです。

中国は「流動性の罠」にはまり込んでいるようです。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
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中国共産党中央政治局は28日に会議を開催した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国共産党中央政治局は28日に会議を開き、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配したことを掲載しました。

以下にこの記事より一部を引用します。

この会議では、成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されませんでした。

それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。秋に異例の3期目続投を目指す習近平国家主席にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうです。

以下にこの記事の結論部分を引用します。

流動性の罠」にはまった現在、これを解消しようとして金融緩和をしても現状では効き目がなく、かといって金融緩和を継続し続けると、「国際金融のトリレンマ」によって、資本の海外逃避や、不況下のインフレ(スタグフレーション)が起こったりで、何らかの不都合が起こるため、それもできません。

今後、何かを根本的に変えないと、中国経済は低迷し続けることになります。少しうがった見方かもしれませんが、中国政府はすでにこのことに気付いているため、それをカモフラージュするため、「ゼロコロナ」政策に固執しているようにみせかけ、経済の落ち込みは主にこれによものとみせかけ、時間稼ぎをしているのかもしれません。

ただ、いくら時間稼ぎをしたとしても、何かを根本的に変えないと、中国経済は今後成長する見込みはなさそうです。

この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面しています。国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、経済は急減速し回復の見込みもなく、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進んでいます。

このような、情勢は第20回党大会で異例の3期目を迎えるであろう習近平総書記に、さまざまな試練を突き付けています。
中国が、「国際金融のトリレンマ」から抜け出し自国都合で自由に金融政策である「独立した金融政策」をできるようにするには、固定相場制から「変動相場制」に変えるか、「自由な資本移動」の禁止のいずれかを実行しなければなりません。

中国は現在のところ、中途半端な「資本移動規制」をして、急場をしのごうとしていますが、これは単なる弥縫策にすぎません。海外への資本逃避も含む「資本移動」をできなくすれば、独立した金融政策はできるようになるかもしれませんが、一帯一路などの海外投資もまともにできず、海外からの投資も期待できなくなります。

であれば、「変動相場制」に変えるしかないのですが、それも元がかなり安くなることが予想され、怖くて踏み切れないというのが実情なのでしょう。

しかし、このままでは、たとえコロナが終息したとしても、中国経済が回復する見込みはありません。「変動相場制」に移行するなどの、大胆な改革を行わない限り、金融緩和をしようにも何らかの不都合が起こることになりできないので、雇用は悪化しても対策を打てず、中国経済は「心肺停止」から「死」へと向かうしかありません。

過去には、中国経済は何とか中国政府の弥縫策によって乗り越えてきましたが、今回ばかりは、有効な弥縫策はないようです。このままいくとますば中国がデフォルトすることになるかもしれません。それでも根本的な改革をしなけば、中国経済は崩壊することになるでしょう。

それでも、中国は過去もそうだったように、国民を人民解放軍で弾圧して表向きは何もないかのように装うでしょうが、それにもいずれ限界がくることになるでしょう。

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2022年8月3日水曜日

ウクライナ戦争下でもNATOが意識する中国の動き―【私の論評】将来は、日本等がAUKUSに加入し拡大版AUKUSを結成し、NATOと連携し世界規模の集団安全保障体制を構築すべき(゚д゚)!

ウクライナ戦争下でもNATOが意識する中国の動き

岡崎研究所

 7月5日付のResponsible Statecraftのサイトで、米ケイトー研究所のバンドウが、北大西洋条約機構(NATO)が中国に目を向けるのは早すぎる、欧州は対ロ防衛能力の拡大に焦点を当てるべきだと述べている。


 バンドウ(レーガン政権の大統領補佐官、現在保守系シンクタンクのケイトー研究所に所属)は、先般のNATO首脳会議が中国の脅威を取り上げたことが余程不満なのか、種々批判をする。同氏は、「NATOは対ロシア防衛能力の拡大に焦点を当てるべきだ。このプロセスが完了したならば、中国を潜在的敵対国リストに加えればよい。その時まで、欧州はアジア太平洋パワーだと振舞うことは止めるべきだ」と主張する。

 更に「対ロシア防衛につき未だ真剣にやれないのに、遠くのもっと手ごわい大国に対決することは出来ないだろう」、「NATOはアジア太平洋で何をしようというのか」と言う。その上で、当面、欧州とアジアの協力は、NATOではなくEUや加盟国が、人権、サイバー、供給網、貿易や経済圧迫の分野でやるべきだとする。

 しかし、今年の首脳会議が、日豪韓NZの首脳を招き、中国の「システミックな挑戦」を新たな戦略概念に規定し、アジアとの協力に言及したことは、大きな意味がある。それは早過ぎるどころか、時宜に適っている。

 今日ほど、世界の安全保障が不可分になっていることはない。中国は増大する国力を攻撃的な膨張主義に転化し、ウクライナ戦争で中露は連携を強く維持している。

 仮に台湾有事になれば、それはグローバルな問題でありグローバルな対応が必要になる。NATOが中国とインド太平洋に関心を持つことは、良いことであり、必要なことである。

 バンドウの議論はNATOの優先順位論かもしれないが、今年のNATO首脳会議の意義を過小評価することは適当でない。寧ろここ10年余の欧州の中国への経済傾斜については、NATOがその安全保障上のリスクを指摘しても良かった位だ。

 岸田文雄首相が選挙運動中にも拘わらずNATO首脳会議に出席したことは、良かった。今後米豪等と連携してNATO、欧州との関係を着実に強めていくべきだ。また英仏独等が個別に演習等でアジア太平洋に来ることを一層慫慂(しょうよう)していくべきだ。

 もう一つこの記事で注目したのは、ロシアのウクライナ侵攻に至る冷戦後の西側の対応につきバンドウが批判的であることだ。屡々プーチンが述べてきた安全保障上の懸念を「無視」し、「一連の同盟国の確約に違反して」NATOを東方に拡大した、プーチンとの交渉も拒否してきたと言い、それ故今回ウクライナ侵攻は正当化されるものではないが「驚くべきことではない」と言う。

 「確約」と言うのは恐らくゴルバチョフがNATOは東独以東には拡大しないとの約束があったと後日述べたことを指しているのであろう、しかし、たとえそうであっても書面の約束がある訳ではない。しかしバンドウの指摘は、今回何故ウクライナ戦争が防げなかったのか、抑止できなかったのかという重要な点に関係する。

 いずれ歴史家等が議論するであろうが、過去20年の間双方の間で現実主義的な話し合いや交渉が不十分だったのではないかとの感は否めない。それが二核大国の間の不満であれば尚更である。

欧州の防衛努力は不足している

 議論をすれば、何らかの対応が図られたかもしれない。当時西側はプーチンの不満の彼にとっての深刻さを正しく理解していたのだろうか。

 バンドウの批判は、アジアとの協力というよりも欧州加盟国の防衛努力不足に対する苛立ちから来ているように見える。大西洋主義者や共和党関係者は総じて欧州の防衛努力の不十分さには大きな不満を持ってきた。

 バンドウはオバマ民主党政権によるアジアへのピボット政策を批判しているのかと思ってみた。しかしそうだとしたらバンドウは間違っている。今や中国はロシア以上の構造的リスクになっている。米国とて、持てる資源は有限であり、優先順位に従って行動するしかない。そうであればアジアへのピボットは不可欠だ。

【私の論評】将来は、日本等がAUKUSに加入し拡大版AUKUSを結成し、NATOと連携し世界規模の集団安全保障体制を構築すべき(゚д゚)!

今回の6月の首脳会談について、ここで振り返っておきます。


6月29日北大西洋条約機構(NATO)はマドリードでの首脳会議で、冷戦終結後で最大規模となる欧州での兵力増強に合意しました。

ロシアのウクライナ侵攻に対応し、「即応部隊」を30万人余りに増強するとともに、米ステルス戦闘機F35飛行隊の追加配備などで欧州の防衛体制を強化します。フィンランドとスウェーデンの加盟もほぼ確実となりました。これまで2カ国の加盟に難色を示していたトルコが支持に回りました。

NATO首脳はまた、中国の軍事力増強を「挑戦」だと初めて特定。中国に対抗できるアジア太平洋の民主国家との関係強化を図ります。今回の首脳会議には岸田文雄首相のほか、韓国とオーストラリア、ニュージーランドの首脳が招待されました。

NATO首脳会議に初めて日本が参加した意義としては、ヨーロッパとアジア太平洋の安全保障は密接に結びついているという意識が共有されたことが大きいとです。特に将来、中国の力による現状変更への危機感をヨーロッパが言及したことに意義があるといえます。

そして「ロシア・中国」VS「NATO・パートナー国(日本)」という新たな冷戦構造が構築されたともいえるでしょう。米国がかつてほどのスーパーパワーがなくなりつつある今、新冷戦構造の中での日本の立ち位置が問われているともいえます。

NATOの新たな「戦略概念」は、ロシアがウクライナで戦争を開始し、中国が太平洋で軍事力を強化しつつある新たな時代が始まったことを告げています。


バイデン米大統領は今回の首脳会議を「歴史をつくるサミット」と呼び、ポーランドに常駐部隊を置き、ルーマニアとバルト3国での米軍の態勢を強化すると表明しました。

NATOはウクライナに侵攻したロシアをNATOの安全保障に対する「最も重要かつ直接的な脅威」だとする一方、中国は「体制上の挑戦」と明記。今回採択された戦略概念は今後10年の優先課題を示しています。

新しい戦略概念は2010年に採択して以来約12年ぶりです。これまでの戦略概念はロシアとの関係を「戦略的パートナーシップ」と呼ぶ一方、中国には触れていませんでた。新概念はロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義。ウクライナに侵攻し、NATOと対立を深める現状を映しました。

中国について、核兵器の開発に加え偽情報を拡散したり、重要インフラ取得やサプライチェーン(供給網)を支配したりしようとしていると分析。宇宙やサイバー、海洋で、軍事的・経済的な影響力を強めていると主張しくした。中露が、ルールに基づく秩序を破壊しようとしていることは「我々の価値と利益に反している」と強調しました。

ストルテンベルグ事務総長は記者会見で「中国の威圧的な政策は、我々の利益、安全、価値に挑んでいる」と戦略概念と同様の表現で訴えました。中露の位置づけを大きく変えたことで、米欧の軍事同盟であるNATOは歴史的な転換点を迎えました。

戦略概念はインド太平洋地域の情勢が「欧州・大西洋に直接影響することを考えると、同地域は重要だ」として、対話と協力を深める方針を明記した。

トラス英外相は「中国がウクライナを注視していることをわれわれは認識している」と述べ、中国政府がロシアのように台湾侵略など「壊滅的」誤算をし得るという「リアルなリスク」があると指摘しました。

NATOは近年、かなり弱体化していました。だからロシアはウクライナ侵攻を決断したのです。ただ、 欧州がNATOによって、平和が維持されてきたのも事実です。ロシアはNATO加盟国には侵攻していません。

しかしロシアがウクライナを攻めたまさにそのせいで、いまNATOは非常に強力になっています。NATOは大西洋を越え、日本を含む太平洋諸国にまで拡大した安全保障体制に進化しつつあるといえます。

アジア諸国が中国の侵攻を防ぐには、民主主義国家同士で将来的には「環太平洋版NATO」をつくるべきでしょう。いきなり多国間同盟をつくるのは、利害関係が複雑過ぎて統率が取れない東南アジア諸国連合(ASEAN)で明白なように、多大な困難があります。

まずは、2021年9月に米英豪3カ国で結成した「AUKUS(オーカス)」に日本が加盟すべきです。AUKUSは、もともとは豪州が原子力潜水艦を導入するにあたって、米英が技術支援をするための枠組みという触れ込みですが、事実上は中国、ロシアに対抗する軍事同盟です。ウクライナ侵攻をきっかけに、米国は日本を含め参加国の拡大を検討し始めています。

QUAD各国の首脳会談出席のために出発する菅義偉首相(中央、当時)=2021年9月23日、羽田空港

まず、日本単独でAUKUSに加わりJAUKUSを結成するか、もしくはニュージーランド、カナダと共にAUKUSに加わるのです。次いでインド、メキシコ、そして環太平洋パートナーシップ(TPP)のメンバーと加盟国を増やしていくのです。そうすれば太平洋地域にも高い抑止力を持つ集団防衛体制、拡大版AUKUSが出来上がります。

このような世界規模の安全保障体制が出来上がれば、現在の国連など存在意義を失うことになでしょう。というより、今でも実質的に失っています。中露が国連安保理の常任理事国であること事態で、もう国連はおしまいです。

そうして、拡大版AUKUSとNATOが連携して世界規模の集団防衛体制が構築されれば、世界は凶暴な専制国家の侵略の脅威から解放されることになるでしょう。

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2022年8月2日火曜日

台湾と香港の「心をつかめ」、習近平氏が中国共産党に要求―【私の論評】米中の真の戦争は「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるな(゚д゚)!

台湾と香港の「心をつかめ」、習近平氏が中国共産党に要求

中国共産党中央統一戦線工作部についての会合で演説する習近平氏(中央)

 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は2日までに、中国共産党に対して香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」ことを強く求めた。それこそが「国家を再生する」取り組みの一環だとの認識を示した。

 習氏の要求は、週末にかけて開かれた高位の当局者が集まる会合でのもの。中国共産党中央統一戦線工作部(統戦部)に向けて提示された多くの重要任務の一つだった。この組織は中国内外で影響力を獲得する任務を担う。

 国営新華社通信によると、習氏は北京での会合で統戦部について、中共が敵を打ち破るための重要な保証になると指摘。国の統治と再生のほか、国内外の全中国人を結集させ、国家再生を実感させることも請け合う組織だと強調した。

 具体的な取り組みとしては、国内において「共通性と多様性の適切なバランスを取り」「香港、マカオ、台湾、さらに海外の中国人の心をつかむ」ことを含むべきだとの見方を示した。

 香港は民主化を求める大規模な抗議行動を受けて習氏による弾圧の対象となり、現在は中国政府が統治する半自治区として運営されている。マカオでも同様の体制が敷かれる。台湾では民主主義に基づく自治が行われているが、中国共産党はこれを自国の領土とし、「再統一」を目指すと公言している。中国が台湾を統治したことは過去に一度もない。

 「複数の取り組みを通じて海外の愛国者らを強化するほか、より多くの外国人にも理解を促し、中国に対して友好的になるようにするべきだ」(習氏)

 海外に暮らす中国人向けの業務も統括する統戦部の動きについては、近年国際社会が否定的な目を向けていた。背景には、世界的な影響力の増進を図る中国に対する懸念がある。

 他方、統戦部の国内での活動を巡っては、共産党に反発する可能性のある人々を鎮圧する手段と長く目されてきたが、ここにも国際社会からは否定的な見方が出ている。その権限によって特定の宗教や民族に属する集団を弾圧していると考えられているためだ。

 習氏は統戦部の任務として、「民族問題」において「中華民族への強い共同体意識を育てる」ことに言及。また各宗教に関しては「中国的な背景の中で」発展させていく考えを示した。人権擁護の活動家などからは、このような認識の一環として最近特定の宗教や民族に対する弾圧が行われていると非難する声が上がっている。

 習氏はさらに「中華民族の全ての息子たち、娘たちを1つにする」必要性も強調。専門家によるとこの言葉は共産党の構想を指しており、中華民族であればたとえ中国籍を持っていなくても全員を結び付けるというのがその主旨だという。

 この構想に対しては反発する中国系住民もいる。とりわけ物議をかもしているのは、一部の西側諸国で中国系の人々が不当な取り締まりの標的にされているとの見方が出ている点だ。これらの国々では、中国によるものとみられるスパイ行為の封じ込めに取り組んでいる。

【私の論評】米中の真の戦争は「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるな(゚д゚)!

現在、中国はペロシ氏が実際に訪台すれば軍事的な対応をすると警告を出しています。対応の内容は特定していないものの、2大経済大国の間の危機の引き金になりかねないなどと報道されています。


中国の習近平国家主席は先週の首脳会談でバイデン米大統領に対し、台湾問題で「中国の国家主権と領土の一体性を断固として守る」とし、「火遊びをする者はやけどを負う」と語ったとされています。

中国が全面的な台湾侵攻を計画している兆候はほとんどないですが、外国の当局者による過去の台湾訪問の際、台湾の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機の大規模侵入があるなどしました。

台湾のテレビ局TVBSは、多数の中国軍機が1日午前に台湾海峡の中間線に接近したと伝えるとともに、台湾の複数の軍艦も通常任務を展開していると付け加えました。

台湾の複数のメディアによると、中国海軍の空母「遼寧」と「山東」を中心とする2つの艦隊が2日までに、母港のある青島と海南島を離れたという。台湾海峡に向かっているのかどうかは不明だが、ペロシ下院議長の動向に合わせた動きとみられます。

空母「山東」
また、2日午前に台湾の桃園国際空港に対し「ペロシ氏の台湾訪問を阻止するため3つの爆発物を設置した」との脅迫メールが届いたという。これまでのところ爆発物が見つかったという発表はないが、警察が警備を強化しメールの発信元を調べている。
米海軍は2日、台湾東方のフィリピン海に空母を含む艦艇4隻を配備していることを明らかにした。「通常の」配備と説明している。

配備されているのは、空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡洋艦「アンティータム」、駆逐艦「ヒギンズ」、強襲揚陸艦「トリポリ」。

海軍関係者はロイターに対し匿名を条件に「万一の事態に対応できるが、通常の配備だ」とし、正確な場所についてはコメントできないと述べたそうです。

以上、ペロシ訪台を巡ってのドタバタを掲載しましたが。これは、本当にドタバタです。なぜなら、ペロシが訪台するかもしれないと公表されている最中、習近平(シーチンピン)国家主席は中国共産党に対して香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」ことを強く求めているのです。

習近平が、もし本気でペロシが訪台すれば、軍事的報復に打って出ると考えていれば、いずれの会議においても台湾の人々の「心をつかめ」などと言う必要性など全くありません。

習近平として、恫喝は恫喝、本心は本心と使い分けているのかもしれませんが、これは本当に不自然です。それに、中国外務省の華春瑩報道官は2日、予想されるペロシ米下院議長の台湾訪問について、米国と連絡を取り合っていると述べました。

これは、結局米国のペロシ訪問を受けて、中国はこれに対して反対したり恫喝したりするものの、恫喝は恫喝であり、中国も本気ではないし、米国もそれを重々承知しているとみるのが妥当だと思います。

このうよな事実を見聞きしても、私自身はあまり不思議には感じませんが、これを不思議に感じる人も多いかもしれません。そうい人には、ある情報が欠けているのかもしれません。それは、中国は当然のことながら、米国でもあまり報道されませんので、仕方ないことなのかもしれません。

それは一体どのような情報であるかといえば、それはこのブログにもいくつか掲載したことがあります。その代表的なものの記事のリンクを以下に掲載します。
ペロシ米下院議長、アジア歴訪を発表も訪台は明示せず 割れる賛否―【私の論評】ペロシの台湾訪問は米国による対中国「サラミスライス戦術」の一環(゚д゚)!
米オハイオ級攻撃型原潜
中国はASW(Anti Submarine Warfarea:対潜戦)においては日米に著しく劣る中国海軍には、これに対抗する術はほとんどありません。中国軍は、米攻撃型原潜が台湾沖に恒常的に潜むことになり、米軍がそれを公表する事態になれば、第三次台湾海峡危機(1995年-1996年)において、米軍の空母に対応できず、軍事恫喝を継続することができなかったときのように、再度米国の攻撃型原潜に屈服することになります。

これについては、米国の著名な戦略家、ルトワックも台湾有事には米軍は攻撃型原潜を2、3隻攻撃型原潜を台湾沖に派遣(ブログ管理人注:年中休みなしに24時間体制するなら、2〜3隻は必要という意味と考えられる)すれば、十分防衛できると主張しています。台湾有事に、わざわざ空母打撃群などを最初に派遣して、中国軍に大きな標的を与える必要性など全くありません。

一部の米評論家は、この事実を見ようともせず、米国がやっていることはまだ十分ではない、米国は台湾に軍隊を駐留させるか、あるいは習近平氏により明確な公開警告を発するべきと信じているようです。

しかし、米軍の海戦能力が中国を遥かに凌駕している現在、「曖昧戦略」は取り消しても良いかもしれませんが、それ以上は必要があるとは到底思えません。無論、サラミスライス戦術が功を奏して、台湾に米国が軍隊を駐留させても良いとか、習近平にはっきりと警告を出しても良い時期が来た場合には、すべきとは思います。

米軍に中国に比較すると、圧倒的に強い対潜水艦戦能力を有しているので、海戦ということになれば、未だに中国は米国の敵ではありません。

実際に、米中が台湾を巡って武力衝突したとすると、米国は台湾近海に派遣した攻撃型原潜から大量にミサイル、魚雷を発射し、瞬時に台湾海峡に存在する中国艦隊、航空機のほとんどは壊滅、それだけではなく、 中国軍の台湾侵攻に用いる、防空施設、監視衛星要施設を破壊します。

これで、事実上中国の台湾攻撃部隊は、ほとんど壊滅しますが、それでも足りなければ、米軍は、二次攻撃、三次攻撃もするでしょう。これで、中国海軍と関連施設は崩壊するでしょう。

そのようなことになるのは目に見えているので、中国が台湾に武力侵攻できる見込みはほとんどありません。

ただ、米中が台湾を巡って軍事的に対立した場合、米軍によって中国の台湾侵攻を阻止することはできるものの、中国は台湾に向けてミサイルを多数発射するかもしれません。場合によっては、核ということも考えられます。

それどころか、日本や韓国も攻撃するかもしれません。そうなるとかなりやっかいです。ですから、米国としてもできれば、中国とは直接武力衝突をしたくないと考えているでしょう。

このブログでも何度も述べきたように、米国と中国の真の戦場は、経済とテクノロジーの領域にあります。なぜなら、軍事的には中国はいまだ米国に対抗できる力がなく、外交戦略においては、中国に対峙しているのは、米国一国ではなく、すでにより広範な反中国同盟だからです。

さらに、米国も中国を武力で追い詰めれば、中国の核兵器の使用を誘発し、中国が核を使えば米国もそれに報復することになり、エスカレートして終末戦争になることは避けたいと考えているからです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえば過去に英国がアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

そうして、習近平が、"香港、マカオ、台湾の人々の「心をつかむ」"と語ったことも、これと密接に関係しています。要するにこれらの地域の、漢人はもとより、中国に親和的な人々の心をつかみ、「地政学的な戦い」の強化を図れということなのです。

上の記事の結論部分は、
 習氏はさらに「中華民族の全ての息子たち、娘たちを1つにする」必要性も強調。専門家によるとこの言葉は共産党の構想を指しており、中華民族であればたとえ中国籍を持っていなくても全員を結び付けるというのがその主旨だという。

 この構想に対しては反発する中国系住民もいる。とりわけ物議をかもしているのは、一部の西側諸国で中国系の人々が不当な取り締まりの標的にされているとの見方が出ている点だ。これらの国々では、中国によるものとみられるスパイ行為の封じ込めに取り組んでいる。

と締めくくられていますが、なぜこのようなことになってしまうかとえば、2010年7月1日に施行された『国防動員法』は、「満18歳から満60歳までの男性公民及び満18歳から満55歳までの女性公民は、国防勤務を担わなければならない」「必要な予備役要員を確保する」「公民及び組織は、平時には、法により国防動員準備業務を完遂しなければならない」と規定しており、外国在住の中国人も免除対象ではなく国防勤務の対象者なのですです。

有事の際には、外国の国内の中国資本企業や中国人が所有する土地や建物が中国の国防拠点になる可能性も十分にあるのです。

さらには、中国には厄介な『国家情報法』があります。これは、2017年6月28日に施行されました。

国家の安全・利益の擁護を目的として、「国家情報工作」に関して法的根拠を与え、工作機関や工作員の権限、一般の組織や市民に対する工作活動への協力についても定めています。

『国家情報法』でも、外国国内において中国資本企業や中国人が諜報活動を行うことを、国家が保護するようにも読めます。

これについては、高市早苗氏のコラムに詳しく掲載されています。です。興味のある方は是非読んでみてください。

米中の真の戦いのフィールドは「地政学的戦争」、表のドタバタに惑わされるべきではないのです。ただし、米中双方とも、軍事的な対立が有利とみれば、そちらがわに舵を切ることも十分にありえるので、軍事衝突の可能性も捨てきることはできないですし、中国が台湾を武力で侵攻できる力をつければ、威嚇も何もせずに、速やかに武力で侵攻するでしょう。その後は尖閣でしょう。しかし、現状ではあまりにも武力ばかりが強調されすぎるきらいがあります。

いずれにしても日本を含めた自由主義陣営の国々は、「地経学的戦争」にも本気で備えるべきなのです。特に、日本では台湾有事、尖閣有事ばかりが大きく取り扱われ、「地政学的戦争」は、あまり報道されておらず、無防備、無関心な人や組織が多いことが気がかりです。

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2022年8月1日月曜日

バイデンがサウジアラビア訪問で得たものとは―【私の論評】多極化した世界秩序の中で成功した安倍外交を踏襲しようとしているバイデン大統領(゚д゚)!

バイデンがサウジアラビア訪問で得たものとは

岡崎研究所

 バイデン大統領は、7月13日から16日の日程で中東を歴訪した。ここでは、特に、サウジアラビア訪問について見てみる。


 米国とサウジとの関係は、バイデンが軽率にも大統領選挙期間中に「サウジを『のけ者』にする」と言ったり、カウンターパートはムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)ではなくサルマン国王であると言ったりして、冷え込んでいた。湾岸の米国の最大の同盟国との関係がぎくしゃくしているのは当然望ましいことではない。サウジとの関係改善自体が訪問の一つの大きな目標だったと言っても過言ではない。

 今回のバイデンの訪問で、米国とサウジとの関係は、安全保障、経済協力の両面で絆が再確認された。航空産業、防衛、工業全般、観光、インフラ、クリーンエネルギーなど広範な分野で多くの投資協力がなされることが発表された。

 バイデンの訪問に合わせて、サウジ当局は、イスラエルを含むすべての航空機に領空を開放することも発表した。これは、サウジとエジプトの間で領有権を争っていたティラン島をイスラエルに引き渡す合意において、引き渡しにはイスラエルの承認が必要だったところ、米国の仲介により7月14日にイスラエルが承認したことへの見返りとされる。

 イスラエルとサウジの関係改善を示す象徴的な出来事だったと言える。米国はイランの脅威を念頭にイスラエルとアラブ諸国が関係正常化と協力強化に向かうことを望んでいる。

 原油増産については確約を得ることができなかったが、いずれサウジが75万BD、UAEが50万BD、計125万BDを増産することが了解されているとの説もある。

バイデンのサウジ訪問につき米国内ではメディア、民主党左派、保守党、人権活動家等から強い批判が沸き上がっている。バイデン擁護論はほとんど見られない。

人権だけで外交はできない

 リベラル派は、反体制ジャーナリストのカショギ氏の殺害に深く関与したとされるMBSにバイデンが甘い態度をとったことを非難する。特にワシントン・ポスト紙は激しく攻撃している(例えば、7月17日社説‘In the Middle East, Biden’s policy bumps into U.S. principles’)。

 しかし、今回のサウジ訪問が綿密に計画され大成功だったとは言えないが、バイデンの意図したサウジ訪問の目的は十分に理解できる。バイデンは、7月9日付けのワシントン・ポスト紙への寄稿記事‘Why I’m going to Saudi Arabia’の中で、大きな地政学的問題や世界エネルギー市場の安定化のためにサウジに行くのだと説明していた。

 バイデンとしては、サウジ訪問のリスクを承知の上で最終的に訪問に踏み切ったのであろう。バイデンに他の策があったようには思えない。

 人権の重要性は言うまでもないが、人権だけでは外交にならない。独裁者とディールしないと言うだけでは外交にならない。人権は不可避的に、レアル・ポリティーク(現実政治)と併せて取り扱わなければならない。

【私の論評】多極化した世界秩序の中で成功した安倍外交を踏襲しようとしているバイデン大統領(゚д゚)!

安倍元総理大臣も存命中に、総理大臣としてサウジアラビアを訪れています。

在任中、安倍首相は外交政策、特にアラブ諸国との関係で知られていました。安倍元総理は中東と日本の協力関係、友好関係の強化に大きな役割を果たしました。

2020年、安倍首相はアラブ諸国を視察し、サウジアラビア、UAE、オマーンを訪問しました。

同年1月、安倍首相はサウジアラビアに到着し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談し、両国の二国間関係について協議を行いました。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談する安倍首相

同地域における日本関係船舶の安全航行のための情報収集を目的とした海上自衛隊の任務について、安倍首相は皇太子から全面的な支持を得ました。

海自のP-3C哨戒機2機は1月に任務に出発し、同じく海自のたかなみ型護衛艦は2020年2月2日に中東に向けて出港しました。

その際、両首脳は地域の安定と平和を確保するための努力を維持することに合意しました。

王国訪問中、安倍氏はナバティア人の遺跡であるアル・ウラーを視察した。これは、UAEとオマーンに向かう前の最後の訪問地となりました。

また、リヤドではサウジアラビアのサルマン国王と会談し、サウジアラビアが主催する「20カ国・地域(G20)」の成功に向けた協力関係を確認しました。国王は約40分間の会談で、日本と同国がエネルギー分野だけでなく、様々な分野で戦略的パートナーシップを深めていくことへの期待を表明しました。

UAEでは、アブダビ首長国の国軍副司令官シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子が安倍首相を迎え、地域の緊張緩和のための外交関係強化に向けた取り組みについて協議しました。

安倍首相らはまた、アブダビ最高石油評議会(SPC)との間で交わされた「UAE-日本戦略的エネルギー協力協定」の調印に立ち会いました。

UAE国営通信WAMによると、この協定はアブダビ国営石油会社(ADNOC)と日本の資源エネルギー庁によって提示され、日本国内の貯蔵施設に800万バレル以上の原油を備蓄するためのものでした。

安倍首相のアラブ歴訪の最後の目的地はオマーンであった。スルタン・カブース前国王の死去に伴い就任したハイサム・ビン・タレック国王と会談しました。

ハイサム・ビン・タレック オマーン国王と会談する安倍首相

安倍首相はスルタン前国王の死去に哀悼の意を表しました。また、地域の安定のために協力し、二国間関係を発展させることで合意したと、日本外務省の声明は述べています。

2015年、安倍首相はエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問し、中東の主要国との友好関係を再確認しました。

安倍首相は、地域の安定に不可欠なイスラエルとパレスチナの和平の実現に向けた働きかけを行いました。

ヨルダンでは、ダーイシュ対策の最前線にいる同国を支援することを約束した。

日本とヨルダンは、皇室と王室の緊密な関係に基づく極めて友好的な関係にあり、両国首脳の間で活発な交流が続けられています。

ヨルダンのアブドッラー2世国王と安倍首相は、両国の戦略的関係をさらに発展させ、平和と安定の推進に協力していくことを再確認しました。

その際、安倍首相はイスラエルとパレスチナにおける暴力と不信の連鎖に懸念を示し、紛争をエスカレートさせる可能性のある行動を避けるよう要請しました。

また安倍氏は、イスラエルが実施しているパレスチナ自治区への税収返還の停止について見直しを強く要請し、国際法に違反する入植活動の停止も要請しました。

2015年に行われたパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領との会談では、安倍首相は、二国間解決に向けた1億ドルの支援など、パレスチナの国づくりに向けた日本のコミットメントと支援を強化する意向を直接伝えました。

また、国連や国際機関において外交的措置を講じているパレスチナに対し、交渉再開や中東和平に向けた努力を阻害するような行動をとらないよう要請しました。

「アベノミクス」という言葉は、2012年に安倍首相が日本経済をデフレから脱却させるために実施した経済政策から生まれました。日本は、安倍首相在任中にも2度も消費税増税をしたこともあり、デフレから未だ完璧には脱却していないものの、在任中に400万にもの雇用を新たに創造しました。安倍首相が就任した2012年当時、日本はまだ2008~2009年の不況から立ち直っていない時期でした。

また、2020年の東京オリンピックを勝ち取るために大きな役割を果たしたのも安倍元首相です。

人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮し、リオ五輪閉会式に登場した安倍晋三首相

安倍首相は2020年8月下旬、持病を理由に突然の辞任を届け出ました。同氏は、世界中の外国人指導者との個人的な関係や、サウジアラビアのサルマン国王、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子などアラブの指導者との強い結びつきで知られていました。

中東の対立構造はもはや、一昔前のイスラエル対アラブ諸国ではありません。「力による現状変更を現在進行形で実践しているイラン」対「中東地域の安全、安定、国家の主権、独立を保持したいその他諸国」というかたちへの地域再編が進んでいます。

世界は二極化ではなく多極化しています。多極化した世界秩序の中で国益を守るためには、「どちら側」とも取引をしなければならないと考える国が少なくないという現実を直視し、外交を実践したのが、安倍首相であったとえると思います。こうした、従来の外交とは異なる安倍外交を日本もこれからも継承すべきです。

まさに、人権を不可避的に、レアル・ポリティーク(現実政治)と併せて取り扱ったのが安倍元首相であったということができます。

これを実行しようとしている、バイデン大統領の今回のサウジアラビア訪問、一定の評価ができると思います。

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2022年7月31日日曜日

ペロシ米下院議長、アジア歴訪を発表も訪台は明示せず 割れる賛否―【私の論評】ペロシの台湾訪問は米国による対中国「サラミスライス戦術」の一環(゚д゚)!

ペロシ米下院議長、アジア歴訪を発表も訪台は明示せず 割れる賛否

ペロシ下院議長

ペロシ米下院議長は31日、アジア歴訪を正式発表した。訪問先は日本、韓国、シンガポール、マレーシアとしており、焦点の台湾を訪れるかどうかは明記していない。正副大統領に続く米国ナンバー3の下院議長が訪問すれば、中国が統一圧力を高める台湾への連帯を強く打ち出せるが、一層の米中関係悪化と情勢の不安定化を招くジレンマがあり、賛否は割れている。

発表によるとペロシ氏は31日までに給油でハワイに立ち寄った。ワシントン出発日は不明。ミークス下院外交委員長ら5議員も同行している。

米下院議長が訪台すれば、1997年のギングリッチ氏以来25年ぶり。ペロシ氏は中国の人権問題での厳しい立場で知られ、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とも親交がある。28日にバイデン大統領と電話会談した習近平国家主席は「火遊びは自らを焼き滅ぼす」と牽制(けんせい)した。

【私の論評】ペロシの台湾訪問は米国による対中国「サラミスライス戦術」の一環(゚д゚)!

米政府は中国が台湾への圧力を強める中、台湾に現状維持の保証を与えるために、台湾への支持を示す行動を段階的に展開してきました。今回ペロシ下院議長が台湾を訪問することになれば、これもその一環であると考えられます。

北京ではしばしば、「サラミ・スライス戦術」を使用して、飛躍的な変更ではなく、段階的な進歩を通じて現状を変えてきました。

例えば南シナ海では1つずつ埋め立て(人工島の建設)を行い、1つずつ新たな軍事基地を建設して、米国との対決につながる可能性のあるさらに大きな挑発を回避しながら、その影響力や権益を徐々に拡大しました。

習近平氏は、数年前から米国版の「サラミ・スライス戦術」に直面することになりました。この戦略は数年後にピークに達し、台湾の国際的地位を大幅に向上させる可能性があります。

そうして、この戦術は、成功する可能性が高いです。なぜなら、このブログでは従来から指摘してきたとおり、今でも米軍の海軍力は中国のそれを大きく上回っているからです。

米国国防省や米海大の台湾有事のシミレーションでは、なぜか米軍は、攻撃型原潜を用いることはありません。なぜそのようなことをするかといえば、米国の攻撃力に優れた攻撃型原潜をシミレーションに参加させれば、米海軍の中国に対する絶対優位性が証明されることになり、シミレーションの本来の目的が達成されなくなってしまうからです。

本来の目的は何かとえば、米海軍の脆弱な部分を補うための予算を獲得すること、さらに米海軍の脆弱な点に対して、世間の耳目を惹き付けることです。

そのシミレーションの目的は、十分とはいえないものの、ある程度は効果を現しているようです。しかし、そこにたとえば、オハイオ型攻撃型原潜を参加させれば、このシミレーションは変わっきます。オハイオ型は、比較的大型の艦体や動力ゆえに、トマホーク巡航ミサイルを154基も搭載でき、これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近いです。

米オハイオ級攻撃型原潜

トマホーク1基では、爆発力の高い弾頭を最大1000ポンド(約450キロ)搭載可能です。さらに、現在の米国の大型原潜は、巡航ミサイル以外にも、対艦ミサイル、対空ミサイル、魚雷等を多数配備し、さながら海中の大型ミサイル基地のようであり、その攻撃力は半端ではありません。

このような大型攻撃型原潜が1隻でも、台湾近海に潜んでいれば、台湾有事には最初の一撃で、多くの艦艇、航空機、中国の防空施設、監視衛星の地上施設を攻撃すれば、中国海軍は壊滅的打撃を受けることになります。

それを覚悟の上で、無理に中国が台湾に上陸部隊を上陸させたにしても、米攻撃型原潜が台湾近海に潜んでいれば、中国海軍の艦艇や航空機が、台湾に近づけばこれがことごとく破壊され、上陸部隊への補給ができず、上陸部隊はお手上げ状態になります。

中国はASW(Anti Submarine Warfarea:対潜戦)においては日米に著しく劣る中国海軍には、これに対抗する術はほとんどありません。中国軍は、米攻撃型原潜が台湾沖に恒常的に潜むことになり、米軍がそれを公表する事態になれば、第三次台湾海峡危機(1995年-1996年)において、米軍の空母に対応できず、軍事恫喝を継続することができなかったときのように、再度米国の攻撃型原潜に屈服することになります。

これについては、米国の著名な戦略家、ルトワックも台湾有事には米軍は攻撃型原潜を2、3隻攻撃型原潜を台湾沖に派遣すれば、十分防衛できると主張しています。台湾有事に、わざわざ空母打撃群などを最初に派遣して、中国軍に大きな標的を与える必要性など全くありません。

一部の米評論家は、この事実を見ようともせず、米国がやっていることはまだ十分ではない、米国は台湾に軍隊を駐留させるか、あるいは習近平氏により明確な公開警告を発するべきと信じているようです。

しかし、米軍の海戦能力が中国を遥かに凌駕している現在、「曖昧戦略」は取り消しても良いかもしれませんが、それ以上は必要があるとは到底思えません。無論、サラミスライス戦術が功を奏して、台湾に米国が軍隊を駐留させても良いとか、習近平にはっきりと警告を出しても良い時期が来た場合には、すべきとは思います。

中国当局は30日、台湾の対岸に位置する福建省福州市の平潭(へいたん)島の周辺海域で実弾射撃訓練を行うため船舶の進入を禁じました。平潭島は台湾に最も近い中国の島とされており、ペロシ米下院議長の台湾訪問計画を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられます。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の胡錫進前編集長は31日までに、台湾訪問の可能性が取り沙汰されているペロシ米下院議長について、中国軍による台湾入りへの妨害に効果がなければ搭乗機を「撃ち落とせ」と英語でツイートしました。規定違反だと警告されたため、その後削除しました。胡氏は著名な愛国主義的論客です。

過激な発言で有名な、環球時報の胡錫進前編集長

胡氏が短文投稿サイト微博(ウェイボ)に投稿した経緯の説明によると、29日に「台湾に入るペロシ氏の搭乗機を米軍戦闘機がエスコートすれば、それは侵略だ。人民解放軍には警告射撃や妨害を含め、搭乗機と戦闘機を強制的に駆逐する権利がある。効果がなければ、撃ち落とせ」とツイート。規定違反だとされて非表示になり、アカウントを復活させるため削除しました。

中国としては、ペロシの台湾訪問は嫌で嫌でしょうがないのでしょう。

米軍嘉手納基地に30日、米国内の空軍基地に所属するKC135空中給油機9機が次々と飛来した。そのほか、空母艦載輸送機C2Aグレイハウンド2機と、米軍ホワイトビーチに入港した米海軍の強襲揚陸艦トリポリの搭載機、MH60ヘリ1機も飛来しました。ペロシ米下院議長の台湾訪問計画を受け、米中間の緊張が高まっているためとみられます。

これに先立つ28日、米海軍第7艦隊は、ロナルド・レーガン空母打撃群がシンガポールに寄港後、南シナ海に戻ったことを明らかにしました。

ロナルド・レーガン空母打撃群

ペロシの台湾訪問は、台湾にさらに現状維持の保証を与えるための大きな一歩となることでしょう。是非実現していただきたいものです。それにしても、ペロシの訪問が、これだけのインパクトを中国与えるわけですから、安倍元総理が訪問していたらどういうことになったか想像に余りあります。

そうして、このような段階的な米国の「サラミスライス戦術」これからも少しずつ実行されていくことでしょう。

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2022年7月30日土曜日

中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催―【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催



 中国共産党中央政治局は28日に会議を開き、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配しました。この会議は習近平中国共産党中央委員会総書記が主宰しました。

 会議では、「今年に入ってから、複雑で厳しい国際環境と国内の改革・発展・安定の任務に直面し、われわれは感染症対策と経済・社会発展の取り組みを効果的かつ統一的に計画してきた。新型コロナウイルス対策は積極的な成果を収め、経済・社会発展は新たな成果を収めた。同時に、現在の経済運営はいくつかの際立った矛盾と問題に直面している」との認識が示されました。

 会議では、「下半期の経済活動は質の高い発展の推進に力を入れ、新型コロナウイルス感染症を防ぎ、経済を安定させ、発展を安全にするという要求を全面的に実行していく。経済の回復・好転傾向を固め、雇用の安定・物価の安定に力を入れ、経済の動きを合理的な範囲内に保ち、最善の結果の実現を目指す」と強調しました。

 さらに、会議では、「改革開放を経済発展の原動力とする必要がある。国有企業改革3カ年行動案を引き続き実施しなければならず、プラットフォーム経済の規範的で健全な持続的発展を推進していく。輸出を積極的に促進し、輸入を拡大し、技術と外資導入をしっかりと行い、『一帯一路』共同建設の質の高い発展を推進していかなければならない」と指摘しました。

 また、国民生活保障を着実に行うことが強調され、困難を抱える人々の基本的生活の保障に力を入れ、大卒などの重点対象の就職をしっかりと支援する必要があるとしています。

【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

上の会議、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配したとしていますが、上記の記事を読んでいる限りでは、具体的な政策は何もありませんでした。

この会議では、成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されませんでした。

それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。秋に異例の3期目続投を目指す習近平国家主席にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうです。中国経済の突然の減速の詳細については、他のメディアをあたってください。

ここでは、中国経済の急減速、に対してなぜ何の対策も打とうとしないのか、その理由について掲載します。

ただ、中国が何もしていないということはなく、現在金融緩和を実施しています。ところが、中国の銀行システムには十分過ぎるほどの流動性があるものの、借り入れ需要が低調なままで、銀行間の翌日物レポ金利は昨年1月以来の水準まで低下しています。

翌日物レポ金利は27日に1%割れ。今月に入り94ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下しており、中国人民銀行(中央銀行)が供給している流動性の多くが市中銀行に滞留していることを示唆しています。

中国当局は景気てこ入れを図るのですが、直面する難しさが浮き彫りとなっています。新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策や住宅危機の拡大で資金需要は低調なままで、潤沢な流動性が需要喚起につながっていないのです。


さらには、低水準の資金調達コストを利用して銀行がレバレッジ増や国債・政策銀行債への投資を進めている兆しもあります。

現在中国ではは過剰な資金が実体経済に行き渡るのではなく、金融システムに積み上がっているようです。金融緩和で需要を押し上げることができない「流動性のわな」のリスクが高まりつつあり、コロナ感染が各地で見つかる中、7月の借り入れ需要は前月から鈍化したもようです。

さらに、中国河南省の省都・鄭州市で10日、不正流用事件のため、預金の引き出しを停止した地元銀行の預金者約3000人が集団抗議を行い、警官隊と衝突しました。日本では考えられないような異常事態です。

日本等の変動為替相場で、資本の移動が自由な国であれば、流動性の罠に陥り、名目金利が限界まで引き下げられなくなっても、マネーの量的拡大によって「いつかはインフレになる」と民間が予想することになります。それを利用して需要を創出することができます。

しかし、現状の中国はなかなかそうはいかないようです。昨日のブログに掲載したとおり、中国は国際金融のトリレンマにより独立した金融政策ができない状況に陥っています。

中国は、2016年頃、景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、すぐに資本規制に乗り出していました。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからもこれを維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。「自由な資本移動」を捨てるとは、中国から海外への投資や、海外からの中国への投資をさせないということです。中国は資本移動のある程度の規制をしてはいますが、それを完璧に捨て去るようなことはとてもできないでしょう。
国際金融のトリレンマ


変動相場制に移行すれば、元はかなり安くなることが予想されます。おそらく、中国はこれかも、過去のようにその都度弥縫策を講じて何とかしようとするでしょう。結局現状維持をするでしょうから、これからも独立した金融政策ができないことになります。

そうなると、上で示した、日本等の変動為替相場で、資本の移動が自由な国であれば、流動性の罠に陥り、名目金利が限界まで引き下げられなくなっても、マネーの量的拡大によって「いつかはインフレになる」と民間が予想することになり、それを利用して需要を創出することができますが、中国にはできないということになります。

「流動性の罠」にはまった現在、これを解消しようとして金融緩和をしても現状では効き目がなく、かといって金融緩和を継続し続けると、「国際金融のトリレンマ」によって、資本の海外逃避や、不況下のインフレ(スタグフレーション)が起こったりで、何らかの不都合が起こるため、それもできません。

今後、何かを根本的に変えないと、中国経済は低迷し続けることになります。少しうがった見方かもしれませんが、中国政府はすでにこのことに気付いているため、それをカモフラージュするため、「ゼロコロナ」政策に固執しているようにみせかけ、経済の落ち込みは主にこれによものとみせかけ、時間稼ぎをしているのかもしれません。

ただ、いくら時間稼ぎをしたとしても、何かを根本的に変えないと、中国経済は今後成長する見込みはなさそうです。

この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面しています。国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、経済は急減速し回復の見込みもなく、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進んでいます。

このような、情勢は第20回党大会で異例の3期目を迎えるであろう習近平総書記に、さまざまな試練を突き付けています。


巨額貸し倒れリスクに怯える中国、これが「第二のスリランカ候補国リスト」だ―【私の論評】中国は民主化しなければ、閉塞感に苛まされるだけになる(゚д゚)!

「一帯一路」に〝亀裂〟参加国が続々反旗 スリランカが債務不履行、各国が借金漬けに 親ロシア、東欧地域も戦略失敗で高まる反中感情―【私の論評】自国民一人ひとりを豊かにできない中国が「一帯一路」を成功させる見込みはない(゚д゚)!

米国の台湾への「戦略的明晰さ」と中国の焦り―【私の論評】中国が台湾を武力で威嚇すれば、1998年の台湾海峡危機のように、なすすべもなく後退するしかなくなる(゚д゚)!

中国はウクライナ戦争で台湾戦略を変化させるのか―【私の論評】米軍による台湾防衛は実は一般に考えられている程難しくはないが、迅速に実行すべき(゚д゚)!

2022年7月29日金曜日

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」外交―【私の論評】戦後にウクライナが EUに加入し、急速な経済発展を遂げれば、途上国も「事なかれ」主義ではいられなくなる(゚д゚)!

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」外交

岡崎研究所

 ロシアによるウクライナ侵略を巡る国連緊急特別総会では、141カ国がロシア非難決議に賛成し、棄権した国の中にもロシアの行為を認めない発言をした国が多いが、対ロシア制裁に参加している国は40カ国強に過ぎず、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国は、ほとんど参加していない。


 その背景には、貿易や武器供与等のロシア依存、ソ連時代からの伝統的な友好関係、自国が関係する紛争について安保理でロシアに借りのある国々、欧米諸国に対する一般的な反発、或いは単に自国と関係のない紛争に巻き込まれたくないとの事なかれ主義など、さまざまな事情がある。

 Foreign Policy誌のコラムニスト、ジェイムス・トラウブ7月9日付けの論説‘Cold War 2.0 Is Ushering In Nonalignment 2.0’は、このような途上国がウクライナ問題で西側とロシアの間で中立の立場をとるのは、それ以前の米中覇権争いにおいて、既に醸成されていた超大国の間でいずれかの側に付くような選択を強いられたくないとの主張が結晶化したもので、新たな非同盟運動とも言える、と分析している。

 その背景には、西側諸国への批判と自国の利益を守るための実利的、方法論的判断基準があり、伝統的な非同盟運動がイデオロギーに基づいていたこととは異なっている。従って、ウクライナ戦争を民主主義と独裁主義の対立と位置付けるバイデン外交は、これらの途上国の支持を得られず、むしろ亀裂が深まっているのは、北と南の関係であると指摘する。

 しかし、非同盟運動は現在でも存在しており、現在はウガンダが議長国で2023年までには首脳会議が開催される予定である。非同盟運動の平和10原則の第1が基本的人権と国連憲章の趣旨と原則の尊重であり、第2が全ての国の主権と領土保全の尊重であるので、ウクライナ戦争での中立的立場とは相いれないはずである。

 非同盟運動はこの平和10原則と不可分のはずなので、最近の非同盟諸国の脱イデオロギー的な中立の傾向を第2次非同盟運動と呼ぶことにはやや抵抗感を覚え、むしろ非同盟運動の変質というべきであろう。

 バイデンの価値観外交とウクライナ戦争でロシアを敗退させるという外交目的の間では矛盾が生じ得る。すなわち、途上国には、民主的とは言えない国が多いのは現実であり、内政不干渉は非同盟運動のもう一つの重要原則でもあるので、米国による突出した民主化の圧力はこれらの国をロシア側に追いやってしまうことにもなりかねない。民主化促進は、国連や地域的国際機関或いは利害関係国との協調で取り組むといったバランス感覚が必要ではなかろうか。
経済は中国、安保は米国

 途上国は、経済的利益では中国を重視するが、安全保障の面では米国を頼りにしている国も多い。新冷戦構造において、これらの国々が中国を支持する側に付くかどうか注目される。

 この点につきトラウブは、「中国の一帯一路政策の背景には、経済面以外に、台湾有事の際に国連で非難決議が採択されないよう、インフラへの資金供給と引き換えに核心的利益の相互支持を取り付けるといった政治的意図がある。新冷戦構造が深刻化すれば、南の国々は、米中いずれの立場にもくみしないという中立原則をより重視することとなり、中国の思惑通りに行かない可能性がある」と分析する。しかし、そうなるかは、それぞれの国が置かれている状況にもよるので、そう単純な問題ではないと思われる。

【私の論評】戦後にウクライナが EUに加入して、急速な経済発展を遂げれば、途上国も「事なかれ」主義ではいられなくなる(゚д゚)!

上の記事では、米国による突出した民主化の圧力ということを強調していますが、民主化というと単なる理想主義と考えられている節がありますが、それは完璧な間違いです。実は、民主化は経済発展には欠かせないのです。

それは下の高橋洋一氏が作成したグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


中露の一人あたりのGDPは10000ドル強にすぎません。これは、韓国はもとより、台湾や、バルト三国よりもかなり低いです。

なぜ、このようなことになってしまうかといえば、先進国においては民主化を進めた結果、多く中間層を輩出し、これらが自由に社会経済活動を行い社会のありとあらゆるところでイノベーションを起こし、富を生み出すことになるのですが、民主化が進んでいない中露などでは、政府などか大規模な投資をしてイノベーションを行ったにしても、西欧諸国のような大規模で、星の数ほどのイノベーションにはなりえず、結果として経済が発展しないのです。

民主化しない国は、産油国などのほんの一部の例外を除いて、多くの途上国では政府が掛け声をかけて、投資をして様々な産業振興策を行えば、ある程度経済発展します。しかし、一人あたりのGDP が 10000万ドル前後になると、それ以上は経済が伸びないのです。

ロシア現在その状態にあります。中国は、数年前までは、経済発展してきたようですが(中国の出す経済統計はデララメなのでこうとしか言いようがない)ですが、一人あたりGDPは10000ドルを超えたあたりから足踏み状態です。

これは厳然たる事実です。民主化は、経済発展には欠かせないのです。西欧諸国はある時点で国内の民主化をして、経済を発展させ、国を富ませ、軍隊を強化することができ、現在に至っています。

さらに、一帯一路が頓挫しそうな状況であることも明らかになりつつあります。

世界銀行のデータによれば、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じています。中国の国有銀行はすでに成長のための資金提供者から債務の回収者へと転じている可能性が大きいです。

これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
スリランカが「破産」宣言“燃料輸入”プーチン氏に支援要請―【私の論評】スリランカ危機の背景にある、一帯一路の終焉が世界にもたらす危機(゚д゚)!
スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領
セバスチャン・ホーン、カーメン・ラインハート、クリストフ・トレベシュは、Centre for Economic Policy Researchのオピニオンサイト、VoxEU.orgに寄稿した論考で、一帯一路に代表される中国の海外投資ブームが、ロシアとウクライナの戦争により深刻な障害にぶつかるだろうと述べています。

その根拠となるのは、中国の政府系金融機関がロシアとウクライナ、およびベラルーシに対して行っている融資額の大きさです。ホーンらによれば、中国の国有銀行は2000年以降、ロシアに対しエネルギー関連の国有企業を中心に累積1250億ドル以上、融資してきました。

中国はまた、ウクライナに対しても主に農業とインフラストラクチャー分野のプロジェクトを中心に70億ドル程度、さらに、ベラルーシに対しても80億ドル程度、融資してきました。この3カ国を合わせると、過去20年間の中国の海外向け融資の20%近くを占めるといいます。

もともと、近年急激に増加しつつある中国の対新興国への資金貸付は、どのような基準に基づいて行われているのかが明確ではなく、債務不履行などのリスクを生じやすいものであることが指摘されてきました。スリランカはまさにその一つの例です。ホーンらは、中国の対外貸付のうち、債務危機にある借入国に対する比率は10年の約5%から現在では60%にまで増加したと指摘しています。

世界銀行のデータによれば、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じています。ホーンらはこのデータをもって、中国の国有銀行はすでに成長のための資金提供者から債務の回収者へと転じている可能性があるとしています。ウクライナ危機およびその後の経済制裁によってロシアおよびその同盟国の経済が直面することになったリスクは、その傾向をさらに増幅させることになるでしょう。

中国の政府系金融機関は、今後ロシアなどに対する融資が不良債権化するリスクを、よりリスクの高い債務国への新規融資の停止あるいは債権回収によって埋め合わせるかもしれないです。このことが持つインパクトは、おそらくこれまで西側諸国によって喧伝されてきた「一帯一路が『債務の罠』をもたらす」という問題よりもはるかに大きなものになると考えられます。

さらに、 中国にもともとどうしようもない欠陥があります。それについても、以前このブログで述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本の解き方】中国経済もはや重篤なのか 食い止められない資本流失―【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!

これは2016年の記事です。 この頃、中国政府は、景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、今度は資本規制に乗り出していました。

なぜこのようなことになるかについては、もともと「国際金融のトリレンマ」という原則があります。以下にその部分を引用します。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからも維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。

以下に国際金融のトリレンマの図と若干の説明を掲載します。

  • ある国はこの3つの「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができます。もしある国が a の位置を選択し、「自由な資本移動」と「固定相場制」を導入するのであれば、金融政策の独立性は失われます。

  • 実際の例としては欧州連合ユーロ圏が挙げられます。もしユーロを受容し自国通貨を放棄すれば、ユーロ圏内で為替を固定することになります。また、域内での自由な資本移動も認められています。しかし、金融政策はすべて欧州中央銀行に一任することになります。
中国が、固定相場制を堅持し、自由な資本移動も堅持したとしたら、何がおこるかといえば、それは日本などをはじめとする、外国の金融政策に左右され「独立した金融政策」を実行できなくなるということです。

実際にそれはもうすでに発生していました。日本が2013年の4月から、金融緩和に転じてから、円安状況になり、それまで円高の状況とは異なり、中国経済にとっては、独立した金融政策が脅かされる事態となりました。

それまでの、中国の経済発展を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものでした。

慢性的な円高に苦しんでいた日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していました。日本国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。

日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けていた」のです。まさに、日本経済はこれによって、中国に振り回されていたのです。

しかし、2013年の4月から、日銀が金融緩和に転じたため、この構造は崩れ、今度は中国が日本の金融政策に振り回されるようになり、「独立した金融政策」を維持することが困難になってきたのです。 

脅威の経済発展をした頃の中国の経済運営は、単純でやりやすいものでした。景気が加熱して、超インフレになれば、金融引締、緊縮財政を行い、素早くインフレから脱却し、抑制状況になれば、今度は金融緩和して、積極財政をするという具合で、これを交互に繰り返し、中国は驚異の経済発展をしました。

しかし、日銀が2013年4月からまともな金融政策に展示、デフレを克服のために、金融緩和をはじめてから、中国金融は大きな問題を抱えるようになったのです。

先にもあげたように、人民元を切り下げる(金融引き締め)をすると、資本流出が加速したため、その後すぐに資本規制に乗り出すという有様です。

以前の中国であれば、国内で大規模投資するなら、元を大量にすればそれですんだものが、現在ではそのようなことをすれば、すぐに超インフレになったり、資本流出が起こるなどのことが起こるようになったのです。

さらに、過去には国内のインフラ投資を熱心に行ってきたため、それが一巡して、国内に優良な投資案件がなくなってしまったのです。だからこそ、中国は「一帯一路」に望みをかけて、海外投資によって発展する道を選んだのですが、これも国際金融のトリレンマにより、ドル資本流出が激化するなどのことがおこり、うまくはいかなくなったのです。

だからこそ、中国から新興国の政府部門への資金の純移転は、16年をピークに減少し、19年と20年にはマイナスに転じるなどのことが起こっているのです。

中国を救う道はあります。それは、日本が再び金融引締に転じることです。このような馬鹿なことはすべきではないと思いますが、親中派の林外務大臣が存在する岸田政権においては、また金融引締に転じて、中国を有利にする道を歩むことになるかもしれません。

これは、来年の4月、現在の黒田日銀総裁の任期が終了し、新たな日銀総裁が誰になるかではっきりするでしょう。いわゆる緊縮派の総裁になれば、中国は大喜びで、また海外投資を始めるでしょう。ただ、それを米国が座視するとも思えません。そのようになれば、米国は何らかの方法で中国のみならず、日本に対して報復に打って出るでしょう。

上の記事では、バイデン氏による民主化への圧力を、おせっかいのように批判しているところがありますが、そんなことはないと思います。

突然並外れた産油国になるなどのことでも起こらない限り、途上国は民主化しない限り、経済発展する見込みはありません。

途上国が民主化を嫌がるのは、その国の統治者とそれにつながる者たちの利権を離したくないという単純な理由でしょう。民主化をすれば、自国は豊かになるのは明らかですが、そうしたとしても、利権を手放せば、自分たちには全くメリットはないと考えているのでしょう。

そのような連中からすれば、中国は投資すれば良いだけの存在てあり、投資ができなくなった中国には何の関心もないでしょう。米国についても、投資はできそうだが、投資と引き換えに、民主化を強制されれば、自分たちの利権を失うということで、これにもあまり魅力はないのでしょう。

そうして、こうした途上国の多くの国民は、貧乏で、日々暮らすのに精一杯であり、民主化への声を上げることなど、思いもよらないというのが現実でしょう。一部の変わり者が、その声を上げることもあるでしょうが、変わり者が、多くの国民の声を代表するようにはならないというのが現実です。

結局、統治者とそれに連なる者たちの、利権が脅かされない限り、彼らは現在の投資しない中国にも米国にも無関心でありつづけ、これが続く限り、途上国は途上国のままであり続けるでしょう。

ただ、こうしたことを打ち破る可能性もでできました。それは、ウクライナの経済発展です。世界銀行は4月10日、ウクライナの2022年の経済成長率見通しをマイナス45.1%と発表しました。

大幅な落ち込みの要因は、鉄道や橋、港、道路などのインフラ設備が破壊されたことによって経済活動の継続が不可能になったことや、貿易の停止、多くの国民が隣国に避難したことや収入喪失による家計消費の急激な下落など。世界銀行によると、軍事侵攻によってウクライナ企業の約半数が閉鎖に追い込まれ、残りの半数も事業を縮小せざるを得ないといいます。

確かに、直近では経済が落ち込むのが目に見えていますが、戦争が終了すれば、復興がはじまります。また、ウクライナはEUに入ることを宣言し、EUもその前提で交渉をすすめています。そうして、なんとロシアのプーチンは、これに反対していません。

しかし、これは後にロシアを後悔させることになるかもしれません。なぜなら、人口が比較的に多く、軍事産業や宇宙産業、最近ではIT産業などもある、産業基盤がある程度整ったウクライナがEU諸国並に民主化されれば、急激に経済成長する可能性があるからです。

ウクライナが経済成長し、ロシア経済と同等もしくはそれ以上になれば、中露に対しては大きな牽制になります。何しろ、武力侵攻すると、武力侵攻された側が、一時的には疲弊しても、民主化の道を選べば、経済発展することが明るみにされるからです。

ロシアの隣にロシアと同程度の経済力を有するウクライナができあがれば、安全保障上にも良いことですし、途上国の国民に対しても強力なメッセージなります。いわゆる大国にいつも脅かされるような貧乏な国であっても、民主化すれば、その大国に経済的に対抗できるような国に生まれ変わることができるかもしれないという希望が生まれるからです。これは、バイデンの価値観外交よりもはるかにインパクトがあります。

米中新冷戦下で見える途上国の「事なかれ」主義にも大きな影響を与えることになるでしょう。

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ロシアの欧州逆制裁とプーチンの思惑―【私の論評】ウクライナを経済発展させることが、中露への強い牽制とともに途上国への強力なメッセージとなる(゚д゚)!

[スキャナー]ロシア産業界にじわり打撃、制裁で機械も原材料も不足…「一番怖いのは機械の故障」―【私の論評】対露経済制裁は確実に効いており、3年後くらいにはソ連崩壊時並になるのは間違いない(゚д゚)!

「一帯一路」に〝亀裂〟参加国が続々反旗 スリランカが債務不履行、各国が借金漬けに 親ロシア、東欧地域も戦略失敗で高まる反中感情―【私の論評】自国民一人ひとりを豊かにできない中国が「一帯一路」を成功させる見込みはない(゚д゚)!

〝宇宙大国〟崩壊の危機 ロシア、ISS計画から離脱 独自のステーション建設優先「西側の制裁が相当効いている…本格的な衰退見えてきた」識者―【私の論評】ソ連崩壊時のように現在のロシア連邦は、宇宙開発どころではなくなった(゚д゚)!

ロシア1~3月GDP 去年同期比+5.4% “巨額軍事費で経済浮揚”―【私の論評】第二次世界大戦中の経済成長でも示された、 大規模な戦争でGDPが伸びるからくり

ロシア1~3月GDP 去年同期比+5.4% “巨額軍事費で経済浮揚” まとめ ロシアの今年1月から3月までのGDP伸び率が去年の同期比で5.4%と発表された。 これは4期連続のプラス成長で、経済好調の兆しとされる。 専門家は、軍事費の増加が経済を一時的に押し上げていると分析。 I...