2022年10月18日火曜日

姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏―【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!

姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏

中国共産党大会の活動報告で実績を強調した習氏=16日、北京の人民大会堂

 習近平国家主席率いる中国の経済に異変が起きているのか。18日に予定していた7~9月期の国内総生産(GDP)や、それに伴う工業生産や消費など経済指標の発表が延期となったのだ。習氏は、開会中の第20回共産党大会で「異例の3期目」を確実にし、貧困脱却を果たしたなどと自画自賛したが、「ゼロコロナ」政策の長期化は、中国経済の停滞を招いているとの見方は強い。実際、4~6月期のGDPは急減速した。「覇権拡大」や「人権弾圧」を理由とした欧米諸国の制裁も続いている。識者からは、習氏の権威を傷つけないよう、党大会中の発表を避けたとの見方が出ている。

 中国で、異例の出来事が頻発している。

 国家統計局は17日、翌日に予定していた「7~9月期のGDP」の発表を延期すると発表した。新たな日程も示さなかった。2017年の前回の党大会の際には、統計局は開幕翌日にGDPを発表していた。

 GDP発表に伴う、「工業生産や消費などの経済指標」や、19日に発表予定だった「主要70都市の新築住宅価格指数」も延期となる。国の主要統計の公表が、突如延期となるとは尋常ではない。

 それだけではない。中国税関総署も14日に予定していた「9月の貿易統計」の公表を事前通知もなく見送っている。

 GDP公表延期について、「統計局の仕事上の都合」と説明されているが、相次ぐ異常事態の背景として、党大会の最中に、習政権の威信を傷つけかねない数値の公表を見送った可能性がありそうだ。

 実際、習政権が推進してきた、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策は、中国経済の停滞を招いている。

 国家統計局が7月に発表した「4~6月期のGDP」は前年同期比0・4%増と急減速した。上海市のロックダウン(都市封鎖)など、強権的な感染対策が景気悪化を引き起こしたとみられる。

 現に、4~6月期、中国の工業生産は3・4%増で、1~3月(6・5%増)から鈍化した。投資動向を示す固定資産投資は6・1%増で、上昇率は1~3月(9・3%増)から縮小。規制強化の影響が残る不動産開発投資は5・4%減だった。

 習政権が強力に推し進める「ゼロコロナ」政策に対しては、国民の不満が形となって現れている。北京市内の高架橋に今月13日、習政権を批判する横断幕が掲げられ、「PCR検査は不要、食事が必要」というメッセージが記されていた。

 ところが、習氏は16日の中央委員会活動報告(政治報告)で、総書記就任後の2期10年で貧困脱却などを果たしたとして、「中華民族発展史に輝く歴史的勝利」を収めたとアピールした。批判を集める「ゼロコロナ政策」についても、「感染症対策と経済、社会発展の両立において重要で前向きな成果を収めた」と主張した。

 こうした状況での経済統計公表の見送りを、識者はどう見るのか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「経済状況がかなり悪くなっているのだろう。そこそこ悪い程度なら、延期せずに成長率を1、2%上乗せして発表したはずだ。粉飾できないほどの数字になっているのではないか。中国経済が落ち込んだ直接の理由は『ゼロコロナ』政策で、誰から見ても経済の足を引っ張っている。習氏が党大会で自画自賛したから、発表したら習氏の顔に泥を塗ることになる。GDP発表の延期は政治的な意味合いが大きい」と話す。

 ゼロコロナ対策に加え、不動産バブル崩壊の影響を指摘する声もある。

 評論家の宮崎正弘氏は「7~9月期のGDPは、各工業生産地がロックダウンした時期で、一番深刻な数字が出るとみられている。さらに、不動産不況に地方での銀行取り付け騒ぎもあって、中国経済は何もいいことはない。それにもかかわらず、まだ『ゼロコロナ』政策をやっている。悪循環が続いており、経済状況が相当深刻ということが発表を遅らせた主な原因だろう。党大会が終わって、新人事を華々しく発表する陰で、こっそりとGDPを発表するのではないか」と指摘した。

【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!

中国の経済の停滞の原因は、ゼロコロナ、不動産バブルだけではありません。これだけであれば、この2つの不況原因を取り除けは、中国経済は再び発展することになりますが、そうではないのです。

この他に2つの構造的な要因があります。一つは、国際金融のトリレンマによるものであり、もう一つは、ごく最近新たに付け加わった、ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」です。
まずは、国際金融のトリレンマによる構造的要因です。この理論によれば、独立した国内金融政策、安定した為替相場(固定為替相場制)、 自由な資本移動、の三つは同時に実現できません。実際、日米を含め殆どの国は上記三 つのいずれかを放棄しています。

これに対して中国は、金利・為替・資本移動の自由化を極 めて漸進的に進める過程において、国内金融政策の自由度を優先しつつ、状況に応じ て為替と資本移動に関る規制の強弱を調整することで、海外の資本・技術を取り入れて 成長し、グローバルな通貨危機等の波及を阻止できました。 

しかし、資本移動を段階的に自由化した結果、最近では人民元相場と内外金利差の相 互影響が強まっています。これにより、国内金融政策が制約を受けたり、資本移動の自由 化が一部後退するなど、三兎を追う政策運営は難しくなりつつあります。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられません。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルが膨らむ恐れがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになります。

ただ、はっきりいえば、段階的にでも変動相場制にするか、自由な資本移動を禁止して、すべての国際金融の流れを政府が一元的に管理するかいずれかを選択しなければならないです。

前者にすれば、中国による独立した金融政策、資本自由な移動はできます。

後者にすれば、自由な資本移動はできなくなるものの、固定相場制、独立した金融政策は実施できます。

後者にすれば、中国はほぼ国際金融から切り離されることになります。ほとんど資本移動がなかった一昔前の中国に戻るしかなくなります。ただ、これでは中国の経済発展は望めません。

中国がこれからも経済発展をするつもりなら、やはり日本をはじめとする先進国のほとんどがそうしているように、変動相場制に移行するしかないのです。すぐに移行するのが無理でも、少しずつそちらのほうに舵を切るしかないのです。

このようなことは、まともなエコノミスト等なら誰でも知っていることです。これを言わない識者は国際金融に関しては、似非識者とみて間違いないです。

さて、もう一つの構造的要因は、ジョー・バイデン米政権が打ち出した「半導体技術の対中国禁輸」です。バイデン米政権は7日、半導体製造装置の対中輸出規制の適用対象を大幅に拡大する一連の包括的な措置を発表しました。これには米国の半導体製造装置を使って世界各地で製造された特定の半導体チップを中国が入手できないようにする措置が含まれました。

このバイデンの公表は、明らかに中国の党大会の直前のタイミングで、意図して意識して出したものでしょう。これによってさらに、習近平政権を追い詰めることを意図しているものみられます。

この措置の中国に対する破壊的な悪影響については、以前このブログに述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずはこの記事の元記事から引用します。
 米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限した。

 米国は以前から、先端の半導体分野で中国包囲網を強化してきた。

 半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示される。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていた。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられる。

 一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。
以下にこの記事の【私の論評】から引用します。
今回の制裁は中国半導体産業の終焉であり、トランプ政権下の恫喝的ながらも、致命傷ではなかったようなやり方とは違う致命的なものです。

生き残る中国企業がいるとすれば最後まで制裁を受けなかった企業だけであり、最後まで制裁を受けた企業は死亡率100%です。

今回の制裁の是非について、中国の半導体製造に関与していた米国人やグリーンカードを保持者のほとんどは米国に戻るか移住して、11月8日の米中間選挙には、自分たちの足で投票所に出向き投票することになるでしょう。これが民主党にとって有利に働くかどうかは、未知数です。今後の推移を見極める必要があるでしょう。 

中国はもはや29nm以下の半導体製造能力を持たず、リソグラフィ(写真の現像技術を応用して作られた微細パターン作成技術のこと)に関する全ての技術を完全に失いました。
この記事では、今後中国が5G対応の新型スマホ等を開発するとすれば、一昔前の日本のショルダーホンのようなものに、iPadのモニタースクリーンのようなものなるのではないかと予想しました。過去の4Gは許容されるようですから、実際4Gまでの技術で5Gのスマホを製造した場合、半導体の集積度が全く異なりますから、実際にそのようなことになってしまいます。

5G技術の最も大きな特徴は、「超高速・超低遅延・多数同時接続」です。 「超高速」は、現在の第4世代の移動通信技術であるLTE(Long Term Evolution)との最も大きな違いです。 5Gは理論上、LTEより最大20倍速い20Gbpsのスピードを実現できるとされています。

今後実現するARやVRのようなコンテンツを楽しむには、より速い速度で膨大なデータを転送する必要があります。

「超低遅延」は、途切れのないサービスを意味します。 端末から基地局までの通信にかかる時間を大幅に短縮し、リアルタイムにより近づきます。 そのため、超低遅延の実現は安全な自動運転を可能にするための必須条件となります。

「多数同時接続」は、同時に接続できるデバイス数が多くなることを意味します。 5G時代には、1㎢以内で同時に接続できるモノのインターネットとスマートデバイスが4Gの10倍の100万程度まで増えると予想されています。 これは、ワイヤレス(Wireless)なスマートシティが可能になることを意味します。

となると4Gの技術で、5Gの技術を実現するとなると、素人考えでもとてつもないことになることは十分に予想できます。

ただこれは、あまり現実的ではないですから、中国においては、一般の人が使うスマホは既存の4Gタイプのようなものになると考えられます。

ただ、軍事的な目的で用いられるようなものは、4Gの技術で5Gを実現するために、ショルダーホンのようなものが用いられることになるかもしれません。

ただ、一般の人のコンピュータやスマホなどはそれで対処できるかもしれませんが、新しい5G 対応の半導体は手に入れられなくなるので、これから中国が新しい技術に対応するとすれば、かなり大きな半導体を開発して新たなものに入れ、古いタイプの取り替えには、外付けで巨大な箱の中に大きな半導体を入れたボックスなどで対応するということになるかもしれません。

ただ、そのようなことが本当に可能かどうかは、疑問ではあります。

中国は5Gに関する特許を多数取得しているともいわれますが、5G対応の半導体を入手できなけば、このようなことになってしまうのです。

イギリスでは、エリザベス朝の時代にすでにコンピュータ理論の基礎的な理論は出来上がっていたのですが、それを実現するための素材や技術がなかったので、コンピュータを実現することはありませんでした。コンピュータの実現は、1946年のENIACの登場等まで待たなければならなかったのです。

それと似たようなことが、今後の中国で起こるのです。それでも、中国は独自の半導体製造技術を開発するかもしれません。しかし、それには10年以上の年月を要することになるでしょう。

ただ、それを実現したとしても、半導体の開発速度はかなり速いですから、日本を始めとする先進国の技術は、さらに異なる次元(たとえば5Gから6G)に移っていることでしょう。

中国経済は以上2つの構造的な要因で、発展する見込みはなくなりました。そうして、これはあまりにもはっきりしていて、疑いの余地はありません。

私自身は、習近平は以上のことを糊塗すために、あえてゼロコロナ政策を推進しているのではないかとさえ思っています。

そもそも、現在中国のコロナ政策はダイナミック・ゼロ・コロナ政策とも呼ばれています。「ダイナミック・ゼロコロナ」政策の「ゼロ」は、国内の感染者を常にゼロに抑えるという意味ではなく、「ある特定の地域において感染が起きたら、小規模なうちに徹底的に抑える」ことを指します。そうしていれば、コロナによる「社会的な影響」はゼロにできるということです。

しかし、これは感染力の強いオミクロン株が出てきてからは、明らかに通用しない政策だと考えられます。


にも関わらず、実行するのはなぜかといえば、これまでの徹底的な対策・指導による「成功体験」が強いからとか、中国の医療体制が脆弱であるからともされていますが、ここまで固執するのには他にも原因があるとみて良さそうです。

上で述べてきたように、中国の経済の停滞は、構造的なものではなく、コロナや不動産バブルのせいであると見せかけ、この停滞は構造的なものであることを隠すためなのではないかという疑念は払拭できなくなってきました。

習近平としては、この経済の構造的な発展阻害要因を隠蔽する腹であると考えるのが妥当でしょう。だからこそ、経済統計も公表しないのでしょう。それによって、「異例の3期目」を実現するだけでなく、権力基盤を固めたいのでしょう。

権力基盤が固まるまでは、ゼロコロナ政策を維持し、経済停滞をそのせいにして、国民を懐柔する腹積もりなのではないでしょうか。

来年になって、ゼロコロナ政策が解除されれば、習近平の権力基盤は固まったとみるべきでしょう。そうでなければ、基盤が固まっていないとみるべきです。ただ、いつまでも、ゼロコロナ政策を維持することはできないでしょう。少なくとも来年の後半には、いずれにしても、この政策は放棄せざるを得なくなるでしょう。

ただ、中国共産党指導部はずっと前から習氏をナンバーワンの座に維持すると決めています。習氏とその一派は、彼を守ってすべての弱みや失敗を下級官吏のせいにするためになら、どんな理由や言い訳でも見つけることでしょう。

ただし、中国共産党が何を取り繕うと、習近平が何を言おうと、中国経済はこれから先に上げた2つの構造的要因で発展しなくなることは確かです。

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2022年10月17日月曜日

「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」 玉川徹氏「虚偽・政治的意図」発言問題 「日本のジャーナリズムの危機」 自民・和田参院議員に聞く―【私の論評】コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長はずっと以前に辞任すべきだった(゚д゚)!

「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」 玉川徹氏「虚偽・政治的意図」発言問題 「日本のジャーナリズムの危機」 自民・和田参院議員に聞く

〝玉川発言〟の責任を問われるテレビ朝日

 テレビ朝日系の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーターを務める同社社員の玉川徹氏の「虚偽・政治的意図」発言問題が収まらない。出勤停止中の玉川氏は19日にも復帰予定だが、放送法第4条違反の疑いで、総務省やBPO(放送倫理・番組向上機構)に徹底調査を求める動きが出ている。テレビ放送やジャーナリズムに詳しい、元NHKアナウンサーで自民党の和田政宗参院議員に聞いた。

 「放送やジャーナリズムの信頼性や根幹を揺るがす事態だ。テレビ朝日は責任の重大性を認識していないのではないか」


 和田氏は冒頭、玉川氏の問題をこう語った。

 玉川氏は、安倍晋三元首相の「国葬(国葬儀)」翌日(9月28日)の放送で、菅義偉前首相の弔辞について、「僕は演出側の人間ですから、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういう風につくりますよ。当然ながら」「政治的意図がにおわないように制作者としては考えますよ。当然これ(広告大手の)電通入ってますからね」と語った。

 テレビ朝日は今月4日、「虚偽発言」の部分について「出勤停止10日間」の懲戒処分とした。

 和田氏は「丁寧に事実を取材して、裏付けを重ねて報じるのは報道のイロハのイだ。少し取材すれば電通が関わっていないことは確認できる。社員コメンテーターが番組で堂々とウソを拡散した。『事実をまげない』という放送法第4条違反に該当する。断片的な思い込みで発言したなら『ジャーナリスト失格』であり、自ら職を辞する責任がある」と断じる。

 「政治的意図」を持って番組制作をしてきた疑惑については、自民党内にも「令和の椿事件」と問題視する声がある。放送行政を所管する総務省にも多数の意見が寄せられている。

 和田氏は「その点(=『政治的意図』発言)の事実関係を知りたいが、テレビ朝日社長の4日の記者会見では、組織として明確な説明がなかった。社長は再発防止に取り組むとしているが、トップの社長が辞任すべき事態だ」と語る。

 日本のテレビ報道にも一因がありそうだ。

 和田氏は「米国の大手テレビ局で報道番組を仕切るキャスターは、特ダネや深層リポートなどで実績を認められた人物だ。専門家のコメンテーターと、厳格に役割分担して正確な報道に徹する。一方、日本では専門外のコメンテーターが取材もしないでコメントする。玉川問題は、日本のジャーナリズムの危機だ」と語っている。



【放送法第4条】

①公安及び善良な風俗を害しないこと

②政治的に公平であること

③報道は事実をまげないですること

④意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

【私の論評】コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長はずっと以前に辞任すべきだった(゚д゚)!

玉川徹

玉川徹が、事実に反する発言を行って訂正・謝罪したのはこれが初めてではありません。小さなことだと無数と言ってよいくらいありますし、謝罪もしなかったこともあります。

大きなところでは、やはりコロナ関連のコメントでしょう。2020年4月の放送では、新型コロナをめぐって「東京都は土日に検査を行っていない」と発言しましたが、後日の放送で「土日に関しても行政の検査機関は休んでいなかったというふうなことも、わかりました」と訂正しまし。

22年6月の放送では「帯状疱疹のワクチンが保険適用される」と発言し、「保険適用はされません。ただ自治体によって費用を助成するところもある」と訂正し、「補助」を「保険適用」と勘違いしていたことを謝罪したこともありました。

玉川はワイドショーのディレクター職などが長く、記者として報道の現場に携わった経験がないためか、以前から単なる憶測に基づく発言が目立っていたのは事実です。

疑問なのは、玉川徹氏の動機です。多少の理性があれば、自分の言説が多分に一面的なものであり、ミスリーディングなものであることには気が付くに違いないです。

要は八百長であり、確信犯です。

視聴率はイコール広告費・利益であり、その差は莫大です。確かに身内の論理で言えば、玉川氏はヒーローなのかもしれません。番組が終われば「今日もブチかまししましたね」とゴマをするスタッフとか、「おいおい飛ばし過ぎるなよ」とまんざらでもない顔でたしなめる風情の幹部社員から声がかかるのかもしれないです。

そんな中、こと玉川氏で言えばモチベーションは確かに利益、出世ではないかもしれず、単なる高揚感や持論をブチかます満足感ではあるのでしょう。

玉川徹ファンは、同調圧力や権力に屈せず論陣を張る体の氏を頼もしく感じたり、スカッとしたりして支持するのでしょう。

ただ玉川のあまりに一面的、短絡的な言説は、公共性の高い放送事業としては一線を超えていました。まして未曾有の国難で無用の混乱や損害を巻き起こしていました。

コロナウイルス流行以来、玉川徹は危機感を煽りに煽ってきました。ある種のテレビ的分かりやすさやカタルシスを演出してきたともいえます。

コロナ報道には、冷静さや科学的視点が重要なわけで、自分が比較的に安泰な立場だからといって、玉川に日本を混乱の巷に落とし込む権利などあるはずもありません。もっと衝撃を和らげる手段があったかもしれないのに、間違いなくこの番組や主要なワイドショーの煽りによって、多くの人は本来は諸外国に比較すれば、被害はかなり少なかったにも関わらず、かなり被害が大きと思い込まされた面は否めません。

菅政権におけるコロナワクチン接種の速度はすさまじく、日本はあっと言う間に他の先進国の接種率を上回ってしまいました。にもかかわらず、玉川などの煽りで、菅政権はコロナ対策に失敗したかのような印象操作で多くの人々を惑わしたといえます。

当時は、テレビ局を支えるスポンサー企業の事業にも深刻なダメージが及んでいる事態にも無頓着という、根本的な職業倫理に欠ける姿勢も理解に苦しむところがありました。

最後に、完璧に一線を超えていたと思われたのが、医薬品に対する軽薄なコメントをして憚らなかったことです。「こんな新薬が有望だ」とか「こんな良い薬があるんです」など、新聞やネットの記事に出ていたレベルの情報をあたかもすぐにも臨床使用できるかの勢いで語っていました。

さすがに医薬品に対して生かじりのスタンスが許されるわけはありません。万一誤った受け取られ方をすれば深刻な健康被害や後遺症につながりかねないです。

さすがに2020年8月9日の放送では、アビガンの解説に医療の専門家が登場し、田崎氏もサリドマイドの例を出して特効薬の開発が待たれながら、一方で慎重であるべき理由を述べていました(写真下)が、すでに何度もフライング発言が行われた事実を消し去るものではありませんでした。


人類的な災厄に際し、生かじりの浅はかさと自らはすべて棚にあげる特権意識で全知全能の神のごとく公共の電波で吠えまくり、あげく日本を混乱の極みに落とし込もうとなんだろうが知ったこっちゃないというのが玉川のスタンスでした。

私には、動機がなんであろうと許されざる所業とは、思えませんでした。そのような玉川が、今回のような発言をしたのは当然の帰結ともいえます。

コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長は辞任すべきでした。そうすれば、今回のような事態も生じなかったでしょう。

ここまで、酷い煽りを許容し続けてきたテレビ朝日には問題がありすぎです。まさに、和田氏が語るように、「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」ということができると思います。

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2022年10月16日日曜日

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者


 ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」が波紋を広げている。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術で第三国で製造された半導体も規制の対象で、「中国の半導体製造業の壊滅」につながりかねない厳格さだという。民生用から軍事用まで幅広く使われている半導体は、今や国家の命運を左右する「戦略物資」となっている。米国は「安全保障」や「人権弾圧」を理由としているが、日本を含む同盟・友好国も対策が急務となりそうだ。

 バイデン米大統領は、中国への半導体規制を強化した(AP)


 「米国の規制強化は、『中国の覇権拡大や先端技術力の向上、人権弾圧を許さない』という明確な意思表示だ。中国の工業生産は半導体に依存しており、『焦土化』される衝撃は極めて大きい」

 経済評論家の渡邉哲也氏は、新規制の重大性について、こう指摘した。

 米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限した。

 米国は以前から、先端の半導体分野で中国包囲網を強化してきた。

 半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示される。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていた。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられる。

 一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうだ。

 米国内では、半導体関連企業などの株価が下落している。日本の業界関係者からも「過去最大級の強烈な規制となる」との観測が浮上している。

 前出の渡邉氏は「半導体関連で、米国技術を含まない製品は皆無だ。AI(人工知能)による自動運転技術を用いた自動車、スマホ、パソコンなど、さまざまな製品に活用されている」と話す。

 新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

 渡邉氏は「米国の〝ブラックリスト〟にも注目すべきだ」と強調する。米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えだ。

 リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して許可を得る必要がある。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大された。調査に協力しないと、ELに追加されることになる。

 米商務省は、措置を強化した理由として「中国の脅威」を挙げる。中国はIT技術などを急速に発展させ、情報網を世界に急拡大させているが、最先端技術が中国の軍事力増強に直結する懸念があるのだ。さらに、新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧が深刻化するなか、ITが監視や追跡に悪用されているとも主張した。

 米国の対応に、中国外務省の毛寧副報道局長は8日の記者会見で、「科学技術をめぐる典型的な覇権主義的やり方。断固反対する」「中国企業への悪意ある封じ込めと抑圧」と猛抗議したが、米国は断行する構えだ。

日本は供給網内製化の好機

 日本はどう対応すべきなのか。

 岸田文雄政権は「経済安全保障」を最重要政策に掲げ、サプライチェーン(供給網)の内製化を重視している。米中対立による供給途絶リスクも想定し、工場や営業拠点を日本国内に回帰させる動きは加速している。半導体事業で世界基準に水をあけられていたが、世界的な大手の「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場誘致にも成功した。米国の対中規制は、日本の政策に合致しているともいえる。

 渡邉氏は「米国は、半導体に限らず、バイオ技術や、特殊素材など、他の先端分野でも同じように対中規制を広げていく可能性がある。中国が絡む生産活動は今後、極めて困難になる。米国は『台湾有事』を強く懸念し、その備えと、中国への警告を込めて規制を打ち出したのではないか。日本も対応を急ぐべきだ」と分析している。

【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米政府による半導体関連製品の対中輸出規制の影響を評価するため、米国の複数の半導体製造装置メーカーは中国の半導体大手に派遣している人員を引き揚げ、事業活動を一時停止している。事情に詳しい関係者らが明らかにしました。

米国の半導体製造装置メーカーが長江存儲科技の工場に派遣している数十人の従業員は、同工場の運営や生産能力の拡大で重要な役割を果たしています。事業活動の停止が長引けば、長江存儲科技をはじめとする中国の半導体メーカーは設備のアップグレードやメンテナンスに関する専門知識に加え、チップ開発に必要な次世代技術から切り離されることとなります。

バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

制裁の対象となる中国の半導体企業は上から下まで生産を全て拒否されることになります。

制裁の出発点は完全に遡及されあらゆる米国製品・技術の使用を排除することを保証しています。

制裁に違反した企業や個人は米国司法省によって直接逮捕です。

中国は2020年以降、韓国や台湾よりも多くの半導体製造装置を購入しています。ところが、2021年の中国の生産キャパシティは154万枚/月で、1位の韓国の221万枚/月、および、2位の台湾の202万枚/月に大きく及んでいません。

なぜこのようなことになっていたのでしょうか。論理的に考えれば、その答えは明らかです。おそらく、中国の半導体工場においては、半導体製造装置の多くが稼働していないか、または稼働していてもその稼働率が極めて低いということです。

要するに、中国の半導体メーカーは、「中国IC産業ファンド」をなどからの手厚い助成金を受け、手当たり次第に半導体製造装置を購入したのですが、それらを有効に活用することができていないのでしょう。

その結果、地域別の生産キャパシティで韓国や台湾に劣り、半導体の自給率も向上しないと思われます。カネだけあっても半導体はできないということである。

そこで、中国は米国人技術者などを雇い、半導体製造装置の稼働率を高めようとしていたのでしょうが、そこにきて、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したのです。

この意味するところをもう一度強調します。

今回の制裁は中国半導体産業の終焉であり、トランプ政権下の恫喝的ながらも、致命傷ではなかったようなやり方とは違う致命的なものです。

生き残る中国企業がいるとすれば最後まで制裁を受けなかった企業だけであり、最後まで制裁を受けた企業は死亡率100%です。

今回の制裁の是非について、中国の半導体製造に関与していた米国人やグリーンカードを保持者のほとんどは米国に戻るか移住して、11月8日の米中間選挙には、自分たちの足で投票所に出向き投票することになるでしょう。これが民主党にとって有利に働くかどうかは、未知数です。今後の推移を見極める必要があるでしょう。 

中国はもはや29nm以下の半導体製造能力を持たず、リソグラフィ(写真の現像技術を応用して作られた微細パターン作成技術のこと)に関する全ての技術を完全に失いました。

中国の次のトレンドは 大型化、重量化です。これからの中国の最新型スマホは、A4サイズの4Gスマホ 重さ3kとなるでしょう。

これだと、何のことかわからないかもしれませんが、日本にも過去に参考になるものがありました。

『ショルダーホン』です。これは重量が約3kgで、文字どおり、肩から下げて持ち運ぶことができ、自動車から離れても利用できる車外兼用型自動車電話でした。

ショルダーホンを背負って会話する女性

これは、昭和60年(1985年)にNTTから発売されたものです。昭和40年代、50年代と比べると技術面の進歩などは目ざましいものがありました。パソコンやワープロなども、パーソナルユースを意識した比較的低価格の製品などが普及しはじめ、あの登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」にも登場します。

NTTの「ショルダーホン」が発売されたのもこの年でした。4月に電電公社から民営化され、新会社となったNTTは技術面でもその先進性を打ち出していました。

もともと車外兼用型自動車電話という位置づけなので、「車載電話だけど、持って歩くこともできます」というような感覚でした。本体価格は2万6,000円と安価ですが、保証金が20万円と高いうえに、当時は通話料もかなり高かったので、まだ誰もが持てるというものではありませんでした。

無論この「ショルダーホン」は会話しかできませんでしたが、今後中国で販売される「ショルダーフォン」は、4G対応のスマートフォンと同程度のことができるものとなるでしょう。

そのため、本体部分にはiPadのような液晶のパネルがつくことになるでしょう。これは、一つの例ですが、今後航空機、船舶、いやありとあらゆる製品が大型化することになるでしょう。

中国海軍などは、文字通り「大艦巨砲の大艦隊」となるかもしれません。ただ、すぐに沈められてしまいそうです。

イギリス戦艦「ロドネイ」の主砲(1940年)

これでは、中国の台湾統一の夢は、ますます遠のきそうです。

宇宙開発は十分できると思います。なにしろ、1970年の技術で米国は人類を月に送り込んだわけですから、中国だって十分できるはずです。ただ、最先端の半導体が手に入らないので、半導体が大きくなる部分のペイロードは少なくなることになります。

それと、もうひとつ朗報があります。今後5GやAIによる監視体制などが進展すれば、さらにデーターセンターがいくつも必要になり、電力が逼迫することも予想されたのですが、そんな心配をする必要もなくなりそうです。

中国はロシアから天然ガスなども輸入できるようなので、今後中国国民は冬の燃料代高騰にも悩まされることなく、AI技術の進歩も止まるどころか後退するかもしれず、監視社会が今以上に強化されることもなく、軍事技術も急速に進歩することもなく、戦争の不安にも怯えることなく、安寧な生活を享受できるかもしれません。国民にとっては過去よりは、良いかもしれません。

ただ、全体主義への不満はさらに高まることになるかもしれません。

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2022年10月15日土曜日

ノーベル賞のバーナンキ氏と「ヘリコプターマネー」の提言 リーマン・ショックやコロナ危機に活かされ アベノミクスの理論的基礎も―【私の論評】日本人は、バーナンキの理論を裏付け、ともに暗殺された高橋是清、安倍晋三の二人の偉業を称えるべき(゚д゚)!

日本の解き方

米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏

 今年のノーベル経済学賞に、米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏、シカゴ大学栄誉教授のダグラス・ダイヤモンド氏、ワシントン大学教授のフィリップ・ディビッグ氏の3人が選ばれた。

 バーナンキ氏の受賞理由は、1930年代の大恐慌の原因を探った研究成果、つまり銀行危機が大きな金融危機につながることが、その後のリーマン・ショックやコロナ・パンデミック(世界的大流行)時の政策運営でも生かされたというものだ。ダイヤモンド氏、ディビッグ氏は、社会にとって重要な銀行の危機時の脆弱(ぜいじゃく)性を示したことがバーナンキ氏の大恐慌研究に大いに関係しているとされている。

 筆者は、1998~2001年まで米プリンストン大に客員研究員として留学していた。当時はバーナンキ氏のほか、08年にノーベル経済学賞を受賞するポール・クルーグマン氏、スウェーデン中央銀行副総裁となるラース・スベンソン氏、元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏ら世界一流の金融政策の大家が多く在籍していた。毎週のセミナーでは、なぜ日本がデフレなのかなど、興味深い話題を活発に議論していた。

 筆者は当時、経済学部長だったバーナンキ氏に公私ともにお世話になった。本コラムは連載して12年がたつが、バーナンキ氏を引用したのは288回にも達している

 バーナンキ氏の研究によると、大恐慌の研究で、金本位制に固執した国では十分な金融緩和策がとれず、デフレが深刻化した。一方、金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した。

 FRB理事時代の03年、バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済の再生アドバイスを行い、国民への給付金の支給あるいは企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債を買い入れることを提案した。中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるわけなので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばらまかれていることになる。これが、いわゆる「ヘリコプターマネー」だ。

 米国はバーナンキ氏のおかげでリーマン・ショックもコロナ危機も乗り切れた。しかし、日本では、リーマン・ショック時は日銀が白川方明(まさあき)総裁体制で金融緩和は不十分だった。東日本大震災では民主党政権の復興増税など「悪夢」の連続だった。筆者はバーナンキ氏の提言を日本で実行するように主張したが無駄だった。

 第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できた。その結果、雇用確保は世界トップの出来だった。

 アベノミクスの理論的基礎はバーナンキ氏にあるといってもいい。ただし、消費増税は財務省の横やりで、アベノミクスの足を引っ張った。安倍さんが生きていたら、今回のバーナンキ氏の受賞をさぞかし喜んだだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日本人は、バーナンキの理論を裏付け、ともに暗殺された高橋是清、安倍晋三の二人の偉業を称えるべき(゚д゚)!

高橋洋一氏は上の記事で「金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した」と語っています。では、いずれの国が最もはやく世界恐慌から抜け出したのでしょうか。

実は、それは他ならぬ我が国日本なのです。

1931(昭和6)年12月、犬養内閣(蔵相高橋是清たかはしこれきよ)は成立後ただちに金輸出再禁止を断行し、兌換だかん制度を停止したので、日本経済は管理通貨制度の時代に入りました。

金輸出再禁止の結果、円の為替相場が大幅に下落し、1932(昭和7)年には一時100円が約20ドルと金解禁時代の半分以下に下がったのですが、不況のなかで合理化を推進しつつあった諸産業は、円安を利用して輸出振興をはかりました。

このあたりのことは、以下のサイトが平易に解説しています。興味のある方は、是非ご覧になってください。
このサイトより、以下にいくつかの図を引用します。




まさに、高橋是清は金融緩和策と積極財政を行ったがために、当時の日本は素早く世界恐慌(日本では昭和恐慌)から抜け出すことができたのです。

金本位制を離脱し、管理通貨制度にして、円安をそのままにしたのは、金融緩和策です。

一方、赤字国債を発行して、軍事と農村救済にお金を投入したのは、積極財政です。

高橋是清は、1932年の時点で、まさに、「ヘリコプターマネー」の先駆けと言っても良いようなことを実行したのです。

1936年、ケインズは彼の代表作となる『雇用・利子および貨幣の一般理論』を発表し、激しい論争を呼び起こしたましたが、この書に端を発するケインズ経済学はまもなく経済学の主流となりましたことから考えると、その前に行われた偉業はあり得ないくらいの素晴らしいことだと思います。

高橋是清は、恐慌から脱却するために、当時の経済学者の言うことなどは参考にせず、自らの知見や常識などをフル動員して、金融財政政策を進めたのでしょう。

上の記事にあるように、安倍元総理は、第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できました。その結果、コロナ禍の時期における雇用確保は世界トップの出来でした。

そうして、高橋是清と安倍元総理には、共通点があります。

一つは、不況から抜け出すために、二人とも積極財政、金融緩和を実施したことです。

そうして、悲しいことにもう一つの共通点があります。それは、両方とも暗殺されたということです。

ご存時のように、安倍元総理は、山上容疑者によって暗殺されたとされています。まだ、裁判もされていないような状況なので、様々な疑問が残りますが、それにしてもお亡くなりになっているのは事実なので、暗殺されたこと自体は間違いありません。

高橋是清は、赤坂表町三丁目の私邸で叛乱軍襲撃部隊に胸に6発の銃弾を撃たれ、暗殺されました(二・二六事件)。享年83(満81歳没)でした。

他にも共通点があります。高橋是清の行った、金融財政政策は、その後のケインズやバーナンキをはじめとする、経済学者の研究を裏付けるような大偉業であったにもかかわらず、日本においては、教科書にその事実が淡々と記載されて継承されるのみで、その本質が理解されていません。

安倍元総理の金融財政政策も、ほとんど理解されていません。理解しているのは、ほんの一部の人です。

日本では、金融財政政策を正しく行った政治家は、正しく顧みられないどころか、暗殺されてしまったのです。

安倍晋三氏(左)と高橋是清氏(右)

暗殺されてしまったことは、悲しいことにもう変えようはありません。

ただ、二人の偉業を称え、この二人が実施したように、これから不況時にはその対応を間違わないようにはできます。

日本は、これからは経済対策の面で方向を間違わないようにするためにも、二人の偉業を称えるべきです。

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2022年10月14日金曜日

焦点:ロシア核部隊が近く大規模演習、西側に必要な「正確な意図」見抜く目―【私の論評】現実的な脅威は、露軍がウクライナの原発を暴走させ核汚染でウクライナを軍事的緩衝地帯にすること(゚д゚)!

焦点:ロシア核部隊が近く大規模演習、西側に必要な「正確な意図」見抜く目

10月13日、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせる中で、同国の核戦力運用部隊が近く大規模演習「グロム」を行う見通しだ。

 ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせる中で、同国の核戦力運用部隊が近く大規模演習「グロム」を行う見通しだ。このため米国やその同盟国は、ロシアが本気で動くつもりか、それとも単なる演習の範囲内の行動にとどまるのかを確実に見分けるという重要な課題を背負わされることになる。

 ロシアは毎年この時期に核戦力の大規模演習を実施するのが恒例で、西側の専門家によると今年も数日中に始まるとみられる。複数の米政府高官は、演習にはさまざまな弾道ミサイルの発射実験も含まれる公算が大きいと述べた。

 ただ今年はプーチン氏が、長引くウクライナでの戦闘を背景にロシア領土を守るためには核の使用も辞さないと公言している中で、一部の西側当局者はロシアが演習を通じてわざと自分たちの意図をくらませようとする可能性があると警戒している。

 西側当局者の1人はロイターに「だからこそロシアは核戦力の演習を行おうという時期に、あえてことさら過激な言い回しはしたがらない。なぜなら、そうする(過激な言葉を避ける)ことでわれわれ側は、目にする彼らの行動や実際に起きる出来事について、通常の演習かそれとも別の何かなのかを確かめるという余計な負荷がかかるからだ」と説明した。

 それでもこの当局者は、西側のそうした判断力には「高い自信」があると言い切った。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はブリュッセルにおける会見で、今回のロシアによる年次演習もこれまで数十年と同じように、NATOがしっかり監視していくと請け合った。

 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は、グロムではミサイルの実射を含めてロシアの戦略核運用部隊が大々的に展開することになるとした上で、それらはあくまで「ルーティーン」だと指摘。「ロシアは恐らく、この演習が特に最近の事象に照らして自らの戦力投射能力を向上させると信じているだろう。だがわれわれは、ロシアの核運用部隊が毎年この時期に大規模な訓練をすると承知している」と語り、米国は状況を「注視する」と付け加えた。

 ある米国防総省高官は、ロシアの演習はNATOが計画し、来週開始する核抑止のための演習「ステッドファースト・ヌーン」と同じタイミングで実施されると予想するとともに「ロシアがウクライナで戦争しながら核に言及し、この演習を決めたのは無責任極まりない。核兵器をふりかざして米国や同盟国を威嚇するというのも無責任だ」と憤りをあらわにした。

 プーチン氏が具体的な核攻撃の準備に入った形跡は今のところ見当たらない。しかし過去1カ月でウクライナの反撃が功を奏してきたのに伴い、ロシアから発せられる核兵器に関する言い回しはだんだんと強い調子になってきた。

 最近ではプーチン氏がウクライナの4州併合を一方的に宣言し、「ロシア領」防衛には核を使うと脅している。一方NATO高官の1人は12日、ロシアが核攻撃すればNATOは「物理的に対応」すると述べた。

 オースティン米国防長官は13日のNATO国防相会合後に、米国の核戦力態勢に変化を促す「兆候や警報」は目にしていないと発言した。

【私の論評】現実的な脅威は、露軍がウクライナの原発を暴走させ核汚染でウクライナを軍事的緩衝地帯にすること(゚д゚)!

昨年の12月21日のロシア国防省拡大理事会の会議において、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ボストークとグロムの軍事演習を2022年に開催すると述べていました。

ロシア国防省に近い情報筋は、2022年のはじめに実施するとしていました。ただ、これは、ウクライナ侵攻のための準備などで延期されたものとみられます。

ロシアの戦略核戦力の戦略的指揮と要因の演習「グロム」は、毎年定期的に開催され、3つの枠組みからなっています。

まず第一は、北方艦隊の地下ミサイル発射基地からは、カムチャツカ半島のクラ試験場の標的に対して大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射します。

第二に、太平洋艦隊の原子力潜水艦は、ロシア北部のチザ試験場で標的に対してICBMを打ち上げます。

第三に、ロシア戦略ミサイル軍は、以上に加えて、空軍の長距離爆撃機によるICBMと巡航ミサイル発射に関する戦闘訓練も行っています。

 過去のグロムで用いられた長距離爆撃機

今年もこのような演習を行うものとみられています。この演習が例年と同じであれば、問題はないと思うのですが、ロシア側がこれをことさら恫喝に使うことになれば、問題です。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は13日、ロシアのプーチン大統領がウクライナに対し核兵器を使用すれば、米欧の軍事的対応によって、ロシア軍は「壊滅」に至ると警告しました。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)

ボレル氏は、ブリュッセルの外交アカデミーで「プーチン氏は(核使用が)脅しではないと言っているし、彼にはったりを言う余裕はないだろう」と発言。「ウクライナを支援する人々とEU、米国と北大西洋条約機構(NATO)もはったりを言っていないと、はっきりさせなければならない」と強調しました。

その上で「ウクライナに対するいかなる核攻撃も返答を伴う」と指摘。「核ではないが、ロシア軍が壊滅するような強力な対応」が取られると語りました。

米国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバンは9月25日にアメリカの三大ネットワークに次々と出演し、ロシアによる核の威嚇に対する政権の対応を明らかにしました。

まずABCニュースでは、「ウクライナで核兵器を使えば壊滅的な結果を招くぞと、極めて高いレベルでロシア側に直接、内々に伝えてある」と語りました。

またNBCの報道番組『ミート・ザ・プレス』では、「ロシアがこの一線を越えたらアメリカは断固として対応する」と述べました。そしてバイデン政権はロシア側とのやりとりの中で「これが何を意味するのか、より詳細に説明している」としました。

その「断固として」が何を意味するのかは明かされていません。しかし2人の軍人は米ニューズウィーク誌に、原子力潜水艦や航空機の移動、B52爆撃機の訓練など、核の脅威に対応する微妙な動きがあると明かしました。ただし、あくまでも本筋は核以外の軍事オプションだと言います。

つまり通常兵器での対応や特殊部隊の投入、サイバー攻撃や宇宙戦などであり、プーチン暗殺のシナリオも含まれるようです。 バイデン大統領は核以外のオプションでプーチンを抑止できると考えているのでしょうか、またこの点で政権と軍のコンセンサスはあるのでしょうか。

同誌はこの点をホワイトハウスに問いただしたそうですが、具体的な回答はなく、「わが国のロシアに対するメッセージについては、ジェイク・サリバン補佐官が9月25日に語ったとおりだ」との返事のみだったそうです。

バイデン米大統領は11日のCNNの単独インタビューで、ロシアによる威嚇は壊滅的な「誤り」や「誤算」につながりかねないと語った。ただ、ロシアのプーチン大統領がウクライナの戦場に核兵器を配備した場合、米国がどのように対応するかは明言を避けた。バイデン氏は先週、「核のアルマゲドン(世界最終戦争)」の危険性が過去60年間で最も高まっていると警告していた。

私は、おそらくロシアが核兵器を用いることは無いと思います。ただ、それで安心はできません。それよりも、ロシアはウクライナのいくつかの原発をコントロールできない状態にする可能性はあるでしょう。

原発はコントロールしているから、安全なのですが、一切コントロールをやめてしまうと、安定を失い、自爆します。そうして、相当量の核物質を撒き散らすことになります。

ロシアが原発にミサイルを打ち込んで破壊ということになれば、国際社会からかなり反発されることになりますが、コントロールさせないという方式であれば、やってもあまり反発されないのではと、ロシア側が勘違いする可能性は多いにあります。

核廃棄物が撒き散らされれば、チェルノブイリ原発事故のようになり、付近一体に人が住めなくなります。それでも完全コントロールしなければ、核物質はチェルノブイリのときよりも広範にまきちらされることになります。


これをいくつかの原発で実施すれば、ウクライナのかなりの広い部分に人が住めなくなります。住民は避難を余儀なくされることになります。

そうなると、ウクライナの広大な地域が非武装地帯となり、ロシアにとってNATOとの緩衝地帯になります。

ロシアがウクライナに侵攻した目的は、ゼレンスキー政権を崩壊させ、ウクライナに傀儡政権を樹立して、ウクライナをNATOに対峙する緩衝地帯とするつもりだったようです。

この目的は、達成できないことは、もう明白です。ただ、原発のコントロールをやめさせれば、その一帯は、核物質で汚染され、人が住めなくなりますし、軍隊も駐留できなくなります。これで、方法は異なるものの、ロシアの当初の目的は達成されることになります。

私は、こちらのほうがより現実的な脅威だと思います。EUや米国は、このようなことに対しても対応すべきです。もし、ロシア軍がそのようなことを始めれば、米軍を含むNATOがすぐにも直接介入するとロシア側に認識させるべきです。

このようなことを述べると、原発反対派の方は、「それみたことか、原発は危険だ稼働を止めてすぐ廃炉にしてしまえ」などと考えるかもしれませんが、その考えは甘いです。

実は原発の稼働をとめたら、すぐそれで安全ということはないのです。やはりコントロールしなければなりません。一切コントロールしなければ、自爆の危険があります。コントロールすらから安全なのです。廃炉にするにも数十年という時間がかかり、その間もコントロールし続けなければ安全ではありません。

稼働を止めていても、テロリストが攻撃すれば、ノーコントロールになり危険です。だから、テロリストなどを防止する方法も真剣に考えなければならないです。

このような現実を踏まえたのか、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは12日夕に放映された独公共放送ARDのインタビューで、気候保護のために原発は現時点でよい選択かと問われ、「それは場合による。すでに(原発が)稼働しているのであれば、それを停止して石炭に変えるのは間違いだと思う」と答えています。

すでに稼働している原発を停止したからといって、安全になるということはないのです。廃炉することにして、稼働を停止させても、廃炉になるまでの長い間、コントロールし続けなければ安全とはいえないのです。

であれば、コントロールしながら安全を保ちつつ、稼働させるというのが最も合理的な方法です。日本では動かせる原発を全部動かせば、電気料金の高騰を防ぐことができますし、それで浮いた天然ガスをEUにまわすということもできます。まさに、一石二鳥です。

岸田政権には、是非とりくんでいただきたいです。

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2022年10月13日木曜日

余裕資産の炙り出し「外為埋蔵金」は捻出可能だ 国民・玉木代表も国会で指摘 小泉政権で実施経験も―【私の論評】岸田首相は財務省などの「不埒な1% 」の仲間に入らず、まともな補正予算を組め(゚д゚)!

日本の解き方

国民民主党の玉木雄一郎代表

 国民民主党の玉木雄一郎代表は6日の衆院代表質問で、「円安メリットを生かすのなら、外国為替資金特別会計(外為特会)の円建ての含み益を経済対策の財源に充ててはどうか」と提案した。

 これに対し、岸田文雄首相は「財源確保のために外貨を円貨に替えるのは実質的にドル売り円買いの為替介入そのもの」と述べて否定的だった。

 外為特会からの財源捻出について、筆者は小泉純一郎政権時に実施したことがある。小泉政権では郵政民営化がまずあったが、もう少し大きなグランドデザインをといわれ、政府のバランスシート(貸借対照表)のスリム化・効率化を提言した。

 郵政民営化は政府所有株の売却が伴うのでバランスシートのスリム化だ。政策金融・特殊法人改革もスリム化だ。そうしたコンセプトで政府の特別会計を精査していたら、思いの外、余裕資産があることが分かった。

 政府のバランスシートを初めて作成したのは筆者だったので、各特別会計の余裕資産を炙り出すのは簡単だった。それを経済財政諮問会議の議題にした。これがいわゆる「埋蔵金」だ。その絶妙なネーミングとともに、大きな話題になった。

 そうした一連の仕事は、2006年に「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」という法律でまとめられている。この法律は、全78条であるが、各省にわたっており、霞が関官僚からすれば思い出したくないものだろう。おかげで、筆者は「官僚全てを敵にした男」と言われた。

 その法律の39条に「外国為替資金特別会計に係る見直し」がある。実際、外為特会から財源が捻出された。

 岸田首相の答弁を作成したのは財務省だろうが、当然そのときの議論は知っているはずだ。

 当時、筆者は内閣官房・内閣府におり政権内だったので、財務省からの反論に答えて政策決定した。今回は、その議論の過程が国会審議として行われるのだろう。

 岸田首相のいう「外貨を円貨に替えるのは実質的に為替介入」はおかしい。円高に対応するためにドル債を購入するのが為替介入だ。ドル債は有期なので、例えば3年債なら3年後に償還され、その際、外貨を円貨に替える。これは、どこの国の介入でも行われる通常の行為だ。それをやらずに再びドル債購入(ロールオーバー)したら、それこそ為替介入になってしまう。

 実は、財務省はロールオーバーすることで「為替介入」しているのに、ロールオーバーしない通常のことを「為替介入」としている、これは本末転倒、きつい言葉で言うと、盗人たけだけしい言い方だ。

 筆者の言うことを確認するのは簡単だ。先進国は変動相場制だが、それぞれの外貨準備高の国内総生産(GDP)比をみればいい。多く持っている国でも数%以下だ。つまり、一時的に介入してもロールオーバーせず、途中売却か償還になっているのだ。

 こうした議論についてもかつて行った。その上で、外為特会から埋蔵金を捻出したのだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】岸田首相は財務省などの「不埒な1% 」の仲間に入らず、まともな補正予算を組め(゚д゚)!

為替特会関係について、高橋洋一氏はこの記事も含めて、短期間に三本もの記事を書いています。
「円安で儲かった37兆円」を経済政策の財源に充てよ…財務省が臨時国会で触れられたくないこと (10月10日 現代ビジネス)
円安と物価高から庶民を救う策、利益を享受する政府の資金使え 対策なければ再びデフレ転落も (9月24日)

そうして、本日の上の記事です。高橋洋一氏は、ご自身のYouTubeの「高橋洋一チャンネル」でもこれについて解説しています。下にその動画を掲載します。
玉木さん代表質問で約束通り「政府はウハウハ」!勝負はこれからだ  (10月12日)

ラジオの番組でも為替特会について解説しています。
「外為特会の含み益約37兆円」を経済対策の財源にできる「根拠」 高橋洋一が解説
なぜ、高橋洋一はこのように矢継ぎ早に為替特会について、様々なところで語っているのでしょうか。

それは、やはり今臨時国会における、審議の中で、どの程度の補正予算を組むかが、焦点になっているからだと考えられます。そうして、高橋洋一氏はこのようなことをして、自民党内の積極財政派を応援しているのだと思います。

特に真水でできれば30兆兆の補正予算を組めるか、少なくと20兆超の補正予算が組めるか、あるいは10兆未満の補正予算となってしまうかが、まさに天王山になるからです。

どのような天王山になるかといえば、 まずは、30 兆超の補正予算を組んで経済対策を打てば、日本は近い来年あたりにはデフレから完全脱却して、コロナ禍の悪影響を払拭して、力強く発展することになります。

なぜ、そうなるかといえば、現在日本経済には30兆円程度のGDPギャップが存在するからです。

20兆超であれば、すぐにデフレから脱却できないにしても、来年また補正予算を組めば、デフレから完全脱却して、力強く発展することが期待できます。

コロナ禍で日本経済痛めつけられていた頃には、安倍政権と菅罫政権の両政権であわせて100 兆円の補正予算が組まれました。安倍政権では、60兆円、菅政権では40兆円でした。

 この補正予算の執行と、日本には雇用調整助成金という制度がもともとあり、これも活用した結果、コロナ禍にあって他国が失業率がかなり高まったにもかかわらず、日本は2% 台で推移しました。これをメディアや野党はほとんど評価ませんでしたが、大偉業です。

岸田政権なってからも、失業率は2%台で推移していますが、これは岸田政権の成果ではなく、安倍・菅政権の成果によるものです。なぜなら、失業率は代表的な遅行指標で、現在の経済の状況は半年後以降に失業率に反映されるからです。

10兆円未満の補正予算であれば、焼け石に水であり、日本経済は毀損され、これに対して来年補正予算を組むにしても、毀損された分も含めてGDPギャップは30 兆円を遥かに超えてしまうことでしょう。

以上のように、まさに今国会における補正予算は、今後の日本経済の天王山なのです。ここで、岸田政権の経済政策がまともであれば良いのですが、失敗すれば、日本経済はまた長期間停滞し続けることになるのです。

そうして、高橋洋一氏は岸田政権が失敗する可能性を懸念しているのでしょう。

岸田首相は親戚縁者に財務省関係者が多く、財務省と近い関係にあります。財務省や民主党、ならびにそれに協力する識者といわれる人々が主導して、東日本からの復興のために、復興税制を誕生させたという苦い経験があるからです。

このブログでは何度か述べたように、大災害で国全体が傷んでいるのに増税した国家を私は他に知りません。古今東西ありません。あの時の日本だけが唯一の例外です。こういう時はまともな政府ならばまずは減税をします。財源は、無論国債です。

当然最初に復興のための財源として出たのは無論復興国債の声でした。それが1週間くらいで復興増税にかわった時は驚愕しました。日本は深く深く病んでいます。

復興税を推進したのは、当時の民主党政権や財務省だけではありません。日本の主流といわれる経済学者らもそうでした。復興増税推進に手を貸した経済学者は、愚昧としか言いようがありません。

最近ノーベル経済学賞を受賞したバーナンキ等には足元にも及ばない愚かな人たちだと思います。

その日本の主流派といわれるのは、東大を頂点とする経済学者らです。この学者たちは、復興税に賛成しています。当時頂点といわれたのは、東大の伊藤隆俊研究室です。高橋洋一氏は、以下のよにツイートしています。 

この研究室に連なる経済学者らの名前は、ウェブ魚拓のリストに残っています。是非ご覧になってください。あの人が、という人もいて驚かされるかもしれません。

話しは変わって、最近「護れなかった者たちへ」という映画を見ました。話の筋は、以下のサイトをご覧になってください。

護られなかった者たちへ

この映画、昨年封切られたばかりの映画ですので、興味のある方は是非ご覧になってください。



この映画、本当にざっくり言ってしまうと、東日本震災の被災地で、生活保護を申請した老婦人の申請を取り消したところ、その老婦人が餓死してしまい、それに憤った人が、生活保護取り消しに加担した役人たちを殺してしまうというストーリーです。

2017年12月の時点で受給している世帯が全国で164万世帯あるという生活保護の実像を描いた社会派ミステリーです。日本は未だデフレから完璧に脱却していないという厳しい現実を突きつけられるような内容です。

あまり詳しく語ると、これから映画を見る人たちにネタバレとなってしまうので、これくらいにしてきおます。

私は、この映画を見て、背後にはやはり財務省などが推進した復興税による経済の落ち込みがあると思いました。こ復興税は税の公平性という性格から、全国一律に徴収するものですから、当然のことながら、被災地の経済も落ち込みます。これは無論緊縮財政の一環といえます。

この映画に出てくる、生活保護の申請の取り消しをした役人たちも、緊縮予算には苦しめられていたと思います。 予算に苦しめられさらには、申請者や対象者も多く荷重な事務による疲労も重なっていたと思います。実際に映画の中でそのように語った役人もいました。

彼らは、そういう背景があって、あのようなことをしてしまったのではと私は思いました。もし、ある程度の潤沢なというかまともな予算がつけられていれば、変わっていたかもしれないと思いました。

役人を殺した殺人犯は、これらの人たちを「不埒な1% 」と呼んでいました。この映画の中では、こうした一部の地方の役人たちだけを指しているようでしたが、私はそうは思えませんでした。復興税を導入を推進した財務省、与野党の政治家、識者もその範疇に入ると思いました。

誤った経済政策は人を殺すこともあるのです。このブロクにはそのような事例もいくつかあげたことがあります。このような話しをすると否定的な人もいます。しかし、これは、多くの経済学者によって確かめられています。以下にその代表的な書籍をあげておきます。
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策 単行本 – 2014/10/15

この書籍は、不況下において財政刺激策をとるか緊縮財政をとるかは、人々の健康、生死に大きな影響を与えることを示しています。世界恐慌から最近の「大不況」までの各国の統計から、公衆衛生学の専門家が検証した最新研究。長年の論争に、イデオロギーではなく、「国民の生死」という厳然たる事実から答えを導く一冊です。

緊縮財政が著しく国民の健康を害して死者数を増加させるうえ、景気回復も遅らせ、結局は高くつくことを論証しています。政府が不況時に緊縮財政をすれば、生活保護受給者などが増えたり、後処理的に様々なことをしなくてはならくなり、結局高くついてしまうことになるのです。そうして、それを放置しておけば、経済はさらに落ち込み続け、死者数は増加し続けるのです。

東日本震災からの復興のための復興税による緊縮財政により、日本では著しく国民の健康や福祉を害して死者数を増加させたうえ、景気回復も遅らせ、結局は高くついたのです。日本では、その後コロナ禍もあり、先に述べたように、安倍・菅両政権で合わせて100兆円もの補正予算を組まなくてはならなくなりました。

震災で人が亡くなることは、どのような対策を打ってもできないこともあるでしょう。しかし、震災後の復興の過程で人がなくなることは防げるはずです。

私は、ほとんどの日本人は「不埒な1% 」には入っておらず、あくまで復興税に反対したか、あるいは、ほとんどの人は、東日本震災の復興にあてるのだから、心情的に仕方ないと諦めたのだと思います

ただ、1%の人間は、何がおこるのか知った上でか知らなかったのかは別にして積極的に復興税を推進してしまいました。知らないで推進した人は、自分の無知を厳しく反省すべきです。知っていて推進したなら、これほど罪深いことはありません。こういう人たちは、自らの罪業を死ぬまで背負って生きるべきです。

不埒な1%。されど、その1%の悪行が世の中の意識を大きく変えてしまったのです。興味のある方は是非「護られなかった者たちへ」映画を是非ご覧になってください。

この映画を見たある人に、以上のような話しをしたところ「映画をそのような見方をするのは面白くない」と語っていました。しかし、その人はきっと私の語ったこと本当には、理解していないと思います。上のような背景を知った上で、映画を見ると、また違った角度から映画が見られて、興味深いと思います。

実際、この映画私にとっては、忘れられない映画の一つとなりました。この映画もし、続編が制作されるなら、「不埒な1% 」の中に財務省や政治家、似非識者も含めると良いと思います。そうすると映画自体にさらに深みが増す可能性があると思います。

高橋洋一氏は、この最悪の復興税のようなコロナ復興税などができるのを阻止するためにも、上記のように外為特会の話しをしたり、復興税に賛同した学者のリストを公開したりしているのだと思います。

政府が今月とりまとめる経済対策をめぐり参議院自民党は岸田総理に対し、出産準備金の支給など緊急提言を行いました。 提言には出産前の準備に使うための「出産準備金」の臨時支給などが盛り込まれました。

 ひとり20万円の出産準備金を支給するとすれば予算はおよそ1600億円で、参議院自民党の幹部は捻出可能な額との認識を示しています。 ほかにも電気料金とガス料金の引き下げに向けて事業者への資金投入をすべきなどとしていて、補正予算については30兆円を超えた昨年度を上回る規模を求めています。

自民党の萩生田政調会長は岸田総理大臣と面会し、大型の補正予算を編成する考えで一致しました。財政支出を抑えたい財務省を牽制(けんせい)する狙いがあります。

自民党・萩生田政調会長は、「総理からは昨今の経済情勢、エネルギー高騰、世界経済の後退、こういったことを考えると私がかねてから申し上げているように、よりきめの細かい対応が必要なんじゃないかということで意見の一致を見たところです」と語りました。

萩生田氏はこれまでに、「昨年度の補正予算と同等の30兆円規模の経済対策が必要だ」との考えを示していました。

自民党は18日に経済対策を取りまとめ、政府に申し入れる方針です。岸田首相にはくれぐれも「不埒な1% 」の仲間に入らず、まともな補正予算を組んでいただきたいものです。

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2022年10月12日水曜日

安保上重要な区域 第1弾で58カ所提示 政府 尖閣は入らず―【私の論評】中国配慮で日本国を毀損してしまいかねない岸田政権は短期政権で終わらせるべき(゚д゚)!

安保上重要な区域 第1弾で58カ所提示 政府 尖閣は入らず

 政府は11日、安全保障上重要な土地の利用を規制する土地利用規制法の「特別注視区域」や「注視区域」の候補地として、陸上自衛隊対馬駐屯地(長崎県対馬市)や沖ノ島(島根県隠岐の島町)など5都道県の計58カ所を示した。政府が今後2、3年で指定する施設や離島などは600カ所以上になる見込みで、第1弾となる今回は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の提示は見送った。

 土地規制法は9月20日に全面施行された。候補地の公表は初めてで、11日の審議会で示した。関係自治体にも意見聴取を行い、審議会で了承されれば、年内に指定される見通しだ。

 同法では、安保上重要な施設の周辺約1キロを「注視区域」、自衛隊の司令部など特に重要な機能を備えた施設周辺を「特別注視区域」に指定する。国は注視区域の土地や建物の所有者の国籍や利用状況などを調べることができる。特別注視区域では、一定面積以上の土地や建物の売買について事前の届け出を求める。


 今回、候補地になったのは特別注視区域と注視区域が29カ所ずつで、無人の国境離島が目立つ。国境として重要性が高いことに加え、無人のため、政府が普段から現地の状況を把握しにくいのが理由だ。韓国資本による自衛隊基地の隣接地買収が問題になっていた長崎県対馬市も選ばれた。

 一方、中国公船が周辺で領海侵入を繰り返している尖閣諸島などの南西諸島は候補地には入らなかった。指定には県など地元自治体への説明が必要となるため、政府関係者は「社会的に反響の大きい地域は時間をかけて指定する必要がある」と打ち明ける。

 内閣府は尖閣諸島の指定について、「南西諸島周辺が重要な地域という認識はある。重要度だけでなく、準備の整ったものから指定していく」としている。

【私の論評】中国配慮で日本国を毀損してしまいかねない岸田政権は短期政権で終わらせるべき(゚д゚)!

尖閣諸島

上の記事にもあるように、岸田政権が安全保障上重要な土地の利用を規制する土地利用規制法の“特別注視区域”や“注視区域”の候補地として指定ししましたが、その中には尖閣諸島は入っておらず。これは、明らかな「中国配慮」と考えられます。

北海道はいくつか候補地として、指定されていますが、かねてから問題が指摘されている地域は意図的に外されているようです。

たとえば、北海道トマム地区の住民の50%が外国人と判明しています。しかもほとんどが、中国人です日本政府は米国総領事館から警告を受ける事態になっています。今回の注視区域からは、尖閣以外に中国にかなり買収されている北海道地方もほとんど外されています。

歌手の長渕剛のライブでの発言が話題になっていました。その発言が聞けるのは、本人のYouTubeチャンネルで9月27日にアップされた動画。札幌芸術劇場でのライブをレポートしたものです。

このライブで、長渕は北海道の素晴らしさを語ったうえで聴衆に向かってこう強く訴えかけていました。

「北海道という街は、その昔開拓民たちが一生懸命に開拓した街だ。お願いだからこの自然に満ち満ちたこの土地を、外国人に売らないでほしい」


ネット上では、このメッセージに共感する人が多くいる一方で、「ヘイト」「ネトウヨ」といった言葉で批判する人も見られます。外国人の権利関連の話になると、よく見られる構図です。

もちろん長渕は外国人排斥を訴えたかったわけではない。念頭にあったのは、北海道が外資によって買い漁られていることへの危機感だと見られる。

 日本政府は外国人が土地を買うことに極めて寛容な政策を取ってきたため、国内各地で危機管理上の問題が想定されるような土地買収が行われている。自然豊かで広大な北海道もそのターゲットの一つです。

国土買収が進むこうした北海道では外国人従業員が増え、ガバナンスへの波及も無視できなくなっています。トマム地区の外国人比率は、50.5%(2019年7月末)。とうとう半数を超えました。地元の女性と結婚するなど、何組かのカップルも誕生しています。

星野リゾート トマム ザ・タワー

外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のおかげです。

あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村単位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているといえます。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのがアメリカ総領事館だったというところに、行政機構の弛緩がうかがえます。

かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

膨張する国家が目指す一本の筋、それを実現するための工程、具体的プランを指導層と研究者らが共有し、それにしたがって人、モノ、カネが大規模に動いていく。さまざまな現象をつなぎ合わせてみると、そんな構図が浮かび上がります。

さすがに余りにも脇が甘いということで、昨年、重要土地等調査・規制法が定められ、先月から施行されました。これによって、自衛隊や海上保安庁、原子力発電所といった安全保障上の重要施設の周辺の土地取引に関しては、一定の規制が可能になりました。

しかしこの法律の成立に関しても、一部新聞や野党は私権の制限にあたる等と言って反対していました。

あたかも、できるだけ日本を無防備にしておきたいという意図でもあるかのようでした。

長渕は、かつて自衛隊の激励ライブも行い、防衛省から特別感謝状を贈呈されたこともある。また全国をツアーで回る中でいろいろと実際に見聞きしたこともあるのでしょう。

 2011年12月10日防衛大臣から特別感謝状を贈呈された長渕剛氏

それだけに黙っていられない、という気持ちがあり、ライブ中の発言になったというところでしょうか。

それにしても、土地利用規制法の「特別注視区域」や「注視区域」の候補地に、尖閣は無論のこと、トマムなどの問題の多い地域も入っていないというのですから、岸田政権は媚中で「中国配慮」をしたと糾弾されてもしかたないと思います。

そうして、この記事では以前から主張していますが、今のままだと自民党は無論のこと、日本国を毀損してしまいかねない岸田政権は短期政権で終わらせるべきです。長期になれば、なるほど日本が毀損される確率が高まることになります。

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2022年10月11日火曜日

「すべての道はクリミアに通ず」米国供与のハイマース射程内に入ればクリミア奪還で全てが終わる?―【私の論評】二十世紀で幕を閉じたと思われた列強同士の大会戦が、今世紀のクリミアで起こる(゚д゚)!

 「すべての道はクリミアに通ず」米国供与のハイマース射程内に入ればクリミア奪還で全てが終わる?

「すべての道はクリミアへ通ず」

こんな前書きではじまるツイッターが10月2日アップされた。

投稿者は2018年まで米陸軍欧州司令官をしていて、今はシンクタンク欧州政策分析センターの戦略研究の責任者をしているベン・ホッジス退役中将でツイッターはこう続く。

「ウクライナの反撃は不可逆的なはずみがついている。まもなく彼らはクリミアのロシア軍の基地をハイマースの射程内に収める地点まで達するだろう…それらの基地は防衛不能になる…そうなるともはや時間の問題だ」

ベン・ホッジス退役中将のツイート


「すべての道はローマへ通ず」という仏の詩人ラ・フォンテーヌの言葉を引用したものだが、本来は「ある目的を達成する手段はいくつもあるが、一つの真理はすべてのことに通用することをいう」(Imidas)。

そうであればホッジス中将は「ウクライナがロシアに勝利するにはいくつもの手段があるが、クリミアの奪取がすべてを決着させる」つまり「ウクライナ紛争はロシア軍をクリミアから撃退することで終わる」と予言したわけだ。

クリミアは2014年にプーチン大統領が不法にロシアに編入させ、今回編入を強行したハルキウ州など4州よりもロシア化が進んでいることやロシア海軍にとって貴重な不凍港セバストポルがあることなど戦略的にも重要な拠点だ。

クリミア半島と黒海

クリミア半島と黒海そこでロシアはあらゆる手段を講じても死守するだろうと考えられ、ウクライナも攻略は手控えるのではないかという見方が有力だったので、このホッジス予言は意外に思えた。

そう思ったのは私だけではなかったようで、英紙「デイリー・メイル」がホッジス中将にインタビューをして同中将が考える今後の予測記事を5日の電子版に掲載した。

それによると、現在ウクライナ軍は次の3方向からロシア軍を攻撃しているがそれはずべてクリミアの解放を目指すものだとホッジス中将は見る。


●まず現在南部戦線で主力部隊がヘルソンを攻略中。ヘルソン奪還後クリミアへ進軍する。

●東部では第二戦線がドンバス地方の解放を目指しているが、その役割はロシア軍の補給を断ちながら最終的には主力部隊と合流してクリミア攻略に参加する。

●この間、ウクライナの「虎の子」の予備役の部隊が東西に長く伸びたロシア軍の防衛戦を分断するように攻撃をしたのちクリミア攻略に参加する。

それでもクリミアへの攻略は熾烈を極めるだろうと考えられるが、ホッジス中将はウクライナ半島が米国が供与した高機動ロケット砲ハイマースの射程内に入ればプーチン大統領も諦めざるを得ないことになると予測する。

これまでウクライナ紛争の展開は全体像が見えにくかったが、これで各地の戦闘の意味が理解できるようになり情勢判断をし易くなった。

そうした折に起きたクリミアとロシア本土を結ぶケルチ橋の爆破は、ロシア軍の退路を断つことにもなるわけで、ウクライナ側がそれを狙ったとすればクリミア攻略は予想以上に加速しているのかもしれない。

【私の論評】二十世紀で幕を閉じたと思われた列強同士の大会戦が、今世紀のクリミアで起こる(゚д゚)!

ロシア軍は、クリミア半島と黒海をあらゆる手段を講じても死守するでしょう。ウクライナ軍は、クリミアを取り戻すため、あらゆる手段を講じることでしょう。

そうなると、ロシア軍も、ウクライナ軍も最大限の力を出して、正面から衝突することが予想されます。

これは、20世紀を最後に終わってしまったのではないかと考えらていた、会戦になる可能性が高いです。会戦とは、両軍がその主力を集中して、相会して戦う戦いです。

世界には様々な会戦の歴史があります。日本だと、奉天の会戦が有名です。

日露戦争地図

奉天会戦は、1905年(明治38)3月に行われた日露戦争最後の大規模な陸上戦です。同年1月日本軍が旅順(りょじゅん)攻略に成功したのち、満州軍総司令部(総司令官大山巌(いわお))は乃木(のぎ)軍の転進を待って第一線兵力25万を集中し、ロシア軍を殲滅(せんめつ)して戦局を決定することを意図しました。

奉天(現瀋陽(しんよう))を拠点とするロシア軍(総司令官クロパトキン)も32万の兵力を集中して対峙(たいじ)していましたが、3月1日、両軍は全線で戦闘を開始しました。戦局は容易に進展しなかったのですが、7日、9万の死傷者を出したロシア軍は次期会戦に兵力を温存するため退却しました。

10日、日本軍は奉天を占領しましたが、7万の損害を受けて追撃の余力を失い、敵主力の撃滅という目的を達成できませんでした。この会戦の結果、日本は戦力の限界を自覚し、これ以後大規模な作戦を企画できませんでした。

ロシアも打ち続く敗戦が革命の機運を醸成することを恐れたので、この会戦を機に講和が日程に上りました。日本はこの戦勝を記念して奉天占領の3月10日を陸軍記念日としました。

昌円陣地を視察中の大山巌(右から4人目) (防衛省防衛研究所所蔵)

話しは、少し変わりますが、日本やロシアなどを含め、いわゆる過去に列強と呼ばれたような国は、会戦を経験しており、数十万もの人間が正面からぶつかりあう戦いの凄まじさを理解しています。だから、市民を数十万人殺したとされる、南京虐殺など、途方も無いことが理解できます。

それだけの人間を殺害することの途方もない手間と、時間がどのくらいのものか想像がつくのです。そのような無意味なことを、軍隊が行うことなどあり得ないことが理解できるのです。しかし、会戦をした経験のない、現中国や韓国などは、さほど難しいとは思わずに、平気で歴史修正などをしてしまうのです。

話しをもとに戻します。このとてつもない会戦は、20世紀で幕を閉じたと思いましたが、今世紀になってクリミアで起きそうな状況になってきました。

両軍の兵力がどのくらいになるかは、わかりませんが、両方とも少なくとも数万単位の兵力を動員するでしょう。人数的には過去の会戦よりも、少ないかもしれませんが、現代兵器を用いた苛烈な戦いになることが予想されます。

ウクライナにはハイマースのような現代的兵器があり、ロシア軍もそれなりに、様々な現代兵器を有しているでしょうから、両軍ともそれを用いて、激しい前哨戦を行うでしょうが、最終的には歩兵と機甲部隊が真正面からぶつかる大会戦になる可能性が高まってきました。

上の記事にもでてくる、ホッジス元米国駐欧州陸軍司令官は、ウクライナ軍によるハルキウ州脱占領作戦を非常に高く評価していると発言しています。

ホッジス氏がタイムズ・ラジオへのインタビュー時に発言しています。以下にその動画を掲載します。


ホッジス氏は、「ウクライナ参謀本部も米国、英国、その他の国のパートナーたちも、その作戦のための条件を作るために多くのことを行った。ロシアの兵站、指揮所、防空システムへの恒常的な攻撃が、ロシア軍の間に混沌を作り出し、彼らにとって何が起こっているのか、どの防衛線の強化が必要なのかを理解するのか困難にしていた」と発言しました。

同氏はまた、東部での作戦成功は、相当程度、情報面で促したものだとし、情報によりロシア人にかなりの予備戦力をヘルソン州右岸へと投入させ、ハルキウ州の前線を弱体化させることになったと指摘しました。

同氏は、「それは、ロシア人を騙すという観点から、電撃的作戦であった。ウクライナ人は、ヘルソン州の反攻について常に公に話していたし、それによってロシア人に戦力を南に投入させ、東部の立場を弱体化させていた。

結果、ロシア人たちはあのようにすぐにばらばらになったのだ。なぜなら、彼らは疲弊しているし、彼らの兵站はダメージを受けているし、多くの将校が殺されているし、さらに重要なのは、彼らには戦闘へ向かう意志がないからだ」と発言しました。

さらに同氏は、今回の成功を確実なものとするための忠告として、「私たちは、東部でのウクライナの印象的な成功、ロシア人が残していった大量の機材や取り返した多大な領土には左右されることなく、状況を厳格に評価しなければならない。

(中略)しかし、この先まだ多くの戦いがあるのであり、現在ウクライナ人にとって重要なことは、止まらないこと、ロシア人に圧力をかけ続けること、再編の機会を与えないことだ」と発言しました。

さらに、「私たちには、ウクライナに必要な武器を提供するだけでなく、前線での状況展開ベクトルを維持するためにロシアへの制裁圧力を維持することも重要だ」と発言しました。

その上で同氏は、年内にウクライナが2月24日以降にロシアが占領した全ての領土を取り返すだろうとの確信を示しました。同氏は、「これ(東部での成功)を戦争における転換点と呼ぶことができるか? それは間違いなく重要な瞬間ではある。なぜなら、主導権がウクライナ軍に移ったのであり、ロシアはすでにこの戦争での自らのクライマックスに達しているのだから。

私は、ウクライナが年内に2月23日時点の全ての領土を取り戻せると確信している。クリミアは来年だ。私は、もしかしたら、まだあまりに保守的に評価しているのかもしれない。なぜなら、状況の進展は、予期されていたよりも早いのだから」と発言しました。

さらには同氏は、ロシアが将来的に分裂する可能性にも言及しました。

「私たちは、もしかしたら、今後4、5年で生じるロシア連邦の崩壊のはじまりの目撃者となるかもしれない。戦争は、同国軍の弱さを曝け出し、汚職がロシア社会における不満をどんどん呼び起こしており、エネルギーや武器の輸出という経済の輸出分野は著しい損失を出している。

さらには、ロシアは単一民族国家ではなく、同国には200の民族集団が暮らしており、その多くがプーチンの侵略にて多大な代償を払ったのだ。というのも、ロシア軍の死者の大半はモスクワやサンクトペテルブルクから遠い、地方の出身者であるからだ。

トゥヴァやシベリア、チェチェンやその他の地域は、ロシア連邦の構成から抜け出す機会を目にするかもしれない。西側は、もう今から、その場合にどうするかを考えるべきだ。なぜなら、私たちは、例えば、ソ連の崩壊の際には全く準備ができていなかったのだから」と発言しました。

なお、ホッジス元米国駐欧州陸軍司令官は9月、ウクライナは2023年中に、クリミアを含め、ロシアが現在占領している全ての領土の主権を完全に回復できるとの見方を示していました

無論ロシア側がクリミアで再編が全くできなければ、単なるロシア軍の一方的敗走になるかもしれません。しかし、クリミアはロシア軍にとっては最後の砦です。ありとあらゆる手段で、クリミアでロシア軍の増強、再編を行う可能性もまだあります。

私は、クリミアにおける、ウクライナ軍とロシア軍による会戦にウクライナ側が勝てば、ホッジス氏のシナリオ通りの展開となると思います。それでも当初は、ロシアは負けを認めず、クリミアやウクライナ東部の一部を占領し続けるかもしれませんが、それでも新たな展開は見込めず、すでに勝負は決まっていて、国際社会はロシアが負けたものとみなすことでしょう。

国際社会がロシアが負けたとみなすとは、プーチンが何を要求したとしても、恫喝したとしても、国際社会の中では一切通らなくなってしまうということです。

ウクライナに余力がでてくれば、追撃戦に移り、全領土を完璧に取り返すことになるでしょう。

ウクライナ軍が負けた場合には、ロシアは何とか体面を保つことはできるかもしれません。クリミアと、ウクライナの東部の一部を占領し続けるかもしれません。それでも国力は衰え、新たな侵攻など実行する余力もなくなり、より時間はかかるかもしれませんが、最終的にはホッジス氏の描いたシナリオに近いものになるのではないかと思います。

いずれにしても、ロシアにとっては分が悪いです。最初からウクライナを侵略しなければ良かったのです。侵略をしてしまった時点で、ロシアの悲惨な未来は決まったといえます。国境近くに大部隊のロシア軍を配置して、恫喝し続けるだけにしておけば良かったのです。GDPが現状では韓国を下回る(一人あたりのGDPでは韓国をはるかに下回る貧乏国)現在のロシアにとっては、それが分相応というものでした。

分不相応な侵略してしまった後でも、キーウに侵攻できなかった時点で、失敗したことを悟り、和平協定を結ぶべきでした。そうすれば、ウクライナ戦争は、戦争ではなく武力衝突という形で終わったかもしれません。

プーチンが判断を間違ってしまったため、クリミアで会戦が起こる可能性が高まってしまいました。もう現在の時点では、特にロシア軍のクリミアでの再編が可能であれば、両者とも正面からぶつかり合う機会をつくり、雌雄を決することをしなければ収まりがつかなくなってしまいました。


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2022年10月10日月曜日

「円安で儲かった37兆円」を経済政策の財源に充てよ…財務省が臨時国会で触れられたくないこと―【私の論評】潤沢な財源があるのに、岸田政権が今国会でまともな補正予算を組まなければ、全く見込みのない政権とみなせ(゚д゚)!

「円安で儲かった37兆円」を経済政策の財源に充てよ…財務省が臨時国会で触れられたくないこと





経済論戦は、野党は攻めどころ一杯

臨時国会が10月3日に召集された。会期は12月10日までの69日間の予定だ。この臨時国会では総合経済対策と補正予算の策定が見込まれるが、野党は旧統一教会問題で追及を強めるとみられる。会期中にはG20など外交日程もあるが、岸田政権の課題は何か。

岸田首相は所信表明演説で、(1)物価高・円安対応、(2)構造的な賃上げ、(3)成長のための投資と改革の3つの重点目標を掲げた。

(1)の物価高・円安対応では、海外要因のコストプッシュをどうするかが問題だ。そのために、二次補正予算案が臨時国会に出される。

岸田政権は、電気代の負担軽減に取り組むとしている。企業・世帯への現金給付案や電力会社への補助金で価格上昇を抑える案などで対応するのだろう。これはミクロ的には悪くないが、マクロの視点が欠けている。

9日F1を観戦した岸田首相

マクロ的対応では、最終消費者への所得補助を行って有効需要を作り、価格転嫁を行いやすくし、最終消費者も実質負担がないようにするのがベストな政策だ。そのためには、現在あるGDPギャップを解消するような規模の経済対策がまず必要だ。

GDPギャップについて、内閣府では2022年4-6月期2次改訂後、▲2.7%としている。しかし、内閣府の過去のGDPギャップは2%に達しても完全雇用を達成しなかったことから、潜在GDP水準は2%は過大といえる。実際には▲4.7%程度、27兆円程度だろう。

GDPギャップが残ったままだと、余分な失業が残り、人手不足にならないので、賃金の上昇も期待出来なくなる。その結果、(2)の構造的な賃上げもできなくなる。

最終消費者における負担軽減という観点から言えば、事務的に容易なのは消費税減税や社会保険料減免で、効果も大きい。しかし、財務省主導の岸田政権は、こうしたマクロ経済の理解が心許ない。この経済分野で野党は攻めどころ一杯なので、ぜひ有意義な国会論戦を期待したい。

今国会で提出される法案は多くない。

次の感染症危機に向け、個人や病院に対する行政権限を高める感染症法改正案や、一票の格差是正策として衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案など18本だ。その他原発再稼働や防衛費増額なども議論になるだろう。

一方、野党からはカルト被害防止法・救済法案を提出する動きがある。これは、安倍元首相の暗殺したテロリストの思う壺だ。宗教法人の主体に着目する規制は邪道である。せめて現行消費者契約法の改正などの行為に着目し、宗教法人に限定しない規制とすべきだ。

筆者としては、特定宗教に限定した国会審議は避けてほしいと思っている。ニュージーランドのアーダーン首相は「(テロリスト)の男には何も与えない。名前もだ」と言ったが、今国会では、その意味でも暗殺者の議論をしてほしくない。そんな話題はテレビのワイドショーにまかせておけばよく、国会に相応しくない。国会は、国家の基本たる安全保障や経済を議論する場だ。

報じられなかった玉木雄一郎の質問

国会の冒頭での代表質問で面白いものがあった。

国民民主党の玉木雄一郎代表が、6日の衆院代表質問で、円安メリットを生かすのなら、外国為替資金特別会計(外為特会)の円建ての含み益37兆円を経済対策の財源に充ててはどうかと提案した。玉木氏は「国の特別会計は円安でウハウハ」と発言した。

これに対し、岸田首相は「財源確保のために外貨を円貨に替えるのは、実質的にドル売り・円買いの為替介入そのもの」などと述べて否定的だった。

実は、玉木氏の外為特会の質問は、彼と筆者とのそれぞれのYouTubeチャンネルでの約束だった(「582回 国民民主玉木代表と緊急コラボ!【後半戦】 )。この約束をやってくれたので、まず評価したい。

こうした国民のためになる面白い議論があったのに、一部を除き一般メディアはとりあげていない。それどころか、どうでもいいような「外貨準備高減少」という記事が各紙に掲載された。

玉木氏の代表質問を取り上げない代わりに、何かネタを財務省がマスコミに配ったのではないかと邪推するほどだった。

「埋蔵金」の再燃を警戒する財務省

かつて「埋蔵金」論争が起こったとき、世論は財務省の批判に向いたので、その再来を財務省は警戒しているのだろう。

実は、外為特会については、筆者はかつて小泉政権の時にやったことがある。小泉政権だったので郵政民営化がまずあったが、もう少し大きなグランドデザインをと言われ、政府のバランスシートのスリム化・効率化を提言した。

郵政民営化は、政府所有株の売却であるのでバランスシートのスリム化だ。政策金融・特殊法人改革もスリム化だ。そうしたコンセプトの中、政府の特別会計を精査していたら、思いの外、余裕資産があることがわかった。

政府のバランスシートを初めて作成したのは筆者であったので、各特別会計の余裕資産を炙り出すのは簡単だった。そこで、それを経済財政諮問会議の議題にした。これが、いわゆる「埋蔵金」である。その絶妙なネーミングとともに、大きな話題になった。

そうした一連の仕事は、2006年「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」という法律でまとめられている。この法律は、全78条であるが、各省にわたっており、霞が関官僚から見れば思い出したくないものだろう。おかげで筆者は「官僚すべてを敵にした男」、財務省からは「3度でも殺したい」とも言われたらしい。

その法律の39条に「外国為替資金特別会計に係る見直し」がある。実際、外為特会から財源が捻出された。

岸田首相の答弁を作成したのは財務省であろうが、当然その当時の議論は知っているだろう。当時、筆者は内閣官房・内閣府におり政権内であったので、財務省からの反論に答えて政策決定した。今回は、その議論の過程が国会審議として行なわれることになる。予算委員会など議論の場はいくらでもある。国民民主のみならず、他党も政府与党をどんどん追及すればいい。

岸田首相の主張する「外貨を円貨に替えるのは実質的に為替介入」という論理はおかしい。円高に対応するためにドル債購入するのが為替介入だ。ドル債は有期なので、例えば3年債なら3年後に償還されるので、その際外貨を円貨に替える。これは、どこの国の介入でも行われる通常の行為だ。それをやらずに再びドル債購入(ロールオーバー)したら、それこそ為替介入になってしまう。

財務省はロールオーバーして「為替介入」しているのに、ロールオーバーしない通常の行為を「為替介入」だとみなしているが、それは本末転倒、きつい言葉で言うと、盗人猛々しい言い方だ。

筆者の言うことを確認するのは簡単だ。先進国は変動相場制であるが、その外貨準備高のGDP比を見ればいい。持っている国でも数%以下だ(下図)。つまり、一時的に介入しても、ロールオーバーせず、途中売却か償還になっているのだ。


こうした議論もかつて行った。その上で、外為特会から埋蔵金を捻出したのだ。はたして今回はどうなるのだろうか。

【私の論評】潤沢な財源があるのに、岸田政権が今国会でまともな補正予算を組まなければ、全く見込みのない政権とみなせ(゚д゚)!

上の記事にもある通り、国民民主党の玉木雄一郎代表が発した「約37兆円を経済対策にあてたらどうか」という提案が、ネット上で注目を集めています。

10月6日、玉木代表は、衆院代表質問でこう述べました。

「緊急経済対策の財源についても提案があります。政府は為替相場への介入原資として、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に約1.3兆ドル、日本円にして約180兆円の資産を保有しており、そのほとんどがドル建の米国債です。 

いま記録的な円安なので、円建ての含み益がそうとう出ているはずです。機械的に計算しても約37兆円あります。総理、外為特会の含み益は本年1月に比べて、いくら出ていますか? 

円安で苦しんでいる個人や事業者がいる一方で、国の特別会計は円安でウハウハです。総理、円安メリットを生かすなら、緊急経済対策の財源として、外為特会の円建ての含み益をあててはどうですか」

この発言に関しては、以下のツイートに動画が添付されていますので、是非ご覧になってください。


この発言について、経済学者の高橋洋一・嘉悦大学教授が上の記事で、YouTubeチャンネルの対談で質問すると約束していたことを明かしているのです。2人はともに財務省出身です。 9月21日に公開された高橋氏のYouTubeチャンネルでの対談で、玉木代表はこう述べていた。

「今年のたとえば1月から今にいたって、だいたいドルの価値は3割ぐらい上がっていますから。110円ぐらいが140円ぐらいになっているわけでしょ。ざっと言って少なくとも30兆円ぐらいはすぐ出る。われわれが言っている23兆円の(緊急経済対策をしても)お釣りが出るくらい」

以下にその動画を掲載します。


国民民主党は9月13日、物価高に対応する総額23兆円の緊急経済対策をまとめています。 国民1人あたり10万円を給付する「インフレ手当」、再生可能エネルギーの普及に向けた賦課金の徴収停止による電気代値下げ、ガソリン補助金の継続とガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」凍結解除、消費税の5%引き下げなどを盛り込んでいます。これだけの対策をしても、お釣りが出るほどの含み益が出ているわけです。

 玉木氏の「約37兆円で経済対策」という提案に対して、ネット上でも歓迎する声が上がっています。

《「円安で儲かった37兆円」を特別給付費として、全国民一律30万円を支給すべき》 《とりあえず、2回目の10万円一律給付金を支給してほしいです》 《円安で益が出た37兆円あれば、国民に物価高対策として10万給付しても13兆円だから、余裕だから2.3回出来るな》

上の記事にもあるとおり、岸田文雄首相は10月6日、玉木氏の質問に対しこう答弁し、否定的な見方を示しました。

 しかし、岸田首相のこうした見方は、上で高橋洋一氏が指摘している通り、全くの間違いです。

 玉木氏は高橋氏との対談でこうも発言していました。

「(政府は)ウハウハだから。一方で、(円安で)マイナスの側面が出る産業とか企業・個人もあるので、ウハウハからウハウハじゃないところにちゃんと移転すればいいわけです。国全体でプラスになる」 

現在日本の大手の自動車、電気などの大手輸出企業は、円安により、かなり業績を伸ばしています。一方、輸入企業は中小企業が多く、昨今の円高によりかなり業績が落ち込んでいます。

このようなアンバランスを是正できるのは、政府しかありません。しかも、そのための財源は潤沢に存在するのです。

「聞く力」をアピールしてきた岸田首相。すぐに否定するというのではなく、反論も含めて、真面目に検討すべきです。

今国会において、仮に岸田政権が真水で10 兆円以下の補正予算しか組まなければ、そのような政権は、国民のことなど眼中になく、財務省との関係性と派閥の力学だけで動いているとみなし、全く見込みのない政権として、自民党が大きく毀損される前に、短期政権で終わらせるべきです。

来年の広島G7サミットを花道として、ご優待いただくべきです。そうでないと、国民生活も自民党自体も毀損されることになります。

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