フィリピン沿岸警備隊が6日に撮影した映像。映っているのは中国海警局の船で、画面手前のフィリピンの巡視船に向けて2度、軍用級のレーザー照射があったと説明しています。AP通信によりますと、フィリピン側は乗組員がレーザーによって一時的に見えなくなるなど身体的な影響があったと伝えました。
中国外務省・汪文斌副報道局長:「中国海警の現場対応は専門的かつ冷静でした。フィリピン側が主張するような事は起きていません。現在、この海域は安定しています」
レーザー照射が撮影されたのは南シナ海にある南沙諸島の近海で、中国が一方的に海域の領有を宣言して以降、フィリピンや他国と海洋権益などで係争中の場所です。マルコス大統領は中国大使を呼び出し、妨害行為に「深刻な懸念」を表明。
軍事ジャーナリストの小原さんはレーザー照射の危険性について、こう指摘します。
笹川平和財団・小原凡司上席研究員:「レーザーポインターでも人の目に当てれば、しばらく見えなくなる。まぶしくてその場で見えないだけでなく、しばらく見えなくなることもあるので、出力をより上げているものであればその期間が長くなるかもしれないし、実際に失明の可能性もある危険な行為」
去年6月に就任したマルコス大統領は前任だったドゥテルテ氏の『親中国路線』から修正する姿勢を見せるなか、今回のレーザー照射が起きた3日後の今月9日、日本を訪問。
浜田靖一防衛大臣:「共同訓練等の一層の促進が期待でき、心より歓迎致します」
中国の海洋進出を念頭に、インド太平洋地域での安全保障面の連携強化を確認しました。
また、今月に入ってアメリカのオースティン国防長官がフィリピンに渡り、アメリカ軍の駐留拠点を増やすことで合意。フィリピンとアメリカの「相互防衛条約」が南シナ海にも適用されることなどを確認しました。
中国外務省・汪文斌副報道局長:「アメリカ側が『相互防衛条約』を用いて中国に対し不当な圧力を掛けてきました。だが、そうしたことで我々の権益を守る決心と意志を揺るがすことは決してできない」
フィリピンによる日本やアメリカとの連携に反発の姿勢をあらわにする中国。
笹川平和財団・小原凡司上席研究員:「今、他国を敵に回すような行動を取り始めたわけではないと思う。反対に今まで中国の行動を公にしなかった国々がしっかり公にし、対応するようになったという方が正しい。ドゥテルテ政権下では少し『中国寄り』の姿勢を示してきたが、『こうした行為は許さない』ことを改めて公にし、抗議する姿勢を示した。それにより『中国は何をやってきたか』が改めて明らかになったということ」
マルコス大統領と習国家主席は先月上旬に会談し、南シナ海問題の外交的な解決で合意したばかりでした。中国を巡っては「偵察用」とみられる気球でアメリカと応酬が続くなか、今度はレーザー照射で別の国とも外交問題に発展し、緊張が高まっています。
バリ島で会談した習近平とバイデン |
昨年11月14日、には習近平は、バリ島で国際会議参加の機会を利用してバイデン大統領と3時間にわたる首脳会談を行いました。会談の中で習主席は「共に両国関係を健全で安定した発展軌道に戻す努力をしたい」と語り、関係改善と対話継続の意欲を示しました。
外相に就任した2日後の今年元旦、秦剛氏はさっそく米国のブリンケン国務長官と電話会談を行い、新年の挨拶を交わしたと同時に、「米中関係の改善・発展させていきたい」と語りました。
2021年2月1日に改正された法律により、中国海警局は中国の人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の指揮のもとで「防衛作戦の任務を遂行する」ことが明確になりました。
海警局の母体はもともと中国国務院(政府)の国家海洋局で、行政組織でした。非軍事色を出して米国や周辺国との軍事的衝突を避けながら南シナ海など実効支配海域を広げる狙いがあっりました。しかし、この時から中国海警局は「準軍事組織」となり、中央軍事委員会の指揮のもとに行動するようになったのです。
さらに、2月8日、外務省毛寧報道官は定例の記者会見で、「どうして中国国防相は米国側との電話会談を拒否したのか」と問われると、「それは国防省に聞いてください」と即答で突き放しています。
米韓、黄海上空で再び戦闘機訓練 中国けん制も狙いか―【私の論評】米軍が黄海で演習するのは、中国の潜水艦の建造・メンテは渤海で行うという大きな弱点があるから(゚д゚)!
中国の潜水艦を含む艦艇のメンテは潜水艦も含めて、大掛かりなものは、すべて渤海湾内の造船所で行わなければなりません。
そうなると、水上艦艇はまだしも、すべての潜水艦は黄海を通り、渤海にでなければメンテはできないことになります。渤海に行くためには、必ず水深浅い黄海をとおらなければなりません。
中共は、なぜこのような不合理なことを未だに続けているのでしょうか。それには、いろいろな観測がありますが、その中で最も合理的と思われるのが、様々な艦艇、特に潜水艦は、中国共産党にとって脅威になるからというものです。
中国の人民解放軍は、普通の国の軍隊とは違い、中国共産党の下に位置し、いってみれば共産党の私兵であり、いくつかの軍(戦区)にわかれており、その軍が、戦車や航空機、艦艇を持ち、核兵器も持っている軍もあるという異様な形態をしています。しかも、この軍はそれぞれ自ら事業も展開しており、これが不正の温床ともなっています。
それぞれの軍自体が、共産党の私兵であり、事業も展開しているのです。日本でたとえると、商社が武装しているようなものです。そうして、共産党は決して一枚岩ではなく、派閥争いが絶えません。最近は、習近平が掌握しつつあるとはいっても未だ完璧ではありません。いつ派閥争いが激化し、軍隊もそれに呼応して、いつ中国共産党中央政府にたてをつくかわかったものではありません。だからこそ、中国共産党は今でも北京の直接の勢力下にある渤海でだけ、潜水艦のメンテを行わせているのでしょう。もし、自らの勢力下にないところの造船所で、潜水艦のメンテを行えば、造反しやすくなり、造反されれば、北京にミサイルを打ち込まれ、中国共産党中央政府は崩壊するかもしれません。それも核を打ち込まれれば、とんでないことになります。そんなことを避けるためにも、今でも渤海でしかメンテをさせないのでしょう。
もともと、このような状態にあるので、習近平の腐敗撲滅などで、軍には不満が蓄積されており、習近平とそれに連なる外交部に対して意趣返しをしているという可能性もあります。
しかし、こうしたことがエスカレートしていけば、最初は偵察気球を飛ばしたり、海警局の船がフィリピン船に向けてレーザーを照射するだけではなく、 軍事行動に打って出るという可能性もなきにしもあらずです。
昔は、いずれの国でも、軍や軍の一部の造反が、権力者の最も大きな脅威でした。中露北やミャンマーでは、いまでもそうなのです。憲法も、法律も共産党の下に位置づけられる中国においては、共産党の中で造反が起これば、これはとんでもないことになるわけです。なぜなら、共産党造反派は被造反派に対して、理屈上は、憲法や法律に縛られずなんでもできるからです。
このこともあるため、中共は海外より、自分の国の内部の都合で動かざるをえないのです。他国の脅威と同じか、時と場合によっては、中共内部の造反のほうが、より脅威になりえるのです。