2021年5月12日水曜日

「一帯一路」を自国から締め出した豪州―【私の論評】一帯一路で中国は大失敗するが、脆弱な国や地域を大混乱に陥れる可能性が高いことに豪州は気づいた(゚д゚)!


 ASPI(オーストラリア戦略政策研究所)のマイケル・シューブリッジ防衛・戦略・国家安保担当部長が、外国関係法に基づき豪州の国全体としての外交政策が首尾一貫したものに整えられたことを評価する論説を、4月23日付のASPIのStrategistに書いている。


 昨年12月、豪州議会において外国関係法が成立した。外国関係法とは言うが、中国の浸透を阻止するための法律である。この法律は、概括的に言えば、州および特別地域、地方自治体、公立大学が外国の諸機関と結ぶ取極めについて、これら取極めを豪州の国益および外交政策との整合性の観点から外務大臣の承認に係らしめるものとして、既に締結された取極めについてもこの基準に反すると判断されれば廃棄する権限を外務大臣に与えるものである。この法律に基づき、4月21日、ペイン外相は、ビクトリア州政府が締結した4つの取極めを廃棄することを決定した。そのうちの2つは2018年及び2019年に締結されたいずれも「一帯一路」プロジェクトに係わる中国の国家発展改革委員会との取極めである。他の2つはイラン及びシリアとの取極めである。

 豪外務省には 1,000を超える取極めが報告されている由であるが、同外相は1つの取極めを承認したこと、残りについては審査を続けるが大多数には何ら影響はないとの見通しを述べた。

 外国関係法の標的がビクトリア州の「一帯一路」に係わる取極めにあることは当初から明らかだったようである。大学については議論があったが、留学生や資金を中国に依存する大学が多く、孔子学院を誘致している大学もあることに懸念があった。結論的には対象となる大学間の取極めは相手の大学に十分な自立性がない場合に限定することで大学も対象に含めることとされた。

 以上の事態の展開の大きな背景は、豪州国内で強まっている中国の豪州国内への干渉に対する懸念と嫌悪であることは指摘するまでもない。

ASPI(オーストラリア戦略政策研究所)

 ASPIの論説が、今回の決定を国の首尾一貫した政策を整えるものであり、主要な政策変更だと評価していることは頷ける。豪州の中国との関係は最悪の状態にあるが、それにもかかわらず、あるいはそれが故に、この政策変更に踏み切ったことは評価に値しよう。キャンベラの中国大使館は「一帯一路」に関する取極めが廃棄されたことに不快感と反対を表明し、中国に対する非合理的で挑発的な行動だと非難している。

 ASPIの論説は、豪州のそれとは対照的なものとして、ニュージーランドの中国との関係及び4月19日のマフタ外相の「龍とタニファ」と題する演説に言及している。この演説は、中国との関係が如何に大切であるかを強調するものであり、そこには中国の悪行を非難する言葉あるいは豪州のような友邦を支持する言葉は一言もない。「人権のような問題は一貫性があり国にとらわれない方法でアプローチされるべきである」と述べているが、ウイグル族への虐待は非難するが、中国を名指しはしないという意味であろうか。

 4月22日、ウエリントンでペイン外相と会談した後の共同記者会見で、「ファイブ・アイズ」を中国に対する意見表明の場として使うことについて問われて、マフタ外相は、「ファイブ・アイズは安全保障とインテリジェンスの枠組みである。特定の問題について、例えば人権の分野で、連合を作るために常に最初の寄港地としてファイブ・アイズを持ち出す必要はない」と述べた。豪州が耐え忍んでいるような中国の経済的ボイコットにあえば、ニュージーランドはひとたまりもないと彼女は思っているのであろう。そのために、「ファイブ・アイズ」はインテリジェンス共有の枠組みであり、政策調整の場ではないとの理屈を述べている。「ファイブ・アイズ」(昨年、香港について共同声明を出したことがあるが、その際、中国は激越に反発した)を持ち出して嫌がるニュージーランドを巻き込む必要はなかろうが、ニュージーランドは中国との抜き差しならない関係に陥ることの危険性は認識している要があろう。

【私の論評】一帯一路で中国は大失敗するが、脆弱な国や地域を大混乱に陥れる可能性が高いことに豪州は気づいた(゚д゚)!

日本と異なり豪州は連邦制をとります。地方政府の権限が強いとはいえ、重要なのは「国防上の問題」です。地方自治体が金目当てに中国とやりたい放題で良いわけがありません。

クアッドもそうだが、オーストラリアが、米国と英国、カナダ、ニュージーランドの英語圏4カ国とつくる機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」も、オーストラリアがこんな状態ではその名が泣こうというものです。機密情報がダダ漏れになるところでした。

しかし、豪州は何とか踏みとどまる方向に動き出したようです。

ここで気を付けねばならないのは、日本も他人事ではないということです。

先日もこのブログに掲載したように、愚かな中国共産党政権は、他国の地方から中央を包囲する「毛沢東戦略」を実践し、その毒牙は日本の地方にも向けられているからです。

微笑みながら相手国の土地やインフラ施設の乗っ取りを狙う「チャーム・オフェンシブ(微笑み攻勢)」がそれです。姉妹都市や文化交流を装った日本の地方自治体への働きかけは彼らの常套手段であり、最も得意とする浸透工作でもあるようです。中国は、かつての西欧列強の植民地経営を一帯一路で実現し、大儲けをするつもりのようです。

中国共産党は、先日も述べたように、大きな勘違いをしています。かつて、西欧列強が行った植民活動は、ほんの一部の例外を除いて惨めな失敗をしています。その結果、ほとんど全部の西欧列挙が20世紀には植民地を手放しました。植民地経営は西欧列強を潤わせるどころか、経済的な負担を敷いていたというのが実情でした。

中国が、土地やインフラ施設の乗っ取りをはかり、それに成功したとしても、かつての西洋列強が失敗したように、それで儲かることはほとんどないのです。これについては、このブログでも以前述べたことがあります。その記事のリンクを掲載します。
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習近平

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみを引用します。
一帯一路は、中所得国の罠に陥ったアジアや中東、アフリカの途上国を相手にせざるを得ないのですが、それらに投資しても儲かることはありません。少なくとも、中国より経済発展している国や地域に投資すれば良いのでしょうが、そもそもそのような国や地域は中国の助けをあまり必要としません。

仮に、中所得国を借金漬けにしたあげく、闇金まがいの取り立ても辞さないようにしたとしても、元々富がないのですから、そこから簒奪できる利益はわずかです。これは、どう考えても成功しようにありません。

ただ、中国が借金をかたに、弱小国の社会を自分の都合の良いように作り変える危険性は否定できません。そうなると、それらの国々の社会は不安定化することになり、地域紛争などに繋がる可能性はあります。

そのため、米国が対抗する方針を打ち出しているのは良いことです。無論米国は、これで儲けるのではなく、中国の影響力を排除するのが狙いです。いくらバイデンであっても、習近平ほど愚かではありません。
かつての、西洋列強が植民地経営に失敗した理由は単純です。結局のところ、自国よりも経済かなり成長している国や地域に投資をすれば、儲かるのですが、そうでなければ、結局損をするだけなのです。

それどころか、独立運動などの鎮圧のために金食い虫の軍隊を大量に派遣したりすれば、大損するだけなのです。さらには、植民地のインフラが乏しければ、当然のことながら、インフラにも手をかけなければならなくなるのです。それどころか、場合によっては、植民地の人々に水・食糧を提供しなけばならないことすらあったのです。

豪州は、先進国ではありますが、中国よりはるかに経済成長しているといえるでしょうか。無論、豪州全体ではなく、地域的にみれば成長している地域もあるでしょうから、そこに投資をして、金を生み出すインフラを取り上げるなどすれば、儲かるでしょう。

しかし、豪州でも、このように経済発展をしている地域においては、そもそも中国の手助けなどいらないでしょう。だとすれば、豪州でも中国は、経済成長していないところに投資をすることになり、やはり失敗する確率が高いでしょう。

この状況は、日本でも変わりないでしょう。この十数年、北海道は経済的には色めき立っています。

特に2018年、冷え込んでいた日中関係をよそに、中国ナンバー2(李克強首相)が北海道の地を踏んだという事実は重いもので、かの国の北海道接近はより確実となりました。「経済進出と世論工作の両面で、北海道に沖縄と同格の重みをもたせている」(在北京の共産党関係者)ということが証明されたかっこうです。

現在、道内で外資によって買収された林地は2725ヘクタール(2019年、道庁調べ)。ただし、これらは申告ベースなので実際はケタが一つ違うはずです。

農地の買収も方々で進んでいます。中国とかかわりの深い日本法人K社(本社・兵庫県)の子会社E社(北海道むかわ町)が400ヘクタールを買収(2012年当時は1170ヘクタールを所有)していますが、解(げ)せないことに、当法人は用途不明の広大な土地を複数の地点に寝かせたままにしたり、個人に転売したりしています。「いったいどこから、何の目的で資金が調達されているのか」「国家的なセクターからの調達なのでは……」と地元のJC理事らは訝しがります。

これらの森林や農地の買い占めによって、中国が大きな利益を得るということはないでしょう。。日本そのものが、あまり経済成長していないし、北海道が急速に成長しているということもありません。無論一部の施設などは、例外となる可能性はあります

しかし、だからとって、これを許容するには問題が大きすぎます。上でも述べたように、中国が借金をかたに、弱小国の社会を自分の都合の良いように作り変える危険性は否定できないからです。そうなると、それらの国々の社会は不安定化することになり、地域紛争などに繋がる可能性はあるからです。

北海道の国土の中国による買収が進むこうしたエリアでは外国人従業員が増え、ガバナンスへの波及も無視できなくなっています。トマム地区の外国人比率は、50.5%(2019年7月末)。とうとう半数を超えました。地元の女性と結婚するなど、何組かのカップルも誕生しています。

トマムリゾートのザ・タワー

外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のためです。

あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村体位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているといえます。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのが米国総領事館だったというところに、行政機構の弛緩が窺えます。

やはり、人口という数の力は厳然とした力であり、武力にも匹敵します。

かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

5人に1人が中国移民、という「戦略」が14年前に提唱されていたのです。そして土地が次々と買収され、実際に人数も増えています。このことが何を意味するのか、少なくとも政治家や官僚は警戒心を持つべきです。

結局、中国は西欧列強がかつて植民地を手放したように、外国の土地やインフラを手放すことになるでしょう。

しかし、注意しなければならないのは、西欧列強が世界中に植民地を持って、それは手放すまでの間には、相当長い時間がかかったことや、植民地と宗主国の間に相当の軋轢を生じましたし、地域が不安定化したことです。

日本も、西欧列強と同じ道を歩もうとしましたが、その日本も結局植民地経営で富を得ることはありませんでした。たとえば、朝鮮半島には、莫大な投資をしましたが、ご存知のように何ら実りの大きいことはありませんでした。

かつての西欧列強がそうだったように、一帯一路や、豪州、日本への投資に結局中国は失敗するでしょう。これは、過去の歴史を真摯に学べば誰にでも理解できます。そのことを、愚かな習近平は理解していないようです。失敗に失敗を繰り返し、その果にどうしようもなくなってから気がつく可能性が高いです。

西欧列強は、自国では民主主義を実施していましたが、植民地人に対して宗主国と同じような権利を認めることはありませんでした。日本だけが例外だったかもしれません。日本が朝鮮半島を統治したときに、韓国の道議会議員の80%が朝鮮人でした。警察官も朝鮮人が多かったのです。

しかし、中国は全体主義国家であり、植民先の国民に対して自国と同じ権利を認めたとしても、植民地は大変なことになります。それどころか、植民地は中国以下の劣悪な社会環境になることでしょう。

このような中国が世界中で、地域を不安定化させ、特に市民社会が脆弱な国や、地域で、大問題を引き起こす可能性が大きいことを、豪州は気づいたのです。日本の政治家や官僚は警戒心を持ち、豪州のやり方を参考にすべきです。

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