2022年5月21日土曜日

企業物価が大幅上昇しても川下まで価格転嫁は難しい 有効需要作る対策は減税だ!―【私の論評】実は、私達は岸田政権により経済的に末恐ろしい局面に立たされている(゚д゚)!

日本の解き方

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 4月の企業物価指数が前年同月比10%上昇の上げ幅となった。企業物価指数は、日銀が公表している企業の間で取引されるモノの価格を示す指数で、企業の仕入れ価格や卸売価格が対象だ。

 1960年以降のデータがあり、前年同月比をみると、2度のオイルショックがあった1973年3月から74年12月までと、79年11月から80年12月までの期間は10%超の上昇率だったが、今年4月はそれ以来の上げ幅となった。

 本コラムでは、30兆円程度以上のGDPギャップ(総供給と総需要の差)があるので、エネルギー・原材料価格の上昇があっても、なかなか消費者物価に転嫁できないということを書いてきた。

 18日に公表された1~3月の実質国内総生産(GDP)速報でも、年率換算で1・0%のマイナス成長なので、まだGDPギャップはある。さらに、企業物価の中身をみても、消費者物価への転嫁ができないとの主張は変わらない。

 企業物価統計には「需要段階別・用途別指数」がある。これをみると、「素原材料」は前年同月比65・5%増、「中間財」が同18・0%増、「最終財」が同4・9%増だった。要するに、物価を「川上」と「川下」に分けると、消費者物価指数が最も「川下」で、企業物価指数は「川上」だ。その企業物価指数の中でも、素原材料が最も川上、その次に中間財、その下が最終財となるが、一番川上のエネルギー・原材料価格が上がっても、川下に行くほど、価格転嫁ができないことを如実に物語っている。

 3月の素原材料は同51・0%増、中間財は同16・4%増、最終財は同4・1%増だった。そして同月の消費者物価指数総合は同1・2%増と、川下ほど転嫁できない状況が明らかだ。

 4月の消費者物価指数総合は、携帯電話料金の値下げ効果がなくなったことで、大きく上昇した。しかし、GDPギャップが相当程度あるので、今後も4%にはなかなか届かないとみられる。そしてインフレ率の基調となるエネルギーと生鮮食品を除く指数は当分の間、2%にもならないだろう。

 1973年と79年には、消費者物価は企業物価に追随したので、今回も追随してインフレになるという意見もある。

 しかし、現状のGDPギャップを見るかぎり、需要不足は広範な業種にあると考えられる。そうした業種では、エネルギー・原材料価格の上昇があっても消費者価格への転嫁ができずにコストアップの影響をモロに受ける。

 転嫁がうまくできるような環境作りが必要だが、まずは最終需要が増えるような有効需要を作らなければいけない。その際、エネルギー・原材料価格の上昇が原因なので、それを緩和するために、ガソリン税減税と個別消費税の減税(軽減税率適用)が適切な対応策になるが、岸田文雄政権では補正予算がショボすぎて、そうした対策ができていないのが残念だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】実は、私達は岸田政権により経済的に末恐ろしい局面に立たされている(゚д゚)!

消費者物価指数はどうなっているのかということについては、昨日このブログに掲載したばかりです。


コアコアで0.8%に過ぎず、総合で2%を超えているのは、エネルギー価格や生鮮食品価格が上がっているためです。その原因は、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁などによるエネルギー価格の高騰が原因です。

昨日の記事では、この状況であれば、経済対策としては、エネルギー価格を下げたり、消費税減税をしつつ、金融緩和策を継続するべきという結論でしたが、上の高橋洋一氏の記事も概ね同じようなことを指摘しています。

ただ、昨日は企業物価が上がっていることは指摘しませんでした。企業物価が上がっているということは、本来ならば日本にとっては、チャンスでもあります。

00年以降をみても、企業物価が上昇したのは、08年のリーマン・ショック直前と、14年の消費増税時があるが、前者では世界経済の急落、後者では消費増税による景気ショックがあり、消費者物価に反映する余裕もなく、その直後に企業物価は急落しました。

今回は、世界での新型コロナ後の景気拡大への方向もあり、日本にとってはまたとないチャンスである。ここで、日本は財政政策と金融政策をフル稼働すれば、GDPギャップ(完全雇用を達成するGDPとの乖離)も縮小し、景気の腰折れもなく、賃金と物価がともに上昇する好循環にも入れるはずなのです。

5月12日には、日銀政策会合が行われています。その要旨をみると、日銀では極めてまともな論議が行われています。一部を以下に引用します。
  • わが国経済は、依然として感染症からの回復途上にあるうえ、 資源輸入国であるわが国では、資源価格の上昇は、海外への所 得流出に繋がるため、経済に下押しに作用する。こうした経済・ 物価情勢を踏まえると、現在の強力な金融緩和を続けることで、 わが国経済をしっかりと下支えする必要がある。
これは現下の日本経済を考えると、当然の結論であり、日銀がこの姿勢を崩さなければ、今後日本が金融政策で大きな間違いをすることはなさそうです。

上の記事で、高橋洋一氏は結論で、以下のように述べています。
転嫁がうまくできるような環境作りが必要だが、まずは最終需要が増えるような有効需要を作らなければいけない。その際、エネルギー・原材料価格の上昇が原因なので、それを緩和するために、ガソリン税減税と個別消費税の減税(軽減税率適用)が適切な対応策になるが、岸田文雄政権では補正予算がショボすぎて、そうした対策ができていないのが残念だ。

 実際、岸田政権の補正予算はあまりにショボすぎます。

政府は、先月まとめた物価高騰の緊急対策を実行するため、一般会計の総額で2兆7009億円の今年度の補正予算案を閣議決定しました。財源は、全額を追加で発行する赤字国債で賄うことにしています。

政府が17日、持ち回り閣議で決定した今年度の補正予算案は、一般会計の総額で2兆7009億円で、原油価格の高騰対策として来月分以降の石油元売り会社への補助金などとして1兆1739億円、予備費を積み増すための1兆5200億円などを計上しています。

2兆7009億円では、あまりに少なすぎます。桁を間違えているのではないかと思えるほどです。ちなみに、これは内閣府が算出した需給ギャップ17兆円よりもはるかに少ないです。これは、高橋洋一氏の算出した30兆円よりは少ないです。

ただ、内閣府という政府の機関が算出しているわけですから、本来は少なくと17兆円の補正予算を組むべきでした。17兆円の補正予算ならば、来春まだ需給ギャップがあれば、さらに補正予算を組めばなんとかなります。しかし、3兆円未満の対策であれば、最初から効果がないことはわかりきっています。

このままの状況だと、最初に価格転嫁ができない中小企業の事業の継続ができなくなるでしょう。たとえば、老舗の飲食店などで長く良心的な商売を続けてきた店が、営業できなくなって店じまいをするようになります。その後は、そのような店だけではなく中小企業で廃業するところが増えてくるでしょう。

株価は最近低迷気味です。これは典型的な先行指標ですから、市場は半年後くらいには間違いなく景気が悪くなるとみているのです。そうして、景気は落ち込み、その後に失業率が11月頃から上がり始めるでしょう。なぜそうなるかといえば、失業率は典型的な遅行指標ですから、景気が落ち込んだからといってすぐに失業率は上がらず半年後くらいから上がりはじるからです。

就活生には、今年は就職浪人などしないことをおすすめします。来年になって、岸田政権の姿勢が変わらない限り、今より良い就職先がみつかる見込みはありません。まともに就職活動がてぎるのは、今年の10月あたりまででしょう。内定が決まっても、来年になって取り消しということもあるかもしれません。こんなことはいいたくないのですが、特に女性には、厳しくなります。油断せずに、10月までの間に内定先を複数決めるべきと思います。

それから、このような状況が続くと、採用の条件として「コミュニケーション能力重視」という会社が増えるかもしれません。これは、以前このブログで指摘したように、いわゆる調整型の社員を採用したいいということなのですが、それではありまに体裁が悪いので「コミュニケーション重視」と言い換えているだけです。それも致し方ないです、企業の責任ではありません。モノが売れないのですから、創造性に富んだ人やチャレンジ精神にあふれる人が、多数社員になられても困るのです。


もし、岸田政権が崩壊したり、岸田政権の方針が変わって、まともな経済対策をやり始めるということもまかり間違ってあるかもしれませんが、今はとにかく最悪の状況を考えて、リスク回避をすべきときです。状況が変われば、来年になってからいろいろ決めても遅くはありません。

続けて脅すようなことをいいますが、日銀の黒田総裁の任期は来年3月までです。4月からの新しい日銀総裁になれば、先にも示したような日銀会合のようなことはなくなり、金融引締論が大勢を締めて金融引締に走るかもしれません。そうして日銀の人事を決めるのは岸田総理です。そうして、この状況が長く続けば、日本はまた「失われた30年」を繰り返すことになります。その間賃金は上がりません。韓国や台湾より、名目でも賃金が低くなるかもしれません。

岸田総理

岸田政権によって、本当に末恐ろしい局面にわたしたちは直面しているのです。昨日もこのブログで解説したように、私達ができるのは、参院選でまともな人を選ぶか、自民党の議員で多数派に属している人で、マクロ経済などに明るい議員などに陳情を続けるしかありません。

間違っても、「悪い物価」「悪い円安」などを煽る人たちに、煽られて、増税すべきとか、金融引締すべきなどと思い込むようなことはすべきではありません。

そんなことをすれば、自分の子供や孫の、就職氷河期で悩まされることに加担することになりかねません。それどころが、自らが数年後に家族離散して、年越し派遣村の炊き出しの行列に並ぶことになるかもしれません。そうなってからでは遅いのです。

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