2022年5月19日木曜日

あの国営放送が“プーチン戦争”批判を展開!ロシアでいま起こっていること―【私の論評】たとえプーチンが失脚したとしても、それは院政に向けたカモフラージュの可能性が高い(゚д゚)!

あの国営放送が“プーチン戦争”批判を展開!ロシアでいま起こっていること

 討論番組でコメントするミハイル・ホダレノク元大佐(「ロシア1」から)

いよいよロシア国内で表立った造反の動きが出てきた──。ロシア軍が苦戦し、ウクライナ侵攻の行く末が見通せないこともあって、有力者や政権内部からの批判を、国営放送が公然と放送し始めている。もう誰もプーチン大統領についていけないということなのか。今後、国民からの支持も失いかねない。

◇ ◇ ◇

「全世界がロシアと敵対している」「状況はこれから悪化する」

16日、国営放送「ロシア1」の番組内で淡々とこう話したのは、ロシア軍退役大佐で軍事アナリストのミハイル・ホダレノク氏だ。

■プロパガンダを真っ向批判

さらに、「『情報の鎮静剤』は飲まないようにしよう」「ウクライナ軍の士気や心理の崩壊を伝える情報が流されることがあるからだ」「そのどれひとつとして現実に即していない」と、ロシア政府によるプロパガンダまで批判したのだ。

「特別軍事作戦」を巡る討論番組で飛び出した異例の発言に、他の出演者はただただ硬い表情を浮かべ、沈黙するだけだった。

現状を苦々しく感じているのは、ホダレノク退役大佐だけではない。この放送の前日、同じ国営放送でアナトリー・アントノフ駐米大使も、作戦をネガティブに捉える有力者の声を紹介していた。アントノフ大使は、政府内の有力者の一部が侵攻をやめようとしていることを示唆。ある人物は、軍を撤退させ「悔い改めたい」と考えていると話した。

ロシアが国際社会から孤立

あのロシアで戦争批判が国営放送で公然と流されるのは異例のことだ。3月中旬には、やはり国営放送のニュース番組で女性スタッフが「戦争反対」と書かれたボードを掲示。あの時、女性は拘束されたが、なぜか今回はスルッと放送されている。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう言う。

「女性スタッフが拘束された3月中旬と現在では、全く状況が違っています。戦況の悪化はもちろんですが、ロシア自体が国際社会から完全に孤立してしまっている。“仲間”のはずの旧ソ連国までがロシアから距離を置いています。現状を嘆くホダレノク退役大佐は、『プロパガンダでなく現実を見ろ』『もう戦争は続けられない』というメッセージを発信したかったのでしょう。ホダレノク退役大佐は軍人で、アントノフ大使は外務省所属。少なくとも軍と外務省がプーチン離れを起こし始めているということ。そこに、メディアまで追随し始めた格好です。国営放送は多くの国民が見ています。今後、現場の兵士の士気に加え、国民感情にも多大な影響が出てくるでしょう」

プロパガンダが通用しなくなれば、ロシア国民は一気に目を覚ます可能性がある。プーチン大統領はどんどん追い詰められている。

【私の論評】たとえプーチンが失脚したとしても、それは院政に向けたカモフラージュの可能性が高い(゚д゚)!

上の記事、ソースは「週刊現代」であり、あまり信憑性はないのではないかとは思っていましたが、ニューズウィークも似たような報道をしており、少なくともロシア軍が苦戦し、ウクライナ侵攻の行く末が見通せないこともあって、有力者や政権内部からの批判を、国営放送が公然と放送し始めたことは間違いないようです。

ただ、これをもってすぐにプーチン氏が弱体化して、クーデターやプーチン氏の失脚が起こると考えるのはまだ時期尚早だと思います。

9日の対独戦勝記念日を境に、有力な後継候補も浮上しています。

戦勝記念日の映像で、プーチン氏がドミトリー・コバリョフ氏という36歳の男性と親しく話す姿が見られ、ロシア国内では後継者のお披露目ではないかとの憶測が飛び交っています。同氏はオリガルヒの息子で、大統領府の局長級とされ、プーチン氏とはホッケー仲間とされています。

戦勝記念日の映像で、プーチン氏(右)がドミトリー・コバリョフ氏(左)という36歳の男性と親しく話す姿

交代の時期までささやかれていまい。6月12日の「ロシアの日」という祭日です。1990年にはロシア共和国の国家主権の宣言が採択され、91年には初の大統領選が行われた日てす。

プーチン氏は退陣し、院政を敷きたいと考えているようです。大統領令でコバリョフ氏を大統領代行に据えて『終戦宣言』を行わせ、数カ月後に大統領選を実施する可能性があります。ただ、スムーズな禅譲が実現できるかどうかは不確実です。

コバリョフ氏と仲が良いFSBが、プーチン氏を説得したとの情報もあります。しかしGRUなど他の諜報機関がコバリョフ氏に不満を持てば、大統領選で野党勢力を支援する可能性もあります。

本当の意味でのプーチン後は誰も知らないというのが現実だと思います。それは以前もこのブログで指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
プーチン氏「がん手術」で権力一時移譲か 米英メディア指摘 「宮廷クーデター」に発展の恐れも 「今回の情報は信憑性が高い」と識者―【私の論評】プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、実はそれを知る者は誰もいない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より結論部分を引用します。 

プーチン氏はかつて、エリツィン氏に代わる若く現代的な指導者のように見えました。西欧では、民主的なロシアへの期待も高まりました。しかし実際には、プーチンは、その後の20年間でロシアを中世に引き戻しました。国家と教会を1つの迫害機構の中に統合し、国民を「伝統的価値」に押し込めただけでなく、国家権力という何世紀も前の概念を復活させました。

プーチンは昔の専制君主のように、自身は不滅だと信じているようです。ロシアに後継者育成計画や緊急時対応計画、もしくは現実には何の計画もないのはこのためです。メディアが「プーチン後」について口を閉ざす理由もここにあります。

ロシアがこれと似たような状況にあったのは、100年も昔のことではありません。スターリンが死去した後には、ロシアのニュースはしばらく途絶えました。米国の識者たちは当時、スターリンには自ら選んだ後継者がいるのか考えを巡らせていました。

しかし、スターリンの没後数年のうちに、後継者育成の計画や手続きがなかったことは明白になりました。ロシアには混乱が生じ、権力闘争が繰り返し繰り返し行われました。この限られた観点で言えば、歴史は悪くない教科書でしょう。プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、それを知る者は誰もいないと考えて差し支えないでしょう。

パトルシェフ氏が一時権力を移譲されるからといって、彼がポストプーチンを担うと考えるのは、早計です。やはり、激しい権力闘争が行われるでしょう。映画『スターリンの葬送狂騒曲』のような状況になることでしょう。
これは、プーチンが本当に失脚したり、死亡した場合にどうなるかということです。現在のロシアでも後継者育成の計画や手続きなどはありません。米国では、大統領が業務が遂行できなくなったり、死亡した場合は、副大統領が大統領の代行をすることが決まっています。副大統領や、さらにその下の閣僚などが死亡した場合も誰が代行するのか決まっています。

しかし、ロシアにはそのようなシステムは存在せず、プーチンが失脚したり、死亡した場合は壮絶な権力闘争が起こり、その闘争に勝利した者が、大統領になることでしょう。一応選挙はするでしょうが、それは形ばかりのものになることでしょう。

一方、プーチンが力を失わず、院政をとるつもりなら、たいした権力闘争も起らず、表面上はスムーズに権力の移譲が行われることになるでしょう。そうしてプーチンとしては、表向きで合法的にも大統領としてなるべく長くとどまれるように画策するとともに、それに失敗した場合にも備えて院政の準備もしつつあったと考えられます。

プーチンの院政への布石は以前から着々と実施されています。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。
プーチン院政への布石か 経済低迷のロシア、政治経験ゼロのミシュースチンが首相に―【私の論評】プーチン院政は、将来の中国との本格的な対峙に備えるため(゚д゚)!

ロシア下院は16日、内閣総辞職したメドベージェフ首相の後任としてプーチン大統領が
指名したミシュースチン連邦税務局長官(左)を賛成多数で承認した。2017年4月撮影
 

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。

プーチンは何のために、院政をするのでしょうか。それは、外交は全くの素人であり実績のないミシュースチン氏を首相に据えたとということで、予測することができると思います。

1966年生まれのミシュスチン氏はシステム工学を学んだ後、経済学の分野で博士号を取得した。税制改革には手堅い実績のある人物です。

プーチン氏は国内政治に関しては、ミスチュスチン氏にまかせて、様々な改革を実現させようとしているのです。さらに、ミスチュチン氏は仮に改革に失敗したとしても、面倒な後ろ盾等もなく、容易に取り替えが聞く人物でもあるのでしょう。

そうして、プーチンは院政を敷いて、自らは国際政治を主に担当しようとしているとみて間違いないでしょう。その国際政治の最優先順位は無論隣国の中国でしょう。

はやい話が、将来本格化する中国との対峙に備えて、それに取り組みやすい最善の体制を築いたのです。
そうしてプーチンがなぜ中国との対峙を本格化させようとするかといえば、現状のよな中国の属国であるかのようなロシアを潔しとしないからでしょう。かつて、中ソは国境紛争などもあって、対峙していましたが、当時はソ連のほうが軍事的に圧倒的に優勢であり、中ソの対峙においてもソ連が圧倒的に有利でした。しかし、ソ連が崩壊してからはそのようなことはありません。

そもそも、現状のロシアは経済(GDP)も人口でも中国の1/10の規模であり、特に中国と国境を接している地域では、中国側とロシア側の人口の不均衡は甚だしく、多くの中国人が越境して、ロシア領内で様々なビジネスを行い、ロシアの住民にとってもなくてはならない状況になっており、国境そのものが曖昧となっており、この状況は国境溶解とも呼ばれていました。

この状況に歯止めをかけ、かつてのソ連時代のような栄光を取り戻すことが、ロシア人ではなくソ連人であるプーチンの野望です。

そうして、その野望の行き着く先は、中国との本格的な対峙ですが、その前に片付けることがあったのでしょう。それがNATOとの対峙を終わらせることです。ただし、NATOと直接軍事衝突してしまっては、現在のロシアでは負けることがわかりきっているので、ウクライナを利用しようとしたのでしょう。

ウクライナを完璧にロシアのものとしてしまえば、全体をロシア領としないまでも、ウクライナに親露政権、できれば傀儡政権を樹立して、ウクライナおよび、NATOに加入していない旧ソ連圏の国々をこれ以上NATOに加入させないこと、あわよくば、NATOに現在加入している旧ソ連圏内の国々をロシア側にとりもどそうとしたのでしょう。

そうすることによって、ウクライナをロシアの盾として、NATOとの対峙を気にせずに、中国と本格的に対峙する予定だったのだと思います。ウクライナに親露政権を樹立できれば、プーチンはウクライナに戦術核を配備したかもしれません。

ただ、プーチンは計算違いをしました。それは、ロシア軍がウクライナを本格的に攻撃するそぶりをみせれば、ウクライナはすぐに怖気づき、大統領や閣僚は国外逃亡して、その機に乗じて首都キエフに侵攻して、首都をおさえた上で、選挙を実施し、親露政権かあわよくば傀儡政権を樹立しようとしたのでしょうが、ゼレンスキー大統領も閣僚も国外逃亡をしないどころか、ロシアと本格的に戦う構えをみせました。

しかも、ウクライナ軍の抵抗は、予想をはるかに上回るものでした。この計算違いは、プーチンも内心認めざるを得ない状況に陥っているとみられます。

そうして、プーチンは院政の準備を本格化させることでしょう。すんなり、プーチンが失脚したとしても、それはプーチンの院政をカモフラージュするためかもしれません。国営テレビのプーチン戦争批判もその一環にすぎないものかもしれません。

米国ならびにその同盟国は、たとえプーチンが失脚して、ロシアがウクライナから軍隊を引き上げたとしても、なお情勢を見極めてから、制裁を解除すべきと思います。

ロシアが新体制になって、プーチンを戦争犯罪人として国内で裁いて重罪を課したり、あるいは戦争犯罪人として、国際的な裁判に差し出せば、プーチンの院政は失敗したとみなせるでしょう。この場合や、プーチンが死亡した場合は、激烈な権力闘争がはじまるでしょう。

ただ、体制が変わったにしても、プーチンのようにソ連の再興を夢見るような人物が権力者になれば、何も変わりはありません。第2のプーチンになるだけです。この場合も、西側は制裁を継続すべきです。そうして、この機会に乗じて、中国にもロシアなみの制裁を課すべきでしょう。ロシアも中国も本質は同じです。

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