──シベリアの雪の下でくすぶる万年火災。従来火災を監視していたロシア軍は、ウクライナ派兵で人員不足に陥っている
シベリアでは毎年、「ゾンビ火災」と呼ばれる野火が繰り返している。雪の下、泥炭質(泥状の石炭の一種)を多く含んだ土壌で火の気がくすぶり続け、春になると再燃するものだ。
今年もシベリア西部では、気温上昇に伴う火災シーズンに突入した。大規模な野火が発生しており、グリーンピース・ロシアによると、4月時点ですでに火災規模は昨年の2倍に達している。
通常は軍隊などが消火に当たる。だが、多くがウクライナに動員されている今年、火災の監視体制は手薄だ。延焼が続けば汚染された大気が近隣国へ流入するほか、メタンガス放出による温暖化要因になるとしてロシア国外でも憂慮されている。
ロシアのニュースサイト『シベリアン・タイムズ』が4月20日に公開した動画には、実際の火災の状況が収められている。炎が立木を呑み尽くし、見渡す限りの空一面を黒煙が覆い尽くしている。
■ 派兵で消防能力に不足
火災は永久凍土を溶かし、地中に封じ込められていたメタンガスを放出する。ガスは周囲に滞留し、さらに森林火災が広がりやすくなるという悪循環を生んでいる。
広大な森林の消防を担うのは、軍隊のほか地元有志の消防団員などとなっており、平時でさえ人的リソースは不足気味だ。米ニュースサイトの『アクシオス』は、ウクライナへの派兵で野火の発見と対処が遅れ、森林火災が「制御不能なまでに燃え広がる可能性」があると指摘している。
NASAラングレー研究所のアンバー・ソジャ研究員によると、大きな火災は衛星写真または通報による発見後、平常時であれば軍用機を投入して消火活動が展開される。「仮に戦争が続いたとするなら、夏のあいだこの(消防)能力が存在するかさえ疑問です」と彼女は憂慮する。
煙は国境を越えて流れ出すため、ロシア西部に位置するヨーロッパ諸国でも空気質の悪化は懸念事項だ。英インディペンデント紙は、「シベリアにおける憂慮すべき悪循環のひとつだ」と述べ、最大で数百万人が煙を吸うおそれがあると指摘した。
■ 火のみえない「ゾンビ火災」
シベリアでは毎年、表面からはみえない火が雪の下でくすぶり続け、春になると大規模な火災のきっかけとなる「ゾンビ火災」を繰り返してきた。
シベリアン・タイムズは昨年1月、ゾンビ火災の様子を収めた動画を公開している。雪に覆われた美しい森林だが、どこからともなく立ち上る煙が充満している点で異様だ。
さらに注意すると、所々の雪が溶けて穴が空いているのがわかる。また、パチパチと何かがはぜる音も時々聞こえる。凍土に含まれる泥炭が燃焼を続け、穴を通じて煙が上がってきているとみられる。動画撮影者の男性は、「まだ燃えている……。」「(燃えている)泥炭があるのだろう」と呟いている。
シベリアは、現在地球上でもっとも速く温暖化が進行している地域のひとつだ。凍土中からメタンガスが放出されることで状況の悪化につながるほか、火災による煤が北極に到達すると、海氷の融解を促進する。
さらには夏場に北極海の氷が失われると、ジェットストリームが乾燥した高温の気流をアメリカ西部に運びやすくなり、米西部でも森林火災が悪化するとの研究(がある。シベリアの火災は極めて広い範囲に影響を与えるようだ。
■ 侵攻の今年、もはや支援の手はなく
ゾンビ火災は毎年雪解けの季節になると、大規模な森林火災を引き起こす。例年、火災の発見と対処は軍の任務の一部となっているが、今年はウクライナ侵攻に人員を割かれ、森林火災への対応が手薄となりそうだ。
インディペンデント紙は、「通常対処を行なっているロシア軍の複数の部隊が戦闘のためウクライナに派兵されていることから、シベリアでは森林火災の確認が行われず、燃えたまま放置されている」と報じた。
過去にはベラルーシを挟んだポーランドからも消防隊が応援に駆けつけているが、制裁の行われている今年はその支援も停止される模様だ。
中央ヨーロッパのニュースを発信する『ヴィシェグラード』は、ロシアの行動を嘆く。「数年前には大規模な森林火災の鎮火を助けるべく、ポーランドから数百人の消防隊員がモスクワ地方へ駆けつけた。これはその際の動画だ。今ではシベリアの半分が燃えているが、誰も助けには来ない。ロシアよ、なぜ友でなく敵を作ろうとするのか?」
ウクライナへの侵攻は、ロシア自身の防火体制にも影を落としているようだ。
【私の論評】ロシアで相次ぐ異変!プーチン政権が弱体化しているという可能性は否定できない(゚д゚)!
プーチン大統領 |
ロシアのプーチン大統領は10日、シベリアで猛威を振るっている火災に対処するため、地方当局にさらなる対応を命じました。シベリアの火災では週末に少なくとも8人が死亡し、数百棟が焼失しました。
国営テレビで放映されたオンライン会議で、プーチン大統領は火災が重大な物質的損害を引き起こし、生命、環境、経済への脅威となっていると指摘。記録的な大火災となった昨年のような事態を繰り返してはならないと釘を刺しました。
北極圏で増え続ける「ゾンビ火災」 |
この森林火災日本も対岸の火事ではないです。実際、日本でもロシアの森林火災の影響を受けたことがあります。これは函館の事例です。
2005年10月30日、私はその頃函館に住んでいたのですが、なにやら朝から焦げ臭い匂いがするので、近所で火災でもあったのかと思ったのですが、ニュースをみてもそのような報道はされていませんでした。
会社にいって、3階から外をみるとなにや空気が濁ったような感じがして、焦げ臭い匂いもしており、これはただごとではないと感じました。
日中には、その原因がわからず、家に返ってテレビの報道でこの原因をはじめて知りました。
当時北海道の函館市内などでは、同年同月30日午前中から煙のようなもので空気が濁る煙霧と呼ばれる現象が続いており、専門家はロシア極東で続いている森林火災による煙が流れてきた可能性が高いと指摘していました。
この火災が「ゾンビ森林火災」なのかどうかは、わかりませんが、ロシアで大規模な森林火災がおこれば、日本も影響を受ける可能性もあることは認識しておくべきと思います。
「煙霧」は煙やちりなどによって空気が濁る現象です。函館海洋気象台によりますと、函館市内などでは30日午前10時半ごろから空気が白っぽく濁って見える「煙霧」が確認され、うっすらと物が燃えたようなにおいも漂っていました。
函館市消防本部には、昼すぎから「辺りが煙っていて、きな臭いが火事ではないか」といった問い合わせがおよそ20件寄せられましたが、火災や野焼きなどはありませんでした。
当時ロシア極東のハバロフスク地方では大規模な森林火災が発生し、煙が広範囲に広がって問題になっていましたが、当時シベリアなどの森林火災の影響について研究している東北大学の工藤純一教授は、「雲があるため人工衛星の画像で確認することはできないが、火災の発生しているロシアの森林から数百キロにわたって南東の方向に煙が流れており、北海道に到達している可能性が高い」と話していました。
工藤教授によりますと、ここ数年ロシア極東での森林火災の煙が北海道に達するケースが相次いでおり、2004年10月にも火災の煙が北海道に達しているのが確認されているということでした。
「煙霧」は煙やちりなどによって空気が濁る現象です。函館海洋気象台によりますと、函館市内などでは30日午前10時半ごろから空気が白っぽく濁って見える「煙霧」が確認され、うっすらと物が燃えたようなにおいも漂っていました。
函館市消防本部には、昼すぎから「辺りが煙っていて、きな臭いが火事ではないか」といった問い合わせがおよそ20件寄せられましたが、火災や野焼きなどはありませんでした。
当時ロシア極東のハバロフスク地方では大規模な森林火災が発生し、煙が広範囲に広がって問題になっていましたが、当時シベリアなどの森林火災の影響について研究している東北大学の工藤純一教授は、「雲があるため人工衛星の画像で確認することはできないが、火災の発生しているロシアの森林から数百キロにわたって南東の方向に煙が流れており、北海道に到達している可能性が高い」と話していました。
工藤教授によりますと、ここ数年ロシア極東での森林火災の煙が北海道に達するケースが相次いでおり、2004年10月にも火災の煙が北海道に達しているのが確認されているということでした。
ロシアのタス通信によると、ウクライナに隣接するベルゴロド州の国防省関連施設で1日、火事があり、1人が負傷。2日には州都ベルゴロドで2度、大きな爆発が起きました。
ベルゴロドやクルスク、ブリャンスク、ボロネジの各州では4月、石油貯蔵所や弾薬庫の爆発、火災が発生。ロシア側は一部についてウクライナのヘリコプターの攻撃によるものだと主張しています。これらの施設はウクライナ東部ドンバス地方で攻勢をかけるロシア軍への補給拠点とみられています。
4月21日にはウクライナ国境から500キロ余り離れたモスクワ北西のトベリで、ロシア国防省の施設が大規模な火災に見舞われ、少なくとも17人が死亡した。施設はミサイルの研究開発拠点として知られていました。
トベリの、ロシア国防省の施設が大規模な火災に見舞れた |
ロシア国防省は先月、「領内への攻撃や破壊活動」への対抗措置としてウクライナの軍需施設への攻撃を強化しました。一方、ウクライナ政府は越境破壊活動の可能性に関しコメントを避けつつ、「(ロシアが)他国を攻撃し、多数の人々を殺す決定をしたからには、早晩そのつけを払うことになる」(ポドリャク大統領府顧問)と突き放しました。
CNN(10日)によると、少なくとも30本もの記事が掲載されたのですが、直後に削除されたといいます。 批判記事では、「プーチン氏と取り巻きは戦後、法廷で裁かれる運命だ」との主張や、先月中旬、ウクライナ軍の攻撃で撃沈されたロシア黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」について、実際の生還者数を偽っていたなどと記されていたとされます。
以上のようなことは、プーチン政権の弱体化を示すものなのでしょうか。ロシアから出される情報は精査することが難しいです。プーチン政権が弱体化しているという可能性も否定できず、崩壊が近いかもしれないです。一方で、ニュースサイトの情報は、西側諸国への偽情報の可能性もあります。今後もロシアからの情報については、さまざまな可能性を考えて精査する必要がありそうです。
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