女性役員の選任を義務付けた州法は「違憲」 米カリフォルニア州裁判所
米カリフォルニア州ロサンゼルスの上級裁判所は17日、州内に本社を置く上場企業に女性役員の選任を義務付けた州法について、違憲と判断した。
カリフォルニア州では2018年、同州に本社のある全ての企業に対し、2019年末までに役員の少なくとも1人は、女性を自認する人物を選ぶよう定めた州法が成立した。違反した企業には最高30万ドルの罰金が科された。
2022年1月までには、義務化された女性役員の人数は、役員が5人以下の企業は2人に、役員6人以上の企業は3人に、それぞれ増えることになっていた。
上級裁判所のモーリーン・ダフィ=ルイス判事は、同州法について、州法と連邦法で定められた平等に扱われる権利に違反していると述べた。
シャーリー・ウェバー州務長官は、上訴すると表明した。
州議会でこの州法の成立に尽力したトニ・アトキンス上院議員(民主党)は、今回の判断は残念だとし、「我々が適法だと思うことと現実が一致しないことがある」ことを思い知らされたと述べた。
アトキンス氏は声明で、「企業の役員により多くの女性がいるということは、より良い意思決定と、競合他社を凌駕(りょうが)するビジネスを意味する」、「今回の残念な判断にかかわらず、我々はこの州法が変わらず重要であると考える」と述べた。
カリフォルニア州では2018年、同州に本社のある全ての企業に対し、2019年末までに役員の少なくとも1人は、女性を自認する人物を選ぶよう定めた州法が成立した。違反した企業には最高30万ドルの罰金が科された。
2022年1月までには、義務化された女性役員の人数は、役員が5人以下の企業は2人に、役員6人以上の企業は3人に、それぞれ増えることになっていた。
上級裁判所のモーリーン・ダフィ=ルイス判事は、同州法について、州法と連邦法で定められた平等に扱われる権利に違反していると述べた。
シャーリー・ウェバー州務長官は、上訴すると表明した。
州議会でこの州法の成立に尽力したトニ・アトキンス上院議員(民主党)は、今回の判断は残念だとし、「我々が適法だと思うことと現実が一致しないことがある」ことを思い知らされたと述べた。
アトキンス氏は声明で、「企業の役員により多くの女性がいるということは、より良い意思決定と、競合他社を凌駕(りょうが)するビジネスを意味する」、「今回の残念な判断にかかわらず、我々はこの州法が変わらず重要であると考える」と述べた。
反対派の反応
この州法に異議を唱えていたのは、保守派の法律関係団体「Judicial Watch」。
性別に基づく割り当てを強制し、カリフォルニア州法と連邦法で定められた平等保護の権利を侵害する州法を、納税者の資金で執行することは違法だと主張していた。
「Judicial Watch」は今回の裁判所の判断を歓迎している。トム・フィットン代表は、問題の州法について、「急進左派による、差別禁止法に対する前代未聞の攻撃」だと批判した。
これまでにこの州法に基づいて訴追された企業は1社もなく、州側も提訴するつもりはないと証言している。それでも、この州法は女性役員の向上につながったと評価されている。
しかし、同州法で申告義務が発生した企業の半数が実際には申告を行っていなかったと指摘する声が上がっている。
また、この州法が施行される数週間前、アレックス・パディヤ州務長官(当時)が、同州法を執行するのは実質的に不可能だと、ジェリー・ブラウン州知事(同)に書簡で警告していたことが裁判で浮上。同州法が不安定な土台の上に成り立っていたとの指摘も出ている。
(英語記事 Californian court strikes down women on boards law)
【私の論評】性差の前に、日本は社会を変えるために実施すべきことがある(゚д゚)!
カリフォルニア州のアレックス・パディヤ前州務長官は2018年、女性役員を義務付けた州法について、実質的に執行不可能だと警告していた |
米カリフォルニア州といえば、オレンジ郡ラグーナウッズの教会で15日に起きた銃撃事件は日本国内で大きく報道されていますが、 女性役員の選任を義務付けた州法は「違憲」との報道はほとんどなされていません。知らない人も多いのではと思い、本日はこの内容を取り上げました。
上の記事にもあるように、2018年8月にカリフォルニア州議会は、米国市場で上場する州内の企業に女性取締役(female directors)の選任を義務付ける法律を可決しました。州知事の署名を得た後、施行されました。
米国企業はデラウェア州会社法を設立準拠法としていることが多いのですが、本社所在地がカリフォルニア州であれば適用され、当面2019年末までに1名以上の女性取締役を置くこととされました。
その後2021年末までに、取締役総数が5名の企業では、女性取締役2名以上、取締役総数が6名以上の企業では、女性取締役3名以上を置かなければならなりました。なお、ここで女性とは、生物学的な性別ではなく、当人が自分自身のジェンダーをどう認識しているかで決まるとされました。
この規定の順守状況を企業から州政府に届け出ることと、州政府が企業の対応状況を集計し、報告書を作成・公表することも定められました。女性取締役数が未達の場合や届出をしていない場合など、最初の違反には10万ドル、2度目以降は30万ドルの罰金が科されることになりました。
女性取締役を置くことで、企業の経営に多様な価値観が反映され、事業を成功に導くとともに、州経済が活性化されると期待されるとされました。米国では、カリフォルニア州が女性取締役の選任を義務化する最初の州となりましたが、欧州では既に多くの国々で上場企業に女性取締役を一定比率選任すべきとする法規定や企業行動規範が策定されており、その動向は日本にも及んでいるとされました。
上の記事にもあるように、2018年8月にカリフォルニア州議会は、米国市場で上場する州内の企業に女性取締役(female directors)の選任を義務付ける法律を可決しました。州知事の署名を得た後、施行されました。
米国企業はデラウェア州会社法を設立準拠法としていることが多いのですが、本社所在地がカリフォルニア州であれば適用され、当面2019年末までに1名以上の女性取締役を置くこととされました。
その後2021年末までに、取締役総数が5名の企業では、女性取締役2名以上、取締役総数が6名以上の企業では、女性取締役3名以上を置かなければならなりました。なお、ここで女性とは、生物学的な性別ではなく、当人が自分自身のジェンダーをどう認識しているかで決まるとされました。
この規定の順守状況を企業から州政府に届け出ることと、州政府が企業の対応状況を集計し、報告書を作成・公表することも定められました。女性取締役数が未達の場合や届出をしていない場合など、最初の違反には10万ドル、2度目以降は30万ドルの罰金が科されることになりました。
女性取締役を置くことで、企業の経営に多様な価値観が反映され、事業を成功に導くとともに、州経済が活性化されると期待されるとされました。米国では、カリフォルニア州が女性取締役の選任を義務化する最初の州となりましたが、欧州では既に多くの国々で上場企業に女性取締役を一定比率選任すべきとする法規定や企業行動規範が策定されており、その動向は日本にも及んでいるとされました。
わが国のコーポレートガバナンス・コードでは、当初から取締役会の多様性を求めていましたが、2018年6月の改訂で、「取締役会は、…(中略)…ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」とジェンダーという用語が付加されました。
企業社会における男女の平等や、女性の社会進出推進についての法制度的対応は、当然のこととされ、一層の充実が期待されましたが、こうした動向に疑問が呈されました。カリフォルニア州の新法に関する論評記事の中には、法制化に厳しい意見も少なくありませんでした。
まず、法的な規制の必要性や規制手段の妥当性への疑問があります。カリフォルニア州でも女性取締役が不在の上場企業がおよそ4分の1ありましたが、女性取締役数は増加を続けており、現状で法的対応をとる必要性は薄いという指摘もありました。また、不平等の是正は、教育による方法もあれば、反差別法で行うということも考えられます。企業法の分野で対応をとる必要はないという指摘です。
取締役会の多様性は、性別に限った問題ではなく、スキル(特に最近はIT系の知見)や専門分野、人種や文化の多様性も企業の活力になり得るとの意見もあります。ことさら性別を取り上げることへの疑問です。
さらに、男女が共に働く職場は上場企業だけではないことから、カリフォルニア州の新法は上場企業の問題としているところも疑問視されていました。未上場企業やNGO、労働組合に多様性が欠如しているという問題も指摘されていました。上場企業は株式会社であり、その取締役選任は株主の自治的な決定に委ねられるべきですが、女性定員制は、その自治権を侵害する可能性があるとも指摘されていました。
企業における女性の処遇を適正化に対しては、法的規制の必要性や相当性については、様々な見解があり得ます。わが国でもいずれ欧州やカリフォルニア州のように女性取締役選任の義務付けが行われるべきとの意見も多かったのですが、今回の米カリフォルニア州の女性役員の選任を義務付けた州法は「違憲」という判決は、こうした風潮に一石を投じるものになったのは間違いありません。
私は、とにかく女性の役員を増やせば良い、女性の政治家を増やせば良いし、それが新たしい考え方であり正義だ、それ以外は古い考えであり、間違いだ、という風潮には以前から疑問を感じてきました。日本には、長い歴史で育まれてきた独特の文化や思想があります。それを、なんでも『ガラパゴス』と呼び、『国際基準』に乗り遅れているとさげすむ風潮に乗っかる必要などありません。
そもそも女性か男性かではなく、取締役は「能力」で選任すべきと思います。不平等な評価システムの結果として取締役に女性がいないのなら問題ですが、そうでないなら女性を取締役にするのが目的になってしまうのは、逆差別です。
この話題はいつも不思議でしかたありません。女性が先で能力には触れていないです。能力がある女性はどんどん上に立つべきですが、女性管理職比率目標ありきで、とにかく上に立たせるのは、本人にとっても周囲にとっても不幸な話です。男女関係なく、平等に評価される社会であってほしいものです。
そうして、私は思うのですが、日本ではやるべきことが他にあります。たとえば、財務官僚や日銀官僚が政治集団のように振る舞い、デフレなのに緊縮財政をしたり、金融引締をしたりと馬鹿真似を繰り返したため、30年間も日本人の賃金は上がりませんでした。
これを変えて、日本経済が良くなれば、賃金があがり、人手不足となり、女性の就業機会も増えます。女性の就業機会が増えれば、企業における性差を巡る不合理も徐々に解消されていくでしょう。女性の就業機会が増えないことには、企業内における性差の問題も根本的には解消されません。
そもそも安全保障がまともでなければ、男性も女性も不幸になります。それに日本特有な鉄のトライアングルも解消しなければなりません。強力な鉄のトライアングルが存在する限り、日本社会は良くなりません。これを根絶することはできないでしょうが、欧米なみに弱めていくことはできるでしょうし、そうすべきです。
そうして、以上は根底に日本社会を良くするために実施するということがなければ、意味はありません。
これらを変えずに、女性役員や女性政治家を機械的に増やしてみたとしても、社会は良くなりません。そもそも、性差の問題も社会を良くするための一つの課題に過ぎません。根本によりよい社会をつくっていくという考えがなければ、社会は良くなりません。
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