習主席(左)とプーチン大統領の盟友関係は続くのか |
ウクライナでロシアの苦戦が続いている。来週9日には戦勝記念日を迎えるが、それまでに事態を大きく打開するのは難しい。
では、どんな対露支援が考えられるか。
ロシアの決定的敗北を避けるためには、「継戦能力の維持」が目的になる。経済支援はもとより、西側諸国に見えない形での軍事支援だ。例えば、中露双方に近いカザフスタンのような国を経由して、武器を供給する可能性があるのではないか。
中国にとっての不確定要素もある。最大の懸念材料は、プーチン氏が戦術核に手を伸ばした場合だ。
中国は「敵に核攻撃されない限り、自分からは核を使わない」という、核の先制不使用ドクトリンを一応、掲げている。だが、ロシアは違う。
プーチン氏は2020年6月、「通常兵器であっても、国の存続が脅かされれば、核で反撃する権利を留保する」という大統領令に署名した。これは「脱エスカレーションのためのエスカレーション」と呼ばれている。「戦術核を一発落とせば、敵は一挙に崩壊し、戦いは終わる」という考え方だ。
プーチン氏は一発逆転を狙って、核の命令書にサインするかもしれない。そのとき、中国はどう動くか。
それでも、ロシアを支援するなら「自らのドクトリンに反してでも、米国と対決する」という話になる。そうなれば、いよいよ、「米国を中心とする西側諸国と、中露の本格対決」は避けられない。
米国は、そんな展開を避けるために、「ジワジワと真綿を締めるように」ロシア軍の戦闘能力を奪っていくだろう。当然、戦争の長期化は必至だ。最終的には、プーチン体制の崩壊を目指す。
それが、ロイド・オースティン米国防長官が言った「ロシアの弱体化」である。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
それどころか、私は全体情勢がいまのままなら「ロシアの敗北は決定的」とみる。なぜなら、強力な経済制裁に締め上げられたロシアの継戦能力は改善する見通しがない一方、ウクライナの戦闘能力は西側諸国の支援で、逆に高まっていくからだ。
ロシアはジリ貧状態で、敗北していくのか。最大の不確定要素は中国である。
結論を先に言えば、中国はギリギリの局面でロシア支援に動く可能性が高い。
習近平総書記(国家主席)にとって最大の同志は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近い将来、台湾をめぐって米国との対決が不可避とすれば、そのとき、ロシアが加勢するかどうかは、習氏の運命をも左右する。習氏は、ここで「プーチンのロシア」を失うわけにはいかないのだ。
振り返れば、開戦直前の2月4日、習氏とプーチン氏は北京冬季五輪の開幕に合わせて北京で会談し、盟約を結んだ。それは、「米国による世界の一極支配を打破し、中国とロシアが加わった多極化体制を目指す」という誓いだった。これこそが、両氏の戦略目標にほかならない。
ロシア軍がこれほど苦戦するとは、習氏にも意外だったにせよ、自分自身の目標達成を困難にするような選択はあり得ない。最悪でも、プーチン氏が失脚しないように背後から支えるはずだ。「いまはまだ、動く局面ではない」と見ているにすぎない。
ロシアはジリ貧状態で、敗北していくのか。最大の不確定要素は中国である。
結論を先に言えば、中国はギリギリの局面でロシア支援に動く可能性が高い。
習近平総書記(国家主席)にとって最大の同志は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近い将来、台湾をめぐって米国との対決が不可避とすれば、そのとき、ロシアが加勢するかどうかは、習氏の運命をも左右する。習氏は、ここで「プーチンのロシア」を失うわけにはいかないのだ。
振り返れば、開戦直前の2月4日、習氏とプーチン氏は北京冬季五輪の開幕に合わせて北京で会談し、盟約を結んだ。それは、「米国による世界の一極支配を打破し、中国とロシアが加わった多極化体制を目指す」という誓いだった。これこそが、両氏の戦略目標にほかならない。
ロシア軍がこれほど苦戦するとは、習氏にも意外だったにせよ、自分自身の目標達成を困難にするような選択はあり得ない。最悪でも、プーチン氏が失脚しないように背後から支えるはずだ。「いまはまだ、動く局面ではない」と見ているにすぎない。
では、どんな対露支援が考えられるか。
ロシアの決定的敗北を避けるためには、「継戦能力の維持」が目的になる。経済支援はもとより、西側諸国に見えない形での軍事支援だ。例えば、中露双方に近いカザフスタンのような国を経由して、武器を供給する可能性があるのではないか。
中国にとっての不確定要素もある。最大の懸念材料は、プーチン氏が戦術核に手を伸ばした場合だ。
中国は「敵に核攻撃されない限り、自分からは核を使わない」という、核の先制不使用ドクトリンを一応、掲げている。だが、ロシアは違う。
プーチン氏は2020年6月、「通常兵器であっても、国の存続が脅かされれば、核で反撃する権利を留保する」という大統領令に署名した。これは「脱エスカレーションのためのエスカレーション」と呼ばれている。「戦術核を一発落とせば、敵は一挙に崩壊し、戦いは終わる」という考え方だ。
プーチン氏は一発逆転を狙って、核の命令書にサインするかもしれない。そのとき、中国はどう動くか。
それでも、ロシアを支援するなら「自らのドクトリンに反してでも、米国と対決する」という話になる。そうなれば、いよいよ、「米国を中心とする西側諸国と、中露の本格対決」は避けられない。
米国は、そんな展開を避けるために、「ジワジワと真綿を締めるように」ロシア軍の戦闘能力を奪っていくだろう。当然、戦争の長期化は必至だ。最終的には、プーチン体制の崩壊を目指す。
それが、ロイド・オースティン米国防長官が言った「ロシアの弱体化」である。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
【私の論評】プーチンはケミカル・アリと同じような運命をたどるかもしれない(゚д゚)!
ウクライナには海軍はあるものの、潜水艦はなく、ロシア海軍から比較すれば、かなり規模は小さなものです。にもかかわらず、ロシアはこれだけ艦船にダメージを受けています。無論、これは、ウクライナ海軍による成果ではなく、陸上から発射されたミサイルによるものであるようです。
この他にも、ウクライナ軍はドローン使いロシア巡視艇2隻を破壊したことも伝えられて舞います。いずれにせよ、これだけロシア海軍の黒海艦隊はダメージを受けているということです。
様々な情報を総合すれば、東部地域でのロシアの作戦は、それほど成果を上げていないようです。戦勝記念日である5月9日までにマリウポリ全体を制圧することもできないでしょう。しかも、ウクライナには次々と西側の武器が入ってきています。このままでは、戦況を好転させることは無理でしょう。
ただ、ロシアの国内事情からいっもてもプーチンはなんらかの形で勝利宣言をしなければいけないです。そうすると、いくつかオプションが考えられます。例えば、東部にはロシアが独立国として認めた2つの人民共和国である、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国がありまず、その独立をさらに拡大したものとして承認するか、もしくはロシアに併合してしまうというオプションもあり得るでしょう。
もう1つのオプションとしては、ロシアがウクライナ宣戦布告をするという説もあります。 飯田)ありますね。 ただ、ロシアが兵員の総動員すると言っても、大した兵力は残っていません。
さらに、もしロシアがウクライナに宣戦布告をした場合には、ウクライナが主権国家であるということを認めることにもなります。そうなるとロシアは「NATOと戦争するのか」ということになります。
そうなればNATO条約の第5条、集団的自衛権の発動になりますから。これは、必ずしもロシアにとって得策だとは思えません。何をするにしても、ウクライナは二つの共和国の独立や併合は認められませんから、長期戦になります。
停戦は、負けそうだと思った側が考えるものです。いまは両方とも勝利を確信しているわけですから、当分は停戦はないです。
ではロシアはウクライナの南部を獲るのではないかと言う説もあります。しかし、先にあげたフリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が撃沈されたかもしないことも含め、様々な情報を見ていると、とてもいまのロシア軍にオデッサを獲る力はないというのが、正しい見方ではないかと思います。
ロシアは、西部の方にミサイル攻撃をしているということですが、ミサイルを1~2発撃ったくらいで戦局が変わることはありません。ウクライナ軍が東部に集中させないためにやったのだと思います。
そういう意味では、ロシアは本当はアゾフスタリ製鉄所のウクライナ部隊を全滅させたいのでしょうが、 マリゥポリの3日間の停戦発表しています。攻防はこれからもずっと続くのです。
マリウポリのアゾフスタリ製鉄所にはまだ民間人がいて、あれだけ国連が動いています。これで総攻撃を行って大量に死者でも出したら、ますます状況が悪くなるため、民間人の退避のためと人道的なふりをしているのです。
しかし、心の底では、ロシアもウクライナを信用していません。ですから、停戦の間の時間は、軍事的に重要な意味を持つ場合があり得るわけですから、お互いに3日間どころか1日の停戦中だって相手が何をするかわからないと思っています。
もう少し民間人を脱出させたところで、ロシアが徹底的に攻撃するということも十分あり得ます。更に、それがうまくいかず、結果は出さなければいけなくなると、例えば大量破壊兵器を使って、戦局を少しでも有利にしようとするかも知れません。
しかし、そのときに核を使うかと言えば、流石に簡単には使わないと思います。 核兵器も搭載できるミサイル演習を実施したということですが、それは威嚇でしょう。やるのであれば、痕跡の残らない化学兵器の方が可能性があるのではないでしょうか。
いずれにしても、この苦境からロシアがどのように脱出するのか。プーチンは相当厳しい状態にあるといえるでしょう。
ただ、ロシア軍がバルト海沿岸の飛び地カリーニングラードで、「イスカンデル」というミサイルシステムの模擬発射を行ったということが報じられました。 戦術核兵器の使用について、昔よりも敷居が低くなっていることは事実です。
5月5日のニュースで、アメリカの戦略コマンド(核兵器担当のコマンド)の司令官が「ロシアの戦術核兵器の問題は、極めて抑止が難しくなっている」と言っています。ですから、まったく排除することはできません。ですが、核兵器よりも先に化学兵器を使う可能性のほうが高いと思います。
米国は戦争目的を明確化しています。目的は2つです。1つ目はウクライナの勝利。2つ目はロシアの弱体化。ロシアが今回と同じようなことはできないほど弱体化させるというのは、先日、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官ががウクライナに行ったあと、ポーランドで明言していました。
現在ではもう、「弱体化」という言葉だけでなく非公式には「無力化」という言葉も使っています。ロシアを「無力化」することは無理だと思いますが、米国はそのような形で腹をくくっている部分があると思います。
米国は一度冷戦でソ連を崩壊させ、冷戦に勝利しているわけですから、その後のロシアに対する寛容な措置が今回の危機を招いてしまったわけですから、その二の舞いは舞いたくないのでしょう。今回は、ロシアを無力化に近づけるつもりなのでしょう。
これからいろいろな国際会議が続くでしょうが、米国はさらに制裁を強めていくでしょう。 ヨーロッパは、既にエネルギー分野での制裁、特に石油のロシアからの輸入をしない方向で制裁しています。石油を年内を目処に徐々に輸入を減らしていくことにするようです。すぐに効果があるわけではないですが、ロシアにとってはますます厳しい状況になるでしょう。
これからいろいろな国際会議が続くでしょうが、米国はさらに制裁を強めていくでしょう。 ヨーロッパは、既にエネルギー分野での制裁、特に石油のロシアからの輸入をしない方向で制裁しています。石油を年内を目処に徐々に輸入を減らしていくことにするようです。すぐに効果があるわけではないですが、ロシアにとってはますます厳しい状況になるでしょう。
ロシア対して、一部、援助をしているのではないかと言われている中国ですが。 中国も困っているでしょう。オリンピック直前にロシアを支持するようなことを言ってしまいましたが、ロシアが勝つかと思いきや、現状のようになってしまい、世界中の批判がロシアに集中して、そこでロシアを支援したら中国も大変な目に遭います。現在は沈黙しています。
中国としては米国を敵に回すわけにもいかないし、ロシアを失うわけにもいかないです。しかし、中国がいまいちばん困っているのはコロナ対策です。ウクライナどころではないかもしれません。
北京全域でロックダウンということになれば、大変です。なぜなら、10月に党大会があります。 そこで習近平氏は「3期目」の国家主席の就任を 華々しく挙行するはずでしたか、ゼロコロナ政策が「失敗」したということになれば、さすがの習近平も持たないでしょう。
実際「ゼロコロナ」の綻びがいろいろなところに出ています。 ただ、これは徐々に緩和していくとは思います。あのよう状態をいつまでも維持できるわけがないです。北京で本格的なロックダウンをしたら大混乱になるでしょうから、緩和はしていくでしょう。
ただし、それには時間が掛かかるでしょう。10月までに完全撤廃というわけにはいかないでしょう。
10月までは、中国は国内に専念して、ロシアに対して援助はあまりしないという方針で臨むからもしれません。というより、国内問題のほうが大変でそうせざるをえなくなるでしょう。そうなると、ロシアの敗北は決定的になります。
ウクライナ大統領府のオレクシイ・アレストビッチ顧問は5日、戦況に関する報告で、「米欧から提供される武器がそろう6月中旬以降」にロシア軍への反転攻勢に乗り出すとの考えを示した。
アレストビッチ氏は「ウクライナ軍の前進が可能になる」と述べ、東部地域などで露軍の撃退を目指す考えを示唆しました。米欧の軍事支援を受けるウクライナは強気の姿勢に転じています。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、ロシアが2014年に併合した南部クリミアの奪還を目指す方針を明らかにしました。
ゼレンスキー政権は3月29日のトルコ・イスタンブールでの停戦協議では、早期停戦を優先し、ロシア軍にクリミアや東部の親露派武装集団が実効支配する地域からの撤退を求めませんでした。
ロシアは侵攻後に制圧した南部ヘルソン州などでの実効支配を強化し、ウクライナの領土分断を図る構えを鮮明にしています。ただ、ここの支配もできなくなる可能性が大きいです。
ロシアの弱体化を目指す米国はそこまで支援するでしょう。ウクライナがクリミアを奪還したときには、プーチンは負けを認めざるを得なくなり失脚することになるかもしれません。
それに、もし戦況を好転させるために化学兵器を用いれば、いずれプーチンは、イラクの故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領のいとこで側近だった「ケミカル・アリ(Chemical Ali)」ことアリ・ハッサン・マジドと同じように「ケミカル・プーチン」と呼ばれ、同じような運命をたどることになるかもしれません。
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