河瀨直美監督 |
河瀨監督は映画の撮影中だった19年5月、激怒して撮影助手の腹を蹴ったと同誌で報道されていた。この件については、事務所の公式サイトで「当事者間で解決をしている」とコメント。
現在開催中のカンヌ国際映画祭で、総監督を務めた東京五輪の公式記録映画が公式上映されるために現地入りしており、どのようなコメントを出すかが注目される。
同誌では、英語が堪能で優秀な男性職員が退職を申し出たため、殴りつけたと伝えており、「怒りをぶつけたようです」という関係者の証言も掲載している。殴られた男性職員の顔ははれ上がり、二度と事務所に戻ることはなかったという。
【私の論評】仕事等で激しいストレスに見舞われ他者に暴力を働くようになれば、仕事を辞めよ(゚д゚)!
上の記事では、映画スタッフへの暴行が報じられた河瀨直美監督とされていますが、それはどういう事件だったのか以下に掲載します。
記事によると暴行があった時期は’19年5月、永作博美(51)主演の映画『朝が来る』の撮影現場でのこと。河瀬監督は出演者の蒔田彩珠(19)が浅田美代子(66)と広島駅前で落ち合うシーンを撮影していたといいます。
映画「朝が来る」のポスター |
そのシーンを撮り終えた後、カメラをカチンコに向けるべきところを河瀬監督は方向を見失っていた様子。その際、後ろに控えていた撮影助手のAさんが、方向修正を伝える意図で河瀬監督の体に触れたといいます。ところが、その瞬間に河瀬監督が「何するの!」と激高し、Aさんの腹を蹴り上げたと伝えられています。その後、Aさんが所属していた撮影チームは降板したといいます。
河瀬監督は「週刊文春」の取材に、トラブルはすでに解決済みとした上で、「当事者同士、および組のスタッフが問題にしていない出来事についての取材に対して、お答えする必要はないと考えます」と回答しています。
河瀨直美氏といえば、今年の東京大学の入学式で、祝辞を述べており、その内容が物議を醸していました。
河瀬監督はウクライナ侵攻について「ロシアという国を悪者にすることは簡単」「悪を存在させることで安心していないだろうか?」と新入生に問いかけたそうです。 この祝辞について、国際政治学者から批判の声が相次いでいました。
東京大学の池内恵(いけうち・さとし)教授は「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ないでしょう」と大学の存在意義への疑問を呈するほどでした。
河瀬監督の祝辞は、東京大学公式サイトに全文が掲載されています。それによると河瀬監督は、奈良県吉野町の金峯山寺(きんぷせんじ)の管長と対話した際のエピソードを紹介。管長が本堂の蔵王堂を去る際に「僕は、この中であれらの国の名前を言わへんようにしとんや」とつぶやいたと明かしました。
河瀬監督の祝辞は、東京大学公式サイトに全文が掲載されています。それによると河瀬監督は、奈良県吉野町の金峯山寺(きんぷせんじ)の管長と対話した際のエピソードを紹介。管長が本堂の蔵王堂を去る際に「僕は、この中であれらの国の名前を言わへんようにしとんや」とつぶやいたと明かしました。
この言葉の真意を正したわけではないとした上で、河瀬監督は菅長の思いについて以下のように想像していると話しました。
<例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?>
こうした見方を紹介した上で「自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要がある」と新入生たちに訴えた。「自制心を持って」侵攻を拒否することを促していました。
この祝辞に関して国際政治学者からは批判の声が相次いでいる。 慶應義塾大学の細谷雄一教授は、ロシア軍がウクライナの一般市民を殺戮している一方で、ウクライナ軍は自国の国土で侵略軍を撃退していると解説。
この祝辞に関して国際政治学者からは批判の声が相次いでいる。 慶應義塾大学の細谷雄一教授は、ロシア軍がウクライナの一般市民を殺戮している一方で、ウクライナ軍は自国の国土で侵略軍を撃退していると解説。
河瀬監督の祝辞を念頭に「この違いを見分けられない人は、人間としての重要な感性の何かが欠けているか、ウクライナ戦争について無知か、そのどちらかでは」と厳しく批判しました。
今回の祝辞があった東京大学の池内恵教授も「通俗的な理解するとこうなるという例。新しい学生が変えていってください」とTwitter上で批判。
「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ないでしょう」と、東京大学の入学式のあり方にも疑問を投げかけました。 東京外国語大学の篠田英朗教授は、前述の池内教授のツイートを引用した上で「『どっちもどっち』論を、超越的な正義として押し付けようとする人々が、この社会で力を持っている」とTwitterで警告を発しました。
こうした川瀬監督の不可解な行動に関して、評論家の上念司氏は、川瀬監督が「ナチュラル・オーガニック系陰謀論にはまっている可能性を指摘しました。
実際に世田谷区に住んでいるかどうかは別として、環境問題に関心を持つ裕福な人がやたらとオーガニック野菜にこだわる傾向というのは、前世紀の終わりごろから確かにありました。
しかしこのオーガニック信仰というのも、20世紀の神話です。神話であるだけでなく、陰謀論やエリート主義に容易に結びつきやすいという厄介な問題も抱えています。これについて、詳細は以下の記事をご覧ください。
特集 なぜオーガニック信仰の人たちは容易に陰謀論を信じてしまうのか詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まさに、日本映画界の重鎮的存在河瀨直美氏は、東大を卒業しただけではなく、2009年、第62回カンヌ国際映画祭で、映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞(フランス語版)」を、女性、アジア人として初めて受賞したエリート中のエリートと言っても良いくらいの人です。
〜〜「20世紀の神話」は今こそ終わらせるとき(第4回)
しかし、陰謀論にはまってしまうと、このような人が、先の東大での祝辞のような発言をしてしまうのです。
現在は様々な陰謀論があります。陰謀論にはまってしまった人たちは、人格が変わったようになり、周囲の人を困惑させることになることが多いようです。誰にでも陰謀論にはまる危険性はあります。
もちろん、陰謀論であろうとなかろうと、どの情報を「正しい」と信じるかは個人の自由です。人に話すのも問題はないとは思います。しかし、自分が陰謀論を眉唾ものだと思っている場合に、身近な人が陰謀論にのめり込んでしまうと、どう接していいか困惑するでしょう。家族や友人が陰謀論にハマっている場合、どのように接したら良いのでしょうか。
結論からいうと、話をしてくるだけなら、否定も肯定もせずにただ聞いてあげるべきと思います。突き放してしまうと、主張を受け入れてくれる仲間同士でしか話せなくなり、ますます思考が偏ってしまいます。話を聞きつつ、ときどき「だけど、こういう意見もあるみたいだよ」と陰謀論以外の話を差し向けると、相手も極端な思考に偏りにくくなるのではないでしょうか。
結論からいうと、話をしてくるだけなら、否定も肯定もせずにただ聞いてあげるべきと思います。突き放してしまうと、主張を受け入れてくれる仲間同士でしか話せなくなり、ますます思考が偏ってしまいます。話を聞きつつ、ときどき「だけど、こういう意見もあるみたいだよ」と陰謀論以外の話を差し向けると、相手も極端な思考に偏りにくくなるのではないでしょうか。
注意すべきは「あなたも陰謀論を信じないとダメ」と、強要してくる人です。陰謀論にのめり込みすぎるあまり、個人の自由を無視して陰謀論を信じるよう周囲に強制する人は、最終的にカルトに近い存在になってしまいます。
今は様々な報道がなされるととも、ロシア擁護派に対する厳しい批判がなされるようになり、親露的発言をしていた人も思考が切り替わってきています。少数派になってきた今、ウクライナ戦争の陰謀論を吹聴する人は、より自分の論を強固にしていかないと立場が保てなくなってきています。そうして中には、どんどん先鋭化していく人もいるのです。
その発露が河瀨直美氏の東大の祝辞だったという可能性は高いです。そもそも、「ナチュナル・オーガニック系陰謀論」を信奉したことにより、ストレスがたまり、一緒に働く人達に対して殴る蹴るの乱暴狼藉を働いたとすれば、これは許されるることではありません。
これに近いことは、最近もありました。それは、財務省総括審議官の小野平八郎容疑者(56歳)が、5月20日逮捕された事件です。小野氏も次の次官候補であり、財務省の中ではエリート中のエリートでした。
《20日午前0時すぎ、東京都内を走行中の東急田園都市線の車内で他の乗客を殴ったり蹴ったりしたなどとして、暴行の疑いがある》(NHKニュース)
ただ、小野平八郎氏は、河瀨直美氏のように陰謀論にはまっていたわけではありません。ただ、陰謀論に近いことを主張していたのは間違いありません。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
財務省の超エリート「次官候補」は何に追い込まれたのか?逮捕劇までに財務省で起こっていたこと―【私の論評】柔軟性がなくなった異様な日本の財政論議に、岸田政権の闇が透けて見える(゚д゚)!詳細は、この記事をご覧いただくものとして、財務省が財政破綻を長い間主張してきたこと、岸田政権においては、財政再建派と積極財政派の対立を意図的に作り出し、両者の言い分をききつつ、財政政策を決めようとしていることを批判しました。
無論財務省は財政再建をすべきと主張しているのですが、積極財政派もかなり理論武装をしており、しかもこちらのほうが、世界的にみれば標準的でまともな政策です。マクロ経済を理解した上で、様々な統計値などを根拠に理詰めで反論されると、反論のしようがありません。それ故、小野平八郎氏は相当のストレスに晒されていたことは間違いないです。
財務省の主張する財政が破綻するから財政再建すべきという主張にはかなり無理があります。このまま主張し続けていれば、それこそ、陰謀論どこかカルトと言われても仕方ない状況になりかねません。
このような状況に対して、高橋洋一氏は財務省に対して警告しています。詳細は以下の記事をご覧ください。
独断的に財政危機をあおる財務省の論法は通用しない 省益より国民の利益重視を
この記事において、高橋洋一氏は以下のような結論を述べています。
財政健全化推進本部は19日、従来の財務省方針どおりの「財政健全化の旗を降ろさず」という提言案としたが、異論が出たこともあって、決定には至らなかった。その後、本部長預かりとなって、政府の骨太の方針に取り込まれる予定だという。
財政健全化推進本部が19日示した案のドラフトは、どうやら小野氏がとりまとめの事務責任者だったようだ。
自分が作った案が財政政策検討本部の提言とならなかったことは、かなりのストレスになったとしてもおかしくない。ただ、現時点では事件の詳細は不明で、暴力は言語道断であることは強調しておきたい。
いずれにせよ、財務省は、会計に関する無知に基づく、独断的な財政危機をあおるのをやめるべきだろう。でないと、本当の財政の姿を国民は理解できない。小野氏も仕事を考え直すべきなのです。それがどうしても財務省内でできないというのなら、辞めるべきなのです。無論他の財務官僚もそうするべきなのです。このまま、陰謀論やカルトになるような組織は、その仕事内容を改めさせるか、それがかなわないというのなら、辞めるしかないのです。それは、ブラック会社など辞めるべきであるのと同じ理屈です。
財務省職員に言っておきたいが、財務省論法を通用させるのはもう無理だ。それでも省益のために働けと言われたら、仕事を考え直すのが、国民のためになるのではないだろうか。
そうして、河瀬直美氏のように何が原因であろうが、ストレスを抱えて、仕事関係で暴力を振るうようになった場合も辞めるべきと思いますし、一時休止してても良いと思います。ただし、回復し、それだけではなくストレスの本当の原因がわかり、今後ストレスを起こすことがないという自信があれば、また仕事を再開しても良いと思います。
ただ、その原因がナチュナル・オーガニック系陰謀論であれば、回復するのは相当難しいと思います。
ドラッカーは仕事を辞めるべきタイミングについて以下のように語っています。
組織が腐っているとき、自分がところを得ていないとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい選択である。出世は大した問題ではない。
― P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』
小野氏は、そもそも財務省という組織が腐っているのですか、やめるべきです。組織が腐っているのてに辞めなかったから、今回のような暴力沙汰に繋がったともいえます。河瀬監督の場合は、ドラッカーの語る原則はどれもあてはまらないですが、それにしても、仕事上のストレスで他者に暴力を働くというのなら、これは他者と仕事することなどできません。辞めるべきです。
ドラッカー氏もこれには反対しないでしょう。そもそも、仕事上のストレスか陰謀論が原因なのか、あるいはその両方で激しいストレスを抱えた挙げ句に他者に暴力を働くというのは、仕事人である前に、社会人として失格です。
そうして、これは何もこの二人だけにあてはまるのではなく、社会人がわきまえておくべき基本的な原則であると思います。この原則に従っていれば、この二人は暴力沙汰をおこさなくてもすんたかもしれません。
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