武器貸与法に署名するバイデン大統領 |
ロ軍の疲弊鮮明 制裁で兵器調達困難に―西側情報筋
バイデン氏は署名に際し「ウクライナ人は日々、命を懸けて戦っている。そしてロシア人がもたらす残虐行為は常軌を逸しており、だからこそわれわれはこの問題に取り組んでいる」と語った。
バイデン政権はこれまでに、ウクライナに対して約45億ドル(約5900億円)相当の軍事支援を供与してきた。同法の成立で大統領はさまざまな手続きを免除する権限を付与され、幅広い支援が迅速化される。
【私の論評】武器貸与法の復活で米国による支援の本気度がこれまで以上に高まる(゚д゚)!
武器貸与法に署名するルーズベルト大統領 |
同法によって大統領は、国防上必要とみなされる場合、外国政府に対して武器・軍需物資を提供できる権限をもつことになりました。同法の実現によって、米国は事実上中立を放棄し、連合国の一員として戦争に関与していきました。
大戦終結までに総額約500億ドルが開国と英国連邦構成国(これら諸国が総額の6割を占めた)、ソ連、中国など38か国に貸与され、連合国が戦争を遂行するうえで大きな役割を果たしました。
これまでにも米国はウクライナに対して大規模な軍事的支援を実施してきました。しかし、今回のウクライナに対するレンドリース法案では、そうした支援の際に障壁となっていたさまざまな手続きなどが不要となり、従来と比較してより迅速かつ柔軟な支援が可能となります。
また、既存の法律に基づく武器貸与の枠組みでは、貸与した武器が破壊されるなどした場合に受け取り国(ウクライナ)がアメリカに対して金銭による返済を行う義務が課されていたり、あるいは武器の貸与期間が5年間に限定されていたりしていましたが、この法案は、これらの規定の適用を免除するというものです。
レンドリース法はあくまでも「武器を含むさまざまな物資を貸与する」ものであり、当然、戦争が終了すればその返済義務が持ち上がってくることになります。ウクライナの場合、これがどのような形で実現するのかは、今後のアメリカと結ばれることになるであろう返済協定の内容次第になると考えられます。
第2次世界大戦におけるレンドリース法をめぐっては、すでに消費した物資の費用については支払いが免除されたものの、未消費物資などに関しては米国からそれぞれの国へと売却されることになりました。たとえば英国は、1951(昭和26)年から50年間の分割払いによって債務を返済することで米国と合意し、幾度かの返済延長を経て2006(平成18)年に全額返済を完了しました。
また、英国は戦時中に、兵器や補給品などを米国へと逆に供与する「逆レンドリース」を行っており、これにより返済額の一部を相殺することで、その減額に成功しています。このように、ウクライナも何らかの形で返済額の一部を相殺することも可能でしょう。
米国の第2次世界大戦参戦前に成立した前回の武器貸与法は、当時その矛先が向けられていたドイツにとっても当初から無視できない存在となっていました。1941年(昭和16年)12月11日に行われた対米宣戦布告において、ヒトラーは武器貸与法について触れつつ、米国が「武器貸与法によって援助する諸国の支配権を持とうとした」とまで明言しています。
ヒトラー |
名前の由来は「(中華民国総統の)蔣介石を援助するためのルート」。中華民国の国民政府は、英米ソなどの援助を受けることで劣勢ながらも徹底抗戦を続けたため、日本は日中戦争勃発から第二次世界大戦の終戦までの長期間にわたり、100万以上の兵力を満州国を含む中国大陸に貼り付けて置かねばならず、国力は疲弊しました。
太平洋戦争の開戦は、中華民国の原動力である援助物資の輸送路である援蔣ルートの遮断もその目的の一つであったと見られています。援蒋ルートにはいくつかありますが、現在の日本では、単に「援蔣ルート」と言った場合、そのうちの一つの「ビルマルート」を想定していることが多いです。
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