2022年5月28日土曜日

就任490日目:バイデン支持率が現代の全大統領を下回る―【私の論評】 バイデンの支持率の低さの本質は、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものだから(゚д゚)!

就任490日目:バイデン支持率が現代の全大統領を下回る


<引用元:ワシントン・エグザミナー 2022.5.25>ポール・ベダード氏によるワシントン・シークレット論説
ジョー・バイデン大統領がついにやった。精彩を欠く指導者の支持率は、現代のどの大統領の政権の同時期よりも低下した。

ファイブサーティエイトは1945年のハリー・S・トルーマンにまで遡った支持率を引用し、政権490日目の支持率がバイデンの平均40.9パーセントを下回る大統領はおらず、それに並ぶ大統領もいなかったと述べた。

歴代大統領の中でドナルド・トランプ、ビル・クリントン、ジェラルド・フォードは、政権初期にもっと低い平均支持率だったこともあったが、バイデンは追い上げて、現在の平均支持率がトルーマン以降の全ての大統領を初めて下回っており、民主党が中間選挙を控える中で厄介な傾向となっている。

また同日、ロイター世論調査会社のイプソスは、バイデンの支持率が過去最低の36パーセントとなったと判定した。

「民主党ではまだ72パーセントがバイデン大統領を支持しているが、共和党では10パーセントのみ、無党派では28パーセントが支持している。だが民主党の中でバイデンの支持率は2週間前の82パーセントから10ポイント低下しており、総合支持率低下の主要な要因となっている」とイプソスは分析結果を説明した。

有権者にバイデン離れを起こす要因となったのは、インフレ、ガソリン価格の高騰、壊滅的な株式市場に対する無策のようだ。

例えばイプソスは、70パーセントもの人が米国は間違った方向に向かっていると考えていると述べた。


「10人に7人(70%)の米国人は、この国の状況は間違った方向に向かっていると考えており、正しい方向に向かっていると考えている米国人は5人に1人(20%)のみだ。これは、26パーセントの米国人が正しい方向に向かっていると答えた2週間前から6ポイント低下したことを意味している。共和党(90%)と無党派(70%)の圧倒的多数は、状況は間違った方向に向かっていると考えており、民主党の約半分(49%)もその感情に同意している」と調査会社は述べた。

もちろん長い4年間の中の1日に過ぎないが、バイデンの支持率は大統領就任からこれまでの中間点以降、着実に低下している。

ファイブサーティエイトによる490日目の大統領支持率のリスト:
ジョー・バイデン 40.9%
ドナルド・トランプ 42.7%
バラク・オバマ 48%
ジョージ・W・ブッシュ 72%
ビル・クリントン 50.9%
ジョージ・H・W・ブッシュ 65%
ロナルド・レーガン 45%
ジミー・カーター 43.1%
ジェラルド・フォード 44.2%
リチャード・ニクソン 57.1%
リンドン・B・ジョンソン 68.7%
ジョン・F・ケネディ 74%
ドワイト・アイゼンハワー 61.3%
ハリー・S・トルーマン 43.1%

【私の論評】 バイデンの支持率の低さの本質は、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものだから(゚д゚)!

バイデン大統領がTwitterで公開した映像には、“兵士”が積み荷を飛行機の中へ運び込む姿が映し出されていた。 

まるで軍事作戦のような名前がついた「空飛ぶミルク作戦」。その正体は、航空機を海外に送り、粉ミルクを受け取るというものです。 


実は今、米国では深刻な「赤ちゃん用の粉ミルク不足」に陥っているのです。粉ミルクが置かれたスーパーの棚は空っぽに。人々が粉ミルクに殺到する事態に発展しています。 

粉ミルク不足のきっかけは今年2月、国内最大手メーカーの粉ミルクを飲んだ乳児2人が細菌感染症で死亡したことです。これにより工場が長期間閉鎖となりました。ミルクの不足は、バイデン政権の支持率低下の要因になっていて、事態の打開に躍起になっています。 

バイデン政権はこの外遊中も連日対応に追われています。日本に協力を求める、いわば「ミルク外交」もあるのでしょうか。 

テレビ朝日は粉ミルクを製造する日本の複数のメーカーに取材。すると、政府から粉ミルクを輸出できる状況か問い合わせがあったことがわかったそうです。 

明治ホールディングスとアサヒグループ食品は「前向きに支援する方針」で、森永乳業もどんな支援が必要か社内で確認中だといいます。

バイデン大統領は、イラン人質救出作戦を強行して失敗したカーター政権が、2期目の選挙で惨敗したようなケースに陥るかもしれません。また、それ以前に、現職大統領でありながら出馬断念に追い込まれたジョンソンのような状況に追い詰められる可能性もあります。

とにかく、現在のバイデン政権の苦境は、アメリカの世論に渦巻いている不満が爆発しそうになっているからです。そして、その不満のほとんどは異常なまでの物価高から来ています。

「ガソリンが以前の倍になった」

「ベビー用のミルクが品不足で、親たちは気が狂いそう」

「中古車が値上がりして新車並みに。新車も手に入りにくい」

「卵が暴騰して、最低でも1ダース3ドル40セント(440円)」

「外食が暴騰して、ファストフードに毛が生えた程度でも一食20ドル」

「衣料品も生活用品も、人気商品に限って品不足」

とにかく、アメリカの世論は怒っています。そして、こうした問題のほとんどが中国との経済関係、そしてウクライナでの戦火から来ています。

ウクライナもそうですが、中国は現在ゼロコロナ政策の失敗でとんでもないことになっている上に、米国との対峙は続いています。この2つの問題はすぐには収まりそうにもありません。

そうして、バイデン政権の人気のなさは、台湾に対する米国の戦略のように、やはり曖昧さからきているのではないでしょうか。

台湾防衛は潜水艦隊が決め手

台湾有事になると、米国の反撃を止めるため、沖縄本島から西を中国は、自ら軍事影響下に入れようとするでしょう。すなわち台湾有事は日本有事なのです。

「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではありません。バイデンの「台湾防衛発言」真意がどこにあるのか、多くの人がその真意がどこにあるのか結局判然としていないようです。

バイデン発言の後に、米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めました。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中です。

ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となりました。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返すことになります。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切ったようにみえます。

バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言しました。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこに米国が安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もありました。

 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由で米国が台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及しています。

道徳とリアルポリティクスの間には大きな隔たりがあるのです。その隔たりがあることを忘れて、失敗する政治家はバイデン以外にも大勢います。

トランプ氏もその例外ではありません。実際選挙戦では「アメリカ・ファースト」などと言って、世界中を困惑させましたが、実際に大統領になってからは、国際政治や外交にも様々な関与をしました。

トランプ氏は、様々な公約や発言をしつつ、決して現実からは目をそらさなかったようです。現実とは、実際に目の前で起こっている事柄です。現実に対処するには、様々な原理を適用する必要があります。無論、現実の中には、原理を適用することでは解決できないものもあります。

しかし、実はそれはわずかです。多くの人が、組織に属していて、そうして組織を巡って様々な問題に出会うことになります。そうして、そうした問題のほとんどは、先達がすでに経験しており、その対処法は原理・原則として継承されています。

経営学の大家、ドラッカー氏が記した言葉に「現実に原理を適用する」というものがあります。

例えば、組織は実は道具にすぎません。人が社会に何らかの役割を果たすために組織は存在し、個人が成長し成果を上げるための道具だというのです。

まずは目の前で起きていることが、いったいどういうことかを認識すべきです。それができないと、対処するのにどういう道具(原理)を使うべきかが分からないからです。自分の中にどれだけたくさんの道具があるかというのは、成果を上げるためには重要な要素となります。

これは、例えば自動車が動く原理を知らなくても、方法を知っていれば自動車は運転できます。しかし、自動車の原理を知っているほうが、よりうまく運転ができるのです。F1のドライバーは当然自動車が動く原理を知っていて、あのような運転ができることになります。

それは大統領の執務でも同じで、閣僚やブレーンの中には、How Toと原理を知るものも多数いますが、それらを利用しつつも、最終的には大統領が現実を把握して、どのノウハウや原理を適用するのか判断しなければなりません。

原理を踏まえた実践こそが難しいのです。ノウハウ・原理を学ぶだけでなく、あるいはそれらを他者から聴いたにしても、それを正しく実践してこそ初めて成果を得られるのです。原理・原則を誰よりも多く知ったからといって、それだけで、それらを実践して具体的な成果を得られなければ、学者としては一流になれるかもしれませんが、優れた大統領にはなれません。

この点においては、バイデンよりはトランプのほうが優れていると思います。バイデンもトランプも数々の失敗をしていますが、トランプはより現実的、バイデンは理想主義的であると私は思います。

対照的なトランプ氏とバイデン氏


ここが、両者の分かれ目になっていると思います。バイデンは現実とじっくりと対峙する前に、まずは理想、理念、原理、ノウハウなどに着目し、それをすぐに現実に適用しようとします。ただ、大きな失敗をすれば、これらを見直すということをします。

トランプ氏の場合は、最初に主義主張をしながらも、現実と対峙して、主義主張や、適応した原理、ノウハウが現実に即していないと判断した場合には、すみやかにこれを変えます。

この違いはどこからでてくるかといえば、やはりバイデン氏は生粋の政治家であり、トランプ氏はそうではなく、企業経営者であるという違いでしょう。

経営者は、民間企業で日々現実世界と対峙して、様々なノウハウや原理を現実に適用します。それが、成功すれば良いですが、失敗すればすぐに売上や利益は激減して、失敗が白日の元にさらされます。いくら、善良であり、道徳的であり、理想を語ったにしても、経済的な利益を出さなければ、経営者は無能の烙印を押されてしまいます。

そのため、嫌がおうでも現実的にならなければなりません。

こうした経験を積んできたトランプ氏は、既存の政治家にはみられないような型破りな大統領になりました。

そうして、結果としてバイデン氏の大統領としての行動は、より「戦略的曖昧さ」が強いものとなり、トランプ氏の大統領としての行動は、より「戦略的明確さ」がより強いものになったのでしょう。

無論、バイデンもトランプも多くの失敗を重ねています。両者とも、曖昧な部分も、明確な部分もあります。ただ、失敗を重ねたにしても、その失敗の背景は両者で全く異なります。

そうして、「戦略的明確さ」がより強いほうが、失敗を重ねたとしても、相対的により国民の支持は高くなるのだと思います。

バイデンの支持率の低さは、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものになっているからだと思います。

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