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2020年6月27日土曜日

【日本の解き方】秋の3次補正と衆院解散観測 経済対策の柱は消費税の減税…予備費10兆円活用で対応可能 — 【私の論評】安倍総理は、先進国定番の大規模な財政出動・無制限の金融緩和政策を実行し、再び強運を引き寄せろ!(◎_◎;)

【日本の解き方】秋の3次補正と衆院解散観測 経済対策の柱は消費税の減税…予備費10兆円活用で対応可能 


自民党の甘利税調会長

 自民党の甘利明税調会長がロイターとのインタビューで、「新型コロナウイルスからの復興に向けて、秋に本格経済対策を打つ予定」だと発言した。対策発表後には「安倍晋三首相が、衆院解散を行う可能性はゼロではない」とも指摘している。

 衆院議員の任期は来年10月までだ。今年10月で丸3年となるが、これまでの歴史では、任期途中で衆院が解散されることが多く、平均任期は3年弱となっている。

 今回は新型コロナウイルスの感染拡大で、東京五輪・パラリンピックが1年延期された。ということは、来年には、それに関連した各種イベントがめじろ押しになることが予想され、解散総選挙どころでなくなるかもしれない。

 逆に各種イベントがないこの夏の政治スケジュールは空いており、コロナ禍によって海外への渡航も制限されている。そこで政治家同士の国内会合があると、話題は総選挙の話題になり、これまでの経緯から「4年目はないだろう」となる。

 しかも、4月と5月の経済状況は、緊急事態宣言による各種の自粛活動もあってひどいものだ。それらが解除された6月以降、経済活動はやや持ち直しがあるが、それでも平年並みに戻るまで3カ月から半年を要するだろう。2回の補正予算により、50兆円程度の有効需要は創出されたが、国内総生産(GDP)の落ち込みをカバーするにはまだ力不足で、3次補正が必要だ。

 そこで、任期3年目が終わる10月までに補正予算のための臨時国会の招集、そこでの衆院解散というストーリーは自然に出てくるわけだ。

 ポイントは消費税減税だ。全国民への10万円の特別定額給付金は、地方事務として行ったこともあってあまりに手間がかかり予想通り日数を費やした。麻生太郎政権時代に実施した経験から、時間がかかることを見越した上で、2回目の給付金を阻止するという陰謀でもあったのかと邪推しそうになるほどだった。だから、筆者は海外の標準策である政府小切手の送付を主張した。

 それに比べれば、消費税減税や社会保険料減免は、効果がすぐ出る政策だ。

 甘利氏は別のインタビューで、消費減税について、財政に与える影響が大きいとして強く否定している。

 ただし、2次補正で予備費が10兆円あり、あと3兆円の追加補正をすれば、1年間の時限措置として消費税5%分の減税の財源確保ができ、甘利氏の懸念はなくなる。

 緊縮財政のドイツですら消費減税をやろうとしている。日銀の金融緩和政策との合わせ技なら、財政問題が生じない。

 今回のコロナ・ショックは、生産の落ち込みもあるが、それを上回る需要の落ち込み、特に消費需要の消滅の影響が大きい。これを喚起するには、消費減税が政策として望ましい。

 経済対策といいながら、消費減税を外すのは、まさに画竜点睛(てんせい)を欠くというものだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は、先進国定番の大規模な財政出動・無制限の金融緩和政策を実行し、再び強運を引き寄せろ!(◎_◎;)


今年の3月、昨年10月の消費増税の影響を受けた10~12月期のGDPが前期比7.1%減(年率換算)という衝撃的な経済統計が発表されました。しかし、コロナショックの影響が含まれた今年1~3月期は前期比3.4%減(同)、4~6月期も前期比25%減程度(同)というすさまじい数字が出るでしょう。このGDPを取り戻すには、総額で50~100兆円の真水が必要になります。

第2次補正予算では、25兆円の真水を出すべきだったのです。そうして最低ラインの50兆円になりました。2回目の10万円給付、家賃減免や雇用調整金の増額など、実施すべきことはいくらでもあります。

労働者の休業手当を助成する雇用調整助成金は、事業主が毎月支払っている雇用保険料の一部が原資です。民間保険なら〝万が一〟のとき、だいたい1週間以内で保険金を受け取れるはずです。

ところが、雇用調整助成金は申請が通るまでに1カ月以上もかかってしまうのです。実際4月下旬で2~4月に申請された案件の1%しか認可されていないとのことです。

雇用調整助成金について説明する厚生労働省のHP

これでは全く〝保険〟ではないではありませんか。事業主はいったい、何のために雇用保険料を支払ってきたのでしょうか。それは、今回のような万が一のためです。その万が一がいまやってきたのです。官僚は自らの天下り先に潤沢な資金を使ってきたはずなのに、天下り先の事業者も含まれるであろう、事業主に対してここでケチるなど全くもって信じられないことです。

財務省は、何のために省益を追及するかといえば、高級官僚が天下り先で、超リッチなセレブライフを謳歌するためのものであったはずです。無論私は、これが正しいことだと言っているわけではありません。

財務省の立場に立ったとしても、財務省はその省益すら忘れて、ひたすら緊縮に走るようになってしまったのかと思ってしまいました。だとしたら恐ろしいです。本来の自分たちの目的も忘れ、ひたすら緊縮に走ることが善であるという、宗教団体にでもなってしまったのでしょうか。

この未曾有の緊急事態のど真ん中で、国際情勢や国内情勢にも無頓着な財務省の盲目的な緊縮イデオロギーこそ〝日本の敵〟であることがはっきりしたと思います。その最中に、専門家チームに経済の専門家4人が加わりました。しかしメンバーの1人、小林慶一郎東京財団政策研究所研究主幹は筋金入りの増税派、財政破綻論者です。東日本大震災後のように、「復興税」が導入されるようなことがあれば、日本経済は終わりです。


これは、自民党の主導で第2次補正予算が検討されたので、財務省が〝緊縮牽制球〟を投げたのでしょう。西村康稔経済再生担当相はツイッターで、「(前略)任命に際し本人と何度も話しました。最近の氏の論文では、今は財政再建にこだわらず国債発行してでも厳しい状況にある人の支援を行うべきと、財政支出の重要性を主張しています。経産省の後輩でもあります」と投稿しましたが、大丈夫でしょうか。

財務省は復興税だけでなく〝2匹目のドジョウ〟を狙っている気さえします。緊急経済対策で財政支出を強いられるので、財政悪化を理由に復興税、その勢いで消費税も12%、15%へホップ・ステップ・ジャンプという具合に増税キャンペーンを始めるかもしれません。要注意です。

一方、日銀は4月27日の金融政策決定会合で、国債の買取について「年間80兆円」という上限の撤廃を決めました。無制限の国債買取は米国のFRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)も実施していることです。しかし上限を撤廃ところで、これが現実的な財政出動に結びつかなければ意味がありません。

「無制限」というと聞こえは良いですが、日銀の年間国債買取額は2016年9月に長期(10年物)国債金利を0%程度で推移するように国債を買い入れるイールドカーブ・コントロールを導入してから、年間20兆円ベースに減っていました。これでは、白川方明前日銀総裁の頃と変わりません。〝黒田バズーカ〟は鳴りを潜め、黒田総裁の〝白川化〟してしまい「80兆円枠」は実績と乖離し、有名無実化していました。コロナショックを口実に撤廃しただけのことです。

わざわざ「無制限」といわなくても、20兆円ベースの現場では60兆円くらい国債を追加購入する余裕は十分ありました。25兆円の真水など造作もなくできたのです。これからは口だけでなく、実際にどれくらい購入するかが重要です。政府・日銀の連合軍をつくり、財政を気にしないでカネを刷れば良いのです。

これについてはこのブログでも何度が主張しましたが、政府が発行した国債を日銀が買い取れば、財政への負担はありません。利払い費が国庫納付金として政府に戻るくらいですから、財政負担など全くありません。

国債を日銀がいくらでも買い取るという仕組みはできました。政府と日銀は協調して、前例のない大規模な財政出動を行うべきです。思い切って「3年間消費税0%」というスローガンを打ち出せれば、国民も元気になると思います。

党派を超えて減税運動が起きていますが、消費減税は是が非でも実現させるべきです。「ゼロ」はムリなら、時限的に5%へ下げるべきです。社会保険料の免除もすぐに実行すべきです。「支払猶予」じゃなく、「免除」です。社会保険料はすべての国民が払っているのですから、止めるのも簡単です。なぜ実施しないのか、本当に不思議です。

今の状況を見ていると、ある意味で安倍首相は強運な政治家だと思います。昨年10月の消費増税に加えて、今春に予定されていた習近平の国賓招聘が実現していたらどうなっていたでしょうか。日本経済も復活させられず、安倍首相の肝煎で確立させた対米機軸外交も台無しになったでしょう。

保守層の総スカンを食らってオリンピック後、自民党内外の安倍おろしの圧力にあい惨めに首相の座を降りるだけだったでしょう。しかしここで、誤解を恐れずにいえば、安倍首相にはコロナショックという機会が巡ってきたのです。財務省との戦いに勝ち、大規模な経済対策を実施できれば、もう一度求心力を高めることができるはずです。

安倍首相には2度目の〝ちゃぶ台返し〟で、家賃補填、休業補償の拡充と消費減税を実現すべきです。ただ、安倍首相のまわりには緊縮イデオロギーに染まった人たちが囲っています。与野党問わず政治家は相変わらずですし、軽減税率という〝毒まんじゅう〟を喰らった新聞も、社会保険料の据え置きや法人減税というニンジンをぶら下げられた経済界も財務省の味方です。

それでも第1弾の緊急経済対策はギリギリ合格点であったように、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟に近づいています。そして国民のマクロ経済政策への理解は、東日本大震災のときよりはるかに高まっています。これが日本経済復活への一縷の望みです。

安倍首相は、大規模な財政出動・無制限の金融緩和でふただび強運を引き寄せていただきたいです。そうすれば、また総裁選四選の目も出てくるかもしれません。



私自身は、安倍総理の政策を是々非々で見ており、安倍首相ファンというわけではないのですが、現行の安倍政権は、過去20年では、無論満足とはいかないまでも、最もパフォーマンスの良い政権だと思います。それにポスト安倍の顔ぶれを見ていると、いずれを見ても安心できないのです。特にマクロ経済と安保の両方に関してある程度は妥協したとしても、それでも安心して任せられると思える人材が見当たらないのです。

無論野党にも残念ながらそのような人材は見当たらないのです。本当に情けないです。安倍首相には、ポスト安倍を一度だけ実行していただき、次世代の首相にふさわしい人物を選ぶなり、育てるなどをしていただきポスト安倍の日本の安寧をより確かなものにしていただきたいのです。

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2019年11月21日木曜日

米中冷戦、そろそろ「詰みつつある」といえる理由―【私の論評】中共は少子高齢化に対応可能な制度設計や、産業構造に転換できなければ、やがて倒れる(゚д゚)!

米中冷戦、そろそろ「詰みつつある」といえる理由
中国当局はどう出るつもりか


制裁関税撤廃」のメリット

世界の株式市場を混乱させている米中問題だが、現状は米中ともに制裁関税の緩和、ないしは撤廃に向けて妥協点を探る展開のようだ。もっとも、「交渉ゲーム」は騙し合いの側面もあるので、両国がすんなりと妥協点をみいだすわけではないだろうが。

確かに、この「制裁関税の撤廃」は米中双方にメリットがある。

米国側からみれば、中国は農産物等の一次産品の輸出先として無視できないくらい大きな国である。日米貿易協定によって日本が米国からの農産物の輸入を多少増やしたところで中国向け輸出の減少はカバーできない。

なによりトランプ大統領にとっては、来年の大統領選に向けて、農産物の輸出を回復させなければ、共和党の支持基盤である中西部、南部の得票を落とすことにもなりかねない。



一方、中国にとっても米国が重要な輸出相手であることは言うまでもない。だが、より深刻なのは、米国からの輸入の激減である。

現在、中国では、生産者物価の低下と消費者物価の上昇という「インフレ率の分断」が発生している。9月時点で中国の生産者物価は前年比で1.2%の低下となっている。中国の生産者物価は月を追う毎に低下幅が拡大しているが、この生産者物価の低下は主に製品輸出の減少による製造業部門の需要低迷によるものである。

一方、消費者物価は9月時点で前年比3%の上昇となっており、上昇幅はじりじりと拡大している。この消費者物価の上昇は食品価格の高騰によるものである(食品価各は9月時点で前年比11.2%の上昇)。

豚コレラの影響で豚肉の供給が激減していることに加え、代替品需要として鶏肉等の価格が高騰していることが主因とされているが、米国からの輸入依存度が高い飼料の高騰も影響を与えている可能性が高い。

中国には雇用統計が存在しないため推測の域を出ないが、生産者物価の低下は企業のマージンの減少へと波及し、これは、最終的に雇用調整から中国国民の所得環境を悪化させるだろう。

つまり、このままでは、中国経済は、所得環境の悪化と同時に生活コストの上昇に見舞われる懸念がある。そして、これは、消費の減速を通じて、さらなる景気悪化につながると考えられる。

2019年7-9月期の中国の実質GDP成長率は前年比で6.0%まで減速している。「6%成長」といえば、一見、高成長のように思えるが、1人当たりGDPの水準が低い新興国がこの程度の成長率を実現するのはむしろ当たり前のことだ。

逆に新興国の段階で成長率があまりに低い国では社会不安の増大から治安が悪化し、政治体制も不安定化する。中国の政策当局は、長年7%成長を「死守すべき最低限の防衛ライン」とみなしてきたといわれているが、これは、実質経済成長率が7%を下回ってくると国民が日々の生活に不満を持ち、治安悪化などの社会不安が高まる懸念が増大するという意味である。

中国は当局による情報統制が強固なので、社会不安や暴動などが中国全土でどの程度発生しているか、実態は定かではないが、中国事情に詳しい論者の中には各地でかなりの数の暴動が起こっているとする人も少なからず存在する。

それが事実であれば、このまま中国の経済成長率の減速が止まらなければ、中国経済の先行きが心配という話どころか、統治システムの維持も難しくなってしまうかもしれない。その意味でも、制裁関税の撤廃は、むしろ中国側にこそ大きなメリットがあると考える。


米国の経済政策が大きく変わった

だが、この動きは必ずしも、「米中融和」を意味するものではないと思われる。

10月4日にワシントンで行われたペンス副大統領の演説は、『米国は貿易などの経済に限らず安全保障分野においても中国に対して「断固として立ち向かう」』と対中強硬姿勢を維持する内容であった。

これは、米中問題が、これまでの「通商問題」から「安全保障問題」へと、より次元の高いレベルに引き上げられたことを意味する。

政府間の交渉には通常、法的な根拠があるが、米中問題は、「通商法(スーパー301条がその代表例)」から「国防権限法」へその根拠が変わったのかもしれない。

「国防権限法(NDAA)」とは、米国防省の年間予算を規定するために年度毎に策定される法律である。名称が示す通り、「国防」という観点から制定される法律だが、2019年の国防権限法では、その中で「輸出管理改革法(ECRA)」が新たに制定され、AI、量子コンピューター、次世代暗号技術等の最先端の情報技術を「新興技術」、もしくは「基盤的技術」と定義し、他国との取引(輸出)に規制が課せられることとなった。

ECRAは既存の技術の輸出に関する規制であるが、これに加え、同時に制定された「外国投資審査現代化法(FIRRMA)」では、この「新興技術」「基盤的技術」に対する他国からの対米投資規制も強化された。

これは、外国による、米国国内で現在開発中の技術への規制である。いいかえれば、米国(ベンチャー)企業への出資、もしくは、M&Aを通じた最先端技術の獲得を事実上停止させる法律である。

今後、少子高齢化がこれまで経験しなかったスピードで進む可能性が高いといわれている中国において、先端技術の取り込みによって産業構造を転換させると同時に生産性を引き上げることは必須事項ともいえる。当然、技術の取り込み先として米国を想定していた中国だが、それが「国防権限法」によってほぼ不可能となった。

このように、「国防権限法」は中国を意識して制定されたことは明らかであるが、重要なのは、輸出や投資といった経済政策に属する案件が「国防法」という安全保障政策に関わる法律によって規定された点である。

これは、経済政策という枠組みからみた場合、大きな変化である。


「中国製造2025」失敗の可能性も

トランプ政権が成立して以降、トランプ政権を支持する軍関係者らの間では「DIME」という言葉が使われている。

「DIME」とは、「Diplomacy(外交)、Intelligence(防諜)、Military(軍事)、and Economy(経済)」の略語であり、経済政策を外交、情報収集活動、安全保障政策と一体化して考える政策アプローチのことである。

これまで経済政策といえば、金融政策や財政政策(公共投資や減税)を用いた景気対策や規制緩和が主で、国防や安全保障政策とは独立していた。そのため、学界での経済政策の国際協調の議論も、お互いの国の「経済厚生」を如何に高めることができるかという観点から議論されてきた。

そして、その結論は、変動相場制の下では、各国が独立して自由に経済政策を実施することが経済厚生上、最適であるという結論になっていた(この分野で世界的な業績を上げられているのが内閣府参与の浜田宏一イェール大学名誉教授である)。

だが、「DIME」のアプローチでは、輸出規制や投資規制によって、自国経済の将来の成長にとって重要な産業や国益上、重要な産業は積極的に保護育成していこうという考え方が採用される。そして、さらに、そこに「安全保障」という観点が加味される。

この「DIME」だが、まだほとんど研究対象として議論されていないように思われるし、筆者が検索する限り、該当するような論文もない(もっとも国防や安全保障が絡んでくると論文の良し悪しで評価すべきものではないかもしれないが)。

以上より、今後、米国は、この「国防権限法」の対象外である品目については、制裁関税を撤廃していくことになるだろう。そして、これによって、現在の中国経済の窮状は、少しは緩和されるかもしれない。

だが、それは目先の、ごく短期的な観点での議論である。むしろ、中長期的にみれば、「国防権限法」が機能するということは、そのまま「中国製造2025」の失敗の可能性が高まることを意味する。中国にとって「中国製造2025」の失敗は、将来の低成長局面入りを意味する。下手をすると、「低所得国の罠」に陥ることになる懸念もある。

筆者の個人的な見解をいわせてもらえば、中国は覇権を取るといった野望を捨て、思い切って対外開放路線に転換することで、国内に外資企業を多く取り込んだほうが、サービス業を中心に雇用の確保と所得の安定的増加につながるため、将来の安定成長に寄与するように思える。

中国当局の出方が注目される。


【私の論評】中共は少子高齢化に対応可能な制度設計や、産業構造に転換できなければ、やがて倒れる(゚д゚)!

冒頭の記事では、中国の将来に関して、主に経済について語られています。少子高齢化についても一部は語られていますが、「今後、少子高齢化がこれまで経験しなかったスピードで進む可能性が高いといわれてい」と語られているのみです。

そのため、以下には中国の少子高齢化の実体について掲載しようと思います。

中国の人口は年内に14億人に達する見込みです。当面は人口増が続きますが、国連の推計によると、2027年ごろにはインドに逆転され、世界一の座を明け渡すことになります。2028年の14億4200万人をピークに減少に転じる見通しで、そこからは「苦難の時代」に直面すると予想されています。




中国は古くから「人口統計マニア」の国です。最初に全国的な戸籍が作られたのは前漢の末期、西暦2年にさかのぼります。「人口5959万4978人、戸数1223万3062戸」と一桁まで記録されています。人口の増減は税収に直結し、政治の善しあしを表す指標とみられていたため、歴代王朝は常に人口を調査したのです。


それから長い間、人口が1億人を超えることはなかったのですが、近世の清王朝になると爆発的に増えました。歴代王朝の中でも領土が広大で、トウモロコシやサツマイモなどの外来作物の普及などが影響したようで、1840年のアヘン戦争時には人口4億人に達しました。

そして中華人民共和国が誕生した1949年では5億4000万人。その後の70年間でさらに8億人以上も増えたのですが、それでも1979年から始めた「一人っ子政策」により人口を抑制しました。


この「一人っ子政策」が中国政府は「4億人以上の人口抑制効果があった」と説明しています。一昨日には、このブログでこの「一人っ子政策」は、民衆レベルでどのように実行されたのかをドキュメントした映画「一人っ子の国」を紹介させていただきました。この映画「一人っ子の国」で中国は自国国民に対して、想像を絶する、人権侵害をしていたという戦慄の事実が明らかにされています。

その一人っ子政策も2015年に廃止され、翌年からすべての夫婦に2人までの出産を認めました。社会の中核を担う生産年齢人口(15-65歳)が減少に転じたためです。高齢化も急速に進み、2017年の65歳以上の高齢者は1億5847万人となり、人口の11%に達しました。

それでも出生率が急激に向上するという見方は少ないです。一人っ子政策が浸透し、各家庭は1人の子どもに小さい頃から家庭教師をつけ、多くの習い事をさせ、大学生になれば海外留学させるなど、高学歴で良い就職先を手に入れるため、収入のほとんどを子どもにつぎ込んでいます。苛烈な競争社会の中、2人目、3人目の出産は難しい状況です。

また、社会の都市化が進み、若者の高学歴化が進む中、先進国と同じように男女とも結婚年齢が上がってきています。初婚年齢は男性が28歳近く、女性が26歳近くになり、今後も晩婚化が進みます。結婚しない若者も増え、離婚率も高まっています。

「男余り」も深刻です。出生人口の性別割合は人種に関係なく、自然な状態では女を100とすると男は105前後となります。男の若年死亡率が高いため、成人したときに男女の数が対等になるよう「神の見えざる手」がはたらいているともいわれます。しかし、中国では一人っ子政策を始めてから男児の出産が異常に増えました。

労働力や老後の生活保障の担い手として男子を求め、妊娠しても女児と分かると中絶したり、遺棄する家庭が続出しました。中国の産婦人科では赤ちゃんの性別を出産するまで原則教えないのですが、違法な超音波検査が横行しており、妊娠中に性別を調べることは難しくないです。

男女の性別比率は女が100に対し、男は120にまで増えました。最近は100対110ほどになったのですが、結婚適齢期の男性はすでに女性より数千万人多いです。経済力で劣る農村部にしわ寄せが来ることになります。

国連の人口予測では、2035年に中国の65歳以上の高齢化率は21%を超え、「超高齢化社会」が到来します。「未富先老」(豊かになる前に老いを迎えること)が懸念されています。

中国政府はこうした問題を指摘されるまでもなく理解しています。中国メディアによると、早ければ2020年には「二人っ子政策」も廃止し、産児制限を完全撤廃するとみられています。今後もさまざまな出産奨励策を打ち出していくでしょう。

ただし、冒頭の安達 誠司氏の記事にもあるとおり、少子高齢化が進む中国では、先端技術の取り込みによって産業構造を転換させると同時に生産性を引き上げることは必須事項ともいえるわけですが、技術の取り込み先(はっきりいえばコピー先)として米国を想定していた中国ですが、それが「国防権限法」によってほぼ不可能となったわけです。

2049年10月1日、中国は建国100周年を迎えます。

ところが、その頃の中国が祝賀ムード一色に染まっているとは思えません。なぜなら、中国の人口学者たちも警鐘を鳴らしていることですが、このまま進めば中国は2050年頃、人類が体験したことのない未曾有の高齢化社会を迎えるからです。


『世界人口予測2017年版』によれば、2049年の中国の人口は13億7096億人で、2050年は13億6445億人。これは、2011年の中国の人口13億6748万人、及び2012年の13億7519万人と同水準です。

ところが、2010年代の現在と、2050年頃とでは、中国の人口構成はまったく異なるのです。

『世界人口予測2015年版』によれば、2015年時点での中国の人口構成は、0歳から14歳までが17.2%、15歳から59歳までが67.6%、60歳以上が15.2%、そして80歳以上が1.6%です。

それが2050年になると、激変するのです。

0歳から14歳までが13.5%、15歳から59歳までが50.0%、60歳以上が36.5%、80歳以上が8.9%なのです。

これを人数で表せば、2050年の中国の60歳以上の人口は、4億9802万人です。そうして80歳以上の人口は、1億2143万人です。



私が中国で、こうした未来図を初めて想い描いたのは、2011年の5月のことでした。このとき、私はこのブログではじめて中国の少子高齢化について掲載しました。
この記事では、ユニセフの「2009年中国人口サンプル調査」によると、中国の青少年人口は00年の2億2800万人から09年には1億8000万人と大きく減少したこと、全人口に占める比率は00年の18%から13%へと急落していることを掲載しました。

その後もいくつも中国の少子高齢化についての記事をこのブログに掲載しました。これにより、日本が直面している少子高齢化の波が、やがて中国をも襲うのだということが理解できました。

しかも、日本の10倍以上の規模をもってです。

そうして、中国社会の高齢化が、日本社会の高齢化と決定的に異なる点が、二つあります。

まずは、高齢化社会を迎えた時の「社会の状態」です。日本の場合は、先進国になってから高齢社会を迎えました。

日本の65歳人口が14%を超えたのは1995年ですが、それから5年後の2000年には、介護保険法を施行しました。また、日本の2000年の一人当たりGDPは、3万8533ドルもありました。

いわば高齢社会を迎えるにあたって、社会的なインフラが整備できていたのです。

ところが、中国の一人当たりのGDPは、2018年にようやく約1万ドルとなる程度です。65歳以上人口が14%を超える2028年まで、残り10年を切りました。

中国で流行語になっている「未富先老」(豊かにならないうちに先に高齢化を迎える)、もしくは「未備先老」(制度が整備されないうちに先に高齢化を迎える)の状況が、近未来に確実に起こってくるのです。

日本とのもう一つの違いは、中国の高齢社会の規模が、日本とは比較にならないほど巨大なことです。

中国がこれまで6回行った全国人口調査によれば、特に21世紀に入ってから、65歳以上の人口が、人数、比率ともに、着実に増え続けていることが分かります。

そして、2050年には、総人口の23.3%、3億1791万人が65歳以上となります。

23.3%という数字は、日本の2010年の65歳以上人口の割合23.1%と、ほぼ同じです。

2050年の中国は、80歳以上の人口も総人口の8.9%にあたる1億2143万人と、現在の日本の総人口に匹敵する数に上るのです。


にもかかわらず、中国では日本の「介護保険法」あたるような法律が、いまだ施行されていないのです。
2050年頃に、60歳以上の人口が5億人に達する中国は、大きな困難を強いられることは間違いないです。
製造業やサービス業の人手不足、税収不足、投資不足……。それらはまさに、現在の日本が直面している問題です。
経済統計学が専門の陳暁毅広西財経学院副教授は、『人口年齢構造の変動が市民の消費に与える影響の研究』(中国社会科学出版社刊、2017年)で、今後、中国が持続的な経済発展をしていくには、「老年市場」を開拓していくしかないと結論づけています。
政府は、子供が親の面倒を見ないのは中国の伝統に反するという価値観をもとに、高齢者扶養の問題のほとんどすべてを家族に負わせる一方で、長年かけて中国の最大のセーフティネットである大家族制を破壊しました。

ここに生じる矛盾のつけを払うのは本来、政府、共産党政権であるはずが、地方政府の財政は破たん寸前。高齢者への社会保障整備が充実されていくという期待も少ないです。

戦慄のドキュメンタリー「一人っ子の国」のポスター

先日も、このブログに掲載した「一人子政策」における、中国共産党の人権蹂躙はまた繰り返されるかもしれません。一部都市では2人以上の子供を産んだ夫婦に対して奨励金を出す人口増加政策をすでに実施していますが、これがやがて、子供を産まない女性や1人しか産まない女性に対する罰金に代わっていくことの懸念。あるいは老人の迫害が容認されるような時代の到来の懸念があります。

すでに中共は、民族弾圧、宗教弾圧、言論弾圧など党主導の組織的な深刻な人権問題を起こしていますが、そこに最近の香港弾圧が加わり、将来そこに老人や女性の尊厳をさらに無視するような政策的管理が加わる懸念があるのです。
 
その時、中国人民は、どんな行動を起こすのでしょうか。高度経済成長のなかで隠れていた課題が、成長率が鈍化するにつれ、顕在化していきます。

平等を建前とするのが本来の共産主義です。今の中国は、国家資本主義とも呼べるいびつな体制です。かつて貧しい時代には等しく貧しかった社会が、経済成長が進むにつれ、格差を内包してきたのですが、それなりに全体が成長していて格差は表面的ではありませんでした。

ただし、建国以来毎年2万件暴動がおこってきたといわれ、2010年あたりからは、毎年10万人ともいわれていますので、表面にはっきり出てこなかっただけで、人民の格差等に関する中共する憤怒のマグマは大爆発の寸前にあっものとみられます。

ただし、中共はこれらを、城管、公安警察(日本の警察にあたる)、人民解放軍等で弾圧して鎮圧するとともに、日本を悪者にしたて、人民の憤怒のマグマを自分たちに向けてではなく、日本に向けて噴出させようとしました。

ところが、この官製反日ですら、できない状況になりました。2012年頃から、反日デモを官製で実行させたり、あるいは放置しておくと、必ず後で反政府デモになるという事態が頻発したのです。そのため、2012年あたりから、中共は、反日デモを実行させないように、方針を変更しました。そのため、あれだけ隆盛を誇った、反日デモが中国ではみられなくなりました。

この間、社会保障制度を充実させねばならなかった共産主義ですが、中国共産党は未達のまま今日を迎え、しかもいまだ制度化は進まず、個人の義務として人民に押し付けています。

毛沢東の独裁政治への回帰を目指す習近平。習近平は、毛沢東独裁体制の崩壊を繰り返すのでしょうか。
しかも、習近平には、政敵の不正を暴き追放した実績はあるものの、それは、誰の眼にもあきらかな権力闘争に過ぎません。

習近平には、毛沢東や、鄧小平の様な、はっきりとした功績はありません。強権で弾圧する方向の今の習近平独裁政治体制が、低成長時代に移行する中で、しかも少子高齢化に対応できない状況をいつまでも続けられるとは考えられません。

今後、習近平政権が倒れるのは、時間の問題として、中国共産党も、少子高齢化に対応できるような、まともな制度設計や、高齢化社会に適応した産業構造に転換できなければ、倒れることになるでしょう。

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