Falon Fatemi |CONTRIBUTOR |
メディア業界は、パンデミックの影響を最も強く受けた業界の一つだ。米国のメディア業界では2020年に3万人以上の雇用が失われており、2019年の水準から200%以上の増加となった。
そんな中、ニュースレターという、新たなトレンドに関心が高まっている。ニュースレターを収益化するプラットフォームの「Substack(サブスタック)」は、2017年のローンチ以来、着実に成長を遂げている。
Yコンビネータの卒業生が開設し、2019年のシリーズAでアンドリーセン・ホロウィッツの主導で1530万ドル(約16億円)を調達したSubstackは、現在25万人以上の有料購読者を抱えている。
かつてはメールマガジンと呼ばれた古びたシステムに、最新のアルゴリズムを導入したSubstackに対しては、懐疑的な見方もあるが、メディアの新時代を切り開くツールとして期待されている。長年、ページビュー指標に縛られてきたライターや編集者たちは、クリエイティブの自由と経済的自由を与えてくれるSubstackに群がっている。
Substackに参加する著者の一人、Judd Legumは、「Substack では、グーグルやフェイスブックのアルゴリズムに縛られず、人の心をつかむ説得力のあるコンテンツを書くことが重要だ」と話す。
Substackで、ジャーナリストは経済的自由も手に入れられる。Substackは売上の10%を受け取り、決済会社のStripeがさらに3%を受け取る一方で、ライターは残りの金額を自分の懐に入れられる。Substackはさらに、3000ドルから10万ドルまでの様々な助成金を、書き手に与えている。
そして、万が一、法的トラブルに直面した時のために、Substack Defender と呼ばれるプログラムが用意され、一流の弁護士に助けを求めることも可能だ。Substackは、最高100万ドルの弁護士費用を負担することを約束している。
Substackのアピールは、パンデミック後にさらに高まっている。元Buzzfeed記者で、「Big Technology」という名のニュースレターを発行するAlex Kantrowitzは、「多くのジャーナリストたちが、困難な状況に直面する中で、自身でビジネスを立ち上げている」と話す。
メディアへの信頼を取り戻す
Substackによると、読者数と作家数は、パンデミック後の3カ月間で2倍に伸びたという。一方で、マスコミへの信頼度は長年にわたって低下している。2019年のある推計によると、マスコミに大きな信頼を寄せている人の割合はわずか6%に過ぎない。
「ニュースレターは、いかにして読者との間に信頼関係を再構築するかという問いに、確かな答えを提供してくれる」と、SubstackのプロデューサーであるValerio Bassanは話す。読者の受信箱に直接届くニュースレターは、人々と1対1の会話が出来るという。
Substackを用いれば、ロイヤルな読者を獲得し、書き手は自分をブランディングできると、Heatedという気候問題に焦点を当てたニュースレターを発行するEmily Atkinは話す。彼女は以前はThe New RepublicやThinkProgressに所属していたが、現在はSubstackで、会社員時代よりも高い知名度と収入を得ている。
かつては、読者が個人のジャーナリストをフォローすることはほとんどなかったが、状況は変わりつつある。読者は大手メディアよりも、個々の書き手に対する信頼度を高めている。
Substackのミッション・ステートメントには次のような記述がある。「前世紀のジャーナリズムは死にかけている。コンテンツの大量生産やクリックベイト、リスティクル(まとめ記事)、バイラルで拡散されるフェイクニュースなどがこの状況を招いている」
Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させようとしている。
【私の論評】既存メディアは崩壊し、SNSは単なる連絡簿になる世界がくるかもしれない(゚д゚)!
米国の既存メディアは、大手新聞はすべてリベラル、大手テレビ局はFoxTVを除いて他はすべてリベラル系であることを、このブログには何度か掲載してきました。この状況では、米国の人口の半分は存在するであろう、保守系の人々の声はかき消されてしまいます。
従来はそうだったのですが、そこにSNSが風穴をあけ、保守系の人々の声も無視できなくなりました。これもトランプ大統領を生み出した一つの大きな要因ともなったと思います。
ところが、昨年の米大統領選挙では、ご存知のようにSNSがトランプ大統領の発言を封じたり、挙げ句の果に、アカウントを凍結してしまいました。
これは、明らかにやりすぎです。これで、多くの既存メディアに失望した人々がSNSにも失望したことでしょう。
しかし、Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させるかもしれません。
このようなことは、GAFAなどにはできないのでしょう。たとえば、GoogleはSNSとしては、Google Waveのサービスをはじめましたが、これはうまくいかずサービスを中止しました。
その後新たなSNSとして、Google+のサービスを開始しましたが、これもうまくいかず、2019年4月でサービスが停止されました。
両方とも使っていた私は、本当にがっかりしました。特にGoogle+は期待していただけに本当に残念でした。結局、検索サービスと広告の企業が、新たなSNSを創造することは思いの外難しかったということでしょう。
ちなみに、Google Photoも今年の5月でサービスが中止になります。このサービスも使っていたのですが、結局写真をユーザーが保存するのがメインのもので、他の用途としては、写真を他のユーザーとシェアできるというものくらいでした。
便利なので、使用はしていましたが、それにしても何か付加価値をつけることはしないのかと、思っていましたが、それてもできずに、サービス終了です。終了してもFacebookやAmazon Photosもあるので、特に困ることもありません。
GAFAなども現在実施しているサービス以外のサービスに挑戦することは思いの外難しいことなのかもしれません。
Substack関連の報道では、米国では昨年9月著名と思われる2人のtech系のジャーナリストが所属組織を相次いで退職するというニュースを見かけました。
1人はThe Vergeのシリコンバレー担当兼上席編集長のCasey Newton氏。9月末で辞職すると表明したのはDigidayの社長兼編集主幹のBrian Morrisy氏。
米国メディアの世界ではより良いポストを求めて転職するのは珍しくも何でもない印象がありますが、2人の行き先が、興味深かったのです。
それは、別のメディア企業ではありませんでした。有料ニューズレター(メルマガ)の発行を様々な形でサポートするプラットフォームSubstackの参加者の一員として独立するということなのです。
経営不安のなさそうな二つの有力tech系メディアの幹部の座を捨てさせるほどの誘引力を持つSubstackの魅力は何だつたのでしょう。それについては、NYタイムズやAXIOS、Digidayなどが報道していました。
Substackの充実したホームページも含め、それらを総合すると、主としてtech系ニュースの編集部を離れて、独自ブランドのメルマガを発行して成功した例は全く珍しくないようなのです。
例えば、Emily Atkinさん。New Republic誌などの記者を経て独立し、気候変動の危機を訴えるメルマガHEATEDを昨年9月から連日配信していますが、大学を出てまだ9年ですから30歳そこそこです。
その彼女はSubstackに招かれて講演し、こう言いました。「大学時代から、私の夢は自分の文章で生計を立てることだった。Substackはその夢を叶えてくれた。私は今、どんなサラリーマンジャーナリストより稼いでいる」
その額は正確には言いませんでしたが「6ケタ」と示唆しました。10万ドル以上ということでした。彼女のメルマガ読者は2万人超、うち有料読者は2千人超とのことでした。有料料金は年間75ドル、月8ドルです。単純計算ですが75ドルに2千を掛ければ確かに15万ドルになる計算です。
Substackは、無料メルマガからは手数料などは一切取りませんが、有料分については10%を差し引きます。それでも、楽に10万ドルオーバー。大卒9年目としては大したものです。
またNYタイムズの記事で紹介しているのはAnne Helen Petersenさん。博士号を持ち、一時、母校の教員でしたが、その後、Buzzfeedに移り、シニアカルチャーライターの傍ら、メルマガを4年前から書き始め、この夏、メルマガに専念するために独立したそうです。多分、40歳前後。
そのメルマガ「Culture Study」の購読料は年50ドル、月5ドル。無料読者2.3万人で有料読者が2千人超だとのことですから、彼女も計算上は6ケタ・ドル組でしょうが、実際にはもらった金額の前払金を受け取ったので、1年間は売り上げからの差引き額は15%になるそうです。独立組にはこういう面倒もSubstackは見るのです。
このほかにもThink Progressの創業者Judd Legum氏、NewYork MagazineのコラムニストでNew Republicの編集長も勤めたAndrew Sullivan氏、Rolling Stoneの寄稿者だったMatt Taibbi氏など、メディア界出身者の”専業者”が少なくないのです。
そしてSubstackのホームページにはトップ25のリストがあるのですが、そこで優良作品ナンバーワンに挙げられているThe Dispatchの場合は3人組で、TheWeekly Standardの元編集長、National Reviewの元編集長とシンクタンクAmerican Enterprise Instituteの元幹部という組み合わせで昨年スタートしたばかりですが、従業員12人を抱え、読者は10万人近くで、うち有料読者は1.8万人に達しているそうです。
1人はThe Vergeのシリコンバレー担当兼上席編集長のCasey Newton氏。9月末で辞職すると表明したのはDigidayの社長兼編集主幹のBrian Morrisy氏。
米国メディアの世界ではより良いポストを求めて転職するのは珍しくも何でもない印象がありますが、2人の行き先が、興味深かったのです。
それは、別のメディア企業ではありませんでした。有料ニューズレター(メルマガ)の発行を様々な形でサポートするプラットフォームSubstackの参加者の一員として独立するということなのです。
経営不安のなさそうな二つの有力tech系メディアの幹部の座を捨てさせるほどの誘引力を持つSubstackの魅力は何だつたのでしょう。それについては、NYタイムズやAXIOS、Digidayなどが報道していました。
Substackの充実したホームページも含め、それらを総合すると、主としてtech系ニュースの編集部を離れて、独自ブランドのメルマガを発行して成功した例は全く珍しくないようなのです。
例えば、Emily Atkinさん。New Republic誌などの記者を経て独立し、気候変動の危機を訴えるメルマガHEATEDを昨年9月から連日配信していますが、大学を出てまだ9年ですから30歳そこそこです。
その彼女はSubstackに招かれて講演し、こう言いました。「大学時代から、私の夢は自分の文章で生計を立てることだった。Substackはその夢を叶えてくれた。私は今、どんなサラリーマンジャーナリストより稼いでいる」
その額は正確には言いませんでしたが「6ケタ」と示唆しました。10万ドル以上ということでした。彼女のメルマガ読者は2万人超、うち有料読者は2千人超とのことでした。有料料金は年間75ドル、月8ドルです。単純計算ですが75ドルに2千を掛ければ確かに15万ドルになる計算です。
Substackは、無料メルマガからは手数料などは一切取りませんが、有料分については10%を差し引きます。それでも、楽に10万ドルオーバー。大卒9年目としては大したものです。
またNYタイムズの記事で紹介しているのはAnne Helen Petersenさん。博士号を持ち、一時、母校の教員でしたが、その後、Buzzfeedに移り、シニアカルチャーライターの傍ら、メルマガを4年前から書き始め、この夏、メルマガに専念するために独立したそうです。多分、40歳前後。
そのメルマガ「Culture Study」の購読料は年50ドル、月5ドル。無料読者2.3万人で有料読者が2千人超だとのことですから、彼女も計算上は6ケタ・ドル組でしょうが、実際にはもらった金額の前払金を受け取ったので、1年間は売り上げからの差引き額は15%になるそうです。独立組にはこういう面倒もSubstackは見るのです。
このほかにもThink Progressの創業者Judd Legum氏、NewYork MagazineのコラムニストでNew Republicの編集長も勤めたAndrew Sullivan氏、Rolling Stoneの寄稿者だったMatt Taibbi氏など、メディア界出身者の”専業者”が少なくないのです。
そしてSubstackのホームページにはトップ25のリストがあるのですが、そこで優良作品ナンバーワンに挙げられているThe Dispatchの場合は3人組で、TheWeekly Standardの元編集長、National Reviewの元編集長とシンクタンクAmerican Enterprise Instituteの元幹部という組み合わせで昨年スタートしたばかりですが、従業員12人を抱え、読者は10万人近くで、うち有料読者は1.8万人に達しているそうです。
料金は年100ドル、月10ドルなので、「初年度から収益は200万ドル近くになりそう」とNYタイムズは伝えています。
インターネットの”最も古い”ツールであるメールによるビジネスが、これだけ人気を呼んでいるのはにわかには信じられない思いです。
第一には、有能な書き手が集まっていることでしょう。なぜ集まるか?その一つにAXIOSは法的プログラムであるSubstack Defenderの存在を挙げています。「困難なストーリーを追求する自信を作者に与えるように設計されている」とのことです。
組織に属するジャーナリストは記事を巡ってトラブルが生じた場合、組織が守ってくれますが、独立してしまうとその保護がありません。しかし、このDefenderだと、Substackの弁護士がトラブルに対処し、裁判などになったら最大100万ドルの援助もするそうです。これはフリーのライターには魅力です。
またPetersonさんの件で触れましたが、前払金制度は、有料読者が増えるまで持ち堪えるのに役立つことでしょう。
さらに、参加したライターには無償でウェブページが作られ、有料読者向けの記事アーカイブも準備されます。そしてお金の勘定も気にしなくて良いのです。ライターは記事作成に専念できるわけです。
さらに、ウェブにない利点として、メールにはノイズがないことをNYタイムズが挙げています。ウェブに記事を出せば、称賛する人もいれば貶す人も必ずいる。しかし、メールの読者は自分のファンなので貶されることは滅多にありません。
この点について、NYマガジン時代、とかく”逆張り”的な視点でのエッセイでリベラルな読者や編集者との軋轢があったというAndrew Sullivan氏は「あなたのファンには説明責任があるが、それはとてもピュアな関係で快適だ」と語ったそうです。
さらに加えれば、SNSのように、「いいね」がたくさん欲しくて書くということもないのも快適なのかもしれません。メールの読者は全員、自分のファンなのですから。
その延長線上で、先の人気 NO.1のDispatchのウェブページにはPitch usとして「あなたに記事のアイディアがあれば、取材して欲しい特定の観点を知らせて欲しい。返答は保証できないが、担当編集者に提案を転送する」とあったり、Petersenさんも、「読者のアイディアでストーリーを書くのも好き。だからアイディアを送って」と呼びかけるなど、筆者と読者がメールならではのつながりがあることも強みなのでしょう。
SubstackのA better future for newsーなぜ我々はSubstackを構築しているかーにはこんな自信満々な宣言もありました。
「広告に支えられた新聞の時代は終わった。我々の使命の中核は独立したビジネスを構築するために必要なツールを民主化することでニュースの市場全体が劇的に成長する時代にライターが成功することを助けるという信念だ」
「購入ベースのニュース業界が成熟すれば、サンフランシスコの配車サービス業界がLYFTやUber以前のタクシー業界より大きくなったように、新聞業界より遥かに大きくなる可能性がある。私たちはニュースビジネスの新たな革命の頂点にいるのだ」
新聞・テレビなどの既存メディアの報道に関しては、世界中でその信頼性に疑問符がついています。SNSにも大統領選で多くの疑問符がついてしまいました。
そのため、私自身はGABなどにも登録してみましたが、ほとんど使っていません。結局SNSそのものに疑問を感じてしまったので、あまり心に響かないのだと思います。
今は、Substucksの使用も検討していこうと思っています。Substackのようなサービスが、これからいくつか出てきてほしいものです。
TwitterやFacebookなどは、創業当初は素晴らしいと思いましたが、今から考えるといくつもあった他のSNSc(My Space、日本ではMIXiなど)がほとんど使われなくなり、TwitterやFacebookに集約されてしまったことが、SNSの全体主義的傾向に拍車をかけてしまったようです。
5大SNS動向と新機能まとめより |
Substackが市場を独占してしまえば、また思いもよらない形で、弊害がでてくると思います。そのようなことを避けるためにも、独占だけは許さないようにすべきです。
それにしても、Substackのようなサービスが興隆していけば、既存メディアは崩壊し、SNSは連絡簿のようになり、様々なコミュニティーなど内部用の便利で機能が豊富な連絡に用いられるだけになるかもしれません。
そもそも、SNSの役割とは、それが主なものであり、その範疇をこえて政治的な検閲までするようになったのですが、それが没落の原因になるかもしれません。
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