2021年8月2日月曜日

資本市場での米中分離が見えてきたディディへの規制―【私の論評】民主化しなければ古代からの愚行の繰り返しになることに、中国共産党は気づいていない(゚д゚)!

資本市場での米中分離が見えてきたディディへの規制

岡崎研究所



 7月10日付の英Economist誌が「中国の共産主義者がテク企業を統制下に置く。滴々(ディディ)への攻撃は共産党が統制のためにどれだけ高いコストを払うかを示す」との社説を掲載し、配車会社への介入問題を論じている。

 中国の配車会社であるディディ・グローバルは、最近、ニューヨーク証券市場に上場した。ディディは、中国のスーパースター企業で、Uberよりも多い4億9300万人の利用者、1500万人の運転手を有し、ブラジルとメキシコに支店を持つ。ディディは、6月30日、世界中の投資家からの資金を集め、企業価値を680億ドルにする株式上場を行った。

 しかし、上場直後の7月4日、中国共産党の規制当局は、ディディが個人データの収集規則に違反したとして、中国でのアプリ店からディディを締め出した。これはディディの株式価格を20%下げる結果をもたらした。

 中国の規制当局がテク企業の海外、特に米証券市場への上場を問題であると考え、規制を強めようとしている。今度問題になっている滴々(ディディ)は、米国のUberと同じような配車事業を行っているが、ここにはソフトバンクやトヨタが出資している。中国の規制当局の規制強化を受け、滴々の株価はニューヨークで20%以上減価したが、ソフトバンクやトヨタはかなりの損失を出したと思われる。

 今度の中国の規制強化の動きがどうなるのか、やっていることがよくわからないので評価しがたい面があるが、中国テク企業が海外で上場して資金調達することには今後大きなブレーキがかかり、海外の投資家も中国テク企業への投資に慎重になることは確実であると思われる。中国へのお金の流れが減ることが中国経済にどういう影響を与えるかと言えば、中国の経済成長率を押し上げる方向に働くとは思われない。しかし、その影響をいま測定することは難かしい。

 中国がなぜこういうことをしているのかといえば、中国共産党が全般的に統制強化を進めており、テク企業の株式上場にもその統制を及ぼそうとしているからだろう。

 米国でも中国企業をたとえばニューヨーク証券市場から締め出すべしとの議論が投資家保護の観点から提起されている。中国が別の視点から海外証券市場での中国企業の上場を抑えるということになれば、資本市場での中国と米国のいわゆるディカプリングは深まっていくとみておいてよいのではないかと思われる。

 中国の経済は少子高齢化の人口問題、水問題などの環境問題など多くの問題を抱えており、共産党の権力強化以上にすべきことがあるのではないかと思えるが、1992年の鄧小平の南巡講話のような政策転換は、今の習近平には望めないと考えている。鄧小平の改革開放は西側との協調路線でもあったが、習近平にはそれを望めないだろう。


【私の論評】民主化しなければ古代からの愚行の繰り返しになることに、中国共産党は気づいていない(゚д゚)!

6月25日、国務院新聞弁公室が『中国新型政党制度』と題した白書を出版しました。共産党が領導し、“民主派”政党が参政する政党制度(中国語で「共産党領導、多党合作制」)がいかに中国に根付き、発展に寄与してきたかを強調しています。

同白書も認めているように、中国で8つある民主派政党は、日本や欧米を含めた民主主義国家で言うところの「野党」ではありません。現体制が続く限り、民主選挙を通じた政権交代も制度的にあり得ません。

『中国新型政党制度』の表紙

中国の政治体制において、民主派政党とは、共産党一党支配下において、共産党のイデオロギー、政策、戦略、方針などを擁護、支持することを大前提に、政策提言を行っていく組織に過ぎません。

そして、習総書記に権力が一極集中し、共産党が絶対的領導を強調する現状において、体制内部においても、異なる意見や提言をする状況は考えられません。「右に倣(なら)え」の姿勢で、習近平総書記は偉大だ、共産党万歳を徹底するしかないのが昨今の空気感です。

中国共産党自身は、あらゆる公式な場面、談話、声明などで、中国が実践してきたのは「民主政治」だと断固主張してきました。

しかし、実際のところ、習近平総書記をはじめとした最高意思決定機関である中央政治局の常務委員(計7人)や委員(計25人)、約3,000人から成る「国会議員」に当たる全国人民代表、そのトップにいる栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会常務委員会委員長兼政治局常務委員(序列3位)を含め、彼らは人民(有権者)によって直接的、あるいは間接的に選ばれたわけではありません。

中国の官僚機構システムの中で、出身、経歴、派閥、業績などあらゆる指標を根拠に選抜されてきたのです。

たとえば、永田町ではなく、霞が関の省庁において、あるいは大手企業において、激しい競争、人事をめぐる駆け引きやつぶし合いの中で、新入社員からトップまで駆け上がってきたイメージです。習近平、李克強(リー・カーチャン)両指導者とて例外ではありません。

その意味では、中国共産党には、日本を含めた先進国でいうところの政治家は、一人もいません。中国共産党は、すべて官僚の集まりです。

そうして、政策や人事はブラックボックスの中で決定されます。体制に近い、政策に影響力のある知識人や企業家が何らかの役割を果たすことはありますが、基本的に、党指導部の政策決定に、民間人や一般人が関与することはありません。

メディアは原則党・政府の統制、管轄下にあり、政策を監視、批判する機能は持ち合わせていません。基本的に、党・政府の政策を代弁、擁護する宣伝機関です。

政治の現場で共産党の政権運営を監視監督する「野党」も存在しません。デモ集会は厳しく制限、抑圧されているため、人民が直接、間接的に権力者に異を唱える場面もありません。

 そんな中、人々が自らの意見を発表できる唯一のプラットフォームが、インターネット上だと言われてきました。すでにユーザー数は10億を超えています。

確かにそういう側面はあるでしょう。しかし、習近平政権下において、ネット上の議論や言論も、24時間体制で厳格に監視され、例えば、中国版ツイッターと言われる「ウェイボー(微博)」上で、当局が嫌がるつぶやきをしたユーザーには、公安派出所から直接電話がいく、突如訪問されるといった形で、すぐさまツイートを削除するように、さもなければアカウントを永久に凍結するといった措置が取られています。

中国では自らの「お上」として君臨する為政者を自らの意思で選べないのです。政策や世論の形成過程に関与する権利もありません。自らの考えや要望を訴える空間もありまん。

にもかかわらず、なぜ14億の中国人民は、そんな現状を甘んじて受け入れているのでしょうか? 

それは、経済成長ということができるかもしれません。14億の人民が非民主的に選ばれ、治める共産党を受け入れているのは、経済が成長しているから、生活が物質的に豊かに、便利になっているからです。沿岸部と内陸部、都市部と農村部のいわゆる格差が問題視されることがありますが、これらすべての地域において、人々は、他者、他地域との比較ではなく、自らの昔と比べて豊かになっているのです。

ただ、仮にこのような前提が崩れたらどうなるでしょうか。

たとえば、物価の高騰に収入が追い付かなくなったら? 子供の教育にかかる費用が高すぎて、生活が困窮したら? あるいは、中国と諸外国との関係が悪化し、経済的に孤立する中、取引が停止、経営が苦しくなり、多くの倒産企業、失業者が出たら?

それでも、人々は非民主的に君臨、運営する共産党政権を“甘んじて”受け入れるでしょうか?とてもそうは、思えません。人民が経済成長の果実を直接的に享受できなくなれば、それこそ、捨て身の精神で、暴動や造反を引き起こす場面も出てくるでしょう。盛衰を繰り返した中国の歴史が証明しているとおりです。

非民主的な中国共産党による国家運営が持続的に実行され、そのために、経済が持続的に発展していくことができるでしょうか。

そもそも、経済が永遠に成長し続けることはあり得ません。中国共産党は、人々の生活が永遠に経済の恩恵を受け続けることはないという合理的判断・予測に立脚し、経済成長以外で、人々の納得感を増大させる分野を増やしておくべきです。

景気が悪くなり、企業経営が悪化したり、中国と諸外国との関係が悪化しても、それを解決するための政策議論や世論形成に、自らも参加しているのだからという当事者意識(オーナーシップ)が普及すれば、人民の共産党政権への許容度、包容力も増していくでしょう。

さらに、経済を持続的に成長させるための措置を取る、対策を打つことです。この意味で、鍵を握るのがイノベーション(中国語で「創新」)です。習近平政権は「創新」国家戦略の観点から重視し、これからは、投資、資源、労働力といった要素ではなく、イノベーションに立脚した成長戦略を掲げ、経済を持続的に発展させるべきだと主張しています。

しかしながら、習近平政権になって、政治の経済に対する介入、政府の市場に対する干渉が横行し、マーケットの主体となる民間のプレーヤーが伸び伸びと活動できていないのが気になります。製造業、サービス業、研究開発、インターネット企業、フィンテック、文化芸術などを含めてです。習近平一強政治の弊害だといえます。

この意味で、中国経済がイノベーションに立脚する形で、持続的に成長していけるか否かは、共産党が「創新」を国家戦略の次元で重視しつつも、必要以上に干渉、介入しないこと、あらゆる規制緩和や市場主導を通じて、タレントぞろいの中国の人材に伸び伸びと、生き生きと、市場の論理で、日々の仕事に打ち込んでもらうことに懸かっているように思います。

このブログでも以前何度か述べたように、こうしたことをするために、必要不可欠なのは、民主化であり、政治と経済の分離であり、法治国家化です。

これができてはじめて、中間層が星の数ほど大量に輩出し、この中間層がありとあらゆる地域と階層において、社会変革へと結びつくイノベーションを行う素地ができます。そもそも、イノベーションとは社会を変革するものです。社会変革に結びつかないイノベーションは単なる思いつきか、珍奇な発明か、暇つぶしでしかありません。

しかし、中国共産党は、創新をそのようには、捉えていないようです。単なる技術革新、経済的に豊かになるための道具としてしかみていないようです。

この状況では、たとえ中国共産党が、音頭をとって、掛け声をかけ、それだけではなく、莫大な投資をして、技術革新をしても、それは点か、良くてもせいぜい、線のイノベーションにしかなりえず、社会に様々な不合理・非合理が残ったままとなり、結果として経済発展もできません。

やはり、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が行わて、はじめて大量の中間層が生まれ、それらが、ありとあらゆる地域と階層でイノベーションを行うことにより、はじめて社会全体が豊かになりその結果として、経済成長するのです。

そうでなければ、結局ほとんどすべての発展途上国がそうであったように、社会は豊かになることもなく、国民一人当たりの年収が100万円(1000ドル)を超えられないという「中所得国の罠」から抜け出せなくなるのです。


先進国がなぜ「中所得国の罠」から抜け出せて、豊かになれたかといえは、それは先に述べたように、政府が国内において、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進して、多数の中間層を生み出すようにして、それらが、自由に社会経済活動を行えるように担保したために、社会革新が爆発的に起こり、結果として豊かになり先進国となったのです。

多くの発展途上国が現在の中国共産党のように、政府主導でイノベーションを推進して、経済的に豊かになろうとしましたが、ことごとく国民一人当たりの所得が100万円に迫るまでは、経済発展しましたが、その後は行き詰まり、結局「中所得国の罠」から抜け出ることができず、発展途上国のままです。経済的に豊かになりたいと思えば、まず民主化することは絶対に避けられないのです。

中国共産党と政府は先月6日、中国企業の海外市場での上場に関する規制を強化する方針を発表した。企業が保有するデータの国境を越えた取り扱いに関する管理を厳格化し、既に海外で上場している企業に対する監督についても強めます。

中国IT大手に対する締め付けを増している習近平政権が、米中対立を背景に米上場の中国企業への統制を強める狙いがあるとみられます。活発だった中国企業の海外上場の動きに影響を与えるのは必至で、米中対立の新たな火種になる可能性もあります。

中国国営新華社通信によると、共産党中央弁公庁と国務院(政府)弁公庁が連名で「法に照らして証券の違法行為を厳重に取り締まる」という文書を公表。この中で「資本市場の秩序を守る」として、証券犯罪の厳格な取り締まりを行う方針などを示しています。

目立つのは、海外上場に関する規制強化の方針です。国境を越えたデータの移動や機密情報の管理に関わる法制度の整備のほか、中国の証券法の域外適用を可能とする仕組みを確立するとしています。

中国当局は7月に入り、上の記事にもあるように、中国配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)などネット企業3社に対し、国家安全上の理由で相次ぎ審査に着手。3社ともニューヨーク証券取引所など米市場に上場したばかりでした。習政権は「国家安全」を守ることを重視しており、新たは規制強化方針もその一環とみられます。

海外に上場しようとする中国企業は、中国内では自由な活動ができないので、海外に活路を見出そうとしたのでしょうが、反民主、政治と経済の不可分の結びつきを志向し、法治国家ではない中国は、これを放置しておけば、自らの統治の正当性が崩れるとみたのでしょうか。

しかし、先程も述べたように、中国共産党の統治の正当性は「経済発展」です。しかし、海外に進出しようとしている企業にまで、規制を加える中国共産党のやり方では、今後「経済発展」は望めず、共産党はいずれ統治の正当性を失うことになるでしょう。

新しい体制ができたとしても、新体制が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければ、結局同じ間違いを繰り返すことになるでしょう。

過去に大帝国を築き、やがて衰退して、また先の帝国とは全く無関係の、大帝国を築き、それもまた衰退してまた次の大帝国を築くということを中国は延々と巨大なスケールで繰り返してきました。

どこかで踏ん切りをつけて、民主化を進めない限り、中国は今後もそれを繰り返すことになるかもしれません。そうして、現在ような異質な体制を繰り返せば、市場においても、その他あらゆる面で米中分離が進むことになるでしょう。世界で孤立することになるでしょう。

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2021年8月1日日曜日

熱中症とコロナ 万全の警戒で医療を守れ―【私の論評】暑さ対策に試してみる価値のあるアイススリラー(゚д゚)!

熱中症とコロナ 万全の警戒で医療を守れ


 梅雨が明け、本格的な夏を迎えるこの時期は熱中症で救急搬送される人も増える。

 熱中症は対応が遅れると命にかかわる。しかし注意することで相当程度避けることができる。身を守るための注意を惜しんではならない。

 しかも、医療現場は今新型コロナウイルスの感染拡大で崩壊の危機に瀕(ひん)している。例年以上に熱中症に注意を払い、患者増で現場の混乱に拍車をかけないようにしたい。

 今年7月19日から25日までの7日間に、熱中症で救急搬送された人は全国で8千人を超えた。昨年の同時期の2倍超だ。

 昨年に比べて数が多いのは、梅雨明けが早かったからだろう。マスクを着用していることが、リスクを高めている可能性もある。皮膚からの熱が逃げにくくなり、心拍数や体感温度が上がりやすくなるからだ。

 救急医療の現場では、新型コロナの患者と熱中症の患者の搬送が重なり、通常医療の維持が困難になりつつある。「平時なら助けられる命が、助けられない」との悲鳴が上がっている。

 熱中症の症状は発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感、筋肉痛など、コロナに似ている。新型コロナを疑いながら対処せざるを得ないことが医療現場のさらなる負担になる。

 しかし、熱中症は自らの注意で防ぐことができる。日中はできるだけ外出を控え、暑さを避けて過ごすことだ。人混みに出ないことはコロナ対策にも有効である。

 戸外で人との距離を2メートル以上取れるときはマスクを外すようにしたい。のどの渇きにかかわらず、水分をたっぷり取り、汗をかいたら塩分補給も重要である。

 部屋の中では扇風機やエアコンをつける。コロナ対策の換気も忘れないようにしたい。すだれ、よしず、打ち水なども暑さ対策の一助になろう。

 リスクの高い高齢者や小児には周囲が目を配り、声をかけることも大切だ。自力で水が飲めなかったり、意識が混濁しかけたりしたら、救急車を呼ぶのをためらってはいけない。

 何よりも重要なのは、自分で自分の身を守る心がけである。

 今夏、熱中症にならないことは、新型コロナとの闘いで最前線に立つ医療職らと危機感を共有することになる。ささやかな協力を惜しんではならない。

【私の論評】暑さ対策に試してみる価値のあるアイススリラー(゚д゚)!

この暑さ、こちら北海道も続いています。7月28日には、北海道内では、初めて熱中症警戒アラートが網走・北見・紋別地方に出されました。

昨日(31日)の北海道は、全道的に晴れて強い日差しが降り注ぎました。上空に暖かい空気が流れ込んだ影響もあって、気温が高くなっています。

午後3時までの最高気温は、上川地方の旭川市江丹別で38・4度と、道内の7月の最高気温の記録を更新しました。なお、これまでの記録は1924年に帯広で観測された37・8度で、97年ぶりに7月の最高気温を更新したことになります。

道内では今日を含めて8日連続で猛暑日を観測しましたが、猛暑日連続記録としては、観測史上初めてのことです。また、38度以上の気温を観測したのは、全国でも今年初めてのことになります。

本当に驚くほどの暑さです。私自身は、北海道で育ち、通算で10年くらいは、東京にいたこともあるのですが、その経験の中では、今年の札幌が一番暑く感じるくらいです。

かなりの暑さだった"おたるドリームビーチ"

"おたるドリームビーチ"にも異変がありました。北海道ではたとえ外気温がかなり低くても、海水は冷たいので、5分以上も海水に浸かると寒くなり、10分も浸かっていると唇が青みを帯びてくるほどなのですが、今年はそのようなことはありません。15分位浸かっていても、寒くありません。これは、驚きです。まるで、昔行った沖縄の海のようです。

気象庁の統計によりますと、現在、道内周辺の海水温は、過去30年間の平均と比べると4度から6度ほど高くなっています。 暑さが続き、海水温がどんどん上昇していて、平年差は、全国の海の中でも最も大きくなっています。

これだけ海水温が高いと、漁業にも悪い影響がでるのではないかと心配です。

おたるドリービーチ

北海道は例年涼しいので、北海道民は、今年の暑さはかなりこたえていると思います。自宅にはエアコンがあるので重宝しています。しかしこれだけ毎日のように、長時間使用するのははじめてですので、電気料金がどうなるのか、心配です。

これだけ、暑いと上の記事にも触れられているとおり、熱中症が心配になってきますが、これを防止するには、水分をこまめにとるということですが、その他にも注目すべきものがあります。

熱中症対策とパフォーマンス維持のための内部冷却の方法として、スポーツ界で注目されているのが『アイススラリー』です。アイススラリーとは、液体に微細な氷の粒が混じったシャーベット状の飲み物で、冷蔵庫から出した飲み物が4℃くらいなのと比べて、マイナス1℃と低温。細かい氷の粒に液体が混じった流動性のある飲み物のため、体に浸透しやすく、効率よく内側から体を冷やせるという特徴もあります。

アイススリラーの作り方は簡単です。ポカリスウェットなら、コンビニなどで、アイススリラー用を売っています。ただし、慢性疾患などて塩分を控えている人には、ポカリスエットが向かいない場合もありますが、そのような場合はかき氷の機会で氷をクラッシュして、水と混ぜれば良いです。これを魔法瓶などに入れて持ち歩けば、その時々で適量を飲むことができます。

アイススリラーをつくる野球部のマネジャー

これ実際飲んでみると、結構効き目があります。なにやら、体感温度が低まった感じがします。夏にビーチにでかけたり、どうしても外出しなければならないとき、あるいは部活などで、どうしてもある程度運動をしなければならないようなときに活用してみてはいかがでしょうか。

東京五輪でも、多くのアスリートがアイススリラーを用いているようです。暑さに負けず頑張っていただきたいものです。

アイススリラーは試してみる価値があります。ただ、飲みすぎには気をつけましょう。

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2021年7月31日土曜日

中国のサイバー攻撃に対抗措置! 米政権の“キーパーソン3人”に注目 対中制裁「香港ドルペッグ制」停止の可能性―【私の論評】バイデンの胸先三寸で決まる、香港ドルペッグ制の停止(゚д゚)!

中国のサイバー攻撃に対抗措置! 米政権の“キーパーソン3人”に注目 対中制裁「香港ドルペッグ制」停止の可能性

日米欧による「中国のサイバー攻撃非難」について報じる新聞各紙(右上・産経、左上・読売、、下・朝日)

 7月20日朝刊の新聞各紙の見出しは、珍しく一致した。

 「日米欧、中国を一斉非難-MSソフト『サイバー攻撃』と結論」(産経新聞)、「サイバー攻撃、中国を非難-米英など声明 日本も支持」(朝日新聞)、「中国サイバー攻撃非難-米、日欧と声明 対抗措置示唆」(読売新聞)。

 各紙報道を要約すると、以下のようなことである。

 中国政府(国家安全保障省)が関与したとされるサイバー攻撃は、3月に発覚した米マイクロソフトの企業向け電子メールソフトに対する攻撃が典型である。

 中国政府につながるハッカー集団がランサムウェア(身代金要求型ウイルス)などで攻撃を行い、日米欧で経済活動の脅威となっている(=NECの防衛関連ファイルが不正アクセスされた)。こうした中国のサイバー攻撃に対処するため、ジョー・バイデン米政権は19日、ハッカー集団の手口を公表するだけでなく具体的対抗措置を取るとの声明を発表した。

 では、誰がどの組織・機関を主導して具体的な対抗措置を打ち出すのかである。残念ながら、新聞報道にその言及はない。

 「バイデン政権7人の侍」と名付けた経済安全保障政策のプロがいる。その中でも際立つ3人が、中国への対抗措置を決定するキーパーソンである。(1)デビッド・コーエン米中央情報局(CIA)副長官(2)ダリープ・シン米国家安全保障会議(NSC)大統領次席補佐官(3)タラン・チャブラNSC技術・安全保障担当上級部長だ。

 まず、バラク・オバマ政権時の財務次官(金融テロ担当)として、「金融制裁のグル」と呼ばれたコーエン氏。カウンターインテリジェンスの責任者として、NSC、財務省、連邦捜査局(FBI)と協力してサイバー攻撃を取り締まる。

 次のシン氏も、オバマ政権下で財務次官補(国際金融犯罪・サイバー犯罪担当)を歴任した。現在は、米中対立の先鋭化が進む中で、対中金融制裁の責任者とされる。

 3人目のチャブラ氏は、6月初旬に米上院が賛成多数で可決した「米国イノベーション・競争法」の策定を始め、中国との技術覇権競争で注目を集めたECRA(輸出管理改革法)の執行などにも関与している。経済産業省の経済安全保障政策部局がマークしている人物だ。

 上述の3人以外に、NSCのローラ・ローゼンバーガー中国担当、エドガード・ケーガン東アジア大洋州担当の両上級部長もキーマンである。

 今後の展開いかんで、対中制裁として、米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」の停止もあり得る。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】バイデンの胸先三寸で決まる、香港ドルペッグ制度の停止(゚д゚)!

イギリス、アメリカ、欧州連合(EU)ら数十カ国は19日、中国が今年初めに米マイクロソフトの企業向け電子メールソフト「エクスチェンジサーバー」に大規模なサイバー攻撃を行ったと非難しました。この攻撃で、世界中で少なくとも3万もの組織に影響が出ました。

中国のサイバー攻撃を避難するブリケン国務長官

欧米のセキュリティ・サービスは、標的を絞ったスパイ活動から、破壊的な攻撃への移行を示しているとみており、中国によるサイバー行為のエスカレートが懸念されています。

中国国家安全部(MSS)は、より幅広いスパイ活動や「見境のない」広範な行動パターンについても非難されてきました。

中国はこれまでハッキング疑惑を否定しており、あらゆるかたちのサイバー犯罪に反対するとしてきました。

欧米の情報機関によると、今回の事案はこれまでに見られたものよりはるかに深刻だといいます。

事の発端は1月、中国とつながりのあるハッカー集団「Hafnium」がマイクロソフト・エクスチェンジの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用したことでした。ハッカーはシステム内に後から侵入できるよう、「バックドア」と呼ばれる侵入口を設置しました。

イギリスは、今回の攻撃によって、個人情報や知的財産の取得を含む大規模なスパイ活動ができるようになる可能性が高いと指摘しました。

この攻撃は主に、防衛関連企業やシンクタンク、大学など、Hafniumの過去のターゲットに沿った特定のシステムに対して行われました。



これだけなら、単なるスパイ活動の一つに過ぎなかったでしょうが、2月下旬に重大な変化がありました。

中国に拠点を置く他のグループがマイクロソフトの脆弱性を悪用し始めたことで、この標的型攻撃は大規模なものになり、標的が世界の主要産業や政府にまで拡大しのですた。

欧米のセキュリティ関係者によると、Hafniumはマイクロソフトが脆弱性がみとめられる部分について、修正パッチを公開または廃止にする方針であるという情報を事前に入手。この情報を中国のほかのグループと共有し、修正が行われる前に利益を最大限得ようとしたといいます。

こうした脆弱性についての情報を拡散するという見境のない判断が、今回中国を公然と非難する事態を招いたと、当局は説明しています。

イギリスは、中国のサイバー活動について証拠書類を渡すなどし、長期にわたって中国政府に内々に問題を提起してきたとも言われています。

マイクロソフトは3月2日にこの脆弱性を公表し、問題を解消するための修正パッチを提供しました。この時点で、世界中のさらに多くのハッカーがこの脆弱性の価値を認識し、攻撃を開始しました。

この結果、世界中の約25万ものシステムが危険にさらされ(その多くは中小企業や組織)、少なくとも3万もの組織が不正にアクセスされました。

米国司法省は、MSSのハッカー4人の起訴を発表しています。この4人は、少なくとも12カ国の政府および主要部門の企業を標的とした長期的な活動に関与しているといいます。

欧米の安全保障関係者は、今回明らかになったすべての活動の背後にはMSSがいると考えており、国際的な協調行動で圧力をかけられることを期待しています。

香港ドル

上の記事では、今後の展開いかんで、対中制裁として、米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」の停止もあり得るとしいます。

米ドルと香港ドル交換の「ドルペッグ制度」が停止されると、中国の金融・経済は破滅的な影響を受けることになります。

香港ドルHKD=D3は米ドルに対する変動幅を1米ドル=7.75-7.85香港ドルの狭い範囲に設定。香港金融管理局(中央銀行、HKMA)が香港ドルを売買し、値動きをこの範囲内に収めます。HKMAが香港ドルを買えば需給が引き締まり、香港ドルをショートにするコストが上昇します。HKMAが香港ドルを売れば逆になります。

ペッグ制を維持するため、香港の公定金利は米国の政策金利を上回るように設定されます。香港ドルがレンジ内ながら変動するのは、香港と米国の市場金利の差によります。香港の銀行間取引金利は米国の銀行間取引金利よりも高くなっているため、昨年の国安法に関連した資金流出の懸念にもかかわらず、香港ドルは堅調を維持していました。

米中間の緊張がエスカレートすれば米国が香港の銀行による米ドルへのアクセスを制限する可能性があるとの懸念もあります。そうなればペッグ制が揺らぐことになります。

香港は1997年に中国に返還されて以降、中国本土に比べた経済的な重要性は薄れましたが、金融面での存在意義は増しています。ペッグ制が本物の脅威に見舞われれば、脅威がいかなるものであっても、そうした存在意義は低下することになります。

中国政府が本土で厳しい資本統制を続けているため、香港が果たす役割は、主要な資金調達の経路から世界最大級の株式市場、中国本土の株式や債券に流入する国際投資の最大の入り口まで幅広くあります。

中国本土の富裕層も香港に信頼を置いています。1兆米ドル超と推定される香港の個人資産の半分以上は、本土の個人資産とされています。

現在は米ドルペッグを続けている香港ドルですが、香港基本法によれば、どの資産を裏付けとして使用することも可能です。実際に香港はドルペッグ以前には英ポンドにペッグされていたことや銀に紐づけて管理されていた時代があります。ですから今後、例えば香港ドルの為替レートを日本円にペッグさせる、人民元にペッグさせると言うことも法制度上は可能で選択肢に入ってくる訳です。

ただし現在、人民元は資本の自由移動に制限がありますから、現行の制度を活かす形で運用する場合には、香港側の選択肢に入らないはずです。では日本円を裏付け資産に使うかと言うと、それもまた基軸通貨である米ドルの方が良いとなるわけです。ですから現在のところ香港側が裏付け資産を米ドルから他の何かに変えるインセンティブはないです。

となると、現行の米ドルペッグが崩れる唯一想定される事態は、米国が米ドルと香港ドルとの自由な交換を認める香港政策法を改正して、香港ドルと米ドルの交換に制限を加える場合です。これは米中対立において米国側の最終手段として発動される可能性はあります。ただその際には当然人民元についても同様の制限を加えることが想定されるため、人民元と香港ドルにセットで交換制限を加えることになるでしょう。

この場合に、香港ドルは裏付けとなる資産を米ドル以外から探さなくてはなりません。日本円を裏付け資産にするという可能性もありますが、そこは米国のほうから、日本に対して裏付け資産にはしないようにとの強い要請をするでしょうから、これはないでしょう。

次の選択肢としては英ポンドに戻すという可能性もあるかもしれません。ただ、香港の一国二制度を破った中国に英国は業を煮やしており、それを許すことはないでしょう。もしくはこのような事態になれば、いよいよ中国が人民元の資本移動制限を外すかもしれません。

そうなれば裏付け資産は当然人民元が最有力候補ということにはなりますが、香港のドルペッグ制を停止した、中国の人民元をペッグ制の対象にすることはあり得ません。あるとすれば、現中国の体制が崩壊して、新たな体制になった場合のみでしょう。

そうなれば、中国は世界から膨大な資金の調達することが不可能になり、金融・経済はかなり落ち込むことになります。これは、予め予想されたことではありますが、米中の対立が続く限り、いずれこれは実行されるかもしれません。

なお、香港ドルペッグ制度の停止についてはは、すでに法律が定められており、議会の承認がなくても、大統領令だけで速やかに実行できます。まさに、バイデンの胸先三寸なのです。

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2021年7月30日金曜日

【日本の解き方】かけ声ばかりのコロナ対策 医療や補償の予算も未消化 ワクチン接種急ぐしかない―【私の論評】コロナと共存できる強靭な社会を目指すべき(゚д゚)!

【日本の解き方】かけ声ばかりのコロナ対策 医療や補償の予算も未消化 ワクチン接種急ぐしかない


モデルナ社製のワクチンの瓶

 現状の新型コロナウイルス感染は50代以下が大半で、入院患者数は増えているが死者や重症者は大きく増えていないという状況だ。東京都は緊急事態宣言下にもかかわらず目立った人出の減少はみられていないが、どのような対策が望ましいのか。

 筆者が理想としているコロナ対応は以下の通り。まず、一定期間後(例えば2カ月後)の新規感染者数、重症者数を予測する。そこで、現時点の医療キャパシティーで、病床数などで対応できるかどうか判断する。

 もし対応ができない場合、まず「供給」対策として医療資源の増加を試みる。公立医療機関であれば直接的な予算措置が必要だし、民間医療機関でも間接的な助成措置が必要となるので、その適否を検討する。

 供給対策ができないのであれば、「感染」対策として、感染者数の増加を抑制するために、人々の行動規制を考える。この場合も、何ら対策をしないで行動規制だけに依存するのではなく、「3密」を避けるために諸施策を組み合わせて実施する。

 以上が基本であるが、感染症の増加はある時点から指数関数的になるので、そうなったら「供給」対策は意味を持たなくなる。その意味で将来予測が極めて重要だ。

 しかし、今の日本の対策を見ていると、まず将来予測でとんでもない数字が出て人々の不安をあおり、その結果、供給対策に意味はなく、感染者数の増加を抑制するために、人々の行動規制を「自粛」という形で政府が要請する。その中で、決定的なエビデンスがあると思えない飲食・旅行規制を、業者に対する規制の形で行ってきた。

 実際、医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」は約1兆5000億円の予算措置がなされたが、その多くは未消化だ。飲食・旅行規制での業者への代償として、地方自治体の協力金の財源となるはずの「地方創生臨時交付金」は約4兆5000億円も予算措置がなされたが、これもかなりの部分が未消化になっている。

 これらの未消化については、実務的にできなかったとされているが、官僚が裁量的に支出を渋ったのかどうかを含め原因をしっかり究明する必要がある。

 要するに、予算では供給対策も業者規制への補償も手当てされていたが、それらがあまり実行されずに、人々への行動規制という「かけ声」ばかりが行われたというのが実態だ。

 こうしてみると、政府のコロナ対策が、前提となるべき科学的な予測がないので、それに基づく供給対策も業者規制に対する補償も行われない中身のないものであったことが分かる。

 この中で、かろうじてうまくできているのがワクチン接種だ。ワクチン接種は海外の例でも、コロナの感染者数を減少させ、特にその中でも重症者数や死者を減らし、医療崩壊を防ぐ。今となっては、ワクチン接種を進めていくのがベストの策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナワクチン接種の推進で、

厚労省の発表によれば、7月27日の全国の新規感染者数は7000人を超えていますが、移動平均では6000人程度です。新規感染者数は急増しており、これがマスコミ報道で強調されています。しかし、より重要な重症者数、死亡者数はそれぞれ500人、10人程度であり、これは過去の1月の3波や5月の4波のピークの半分以下の水準です。


なお、人口あたりの新規感染者数と新規死亡者数、それに、100人当たりのワクチン接種状況のG7における国際比較をみると、いずれも日本はG7の中では優等生です。

なぜ、新規感染者数が急増しているのに、重症者数が増えない理由は簡単で、ワクチンが順調に接種され、新規感染者のほとんどはリスクの低い若者で、リスクの高い高齢者はそれほど多くないからです。 

ちなみに、東京都でみると、28日の新規感染者は3177人(移動平均では1954人)ですが、そのうち60才以上は172人(移動平均では98人)で、1月の第3波の三分の一程度です。 


重症者数や死者数が著しく多いと医療逼迫やひいては医療崩壊をもたらすので大変ですが、ワクチン接種のおかげで、それらのリスクの高い高齢者の感染が抑えられているので、すぐには大事に至りにくいです。 

7月27日、東京都福祉保健局の吉村憲彦局長は、重症化のリスクの高い高齢者の割合は少なくなり、病床の確保も進んでいるとして、「年明けの第3波のときとは本質的に異なっているので、医療に与える圧迫は変わっている。いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」と述べています。

日本のコロナ感染の状況はこのようなものですが、結局のところ上の高橋洋一記事にもあるように、ワクチン接種を進めていくことが、決め手です。これが進めば、感染者数が増えたとしても、さほど気にしなくても良いようになります。

そのワクチンですが、厚生労働省は8月後半に配布を予定していた新型コロナウイルスワクチンについて、「在庫があると判断した自治体への供給量を1割減らす」としていた方針を撤回すると発表しました。自治体からは、在庫とされるなかには予約済みのワクチンも含まれているなどとして、反発の声が上がっていました。

 V-SYSという厚労省が管理しているワクチンの在庫管理システムのなかで、在庫が積みあがっているように見えるのですが、もう既予約済みのワクチンも含まれている場合もあります。

そもそも在庫は、極めて管理するのが難しいです。需要を予測しなければいけないわけです。どんな業界でも、在庫管理をすることは難しいので、少し余分にあるくらいがいいのです。 さらに、新型コロナワクチンは厳しい温度管理も必要です。

足りないよりは、少し余るくらいでちょうど良いです。たくさん余っても、管理すれば良いだけです。冷凍庫への保管が重要です。そこで期限切れにならなければよいわけです。これは、アイスクリームに近いです。アイスクリームも長いこと保存できます。 

ワクチンはそれに近いですから、在庫管理より電源管理の方が重要な品物なのです。だから積極的に出して、余ればストックでいいのです。削減なんて、何を言っているのか理解できません。 在庫は多くて良いです。米国では、どんどん製造してどんどん接種しています。

日本でも、ワクチンはどんど製造してどんどん接種するという方式で、良いです。なぜ供給の削減をしようとしたのか理解に苦しみます。

そもそもコロナワクチンは、国外から入って来るものですから、厚生労働省に貯めないで、どこにでも配るべきです。配っておけば、あとは自治体間で調整が必要ですが、ワクチンを打ちたい人がどこでも打てるという大規模接種会場のようなものを実施すれば、在庫は無駄にせず使い切ることができるはずです。

コロナと共存できる強靭な社会を目指すべき

高齢者へのワクチン接種は一巡したようですが、これからは若年層に対して接種を強化し、コロナと共存できる強靭な社会を目指すべきです。

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2021年7月29日木曜日

安倍前首相、台湾訪問の意向 外交部「全力でサポート」―【私の論評】台湾は日本の優れた海洋戦能力に期待し、中国はこれに脅威を感じている(゚д゚)!

安倍前首相、台湾訪問の意向 外交部「全力でサポート」

自民党が野党だった2010年10月、訪台した安倍晋三氏(左)と面会した李登輝氏

安倍晋三前首相が日本紙の取材に対し、李登輝(りとうき)元総統の逝去から30日で1年を迎えるに当たり、台湾を訪問したい意向を示していることについて、外交部(外務省)は28日、安倍氏の訪問を強く歓迎するとし、必要なことがあれば全力でサポートするとの姿勢を示した。

産経新聞によれば、安倍氏は李氏について、世界でこれほど日本を思ってくれたリーダーは他にいなかったとした上で「諸般の状況が許せばお墓参りをしたい」と述べた。

同部は、安倍氏が李氏を強く慕っていることに感動させられたと言及。台湾の国際参加への支持表明や日本政府による新型コロナウイルスワクチンの無償提供の後押しなど、安倍氏の長きにわたる台湾への支持と深い友情に心から感謝するとの立場も示した。

頼清徳(らいせいとく)副総統は28日、日本語でツイッターを更新。安倍氏が訪台の意向を示していることに「とても感動しています」として歓迎する考えを示した。

【私の論評】台湾は日本の優れた海洋戦能力に期待し、中国はこれに脅威を感じている(゚д゚)!

安倍晋三氏の台湾訪問は、総理大臣だった頃はなかなかできなかったことだと思います。現在の元総理大臣という立場だからこそできたことです。李登輝氏の葬儀のときには、安倍氏は現役の総理大臣でした。葬儀に参加したのは、当時の安倍総理の指名を受けた森元総理でした。

その安倍晋三氏は、日本と米国、台湾の議員有志は29日、安全保障などを議題に「戦略対話」のオンラインの初会合に参加しました。日本側は日華議員懇談会(古屋圭司会長)の与野党議員が参加しました。中国の抑止策を巡って意見を交わしました。

日華懇顧問自民党の安倍晋三前首相は、新疆ウイグル自治区や香港などにおける中国当局による人権侵害に懸念を示し、「香港で起こったことが台湾で起こってはならないとわれわれは固く考えている」と強調しました。

「インド・太平洋地域の海が自由で開かれていることは決定的に必要だ。先般の日米首脳会談やG7サミット(先進7カ国首脳会議)で台湾海峡の平和と安定が明記されたことは極めて大きい」とも述べました。

安倍氏はまた、中国側に台湾の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加を認めるよう要求。米国と台湾に対しては、連携を強めるために環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を呼びかけました。

一方、米国のハガティ上院議員(前駐日大使)は「なんのために戦っているのかを明確にしなければならない。米国と日本、台湾は民主主義と自由を守ってきた。われわれの生き方がかかっている。自由に発言し、自由に信仰し、自由に繁栄することを必ず守らなければならない」と訴えました。


軍事的圧力を強める中国に対して、最近では中国の軍事費の伸びが突出しているので、かなりの危機感を抱く人もいますが、現在の水準でも米軍の軍事費にははるかに及びません。

そうして、戦闘能力といえば、米国の戦闘能力が突出しているのは事実ですが、中国の戦闘能力も突出していると考えるひとも多いようですが、それも間違いです。

米英と同じく海洋国である日本は、核や原潜はもっていないものの、海戦においては中国を圧倒しています。

このブログでも何度か指摘しているとおり、自衛隊が台湾有事で活躍できるのは潜水艦隊の運用です。P1やP3Cといった哨戒機で、中国の潜水艦の位置を探知し、その位置情報を米軍に伝え、米艦艇や攻撃型原潜が対潜ミサイルなどで沈めることができます。無論、自衛隊の潜水艦や自衛隊機が対潜魚雷などで沈めることもできます。

海自の『そうりゅう』型やその後継の『たいげい』型は世界最高性能を誇る通常型潜水艦です。特に、静寂性(ステルス性)に関しては、世界一です。これを中国の貧弱な対潜哨戒脳呂では発見できません。

さらに、性能の高さだけでなく、世界最強の米海軍と共同訓練を行なっているので、練度も高いです。 

洋上を機動する中国海軍の空母をはじめとする水上艦艇に対しては、高性能の魚雷やハープーン対艦ミサイルで攻撃できます。もちろん中国潜水艦に対しても優位に戦う能力があります。

日本の潜水艦が展開するだけで、中国側はこれを発見できないのです、中国海軍の行動を牽制することができるでしょう。 

敵の潜水艦を駆逐する戦闘でも、自衛隊に分があります。対潜水艦では索敵能力が極めて重要で、先に相手を発見したほうが勝つとされています。 

海自の対潜能力(ASW)は米国とならんで世界トップレベルです。海上自衛隊はその誕生から、対潜水艦作戦に重点を置いてその能力向上に努めてきました。保有する護衛艦には最新鋭の対潜装備の他、高性能の哨戒ヘリコプターも搭載しています。さらにP1およびP3C哨戒機も多数保有しており、これらを駆使して水中の中国潜水艦を探知して捕促し、対潜魚雷、対潜ロケット、対潜弾投射機で攻撃し撃沈できます。

P1哨戒機

台湾有事では、巷の軍事評論家は、米中が空母や航空機やミサイルなどでドンパチやることを想定しているようですが、その発想はもう古いです。特に初戦においては、文字通り水面下で、潜水艦による“神経戦”が繰り広げられ、日本の潜水艦隊はその静寂性を最大限に活用し、情報収集にあたるでしょう。

中国がそれに怯むことなく、台湾を奪取しようとした場合は、瞬時にして米原潜が、中国潜水艦、艦艇のほとんどを撃沈するでしょう。場合によっては、日本もこれに加勢することになるでしょう。さらに付け加えると、日本の潜水艦隊だけでも、ほとんどを撃沈できます。

それでほとんど勝負がつきます。日中開戦となれば中国がもっとも恐れるのは海上自衛隊の対潜哨戒能力と潜水艦隊の戦力です。中国は、これには全く歯が立ちません。

現状の法制度では、台湾有事に自衛隊が本来持つ能力を発揮するのは難しいです。ただ、自衛隊の軍隊としての能力は中国軍を上回っていると見て間違いないです。中国の装備は徐々に向上していますが、まだ自衛隊のほうがレベルが高く、隊員の練度も中国より高いです。

正面からぶつかれば自衛隊は中国軍に負けないです。 制度を整え米軍と一緒に作戦を行い、初戦で日米が空母やその他の艦艇や海兵隊などを多数送り込み中国に格好の的を提供するようなバカ真似をせずに、初戦を潜水艦隊で戦い抜き、中国の艦艇・潜水艦のほとんどを撃沈し、台湾を潜水艦隊で包囲すれば、すぐに決着がつきます。

軍事評論家の中には、有事になってからでは遅いと主張するものも多いですが、そのようなことはありません。有事になったとしても、日本の潜水艦隊が無事なら、そこからゆっくりとでも十分勝負になります。

有事になっても日本はのらりくらりと、国会で審議したりして、台湾有事対応をするかもしれません。2年も3年も時間をかけていては、だめですが、すくなくとも数ヶ月以内に対処すれば十分間に合います。

何しろ、中国には日本の潜水艦を探知できないわけですから、数隻の潜水艦で台湾を常時包囲すれば、中国艦隊は撃沈をおそれて、台湾に近づけなくなります。そうなると、たとえ人民解放軍が多数台湾に上陸していたとしても、補給ができなくなり、お手上げになります。ただし、あまりのらのくらりしていると、台湾軍や中国軍の犠牲が多数ででしまいますので、はやめにすべきでしょう。

私が、最も恐れるのは、初戦で日本が何も対処しない場合、中国軍が調子づき多くの艦艇を台湾に派遣した場合です。その場合、日本の潜水艦隊がこれらをすべて撃沈せざるを得なくなる場合が想定できます。そうなると、中国の艦艇がほとんど全滅し途方もない数の犠牲者がでる可能性が大きいです。

そうならないように、普段から台湾有事の対応を決めておくべきです。ある段階を過ぎた場合、すみやかに潜水艦隊で台湾を包囲し、場合によっては条件を満たせば中国艦艇を撃沈できるように法的な裏付けをとっておき、最初から中国の艦艇が台湾に近づけなくすべきです。そうすれば、無用な犠牲者を出さずにすみます。

このようなことをいうと、中国のプロパガンダに煽られた人々が、「ドローンがぁー」、「超音速ミサイルがぁー」、「空母がぁー」、「核兵器がぁー」と叫ぶ人がいるようですが、どのような破壊力のある兵器であっても、探知できない敵を攻撃することはできません。

ロシアは核魚雷を開発中だそうですが、これさえも探知できない敵を攻撃できません。やまかんで、何発も核魚雷を発射することはできません。

現在台湾は国産の潜水艦を建造中で、最終的には8隻を建造しようとしています。これに対して、米国の軍事アナリストは、もし台湾がこれに成功すれば、今後中国は数十年にわたって台湾に進行できないだろうとしています。

無論、これは、台湾が日本の潜水艦と同等のステルス性と攻撃性を有することを前提として、このように語っているのだと思います。そこまでいかなくても、中国側に探知されにくい潜水艦を作れば、これは成就すると思います。実際、台湾の潜水艦建造には日本の技術者も参加していますから、そうなることでしょう。

自前の潜水艦の着工式に出席した蔡英文総統=2020年11月24日、高雄市

ただ、現在は建造中ですから、すでに潜水艦22隻体制をとっている日本は、台湾にとってそれまでの間、強力な助っ人になりえるわけです。

以上軍事的には、日本が台湾有事に十分対抗できるわけですから、日米台の戦略対話に、日本が参加する意味が十分あるわけです。もしそうでなければ、参加の意味は半減するわけです。「インド太平洋戦略」も同じことです。

日本のこの優れた海洋戦能力があるからこそ、台湾は日本に期待しているのです。中国は、これに脅威を感じているのです。

安倍元総理には、議員による「戦略対話」から、日米台の政府による「戦略対話」にもっていくための架け橋になっていただきたいです。日米台が協力すれぱ、中国による台湾侵攻は、不可能になります。

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2021年7月28日水曜日

中国の王毅外相、天津でタリバン幹部と会談―【私の論評】アフガニスタン情勢が、なぜ中露の警戒を強めるのか(゚д゚)!

中国の王毅外相、天津でタリバン幹部と会談

タリバンの代表団と写真に納まる中国の王毅国務委員兼外相(左から7人目)=28日、中国天津市


 中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相は28日、天津市でアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの幹部と会談し、アフガニスタン和平などについて意見交換を行った。中国外務省の発表によると、王氏はタリバンに対し、「アフガンで決定的な力を持つ軍事、政治勢力だ」と強調した。

 王氏は、タリバンについて「アフガンの和平、和解、復興プロセスで、重要な役割を発揮することが見込まれる」と述べた。中国は、アフガン政府とタリバンの双方と関係を保っており、米軍撤収完了後のアフガン安定化に向けて影響力を示す考えとみられる。

 中国側は、アフガンと国境を接する新疆ウイグル自治区の独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)の動きに神経をとがらせている。王氏は会談で、ETIMについて「中国の国家安全、領土保全の直接的な脅威だ」と主張。その上で、タリバン側に対し「ETIMなど一切のテロリスト組織と徹底的に一線を画することを望む」と求めた。タリバンへの支援姿勢を示すと同時に、ETIMとの関係を完全に断つようにくぎを刺した形だ。

【私の論評】アフガニスタン情勢が、なぜ中露の警戒を強めるのか(゚д゚)!

米軍がアフガン撤退を進める中、中国は「最大の隣国」(王氏)として影響力を確保する狙いとみられます。

米軍のアフガニスタン撤退については、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを―【私の論評】米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直しつつある(゚д゚)!

アフガニスタン ヒンドゥー・シュク山脈

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。

超大国がアフガニスタンで苦杯を喫するのは米国が初めてではありません。米国と入れ替わるようにアフガニスタンを去った旧ソ連は、親ソ政権擁護のために1979年から10年間駐留したましたが、武装勢力ムジャヒディーンの抵抗で1万4000人以上の戦死者を出し、ソ連崩壊の原因の一つにもなりました。

それ以前に英国も、帝国全盛時代の19世紀から20世紀初めにかけて三次にわたりアフガニスタンで戦いましたが、1842年にはカブール撤退で1万6000人が全滅させられました。その後シンガポールで日本軍に敗北するまで「英軍最悪の惨事」と言われていました。

 こうしたことから、アフガニスタンは「帝国の墓場(Graveyard of Empires)」と呼ばれるようになり、米国もその墓場に入ったのですが撤退を余儀なくさせらました。
1979年、ソ連のブレジネフ政権が、親ソ政権を支援し、イスラーム原理主義ゲリラを抑えるために侵攻しました。反発した西側諸国の多くはモスクワ=オリンピックをボイコットしました。経済の停滞するソ連でも大きな問題となり、ソ連崩壊の一因となりました。

当時はソ連のアフガニスタン侵攻の理由は明確にはされず、諸説ありましたが、現在では次の2点とされています。

まず第一は、共産政権の維持のためです。アフガニスタンのアミン軍事政権が独裁化し、ソ連系の共産主義者排除を図ったことへの危機感をもちました。ソ連が直接介入に踏み切った口実は、1978年に締結した両国の善隣友好条約であり、またかつてチェコ事件(1968年)に介入したときに打ち出したブレジネフ=ドクトリン(制限主権論)でしたた。

第二位は、イスラーム民族運動の抑圧のためです。同年、隣国イランでイラン革命が勃発、イスラーム民族運動が活発になっており、イスラーム政権が成立すると、他のソ連邦内のイスラーム系諸民族にソ連からの離脱運動が強まる恐れがありました。

この記事でも指摘したように、米国のアフガニスタン撤退を決めたのは、トランプ前政権でしたが、私が指摘したその意図は、まずはアフガニスタンでの米国の勝利は、この記事でもその事情を述べたようにあり得ないことです。そもそもアフガニスタンでは何が勝利かもわかりませんし、仮に何らかの定義をしたとしても、それを達成するのはほぼ不可能です。であれば、撤退するのは当然のことです。

さらにもう一つは、米国の現在の軍事的、経済的競争相手は中国です。中国と対峙するためにも、泥沼化したアフガニスタンから撤退すべきですし、さらには、トランプ政権としては、その時々で中国を弱体化するとみられる勢力に支援する方向に切り替えたという面もあると考えられます。

タリバンの勢力は、すでに中国とロシアの国境付近にまで達しています。


反政府武装勢力タリバンの攻勢を受けて5日以降、旧ソ連タジキスタンに逃げ込むアフガンの政府軍兵士や市民が急増しており、北部の国境警備が米軍の完全撤退を前に崩壊している可能性があります。

ロシアメディアによると、タジキス担政府は5日、アフガンとの国境1430キロのうち7割が、タリバン支配地域と接するようになったと説明。7日に同政府は、同日までにタリバンの攻撃を受け、アフガンの政府軍多数と市民2000人以上がタジク領内に逃げ込んだことも明らかにしました。

ロシアのプーチン大統領は5日、同盟関係にあるタジキスタンのラフモン大統領と電話協議し、軍事支援の用意があると表明。タリバン支配地域からイスラム過激派組織がアフガン周辺諸国に流出するのを警戒しているとみられ、アフガニスタンとタジキスタンの国境地帯への派兵も辞さない構えだす。タジキスタンも2万人規模の予備役動員を開始しました。

ただロシア側は、アフガにスタン情勢への深入りは避ける方針とみられます。上にも掲載したように、ソ連は1979年にアフガンに侵攻し、10年近い戦闘で多数の犠牲者を出したほか、麻薬流入を招いたためです。

中央アジアへの影響力を増す中国も、米ソの失敗を教訓に、アフガンに直接介入する可能性は低いです。

一方で中国新疆ウイグル自治区はアフガニスタンと約90キロの国境を接っします。アフガにスタンからのイスラム過激派組織の流入や、中国国内の弾圧から逃れたイスラム系少数民族ウイグル族がタリバン支配地域で拠点を築く事態を警戒しています。

中国は米軍のアフガン駐留を非難してきたのですが、米軍の存在が中国国内への過激派拡大を抑えてきた面もあります。王毅国務委員兼外相は3日、「米国は責任ある方式で情勢の安定化を図るべきだ」と遠回しに駐留継続を求めていました。

中国はタリバンとのパイプを維持し、これまでに数回、北京に招くなどしてきました。王氏は3日、アフガン政府とタリバンの和平協議を後押しする考えを示しましたが、タリバンは米軍撤退で勢いづき、協議がまとまる見通しは立っていませんでした。

今回のタリバン幹部との、会談でそれが成就したのかどうかは、定かではありません。

米国としては、撤退によりアフガニスタン情勢に直接関与することはなくなりました。また、米国は中国のようにアフガニスタンと国境を接しているということもありません。ロシアは、アフガニスタンと国境を直接接していませんが、ソ連連邦に加盟していた中央アジアの国々(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン)を介してアフガニスタンと接しています。


アフガニスタンから撤退する米国は、中国、ロシアほどにはアフガニスタン情勢には左右されません。これらの地域の不安定化は、中国、ロシアには直接的に影響しますが、米国にとってはあまり大きな影響はありません。

ただ、なぜアフガニスタン情勢が注目されるかといえば、それは無論イスラムの価値観への警戒からです。

タリバン等が世界征服のために行う暴力行為は、イスラム法においては神に命じられたジハードとして正当化されますが、現代の国際社会では到底容認されません。

彼らの実践するイスラム法による統治も、イスラム法においては唯一正しい統治体制とされますが、それは間違いなくイスラム教というひとつの宗教だけが絶対優位に立つ政体です。

イスラム的価値観と私達の価値観は、それ自体が異なります。さらに重要なのは、両者の目指す目標が全く異なる点です。無論、わたしたちと全く価値観を異にする、中国やロシアともイスラムの価値観は全く異なりますし、目標も違います。

目標を共有してさえいれば、価値観の差異はあっても、その同じ目標を目指して共に歩んでいくことはできるでしょう。

互いのよいところを認め合うことも時には可能でしょうし、お互いの差異について議論したり切磋琢磨したりすることも肯定的な意味を持つはずです。

しかし、現実はそうではないのです。ヨーロッパ諸国が「政治的イスラム」を規制し始めたのも、米国ではトランプ政権のときにその推進の中核であるムスリム同胞団をテロ組織と指定することを検討し始めたのも、イスラム法による統治が実現され、イスラム教という価値だけが絶対優位におかれることの危険性に気づいたからにほかなりません。

そうなれば、多様なアイデンティティを持つ人々の平等も自由も、政治的多元性も失われます。

これは、ある意味では全体主義よりも恐ろしいかもしれません。全体主義はかつてのナチス・ドイツのように体制が崩壊すれば崩壊します。しかし、イスラムのような宗教は違います。

ある体制が崩壊したり、勢力が崩壊したとしても、宗教としてのイスラムは人々の心に残り、多大な影響を及ぼし続けます。そうして、また新たな勢力が生まれる可能性は大きいのです。

その恐ろしさに気づいたからこそ、米国はアフガニスタンから撤退を決め、中国やロシアは警戒を強めているのです。

米軍のアフガニスタン撤退の決定は、おそらくタリバンの勝利の後に、女性やその他の権利の後退、多くの残虐行為が続くことでしょう。
しかしここに留まるためには、アフガン二スタンの腐敗した茶番劇ではなく、陸軍と国家を構築するために米国/NATOの植民地政府が必要となるでしょう。それは、中国と対峙している現状では、米国にとっても不可能です。

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2021年7月27日火曜日

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…方針転換の根拠はイスラエルのデータ―【私の論評】なぜ私達は「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないのか(゚д゚)!

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…方針転換の根拠はイスラエルのデータ

シンガポールはコロナを「はやり風邪」の扱いに…

 4度目の緊急事態宣言が発出された東京の新型コロナウイルスの1日当たり感染者数がこのところ連続して1000人を超え、第5波の到来が懸念されている。

共生を目指す英国の動き

 一方、世界に目を転じると、成人の過半数が新型コロナウイルスワクチンを接種した国々では「コロナとの共生」を目指した取り組みが始まっている。

 中でも注目を集めているのは英国の動きである。

 英国政府は7月19日、マスク着用とソーシャルデイスタンスの維持などコロナ対策の主要な規制を全面解除した。1日当たりの感染者数は5万人以上と日本と比べて格段に多いにもかかわらず、政府が大胆な措置に踏み切った背景にはワクチンに対する信頼がある。2回のワクチン接種を完了していれば、感染することはあっても重症化することを防げることが明らかになっているからである。英国では新型コロナウイルス感染症でこれまでに約13万人が死亡しているが、7月に入ってからの1日当たりの死者数は50人以下にとどまっている。

 ジョンソン英首相が5日に「ワクチン接種が進み、感染と死亡の関係を断ち切ることができた。コロナと共生する新しい方法を見つけなければならない」と述べたように、これまでの感染抑制に重点を置いた政策からの大転換である。

 ジャビド英保健相は「新型コロナウイルス以外の医学や教育、経済上の問題がパンデミックを通じて蓄積されており、感染者数が1日当たり10万人に達したとしても、社会を正常に戻す必要がある」として、今回の措置は新型コロナウイルスと一緒に暮らすことを学ぶプロセスの一部だとの認識を示した。

 科学者の多くは今回の決定を不安視しているが、「これにより英国経済は第3四半期中にコロナ禍以前の水準に回復する」とする楽観的な予測が出ている。

 「新型コロナウイルス感染症を撲滅するのでなく管理しながら共生すべきだ」とする方針転換は、英国を始めとする欧米諸国の専売特許ではない。日本ではあまり知られていないが、シンガポール政府が一歩先んじている。

 シンガポール政府は6月下旬に「感染者数の集計をせずに重症患者の治療に集中する」と宣言、新型コロナウイルスを季節性インフルエンザのように管理する戦略に切り替えた。

 シンガポール政府の方針転換の根拠になったのはイスラエルのデータである。それによれば、ワクチン接種完了者が感染する確率は未接種者の30分の1、重症化は10分の1に過ぎないという。昨年の新型コロナウイルスの致死率は2〜3%だったが、イスラエルのワクチン接種完了者の致死率は0.3%まで低下している。この数字は季節性インフルエンザの致死率(0.1%未満)と大きな差はない。

 新型コロナウイルスはインフルエンザのような「はやり風邪」になりつつあるとの認識が今後定着するようになれば、「社会としてどの程度まで感染の広がりを許容するのか」という判断が次の大きな問題となる。

 残念ながら東京五輪の大部分の競技が無観客で実施されることになったが、「五輪の開催地がもし欧米の都市だったら、今の日本のような感染状況で無観客で実施されるだろうか」と疑問視する声が海外から上がっている(7月14日付ニューズウィ−ク)。

 ワクチン接種は欧米諸国に比べて遅れているが、7月末までに希望する高齢者すべての接種が完了する予定である。日本でも海外と同様、感染者数の急増にもかかわらず、重症者数と死者数はかつてほど上昇しない傾向となりつつある。

「ゼロ・コロナ」を目標にするのは望ましいが、感染者数を基準に対策を講じている限り、8月22日の期限までに宣言が解除される見込みは立たない。いつまでたってもコロナ禍以前の状況に戻れないとの不安が頭をよぎる。

 日本でも「重症数を基準にした対策に切り替えるべきではないか」との声が出始めているが、これに対して感染症専門家は「政治判断の問題である」としている。

 社会心理学の分野で人々のリスク認知に関する研究が進んでおり、それによれば「危険は実在するが、リスクは社会的に構成される」という。毎年犠牲者を出しているのに軽視されるリスク(自動車事故など)がある一方、犠牲者の多寡にかかわらず、心理的に受け入れがたいリスクがある。新しく出現した感染症はその典型例とされている。

 いったん「怖い」と判断したリスクについては、人はそれに対する認識を改めることは容易ではないことがわかっている。一方「リスクを制御できる」と考えるような状況になれば、人々のリスク許容度は格段に高まることもわかっている。

 リスク・コミュニケーションの重要性が指摘されているが、新型コロナウイルスを脅威と感じている高齢者に対して、政府は「切り札」と位置づけるワクチンの効果を積極的にアピールして、「ワクチンを打てばコロナ禍以前の日常生活に戻ることができる」と推奨すべきである。さらに「自らがワクチンを接種することで社会全体が元に戻ることができる」という「明るい展望」を語れば、ワクチン接種に消極的な若者の考え方も変えることができるだろう。

 変異株の危険性が喧伝されているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は「ワクチンと控えめなマスクの着用を組み合わせるだけで変異株の感染拡大を防ぐことができる」と主張している。日本では欧米と異なりマスク着用に違和感が少ない。この利点をいかして「換気の悪い場所でのマスク着用」を条件とした日本独自の「ウィズコロナ」戦略を構築すべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月27日 掲載

【私の論評】なぜ私達は「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないのか(゚д゚)!

世界中で新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいます。しかし、ワクチン接種先進国である英国の専門家ですら、昨年の時点で、新型ウイルスがワクチンで消える可能性は低く、英国はこの先何年にもわたってこのウイルスと共存していくことになると、警告していました。

保健慈善団体ウェルカム・トラスト会長のサー・ジェレミー・ファーラー教授は昨年7月1日、英下院の保健委員会で「クリスマスまでに事態は収束しない」と述べました。この予想はあたりました。

続けて、人類は「数十年」にわたって新型ウイルスと共存していくことになると述べました。


ボリス・ジョンソン英首相は先週、クリスマスまでに平常の生活に戻るよう期待していると発言していました。この時、ジョンソン首相は新型ウイルス対策の制限緩和拡大を発表。レジャーセンターや屋内スイミングプールを今月下旬に再開するほか、今秋から大規模集会を認める見通しだとしました。

しかし専門家たちは、下院議員の超党派グループに証拠を示し、新型ウイルスが依然として存在していると、現実的に捉えるのが重要だと主張していました。

英オックスフォード大学は昨年7月20日、新型ウイルスのワクチンの臨床試験で免疫反応を誘発する効果と安全性が確認されたと発表しました。しかし同大学教授のサー・ジョン・ベルは、COVID-19が消滅する可能性は低いと考えていると述べました。

「この病原体はこの世界に永遠に存在し続ける。どこかへいったりはしない。それが現実だ」と、ベル教授は下院議員たちに述べました。

「こうした病原体を消滅させるのがどれほど大変なことか考えてください。例えばポリオの根絶計画は15年間続いているのに、ポリオはいまだに存在している」

「そのためこのウイルスの感染は今後も、増えたり減ったりする。このウイルスがまた活発になる冬が、たびたび訪れるようになる」

「このワクチンで長期的な効果が得られる可能性は低いので、継続的なサイクルでワクチンを接種しなくてはならない。そうするうちにまた感染者が出て、またワクチンを接種して、また感染者が出ることになる」

「新型ウイルスを撲滅するという考えは、現実的ではないと思う」とも語っています。ワクチン接種先進国である英国では、昨年からこのようなことが語られていたのです。

ゼロコロナは永遠もしくは、当面やってこないことは昨年からわかっていたことです。これについては、誰も否定できないと思います。結核も未だ、日本では毎年平均約18,000人が新たに結核を発症し、毎年約1,900人が結核で亡くなっています。

ゼロコロナが当面やってこないならば、コロナと共存するしかないということです。このブログでは、過去には高橋洋一氏の記事を引用して、日本の感染や死亡は他国に比較すると桁違いに少ないことや、高齢者のワクチン接種が進んだ現状では、東京などの緊急事態宣言は必要ないし、五輪は有観客で開催すべきことを主張してきました。

現役医師でも、これと同じ主張をする人もいます。その代表的なのが、大和田潔氏です。

大和田氏は、「新型コロナの死者数は70代以上の高齢者が8割以上を占める。高齢者へのワクチン接種が急速に進んだ今、もうコロナは終わったと言っていい」と語っています。

無論、大和田氏の発言は、ゼロコロナを前提として語っているのではありません。コロナと共存すること、新型コロナ感染症をマネジメントすることを前提として語っています。

ただし、テレビによる感染報道や、専門家会議の発言などを聞いていれば、なかなかそうは思えないと思います。

そういう方々には、是非とも、大和田氏の以下の記事をご覧になっていただきたいです。

大和田潔氏

 以下に大和田氏の略歴を掲載しておきます。
1965年生まれ、福島県立医科大学卒後、東京医科歯科大学神経内科にすすむ。厚労省の日本の医療システム研究に参加し救急病院に勤務の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。東京医科歯科大学臨床教授を経て、秋葉原駅クリニック院長(現職)。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、米国内科学会会員、医学博士。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)、共著に『のほほん解剖生理学』(永岡書店)などがある。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみを掲載します。

入手困難の時期にワクチンを世界から調達したのは、日本の信用と政府の力です。そして自衛隊の力を借りたり、地方自治体と直接連携をとったりしてワクチン接種を加速させ、成功につなげました。そこに専門家会議や医師会は存在しませんでした。

前に進むためにオリンピック委員会や政府が独自にガイドラインを作って運用を始めたのも当然のことです。有観客も良い選択であり、今後の経験につながります。

高齢者が安全になり被害が起きなくなった局面を迎え、コロナはもう身近な季節性ウイルスとしてあつかうべき世の中になりました。全体行動を取る必要はもうありません。一般国民自身がおのおの考え、自分で行動して良い局面になりました。

私たちに植え付けられた「陽性者は隔離」の考えを、自分たちで終わりにさせないといけません。ウイルスと共存して安全な世界がやってきたのです。屋外ではマスクを外して、熱中症対策を優先するガイドラインを作りましょう。

オリンピックの成功体験自体が、私たちの財産になります。また、日本が模索し作りだす新しいスタンダードは、季節性になったコロナと共存するお手本となり雇用拡大と景気回復にこぎ出した世界へ貢献することになるでしょう。

1年前のこのコラムで予想した通りに経過しています。オリンピックや甲子園を楽しみつつ夏の旅に出ましょう。
この記事は、今月7日に掲載されたものです。政府が五輪「無観客開催」を決めたのは、今月9日のことです。当然入稿は7日より、もっと前にされているはずですから、大和田氏は五輪は「有観客」で開催されることも前提としてこの記事を書いたのでしょう。

ゼロコロナはあり得ない以上、政府も、私達もそれを前提として考えていかなければならないのです。交通事故と同じく、絶対安全などあり得ないてのです。コロナと共存しつつ、そのリスクを低減し、日常を取り戻すべきなのです。コロナ感染をゼロにしようとすれば、それは不可能です。

そのためには、菅政権にもどこかで踏ん切りをつけ「コロナと共存」の道を歩むことを宣言しなければなりません。それに反対する勢力も多数存在するでしょうが、それに対しては「ゼロコロナ」はあり得ないことを数々のエビデンスで納得させるか、納得しないのなら、彼らの考えが荒唐無稽で根拠がないことを明確に主張すべきです。


そうして何よりも大事なのは、私達自身が「ゼロコロナ」という考えを捨て、「ウィズコロナ」にシフトしなければならないことです。政府主導だけでは、このシフトは困難です。私達自身がシフトし、その観点から政府に様々な要求をつきつけるべきなのです。

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2021年7月26日月曜日

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蓮舫氏が大炎上 五輪中止派なのに「金」祝福ツイート 「お見事なダブルスタンダード」痛烈な批判相次ぐ


 立憲民主党の蓮舫代表代行のツイッターが大炎上している。東京五輪・パラリンピックの中止を一貫して求めていたのに、開幕後は出場選手の健闘に歓喜していることに、「すごい手のひら返し」「あんだけ 中止しろ と叫んでおいて」「どの口が」「あきれた」などと批判が噴出しているのだ。蓮舫氏が反論すると、さらに燃え上がる状況となっている。

 「素晴らしいです! ワクワクしました!」

 蓮舫氏は25日、スケートボード男子ストリートで堀米雄斗選手が金メダルを獲得すると、こうツイートした。彼女は「仕分け人」として、「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言した人物でもある。

 冒頭のような批判が相次ぐと、蓮舫氏は次のように書き込んだ。

 「開催そのものへの反対は変わらない。国民を守る危機管理の問題だからだ」「選手の活躍には心から敬意を表する。反対なら応援するな、ではない」「菅義偉首相には国民の命と暮らしを守るリスク管理ができていない」

 これに対し、「お見事なダブルスタンダード」「五輪を中止すれば選手の活躍もなかった」「どうやったらオリンピックができるかを少しでも考えましたか?」「金メダルを取った選手が『開催していただきありがとうございます』と言っている」「こんなのだから信頼されない」など、痛烈な意見が相次いでいる。

【私の論評】実は、オリンピック後に菅政権が存続できる政治情勢となる(゚д゚)!

日本では左翼運動家などが五輪開催中止を叫び、わずか数ヶ月前まではマスコミや野党も中止が当然のような論調だった

東京五輪反対を主張した野党の人のほとんどのツイッターでは、五輪を楽しんでいる様子は見えないです。そうした中で、蓮舫氏は、上の記事にもある通り、スケボーの堀米選手の金メダルについて、

「堀米雄斗選手、素晴らしいです! ワクワクしました!」とツイートしました(https://twitter.com/renho_sha/status/1419155844952854530)。

これに対し、高橋洋一氏は、

「こんなにスポーツで感動するのに、それまでの五輪中止は理解できないな。『五輪の感動>>>さざ波の中での医療崩壊リスク』ということは前からわかっていはずだが。五輪中止の人はあと2週間どうするの?」とツイートしていました。(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1419206109919809538)。

なお蓮舫氏は、

「五輪で健闘された選手へのTweetに「反対してたのに」と言う反応がありますが、選手への応援と政府の危機管理体制への姿勢は別です。感染拡大の最中、今でもこの東京五輪強行の政府と東京都、組織委員会、IOCの判断には反対です。菅総理には国民の命と暮らしを守るリスク管理ができていません。」

ともツイートしています(https://twitter.com/renho_sha/status/1419184149466816517)。

なんともわかりにくい弁明だが、松井大阪市長は、

『蓮舫さん、オリンピックが開催されなければ、選手の皆さんが健闘する場所が無かったんですがね! オリンピックパラリンピックが終われば、いよいよ選挙ですからね。』

とわかりやすく応じた(https://twitter.com/gogoichiro/status/1419237008015167490)。

確かに、東京五輪の開催は、政局にも大きな影響を与える可能性がでてきました。

2021年に入ってから、菅義偉政権は新型コロナウイルスの感染者数の抑制を優先したため経済活動の停滞が長引きました。各種世論調査で内閣支持率は菅政権発足以来の低水準まで低下していますが、このまま総選挙を挟んで、菅政権発足1年余りで首相交代という展開も完全には否定できません。

実際に、自民党の中の公認候補を巡る「内輪もめ」が聞かれ、自民党の幹事長人事などを巡る思惑もあり、自民党内の「菅おろし」が本格化するシナリオさえ予想されます。

もっとも、内閣支持率は低下していますが「反対勢力」というパフォーマンスに徹しているとみられる野党に対して国民の期待が高まっているようには思えず、次の総選挙において野党への政権交代はほとんど想像できません。二階、小沢、小池のきな臭い動きもうわさされていますが、これが本格的に大きな動きになるという予兆はみられません。

この意味で、今後政局に変化が起こるとすれば、それは自民党内部の主導権争いが引き起こすことになりそうです。

まず、世論の風向きですが、実際にはオリンピックが始まり、テレビなどは日本人選手を中心とした活躍を大きく伝えるので、これまでのオリンピック同様に相応に盛り上がっています。すると、多くの国民が抱く釈然としない感情は、今後、当初の想定よりも容易に払拭されることになりそうです。

【東京五輪2020 スケートボード】〈女子ストリート決勝〉西矢椛の決勝の演技=26日、有明アーバンスポーツパーク

菅政権は新型コロナやオリンピック対応で迷走している部分もありますが、内閣支持率は新型コロナ感染動向に大きく連動している部分が大きいです。菅政権が注力するワクチン接種は他の先進国並みのペースにしっかり速まってきていますし、緊急事態宣言など経済活動制限の効果もあり、新型コロナ感染者数は秋口にかけて落ち着くでしょう。

それにこのブログでも指摘したように、最近では高齢者ではワクチンの接種が進んだため、そもそも感染者数が少なくなりました。確かに若年層の感染者数は増えていますが、それでも、元々感染者数が他国より二桁以下の日本では、若年層の死者数は交通事故の死者よりも少ないくらいです。

そのため、感染者数が増えても、ワクチン接種が進んでいなかった数ヶ月前と現在とでは、意味合いが明らかに異なっています。死者数は減っていることから、現在医療崩壊を声高に叫ぶ人はいなくなりました。

そうして、2021年末頃から日本経済が急回復する条件がそろうことになるでしょう。

結局、菅政権が注力する、「オリンピックというイベントを無事終わらせる」「ワクチン接種を進める」という2つの課題をクリアすれば良いのです。これらが高いハードルであるかと言えば、そうは見えないです。このため、オリンピックにおいて、テロ発生などのかなりの想定外の出来事でも起こらない限り、総選挙が近づく秋口にかけて経済活動の正常化期待が高まると予想できます。

確かに、オリンピックが多くの会場で無観客試合となったことが、経済活動の下押し効果を懸念する声もあります。しかし、無観客試合のチケットが払い戻しされるだけなら、数百億円程度でマクロ的には影響はほぼありません。

もちろん、首都圏を中心に7月から経済活動制限が強化されたため、これによる経済的な下押し効果は続いています。また、これまで飲食店などの営業自粛に対する協力金が、東京都などから迅速に支給されなかったという対応の不手際が目立っていました。

それでも7月以降については、先払いで飲食店への協力金支払いが行われ始めており、政府・自治体の対応は改善する方向にあります。今後こうした対応を続けるなかで、秋口以降期待できる経済活動の本格化とともに、これまで執行されなかった財源を必要な歳出に回すなどで、効果的に大規模な財政政策を発動する余地があります。

最終的には、官邸の判断次第ではありますが、いずれ再度補正予算を組み、30兆円はあるというGDPギャップが埋められる手立てが講じられれば、財政政策の発動が経済正常化を後押しし、春先から夏場にかけて米国で見られた経済活動の急回復が、日本でも2021年末頃から始まるでしょう。

新型コロナが収束に向かえば、どの程度経済成長率は高まるのでしょうか。日本人による国内旅行消費(2019年)は約21.8兆円(GDP比約4%)です。新型コロナで国内旅行消費は大きく落ち込んでおり、2020年4~6月以降の1年間では旅行消費は約8.3兆円へと半分以下に落ち込んでおり、この需要喪失はGDPの約2.5%に相当します。

政府が目指すとおりに、今年の年末までにワクチン接種が進めば、抑制されていた日本人の旅行消費がかなり顕在化すると見られます。中止されていた、GOTOキャンペーンも再び実施されることになるでしょう。

GOTOトラベルはかなりコスパの良い経済対策だったことがわかつている

2022年内に2019年の水準まで国内旅行消費が戻るとすれば、GDP成長率を約2%程度押し上げる効果が期待されます。

また、2022年に新型コロナリスクが低下すれば、現在ほとんど蒸発している海外からの訪日客の増加にも期待できます。新型コロナ禍前の海外旅行者による消費金額(2019年)は4.8兆円である(GDP比約1%)。

もちろん、国内旅行消費ほど早期に海外旅行者が増える可能性は低いので、訪日外国人への大きな期待は難しいです。それでも、訪日外国人が2019年の半分程度まで戻るだけで約2兆円の消費需要が現れることになります。

これらの旅行需要が顕在化することに加えて、営業自粛を余儀なくされていた外食やレジャーなどの産業の売り上げも、国内旅行消費と同様に2022年にはかなり正常化するでしょう。

これらのサービス消費が増える時には、同時に他の消費需要が減るので、旅行需要などの顕在化が全てGDPの押し上げ効果にはならないです。ただ、ワクチン接種が菅政権の想定する通りに進めば、2022年の日本経済の成長率はかなり高まるでしょう。

オリンピック後には、ワクチン接種も進み、30兆円規模の補正予算を組むことにより、菅政権が存続する政治情勢となり、上記のシナリオへの期待が強まるなかで、これまでの日本株の出遅れのかなりの部分が解消されることになるでしょう。

このような軌道にはやく乗れば、菅内閣が存続しうる環境が整うことになります。

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2021年7月25日日曜日

米超党派議員がIOCに書簡、北京五輪の延期や開催地変更を要求―【私の論評】人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを、再び繰り返すな(゚д゚)!

米超党派議員がIOCに書簡、北京五輪の延期や開催地変更を要求

マルコ・ルビオ上院議員

上院民主党のジェフ・マークレイ氏や上院共和党のマルコ・ルビオ氏ら米議会の超党派議員は23日、2022年の冬季五輪を延期し、開催地を中国の北京市から変更するよう国際オリンピック委員会(IOC)に要請した。米国は中国政府がウイグルなどイスラム少数民族を弾圧しているとしており、議員らはその停止を求めた。

議員らはバッハ会長にあてた書簡の中で、「中国政府に行いを改めるようIOCが圧力をかけた具体的な形跡がみられない」とした。

議員らは「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会」の委員。「五輪を開催する国の政府の行動が、五輪によって集める国際的な注目の制約を受けないという悪しき前例をIOCは作ろうとしている」と訴えた。

議員らは、東京五輪が新型コロナウイルスで開幕4カ月前に延期されたことに言及した上で、IOCには大会を延期する権限があると主張した。ロイターはIOCにコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。

人権団体や研究者、元住民、西側の政府関係者は、新彊ウイグル自治区のイスラム少数民族が強制労働に動員されていると指摘している。中国政府はこうした主張を認めていない。

【私の論評】人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを、再び繰り返すな(゚д゚)!

日本でもボイコットの動きがあります。自民党外交部会などは20日、党本部で会合を開き、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害をめぐり意見を交わしました。出席議員からは、来年2月の北京冬季五輪について「外交的ボイコットを検討すべきだ」「中国自体が五輪憲章に反する人権侵害をしており、開催地変更を働き掛けるべきだ」などの意見が出ました。

欧米でも人権侵害への反発から、北京五輪に政府要人らを派遣しない外交的ボイコット論が相次いでいます。佐藤正久部会長は中国の人権問題について「人権という普遍的な価値を基軸とする日本外交にとっても非常に影響を受ける問題だ」と指摘しました。

佐藤正久参議院議員

五輪ボイコットとはいっても、選手団を派遣しないという本格的なボイコットではなく、外交的ボイコットや経済的ボイコットなどの間接的なボイコットが妥当だとする考え方があることは昨日のこのブログでも述べたばかりです。

ただし、私自身は、この間接的なボイコットやり方は望ましくないと考えていることも昨日このブログで述べたばかりです。

なぜかといえば、欧米が譲歩して、間接的なボイコットしかしなかった場合、中国共産党に誤ったメッセージを与えてしまうことになると考えられるからです。先進国の圧力など、おそるるに足りないと考え、さらに高圧的になることが考えられます。

先進国はすでに中国が豊かになれば、自ずと民主化などもするし国際ルールも守るようになるだろうと期待して、中国に対して譲歩したり、厳しい対処をせずに、放置したために手痛い目に何度もあってきています。もう、このようなことを繰り返すべきではありません。

ジェノサイドをしているのに、それを認めないような国で、五輪など開催すべきではありません。それは五輪の精神に反します。

だからこそ、直接的なボイコットをすべきなのです。これは、中国にとっては、痛撃になることは確かであり、それは中国の国内外で周知されることになり、国内でもただごとではないことが、周知されることになるでしょう。習近平は痛撃どころか、震撼することになるでしょう。

上の記事にある、上院民主党のジェフ・マークレイ氏や上院共和党のマルコ・ルビオ氏ら米議会の超党派議員らは、私と同じような考えなのだと思います。

彼らは、さらに先を行っています、確かに東京五輪を延期することができたわけですから、北京五輪の延期や開催地変更などもできる可能性は十分にあります。それにボイコットよりも、開催地変更をするというほうが、アスリートたちにとっては良いことだと思います。

2018年のジャカルタ・パレンバン競技アジア大会の女子水泳リレーでは国際ルールを守らなかった、中国と韓国が失格して、日本が金を獲得しました。


これは当然のことだと思います。オリンピック競技では、ルールを守らなければ失格するのです。しかし、中国は南シナ海の領有権を国際裁判所に認めらなかったにもかかわらず、いまでも実行支配を続けています。WTOの規約も平気で破ってきました。

国際ルールを平気で破るような国には、オリンピックを開催する資格はないとIOCは認めるべきです。

人類は、ナチスドイツに五輪開催させてしまったという大きな間違いを再び繰り返すべきではないです。そのためには、外交的・経済的五輪ボイコットではなく、延期および開催地変更などを行うべきです。

ベルリンオリンピック開会式におけるヒトラー(一番手前)

冬季五輪は、1年延期することにして、他の所で行うようにすべきです。そうなると、一箇所で行うには負担が大きすぎるので、いくつかの国で分担して行うようにすべきと思います。

その中に、日本も含めて、札幌・長野で行うようにすると良いと思います。柔軟に考えれば、やり方はいくらでもあると思います。

やは北京五輪は、外交的・経済的ボイコットではなく、開催の延期と開催地変更を行い、これを先例とすべきです。今後も、中国のような国が出てきた場合、同じような措置をとるべきです。

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2021年7月24日土曜日

日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も―【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も


 世界全体で414万人以上もの死者を出し、東京五輪の大半を「無観客」開催に追い込んだ新型コロナウイルスの「起源」解明をめぐり、日米と中国の応酬が展開された。世界保健機関(WHO)が中国での追加調査計画を打ち出したところ、日米は賛同し、中国が猛反発しているのだ。このままでは、来年2月開幕の北京冬季五輪にも影響が出かねない。

 「起源解明につながることが重要だ。追加調査を重視している」

 茂木敏充外相は23日、東京五輪開会に合わせて来日したWHOのテドロス・アダノム事務局長と外務省で会談し、追加調査の徹底を要請した。

 「中国ベッタリ」と揶揄( やゆ)されるテドロス氏だが、自由主義諸国の強い怒りを懸念したのか、今月のWHO会合で、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所の監査を含めた追加調査を提案した。

 ところが、中国・国家衛生健康委員会の幹部は22日の記者会見で、「常識を重んじず、科学に反するものだ」と非難し、拒否した。

 これに対し、米国のジェン・サキ大統領報道官は22日、ホワイトハウスでの記者会見で、「深く失望している。彼らの姿勢は無責任で、率直に言って危険なものだ」と述べ、中国政府の対応を強く批判した。


 茂木氏の発言も、米国に歩調を合わせるものだ。

 北京冬季五輪をめぐっては、欧米諸国が中国での人権弾圧などを批判し、「外交的ボイコット」で結束を強めている。マイク・ペンス前米副大統領も今月14日、中国が新型コロナの「起源」を明確にし、人権侵害を停止しない限り、「ジョー・バイデン大統領は五輪の開催地を北京から別の場所に変更するよう主張すべきだ」と主張している。

【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

3月30日に米国務省は、国別人権状況に関する年次報告書を発表しました。報告書は、中国共産党政府によるウイグル族の虐待はジェノサイド(集団虐殺)であると断じました。これを受けて、4月2日付のワシントン・ポスト紙は、世界的な大企業は北京オリンピックのスポンサーであることを止めるべきであると主張する社説を掲げています。

米民主党のペロシ下院議長は4月18日、米議会でのオンライン公聴会で、中国国内の人権弾圧を「ジェノサイド(集団殺害)」と非難し、来年2月の北京冬季五輪に各国の国家元首を派遣しない「外交ボイコット」を行うように呼びかけました。

米議会内では、超党派でボイコット論が強まっており、4月に米上院外交委員会で可決された「戦略的競争法案」では、北京冬季五輪への参加を米政府当局者がボイコットすることを求める内容が盛り込まれています。

7月8日、欧州議会は、新疆ウイグル自治区の人権問題が改善されない限り、2022年に北京で開催される冬季オリンピックをボイコットするよう加盟国に求める決議を採択しました。

英下院議会の外交委員会も8日、中国による新疆ウイグル自治区の人権問題に関する報告書を公表しました。中国政府への国際的な圧力を強めるためとして、来年の北京冬季五輪の式典ボイコットや、ウイグル自治区で生産される新疆綿の取引禁止措置などを提言しました。


2022年の北京の冬季オリンピックをボイコットするよう求める声は、今後ますます高まる可能性はありますが、それが具体化するかどうかとなると、おそらく困難であろうとする声もあります。

北米および欧州の諸国にとって、冬季オリンピックは夏のオリンピックよりも遥かに重要です。過去23回の冬季オリンピックを通じて、北半球の10の諸国(米国、カナダ、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、スイス、オランダ及びソ連、ロシア)が1060個の金メダルのうちの748個を獲得したといいます。

従って、北米と欧州が欠けた冬季オリンピックは成り立たちません。それだけにボイコットは北京を痛撃することにりますし、逆に、それ故に、北米と欧州の選手に犠牲を強いるボイコットを実現することは至難と言えるからです。

3月15日付のニューヨーク・タイムズ紙では、ミット・ロムニー上院議員(共和党、ユタ州選出)が、ソルトレーク冬季オリンピック組織委員会の会長としての経験を踏まえて、北京冬季五輪のボイコットの方法を提案している。ロムニー議員は、選手の参加を止めることは間違いだとして、経済的・外交的ボイコットを提案しています。

共和党の重鎮ミット・ロムニー上院議員

即ち、米国民は米国にとどまりオリンピックの観客にならないこと、米国企業は顧客をオリンピックに招待することを止めること、政府高官が参加することは控えること、TV放送権を有する NBCが開会式や閉会式の好戦的愛国主義の場面の放映を控えることなどです。

いずれにせよ、何等かの形のボイコットが具体化することがあるとすれば、それは目下立場を定めていないバイデン政権が方針を固める場合でしょう。もし、行動を起こすのであれば、バイデン政権は予め同盟諸国に協議して来ることが予想されます。

現下の情勢は、北京オリンピックを間近に控えて、中国は台湾や東シナ海あるいは南シナ海で侵略的行動に出づらい状況だと思われますが、北京オリンピック後は危険性がさらに大きくなるかもしれません。

ボイコットが及ぼす中国へのインパクトについては、中国が過剰な報復に出る可能性も含めて、同盟諸国間で慎重に計算する必要があるかもしれません。

ただし、これは米国内の一部の見方です。バイデン政権はまだ結論を出していません。いずれにしても、このような事柄に関しては、議会の承認が必要であり、議会がどのような結論を出すのか注目されるところです。

私としては、以上のような米国内の見方は、理解できなくもないのですが、こういう見方をする人たちは、一つ忘れています。

そうです。過去において、日本も含めた先進国の多くが、中国がもっと豊かになれば、民主化するであろうと考え様々な面で譲歩してきました。しかし、これは何回も裏切られてきました。もうこのような考え方をする人はいません。

コロナ起源がどころであろうと、中国が初期の段階で隠蔽していなければ、世界全体で414万人以上もの死者を出すことはなかったと思わまれます。この隠蔽に対しても、まともに対応しようとしない中国です。

この中国が、今回のボイコットを本当のボイコットでなく、上に述べているような間接的なボイコットだけで態度を変えたり、ジェノサイドの問題に本気で取り組むようになるとはとても考えられません。

実際、中国は欧米のこのような動きに対して、かなり反発していますし、それどころか報復をちらつかせたりしています。

にもかかわらず、ここで欧米が譲歩して、間接的なボイコットしかしなかった場合、中国共産党に誤ったメッセージを与えてしまうことになるでしょう。そうです。先進国の圧力など、おそるるに足りないと考え、さらに高圧的になることが考えられます。

そうして、台湾や尖閣に対して、冒険的な行動にでるかもしれません。無論、そうなったとしても、このブログに述べているように、中国には台湾、尖閣を奪取する能力はありませんが、それにしても無用な脅威は最初から取り除くべきです。

それには、やはりまともなボイコットをして、中国に先進国の本気度を示す必要があります。米国はそれをすでに実行しています。

米国の外交代表部の役割をする米国在台湾協会(AIT)関連の航空機が相次いで台湾に到着し、中国側が強く反発しています。

AIT関連の米国の航空機が台湾に降り立ったのは、今月に入ってすでに2回目だ。15日にも沖縄の嘉手納空軍基地を離陸した米軍C-146ウルフハウンド輸送機が午前9時32分頃、台北の松山空港に到着しました。

台湾空港に着陸したC-130輸送機

中国国防部報道官は15日、ウルフハウンド輸送機の台湾着陸と関連して声明を発表し、「台湾は中国の一部であり、中国領土に着陸する外国軍用機は必ず中国政府の許可を受けなければならない」としたうえで、「米国が火遊びを止めなければ、厳しい結果を招く」と警告しました。中国陸海軍は翌日の16日、台湾海峡と接する東部福建省で大規模な合同上陸作戦演習を行いました。

米軍は、中国に台湾を軍事的に奪取する力はないと見透かして、このような行動をしていると思われます。その背景には、中国海軍の対潜哨戒能力が日米と比較すると格段に劣るということがあります。

これは、たとえると目の見える人(日米)と、目が見えない人(中国)とが戦うようなものであって、中国が海戦においては、日米に比較して圧倒的に不利であることを示しており、海戦になれば、中国海軍は日米に太刀打ちできません。

それに、昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったのですが、今年は航空機を大量に台湾に派遣したり、上陸作戦演習などでお茶を濁しており、以前から指摘されているように中国軍には現代的な兵站が欠如していることが示されていましたが、その通りのようであることがわかります。

このような軍事的な裏付けもあるので、米軍は航空機を派遣するどころか、一時的に軍を台湾に進駐させていることが判明しても、中国側には目立った動きはありません。

このようなことを考えると、北京五輪の中途半端なボイコットは、中国に対して誤ったメッセージを与えかねません。やはり、ボイコットするのなら、中途半端ではなく、選手を派遣しないというのが筋だと思います。

無論本格的ボイコットをすれば、北米と欧州の選手に犠牲を強いることになるのも事実です。ただ、モスクワ五輪のボイコットのときには、モスクワ五輪に対抗した競技大会を準備し、リバティ・ベル・クラシックという名前で1980年7月にフィラデルフィアで開催しました。これは、陸上競技だけでした。

北京五輪でも、欧米はこのような北京五輪に対抗する大会を盛大に開催すると良いと思います。そうして、五輪のほとんどの種目を実施すべきです。

ジェノサイドをしているのに、それを認めないような国で、五輪など開催すべきではありません。それは五輪の精神に反します。

ちなみに、モスクワ五輪を開催した約10年後に、ソ連は崩壊しました。ナチスドイツが開催した、ベルリン五輪のほぼ10年後にナチスドイツの第4帝国は瓦解しています。

中国が10年後に瓦解するかどうかは、わかりませんが、中国にとっては、痛撃になることは確かであり、それは中国の国内外で周知されることになり、国内でもただごとではないことが、周知されることになるでしょう。習近平は痛撃どころか、震撼することになるでしょう。

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