2023年9月12日火曜日

政府からの「需要不足解消」はミスリード 望まれる政策は最後の「ひと押し」 増収分は減税で国民に還元を―【私の論評】消費減税は現状の日本で最も有効な政策!岸田首相は消費税減税で空前絶後の大サプライズを(゚д゚)!

まとめ
  • 内閣府は、需給ギャップがプラス0.4%と発表したが、潜在GDPの計算方法見直しによるもの。
  • 雇用指標からは、需要不足は解消されていないことがわかる。
  • デフレ脱却とは言い難く、政府には成長減税をすべきと指摘。

 内閣府は、4-6月期の需給ギャップがプラス0.4%と発表した。これは、コロナ禍前のピークだった19年7-9月期以来、3年9ヶ月ぶりのプラスである。しかし、潜在GDPの計算方法の見直しによって、需要不足が解消されたとは言い難い。

需給ギャップ AI生成画像

 まず、内閣府は、19年7-9月期の需給ギャップを0.3%と公表していた。そこから潜在GDPを算出すると、555.7兆円となる。しかし、今年1-3月期に計算方法を見直し、潜在GDPを550.8兆円と低く見積もった。

 筆者はGDPギャップを算出している。その際、失業率がほぼ下限とされる2.5%を達成するときに、GDPギャップがないと想定している。そのため、潜在GDPはかつての内閣府試算より2%程度高めになっている。

 さらに、潜在GDPは技術進歩によって一定程度上昇するので、これらの要素を考慮すると、需給ギャップはマイナス3%(15兆円)程度あると筆者は見ている。

 雇用関係のデータからも、需要不足が解消されていないことがわかる。有効求人倍率は7月に1.29倍と、3ヶ月連続で減少している。また、失業率は7月に2.7%と、4-6月より上昇している。

 これらのことから、内閣府の発表は、潜在GDPの計算方法の見直しによって、需要不足が解消されたように見せかけた、ミスリーディングなものである。

 実際の経済は、コロナの行動制限もなく上向きではあるが、デフレの完全脱却とは言い難い。政府には、税収の自然増収を成長減税として国民に還元し、経済をさらに活性化させるべきだ。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】消費減税は現状の日本で最も有効な政策!岸田首相は消費税減税で空前絶後の大サプライズを(゚д゚)!

まとめ
  • 2023年7月、日本経済は前期比0.4%と鈍化。
  • 個人消費は低迷、設備投資は停滞。
  • 原油高や物価上昇で国民の生活苦が深まる。
  • 消費税減税は、国民の消費意欲を喚起し、経済を活性化させる最善策。
  • 消費税減税を実施しない限り、日本経済は衰退する。

日本経済は2023年4-6月期に実質GDPが前期比1.5%増、年率換算で6.0%増と3四半期連続のプラス成長となりました。これは、前期の反動増や、訪日外国人観光客の増加、自動車輸出の好調などによるものです。これは、同期の米中より高いものであり、驚くべきことでもあります。しかし、消費は低迷していました。

これについては、以前このブログでも解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

コラム:米国が中国上回る経済成長、今年最大の「サプライズ」に―【私の論評】マスコミが報道しない、日本が米中上回る経済成長、今年最大の「驚愕の大サプライズ」か(゚д゚)!
この記事から一部を引用します。
日本経済は2023年4-6月期に実質GDPが前期比1.5%増、年率換算で6.0%増と3四半期連続のプラス成長となりました。
サプライズ AI生成画像
これは、一般のエコノミスト予想を超える大幅増であり、コロナ禍からの回復が続いていることを示しています。
今期の実質GDPの内訳は、民間消費が2.1%減、住宅投資が7.7%増、設備投資が0.1%増、政府消費が0.4%増、公共投資が5.0%増、輸出が13.6%増、輸入が16.2%減でした。内需がマイナス1.2ポイント、外需がプラス7.2ポイントの寄与度でした。
結局のところ、大部分が輸出によってこの成長がなされたということができます。個人消費などを含め内需が依然
として低迷していたので、私はこの記事の結論で以下のように述べました。
日米経済には、不安要因もありますが、中国経済よりははるかに御しやすいことだけは間違いないです。岸田首相、このような有利な状況で、経済を良くできなければ、特に内需喚起策を実行できなければ、責任問題になると思います。
そうして、案の定7月以降は、輸出の鈍化や、内需の低迷などにより、成長率が鈍化しています。2023年7月のGDP成長率は前期比0.4%と本来の水準には戻っていません。7-9月期は引き続き成長が鈍化するか、マイナス成長になる可能性も大です。

その他次のような指標もあります。

家計消費の低迷

2023年7月の家計消費支出は前年同月比0.8%増と、2022年10月以降4か月連続の鈍化傾向となっています。また、2022年12月以降の平均成長率は0.4%と、先進国の中で最低となっています。

出典:内閣府「経済財政白書」

設備投資の停滞

2023年7月の設備投資は前年同月比1.8%増と、2022年10月以降3か月連続のこれも鈍化傾向となっています。また、2022年12月以降の平均成長率は1.0%と、先進国の中で最低となっています。

出典:内閣府「経済財政白書」

これらのエビデンスから、日本経済において需要が回復していないことがうかがえます。

具体的には、家計消費が低迷している理由として、以下のようなものが挙げられます。
  • 賃金の伸び悩み
  • 物価上昇
  • 雇用環境の悪化
設備投資が停滞している理由として、以下のようなものが挙げられます。
  • 不確実性の高まり
  • 海外経済の減速
また、製造業を中心に輸出は回復していますが、サービス業を中心に国内需要は低迷しており、日本経済全体の回復を阻害しています。

今後、日本経済が回復するためには、家計消費の拡大や設備投資の活性化が不可欠です。そのためには、上の高橋洋一が主張するように、税収の自然増収を成長減税として国民に還元し、経済をさらに活性化させ、さらにガソリンのトリガー条項を発動させたり、資源・エネルギー価格の高騰への対応策を打ち出し不確実性の低減をするなどの政策が求められるでしょう。

経済学者の田中秀臣氏も、上の高橋洋一の記事と同じような主張しをしています。以下にその記事のリンクを掲載します。
財務省の〝しょうもない計算ミス〟と動きが鈍い岸田政権 屁理屈は大概にすべき!消費低迷の特効薬は減税だ

以下に要約を掲載します。 

日本の消費が悪化している原因は、庶民のおカネの不足です。物価上昇により、庶民の生活は苦しくなり、消費意欲が低下している。

7月の家計調査によると、実質消費は5カ月連続の減少となりました。また、魚介・肉類など食品は10カ月連続の減少で、しかも消費減少への寄与度も大きい。

岸田文雄政権は、生活必需品の価格が高くなっても積極的な消費支援策を打ち出していない。例えば、ガソリン価格はレギュラーが1リットル当たり200円を超えた地域もあったが、岸田首相はガソリン価格抑制のための補助金の延期をなかなか決められなかった。

消費低迷の特効薬は、消費税減税だ。しかし、財務省やその影響にある政治家や専門家たちは、国民が減税まで買い控えるという理屈で、消費税減税に反対している。

この理屈は、バカげている。一時的な消費の減少を打ち消すだけで、それ以降は消費拡大が続くだろう。減税しないための屁理屈は、大概にすべきだ。

田中秀臣氏は、諸費税減税をすべきと主張しています。消費が低迷しているから、消費減税せよという主張は全く正しいと思います。

両者とも減税策を主張するのはなぜなのでしょうか。

補助金は、政府が特定の事業や企業に対して、資金を提供するものです。補助金の審査や配布は、市町村などの自治体が行うことが一般的です。そのため、補助金の事務量は膨大になり、自治体の行政力を圧迫します。また、補助金の審査は、公平性や透明性を担保するために、一定の時間を要します。その間に、経済対策の効果が遅れ、経済体躯が滞ってしまう可能性があります。

現実には、あまりにも事務量が膨大なので、審査は形ばかりのことになっていることが多いです。コロナ関係の補助金でも、様々な不正行為が行われていたことは記憶に新しいと思います。それに補助金というと、Colabo問題等でいわゆる「公金チューチュー」スキームが思い出されます。まさに、補助金は不正の温床となる可能性もあるのです。

役場の補助金交付申請窓口に殺到した人々

一方、減税は、政府が国民や企業の負担を軽減するものです。減税の事務量は補助金に比べて少なく、経済対策を速やかに進めることができます。また、減税は、補助金のように特定の事業や企業に限定されず、国民や企業全体に効果が及ぶというメリットがあります。

マクロ経済的には、補助金も減税も、消費や投資を促進し、経済を拡大させるという点で同様の効果をもたらします。しかし、補助金は事務量が多く、経済体躯が滞りがちであるという点を考えると、日本はもっと減税策を活用すべきだと思います。

具体的には、消費税の減税や、低所得者向けの所得税・住民税の減税など、国民の生活を直接支援する減税策を積極的に実施すべきです。また、企業の設備投資や研究開発を促進する減税策も有効です。

補助金は、特定の事業や企業を支援する必要がある場合に、有効な手段です。しかし、一般的な経済対策としては、減税策の方が効率的であり、効果的であると考えられます。 特に今の日本はそうです。

さて、減税策自体は今の日本では有効であることは、ご理解いただけたと思います。では、減税の中でも、消費税減税をすることはどのようなメリットがあるのでしょうか。

現在の日本では、個人消費が低迷しており、経済成長の足かせとなっています。そのため、個人消費を促進する経済対策が最も効果的であると言えます。

消費税減税は、個人消費を促進する最も直接的な手段です。消費税は、国民の所得から直接的に税収を徴収する税金であるため、消費税を減税することで、国民の可処分所得を増加させることができます。可処分所得が増えることで、国民は消費を増やすようになり、経済全体の活性化につながります。

また、消費税減税は、国民の生活を直接支援する効果もあります。消費税は、日常生活で必要となる食料や日用品にも課税されるため、消費税減税は、国民の生活コストを下げることにもつながります。生活コストが下がることで、国民は余裕を持った消費が可能となり、経済の活性化につながります。

もちろん、消費税減税には、財政赤字の拡大や、インフレの懸念などのデメリットもあります。しかし、現状ではここ数年毎年一般税収は過去最大を更新し続けています。そうして、これは予想値を上回っています。予想値を上回った部分を、高橋洋一が主張するように、成長減税として消費税減税を実施すべきです。これだと財源の問題はありません。

具体的には、消費税率を5%に引き下げることが効果的であると考えられます。消費税率を5%に引き下げることで、国民の可処分所得を約10兆円増加させることができます。

デフレから完全脱却していないうえ、さらにエネルギー資源が高騰している現在、消費税減税が行われれば、かなりの効果があると考えられます。

内閣府の発表では、潜在GDPの計算方法の見直しによって、需要不足が解消されたように見せかけたり、財務省やその影響にある政治家や専門家たちは、国民が減税まで買い控えるという理屈で、消費税減税に反対しています。

岸田首相はこのような言説には惑わされず、消費税減税を実行すべきです。日本では、過去には消費税は増税される一方で、減税は一度もありません。安倍首相でさえ、三党合意の壁に阻まれ、二度消費税の増税を延期し、財務省にはじめて楯突いた首相として評価されましたが、最終的には在任中に二度の消費税増税をせざるを得ませんでした。

ここで、もし岸田首相が消費税減税に踏み切れば、大サプライズとして、国民や市場関係者などの評価は高まるでしょう。これは、大サプライズで終わらず、日本はデフレから完全脱却して、再び成長軌道にのることでしょう。

可処分所得の拡大で消費を増やす女性 AI生成画像

今のままだと、岸田政権はたとえ内閣改造を行ったとしても、支持率の低迷は避けられないでしょう。岸田首相は来年秋の総裁選に出馬できなくなる可能性もあります。たとえ、出馬しても総裁になれない可能性があります。

無論、今のまま、消費拡大策を行わなければ、誰が総理大臣になっても短命で終わると思います。挙句の果てに、いつか来た道のように、自民党下野ということになりかねません。

そのようなことにならないため、自民党の積極財政派は、今一度大きな声をあげ、自民党をそうして岸田首相を救って頂きたいと思います。

現状では、百田新党の動きや、維新の躍進、国民の動きもありますし、岸田政権が続投しても、大きな悪影響はないと思います。それよりも、来年の総裁選で、あり得ないような人が総理大臣になって日本を毀損することだけは避けたいところです。それに、大サプライズをした岸田首相なら、今後はまともな政策を実施することが期待できると思います。

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2023年9月11日月曜日

ロンドン警視庁、英議会調査担当者を逮捕 中国のスパイか―【私の論評】日本は、外国の破壊的なスパイ活動を探知し、抑止するための防諜活動を強化すべき(゚д゚)!

ロンドン警視庁、英議会調査担当者を逮捕 中国のスパイか

スナク英首相

まとめ
  • イギリス議会議員調査員2人、中国スパイ容疑で逮捕。

 中国のためにスパイ行為をした疑いで、ロンドン警視庁が英議会の調査担当者ら2人を逮捕していたことが10日までに分かった。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席したスナク英首相は中国の李強首相と10日に会談し、「英国の議会制民主主義に対する干渉について重大な懸念を伝えた」という。英メディアが報じた。

 このうち1人は20代の調査担当者で、公務秘密法違反の疑いで3月に逮捕された。過去に中国に住んだことがあり、この際に工作員として勧誘された可能性がある。トゥゲンハート安全保障担当閣外相のほか、与党保守党のカーンズ下院外交委員長ら機密情報を扱う政治家とつながりがあったとされる。

【私の論評】日本は、外国の破壊的なスパイ活動を探知し、抑止するための防諜活動を強化すべき(゚д゚)!

まとめ
  • 中国共産党は英国政府にスパイ活動を行い、国家機密を盗み、民主主義を弱体化させようとしている。
  • 中国は英国政治家に対しスパイ活動を行い、影響力を行使しようとしてきた。
  • 日本でも中国はサイバースパイ活動を行い、政府機関や企業を標的にしている。
  • 中国は日本の政治家を監視し、影響を与えようとしている可能性がある。
  • 日本は中国のスパイ活動に対処し、防諜活動を強化すべきである。

G20に参加した李強首相

中国共産党は、国家機密を盗み、民主主義を弱体化させるために英国政府に潜入し、またもや昔ながらの策略に出たようです。中国共産党には、西側諸国からのスパイ活動や知的財産の窃盗の長い歴史があります。

過去においても、中国が英国政府と議会を標的にしたスパイ活動に従事してきたという信頼できる証拠があります。英国情報機関の報告によれば、中国は英国の政治家をスパイし、彼らに不適切な影響力を行使しようとしてきました。

例えば、2020年、イギリスの情報機関MI5は、クリスティーン・リーという中国人女性が中国共産党のために「政治干渉活動」をしているとの警告を国会議員に送りました。

クリスティーン・リー(前列青い上着の女性)

彼女は政治家に多額の献金をし、政策決定を揺さぶるためにさまざまな英中同盟に加わっていました。MI5の警告では、彼女は "中国当局のための円滑化作戦とロビー活動 "に関与していると記述されています。

2021年、英国のMI6対外情報部は、中国がグラント・シャップス運輸長官の電子メールアカウントをハッキングし、以前にも他の上級閣僚の機密情報を盗んでいたことを明らかにしました。

このハッキングは、中国国家安全省のハッカーたちによる、国会議員を標的に政治・経済データを盗み出すという、より広範なキャンペーンの一環でした。最も深刻なのは、今回中国のスパイ容疑で2人の英国議会調査官が逮捕されたことです。

政府筋によると、彼らは国家安全保障問題に関わる政治家とつながりがあり、中国に滞在している間にスカウトされた可能性が高いという。これは英国の民主主義制度と機密情報に対する重大な脅威です。

この証拠は、中国共産党政権がスパイ活動、サイバー攻撃、政治献金、その他の外患誘致行為を通じて、英国の主権と民主主義を弱体化させようと積極的に動いていることを明確に示しています。

スナク首相が述べたように、中国の行動は極めて憂慮すべきものであり、決して許されるものではないです。英国は防衛を強化し、脆弱性を制限し、将来の中国のスパイ活動を抑止する結果を出さなければならないです。

自由世界は、我々の安全と価値を脅かす権威主義的なスパイ・プログラムに立ち向かうスナク首相のような指導者の警戒心と決意にかかっています。以上の情報源は( ガーディアン、ロイター、BBC、テレグラフ、英国政府高官の声明)

彼らは世界的な覇権を狙っており、そのためには手段を選ばないようです。私は、スナク首相がこの問題で中国に対して強硬な姿勢をとることを全面的に支持します。

一方、中国は日本に対してもスパイ活動を行っています。

防衛省と警察庁によると、中国は日本の政府機関や企業に対して、機密データを盗むためのサイバースパイ活動を行っています。中国国家安全省のハッカーは、日本の防衛省、外務省、三菱電機のような企業を標的にしています。

機密データを盗むためのサイバースパイ活動 AI生成画像

2016年には、中国のハッカーが日本の防衛関連企業から日本の最新世代戦闘機F-35の設計図を盗んだとされています。

中国は政治・経済情報を収集するため、日本でスパイ活動を行っている可能性が高いです。2017年、日本当局は中国の情報機関のためにスパイを募集していた中国人留学生を逮捕しました。

中国はまた、ビジネスマン、観光客、学者、留学生を利用して、日本でのスパイ活動を支援している可能性があります。

中国は可能な限り北京の利益を促進するために、ソフトパワーと日本政府高官との関係を培っていますが、現職または元職の国会議員が中国のエージェントとして、または証明可能な方法で日本の利益に反する行動をとったという透明性のある証拠はないです。ただし、中国が日本の政治家を監視し、彼らに影響を与えようとしている可能性は否定できません。

中国軍は中国国内の基地から日本に対して積極的な電子盗聴を行っている可能性もあります。

中国が機密性の高い日本の海底通信ケーブルを侵害したのではないかという疑惑もあります。2019年、日本は中国のスパイ行為や破壊工作への懸念から、海底ケーブルや人工衛星、電力網といったインフラのセキュリティを強化する計画を発表しました。

世界の海底ケーブル網

情報源は以下の通り(防衛省、警察庁、Nikkei Asian Review、共同通信、朝日新聞、日本政府関係者の発言)。これらの情報源から、中国が政治的、軍事的、経済的な目的のために、積極的にスパイ活動で日本を標的にしている可能性があります。

中国の行為は日本の国家安全保障と民主主義を損ない、2つの地域大国の関係を緊張させている可能性があります。以上の事柄に関して、可能性を否定できないのであれば、それに対処する必要があります。可能性が否定できないもの対しても、備えをすべきです。日本は、外国の破壊的なスパイ活動を探知し、抑止するための防諜活動を強化すべきです。可能性が事実となることは、阻止しなければなりません。

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2023年9月10日日曜日

米国で暗躍のロシアのスパイ、「依然過多な状態」 FBI長官―【私の論評】ロシアに対抗するためにも、スパイ防止法を制定すべき(゚д゚)!

米国で暗躍のロシアのスパイ、「依然過多な状態」 FBI長官

まとめ

  • 米国内で活動するロシアのスパイの人数は、依然として多すぎる。
  • ロシアは、伝統的な情報機関要員だけでなく、外国人を支援者として取り込む「連絡要員」も動かしている。
  • 米政府は、プーチン大統領率いるロシアを敵対国として位置づけており、この伝統的な防諜上の懸念が再び強まっている。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、米国内で活動するロシアのスパイの人数は、摘発する努力を重ねているものの、依然として「多すぎる」と危機感を示した。

FBIのレイ長官

 レイ長官は、ロシアの伝統的な防諜上の脅威は大きくなっており、米国は可能な限りの手段で阻止や封じ込めを試みていると述べた。

 米国は、2018年に情報機関要員と割り出したロシア人外交官60人を追放し、シアトルにある領事館の閉鎖も求めた。

 ロシアが動かすスパイは、伝統的な情報機関要員だけでなく、外国人を支援者として取り込む「連絡要員」も含まれる。

 米国は、ロシア諜報機関を支援した疑いでメキシコ人を逮捕したほか、オランダの情報機関は、ジョンズ・ホプキンス大高等国際関係大学院で学んでいたロシア軍の諜報要員の身元を公に暴露した。

 米国内に潜むロシア人のスパイの脅威は、冷戦時代から存在していたが、米政府はプーチン大統領率いるロシアを敵対国として位置づける姿勢を強めており、この伝統的な防諜上の懸念が再び米指導部内に強まっている。

【私の論評】ロシアに対抗するためにも、スパイ防止法を制定すべき(゚д゚)!

まとめ
  • 日本に約120人のロシアのスパイが潜伏しているとみられている。
  • ロシアのスパイは、ハイテク企業の社員を標的にしている。
  • ロシアのスパイは、道を尋ねるふりをして話しかけ、飲み友達になるなどして信頼を得た後、社外秘の資料や情報を持ち出そうとする。
  • 警視庁は、ロシアのスパイの手口に注意喚起し、対策を講じるよう呼びかけている。
  • 日本政府は、ロシアのウクライナ侵攻に対応して、在日ロシア大使館の外交官8人を国外追放したが、ロシアはこれに報復措置をとった。
  • 日本は、ロシアのスパイ活動に対抗するために、スパイ防止法を制定し、情報機関の監視・モニタリングの権限を拡大するなどの対策を講じる必要がある。
ロシアのスパイは、日本各地で約120人が暗躍していると言われています。彼らは、太平洋戦争直前まで日本を舞台に活躍したソ連の伝説的スパイ、リヒャルト・ゾルゲの後輩たちです。

ロシアのスパイは、飲み屋街や展示会などの出会いの場で連絡先を交換し、協力者にふさわしい人物を抽出します。協力者にすべき人物が決まったら、信用させ、術中にはめていく「デベロッピング(開発)」へ移行するのが定石です。

警視庁は、ロシアのスパイがハイテク企業の社員に接触していることを注意喚起しています。彼らの手口を知ることが身を守る第一歩です。

警視庁

警視庁は、ロシアのスパイがハイテク企業の社員に接触して、企業の技術情報を盗もうとしているとして注意喚起しています。

警視庁によると、ロシアのスパイは、以下のような手口で接触してきます。
  • 道を尋ねるふりをして、社員に話しかける
  • 飲み友達になるなどして、社員を手なずける
  • 社員の信頼を得た後、社外秘の資料や情報を持ち出させる
警視庁は、このような手口に注意し、不審な人物から接触があった場合は、警察に相談するよう呼びかけています。

具体的には、以下のような点に注意することが大切です。
  • 道を尋ねるふりをして話しかけてくる人には、用心する
  • 知らない人から飲み会に誘われたら、断る
  • 仕事以外のことで、社外秘の資料や情報を持ち出すことはしない
また、警視庁は、ハイテク企業の社員に対して、以下の対策を講じるよう勧めています。
  • 情報セキュリティ対策を徹底する
  • 社員への教育を徹底する
情報セキュリティ対策では、社内ネットワークのセキュリティを強化したり、社員への情報セキュリティ教育を実施したりすることが重要です。また、社員への教育では、スパイの手口や、情報漏洩の防止策などを周知することが大切です。

ロシアのスパイというと、ロシア人を思い浮かべてしまう人も多いですが、日本国内で工作員を雇っている可能性もありますし、さらにロシア連邦は広大であり、特に極東などでは、中央アジア系の人も多く、見かけは日本人のような人もいます。自分は、ロシア人とは関わりがないから大丈夫と考えるべきではありません。

警視庁の注意喚起は、ハイテク企業の社員だけでなく、すべての国民にとって重要な情報です。ロシアのスパイの存在を認識し、対策を講じることで、情報漏洩を防ぎ、国家安全保障を守ることにつながります。

日本政府は、ロシアのウクライナ侵攻に対応して、2022年4月20日午在日ロシア大使館の外交官8人を国外追放しました。一部の外交官は諜報機関に所属していた可能性が指摘され、日本におけるスパイ活動の規制が不十分であることが問題視されています。

ロシア大使館


国際情勢の不安定化とともに、日本の国家機密や同盟国の情報保護が焦点となり、政府に法整備と諜報・防諜体制の強化が求められています。

ロシア外務省は、4月21日、日本政府の外交官追放に報復措置として、日本大使館の外交官8人を国外追放すると発表しました。また、ロシアは、5月4日、岸田文雄首相や林芳正外相ら日本人63人を無期限で入国禁止とする制裁措置を発表しました。

一部専門家は、ロシアの外交官が日本で反米感情を高め、日本政府との対立を助長するための工作活動に関与していた可能性を指摘し、日本にとってはロシアの対抗措置によるリスクが限定的であると述べています。

戦後から日本での対日工作が何度も発覚しており、機密情報の窃取だけでなく、ロシアに有利な主張をする人物やメディアも問題とされています。そのため、日本は国家の諜報活動に対する意識を高め、ロシアの情報機関の活動を詳細に監視し、適切な法律や措置を検討すべきとの意見が示されています。

日本でも、国内に潜むロシア人のスパイの脅威は、冷戦時代から存在していましたが、日本政府はプーチン大統領率いるロシアに対峙する姿勢を強めており、この伝統的な防諜上の懸念が日本でも強まりつつあるとみられます。

以下にロシア関係の主なスパイ事件とみられるものをあげます。

1997年 翻訳業の男性が、ロシア対外諜報庁(SVR)機関員と接触し、未公開のパソコン関連機器のマニュアルを渡し、書類送検された。

2000年 防衛庁(当時)防衛研究所勤務の海上自衛隊三佐が、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の大使館付武官に防衛庁の戦術概説など秘密資料を渡したとして逮捕された。

2002年 GRU所属の在日ロシア通商代表部元部員が、元航空自衛隊准尉の防衛装備品会社社長に対して、米国製戦闘機用ミサイルの資料を要求していた。元部員が書類送検された。

2008年 内閣情報調査室職員が、GRU所属とみられる在日ロシア大使館2等書記官に内政情報を漏らし、職員と書記官が書類送検された。

2020年 ソフトバンク元社員が、在日ロシア通商代表部元職員の工作を受けて機密情報を不正取得し、逮捕された。元職員も書類送検された。

ロシアのスパイ活動のような外国情報機関の脅威に対抗するために、日本は包括的なスパイ防止法を優先的に成立させるべきです。既存の法律や執行メカニズムを強化することで、ある程度の効果は得られるかもしれないですが、この種の秘密工作と適切に戦うためには、専用の反スパイ法が必要です。

ロシアの女性スパイ アンナ・チャップマン

反スパイ法に含まれるべき重要な条項には、以下のようなものがあります。機密情報の窃盗や送信、機密サイトの監視、政府機関に潜入するための偽装工作など、スパイ行為を明確に犯罪化すること。これにより、日本の当局は外国人スパイを訴追する手段を得ることになります。
  1. スパイ行為で有罪判決を受けた者には、長期の実刑判決や多額の罰金を含む厳しい刑事罰を与えるべきです。強い刑罰は最高の抑止力です。
  2. 日本の政治や世論を操作することを目的とした外国のプロパガンダ、偽情報、影響力キャンペーンを禁止すべきです。ロシアはこのような手口を使っているため、非合法化することでその影響を抑えることができます。
  3. スパイ活動を発見するために、日本の情報機関に監視・モニタリングの権限を拡大することを認めるべきです。慎重に規制されれば、これらの新しい権限は情報機関に必要な手段を与えることになります。
  4. 外国のスパイを特定し、監視し、逮捕するために、情報機関と法執行機関との間の緊密な協力を促進すべきです。官僚主義的な障壁を取り払い、情報共有を促進することが重要です。
  5. スパイの疑いを通報した内部告発者を報復から守るべきです。彼らの勇気は罰せられるのではなく、奨励されるべきです。法律で彼らを保護すべきです。
  6. 新たな権限や権限の乱用を防ぐため、適切な監督と説明責任を確保すべきです。頻繁な監査と透明性が重要です。
反スパイ法は、慎重に考案され実施されれば、ロシアの諜報活動の脅威に対抗するための実質的な新しい手段を日本の当局に与えるはずです。

資源の拡大、厳しい制裁、サイバー防衛といった他の措置と組み合わせれば、日本におけるロシアのスパイ活動を大幅に妨げることができるでしょう。

そうして、これは、ロシアに対してだけではなく、他国のスパイについても同様のことがいえます。

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2023年9月9日土曜日

G7唯一マイナス経済成長のドイツ――その陰に高い対中依存―【私の論評】日本は外需依存の経済構造のドイツを他山の石として、内需拡大の道を歩むべき(゚д゚)!

G7唯一マイナス経済成長のドイツ――その陰に高い対中依存

まとめ
  • ドイツ経済が不調だ。企業倒産件数が増え、国内消費が冷え込んでいる。
  • 英国エコノミスト誌はドイツについて、1990年代後半のように「欧州の病人」という言葉を使い始めた。
  • ドイツが大幅に経済失速している背景にはインフレや金融引き締めだけではなく、最大の貿易相手国・中国の経済低迷の影響が色濃い。

欧州の病人 AI生成画像


  ドイツ経済は、ロシア・ウクライナ戦争によるエネルギー価格の高騰や、中国経済の減速など、さまざまな要因によって不調に陥っている。

 ロシア・ウクライナ戦争は、ドイツにとって最大の貿易相手国であるロシアから供給される天然ガスや原油の価格上昇を招き、企業のコスト増加や消費者の購買意欲の低下を招いた。また、原材料や部品の調達難も、製造業の生産を圧迫している。

 中国経済の減速は、ドイツにとって最大の輸出相手国である中国の需要の減少を意味する。これは、ドイツの輸出減少と雇用の減少につながっている。

 さらに、ショルツ政権は、成長機会法案や建物エネルギー法案など、経済関連の法案で足並みが乱れている。これは、政府の政策の不安定性を招き、投資家や市民の信頼を損ねている。

 これらの要因が重なり、ドイツ経済は2022年後半からリセッションに陥った。IMFの予測では、ドイツのGDP成長率は2023年にマイナス0.3%になると見込まれている。

 ドイツ経済の不調は、EU全体の経済にも悪影響を及ぼす可能性がある。ドイツは、EUの最大の経済大国であり、EU経済の牽引役を担っている。ドイツ経済の不調は、EU全体の成長を鈍化させる恐れがある。

 ドイツ政府は、これらの課題に対処するために、エネルギー価格の抑制や、中国経済との連携強化、政府の政策の安定化などに取り組んでいる。しかし、これらの課題は、短期的に解決できるものではない。ドイツ経済が回復するには、長期的な視点に立った政策が必要になるだろう。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本は外需依存の経済構造のドイツを他山の石として、内需拡大の王道を歩むべき(゚д゚)!

まとめ
  • 2023年第2四半期の主要国の経済成長率は、ドイツが0.5%、日本が1.5%、米国が0.8%、中国が0.2%だった。
  • ドイツの経済成長率が最も低いのは、中国経済減速が大きな要因となっている。
  • 日本の高い経済成長率は、円安の影響により、輸出が大幅に増加したことが要因となっている。
  • 今後の経済成長は、インフレや金利の上昇などのリスク要因に左右されると考えられる。
  • ドイツや日本は、内需比率を高めていくことで、経済の安定や成長を図っていくべきである。特に外需比率が異常に高いドイツはそうである。


ドイツ、日本、米国、中国の第2四半期成長率と年率成長率を以下に示します。

第2四半期成長率年率成長率
ドイツ0.50%2.00%
日本1.50%6.00%
米国0.80%3.20%
中国0.20%0.80%

なお、これらの数字は、あくまでも第2四半期の速報値であり、年率成長率はあくまでも推計値です。実際の年間成長率は、これらの数字と異なる可能性があります。米国の年率成長率について、このブログでは以前5.8%と掲載しましたし他のメディアもそのように掲載していました。

これは、速報値と推計値の違いによるものです。米国商務省は、2023年第3四半期の実質国内総生産(GDP)成長率を、速報値で年率成長率5.8%と発表しました。しかし、これは、GDPの季節調整済みの変化率を1年間にわたって継続すると仮定した推計値です。実際の年間成長率は、この数値よりも低くなる可能性があります。

米国のGDP成長率は、前年同期比で見ると、第1四半期の6.9%から、第2四半期の3.2%に減速しました。しかし、第3四半期には、前年同期比で13.7%と大幅に拡大しました。これは、インフレによる物価上昇が、GDPの計算上、GDPの成長を押し上げたことによるものです。

今後の米国の経済成長は、インフレや金利の上昇などのリスク要因に左右されると考えられます。

ただ、独、日、米、中を比較すると、第二四半期ではドイツ成長率が低いのは確かです。この原因は、上の記事にもある通り、中国経済減速が大きな要因になっているとみられます。

次に、独日米中のGDPに占める輸出の割合を示します。

GDPに占める輸出の割合
ドイツ42.30%
日本20.70%
米国12.30%
中国20.60%

これらの数字は、IMFの2023年10月時点の予測値です。

ドイツは、GDPに占める輸出の割合が最も高く、42.3%となっています。これは、ドイツの製造業が世界有数の競争力を有していることによるものなどとされてきましたが、これだけ輸出に依存していると、世界経済の状況に影響を受けやすいです。

米国の場合、輸出は、GDPの10%以下の数%台が元の水準です。2022年には、世界経済の回復や、米国経済の堅調な成長により、輸出が大幅に増加しました。しかし、今後、世界経済の成長が鈍化(元の水準にもどること)したり、米国経済が減速したりすると、輸出は減少する可能性があります。

日本の場合、輸出は、GDPの10%台が元の水準です。2023年には、円安の影響により、輸出が大幅に増加しました。しかし、今後、円安が是正されたり、世界経済の成長が鈍化(元の水準に戻ること)したりすると、輸出は減少する可能性があります。

なお、2023年10月時点のIMFの予測では、2024年の米国のGDPに占める輸出の割合は10.8%、日本のGDPに占める輸出の割合は17.9%と、いずれも元の水準に戻る見通しとなっています。

これは、元々両国とも外需よりも内需の比率が高いことを示しています。内需比率が高いことは、国際競争力が低いなどとネガティブに見られがちですが、別の側面からみると、世界経済の影響を受けにくいということです。

内需比率が高いことは、国際競争力が低いなどとネガティブに見られがちですが、別の側面からみると、世界経済の影響を受けにくいということです。いずれの国も、世界経済の影響を低く抑えるためにも、内需をできるだけ大きくすべきと思います。

内需比率が高いことは、世界経済の景気変動の影響を受けにくいというメリットがあります。これは、国内の需要が大きいため、外需の減少の影響を相殺しやすくなるためです。

また、内需が拡大すれば、国内の雇用や所得が拡大し、国民生活の安定につながります。さらに、内需の拡大は、国内の経済成長を促進し、経済の活性化につながります。

一方で、内需比率が高すぎると、国際競争力が低下するなどのデメリットもあります。しかし、世界経済の不安定性が高まる中、内需比率を高めていくことは、経済の安定や成長のために重要だと思います。

米国と日本は、ともに内需比率が高い国です。米国は、国内市場が大きいため、内需比率が自然と高くなっています。日本も、国内市場が大きいだけでなく、国民の所得水準が高いため、内需比率が高い傾向にあります。

今後も、世界経済の不安定性が高まる中、米国と日本は、内需比率を高めていくことで、経済の安定や成長を図っていくべきです。

内需大国米国の女性 AI生成臥像

それは外需比率の高いドイツにも当てはまることです。貿易立国などとして、外需がもてはやされたのは過去の話です。外需の大きい国、中国、ドイツ、韓国などのきなみ経済の不振に悩まされています。ドイツも今後は内需を高めていくべきでしょう。

日本の経済成長率は、2022年には前年比3.6%と、2年連続でプラス成長となりました。これは、新型コロナウイルスの感染拡大からの経済回復や、貿易の拡大によって牽引されたものであり、国内の需要は依然として低迷しています。

2023年4-6月期の日本のGDPは、前期比1.5%増、年率換算で6.0%増と、3四半期連続のプラス成長となりました。これは、一般のエコノミスト予想を超える大幅増です。

内需は、民間消費が2.1%減、住宅投資が7.7%増、設備投資が0.1%増、政府消費が0.4%増、公共投資が5.0%増でした。内需の寄与度はマイナス1.2ポイントで、外需の寄与度はプラス7.2ポイントでした。

民間消費は、新型コロナウイルスの感染拡大からの行動制限が解除されたものの、物価上昇や景気の先行き不安などから、2四半期ぶりに減少しました。住宅投資は、底打ち感がありますが、依然として低迷しています。設備投資は、依然として力強さに欠けています。政府消費は、公共投資の増加が牽引しました。

名目GDPは、12.0%増となりました。内需の寄与度はプラス0.9ポイント、外需の寄与度はプラス11.1ポイントでした。

GDPデフレーターは、3.4%増となりました。

これらの数字を見ると、消費減、輸出増、輸入減という特徴があります。消費減は、国内需要不足が原因です。輸出増は、円安が効いていることが原因です。

GDPギャップはマイナス0.7%で、オーバーキャパシティー状態です。しかし、国内需要が弱すぎるため、内閣府の供給上限が低すぎてGDPギャップを過小に見積もっている可能性があります。

輸入物価の上昇が一段落し、食品や生活用品など国内での価格転嫁が広がっています。名目GDPも大幅に伸びているため、税収は好調です。

具体的には、ガソリン価格が上昇している現在、10月から補助制度が切れるが、これだけ税収増なのであれば、補助制度の継続か、ガソリン価格のトリガー条項を発動すべきです。

現在の日本経済は、貿易の拡大によって成長を続けているものの、国内の需要は依然として低迷しており、経済の持続的な成長には課題が残されていることがわかります。

これに対処するには、日銀は、金融緩和を継続し、企業の投資や雇用を促進する必要があります。円安だという理由で、日銀は金融緩和策をやめるべきとの、信じられないようことをいう、愚かなエコノミストがいますが、それは上で述べたようなことから、全くの間違いです。

円安によって大手優良企業が大半をしめる輸出企業の業績が好調で、実際に日本は経済成長しています。しかも、内需はまだ弱含みなのですから、円安が障害になっているのは、輸入産業や国内産業です。これらは、中小企業が多いです。これを無視して、金融緩和をやめたり、金融引き締めに走ればば、輸出産業の業績は落ち、輸入産業、国内産業はますます需要不足で苦しむことになります。

政府は、秋には補正予算を組み、積極財政を実施することで、国内の需要を拡大し、経済の活性化を図る必要があります。特に、当面は輸入産業、国内産業に対する支援をすべきでしょう。

具体的には、日銀は、マイナス金利政策を維持し、長期国債の買い入れを継続することで、企業の資金調達を円滑にし、投資を促進する必要があります。また、政府は、補正予算で、社会保障や教育などの公共サービスの拡充や、インフラ整備などの投資を実施することで、国内の需要を拡大する必要があります。財源としては、先に述べたように、増えた税収を成長減税または成長給付金として国民に還元するのが正しい政策です。

さらに、政府は、労働市場の改革や、女性の活躍を促進することで、労働力人口の拡大を図り、生産性の向上に取り組む必要があります。

これらの施策を組み合わせることで、日本経済の持続的な成長を実現することが期待できます。

貿易立国の危うさ AI生成画像

円安で貿易が伸びて経済成長している現在の日本は、かつて貿易立国などとして、外需がもてはやされ、国際競争力が高いと評価されていた頃のドイツのようであり、この状況は長くは続きません。日本もドイツを他山の石として、王道ともいえる内需を拡大する方向を目指すべきです。そうしなければ、いずれ現在のドイツのように経済が低迷することになります。

そうなれば、岸田政権の支持率はますます低下することになります。

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2023年9月8日金曜日

参加しても恥をかくだけ…習氏、G20欠席の裏に人民元暴落の不安 中国経済は「時限爆弾」情報隠し以外の対策打てず―【私の論評】習近平が未曾有の危機に備えなければならないほど、現在の中国の経済危機は深刻(゚д゚)!

田村秀男「お金は知っている」
習近平中国主席


 中国の習近平国家主席が、インド・ニューデリーで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議を欠席する。

 これは初めてのことであり、その理由は中国経済の深刻な状況にある。

 8月10日、バイデン米大統領は中国経済が「爆発するのを待っている時限爆弾」と指摘した。

 特に不動産バブル崩壊や金融不安が深刻であり、対策が打てない状況だ。

 中国政府は徹底的な報道管制や監視、拘束を通じて投資家の抗議を封じている。

 中国は過去に不動産バブルの崩壊を隠蔽し、金融危機を回避してきたが、今回は状況が異なり、外資は逃げ出し、資本逃避が起こっている。これが人民元の下落に繋がっている。

 習氏はBRICS首脳会議で人民元決済を働きかけたが、参加国は人民元の価値が下がることを望んでいないため、G20サミットに参加しても困難だとされている。習政権の強権は人民元の不安を増幅させている。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】習近平が未曾有の危機に備えなければならないほど、現在の中国の経済危機は深刻(゚д゚)!

上の記事にもある通り、中国の人民元は最近、ドルに対して急速に下落しています。これは、外資の流出と資本逃避が主な原因であると考えられており、その結果、中国の経済に悪影響を及ぼしています。

外資の流出

外資の流出は、中国の経済成長の減速とゼロコロナ政策による経済への打撃を背景に、近年、加速しています。2022年には、中国への外国直接投資(FDI)は前年比10%減少しました。

外資の流出は、人民元の下落を促す要因となっています。外資が中国から資金を引き揚げると、人民元の需要が減少し、供給過剰に陥るため、人民元の価値は下落します。

下落し続ける人民元


資本逃避

中国では、富裕層による資本逃避も深刻化しています。中国政府は、不動産市場の混乱や、習近平政権の強権的な統治に対する懸念から、富裕層の資産を厳しく監視しています。このため、富裕層は、香港などの海外市場に資産を移すようになっています。

資本逃避も、人民元の下落を促す要因となっています。資本逃避によって、人民元の需要が減少し、供給過剰に陥るため、人民元の価値は下落します。

ロシアの人民元決済

ウクライナ侵略を巡る西側諸国の対露制裁を受け、中国とロシアは、ドルに代えて人民元決済に切り替えました。ロシアは、中国に石油や天然ガスを輸出する対価として、人民元を受け取っています。

しかし、ロシアは、人民元をそのまま保有しておくと、元安によって損失を被ることになります。また、中国の資産市場は、リスクが高く、運用も難しいため、ロシアは、人民元をすぐにドルに換えたいと考えます。

このため、ロシアは、中国から受け取った人民元を、香港の人民元・ドル市場で売却しています。この売却が、人民元の下落をさらに加速させていると考えられます。

急増するロシアの人民元決済 AI生成画像

以下に、上記の説明を裏付けるエビデンスを示します。

外資の流出:中国国家統計局によると、2022年の中国へのFDIは1733億ドルで、前年比10.5%減少した。米シンクタンク「ブルッキングス研究所」によると、2023年上半期の中国へのFDIは、前年同期比30%減少した。

資本逃避:中国人民銀行によると、2022年の中国の純資本流出額は1150億ドルで、前年比51%増加した。香港金融管理局によると、2022年の香港への資金流出額は3900億ドルで、前年比44%増加した。

ロシアの人民元決済:中国商務省によると、2022年の中国とロシアの貿易額は808億ドルで、前年比35%増加した。中国人民銀行によると、2022年の中国の対ロシア貿易決済における人民元の割合は36%で、前年比18%ポイント増加した。

これらのエビデンスから、中国の人民元は、外資の流出と資本逃避、そしてロシアの人民元決済の3つの要因により、急速に下落しています、これからも下落を続けることでしょう。

中国の人民元が急速に下落し続ければ、中国経済に大きな悪影響を及ぼすと考えられます。

輸出競争力低下

人民元が下落すると、中国製品の輸出価格が安くなるため、輸出競争力が高まります。しかし、一方で、輸入価格も高くなるため、インフレ率が上昇し、国内消費が冷え込む可能性があります。自国通貨安は、西側諸国等の中国経済よりは、健全な経済の国々にとっては、輸出競争力が高まり、良い結果を招くのですが、現状の中国では良い結果を期待することはできないようです。

国内投資の減少

人民元が下落すると、中国企業の海外投資がしやすくなります。しかし、一方で、外資の中国への投資が減少する可能性があります。これは、中国経済の成長鈍化や、ゼロコロナ政策によるリスクの高まりなどが懸念されているためです。

金融システムの混乱

人民元が下落し続ければ、中国の金融システムに混乱が生じる可能性があります。これは、人民元の下落が、企業や個人の借入コストを増加させ、金融機関の資産価値を低下させるためです。

具体的には、以下の影響が考えられます。輸出企業の収益が減少し、雇用や設備投資が縮小する。
  • 国内消費が冷え込み、経済成長が鈍化する。
  • 外資の中国への投資が減少し、経済の活力が失われる。
  • 金融機関の破綻や、金融システムの混乱が発生する。
中国政府は、人民元の下落を防ぐために、金融市場への介入や、金利引き下げなどの措置を講じていますが、効果が十分に出ているとは言い難い状況です。これからも、効果が出る可能性は少ないです。

このような状況の中国経済ですから、8月10日、バイデン米大統領は中国経済が「爆発するのを待っている時限爆弾」と指摘したとみられます。

未曾有の危機 AI生成画像

このような状況であれば、いつ何時何が起こるかわかりません。習近平はG20に出席すれば、恥をかくという側面もあるでしょうが、この未曾有の危機に備えるという意味で、中国にとどまっていたいのかもしれません。

それほど、現在の中国の経済危機は深刻なようです。

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2023年9月7日木曜日

「H2A」47号機打ち上げ成功 「高い信頼性」の面目保つ―【私の論評】H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった(゚д゚)!

「H2A」47号機打ち上げ成功 「高い信頼性」の面目保つ

まとめ
  • 日本の月面着陸実証機「スリム」が成功裏に打ち上げられた。
  • 日本の宇宙開発の再興を象徴する出来事。
  • スリムは、月面の目標地点への高精度着陸を目指す。
  • ロケットにはクリズムも搭載されており、これは新たな宇宙天文台として活躍する。


 日本初の月面着陸を目指す小型実証機「スリム」を搭載した日本の主力大型ロケット「H2A」47号機が、2023年9月7日に打ち上げに成功した。

 H2Aは、日本の宇宙開発の要となるロケットだが、近年は失敗が相次ぎ、信頼性が揺らいでいた。しかし、今回の成功により、日本の宇宙開発は再び勢いを取り戻した。

 スリムは、月面の目標地点に誤差100メートル以内で高精度に着陸することを目指している。打ち上げから3~4カ月後に月の周回軌道に到着し、着陸は4~6カ月後の見通し。成功すれば、日本は旧ソ連、米国、中国、インドに続き、5番目の月面着陸国となる。

 また、H2A47号機は、X線で宇宙を観測する衛星「XRISM(クリズム)」も搭載していた。クリズムは、国際共同プロジェクトで運用される宇宙の新たな天文台として、銀河の形成や元素の進化など、多様な宇宙の謎の解明に利用される。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった(゚д゚)!

まとめ
  • 日本の月面着陸実証機「スリム」がH2Aロケットにより成功裏に打ち上げられた。
  • 日本の宇宙開発の再興を象徴する出来事。
  • スリムは、月面の目標地点への高精度着陸を目指す。
  • H2A47ロケットには、国際プロジェクトによるX線天文衛星「クリズム」も搭載されていた。
  • H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった
H2Aロケットは、2001年8月に試験機である1号機が打ち上げられて以来、45回中44回の打ち上げに成功しており、成功率は97.77%です。H2Bロケットも含めると、55回の打ち上げで54回の成功となり、成功率は98%と世界的にも高い水準を誇っています。

H2Aロケットは、2024年度に退役予定です。

H2シリーズの後継機となるH3ロケットは、2023年3月7日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新型主力ロケット「H3」初号機を種子島宇宙センターから打ち上げようとしましたが、2段目のエンジンが着火せず、打ち上げできませんでした。

H3初号機

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2023年5月24日に開催された文部科学省・宇宙開発利用部会で、同年3月に初号機打ち上げに失敗した「H3」ロケットの2号機を、初号機と同じく固体ロケットブースター「SRB-3」を2本装着した「H3-22」という形態で打ち上げる方向性を打ち出した。衛星の代わりに打ち上げ環境計測用ペイロード(積載物)を搭載する考えです。

H2A47の打ち上げ成功の地政学的意義は、主に3つの点で見ることができます。

それは、宇宙開発国家としての日本の評価を高めることです。日本の宇宙開発の歴史は古く、1957年に初の人工衛星を打ち上げたことに遡ります。しかし近年、日本の宇宙開発はいくつかのロケットの失敗など、いくつかの挫折に直面してきました。H2A47の打ち上げ成功は、日本の宇宙開発にとって大きな前進であり、日本が依然として世界の宇宙開発競争の主要プレーヤーであることを示すことになりました。

また、日本が宇宙開発に力を入れているというメッセージを他国に発信するものでもあります。H2A47の打ち上げは、中国が宇宙開発を急速に拡大しているときに行われました。H2A47の成功は、日本も負けずに宇宙開発先進国としての地位を維持しようと決意していることを示すことになりました。

H2A47の成功は、日本が宇宙先進国としての地位を維持する決意を固めていることを示すものであり、日本の宇宙コミュニティにおける他国との結びつきを強化するものです。H2A47の打ち上げは、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカといった国々との協力による国際共同プロジェクトでした。このプロジェクトの成功は、日本が他国と協力して共通の目標を達成する能力を備えていることの証です。

H2A47の打ち上げは、日本、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカの5か国が協力して行われた国際共同プロジェクト「XRISM(クリズム)」の一環です。

XRISM

XRISMは、X線で宇宙を観測する衛星です。X線は、可視光線より波長が短いため、宇宙の奥深くまで届き、ブラックホールや超新星などの高エネルギー現象を観測することができます。

XRISMには、日本が開発したX線望遠鏡「XRISM-S」と、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカが開発したX線望遠鏡「XRISM-C」、「XRISM-F」、「XRISM-D」、「XRISM-A」が搭載されています。

XRISMの打ち上げ成功は、X線による宇宙観測の新たな扉を開くものであり、宇宙の謎の解明に大きく貢献することが期待されています。

具体的には、XRISMは、以下の観測を行う予定です。
  • ブラックホールや超新星などの高エネルギー現象の観測
  • 銀河の形成や進化の観測
  • 元素の合成や進化の観測
XRISMの観測成果は、宇宙の成り立ちや進化の理解に大きく貢献することが期待されています。

XRISMには軍事的な直接的な意味はないですが、いくつかの方法で軍事目的に使用することができます。

まず、XRISMは人工衛星やミサイルなど、宇宙空間にある物体を追跡するために使われる可能性があります。これは、他国の活動を監視したり、攻撃から身を守るために使われる可能性があります。

第二に、XRISMは軍事基地や施設など地上の物体の画像化に使用できる。これは情報収集や攻撃計画に利用できます。

第三に、XRISMは新しい兵器や防衛システムの開発に利用できます。例えば、XRISMはX線が物質に及ぼす影響を研究するために使用され、新しいタイプの装甲や兵器の開発に使用される可能性があります。

ただし、XRISMは軍事目的で設計されたものではないことに注意する必要があります。XRISMは宇宙を研究するための科学衛星です。XRISMの潜在的な軍事利用は、その科学的目標の二次的なものです。

XRISMは軍事目的に使用される可能性はありますが、そのために設計されたものではありません。XRISMを軍事目的に使用するかどうかは、日本政府が決定することになるでしょう。ただ、XRISMで得られた成果を各国がいずれ軍事目的に使うことはあるでしょう。

XRISMに限らず、宇宙開発は、地政学的にも影響を伴うものです。最近のインドの成功、北朝鮮の失敗、中国の宇宙開発の成功も、地政学的に大きな影響を与えています。

インドの成功は、発展途上国も宇宙開発で大きな偉業を達成できることを示しました。このことは、他の発展途上国も独自の宇宙開発計画を推進するきっかけとなりました。

北朝鮮の失敗は、核・宇宙兵器開発計画の危険性を示しました。北朝鮮の人工衛星打ち上げの試みは国際的な非難を浴び、同国は国連から制裁を受けています。

中国の成功は、中国の軍事力の増大に対する懸念を引き起こしました。中国は今や世界第2位の宇宙開発国であり、その宇宙開発は軍事と密接に結びついています。

H2A47の打ち上げ成功は、世界の宇宙コミュニティにとって前向きな進展です。各国が協力して共通の目標を達成できることを示すとともに、日本の宇宙開発へのコミットメント(「委託、関与」「公約、約束、言質」「責任」「参加」などを意味する言葉です。 つまり、責任をもって自分が関わっていくこと、責任をもってある事象や物事に関わっていくことを公約・明言すること、責任を伴う約束をすることを指す言葉)を再確認するものです。

宇宙開発と地政学 AI生成画像

インドや中国、その他の国々の最近の成功は、地政学的にも大きな影響を与えました。こうした動きは今後も宇宙開発の未来を形作り、世界のパワーバランスに大きな影響を与えるでしょう。

H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントでした。これは、日本が世界の宇宙開発競争のリーダー的存在であり、宇宙開発を人類のために役立てようとしていることの表れといえます。

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2023年9月6日水曜日

習近平の大誤算…!現実味を帯びはじめた「新型コロナ“武漢研究所“流出説」で、トランプが公言する中国への「巨額賠償」、その悲惨な中身―【私の論評】遺伝子解析で事実が明らかになりつつあるが、中国はこれに対して何らかの対処をすべき(゚д゚)!

習近平の大誤算…!現実味を帯びはじめた「新型コロナ“武漢研究所“流出説」で、トランプが公言する中国への「巨額賠償」、その悲惨な中身

まとめ

  • いくつかの米メディアが、中国の「武漢ウイルス研究所」であるとの認識を公表。
  • 「武漢ウイルス研究所」は、米国政府から65万ドルもの米連邦資金を得ていた。
  • 米国では「武漢ウイルス研究所説」への関心が再び高まっている。
  • 英BBCは30日、中国の疾病管理センター責任者を辞任した高福氏の新型コロナが研究施設から流出した可能性を排除すべきではないという発言を掲載。
  • 国際社会から賠償の声があがつたことを中国共産党は忘れるべきではない。

新型コロナウイルスの起源が、中国の「武漢ウイルス研究所」であるとの認識が広がっている。米メディアや英紙などで次々に報じられ、米国政府は17日、研究施設への資金を停止した。

武漢ウイルス研究所

同研究所は、アメリカの非営利団体を介して65万ドルもの資金を得ていた。この米国の研究施設から、新型コロナウイルスを含む20種類以上の病原体が見つかった。

HIV、マラリア、風疹、ヘルペス、デングなどのウイルスが検出されている。

研究施設からは、約1000匹のネズミや大量の医療廃棄物なども発見されている。

米国では「武漢ウイルス研究所説」への関心が再び高まっている。

中国のCDCの責任者を辞任した高福氏が、新型コロナ流出説を否定したと英メディア。英BBCは30日、同氏の発言は明らかに毛色が異なる。

トランプ前大統領は、中国にパンデミックの責任をとらせる公約を持ち出している。補償金の総額は60兆ドル、中国のGDPの4倍近くに相当する。

トランプ前大統領は、新型コロナに関する中国への懲罰は米国を始め国際社会の支持を得やすいと考えている。国際社会から中国に賠償を求める声が出始めたとき、中国メデイアは猛反発。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】遺伝子解析で事実が明らかになりつつあるが、中国はこれに対して何らかの対処をすべき(゚д゚)!

まとめ
  • ウイルスの遺伝子解析からCOVID-19の起源は中国である可能性が高まっている。
  • COVID-19ウイルスはヒトに最近感染した可能性が高く、変異が少ないことが示唆されている。
  • 中国当局は初期の感染を隠そうとしたのはほぼ確定しており、武漢ウイルス研究所からのウイルス流出に関しても懸念されている。
  • 遺伝学的証拠は中国の信頼と威信にダメージを与えつつあり、中国共産党は何らかの打開策を実施すべきである。

ウイルスは丹念に遺伝子解析をすれば、伝播や起源に関して、かなりのことまで分析できます。解析には時間がかかることと、解析にはさらに時間がかかるかもしれませんが、いずれ中国発であること等は明らかになる可能性があります。


ウイルスの遺伝子分析は、その起源を決定的にする鍵です。現在、COVID-19の発生源が中国であることを強く指し示す事実が明らかになりつつあります。多くのウイルス学者が、COVID-19の限られた多様性が、世界中に広がるわずか数カ月前に中国で発生したことを示していると考えています。

 ウイルスの原産地 COVID-19の初期の多数の症例は、中国武漢の華南水産物市場に関連していました。このことから、このウイルスが最初に出現したのはそこか、あるいはその近くの場所である可能性が高いです。

最も近縁のウイルス COVID-19の原因ウイルスはMERSやSARSと同じベータコロナウイルスで、いずれも中国が起源です。COVID-19ウイルスは中国のカブトコウモリから発見されたコロナウイルスに最も近縁とされています。

 中国は新型ウイルスについて警告した医師や研究者を検閲し、最初の流行を隠蔽しようとしました。このことは、中国共産党はウイルスが中国から発生したことを知っていて、その事実を隠したかったことを示しています。

米国当局からのケーブル 武漢ウイルス研究所はレベル4のバイオラボで、コウモリから採取したコロナウイルスの研究を行っていました。直接の証拠はまだないですが、ウイルスがその研究所から流出した可能性が懸念されています。

中国は、WHOの調査を当初は阻止しました。これは中国が武漢での初期の感染拡大について何かを隠そうとしていたことを示唆しています。

国立がん研究所の遺伝子解析装置

 遺伝子解析の結果、中国が感染源であることが判明するかもしれません。解析が進むにつれ、中国でのヒトへのウイルスの導入は武漢での1回のみであることが解明されつつあります。

変異型は多様性を示すことはなく、中国での起源が最近であることを示しています。科学者がウイルスゲノムを解析するとき、ウイルスが集団に広がるにつれて蓄積される変異や変異を探します。

変異が少ないほど、そのウイルスがヒトに出現したのが最近であることを意味します。1,000以上のCOVID-19ウイルスゲノムを解析した結果、変異型は99.9%類似しており、このウイルスがヒトの体内をあまり長く循環していないことがわかったのです。

30,000塩基のゲノムの違いはわずか4〜10でした。それに比べ、毎年循環する季節性インフルエンザウイルスは、ゲノムに最大20%の違いがあります。

2020年3月に『Nature』誌に掲載された研究では、中国のCOVID-19患者から採取した103のウイルスゲノムを解析し、99.9%類似していることが示されました。このことは、ウイルスが最近動物からヒトに感染したことを示しています。

160のウイルスゲノムを解析した『Science』誌の2020年4月の研究では、2019年10月から11月の間にヒトに持ち込まれたことを示唆する限定的な多様性が認められました。

 1,001のウイルスゲノムを解析した『Cell』誌の2020年6月の研究では、多様性は非常に限られており、世界中のサンプルから分離された変異はせいぜい10個でした。多様性の欠如は、"特に武漢でごく最近発生した "ことを示しています。

2019年後半に出現:ウイルスの変異率を計算した研究によると、2019年10月から11月の間にヒトに出現した可能性が高いとされています。出典はNature、Science、Cell、The Lancet、ケンブリッジ大学、Scripps Research Institute等。

COVID-19ウイルスゲノムの多様性が限られていることから、このウイルスがヒトに出現したのはごく最近のことであり、2019年後半に武漢で出現した可能性が高いです。

変異の数が少ないということは、世界的大流行を引き起こす前に、ヒトの間で長く循環していなかったことを示唆しています。

この事実は、中国がこの危機を引き起こしたという決定的な証明はまだできていません。

しかし遺伝学的証拠は今後も積み重ねられ、時間はかかるかもしれませんが、中国がCOVID-19の最終的な発生源であることを示すことになる可能性はあります。

ただ、科学的にウイルス起源がはっきりしたとしても、中国共産党はそれを認めないかもしれません。それは、福島原発の科学的根拠が薄弱であるにもかかわらず、「処理水」を「汚染水」として批判する中国共産党の主張をみても理解できます。

香港でおこなわれた抗議デモ

中国共産党が、否定し続ければ、中国の信頼、威信、野心へのダメージは、中国共産党がいくら事実を否定しようとも、最終的には中国共産党にとって良いことはないでしょう。

現時点でも、「武漢研究所からの流失」の疑惑自体があることは認めた上で、情報を公開し、中国以外の国々が信頼できる第三者に調査を依頼するなどのことをすべきでしょう。

さらに、感染初期の段階で、これを隠蔽したことは明らかであり、今後このようなことが起こらないように、法律や制度を改正するなどして、透明性を高め、信頼の回復をすべきです。

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