2021年8月20日金曜日

中国による台湾侵攻を抑止しうる米国の法案―【私の論評】日米台は様々な法律や条約を多数積み上げることにより、事実上の同盟関係を構築し、中国に対峙すべき(゚д゚)!

中国による台湾侵攻を抑止しうる米国の法案

岡崎研究所


 現在、米議会の上下両院に「台湾パートナーシップ法」と呼ばれる新たな台湾支援法案が、民主・共和両党の超党派議員により提出されている。この法案は、米国の州兵と台湾軍との協力拡大を研究するようペンタゴンに求めている。具体的には、米州兵が台湾の予備役を訓練することができるようにする、との内容である。

 ウォールストリート・ジャーナル紙は7月22日付の社説‘Strengthening Taiwan’s Resistance’は、米国上下両院における新しい法案制定は、北京に対する台湾の抵抗力を格段に強めるだろう、と述べている。

 台湾の予備役は、台湾の海軍、ミサイル防衛部隊のような前線の正規の部隊ではない。しかし、もし台湾島の人々が戦闘に巻き込まれることがあれば、動員可能な兵力として出動されることとなる。台湾の20万人に近い現役軍隊の規模の10倍に近い規模の予備役が動員可能になれば、全島でいわばゲリラ戦を行うことが出来るような戦闘能力をもつこととなろう。

 上記社説は、「人民解放軍の水陸両用部隊や空挺部隊が台湾に上陸したとしても、組織的で装備の整った予備役部隊があれば、台湾をコントロールすることはより困難になるだろう。広範囲にわたる抵抗は、小さな国がより大きな敵に対抗する助けになり、米軍などの部隊が到着するまでの時間を稼げる。例えば、リトアニアはロシアの攻撃への備えを予備役の動員に頼っている」と、法案の意義を説明する。

 この「台湾パートナーシップ法」が実際に米国両院において近く可決されるか否かについては、その詳細はまだよく分からないが、社説も指摘するとおり、中国による台湾に対する軍事的侵攻を未然に阻止する最善の方策は、北京が台湾を侵攻する場合に支払うべきコストを引き上げることである。

 中国の台湾への軍事的侵攻については、米国軍指導部内においても見解が分かれている。6年以内にも侵攻がありうるとの見方、人々が想像するより侵攻の時期は差し迫っているとの見方、さらには、まだ台湾を侵攻できるだけの能力を中国は有していない、との見方などである。

 習近平指導部は台湾問題が中国にとっての「核心的利益」であるとの考え方を変えておらず、先般の共産党創立100周年の際にも「台湾独立を徹底的に粉砕する」ことが歴史的任務である、と述べた。そして、人民解放軍に対し、「戦闘準備を怠るな」との指示を数多く出している。中国の台湾に対する威嚇・脅迫の度は最近ますます強まっているように見える。

 台湾における世論調査を見れば、仮に中国が台湾侵攻のための軍事行動を起こすと仮定した場合、台湾の多くの人々は「台湾関係法」という国内法をもち、台湾の防衛にコミットしている米国が、台湾防衛のために駆けつけてくるまでの時間稼ぎのためにも、台湾としての独自の防衛をしなければならない、との考え方を持っていることがわかる。「台湾パートナーシップ法」が勧奨する予備役を訓練することで動員可能にし、有事の際の動員力を現役のみの場合の10倍の規模に拡大するというやり方は、こうした考えにも合致する。

 台湾の人々は、特に最近の香港の事情をつぶさに観察している。国家安全法という法律を持ち、警察国家として人権を蹂躙する香港での動きは台湾の人々にとって中国に対する警戒心を強めこそすれ、弱めることはあり得ない。米国の「台湾パートナーシップ法」が米議会を通過し、米国軍と台湾の予備役の関係が一層緊密になれば、台湾と中国の距離はさらに遠ざかることとなろう。

【私の論評】日米台は様々な法律や条約を多数積み上げることにより、事実上の同盟関係を構築し、中国に対峙すべき(゚д゚)!

民主党のタミー・ダックワース上院議員

米民主党のタミー・ダックワース上院議員は10日、シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のオンラインイベントで、台湾を米国の州兵・国家パートナーシップ計画(SPP)に加えるよう働き掛けていると述べました。

同計画により台湾の軍の準備体制を即応レベルにまで高めるとともに、常態的な関係を築くことで有事の際に米国が即座に対応できるようにしたいと語りました。 同氏を含む超党派の上院議員13人は7月、州兵と台湾によるパートナーシップ計画の立ち上げを呼び掛ける「台湾パートナーシップ関連法案」を議会に提出しました。

法案には、米台双方の防衛担当高官同士の交流を促す内容も盛り込まれました。同氏は、不測の事態の発生で米国が支援に向かわなければならない場合、台湾の防衛部隊と州兵の関係を常態化していれば、米国はゼロから始めなくてもよくなると言及し、パートナーシップの重要性を訴えました。 SPPの公式サイトによると、同計画は各州の州兵と他国・地域の軍事部隊をつなぎ、協力と互恵関係の構築を支援するものだとしています。これまでに全世界で82のパートナーシップが結ばれているといいいます。

ちなみにダミー・ダックスワース上院議員は、現職米上院議員として初めて出産し2018年4月には、生後10日の次女を連れて議場入りし、大きな話題となりました。イラク戦争で両足を失うという逆境を乗り越えて政治家になり、50歳で次女を出産した「働くママ」の姿が、多くの人々を勇気づけました。

ダックワース氏は陸軍の元兵士で、イラク戦争にヘリコプターのパイロットとして従軍した時に、撃墜されて重傷を負い、両足を失っていました。

ダックワース氏は次女の出産前に、これまでの半生を振り返る文書を発表しました。その中で、今の自分があるのは、能力が優れていたり、人並み以上の強さがあったからではなく、「困難に直面した時にどう対応してきたか」によると強調しました。

ダックワース氏は父親が米国人、母親がタイ人。米ジョージ・ワシントン大学で国際関係学の修士号を取得後、父と同じ軍隊の道に進んだ。人生は充実し、明るい未来を描いていたのですが、イラク戦争で重傷を負うことで一変しました。負傷によって激しい体の痛みのほか、怒りや不安も感じる苦しい日々を送ることになりました。

一方で、イラクの戦場で危険を顧みず助けてくれた仲間たちによって「第二の人生」を与えられたと感謝。「いかに周りの人に支えられているか気付き、彼らを決して失望させず、毎日彼らに報いるために生きよう」と決意したといいます。

2006年に初めて出馬した下院選で落選しましたが、諦めれば「イラクの戦場で救ってくれた人たちを裏切ることになる」と再起。12年の下院選に勝利し、タイ系女性で初の下院議員となりました。16年には上院選で当選しました。

高齢での妊娠・出産は、容易でなかったようです。シカゴ・サンタイムズ紙によると、ダックワース氏は夫と共に、さまざまな受精方法を試みる中、14年に第1子は体外受精で出産。その後、16年の上院選の期間中には流産を経験したましたが、2人目の子供を授かりました。

 「第二の人生で最高の出来事は、ずっと待ち望んできた家族を築けたことだ」。ダックワース氏は、こう述べていました。

2021年8月13日、中国紙・環球時報は、6月に訪問先の韓国から台湾に赴いたダックスワース米上院議員が「当時、韓国側には内緒にしていた」と明かしたことを報じていました。

記事は、台湾・中国時報電子版の12日付報道を引用。タミー・ダックワース米上院議員が10日に米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のシンポジウムで6月の台湾訪問時のエピソードを語ったと紹介。当時、韓国を訪れていた同議員一行は台湾へ行けるかわからない状況にあり、最終的に「米政府から軍機派遣の同意を受け、韓国の軍事基地から軍機に乗って台湾に赴いた」と明かしたことを伝えました。

そして「韓国が中国との間で非常に難しい立場に置かれる可能性があった」ため、韓国側には台湾に行くことを伝えていなかったと述べたことを紹介しました。

また、台湾を訪問した6月6日、台湾に新型コロナワクチン75万回分の提供を発表したことについて同議員が「ワクチン計画で中国は台湾によるワクチン調達を阻害し、ワクチンが欲しいなら自分たちのワクチンを買えと求めてきた。そして、他国に対しても台湾にワクチンを供給するなら貿易をやめると言ってきた」と語ったことを伝えました。

その上で、米国が同19日に約束の75万回分を含む計250万回分を台湾に輸送したことに言及し、民進党の関係者が「中国の脅威によってわれわれがワクチンで不公平な待遇を受ける中、自由主義陣営のリーダーである米国としては手を差し伸べないわけにはいかない。だからこそ75万回分が250万回分にまで増えたのだ」と述べたとしました。

記事は一方で、同議員の台湾訪問後に中国政府が反発を示し、中国国務院台湾弁公室の馬暁光(マー・シアオグアン)報道官が「形式を問わず、米台間の政府関係者が付き合うことに反対する」と述べ、中国外交部の王文斌(ワン・ウエンビン)報道官も「断固として反対する」として、米国に抗議を行ったことを明かしたと伝えています。


2021年8月13日、中国紙・環球時報は、6月に訪問先の韓国から台湾に赴いた米上院議員が「当時、韓国側には内緒にしていた」と明かしたことを報じた。

記事は、台湾・中国時報電子版の12日付報道を引用。タミー・ダックワース米上院議員が10日に米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のシンポジウムで6月の台湾訪問時のエピソードを語ったと紹介。当時、韓国を訪れていた同議員一行は台湾へ行けるかわからない状況にあり、最終的に「米政府から軍機派遣の同意を受け、韓国の軍事基地から軍機に乗って台湾に赴いた」と明かしたことを伝えた。

そして「韓国が中国との間で非常に難しい立場に置かれる可能性があった」ため、韓国側には台湾に行くことを伝えていなかったと述べたことを紹介している。

また、台湾を訪問した6月6日、台湾に新型コロナワクチン75万回分の提供を発表したことについて同議員が「ワクチン計画で中国は台湾によるワクチン調達を阻害し、ワクチンが欲しいなら自分たちのワクチンを買えと求めてきた。そして、他国に対しても台湾にワクチンを供給するなら貿易をやめると言ってきた」と語ったことを伝えた。

その上で、米国が同19日に約束の75万回分を含む計250万回分を台湾に輸送したことに言及し、民進党の関係者が「中国の脅威によってわれわれがワクチンで不公平な待遇を受ける中、自由主義陣営のリーダーである米国としては手を差し伸べないわけにはいかない。だからこそ75万回分が250万回分にまで増えたのだ」と述べたとした。

記事は一方で、同議員の台湾訪問後に中国政府が反発を示し、中国国務院台湾弁公室の馬暁光(マー・シアオグアン)報道官が「形式を問わず、米台間の政府関係者が付き合うことに反対する」と述べ、中国外交部の王文斌(ワン・ウエンビン)報道官も「断固として反対する」として、米国に抗議を行ったことを明かしたと伝えている。(翻訳・編集/川尻)

中国外交部の王文斌(ワン・ウエンビン)報道官

台湾を訪問した、米上院議員が、「台湾パートナーシップ法」と呼ばれる新たな台湾支援法案に関わっていたということですから、中国側としては心穏やかではないでしょう。

中ソ対立の真っ只中に、そして改革開放の開始時、1979年1月1日、ソ連からの政治的影響と軍事的脅威に対抗するため、米国は戦略的に中華民国から中華人民共和国に外交承認を切り替えました。台北の米国大使館は閉鎖され、新たに北京に在中国米国大使館が開設され、米国内の中華民国大使館は閉鎖されました。

1979年4月10日、米国のジミー・カーター大統領は、台湾との非公式な関係を維持するための国内の法的権限を創設した台湾関係法に署名しました。米国の商業的、文化的、およびその他の台湾の人々との交流は、民間の非営利団体である研究所である「米国在台湾協会」を通じて促進されています。

米国在台湾協会

研究所はワシントンD.C.に本部を置き、台北と高雄に事務所を置いています。ビザの発行、パスポート申請の受理、台湾の米国市民への支援を行うことが許可されており、事実上の米国大使館として機能しています。

対する台湾側の民間団体である駐米台北経済文化代表処が台湾によって設立されました。本部は台北にあり、ワシントンD.C.に駐在員事務所があり、米国本土とグアムには他に11の支部があります。台湾関係法は、米国と台湾の間の非公式な関係の法的根拠を維持し続けており、台湾が防衛能力を米国が支援すると明記しています。

このように、米国は正式には台湾との国交を断った後にも、非公式に台湾との関係を継続してきましました。

ただ、中国と米国との関係がある以上、米国は台湾と正式に同盟関係になることはできません。しかし、しかし今回の台湾パートナーシップ法」などのよう様々な法律や条約を多数積み上げることにより、事実上同盟国であるような関係を構築することはできます。

最初から同盟を結んで、その方向で同盟を維持するために、法律や条約を積み重ねていくという方向とは逆になりますが、正式に同盟関係を結んでいなくても、様々な法律や

日本も、台湾をTPPに加入してもらったり、様々な法律や条約を多数積み上げることによって、台湾と実質上の同盟関係に近い関係を構築することができます。

最近のワクチン外交により、日本は台湾に長年の恩に報いることができました。しかし、これで終わらせることなく、日米台は様々な法律や条約を多数積み上げることにより、事実上の同盟関係を構築し、中国に対峙すべきです。

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