2021年8月24日火曜日

中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」―【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!

中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」

岡崎研究所


 元豪州首相のケヴィン・ラッドが、8月6日付のForeign Affairsで、クワッド(日米豪印の4か国協力)の成功は中国の野望達成にとり主要な脅威になるなどの理由で中国を警戒させていると述べている。

 ラッドがクワッドにつき何を言うのか、興味があったが、表立ってクワッドを批判することにはなっていない。安倍晋三元総理のイニシアティヴにも触れながらクワッド成立の経緯を説明し、中国の対応は当初は無視し、その後は参加国分断や猛烈な非難攻撃をやるが、それでもクワッドの進展は止められなかった、今やクワッドが世界的な反中連合になることを強く警戒しているとする。それは、世界一の経済、技術、軍事大国になるという中国の野望達成の脅威になっていると言う。このようなラッドの分析は、恐らく正しいであろう。

 中国が強く警戒する理由として、ラッドは、①クワッドが世界的な反中連合の土台になり中国の野望達成の障害になる、②台湾海峡や南シナ海などでの軍事シナリオを複雑化するということを挙げる。そして、中国の対応としては、①ASEAN諸国との関係強化、②ロシアとの関係強化、③米国が動けない自由貿易の枠組の推進、④軍事支出のさらなる拡大を挙げる。

 ラッドは「これまでのところ、中国はクワッドに効果的な対応を取れないでいる」というが、それも正しいと思う。中国は、クワッド対応に失敗しただけでなく、抑々自己主張を強める政策や振る舞いがそれを引き起こしたことを忘れてはならない。

 当初慎重だったインドも中印衝突を経てクワッド参加を鮮明にした。対中経済関係を重視してきた豪州は、中国の標的にされた。豪州によるWTO提訴は当然である。Covid-19の起源の客観的調査を求めると豪州が発言したのみで、中国は、豪州からの貿易品目に不当な関税を課す等したのだから。

 中国がクワッドを警戒していることは、対中抑止力が効いていることでもある。クワッドを注意深く進展させていくことが重要である。クワッド首脳は本年末までに対面会合開催を予定している。

 日本はクワッド協力を提唱し、推進してきた。ラッドもそれを理解の上書いている。日本の大きな貢献である。「インド太平洋」地域の概念は定着した。日本はこれらの努力を継続するとともに、中国やロシアとの関与にも努めていかねばならない。

 ASEAN諸国は特に重要である。ASEAN地域は中国との競争の主要な地域になる。日米がコロナ・ワクチンの配布に力を入れていることは良いことだ。バイデン政権の国務長官や国防長官が先頭に立った関係強化の努力が目立ってきている。米・インドネシア対話も始まる。

 欧州が漸くアジア太平洋への関与を強めていることは、良いことである。英、仏、独がインド太平洋に艦船を派遣し、我が国とも演習をするようになっている。目下英国の空母と、ドイツのフリゲート艦が東アジアに向かっている。なお今月上旬インドは今年の4か国のマラバール合同演習を西太平洋で行うことを発表した。

【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!

現在、世界各国が持っている海軍の船は、実は2種類しかありません。1つは空母などの水上艦艇、もう1つが潜水艦です。水上艦艇はすべて、いざ戦争が起こったら、ターゲットでしかありません。

船が浮かんでいる時点で、レーダーなどで、どこで動いているのか存在がわかってしまいます。そこを対艦ミサイルなどで撃たれてしまったら、空母だろうと何であろうと1発で撃沈です。しかし、潜水艦はなかなか見つからないので、その意味では現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力なのです。

現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力

そういう観点から見ると、中国はたくさんの水上艦艇を所有していますが、潜水艦そのもや対潜戦闘などの能力、水面より下の戦力は弱いです。一方日米は、水面より下の戦力においては圧倒的に強いです。

サイズ的には中国海軍は、数も多いし脅威ではありますが、実際の戦闘態勢になったら、水中の戦力は日米のほうが圧倒的です。海戦ということになると、中国は日本単独と戦っても負け戦になってしまいます。

特に、日米が協同した場合、海戦においては世界最強です。日本の通常型潜水艦は、静寂性(ステルス性)に優れており、中国にはこれを発見することはできません。一方米国の原潜(米国製通常型潜水艦は製造されていない)は、攻撃型も戦略型も攻撃力は世界一です。

日米潜水艦隊が協同して、日本の潜水艦隊が情報収集にあたり、米原潜が攻撃をするなど双方の長所を生かした役割分担をした場合、これに勝てる海軍はありません。ロシアは無論のこと中国でも海戦では全く歯がたちません。

かつて、中国の潜水艦というと、ドラを打ち鳴らすように音を出しながら水中を進むと形容されたように、場所がすぐにわかってしまったと言われた時代がありました。最近は静粛性が上がっているものの、それでも日米の世界最強の対潜哨戒能力からすれば、中国の潜水艦は簡単に中国に発見されてしまいます。


最近では、米国の対潜水艦装備を用いている英空母打撃群が追尾する中国の潜水艦をすぐに発見してしまったという報道がなされています。英軍にも発見できるわけですから、世界最高の哨戒力のある日米にはすぐに発見されてしまいます。これでは、そもそも勝負になりません。日米と中国の海戦は、目の見えない中国と目がよく見える日米との戦いと言っても過言ではありません。

さらに、中国が日米などと比較して、徹底的に劣っていることに中国に仲間がいないということがあります。中国には同盟国がないということです。

過去の戦争を見ると、勝った国は、最新テクノロジーを持っていたとか、物量的に優位だったとの分析がなされていますが、同盟が強かった国が勝って来たということができます。

 その典型は英国です。英国は、ロシアが強大になるとフランスと同盟を組み、ドイツが強大になるとらロシアと同盟を組み対処してきました。 英国は、仲間づくりがうまいのです。

 日本も歴史を振り返ると、日露戦争のときは英米を含めてうまく仲間を使っています。ロシアがバルチック艦隊でアフリカの方を回って来てもスエズ運河に入らせないとか、途中でどこかの港に入ったら邪魔するということをやってくれましたし、横須賀には英国が売ってくれた「戦艦三笠」がありました。 

英国は、物資も戦費も調達してくれ、英国かなりお世話になったのです。日本も勝てた戦争を冷静に見て行くと、良い国と同盟を結んでいたから勝てたということができます。 

ところが第二次世界大戦では、ABCD包囲網で、周りが敵だらけになり、外交的に負けている状況で戦争をやろうとしていました。これでは勝てるわけがなかったのです。

Aが米国、Bが英国、Cは中国、Dはオランダです。日本には当時まともな同盟相手がいませんでした。一応、ドイツは同盟国だつたですが、たまにBMWの試作エンジンを送ってくれるとか、金塊を潜水艦で送ってくれましたが、それ以外はほとんど役に立たなかったのです。

第2次世界大戦中は、結局日独伊が組んだ大規模な作戦など一度も実施されませんでした。物資や経済的な交流もほとんどなく、独伊は同盟国としてある程度機能していましたが、日独伊三国同盟はほとんど機能していませんでした。

日独伊三国同盟の祝賀会の写真をカラー化(渡邉英徳教授のTwitterより)

そうして、いまの中国を見てください。いざというときに頼りになる仲間はいません。経済力は強いのですが、同盟システムを彼らは持っていません。

仲が良いのは、北朝鮮やラオス、カンボジアくらいです。ロシアとは表面上は仲が良いようにしていますが、その実氷の微笑ともいえるような冷たい関係です。

米国は世界に四十数ヵ国の同盟関係を持っています。これらの同盟国の基地も使えますし、軍隊も派遣できます。 人間もそうなのですが、国も仲間は大切です。いざというときに助けてくれる仲間が必要です。

中国はそういう意味で、仲間を得られない国なのです。元々システム的に弱さを持っているのです。
 
日本も同盟の大切さを常に意識しなければいけません。 中国に対抗するという意味では、オーストラリアが重要です。今回のオリンピックでも、オーストラリアの選手が日本に感謝してくれていました。

オーストラリアはこれからも日本にとって大事な国になって来ます。また、インドもクアッドという仕組みに入っています。日本が自発的に仲間になろうと、みんなとうまくできる状況をつくることが必要です。そうして、将来的にはこれらの国と同盟国になることが、中国と対抗していく上で重要になってきます。

対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって日米豪印「クワッド」はすでに脅威です。さらに、クワッドが欧州などとも同盟関係を強めれば、中国が一国でこれに対処するのは不可能です。


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