2022年1月17日月曜日

もう手遅れ!岸田政権の「オミクロン対策」と「増税論」は根本的に間違っている―【私の論評】岸政権のお粗末ぶりが、誰にでもわかるように顕在化してからではすべてが手遅れに(゚д゚)!

もう手遅れ!岸田政権の「オミクロン対策」と「増税論」は根本的に間違っている

「場当たり対応」でどこまで持つのか

なぜ10~11月に手を打たなかったのか

 岸田政権がオミクロン対策で苦慮している。濃厚接触者の待機期間を短縮するなど「柔軟な対応」を強調しているが、一方でワクチンの3回目接種は進まず、米軍基地での感染拡大問題でも米国との交渉は遅きに失したとの見方もある。政府の対策が十分なのか。

 新型コロナの感染症法上の分類について、安倍元首相や維新の松井大阪市長、さらには小池都知事からも2類相当から5類への引き下げする案が出ている。しかし岸田文雄首相は、「感染急拡大している状況で変更するのは現実的ではない。2類から5類に一旦変更し、その後、変異が生じた場合、大きな問題を引き起こす」と消極的だ。

  5類への引き下げ決定は、新型コロナの感染者数が極めて少なかった昨年10~11月にやっておくべきだった。ワクチンの3回目接種は、在庫があったその時期に手を打たなかった。そのため沖縄では医療従事者が感染し医療にも支障が出ているという。分類変更もそれとも同じで、波静かなときに何も準備しなかったことが問題だ。今さら手遅れだが、手順を間違えたと言わざるを得ない。

  筆者の見立てでは、第6波では一日あたりの感染者数はこれまで最高になるだろうが、死亡率は第5波より小さくなるとみている。せいぜい0.2%程度であり、ひょっとしたらインフレエンザ並み(0.1%程度)になる可能性もある。

岸田政権の「場当たり対応」の罪

 また、岸田首相の「今後変異があるから、変更すると大問題を起こすので対応できない」というロジックもおかしい。これはやらないことをいう「官僚答弁」である。

  一般論として、ウイルスは変異するたびに感染力は強くなるが弱毒化していく傾向がある。もちろんその一般論に当てはまらないことも少ない確率であり得るが、そのときには再び分類を変更すればいい。「柔軟に対応する」と岸田首相は言うが、こうした柔軟性こそ持つべきだ。変異があるからこそ、迅速に対応すべきなのだ。

  こうしてみると、菅政権時代との差は著しい。菅前首相は、厚労省に任せていたところ「ワクチン接種は11月までかかる」と言われたので、河野太郎氏をワクチン接種担当大臣に任命し、実務主体に厚労省だけではなく総務省を加えて地方自治体が動きやすいように工夫したという。その結果、1日100万本という、メディアからは無謀と言われた目標を驚異的なスピードでクリアし、ワクチン接種は先進国でトップレベルになった。

菅前総理

  ワクチンの調達に関しても、菅前首相は、バイデン大統領と西側諸国ではじめての対面での首脳会談を行い、それと合わせてファイザー社社長とも交渉し、日本として有利なワクチン調達を行った。

  ひるがえって岸田政権では、堀内ワクチン接種担当大臣の存在感もなく、実務対応力はかなり貧弱になっている。ワクチンの3回目接種は先進国間で比べれば信じられないくらいにスピードが遅い。岸田首相は未だに日米首脳会談も開催できていないため、ファイザー社を含めてワクチン調達でトップ会談が行えていない。現場の医療関係者からも、「菅政権のときのほうがやりやすかったと」いう声が挙がる。

  岸田政権は「先手、先手」と口では言うが、実際は、先を読まずに、場当たり対応しているだけだ。しかも、本コラムで書いたように、官僚を後ろから撃つようなこともしているので、ますます官僚の初動が鈍くなっている。「国民に対して仕事をする」という観点から見れば、岸田政権は菅政権と比較して仕事をしていないのだ。

相変わらずPBに固執して「増税」へ

 その一方で、増税への布石は着々と進んでいるようだ。1月14日、今年最初の経済財政諮問会議を開催し、岸田首相は、国と地方合わせた基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する目標を維持する考え方を示した。諮問会議で示された中期財政試算を容認した形だ。

  筆者は、1月3日付本コラム『「日本は借金で破綻する」は本当か? 財務官僚の大嘘を暴く グロス債務だけ見るのは笑止千万』において、「今の片手落ちのPB目標による経済運営」は、基本的に政府のグロス債務残高をコントロールするための指標なので不十分と断言し、統合政府でのネット債務残高を財政健全化に使うべきとしている。

  しかし、政府では相変わらずPBに固執している。先日のコラムで数式を出さなかったが、以下のとおりだ。


  要するに、PB対GDP比とともに、マネタリーベース増対GDP比も加味して見なければ、本当の財政健全化の指標になり得ない。

財政健全化にもつながらない

 政府のPBは地方政府も含んでいるが、国だけとしても2020年度PB対GDP比は▲9.3%と大きい。それを2025年度に黒字化しようとするのは、大増税を唱えているのに等しい。

  しかし、本当の財政状況である統合政府のネット債務対GDP比はほぼゼロである。しかも、2020年度のPB対GDP比▲9.3%としても、マネタリーベース増対GDP比は19.6%だったので、これらを合計すれば10.3%(前期債務残高対GDP比、前期マネタリーベース対GDP比、成長率、金利も影響があるが、今の時点でこれらの影響は少ないので無視)。これは実質的なPBは実は黒字化していることを意味している。そのため、統合政府ベースのネット債務残高は減少し、ほぼゼロになっているのだ。

財務省

  PB対GDP比が▲9.3%で黒字化するなら大変だろうが、実は+10.3%ならもっと赤字でもいいことになる。

  そもそも政府のグロス財務残高に着目するのは会計的にも誤りだし、その間違ったPB黒字化に向けて増税することは、かえって政府全体の財政健全化にならない。

  今国会が今日1月17日から始まるが、国会で財政健全化議論をしっかりやってほしい。特に、グロス債務残高だけで議論する財務省やマスコミの欺瞞を糺すべきだ。そのグロス債務残高から出てくるのが、PB黒字化だ。

  はっきり言おう。政府のPB黒字化目標は、会計的にもファイナンス論からも、完全な誤りである。

【私の論評】岸政権のお粗末ぶりが、誰にでもわかるように顕在化してからではすべてが手遅れに(゚д゚)!

上の記事をみていると、岸政権のお粗末ぶりが誰にでもわかるようにはっきり健在化してからでは、すべてが手遅れになりそうです。

岸田政権には、外交・安保も経済も、何も期待できないようです。

まずは外交面では、岸田首相は昨年12月24日、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を受けて、やっと北京冬季五輪への政府代表の派遣見送りを表明しました。

ジョー・バイデン米大統領が「外交的ボイコット」を明言したのは同6日でした。それから、岸田首相は「適切な時期に」「わが国の国益に照らして」などと、のらりくらりを繰り返ました。

では、逆に「我が国は閣僚を北京五輪に覇権する」といえるだけの、胆力や、国民の理解をえられるだけの理念でもあるのかといえば、そのようなこともないようです。


「人権」は、人類にとって普遍的価値であるはずです。岸田首相は何を伝えたいのか、まったく理解に苦しむ対応であり、結果として中国を利しただけです。

一部では、岸田首相とバイデン大統領の、初の対面での日米首脳会談がセットされないのは、米国が「岸田政権の対中姿勢」に不信感を持っているためと伝えられています。

日本の外相は「政界屈指の親中派」とされる林芳正氏です。この人は、過去には年に中国に7回も行ったことがあるそうです。しかも、外務大臣になったとたんに、中国からの招待があったことを明かすなど、外交儀礼も知らないような振る舞いをみせました。

バイデン政権が、この人事に不信感を持つのは当然といえます。「外交的ボイコット」をめぐる対応も加えて、米国の怒りを買った可能性が十分あります。

この人に期待しても無理なのかもしれませんが、日本は外交面で、明確な立場を表明すべきです。

明確な立場とは、外交・安全保障分野では、日本が東アジアにおけるリーダーシップを発揮することです。日本と米国、日米豪印による戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の関係強化や、自衛隊と欧米各国の軍との共同訓練の増加など、着実に進めるべきです。

2022年度の予算案で防衛費は前年度比1・1%増の5兆4005億ですが、1%程度の増加では米国は「誤差の範囲」としか評価しないでしょう。憲法改正のための具体的な議論の進展も米国は注視しています。


経済もほとんど期待できないようです。先進各国でCPI(消費者物価)が大きく上昇するなかで、日本のエネルギー除いたベースのCPIコアは前年比-0.6%(2021年11月)です。携帯電話料金の引き下げで押し下げられているので、これを除けばエネルギー除くCPIコアはプラスにはなりますが、それでも1%未満あたりでしょう。

米国とは異なり、日本ではインフレ率が依然として低すぎるので、今後の政策対応次第ではデフレに陥るリスクを回避する必要があります。そのため、必要な政策対応も米国とは大きく異なでしょう。

 2021年の米国で見られたように、効果的で十分な財政政策がしっかりと実現されていれば、日本でも経済成長が上振れ同時に2%に近づくインフレ上昇が起きていた可能性もあったかもしれません。

実際には2021年1-3月からは経済成長が止まり、ほぼゼロ成長で停滞したことで、CPIはわずかなプラスにとどまったのです。最大の要因は、米欧対比では規模が小さいコロナ感染拡大に対して、医療資源が早々に逼迫したことにあります。 

このため、緊急事態宣言が長きにわたり発動され、民間の経済活動が抑制されてしまいました。医療機関に対して危機時のガバナンスが行われた米欧のように医療資源が機能していれば、2021年に日本でも経済成長率は上振れになった可能性があります。 

その上で米国同様に、経済成長押し上げに直結する大規模な給付金などで家計の支出が刺激されれば、米国と同程度の高成長が起きたに違いありません。そうなれば、日本で最大の問題であった低インフレから脱却して、米欧と肩を並べるようなインフレ率の大幅な上昇の可能性があったのではないかと思います。

2022年早々に日本でもオミクロン変異株の広がりで感染者は増えていますが、治療効果が高い経口薬が広がれば、新型コロナの状況は大きく変わる可能性があります。新型コロナが経済成長を抑制しなければ、日銀の金融緩和政策の効果が強まり、米欧に追いつく格好で日本のインフレ率も2%に近づくシナリオにも期待できるでしょう。 

このブログにも掲載したように、11月の企業物価指数は前年同月比9・0%上昇の108・7で、伸び率は比較可能な1981年1月以降で最大、指数は85年12月以来、約35年11カ月ぶりの高い水準となっています。ここで岸田政権が、積極財政を打ち出していれば、物価目標を達成できる可能性もでてきます。

岸田政権がしっかりとコロナ対応を繰り出し、成長を高める経済政策を行う可能性は低いようです。むしろ、アベノミクス路線からの転換につながりそうな、「新しい資本主義構想」が具体化する中で、脱デフレの前に経済成長を抑制する可能性が高いと思います。 

「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズを打ち出し増税政策に邁進して、官僚に金融政策を任せた、かつての民主党政権の失敗を繰り返す可能性すらあります。 

民主党が支持率の高い人気政党だった頃に東京の地下鉄で掲載された広告

また、2021年の日本の経済成長を抑えた医療体制逼迫に関して、これを回避する十分な対応ができていない可能性があります。外国での先例からすれば、オミクロン株の感染者は、昨年半ばのデルタ株感染者拡大時よりも大きく増える可能性が高いです。

感染者が増えても弱毒化したと見られる変異株に応じた適切な対応が行われれば良いですが、今後もコロナは2類感染症として原則対応されるのですから、感染者数が増えれば病床使用率も上昇するでしょう。 

岸田政権は、病床確保のための「見える化」のシステム整備を行っていますが、病院間の情報共有が進んでいない事例がみられます。また、病床と医療人材の双方を増やすインセンティブを高める充分な予算措置、そして医療機関へのガバナンスを効かせる法的措置が行われていません。

実際岸田政権は病床確保強化のための感染症法改正案について国会への提出を見送っています。先日もこのブログで示したように、次の国会で岸田政権が提出する法案はほとんどないようです。夏場の参議院選挙を控えて、資源を選挙に回すために危機に備えた対応強化を控えたいのでしょうか。 

また、諸外国ではブースターワクチンの接種が相当に進んでいますが、日本でのブースター摂取率は1月7日時点で75万人と、諸外国対比で圧倒的に低いです。オミクロン変異株の重症化を防ぐためにワクチン接種は必要だろうが、ブースター接種の遅れも、事態が流動的に動く中で日本の保健行政が依然として十分機能してない可能性を示してます。 

2021年同様に米欧対比で少ない感染拡大であっても病床使用率が上昇すれば、再び経済活動自粛が強要されます。日本は、ゼロコロナを目指して厳しい経済統制が行われる中国とは異なりますが、強い同調圧力によって似たような経済停滞が起きてしまう可能性があります。デフレ克服の機会を、2022年も再度逸することになりそうです。

私は、安倍政権だったときも、菅政権だったときも、是々非々で批判すべきところは、批判し、評価すべきところは評価してきました。菅政権は、コロナが収束していない状況では、そのまま継続すべきとこのブログで主張しました。しかし、岸田政権になってからは、批判ばかりです。菅政権が今も継続されていたとすれば、現在の岸田政権よりは、はるかにマシだったと思います。

甘利氏が幹事長から外れたにしても、岸田政権の体たらくは酷いものです。このままだと、民主党政権とあまり変わらないようになってしまうかもしれません。

岸田首相はこのまま夏の参院選まで、明確な立場を示さないつもりかもしれないです。それでは、岸田政権に期待することも、支持することもできないです。これほど酷いとは、誰も思っていないかったのではないでしょうか。

今後岸田政権が、良い法に方向転換することは期待できないようです。であれば、自民党としては新たな総裁のもとで、やりなおされた方が良いのではないでしょうか。

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