2022年1月21日金曜日

仏下院「対中非難」採択…「ウイグル弾圧はジェノサイドに相当する」と明記 情けない日本の決議案―【私の論評】「日米中正三角形」にさらに「楕円の理論」で磨きをかけようとする林外相は、ただ口が軽いだけ?(゚д゚)!

仏下院「対中非難」採択…「ウイグル弾圧はジェノサイドに相当する」と明記 情けない日本の決議案


フランス下院(定数577)は20日、中国が新疆ウイグル自治区でジェノサイド(民族大量虐殺)を犯していると非難する決議を採択した。北京冬季五輪の開幕を前に、決議は少数民族ウイグル族に対するジェノサイドを政府が公式に認定し、非難するよう求めた。

決議は、新疆ウイグル自治区では強制労働が行われ、拷問、性的虐待についても証言があると指摘した。強制不妊政策でウイグル族の人口が抑制され、子供の連れ去りも横行していると批判。中国には「ウイグル族全体、またはその一部を抹殺しようとする意図がある」とし、ジェノサイドに相当すると明記した。

日本も2月1日に国会決議を採択する方向で調整しているが、決議案は自公間での修正協議で「人権侵害」が「人権状況」に変わり、「非難決議案」から「非難」の文字が削除され、「中国」という国名もない情けないものになっている。

【私の論評】「日米中正三角形」にさらに「楕円の理論」で磨きをかけようとする林外相は、ただ口が軽いだけ?(゚д゚)!

昨日もこのブログで述べたとおり、欧州の中国に対する見方は近年厳しくなる一方です。

昨日のブログでも述べたように、フランスのルドリアン外相とインドネシアのルトノ外相は昨年11月24日、インドネシアの首都ジャカルタで会談し、両国の防衛協力の強化に向け22年に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を始めることで合意しました。フランスは22年上半期にEU議長国として「インド太平洋地域との関係強化が優先事項になる」(ルドリアン氏)との立場も表明しました。フランス下院は昨年11月29日、世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加を支持する決議を採択しました。

フランスのルドリアン外相

そうして、上の記事にもあるように、20日仏下院「対中非難」を採択したのです。

フランスだけをみていても、このように中国に対してはどんどん厳しくなっています。他の国々も例外ではありません。

欧州というと、わずか数年前では、現在の日本の岸田政権のように中国に配慮する国が多かったと記憶しています。

特に2020年欧州における対中認識、姿勢の変化は、中国の行動に起因しています。トランプ政権が、EU自体を含む欧州の重視する国際枠組みに軒並み対決姿勢を示したことは、中国にとっては欧州・中国関係を改善する絶好の機会だったはずですが、中国それを完全に棒に振りました。

米欧対立の深まる4年間を経て、より多くの欧州人が中国を「体制上のライバル」とみなすようになったことは、衝撃的です。しかもそれは、トランプ政権による説得の結果ではありません。

香港における法の支配への挑戦をはじめとする中国自身の強硬な行動や不器用な外交の結果です。新疆ウイグル自治区における少数民族に対する迫害への関心も欧州で上昇しています。また、新型コロナウイルス感染症の発祥地などに関する強硬な「戦狼外交」やディスインフォメーション(偽情報の意図的な流布)は、完全に逆効果に終わりました。

欧州連合(EU)の欧州議会は20日、香港での人権状況の悪化を理由に、EUや加盟国に対し、北京冬季五輪へ外交団を派遣しないよう求める決議を採択しました。欧州議会は昨年7月にも、新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を理由に、北京五輪の外交ボイコットを求める決議を採択しています。

欧州議会は決議で、中国政府が選挙制度を変更し、民主派勢力の排除を進めたことや、メディア関係者など反体制派の逮捕が相次いでいる点を指摘し、「表現や報道の自由の厳しい制限など、香港での人権の悪化を最も強い言葉で非難する」としました。EUや加盟国による北京五輪の「外交的ボイコット」や、人権侵害に関わる中国・香港の当局者、関係企業に対する制裁措置を求めました。決議に拘束力はありません。

同時に欧州議会は、香港の人権状況を非難し、政府トップの林鄭月娥行政長官を含む複数の高官に対して、渡航制限や資金凍結などの制裁を科すよう加盟国などに求める決議を賛成多数で採択しました。決議に法的拘束力はなく、実現の見通しも不透明ですが、EUと中国の関係はさらに悪化しそうです。

結局香港に対する中国の振る舞いほど、欧州人を激怒させたものはないようです。香港問題がなければ、まだ中国に配慮する欧州人もいたかもしれません。しかし、これが決定的に欧州人の中国に対する見方をかえさせたようです。

香港

習近平国家主席が、中国は多国間協力におけるパートナーだと売り込んでも、香港問題以降信じる欧州人はほとんどいません。EUのボレル外相(外交安全保障上級代表)は、中国の姿勢は「自らの好きな部分だけの選択的多国間主義であり、それは国際秩序に関する異なる理解に依拠している」と述べています。

60年までのカーボンニュートラルの目標や、新型コロナのワクチンを共同購入する国際的枠組みであるCOVAX(コバックス)への参加は、外交上も得点を稼ぐものですが、欧州における中国に対する懐疑的見方は根強いです。

他方で、米新政権の下、欧州での対米イメージは大きく改善するでしょう。バイデン氏は、対中政策に関しても欧州と協力するとみられます。世界貿易機関(WTO)の活用や、気候変動に関するパリ協定や世界保健機関(WHO)への復帰も含まれます。そうした中で、気候変動に関する中国の目標達成やワクチンを外交ツールとして使わないことを監視できます。

ドイツも欧州も、米国の進める中国との「デカップリング(分断)」には反対してきました。それでも、ドイツでは、経済関係を多角化することで、中国への依存度を軽減し、リバランスをはかる必要があるとの意識が広がっています。

20年9月にドイツ政府が発表した「インド太平洋指針」の背景にも、効果的な中国政策を展開するには、中国以外の諸国との協力が不可欠だとの認識が存在しています。価値を共有する諸国と経済・政治関係を強化することも、その一環です。

1997年、香港がイギリスから中国に返還されて以来、一つの国に二つの政治制度、しかも資本主義と一党独裁社会主義が並立するという世界史初の壮大な実験は、2021年に失敗に終わりました。

2021年3月11日、中国人民代表大会(全人代)が香港の民主化に歯止めをかける選挙制度改変を決めました。賛成2895票、反対0、棄権1という、習近平体制の一枚岩を誇示する採決結果でした。

その後、全人代常務委員会などで詳細が詰められ、香港の議会にあたる立法会で条例が改められることになったのです。

改変の目的は、国家安全維持法などで一度でも罪に問われた人は「愛国者ではない」と新設の委員会から認定され、香港議会に立候補すらできないという仕組みの確立でした。香港の自治や北京中央政府に対する「異論」はすべて封じられることになりました。

これは、契約や国際法なども重んじる欧州人からみれば、法の支配へのあからさまな挑戦であり、挑戦言語道断の措置であり、欧州人のほとんどは、中国は全く信用ならないという観念を植え付け、固定化させたといえます。そうして、それは、当然のことながら、議会の立法や政府の政策にも反映されます。

だから、欧州が中国に対して厳しくなるのは当然なのです。

同じことをみても、なお中国に配慮しようとする愚かな人たちがいます。それが岸田政権です。無論政権のなかには、岸防衛大臣含め、そうではない人もいるのですが、首相、外務大臣、幹事長がそういう人たちなのですから、目もあてられません。

林芳正外相は13日、日本記者クラブで会見した。外交方針について、所属する派閥・宏池会(岸田派)の先輩、大平正芳・元首相が唱えた「楕円(だえん)の理論」を引き合いに、「なんとかひとつの楕円にする努力をやらなければならない」と語っています。米中による覇権争いのなか、日本としてバランスをとる重要性を強調しました。

大平元首相は、調和を探る「楕円の理論」を説きました。林氏は「外交はほとんどの場合、相矛盾するような課題が出てくる」と述べた上で、「大平総理は、両立の難しいことを二つの円にたとえ、一つの楕円にする努力というものをやらなければならない、と。好きな言葉だが、外務省に来て、言葉の重みをかみしめている」と語りました。

大平元首相

一昨日は、このブログで、「日米中正三角形」論について述べましたが、「楕円の理論」でさらに、日中友好に磨きをかけたようです。これを、現状に当てはめれば、2つの円が「米国と中国」を指すのは明らかです。楕円にするとは「米国と中国の対立をなんとか丸く収める」という意味でしょう。そのために、林氏は暗に「日本が仲介努力をする」と語ったともいえます。

この林外務大臣は13日の日本記者クラブ主催の記者会見で「秋の中国共産党大会で、おそらく習近平総書記の3期目の続投が決まる」と述べています。昨年11月には中国共産党第19期中央委員会第6回総会が習氏の功績を称(たた)える決議を採択して習氏の3期目突入が確実となっており、こうした情勢を踏まえた発言とみられます。

ただ、外務大臣という立場で、このような発言をするのは、他国の内政に干渉することになります。まだ習近平総書記長の続投が決まっていないわけで、これでは口が軽すぎると言わざるを得ません。これは、辞任に発展してもおかしくない案件だと思います。

林外大臣は、着任そうそうテレビ番組の中で、「中国から招待を受けた」旨を公表しています。これは、外交儀礼上あり得ない行為です。

林外務大臣は口が軽すぎです。この有様では、今後日本は外交上で大きな不利益を被ることになりかねません。岸田首相とバイデン米大統領は日本時間21日夜、初めてオンライン形式で会談することになっていますが、オンラインでの会談は異例ですし、それに会談の予定が決まるまでにかなりの時間を要しました。これには、林外務大臣の口が災いしている可能性が大きいです。

林外務大臣はこれからも、軽口を叩く可能性が大きいです。もう一度重大案件で軽口を叩けば、岸田首相は林外務大臣を辞任させるべきでしょう。

そうして、それを皮切りに、安倍・菅政権の路線を継承し、両政権でなしえなかった懸案事項などを成し遂げ、その後に岸田カラーを出しても遅くはないです。このくらいの大きな転換をしないと、岸田政権は短命で終わると思います。しかし、現状の岸田内閣をみていると、岸田暫定内閣で終わった方が、岸田氏にとっても自民党にとっても有権者にとっても良いようも思います。

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