2020年2月26日水曜日

日本の好機とすべきブレグジット―【私の論評】日本にとって、安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになり得る英国(゚д゚)!


岡崎研究所

 2月8日、訪日中のラーブ英外相と茂木外相との間で、第8回日英外相戦略対話が行われた。会談では、英国のEU離脱後も引き続き、日英が価値を共有するパートナーとしてグローバルなリーダーシップやインド太平洋へのコミットメントで協力を進めていくことが確認された。今回の協議を踏まえて発出された共同プレスステートメントの第1パラグラフは、次のように言っている。


 「日本と英国は最も緊密な友人であり、パートナーである。本日、我々は、気候変動に対処し、新しい技術の潜在能力を安全に活用し、地域の安全保障を維持し、持続可能で自立的な開発を促進し、自由貿易を強化し、ルールに基づく国際システム並びに民主主義及び人権を擁護することを含め、グローバルなリーダーシップを発揮すべく共に取り組むことへのコミットメントを再確認した。我々は、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントについて協議するとともに、善を促進する力としてのグローバルな英国という英国のビジョンについて議論を行った」

 EUを離脱した英国にとり、経済連携は最優先課題である。日本にとっても、英国との経済関係を、英国がEUに加盟していた時と同様に維持することが利益になる。「日EU経済連携協定(EPA)を日英間の将来の経済的パートナーシップの基礎として用いるとの過去のコミットメントを再確認した。両国の自由貿易に対するコミットメントに沿って、我々は、新たなパートナーシップを日EU・EPAと同様に野心的で、高い水準で、互恵的なものとするために速やかに取り組む」と共同プレスステートメントにある通り、スムーズに進むと見られる。

 経済の分野では、英国のTPP11への加盟問題もある。英国は既に2018年より、TPP11への加盟に関心を示している。英国がTPP11に加盟することの意義の一つは、TPP11の側から見ると、TPP11の世界のGDPに占める割合が、現行の13~14%から17%に拡大することである。これはTPP11の影響力拡大につながり得る。もう一つの大きな意義は、英国のインド太平洋へのコミットメントが格段に強化される点である。TPP11への加盟には他の加盟国の承認が必要なので、紆余曲折があるかもしれないが、いずれにせよ、日本としては2018年から一貫して英国の加盟を支持している。今回の共同プレスステートメントも「英国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定への関心を改めて表明した。日本は英国の関心を歓迎するとともに、この文脈において英国を支援する旨再確認した」としている。なお、英国は、米国、ニュージーランド、豪州との貿易協定も求めている。

 英国のインド太平洋へのコミットメントは、経済分野以上に、安全保障の分野で大きな進展が見られる。日本や豪州との安全保障協力を強化し、フランスなどと「航行の自由作戦」を実施したりもしている。2018年以来、北東アジアに英海軍艦船6隻が派遣されているという。さらに、空母を太平洋に派遣する構想も持っているらしい。

 英国がインド太平洋における軍事的プレゼンスを高めているのは、海洋通商国家として、航行の自由という国際的ルールを守ることが死活的に重要であるからである。共同プレスステートメントには、「南シナ海及び東シナ海における状況について懸念を表明するとともに、現状を変更し、緊張を高めようとするあらゆる一方的な行動に対し強く反対した。我々はまた、南シナ海行動規範(COC)が1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された国際法に整合し、航行の自由及び上空飛行の自由を確保し、かつ南シナ海を活用するステークホルダーの権利及び利益を害さないことの重要性を強調した」とある。

 もう一つの背景としては、この地域には英連邦の国々が多く存在するので、これらとのつながりを強化しておきたいとの英国の意図が考えられる。

 EUを離脱した英国は、グローバル・ブリテンを掲げるが、多くの困難に直面しよう。そうした中で、英国のインド太平洋へのコミットメントの強化は、日本が掲げるインド太平洋構想にとっても心強く、日英双方の利益になる。その進展ぶりから目が離せない。

【私の論評】日本にとって、安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになり得る英国(゚д゚)!

ブレグジット以降に具体化される「グローバル・ブリテン」構想による英国の安全保障政策は、日本が戦後初めて国際社会共通の物差しを世界に浸透させるルールメイキングに成功した「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」とリンクすることで実効性を担保し、極めて大きな効果が期待できます。

FOIPは2012年の第2次安倍政権発足直後、首相名で発表された英文の論文「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想が最初でした。中国の台頭に対抗することを念頭に置いて、インド、ASEAN、オーストラリア、アメリカ、それに英国、フランスまでが加わる日本発の安全保障構想です。


すでに米国はこの構想に基づいて、ハワイに本拠を多く太平洋軍の名称を「インド太平洋軍」と改称し、インド軍、自衛隊、オーストラリア軍などが加わる軍事訓練を重ねています。

これらのことから、ジョンソン首相は「第二次日英同盟」にしばしば言及しており、2018年10月には日本がUKUSA協定国(ファイブアイズとも呼称されている)で行われる多国間机上演習に招待され、防衛省から5名が参加しています。

このUKUSA協定はもともと第二次大戦中にドイツのエニグマ暗号を米英共同で解読したのが始まりで、戦後戦略上最も重要な秘密情報を共有するため、かつて異国の植民地であった国々が参加。参加国は英国の他アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国。このことから「ファイブアイズ」とも呼ばれています。

いずれにしろ、高度な情報コミュニティであり、英語圏以外で演習に招待されることは極めてまれで、2016年のドイツ、フランスしかありません。これへの参加は安全保障とステータスの向上という観点から見ると、日本にとって魅力的であり、高度な安全保障システムに参加可能な日英同盟に近づくステップにもなりうるのです。

「グローバル・ブリテン」構想のもう一つの柱は、英国が経済的な自由を取り戻し、世界的な展開を推進することです。ブレグジット後はEU以外の国・地域との貿易関係の強化が急務となります。そのため、英国政府は2018年7月からアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアとのFTA(自由貿易協定)協議に加え、アメリカが抜けた後、日本が主導的にまとめ上げたTPP(環太平洋パートナーシップ)11への参加に前向きな姿勢を示しています。

英国の経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT紙)が2018年10月31日、アメリカが関税障壁を引き上げたり、中国との貿易戦争を続けている状況と対比し、TPP11の発効は自由貿易の類まれなる勝利だと評価。また、FT紙は10月8日付の記事で安倍晋三首相へのインタビューを掲載。安倍首相が英国のTPP11参加を「もろ手を挙げて歓迎」し、TPP11のさらなる拡大に意欲的なことを紹介。TPP11が「グローバル・ブリテン」の経済面での重要な位置づけとなることを表明しました。

FT紙は2018年10月8日付の記事で安倍晋三首相へのインタビューを掲載

英国としても世界で最も繁栄している環太平洋地域の経済活動に参加して、ブレグジット後の活路を見出そうとしていると思われます。ブレグジット後の英国にとって日本の存在価値は高いと言えますし、日本にとっても世界の安全保障と経済に深くコミットする道筋となることでさらなる飛躍のチャンスでもあるのです。
一方英国は、21世紀型の製造業を興すことで地盤沈下した地方経済を蘇らせて国内経済の〝南北問題〟を解消する一方、大学を中心に世界中から人材を吸い寄せて資本も集める挑戦を開始しました。それは、ティースバレー(ティーズ川の下流域を中心とした英国の北東に都市領域)とその周辺を、関税、付加価値税(VAT)のないフリーポート・フリーゾーンにする構想です。

石炭と鉄鉱石の産地が近いティーズバレーは、19世紀から製鉄で栄え、ピーク時には年間1000万トンの石炭と鉄鉱石を飲み込み、350万トンのスラブ(鋳塊)と鉄製品を吐き出しました。造船や化学も強く、1970年代前半まで工場労働者で賑わいました。旧工業地帯の人口は70万。今や見る影もなく工場は閉鎖し、周辺にはシャッター街が広がっています

このディーズバレー港とその周辺を関税、付加価値税(VAT)のないフリーポート・フリーゾーンにする構想が脚光を浴びています。外資を呼び込んで新しい産業を興し、EUだけでなく、北米・南米・アジア・オーストラリア・英連邦加盟国とティーズバレーを結ぶ壮大な構想です。 

「仕事なんか戻ってくるもんか」「私たちゃあ生きてるんじゃない。ただ存在しているだけさ」と地元住民でさえ吐き捨てる街を蘇らせるためにティーズバレー市長ハウチェン氏がジョンソン首相に掛け合い、マニフェスト(政権公約)にも採用された秘策があります。

今後3年のうちに自由貿易協定(FTA)で貿易額全体の80%をカバーする戦略を掲げるジョンソン政権の切り札と言えるかもしれないです。フリーポートは一言で説明すれば国内に〝オフショアの産業特区〟を設けるアイデアです。

港のティーズポートには18・2平方キロメートルの遊休地があり、フリーポートに指定された暁には今後25年で52億ポンド(約7400億円)の投資が見込めます。地域の失業率は7・2%(英国全体は3・8%)ですが、サプライチェーンも含め3万2000人の雇用を創出、経済効果は20億ポンド、税収増は10億ポンドとハウチェン市長は算盤)を弾いています。

英財務省の首席政務次官を務める保守党のリシ・スナック下院議員(2月13日の内閣改造で財務相に抜擢)の報告書によれば、フリーポートやフリーゾーンは世界135カ国3500カ所に広がり、6600万人の雇用を創出。米国では250カ所のフリーゾーンが42万人の雇用と7500億ドルの商取引を生み出しています。

関税やVAT、規制から完全に自由なフリーポートとフリーゾーンを組み合わせたり、その中に工場や企業を誘致したり、世界のフリーポートには実に97もの異なるモデルがあります。

しかし、EU規制下で認められるフリーポートは短期間保管するだけの保税倉庫に毛が生えたようなもので、同一競争条件(レベル・プレーイング・フィールド)により国家補助金や税制、環境、労働条件に厳しいタガがはめられています。

このため12年を最後に英国からリバプールやサウサンプトンなどのフリーポートは完全に姿を消しました。ジョンソン首相が描くのは規制緩和や国家補助金を呼び水にフリーポートやフリーゾーンへ外資や21世紀型の製造業を呼び込む競争力ある産業特区です。

これまで議会で単独過半数を獲得し、EUから離脱するのがジョンソン首相の最優先課題でした。先の総選挙で保守党は「レッドウォール」と呼ばれる旧炭鉱・造船街などオールドレイバー(古い労働党)の支持を得ました。

「レッドウォール」を再活性化させるため、フリーポート構想に加え全国一律の法定生活賃金(労働者の生活を保障する賃金の下限)の引き上げを行い、国内経済の〝南北問題〟を是正しながら、EUに縛られずに世界と繋(つな)がるグローバル・ブリテンを目指す試練が始まりました。

英国の起業家ネットワーク、テク・ネーションの調査では、19年に企業価値が10億ドルを超えるスタートアップ企業である「ユニコーン」を8社も生み出した英国のデジタルテクノロジーへの投資は、前年に比べ31億ポンド増えて過去最高の101億ポンド(約1兆4400億円)を記録しました。ドイツの54億ポンド、フランスの34億ポンドを合わせた額より多く、欧州全体の3分の1を占めています。


ベンチャーキャピタル投資は前年比44%増。成長率で見た場合、ドイツ41%増、フランス37%増、イスラエル22%増、米国20%減、中国65%減を上回り、世界首位に立ちます。英国のユニコーンは計77社になり、ドイツの34社を圧倒しています。

英国にはオックスフォード大学やケンブリッジ大学など世界トップ100に入る大学が11校もあり、テクノロジーの拠点は全国に広がっています。EU市民は英国離脱によって自由に行き来できなくなりますが、米国や中国に比べるとはるかに就労ビザが取得しやすいという強みがあります。

EUとの通商交渉の行方はまだ分かりません。しかし21世紀型の製造業を興すことで地盤沈下した地方経済を蘇らせて国内経済の〝南北問題〟を解消する一方、大学を中心に世界中から人材を吸い寄せて資本も集める英国の挑戦がこれから始まろうとしています。

これから、大きなチャレンジをする英国は、日本にとって安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになるのは間違いないようです。



2020年2月25日火曜日

「北京が“毒都”になった」 新型肺炎、中国の“心臓部”近くの大病院で集団発生か!? 市民「秩序も崩壊…共産党は“陥落目前”だ!」 ―【私の論評】習近平生殺与奪の権は日本にあり!習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄(゚д゚)!

「北京が“毒都”になった」 新型肺炎、中国の“心臓部”近くの大病院で集団発生か!? 市民「秩序も崩壊…共産党は“陥落目前”だ!」 

中国発「新型肺炎」

北京の人民大会堂で開催予定だった全人代が延期に

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、初動対応に失敗した中国の習近平政権への批判が噴出している。中国政府は24日、3月5日に北京で開幕予定だった全国人民代表大会(全人代=国会)の延期を決定した。日本政府も25日、「1~2週間が瀬戸際」として感染拡大阻止対策の基本方針を決定。中国の入国拒否対象も拡大する方針という。こうしたなか、習国家主席側がいまだに「国賓」訪日に意欲を見せているとの情報がある。人口の半数以上が「封鎖状態」というのに、正気なのか。ノンフィクション作家の河添恵子氏は緊急寄稿第5弾で、「首都・北京での感染拡大」や「人民解放軍の感染情報」「習主席訪日固執の背景」などに迫った。


中国全土は目下、「戒厳令なき戒厳体制」といっても過言ではない。

李克強首相(中国共産党序列2位)をトップとする、「アウトブレーク(集団感染)を防ぎ制御する領導小組(疫情防控領導小組)」が始動して以来、武装警察が“異様な静寂”に包まれた街に大量投入された。マスクをしていない人民を羽交い締めにして連行する様子などが、SNSにアップされている。



医師や看護師の死亡が次々と伝えられる新型コロナウイルスの発生地・湖北省武漢市の病院だけでなく、全国の医療機関は衛生当局ではなく、公安当局に管理されている。情報漏洩(ろうえい)を恐れているのだ。

一方、宣伝部と外交部は、習政権に「不都合ではない」情報だけを発信し続けている。

世界各国の専門家らによる「新型コロナウイルスは、武漢の病毒研究所から流出した可能性がある」「新型ウイルスは天然ではなく人工」との見解や推測については、外交部の報道官が「荒唐無稽で無知だ」「科学的根拠が全くない」などと真っ向から否定している。

習氏が1月20日に出した重要指示には、「迅速な情報開示の徹底」があった。中国政府の行動は正反対だが、皮肉にも、これに従って“模範的な行動”を取っているのは反習一派と反共産党勢力のようだ。

「北京が“毒都”になった」

こうした話題が、先週末から盛り上がっている。よりによって、北京でのアウトブレークは西城区の複数の大病院から発生したという。

西城区には、中国共産党の本部や習氏ら最高幹部、秘書などの居住区となる「中南海」がある。党書記処、規律委員会、組織部、宣伝部、国務院、国家発展改革委員会、国家人民委員会など、党中央の単位が120ほど集中する“中国の心臓部”なのだ。

中国最大のSNS「WeChat」(微信)に2月21日、医療関係者と思われる人物が書き込んだ衝撃的な内容が、たちまち拡散された。

そこには、「北京の大学病院と医院で集団感染が起き、大問題になっている」「北京の集団感染処置は武漢レベルに引き上げられ、医師は外部からの支援を受けられない」と記されていた。

複数の中国メディアも、「北京の付属病院と大学病院、2つの病院が緊急でアウトブレークの調査中」と報じた。

付属病院は、共産党の局長・部長級など高級幹部のための病室を備え、医師で高級幹部の子女も少なくない。北京の大病院がウイルスに侵食されていることは、以前から漏れ伝わっていたが、最近ようやく中国当局も認めた。69人、一説にはもっと多くが隔離されているという。

■米・露に見放され頼る先は日本のみ?

中国人評論家の1人は「付属病院は、中南海まで数キロの距離にある。ここでのアウトブレークにより、習氏の関心事がどこに向いたかは容易に想像がつく」「湖北省を捨てても、全国を放棄しても、北京を死守しなければならないのだ!」と記している。

北京は2月10日に封鎖されたが、西城区の区長は18日、「厳格な地区閉鎖管理」を宣布した。

こうしたなか、国内外のネット市民からは、以下のような冷ややかな声が上がっている。

「150歳まで生きる目標を持つ共産党幹部にとって、(新型コロナウイルスは)恐怖以外の何ものでもないはずだ」「中国政府がいくら法律をつくろうと、ウイルスは言うことを聞いてくれない」「権力者であろうが、庶民であろうが、ウイルス(の感染)には関係ないのだ」

人民解放軍への感染情報も相次いでいる。

香港を拠点とする人権民主情報センターは2月13日、「中国の空母『山東』の人民解放軍1人が、海南省三亜市で新型肺炎と診断され、三亜に『山東』の軍の100人が隔離された」と伝えている。

共産党一党独裁体制について、「北京の秩序も崩壊し、真の“毒都”となり、中南海の陥落も目前だ!」といった激しい論調すら飛び出すなか、習氏は日本への「国賓」訪問に固執しているとされる。

ドナルド・トランプ大統領の米国とは冷戦状態に陥り、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアは中国との国境封鎖や中国人の入国禁止など、厳格な措置を取っている。世界各国から見放された習氏としては、すり寄る先が日本しかないのか?

いずれにせよ、来るも地獄、来ないも地獄であることに変わりはない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】習近平生殺与奪の権は日本にあり!習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄(゚д゚)!

北京で開幕予定だった全国人民代表大会の延期ということを聴くと、日本人なら、大事と思うかもしれませんが、全人代は日本の国会のようなものと認識する多くの日本人は、これは大事だと思うかもしれません。確かに北京の新型肺炎の感染のレベルは大事になっているのは間違いないでしょうが、全人代延期そのものは現実的にはさほどのことではありません。

ただし、全人代は中国共産党のパフォーマンスの一環であり、パフォーマンスとはいいながら、過去には、これにより、いかにも中国に当地の正当性があるかのように、主張するために機能させてきたのですが、それすらもできないということでは、新型肺炎の感染レベルが抜き差しならぬことになっているのかもしれません。

昨年の全人代

まずは、全人代がどういうものなのかを解説します。

中国の全人代=全国人民代表大会は、日本のメディアでは「国会に相当する」という修飾語がつくことが多いですが、これは随分誤解を招くな言い方です。全人代は日本人が「国会」として想起する姿や機能と全く違います。

まず、代表の選ばれ方が違います。日本の「国会」は主権者である国民が選挙で議員を選びます。その際、普通選挙・平等選挙・秘密選挙・直接選挙の4原則が確保されます。

これに対して全人代は、中国共産党が党にとって都合の良い代表者を党が指導する下部組織に間接的に選出させて組織されるもので、この選出過程に一般の中国国民は関与できません。

「国会に相当」と聞くと、民主的手続きによって選出された国民の代表で組織する立法機関が中国にもあると思いがちですが、現実は違います。

中国には、建国以来、先進国などでみられる民主主義的な選挙が行われたことはありません。その意味では、中国には先進国でいうところの、政治家は一人もいません。習近平や、江沢民、胡錦濤なども厳密な意味では政治家ではありません。先進国でいえば、官僚です。

その分かりやすい例が、香港議会の補欠選挙に民主派が立候補すらできなかったことです。党にとって不都合な人物はそもそも選挙から排除するのが北京流です。全人代の映像を見ると、約3000人の代表の中には民族衣装で正装した少数民族の代表者と思しき姿があります。

これは、少数民族も政治に関与できていると思わせる狙いがあります。その姿がカラフルで物珍しいので、日本のテレビ局はついつい放送に使ってしまううのですが、相手の思う壺です。

全人代に参加した少数民族

次に全人代の機能は手続き的なものでしかありません。毎年1回開催、会期は約10日間にすぎないです。

昨年全人代は、習近平総書記の2期目に当たり、憲法改正から国家元首の選出、行政や司法に関わるトップ人事、予算の承認、国の機構改革、法律の制定などなど、国政の重要事案を16日間でやっつけてしまいました。

そんなことができるのは、全ては中国共産党が事前に決めており、全人代での扱いは形式的なものにすぎないからです。

以前ほどラバースタンプ(《承認のために押すゴム印の意から転じて》提案や計画を十分に検討しないで、賛成したり、認可したりすること)言われなくなっているのは、裁決での反対・棄権票が増えてきていることと関係するのでしょうか。

全人代の電子投票システムでは誰が反対・棄権票を投じたか即座に特定できるはずです。反対者は断固排除する一党独裁制の基本をよくよく承知している代表者が、自分の将来を潰しかねない反対・棄権票をあえて投じるのでしょうか?甚だ疑問です。

それよりも、反対・棄権票も事前の振り付けと考える方が納得できるのではないでしょうか。

独裁国での形式的な選挙の投票率が99.4%などと発表されるのと同じ感覚ですが、その時々の世論を意識しながら数字を塩梅するのであれば、より洗練されてきているとも言えるかもしれません。

それはさておき、全人代の会期が年間10日程度で済んでしまう理由として、全人代常務委員会の存在が見逃せないです。

全人代閉会中、ということは年間350日程度、憲法の規定で全人代が持つ最高の国家権力を行使し立法機能を代行する常設機関です。

実際には主客逆転していて、常務委員会が随時立法し権力を行使し、全人代が年一回まとめて追認するのです。全人代で覆されることはありません。

この常務委員会のトップに中国共産党の最高指導部の一人が就き、200人弱の構成員の約7割を共産党が占めます。残りは「民主党派・無所属人士」と括られる、要するに、共産党以外の人々も関与していますけど…という人たちです。

一言でいえば、この全人代常務委員会が、党の政策と支配を憲法や法律に則り民主的な手続きを踏んだ形をとって国政の次元に落とし込む制度的仕掛けなのです。

党と国家の軸であると同時に、一党独裁を代表民主制のようにカムフラージュするのです。

現在の中国は国の大きさや経済レベルは全く違うが、支配の政治メカニズムは基本的に何十年も変わっていません。

だからこそ、「国会に相当する」と聞くと違和感を覚えます。「国会」の言葉のイメージによって「実態」を観る目が曇らないようにしたいものです。

中国には、政治家が一人もおらず、いるのは官僚だけなのです。官僚が政治を司るとどういうことになるか、日本で考えていただければ、おわかりになると思います。特に、官僚の無謬性へのこだわりは、とんでもない事態を引き起こしがちです。

選挙で選ばることない、官僚だけが日本を統治していれば、当然のことながら腐敗は当たり前ですし、何でも官僚にいうとおりです。日本では、財務省が力のある役所であるといわれ、まるで増税することが使命のように、増税がくりかえされました。

それでも、過去に安倍政権は二度も、消費税増税を延期を公約として選挙をし、大勝利して、消費税増税を延期しました。選挙で政権与党が、増税見送りを公約として大勝利した場合、さすがの財務省もこれを翻すことはできません。

日本と中国を単純比較はできませんが、もし日本が中国のように、官僚の国であれば、日本ではもう何度も増税されて、今頃、消費税は50%くらいになっており、経済は疲弊し、国民の怒りは頂点に達し、革命がおこり怒りのマグマが財務省に向かって大爆発し、財務省は粉砕されるなどということになったかもしれません。

しかし、中国は真の官僚国家であり、司法や人民解放軍は、国民ではなく共産党の下に位置づけられ、中国共産党は何事にも何者にも、制約されることなく、自分たちのやりたい放題です。そうして、この状態を全体主義というわけです。

このような国で、新型肺炎が起こったのが、人類の不孝でした。とにかく、全体主義国家では、良いことは率先して公表しますが、悪いことは隠蔽したり、あるいは報告が遅れるものです。そのため、中国では新型肺炎への対処が遅れてしまいした。

新型肺炎への対応がこのように遅れて、その結果として、新型肺炎、中国の“心臓部”近くでも蔓延して、中国共産党幹部らにもその驚異が間近に迫っているわけです。

この度は、新型肺炎への対応の遅れで、このような事態を招いてしまいましたが、他の驚異にも同じく今の全体主義的中共は対応できないことが十分予想できます。

このような国が長続きするとはとても思えません。米・露に見放され、日本にも見放されれば、とんでもないことになるのではないでしょうか。

だからこそ、習近平をわらをも掴むような気持ちで、今でも日本に向かってはっきりと日本訪問の延期や中止などを言えないようです。

日本では、中国を過大評価する人も多いですが、少なくとも日本は、中国国内ではかなり大きな影響力のある国です。

まずは、天皇の存在です。天皇は中国でいえば、皇帝です。その皇帝に謁見することは、中国国内ではかなり権威付けとなります。実際、いまた次世代の中国主席の候補者であった、習近平は2009年日本を訪問して自らの中国国内での権威付けに成功しました。

中韓では、反日運動が盛んですが、それは逆にいえば、日本に対する劣等感であります。中国や韓国に日本に対する劣等感がなければ、そもそも反日などする必要性もありません。

そうして、その劣等感がどこからくるかといえば、現在の韓国も、中国共産党も他国のように、他国と戦って独立を勝ち得た経験がないからです。そうして、そもそも日本は、かなり古くから天皇を頂点に独立の道を歩んできたからです。

韓国は、日本から独立したのではなく、日本から米国に移管され、その後に独立しました。中共は日本と戦ったことは一度もありません。いわゆる日本が戦った中国とは、蒋介石が率いた中華民国(現台湾)です。

中国建国の父である毛沢東は、日本と中華民国が戦ったくれたおかげで、中華民国が疲弊したおかげて、我々は中国を独立させることがだきたと語ったといわています。

韓国は、米国から独立、中国は内戦で勝利して独立ということで、いずれも外国などと戦ったことはないわけであり、そこでどうしても国内で統治の正当性が弱いのです。だから、中国では今でも日本の天皇に謁見したものは、かなりの権威付けになるのです。

韓国は、全く自分の力とは関係なく、米国から独立したということもあり、天皇に謁見することは権威付けにはならないようです。

いずれにしても、中国も韓国も国内で日本を悪者にして、自らの政権の統治の正当性を高めるということでは共通点があります。

八方塞がりの習近平にとつては、かつて自分が天皇に謁見して中国国内での権威付けに成功したのと同じ陽に、米露が見捨てられた現在では、日本でまた天皇に謁見して、国内での権威付けを高めることと、日本を介して米露などと良い関係を構築したいのでしょう。

習近平が予定通りに日本に来れば、ある程度の権威付けにはなるかもしれませんが、それにしても、反習近平派が日本に訪問しているうちに、クーデター起こすかもしれませんし、そこまでいかなくても、おそらくその時期には、まだ新型肺炎が終息していないでしょうから、中国に戻った習近平に対して大事な時期に国を離れたとして、謗ることでしょう。

日本に来なければ、習近平の権威は地に落ちることになります。まさに、習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄なのです。

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2020年2月24日月曜日

習近平4月訪日…先に「延期しよう」と切り出せず神経戦する日中―【私の論評】中国が「反日統一戦線共同戦線」構想を取り消さない限り、日中戦争は継続中であると心得よ(゚д゚)!

習近平4月訪日…先に「延期しよう」と切り出せず神経戦する日中

    習近平中国国家主席(左)が昨年6月28日に大阪で開かれたG20首脳会議
    公式歓迎式で議長国の日本の安倍晋三首相とあいさつを交わしている。

4月初めに予定されている習近平中国国家主席の国賓訪日日程は新型コロナウイルスによる肺炎の拡散で流動的な状況だが、中国と日本ともに「延期」を切り出せず神経戦を行っていると産経新聞が24日に報道した。

現在日本と中国とも「予定通り準備を進める」という立場を維持しているのは、中国が重視するプライド問題、また、中国に利用されかねないという日本側の戦略が絡んでいるという。

日本の茂木敏充外相は21日会見で習主席の訪日について、「いくつかの準備会合などが延期になっているので、準備を加速していく必要がある」と話した。

15日にドイツで茂木外相に会った中国の王毅外相も「(習主席訪日を)ぜひ実現したい」とした。

新型肺炎の影響で国賓訪日が実現するかわからない状況だが、双方とも表向きは強い意欲を見せていることになる。

産経は「中国が習氏訪日の延期を自ら持ちかければ、新型コロナウイルスを押さえ込めないとの印象を国際社会に与えかねない。逆に訪日すれば「終息宣言」の演出にもなり、メンツをかけて予定通りの訪日を実現しようとする」とした。

これと関連し日本政府関係者は「日本から『無理なさらないでください』と言ってもらいたいはず」との見方を示すが、もし実際に日本がそうした場合には「日本が延期を言い出した」と利用されかねないと懸念する。

さまざまな理由から日本と中国とも顔色をうかがいながら保身を図っているということだ。

日本側は天皇と安倍晋三首相のスケジュールなどを考慮して習主席の訪日可能日を伝えているが、「まだ何も回答はきていない」と産経は伝えた。

【私の論評】中国が「反日統一共同戦線」構想を取り消さない限り、日中戦争は継続中であると心得よ(゚д゚)!

新型肺炎感染者の増加が連日報じられている日本ですが、中国全土からの渡航禁止が実施されない状況に対して疑問の声も上がっています。有事である現在の日本の状況にあっても対中関係改善を優先する政府ですが、このようなことをしても政府が報われることは永遠にないでしよう。

日中関係が、急速に改善されているようにみえます。確かに、尖閣中国漁船衝突事件があった2010年や、尖閣国有化の2012年のような「超緊張関係」よりは良いのかもしれませんが、周近平の訪日が決まっても、中国による尖閣への挑発は続いています。

さらに、現在の日中関係は、異常です。新型コロナウイルスの感染者が日本国内でも増えています。この際最も重要なのは、他国でも普通に実施されているように、日本も中国全土からの渡航を禁止することです。

新型コロナウイルス
ところが日本政府は、この当たり前のことをしません。日本政府が習近平に忖度しているのでしょう。つまり、今の日本政府は、国民の安全よりも習近平のご機嫌を最優先していることになります。それでも、日本政府が長期的に中国から報われれば良いのかもしれません。しかし、日本政府の「忖度」が報われることはありません。

1989年、天安門事件で中国は世界的に孤立しました。中国指導部は、どうやってこの危機を克服したのでしょうか?彼らは、「世界一純真でだまされやすい日本を利用して孤立から脱却しよう」と考えました。

そして、彼らは日本に接近しはじめました。1992年、天皇皇后両陛下が、訪中されました。これを見た欧米諸国は、「裏切り者の日本は、巨大な中国市場を独占するつもりだ!」と焦ります。そして、1993年から中国と欧米の関係も改善されたのです。日本は、中国の苦境を救ったのです。

問題は、この後です。中国は、「利用済み」の日本を捨てました。どのように捨てたかといえば、1994年、江沢民政権は、国内では「反日教育」を、国外では「反日プロパガンダ」を精力的に行うようになったのです。

これは、「日本を米中共通の敵とすることで、米国が二度と中国を叩かない環境をつくる」という戦略に基づいた動きだったのです。この戦略がうまくいき、クリントン政権は熱心にジャパン・バッシングをしていました。

なぜ、中国は、これほど見事に日本をだませるのでしょうか。それは、中国指導部の「哲学」が「だますこと」だからです。彼らが信奉しているのは、「孔子」ではなく「孫子」です。

孫子はいいます。
兵は詭道なり(戦争は、だましあいである)
つまり、戦争中は「だますこと」が「善」とされるのです。では、今は戦争中なのでしょうか。戦争中ではないのでしょうか。

彼らは、こう考えます。「政治は、武器を使わない戦争である。戦争は、武器を使う政治である」。だから、「平時」でも「戦時」でも、彼らはいつも「戦争中」と考えるのです。だから、「いつでもウソをつくのは善である」と考えるのです。これ、「中国人はそうだ」といっているのではありません。「中国の指導者がそうだ」といっているのです。

天安門から30年が過ぎました。中国は、また孤立しました。それで、また同じように、日本に接近してきたのです。世界一純真でだまされやすい日本政府は、過去の失敗に学ばず、またもや「コロリ」とだまされたようです。

習近平が国賓訪日すれば、「天皇陛下、是非ご訪中ください」というに決まっています。天皇陛下は立場上拒否できないので、訪中されるでしょう。1980年代から1990年代の初めに起こったことが、また起ころうとしているのです。日本政府は、同じ失敗を繰り返そうとしているようです。

失敗といえば、第2次大戦時、日本はナチスドイツに接近して破滅しました。今度は、「ウイグル人100万人を強制収容」し、「現代のナチスドイツだ」と批判されている中国に接近しています。また亡国の道を驀進しています。

中国指導部の「ウソ」については、話せばキリがありません。最後にこれに触れないわけにはいかないでしょう。2012年11月、中国は、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線をつくって、日本を破滅させよう!」と提案しました。

彼らは、「日本には【沖縄の領有権はない!」「米国も反日統一共同戦線に引き入れる!」と宣言しました。卒倒物のこの話。このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【国難突破】習政権が目論む“情報洗脳的世界支配” 日米連携で中国「情報謀略網」解体を―【私の論評】2012年から日中は戦争状態!なるべく多くの国々と同盟関係になることが日本を守る(゚д゚)!
   マイク・ペンス米副大統領が201年10月4日、ワシントンでの講演で、かつて米国政府が

   したことのない中国非難を展開した。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「反日統一共同戦線」がらみのところを以下に引用します。

多くの人々は気づいていないようですが、実は日本もすでに、中国と戦争状態に入っています。とはいいながら、最近日中関係が、一見改善されてきているようにみえます。安倍総理は昨年(ブログ管理人注:2017年)11月11日、ベトナムで習近平と会談しました。雰囲気は、きわめて友好的で、両首脳は関係改善への意欲をはっきり示しました。さらに、今週は安倍総理が中国を訪中する予定です。 
日中関係が改善されるのは、良いことのようにもみえますが、決して油断することはできないです。中国は6年前、尖閣、沖縄を奪取するための戦略を策定しました。「広義」での「日中戦争」は、もう始まっているのです。 
私自身「日中戦争が始まった」という事実に大きな衝撃を受けたのは2012年11月15日のことでした。 
私はこの日、「ロシアの声」に掲載された「反日統一共同戦線を呼びかける中国」という記事を読みました(現在リンク切れ状態になっています)。この記事には衝撃的な内容が記されていました。 
これを読み、私は「日中戦争が始まった」ことを確信しました。そうして、中国は米国を「反日統一共同戦線」に米国を引き入れようとしましたが、米国はそれに応じなかっために、米中もまもなく戦争状態に入りました。これは、はっきりしませんが、おそらく2016年か2017年頃だと考えられます。
  ・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」の創設を提案した。 
  ・「反日統一共同戦線」の目的は、日本の領土要求を断念させることである。 
  ・日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣および沖縄である。 
  ・日本に沖縄の領有権はない。 
  ・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。

中国は、現在でも尖閣への挑発をやめていません。本来であれば、「反日統一共同戦線」戦略をやめると宣言して、日本に接近をはかるなどのすべきです。

それをしないで、いくら日本に接近しようとしても、日本としては「反日統一共同戦線」がある限りは、日本は戦線布告されたままてあると捉えるべきです。

日本と中国とは今でも戦争状態にあるのです。戦争というと、日本人の多くは、軍隊同士の衝突や戦闘ばかりを思い浮かべるでしょうが、戦争はそれだけではありません。情報戦などもその部類です。日本は、今のままだと、中国のとの情報戦、すなわち戦争に負けてしまいます。

日本人が決して決して決して忘れてはならないこと。それは、中国指導部の【本質】です。これは、永遠に変わりません。かつて米国も中国にだましつづけられましたが、トランプ大統領になってからは、随分変わり、現在では超党派で中国に対峙しています。

トランプ大統領がディールで中国と関係を改善しようとしても、現在の米国議会はそれを許しません。トランプ大統領の次の大統領も、中国と関係改善としようとしても、それはできません。ここ暫く、米国が中国と対峙するのは米国の意思となりました。

日本人も、中国とは「戦争中」であるという事実を忘れるべきではありません。親中派、媚中派の議員らは、このことを理解していない、馬鹿です。彼らが、我が物顔で動き回れは、日本は中国との戦争に勝つことはできません。

まずは、彼らを議員にならせないこと、それでも議員になった場合は、徹底的に監視して、中国の手先として動けなくするか、中国の手先である事実を明るみに出して、政治生命を断つべきです。

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2020年2月23日日曜日

国民の生命は二の次!?中国に媚びを売る媚中派たち “甘すぎる”日本の新型コロナ対応 識者「韓国を歯ぎしりさせた「戦略的放置」を中国にも断行すべき」―【私の論評】安倍政権は、国民の声を聴き、特亜三国に「economic statecraft」を実行せよ(゚д゚)!

国民の生命は二の次!?中国に媚びを売る媚中派たち “甘すぎる”日本の新型コロナ対応 識者「韓国を歯ぎしりさせた「戦略的放置」を中国にも断行すべき」

安倍首相(右)は習主席との距離を置くべきだ

 中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。中国本土では22日朝時点で、感染者は7万6000人以上、死者は計2345人。日本国内でも、北海道と埼玉で子供の感染が発覚して、感染者は計743人(クルーズ船の634人を含む)となった。日本政府の初動対応の遅れが指摘されているが、背景には、恩を仇(あだ)で返す、中国への甘すぎる対応があったとの見方も根強い。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、韓国を歯ぎしりさせた、日本の「戦略的放置」を中国にも断行すべきだと強調した。安倍晋三政権は、国民と旅行者の生命と健康を守るため、中国の入国拒否の対象地域を拡大するとともに、対外発信力の強化を検討している。


 新型肺炎は世界にますます拡大し、日本は初期対応のまずさから「世界第2位の汚染国」のイメージを世界中に植え付けてしまった。媚中派の自民党を含む議員や官僚などが、国民の健康や生命を二の次にして中国に媚びを売ることに懸命になったことが惨劇を招いた。

 国民がマスク不足で右往左往しているときに、マスクだけではなく、防護服まで中国に贈呈した政治家、官僚、役人は、騒ぎが終わった後、厳しく断罪すべきである。しかも、共産党独裁で利権がはびこる中国で、それらの善意の品が本当に必要な人々に届くのかどうかも疑問だ。



 安倍晋三政権の対応のまずさを指摘する声もある。確かにそれは否定できない事実だが、より根本的な問題は「平和ボケ日本」の「有事対応」の欠如にある。

 日本の民主主義、自由主義は素晴らしいが、それはあくまで平時の話だ。日本よりもさらに自由や民主主義を尊重する米国でさえ、「有事に私権の制限」が行われるのは当たり前だ。

 米国では、全ての中国からの入国者を即時に拒否し、米国人のリスクを抱えた帰国者は2週間きっちりと隔離される。日本が世界で2番目の感染国になったのは、事前の法整備も含めた「有事対応」の欠如による「人災」と言ってよい。

 日本政府として中国への今後の有効な対応は「戦略的放置」である。この戦略はストーカーのように付きまとう韓国に対して極めて有効であったことは、その後の「経緯」が証明している。

 韓国に効き目のある「戦略的放置」を、安倍政権が中国になぜ適用しないのか。自民党を含む国会議員の中国利権が韓国利権に比べてはるかに大きいからなのかもしれない。

 しかし、過去の中国の日本に対する態度を振り返れば、「戦略的放置」が急務であるとわかる。

 まず、1972年の日中国交回復(正常化)を米国の頭越しに実行した田中角栄元首相は、激怒した米政府にロッキード事件でつぶされたと噂される。

 しかし、これによって鎖国状態の中国が世界に開かれなければ、いくら●(=登におおざと)小平元国家主席が優秀でも「改革開放」を成功させることができず、中国の繁栄はなかった。改革開放の初期には日本政府や日本企業が全面的に支援した。

 その大恩を、1989年の天安門事件の後、欧米からの非難の矛先をかわすための「あることないこと」をネタにした反日運動で返した。しかも、92年に天皇陛下が訪中されたことにより、天安門の大虐殺の責任を結果的に封印してしまった形だ。

日本中の国民が苦しんだ東日本大震災直後には、ひっきりなしに領空(海)侵犯を激化させた。さらに今、自国の新型肺炎対策に数々の支援を行ってくれている日本への領空(海)侵犯を激化させている。

 日本人の優しさ、思いやりは世界中から称賛されるが、「恩をあだで返す国」にいつまでも「寄り添って」いるのでは、単なるお人よしである。

 共産党独裁によって苦しんでいる中国人民に手を差し伸べたい心優しい日本人は多いと思うが、中国共産党に対する「戦略的放置」こそが、中国人民を救うことになるのだ。


 すでに米下院は、ウイグル、香港、チベットに関する人権法案を次々と可決している。共産主義中国に対し冷戦時代のソ連邦や、第二次世界大戦下のナチスドイツに準じる扱いをしているというわけだ。

 日本は第二次世界大戦でドイツと同盟国になったため、戦後長い間苦しんだ。今回は同じ過ちを繰り返さず、徹底的な「戦略的放置」を粛々と実行すべきである。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】安倍政権は、国民の声を聴き、特亜三国に「economic statecraft」を実行せよ(゚д゚)!

上の記事では、"韓国を歯ぎしりさせた、日本の「戦略的放置」を中国にも断行すべき"とありますが、私がこの「戦略的放置」が始まったころには、とうとう日本も、「economic statecraft(経済的な国策)」をやり始めたと思いました。

「economic statecraft(経済的な国策)」とは、経済的な手段を用いて地政学的な国益を追求する政策です。欧米などでは認識され、政策に応用されていますが、現時点では日本にない概念であり、日本語に直訳するのは難しいです。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の「安全保障環境」は大丈夫? ロシア“核魚雷”開発、中国膨らむ国防費、韓国は… 軍事ジャーナリスト「中朝だけに目を奪われていては危険」―【私の論評】日本は韓国をeconomic statecraft(経済的な国策)の練習台にせよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、economicstatecraftは、日本にはない概念なので、ほとんど報道されませんが、多くの国々がこれを意図して意識して、適用しつつあります。米国、ロシア、中国などは明らかににこれを意図して意識して実施しています。

韓国は、そのような戦略的な考えはないようですので、戦略的に行うというよりは、散発的にその時々で戦術的な反日のような、economicstatecraftとはいえないようなことを実行しているだけだと思います。

北朝鮮は、経済的にあまりに小さいので、そもそもeconomicstatescraftなどできないのだと思います。北朝鮮が経済的になにかの政策をとっても困る国はないです。だからこそ、核ミサイル開発に踏み切ったのでしょう。

それで、米国と首脳会談にまで持ち込むことができたのですが、最近ではその手が使えず、使えば、孤立したり米国の軍事攻撃を招いてしまいかねないので、結局は使えず、八方ふさがりの状況になっています。

私は、本当は、韓国に対する「戦略的放置」も、economicstatecraftの一環で行われているのではないかと思いますが、日本国内はこれを発動すべき韓国、北朝鮮、中国に対して過度に忖度する勢力が多いので、安倍政権とししては、はっきりeconomicstatecraftであるといえないところがあるのだろうと思います。

これに関しては、日本国内での新型肺炎の感染が深刻になることがあらかじめ、予想されたにもかかわらず、中国からの渡航者を全面的シャットダウンできなかったし、現在でもなおそうしないということから、日本には過度に中国に忖度する勢力が存在することが明らかになったと思います。

おそらく、規模の違いはあっても、日本には特亜3国に忖度する勢力があるのは間違いないです。この勢力は左翼系は無論のことですが、安倍政権の中にも存在します。

安倍政権が結局、習近平を国賓として招くことを未だに中止する動きがないこと、韓国に対しても、さらなる制裁を課すようなことは全く考えていないような態度をとり、結局韓国に対しても、「戦略的放置」にとどまっているのもその証であると思います。

日本は中国にかなり依存しており、中国との関係が悪化すると大変なことになるとか、技術面でも最近の中国は発展したので、日本は中国に技術的にもかなり依存しているなどと思いこむ人も多いようですが、それは事実ではないです。

中国向け輸出は、日本のGDPの3%内外であり、中国向け投資もGDPの1%程度にすぎません。輸入に関してもわずかなものであり、しかも自国での生産や他国からの輸入で代替できるものがすべてです。

最近の事例でいうと、たとえばマスクは日本では中国から輸入が80%を占めるので、最近は日本では全国的に品薄になっています。ただ、いずれユニ・チャームなどの国内メーカーが増産しつつあるので、いずれ是正されるでしょう。中国からの輸入はこのようなものばかりです。

日本からの中国向け輸出に関しては、中国にとって死活的なものが多いです。特に工作機械や精密機器などは中国では製造できず、これがなくなると中国は製造が滞ることになります。

中国の技術はかなり高いと思われていますが、実体は高度な技術は米国や日本などの先進国から盗んだものを組み合わせているにすぎません。驚いたことに、中国では高速鉄道や航空機のネジ・ボルトすら国内で製造できないのです。

このような状況だと、日本が中国との関係を断ったにしても、無論マスクのように一時品薄になるようなことがあっても、いずれ他国からの輸入に切り替えたり、自国で製造するようにすれば、日本としては何も困らないわけです。

であれば、日本は中韓に対してeconomicstatecraftを適用しても、ほとんど困ることはないです。日本は中国や韓国に対してeconomicstatecraftを十分実行し得るのです。

韓国に関しては、最近のあまりの暴虐ぶりに日本国民の中にも、かなり韓国政府に対する批判が高まり、国内親韓派などは、無視して安倍政権は、韓国に対して「戦略的放置」ができるようになりました。

韓国ソウルの延世大学。新型コロナウイルスへの予防を呼びかける垂れ幕の下を歩く学生(2月10日)

であれば、ウイグルやチベット、最近では香港に対して人権を無視した、弾圧を継続しているとか、武漢肺炎の危機がありながらも、尖閣への挑発をやめないとか、習近平が未だ日本への国賓訪問を中止しないなど、中国の最近の暴虐ぶりが国民に周知されれば、安倍政権は中国に対して「戦略的放置」ができるようになる可能性は十分にあります。

それどころか、新型肺炎でこれからも犠牲者が出たり、様々なイベントが中止されたり、実体経済に影響がでれば、安倍政権や親中派に対して怨嗟の声があがるようになるでしょう。

安倍政権としては、政権運営を円滑にするために、二階氏のような親中派に対して党内政治で忖度するのか、それとも国民の声に耳を傾けるのか、選択を迫られる事態になることでしょう。

私としては、安倍政権は、国民の声をきき、特亜三国に関しては「戦略的放置」以上に、「economic statecraft(経済的な国策)」を実行していくべきものと思います。

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2020年2月22日土曜日

中国人が世界知的所有権機関のトップに?―【私の論評】日米とその同盟国は、火事場泥棒に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!


岡崎研究所

 2020年3月5日~6日、スイスのジュネーブでは、世界知的所有権機関(WIPO)のトップである事務局長を決定する選挙が行われる。


 WIPOは、国連の専門機関の1つで、192か国が加盟する。知的財産権に関する国際的ルールの策定や国際特許の運用・管理、さらに知的財産保護に関する新興国・途上国の支援等を行う国際機関である。任期6年のWIPO事務局長の選出は、加盟国のうち83か国で構成されるWIPO調整委員会における投票で決定される。今回3月に行われるWIPO事務局長の選挙で、日本政府は、WIPO特許協力条約(PCT)法務・国際局上級部長である夏目健一郎氏を次期事務局長候補として擁立したが、中国も候補を擁立していて、それが米国で波紋を呼んでいる。

 米中間では、1月15日、米中貿易戦争の休戦協定ともいえる「第一段階の米中貿易合意」が署名された。この米中間の貿易合意が達成されるまでの交渉では、様々な課題が論議されたが、その中の1つが、知的財産権の保護の問題だった。中国側の産業スパイ、サイバー攻撃等による米国企業の秘密情報の窃取、中国に資本進出する米国企業に対する強制的技術移転等、中国のやり方に米国側は抗議し、中国共産党政府がより強力に米国の知的財産権を保護するよう協力を要請した。報道によると、中国は、知的財産権のより強力な保護を約束し、「第一段階の米中貿易合意」がとりあえず達成されたという。

 このような中、世界の知的財産権を取り扱う国際機関WIPOのトップに中国人が就任するのは如何なものかと疑問を呈する声が米国内では起きている。1月31日付で、米ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるロウギンは、WIPO事務局長に中国人が就任することは、銀行強盗が頭取になるようなもので、知的財産権の保護に害をもたらすと論じた。

 また、2019年12月14日付のトランプ大統領宛の書簡で、超党派上下両院4名の議員(アーカーソン州選出のトム・コットン共和党上院議員、ニューヨーク州選出のチャック・シューマー民主党上院議員、カリフォルニア州選出ジミー・パネッタ民主党下院議員及びウィスコンシン州選出マイク・ギャラガー共和党下院議員)が連名で、中国が指導するWIPOは米国の経済安全保障を危険に晒し、知的財産権や世界的標準ルールへの脅威になりかねないと警告した。

 ロウギンは論説の中で、もし中国がWIPOを支配するようになれば、知的財産に関するすべての基本的情報が直接、中国政府の手に行くことになり、国際的特許システムへの基本的な信頼を切り崩すことになる、と警告する。ロウギンによれば、中国は国際機関を世界のためではなく、自国の利益ないし中国の世界制覇のために利用する。過去の具体例を幾つか見れば明らかだとするが、ここでは一つのみ挙げておく。

 例えば、2015年、中国は国際電気通信連合(ITU)のトップの座を射止めた。その後、ITU は中国の「一帯一路」構想を推進し、中国の電気通信の巨人ファーウェイを守るなど、北京との協力を急激に増やした。また、国連の経済社会局の局長は中国の高官だが、この局は「一帯一路」構想を推進して、中国政府と連携して中国内に「ビッグデータ研究所」を作っている。

 中国が国際機関の事務局長を多く取ろうとしていること、そして取った後、そのポストを中国の利益のために利用していることを、日本は理解しなければならない。

 通常、国際公務員は、その所属する国際機関の利益のために働く存在であり、出身国の利益拡大のために努めることは差し控えることが求められる。そういう中立性が必要である。

 中国も自国民で国際公務員になる人にはそう求めるべきであり、自国の利益の増進をするように求めることはやめるべきであろう。中国にそういうことを明確に要求してもよいのではないかと思われる。

 この問題は、米国、欧州諸国、日本が問題を認識し、対応ぶりを協議する良い材料のように思われる。とりあえずは、WIPOについて日米欧が協力を強化し、中国に対抗するのが良いと思われる。日本は夏目氏を擁立しているが、ワシントン・ポスト紙の報道では、米国はシンガポールの候補を推しているようである。日米両国で協力し、どこかで折り合いをなし、上手く中国候補のWIPO事務局長就任を阻止できれば良いのだが。

【私の論評】日米とその同盟国は、中国に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!

中国の王毅外相が昨年11月、王彬穎氏の擁立を発表すると、「中国は欧米企業から知的財産を盗む国として知られている。その国の出身者がWIPO事務局長に就任するなんて、悪い冗談だろう」という声が聞かれたほどです。もっとはっきり言ってしまえば、中国人をWIPOのトップに据えるということは、火事場泥棒に火消しを依頼するようなものです。

王彬穎氏はWIPOに勤務する前は中国国家工商行政管理総局に勤めていましたから、中国共産党の主要メンバーの一人と見てほぼ間違いないです。

王彬穎氏

国連のシステムの内で、中国の影響力が日増しに増大しています。屈冬玉(Qu Dongyu)が昨年8月、国連食糧農業機関(FAO)の事務局長に就任し、国連専門機関のトップを務める中国人が4人に増えました。

国連の専門機関のトップに就いた最初の中国人は、2007年に世界保健機関(WHO)の指揮を執ったマーガレット・チャンでした。 6年後、李勇(Li Yong )が国連産業開発機構(UNIDO)の局長に就任しました。2015年に赵厚麟(Houlin Zhao)が国際電気通信連合(ITU)の事務局長に就任し、柳芳(Fang Liu)が国際民間航空機関(ICAO)の事務局長に就任しました。現在も在職中である最後の3名の就任は、オバマ大統領の政権下のことでした。

李勇

要するに、トランプが大統領に就任する以前から、国連における中国の影響力は高まっていたのです。前の政権下では注目されなかったことが、なぜ今注目されているのかとは別問題として、注目され対処されるべき問題なのである。

中国の影響力が拡大するにつれ、米国の利益と対立する政策を主張する力や、中国が厄介な問題であると見なす国連の動きを鈍化させる力も大きくなっています。

たとえば、中国が拒否権を行使して国連安全保障理事会の決議をブロックしたのは、国連が中華人民共和国を公式に政府として認めた1971年以来、12回です。さらに、これらの拒否権は、ビルマ、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの抑圧的な政府を、その政策に対する国連の制裁と非難から保護するために投じられたものです。

ブルッキングス研究所の調査によると、中国は2013年以降、国連人権機関で積極性を増し、「国際的な規範とメカニズムの独自の解釈」を推進しています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国の当局者たちが国連の規則に違反して国連スタッフを脅迫し、中国の政策に批判的な非政府組織に嫌がらせをしていると報告しています。

さらに、国際公務員は中立で独立した立場であるはずですが、中国は国際機関で働く中国人に、中国の利益と政策を有利に進めることを期待しています。 2018年10月、中国は国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉(Meng Hongwei)総裁を逮捕し、権力の濫用と「党の決定に従う」ことを拒否したとして彼を告発しました。

中国政府の指示に従わないとどのような事態が待ち受けているかを知っている柳芳(Fang Liu)が、台湾が主要な航空交通ハブであるにもかかわらず、ICAO(国際民間航空機関)のトップの地位を利用して台湾のICAO会議への出席を妨げたのも不思議ではありません。

柳芳

中国が経済的および軍事的に強化されると、国連における中国の影響力や存在感も同様に成長します。政治的および財政的現状から、米国はこの流れを完全に覆すことはできません。ただし、中国の優先事項を考えると、米国や我が国も含めた志を同じくする国々は、この流れの影響を無視することはできないです。

それに、中国には「国防動員法」という恐ろしい法律があります。中国にとって危急存亡のときには、国連組織のトップであろうが、誰であろうが、海外に在留する中国人も含めてすべて中国共産党の指示通りに動かすことができます。中国人は善人・悪人にかかわらず、いざというときは、全員中共の手先として動かすことができるのです。

米国は、中国の影響を合理的に抑え、中国のリーダーシップが米国の利益を直接損なうことのない組織の部分に制限して向けられるようにするための、戦略的措置を講じるべきです。

これには、中国の利益と戦術の詳細な評価に基づく広範かつ包括的で長期的な戦略が求められます。米国および主要な国際機関で志を同じくするリーダーシップを促進し、国際機関で米国人等の雇用を促進して、米国の圧力を意図的かつ慎重に行うことが必要です。

米国は昨年の米中貿易交渉で、このブログでも解説したように、7項目の合意に至りました。知的財産権の保護などは、当然のことながら含まれていますが、最後の項目は、はやい話が米国が合意項目六項目を事実上監査するというものです。米国は、中国が知的財産保護から逸脱し続けるなら、ためらうことなく、中国に新たな制裁を課すことなるでしょう。

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2020年2月21日金曜日

フィリピンの「訪問米軍に関する地位協定」破棄は中国に有利?―【私の論評】米国、中国との距離を再調整しつつあるフィリピン(゚д゚)!

フィリピンの「訪問米軍に関する地位協定」破棄は中国に有利?


フィリピンが先日「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を決めたことが、大きな議論を呼んでいます。

協定が破棄されればフィリピンで行われていた米軍による演習やサポートがなくなり、フィリピンにとって大きな影響があるのでは?と言われていますが、実は最も喜んでいるのは中国・・かもしれません。

アメリカのトランプ大統領は「節約になるし、特に問題ない」と発言していますが、アメリカ国防総省の高官は、「協定を破棄すればアメリカの影響力が落ち、中国にとって有利になる」と指摘しています。

また、アメリカ国防総省の中国担当スブラジア次官補代理も、「アメリカとフィリピンの軍事的な関係がすぐに壊れるわけではないが、中国はアメリカを追い出そうとしている。これはアメリカと中国の競争だ。」と述べました。

つまり、アメリカがいなくなれば、中国はフィリピンを侵略しやすくなる、というような意味でもありますね。

南シナ海問題ではアメリカのサポートもあって何とか中国の動きを抑えてきているフィリピンですが、協定がなくなれば中国はもっと自由に動けるようになるかもしれません。

さらにスブラジア氏は、「中国は各国からアメリカを引き離そうとしている」とコメントし、警鐘を鳴らしました。

今のところドゥテルテ大統領は破棄決定を撤回するつもりはなさそうですが、アメリカはどうにか説得しようと必死になっているようにも見えます。

フィリピン国民としても、中国の勢力が拡大し、それが自国に及んでくることは誰も望んでいないでしょう。

協定破棄が有効になるまでにはまだ半年近くありますが、この間にドゥテルテ大統領がどう動くかは、世界中が注視しています。

【私の論評】米国、中国との距離を再調整しつつあるフィリピン(゚д゚)!

ドゥテルテ比大統領

2016年6月にドゥテルテ(Rodrigo Duterte)現大統領が就任した後、フィリピンの対外政策は大きく変わりました。ドゥテルテ大統領は、米国との同盟関係を強化し中国と対決姿勢をとった前アキノ政権の対外政策を180度転換し、米国と距離を置き、中国に接近しました。

その理由は、経済開発の重視、麻薬など治安対策に対する欧米からの非難への反発、中国とコネクションを持つ華人の政権への影響力、個人的な対米不信など様々に取り沙汰されていました。ただ、就任から4年が経とうとする現在、米中対立の激化をはじめとする戦略環境の変化に合わせ、フィリピンは米国や中国との距離を再調整しています。

再調整のプロセスにおいて鮮明になったドゥテルテ政権の傾向は、中国との経済協力を強化する基本路線を保ちつつ、対米関係で「南シナ海カード」を使い、より多くの関与を引き出そうとする姿勢です。

しかし、深化する経済協力によって、南シナ海におけるフィリピンと中国の領有権争いが鎮火したわけではないです。南シナ海では依然として、フィリピンと中国の間でトラブルが頻発しています。

それらは主として、係争海域における、中国によるフィリピンに対するハラスメントです。例えば2019年初から4月にかけて、フィリピンが実質的に管理するスプラトリー諸島のパグアサ島近海に、200隻以上の海上民兵の一部とみられる中国漁船が大挙して押しかけました。

この中国の示威的な行動に対し、フィリピン政府は外交ルートで中国に抗議しました。また同年6月には、リード礁付近で停泊中のフィリピン漁船に中国漁船が衝突し、フィリピン漁船が沈没する事案が発生しました。フィリピン世論は、中国漁船による「当て逃げ」として対中批判を強め、マニラでは反中デモも行われまし。

こうした中国のハラスメントやトラブルに対してドゥテルテ大統領は、時折強硬な発言によって世論の弱腰批判を避けつつも、トラブルの火消しを念頭に穏当な発言に終始しました。

そうした大統領の発言は、例えばパグアサに中国漁船が押し掛けた際には「(同島に展開する)兵士は自爆攻撃の用意がある」など挑発的な発言を行ったかと思えば、フィリピン漁船の沈没事案を「ちょっとした海難事故」と形容するなど、一貫性を欠いていました。

また2019年6月にバンコクで行われたASEAN首脳会議の席上、ドゥテルテ大統領はASEANと中国の間で進行中の行動規範(Code of Conduct:COC)協議の遅れに対し、失望と不満を表明しましたが、これも本人の真意か、世論向けのリップサービスであったのか、判然としないものでした。

南シナ海問題への対応の文脈で、ドゥテルテ政権は対米関係の再調整をも図ろうとしています。ただそれは、距離を置いていた米国へ再接近を図るといった単純なものではなく、対中関係に関する自らの立ち位置を変えないまま「南シナ海カード」を使って米国から安全保障上の関与をより多く引き出そうとする戦略的な動きです。

昨年末以来、フィリピン政府は米国に対し、同盟条約の見直しを要求しています。米比同盟の礎となる条約は、1951年に締結された米比相互防衛条約ですが、有事の際の規定は次のようになっています。
第4条 各締約国は、太平洋地域(the Pacific area)におけるいずれかの締約国に対する武力攻撃(armed attack)が、自身の平和と安全にとって危険であることを認識し、憲法上の手続きに従って共通の危険に対処するために行動することを宣言する。
フィリピン政府内で見直し論争の中心にいるのは、ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)国防相です。国防相は昨年末、米比相互防衛条約を見直すべきであり、見直しが不調に終わった場合は条約の破棄もありうる、とまで発言しました。

ドゥテルテ大統領は対中接近の理由の1つとして「同盟国米国は、南シナ海有事に際してフィリピンのために中国と戦う意思はない。フィリピンも中国と戦争する力はない。そのためフィリピンは中国とは対決せず、対話姿勢をとる」という論理に言及しています。

この理屈は故なきことではなく、スカボロー事案でのフィリピンの失望がありました。2012年、スカボロー礁が中国との対峙の果てに中国の実質的な管理下となった際にも、米国は軍事介入することはありませんでした。フィリピン政府は、米国が南シナ海の領有権問題で中立を保ち、有事の際に同盟条約に基づきフィリピンを支援することを確約しないことに、不満を強めていました。

そのためロレンザーナ国防相は、南シナ海有事に際して米国がフィリピンの防衛に確実にコミットするよう、条約の見直しを要求しました。要求のポイントは2点あり、条文にある「太平洋地域」と「武力攻撃」の定義です。

ロザンナーレ比国防相

国防相は、南シナ海有事の対応に沿う形で、定義を明確化するよう求めました。フィリピン側の不満を受け、ポンペオ国務長官は2019年3月にフィリピンを訪問した際、「南シナ海は太平洋地域の一部であるため、南シナ海におけるフィリピン軍、航空機、公船に対する武力攻撃は、米比相互防衛条約第4条における相互防衛義務に該当する」と述べ、南シナ海有事におけるフィリピンの防衛に関し、以前より踏み込んだ発言を行いました。

またアメリカのソン・キム(Sung Kim)駐フィリピン大使は、海上法執行機関や武装漁民を念頭に「外国政府の意を受けた民兵よる攻撃も、『武力攻撃』に含まれうる」と述べ、フィリピン側の要求に応える形をとりました。

政権内では同盟見直しに関する関係者の発言にはバラつきがあり、例えばロクシン(Teodoro López Locsin Jr.)外相は見直し不要論者であり、ドゥテルテ大統領自身はこの問題に関し意見表明を行っていません。

こうしたやり取りを見ていると、ドゥテルテ政権は米国との間で同盟に基づく協力関係を強化するというよりは、フィリピン側の不満を表明し、米比同盟の不備を明らかにし、政権の現在の対中アプローチを正当化しようしている観さえあります。

実際、2019年5月の総選挙ではドゥテルテ陣営が大きく勝利して政権基盤を盤石にすると共に、大統領自身の支持率も高い水準を保っているため、ドゥテルテ大統領は、自らの政策の優先順位に一層確信と自信を深めているように見えます。

次世代移動通信システムの5Gをめぐる米中の対立に関しても、ロペス(Ramon Lopez)貿易相は、ファーウェイをフィリピン政府として必ずしも排除しない意向を示しました。これに対してキム大使は、アメリカとフィリピンの間で同盟関係に基づく軍事情報の共有が困難になる可能性があるとの懸念を示しました。

ドゥテルテ政権関係者から同盟の解消にまで言及がある中で、ファーウェイを導入しないよう米国がフィリピンに対して圧力をかけても、効果は未知数です。総じてフィリピンは、現在の中国との関係のあり方を変えるつもりはなく、今後も中国寄りの対中・対米関係の維持と、状況に応じて適宜再調整を行う、という対応をとると考えられます。

その方向性の中で、エスパー米国防長官は13日までに、フィリピン政府から「訪問米軍に関する地位協定」を破棄するとの通知を受けたとし、遺憾の意を表明しました。

エスパー国防長官

協定は1988年の締結で、米軍用機や艦船の比国内への自由な寄港を承認。米軍人には入国査証や旅券の対応などの規制が緩くなっています。

最近訪比したばかりだった長官はベルギー・ブリュッセルへ向かう機中で、廃棄の通知は届いたばかりだとし、米国の対応を決める前に米軍司令官の意見を聞く必要があると記者団に述べました。

トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に、「彼らがそうしたいならそれでいい。多額の金を節約できる」と述べ、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とは「とても良好な関係」にあるとアピールしました。

フィリピンでは、地位協定をめぐり議論が割れています。左派や国家主義者らは、罪に問われた米兵の特別扱いを保証するものだと非難しています。一方、地位協定を破棄すればフィリピンの防衛力が低下し、南シナ海における中国の野望を阻止するという米国の目標にも支障が出ると擁護する声もあります。

ドゥテルテ政権の麻薬犯罪撲滅作戦では、容疑者多数が当局により殺害され、欧米諸国を中心に人権侵害との批判が強いです。

問題なのは、ドゥテルテ大統領が批判に耳を貸さず、欧米への反発から、人権状況に口出ししない中国にすり寄りつつあることです。

強権や人権弾圧で欧米の批判を受ける国に経済援助を手に近づき、影響下に置くのは中国の常套手段です。ASEANでは親中派のカンボジアがその典型ですが、フィリピンの立場は特別です。

ハーグの仲裁裁判所は南シナ海での中国の主張を退けました。勝訴した当事国がフィリピンであることを忘れるべきではありません。

裁定は中国の海洋拡大をやめさせる大きな拠り所であり、フィリピンは本来、先頭に立って中国の非を鳴らすべきなのです。裁定が中国から経済援助を引き出すカードであってよいはずはありません。

目先の利益に飛びつき、南シナ海の不当な支配を許してよいのでしょうか。対中連携を再確認する形で、破棄撤回を決断すべきです。

トランプ大統領も「多額の金を節約できる」などとして、「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を許容すべきではありません。ただし、トランプ大統領としては、様子見というところなのだと思います。南シナ海の安全保証に後退があるようなことだけは、避けてもらいたいです。

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2020年2月20日木曜日

ロンドン市長選候補、五輪代替開催提起は火事場泥棒―【私の論評】武漢肺炎の対処法やTwitter等での発言内容が、人を客観的に分析する手がかりとなる(゚д゚)!


ショーン・ベイリー氏

ロンドン市長選挙に保守党公認候補として出馬する予定のショーン・ベイリー氏が自らのツイッターにツイッターに以下のような投稿をし、代替開催に意欲を見せている。

「ロンドンは2020年にオリンピックを開催できます。我々にはインフラと経験があります。コロナウイルスの大流行により、世界は我々が一歩踏み出すことを必要とするかもしれない。市長として、私はロンドンが呼びかけに答え、オリンピックを再び開催する準備ができていることを明確にします。」

このコメントはすでに大きな反発を呼んでいるが、非常に浅はかで失礼千万だ。そもそも、ダイヤモンド・プリンセス号はイギリスのP&O社が所有し、船籍はイギリスである。船内での新型コロナウイルス感染の第一義的責任は、所有者と運行会社(これはアメリカの会社)にある。イギリスの船で感染が起きたことにより日本中が大変なことになっているのに、イギリス人としてよくそんなことが言えるなというが正直な気持ちだ。

さらに、ロンドンは2012年に五輪を開催したばかりなのに、そこまでして注目を浴びたいのか、保守党には今では様々なバックグランドを持った政治家がいるのに、なぜこのような時代錯誤的・自国中心主義的な主張をするのかとその強欲さに呆れる。

最後に、五輪開催の時期にロンドンで新型コロナウイルスが蔓延していない保証はない。その可能性も考慮できないような人間は市長候補者として失格である。

五輪を東京で開催できるか否かはここ一ヶ月くらいが勝負だと思うが、仮に今年の夏に開催できなかったとしても、それは日本政府の責任とは言えないだろう。個人的には日本政府のダイヤモンド・プリンセス号に対する対応は間違っていたと思うが、同じような状況で他国の政府だったらもっと上手くやれるという保証はない。日本政府は来年以降も含めて開催時期をずらすことを堂々と主張すべきで、もともと日本が発信源でないコロナウイルスの問題で開催を放棄すべきはない。私は元々五輪には熱心な人間ではないが、そんなことをしたら不等な欧米中心主義に屈したとして後世に汚点を残すので、開催放棄には大反対だ。

【私の論評】武漢肺炎の対処法やTwitter等での発言内容が、人を客観的に分析する手がかりとなる(゚д゚)!

ショーン・ベイリー氏のこのtwitterでの発言で、私は数日前のYouTuberのKAZUYA氏の発言を思い出してしまいました。


ショーン・ベリー氏のこのtwitterへの書き込みは、確かに軽薄の誹りを免れないと思います。彼は、英国内の自分の支持者などに向けて、メッセージを発信したつもりなのでしょうが、このツイートは全世界に向けて発信されています。

当然、世界中の人が見ているわけで、世界中のまともな人が見れば、誰がみても火事場泥棒的なイメージを抱くと思います。それに当の英国内の支援者らも、現状のようにコロナウイルスの感染など、英国内ではまだ深刻では無い状況から、深刻化していけば、ショーン・ベイリー氏の発言のネガティブな面が認識されていくと思います。

実際、ダイヤモンド・プリンセス号船内にいるイギリス人の乗客乗員74人の一部からは、他の国はそれぞれの市民を空路で帰国させているのに、自分たちは存在が「忘れ去られている」ようだとの声が上がっています。

BBCによれば、英首相官邸の報道官は、「我々は、この非常に厳しい状況の中で捕らわれている、すべての人々を気の毒に思っている。(中略)外務省は、今後飛ばすかもしれない帰還便に乗る意向があるかをはっきりさせるため、ダイヤモンド・プリンセス船内にいるすべてのイギリス人と連絡を取っている」と述べたそうです。

報道官はまた、英政府は「船内にいる人々の健康と安全を保証するためのあらゆる選択肢について、緊急に検討」していると明かしたそうです。

英政府の発表に先立ち、イギリス人の乗客デイヴィッド・エイベル氏は、「私たちの存在が忘れ去られているようだ」と述べ、船内にいるイギリス国民を退避させるよう英政府に求めました。(写真下)


デイヴィッド・エイベル氏(右)は、英政府が自分と妻を救出してくれるという確信がほとんどないと語っています。

エイベル氏の息子スティーヴ氏は、ユーチューブにメッセージを投稿。自分の両親が「ストレス」や、28日間も船内にいるという「監禁」の影響を受け始めていると書きました。

「私は、お母さんとお父さんが朝目覚めた時に、何か情報が届けられることを望んでいる。両親には、連絡を入れてもらうことが必要だ」

ショーン・ベイリー氏は、自国民が、日本に停泊している、英国籍のクルーズ船で難儀をしていることを知った上でが、知らないのか、いずれにしても、難儀している自国民のことは、無視してオリンピックの開催を示唆するなど、軽率のそしりは免れません。

今回の、武漢肺炎に関しては、ほとんどがネガティブなことばかりですが、良いことが一つだけあります。

それは、KAZUYA氏がtwitterのコメントに関して主張しているように、馬鹿などが見極められるというのと同じで、このような未曾有のことが起こった場合の反応をうかがっていると、話をしている相手が馬鹿なのか、それとも早とちりの傾向があるのか、物事を良く考えるのか、慎重なのか、慎重すぎるのか、それとも単なるワイドーショー民なのかがわかるということです。

人を見る目を養うのは難しいともいわれていますが、Twitter等のSNSでの発言や、今回のクルーズ船やコロナウィルスに関する考え等を聴いて詳細に分析すると、客観的に相手のことがかなり分析しやすくなります。

岩田健太郎氏

ウイルスなどの感染に関する専門家であれば、たとえば最近の岩田 健太郎氏ダイヤモンド・プリンセス号の防疫体制が脆弱であるとの内容をYouTubeで拡散した行動などが、拙速であったと思われることなどで、岩田氏の評価ができます。

専門家でない人でも、ある程度物事を考えて発言しているのか、単にテレビの受け売りを話しているだけなのかが理解できます。

私自身は、この岩田氏の動画を視聴して、その内容を昨日のこのブログ記事に掲載しようかとも思いましたが、たとえば岩田氏がどのくらいの時間をかけて(後でわかったのですが、2時間程度)ダイヤモンド・プリンセス号の中を観察したのかもわからない状況だったので、真偽を判定できないと思い、やめました。正しい判断だったと思います。

政治家などの、TwitterなどSNSでの発言をチエックしたり、今回の武漢肺炎に関する発言をチエックすれば、その政治家の能力や性格がわかります。これは、国会での答弁などを聴いたり選挙演説を聴くよりもその政治家の真の姿を探ることができる可能性があります。馬鹿や無責任な政治家には、投票しなければ良いです。

会社や身の回りの人なども、普段の働きぶりや、会話だけではなく、Twitterなどでの発言や、武漢肺炎などへの反応を分析すると、その人たちをより深く分析をするとこができます。これは、普段はなかなか得られない機会です。

特に、ストレスがかなり溜まっているかなどもわかるので、それなりの対処や措置がやりやすくなります。

最も良いのは、テレビなどの報道を単純に信じ込んでいるワイドショー民などとの付き合いはなるべく控えて、無駄な時間を省くことができることです。

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2020年2月19日水曜日

政府、広がる批判に焦り 「水際で失敗」、支持率に影―新型肺炎―【私の論評】ダイヤモンド・プリンセス号の教訓を活かし、挙党一致で武漢肺炎対策にあたれ(゚д゚)!

政府、広がる批判に焦り 「水際で失敗」、支持率に影―新型肺炎

首相官邸に入る安倍晋三首相=18日午前、東京・永田町

 新型コロナウイルスによる肺炎への政府対応に批判が広がっている。安倍晋三首相が先頭に立って取り組んだ水際対策は奏功せず、国内で感染が拡大。横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に対する措置でも、乗客乗員を船内にとどめ置いた判断が「かえって集団感染を悪化させた」と指摘された。「未知の感染症」への国民の不安は内閣支持率にも影を落とし、政府・与党は危機感を強めている。

乗客下船、19日開始 新たに88人の感染確認―クルーズ、21日に完了か

 「事態を小さく見せようとし、水際で失敗した」。野党共同会派が18日に開いた新型肺炎に関する合同対策本部の会合で、国民民主党の泉健太政調会長は政府の対応を厳しく批判した。

 政府は当初、発熱症状や中国・武漢市への渡航歴、武漢滞在者との接触がある人らをウイルス検査の対象にしていた。ところが2月に入り、感染経路の分からない感染例が続出。首相側近は「1月時点で中国人全ての入国を止めるしかなかったが、もう遅い」と頭を抱えた。

 政府関係者によると、習近平国家主席の国賓来日を控えて中国側から「大ごとにしないでほしい」と要請があったといい、これも後手に回った要因だとみられる。

 ダイヤモンド・プリンセス号への対応に関し、政府高官は「最初から3700人を下船させたらパニックになっていた」と批判に反論する。ただ、ある閣僚は「本当は早く下ろして隔離すべきだったが、全員を収容できる施設がなかった」と内情を明かした。

 国会で「桜を見る会」をめぐる問題が連日追及される中、各種世論調査で安倍内閣の支持率は軒並み下落。新型肺炎への対応を通じて危機管理能力をアピールすることで、局面転換を期待していた政権幹部を落胆させた。

 自民党の鈴木俊一総務会長は18日の記者会見で「国民は必ずしもポジティブに政府の対応を評価していない」と指摘。菅義偉官房長官は会見で「良かった点、悪かった点をしっかり検証し、次につなげていきたい」と語った。

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日本では、ダイヤモンド・プリンセス号で知られるようになったクルーズ船ですが、これについては、知られていないことが多くあるようです。

ダイヤモンド・プリンセス号

世界のクルージングのビッグスリーは「カーニバル・コーポレーション(Carnival Corporation)」、「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(Royal Caribbean International)」、「ノルウェージャン・クルーズ・ライン(Norwegian Cruse Line)」である。この3社で世界のクルージングの82%のシェアーを持ち、それぞれ本社は米国にあります。

クルーズライン国際協会(CLIA)に加盟しているクルージングの主要船会社は58社あるという。水、食品、医療、下水設備、乗客安全などの守るべき規定がCLIAで定められています。

現在、世界で運行しているクルージング411船の内の70%はバハマ、パナマ、バミューダ諸島、マルタの4カ国の国籍になっているそうです。これらの国では環境規制が緩く、タックスヘイヴンの国でもあります。また客船の耐久性への規制は緩く、20年以上運行しているクルーズが結構あるといいます。

ブラックな労働環境、汚物の海洋投棄

前述のクルージング最大手3社は米国に本社を構える船会社ですが、乗組員は季節労働者のようなもので労働契約条件はその船が登録してある国籍の基準に従うことになっているそうです。

乗組員の契約は最高9カ月で、週労70時間、休暇はなく、家族と離れての生活で、しかも通勤があるわけではなく、同じ船内での寝泊まりとなります。乗客の目には見えない乗組員のこのような厳しい勤務事情があります。

更に、環境保護という面において、3000人の乗客が1週間乗船している客船の場合の人的廃棄物は7万5000リットル、浴室トイレそして食器洗浄に使用する水量は37万リットル。

加えて、洗濯などに使用される水も必要です。それに廃棄されるゴミの処理も必要です。これらの汚水そして汚物は海に捨てられるわけです。地球の環境保全という面において客船は必ずしも綺麗な観光業ではありません。

港に停泊している間もエンジンは作動しており、その間も汚水・汚物は海に流れ、大気中にCO2を放出しているわけです。シンフォニー・オブ・ザ・シーズの6つの発電機は1時間に14.9トンの燃料を消費しており、この量は5655台の車が約50kmの距離を移動するのに必要なのに匹敵するそうです。

乗船後の行方不明者も少なくない

また、日本でも寄港地周辺における万引きやポイ捨てなどの迷惑行為が目立つため、商店
街の中には、「クルーズ船客お断り」の貼り紙を掲示する店もあるといいます。

日本以上にクルーズ船が寄るスペインのマジョルカ島では、普段の人口は111万5999人ですが、一昨年8月は客船の入港で人口が一挙に207万8276人に膨れ上がったそうです。同島の人口がひと月でほぼ2倍近くになったのです。

その結果、地元市民にとって生活に不自由を感じるようになったのです。しかも、クルージングに乗船しての観光客は上陸して思い出になる商品を僅かに買って、記念写真を撮るだけというパターンが大半で地元の富の蓄積にはならないとしています。

そのため、シンフォニー・オブ・ザ・シーズの各寄港地では環境汚染や地元市民の生活を脅かすことになるとして市民から寄港反対の声が上がっているほどです。

さらなる問題もあります。それはなんと、「乗客が消息不明になる」問題です。

クルージング犠牲者協会(Cruise Victims Association)によると、2000年から現在まで200人が乗船したあと行方不明になっているといいます。大型客船はあたかも海上に浮かぶ小さな町といった感じですが、しかもそこには警察はいません。厳密に言えば船長などは警察と同様の権限を持つのですが、客の数から考えると、あまり機能しているとは言い難いです。

乗船した後、酔ぱらって海に落ちたり、殺害されたり、盗難やセクハラに合ったりで、乗客の安全という面においては些かどころか、かなり問題ありなのです。旅行中に何やら、問題があったにしても、飛行機なら何日もそれに付き合うこともないですが、クルーズ船では、かなりの長時間それにつきあわなければならないです。

クルーズ船の教訓

クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の乗客・乗組員隔離の状況は、CNNやBBCなど、世界中にニュースで広がりました。2月16日現在、全乗客3711人のうち355人が感染しました。

クルーズ船には、日本人だけでなく海外からの乗客も多数乗船していました。この中に1月下船した後に感染が発覚した香港人男性が感染源の可能性があるとされ、その後の2次感染3次感染が急速に広がったと考えられています。この例からも、新型コロナウイルスの感染力は非常に強いものと考えられます。

クルーズ船の教訓として以下の2つあげたいです。

第1として、感染拡大のために長期間下船させずに隔離という状況が良い判断だったか、隔離を解除して下船させるタイミンがあるとすればそれはいつだったかと、振り返る必要があります。

2月18日現在、一部下船ははじまりましたが、いまだにクルーズ船の非感染者の隔離は続いています。この中で、米国やカナダはチャーター機で乗客を自国に戻し、自国で隔離を継続することになっています。台湾やオーストラリアでも同じような動きがあります。

ダイヤモンド・プリンセス号の中を消毒する自衛隊員

しかし、当初の隔離処置が必要であったと言う判断自体が一概に間違っているとは言えないです。国内感染が明らかでない状況の中で、客船から感染の可能性のある乗客を下船させなかった決定は、致し方ないといえます。

感染の正体や今後の見通しが誰もわからない中、誰かが決定しなければならないのです。この中で、感染者を隔離という処置は、基本的考え方です。ただし、あとで振り返る必要はあります。どの時点で隔離に限界があると考えるか、下船させるべきか、見直す必要があります。そして今後の教訓にする必要があります。

第2として、換気の問題です。

感染経路が、飛沫感染(くしゃみや咳)や接触感染(手すりなどに触れること)以外に、注意すべき点はなかったのでしょうか。この点で、個人的には、空調環境の整備に注意する必要性があるのかもしれないと考えます。

ダイヤモンドプリンセス号は設備に優れた豪華客船であることは間違いないし、他の船に設備で劣ったところはないと思います。その上で、空調の新鮮空気量(外気の量)が、新型コロナウイルスのように感染力の強いウイルスの感染予防には、不十分となった可能性があるのではないかと考えます。

通常の風邪のウイルスでは問題にならない換気も、新型コロナのような強い感染力があるウイルスには、新鮮空気量100%の外気換気を行う必要があるのではないかと考えます。

平常時のダイヤモンドプリンセス号の換気は、通常はキャビン30%、公室・階段室50%、病院・ギャレ100%です。なお、今回の新型コロナウイルスの感染が問題となって以後は、外気換気が十分に行われているとのことです。

平常時に外気100%では、室内は快適な温度が保てない可能性があるので、普段の豪華客船なら乗客から不平が出るかもしれないです。平常時には新鮮空気量100%を行うことは難しいかもしれないです。

しかし今後、未知のウイルス感染が考えられる状況下では、少なくともすぐに、換気を十分にする措置を取る必要があります。

室内の空気を循環させるシステムを使った乗り物や建物では、ウイルス濃度が高められたまま感染を広げるリスクがあります。室内循環でも、もちろん通常の風邪のウイルスでは問題にならないです。

しかし、新型コロナウイルスは感染力が高いです。換気をすることで、ウイルス濃度を下げ感染率を下げることが出来ます。また、外へ放り出されたウイルスも、濃度が低ければ感染するリスクが低くなります。このため、換気が難しい場所でも、外気100%の換気システムの開発が望まれます。言うまでもなく、単純に窓が開けられれば、窓を開けることも重要です

挙党一致でウイルス対策にあたれ

日本のマスメディアでは連日新型コロナウィルス関連の報道で満ち溢れており、国民の関心は自分や家族の身をどうしたら守れるかに集中しているようです。ところが永田町では相変わらず「桜を見る会」の追求に明け暮れています。

野党は「桜」を安倍総理の最大の弱点と見て、政権交代へ追及の矛先を緩めようとはしていません。おそらく野党の見誤りであることは直ぐに明らかになることですが、もし総理が追い込まれて、今の時点で総辞職を余儀なくされた場合を考えるとゾッとします。

将来的に安倍内閣が無能政権だったと烙印を押される可能性はありますが、それでも今は挙党一致で新型ウィルスに対抗すべきです。

4月になって暖かくなり、湿度が高くなれば自然とウィルスの脅威も薄れると思います。少なくともそれまでは意味の無い政権攻撃は止めたら如何でしょうか。実際、東日本大震災のときには野党自民党は、いっとき与党民主党と休戦して、崩壊寸前だった菅内閣が命拾いしたということもありました。

黒岩氏(左)は安倍首相から反論される場面も=27日、衆院第1委員室

一刻も速い感染症対策が求められているのですから、国会議員の質問もやはり9割は武漢肺炎(COVID2019)への対策の現状と反省、および今後の対応へ充てられてしかるべきです。

厚労省直轄で対応することには無理があり、地方自治体でも独自の防衛対策が検討されつつあると思いますので、各党の県連を通して地方議会での議論を国会に吸い上げて、より有効な対策を打ち出す必要があります。

誤った方針の下で政権追求ばかりをしていると、国民は呆れ返ってしまい、次の総選挙では野党は大崩壊するでしょう。

内閣支持率は安倍政権のダイヤモンドプリンセスでの検疫失敗で大分下落を続けていますが、下がったポイントは野党には流れてはいないようです。

今回安倍総理は、危機管理の弱さを露呈しましたが、それでも代わりの適任者が浮かばないという、現実があります。まずは、ここしばらく4月あたりまでは、挙党一致でウイルス対策に邁進すべきです。

日本の住民一人ひとりが、感染予防のエキスパートに

新型コロナウイルスの感染力は、これまでに考えられないほど強いようです。これだけ多くの日本人医師が初めに感染を確認されていることは、これまでに例がありません。

おそらく空気感染を起こす結核よりも感染力が強いといえるかもしれないです。基本的には、飛沫感染と接触感染です。くしゃみや咳からウイルスがまかれ、そこから感染するのです。

感染者がウイルスのついた手で、手すりやつり革にふれ、その上を第3者が触れ、その手で自分の鼻や口をさわれば、ウイルスが体内に取り込まれます。だからこそ、手洗い・うがい・マスクは、非常に大切であり、感染予防の重要な行動となります。

私たちは、自分への感染も、他人への感染も、手洗い・うがい・マスクで、予防するのです。そして、自分を守り、他人を守り、日本を守り、世界を守るのです。私たち一人一人が、感染予防のエキスパートになって、早くマスクを取れるようになるべきです。そして、感染予防対策の先進国として世界に認められるようになりたいものです。

特に、ダイヤモンドプリンセスの例は、詳細に研究して、今後の対策に役立てるべきです。

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